以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施の形態における液封入式防振装置100の断面図である。
この液封入式防振装置100は、自動車のエンジンを支持固定しつつ、そのエンジン振動を車体フレームへ伝達させないようにするための防振装置であり、図1に示すように、エンジン側に取り付けられる第1取付け金具1と、車体側に取り付けられると共に筒状に形成される第2取付け金具2と、これら両金具1,2を連結すると共にゴム状弾性体から構成される防振基体3とを主に備える。
第1取付け金具1は、アルミニウム合金などから略円柱状に形成される。ここで、図2及び図3を参照して、第1取付け金具1の詳細構成について説明する。図2(a)は、第1取付け金具1の上面図であり、図2(b)は、第1取付け金具1の底面図である。また、図3は、図2(a)のIII−III線における第1取付け金具1の断面図である。
図2及び図3に示すように、第1取付け金具1は、締結孔11と、突起部12と、張出部13と、凹部14と、連通孔15とを主に備える。締結孔11は、第1取付け金具1の上端面1aに凹設されると共に内周面にめねじが螺刻されたねじ穴であり、エンジン側の取付けボルトが締結される。また、突起部12は、第1取付け金具1の上端面1aから突設される突起であり、エンジン側の部材に凹設された凹部に挿入されることで、第1取付け金具1の位置決めを行う。
張出部13は、第1取付け金具1の外周面から外径方向へ向けてフランジ状に張り出す部位であり、第1取付け金具1の高さ方向(図3上下方向)略中央に位置する。大変位入力時には、張出部13が後述するストッパ金具5に当接することで、ストッパ機能が発揮される。
凹部14は、第1取付け金具1の底面1bに凹設され後述する窪みであり、被圧入壁部14aと、その被圧入壁部14aに連設される内壁部14bと、その内壁部14bから突設される突条部14cとを備える。被圧入壁部14aは、後述する変位規制部材30の筒部31aが内嵌圧入される断面円形の壁面であり、第1取付け金具1の高さ方向(図3上下方向)に沿って略一定の内径を有して形成される。
内壁部14bは、凹部14の天井面(図3上側面)を形成する壁面であり、突条部14cの内周側に位置する部分が、被圧入壁部14aと同心で且つ上方(図3上側)へ向けて凸となる球面状に形成されると共に、突条部14cの外周側に位置する部分が、第1取付け金具1の高さ方向(図3上下方向)に垂直な平坦面として形成される。
突条部14cは、周方向に連続し図2(b)に示すように被圧入壁部14aと同心の底面視円環状に形成される突条であり、突設先端側が円弧状に湾曲した断面U字状の断面形状に形成される。また、突条部14cの突設先端(図3下側)を結んで形成される面は、突条部14cの外周側に位置する内壁部14bと平行とされる。
このように構成された凹部14には、後述するメンブレン部材20と変位規制部材30とが順に装着され、突条部14cの内周側に位置する内壁部14bとメンブレン部材20との間に空気室40が形成される(図1参照)。
なお、この空気室40の形成状態では、内壁部14bとメンブレン部材20とが所定の間隔を隔てて対向配置される。この間隔は、走行状態において比較的大振幅の振動が入力された場合に、メンブレン部材20の変位を内壁部14bが受け止め可能な間隔に設定される。
連通孔15は、空気室40を外部に連通させるための貫通孔であり、縦孔15aと、横孔15bとを備える。縦孔15aは、内壁部14bの中心部から上端面1aへ向かって延設される断面円形の孔であり、その縦孔15aの終端は、第1取付け金具1の高さ方向(図3上下方向)において、張出部13と上端面1aとの間に位置する。
横孔15bは、第1取付け金具1の高さ方向と平行に延設される断面円形の孔であり、一端側(図3左側)が縦孔15aの終端に接続されると共に、他端側が張出部13と上端面1aとの間において第1取付け金具1の外周面に開口される。
なお、縦孔15aの内径は、突条部14cの内周面の内径よりも小径に形成され、本実施の形態では、突条部14cの内径の略0.2倍に設定される。横孔15bの内径は、縦孔15aの内径よりも小径に形成され、本実施の形態では、縦孔15aの略0.5倍に設定される。
このように、連通孔15は、横孔15bを備え、その横孔15bの他端側を第1取付け金具1の外周面に開口させるので、縦孔15aの終端を上端面1aに開口させる場合と比較して、エンジン側に取り付けられる座面としての上端面1aの面積を確保することができる。
この場合、連通孔15は十分に細く形成される(即ち、縦孔15aの内径が突条部14cの内径よりも小径に形成されると共に、その縦孔15aよりも横孔15bがさらに小径に形成される)ので、連通孔15の形成に伴う第1取付け金具1の剛性の低下を抑制できる。
また、縦孔15aを横孔15bよりも大径とすることで、縦孔15a及び横孔15bの形成がドリル加工や鋳造のいずれで行われる場合であっても、その加工公差を緩やかとして、横孔15bの一端を縦孔15aへ容易かつ確実に接続させることができる。
さらに、縦孔15a及び横孔15bの内の一方を他方と異なる径とする場合に、小径とされる孔を、第1取付け金具1の外周面に他端が開口する横孔15bとすることで、上述のように両孔15a,15bの接続の確実化を図りつつ、空気室40(図6参照)内への異物の侵入を抑制することができる。
図1に戻って説明する。第2取付け金具2は、防振基体3が加硫成形される筒状金具2aと、その筒状金具2aの下方に取着される底金具2bとを備えて構成される。筒状金具2aは上広がりの開口を有する筒状に、底金具2bは底部が傾斜したカップ状に、それぞれ鉄鋼材料から構成されている。なお、底金具2bの底部には、取付けボルト21と突起部22とが突設される。
防振基体3は、ゴム状弾性体から断面略円錐台形状に形成され、第1取付け金具1の外周面(底面1bと張出部13との間の外周面)と筒状金具2aの上端開口部の内周面との間に加硫接着されている。また、防振基体3の下端部には、筒状金具2aの内周面を覆うゴム膜3aが連なっており、このゴム膜3aには、後述する仕切り部材4の外周部が密着されている。
また、防振基体3の上端部には、第1取付け金具1の張出部13の底面、外周面および上面を覆う覆設部3bが連なっており、大変位入力時に第1取付け金具1の張出部13がストッパ金具5に当接される際には、覆設部3bの弾性変形により緩衝作用が得られる。なお、ストッパ金具5は、筒状金具2aの上端部にかしめ固定される。また、ストッパ金具5の上面側には、ゴム状弾性体から逆カップ状に形成されるカバー部材6が装着される。カバー部材6は、第1取付け金具1が挿通される挿通孔を中央部に備える。
ダイヤフラム7は、ゴム状弾性体から部分球状を有するゴム膜状に形成され、第2取付け金具2(筒状金具2aと底金具2bとの間)に取着される。その結果、このダイヤフラム7の上面側と防振基体3の下面側との間に、液封入室10が形成される。なお、ダイヤフラム7は、その周縁部が、金属材料から上面視円環状に形成される取付け板7aに加硫接着され、取付け板7aが筒状金具2aと底金具2bとの間でかしめ固定されることにより、第2取付け金具2に取着される。
液封入室10には、エチレングリコールなどの不凍性の液体(図示せず)が封入される。液封入室10は、仕切り部材4によって、防振基体3側(図1上側)の第1液室10Aと、ダイヤフラム7側(図1下側)の第2液室10Bとの2室に仕切られる。また、仕切り部材4は、ゴム状弾性体から部分球状を有するゴム膜状に形成される副ダイヤフラムを備え、仕切り部材4の内部には、副ダイヤフラムによって第1液室10Aと区画される第3液室10Cが形成される。
仕切り部材4は、第1液室10A及び第2液室10Bを連通させる第1オリフィスと、第2液室10B及び第3液室10Cを連通させる第2オリフィスとの2本のオリフィスを備える。これにより、液封入式防振装置100は、例えば、シェイク振動とアイドル振動のように、異なる2つの周波数域の振動に対して、液体流動効果(液柱共振効果)による防振効果を発揮することができる。なお、かかる仕切り部材4の詳細構成については、公知の技術(例えば、特開2007−177875号など)と同様であるので、その説明は省略する。
第1取付け金具1の底面1bに凹設された凹部14には、メンブレン部材20及び変位規制部材30が装着される。ここで、図4及び図5を参照して、メンブレン部材20及び変位規制部材30について説明する。
図4(a)は、メンブレン部材20の上面図であり、図4(b)は、図4(a)のIVb−IVb線におけるメンブレン部材20の断面図である。メンブレン部材20は、ゴム状弾性体から軸心Oを有する上面視円形のゴム膜状に形成される。
なお、詳細には、メンブレン部材20は、中央部に位置し円板状に形成される部位と、その円板状の部位の周縁部が内周面に接続される筒状の部位とを備え、円板状の部位が、凹部14の突条部14cと変位規制部材30の突条部31cとの間に挟持されることで(図6参照)、筒状の部位が両突条部14c,31cに抜き取り不能に係止され、メンブレン部材20の脱落が防止される。
図5(a)は、変位規制部材30の上面図であり、図5(b)は、図5(a)のVb−Vb線における変位規制部材30の断面図である。変位規制部材30は、圧入部31と、規制板部32とを備え、これら両部位31,32がアルミニウム合金から一体に形成される。
圧入部31は、筒状に形成される筒部31aと、その筒部31aの軸方向一端側(図5(b)下側)に接続され上面視円環状に形成される円環部31bと、その円環部31bの上面側(図5(b)上側面)から突設される突条部31cとを備え、軸心O周りに対称に形成される。
筒部31aは、第1取付け金具1の凹部14における被圧入壁部14a(図2及び図3参照)に内嵌圧入される部位であり、被圧入壁部14aの内径よりも若干大きな外径に形成される。なお、変位規制部材30は、筒部31aの軸方向一端面(図5(b)上側面)が凹部14の内壁部14bに当接される位置まで軸心O方向へ内嵌圧入される。
突条部31cは、周方向に連続する突条であり、突設先端側が円弧状に湾曲した断面U字状の断面形状に形成される。また、突条部31cの突設先端(図5(b)上側)を結んで形成される面は、筒部31aの軸方向他端側(図5(b)上側)の端面と平行とされる。なお、突条部31cの上面視形状は、第1取付け金具1の凹部14における突条部14c(図2及び図3参照)と同径の円環状に形成される。
よって、変位規制部材30の圧入部31(筒部31a)が第1取付け金具1の凹部14(被圧入壁部14a)に装着(内嵌圧入)されると、第1取付け金具1の凹部14及び変位規制部材30の両突条部14c,31cがメンブレン部材20を所定の圧縮代で両側から挟持して、メンブレン部材20の周縁部が全周にわたってシール状態とされる。
規制板部32は、圧入部31(円環部31b)の内周側に配設される部位であり、本実施の形態では、図5(a)に示す上面視において、軸心Oから放射直線状に延設される4本の脚部から形成される。よって、これら4本の脚部の間の4箇所に貫通孔が貫通形成され、その貫通孔を介して、液圧がメンブレン部材20に作用される(図1参照)。
なお、筒部31aの高さ寸法(軸心O方向寸法、図5(b)上下方向寸法)は、凹部14の被圧入壁部14aに内嵌圧入され、軸方向一端面(図5(b)上側面)が凹部14の内壁部14bに当接されると、軸方向他端面(図5(b)下側面)が第1取付け金具1の底面1bに面一となる寸法に設定される(図1及び図6参照)。
また、筒部31aの軸方向一端側が凹部14の内壁部14bに当接されると、規制板部32とメンブレン部材20とは所定の間隔を隔てて対向配置される。この間隔は、走行状態において比較的大振幅の振動が入力された場合に、メンブレン部材20の変位を規制板部32が受け止め可能な間隔に設定される。
ここで、規制板部32は、貫通形成される各貫通孔の面積が十分に確保されると共に、その板厚寸法(図5(b)上下方向寸法)が十分に小さくされるので、少なくとも比較的高周波数の振動入力時に、各貫通孔がオリフィスとして機能することはない。即ち、比較的高周波数の振動入力時に、各貫通孔が目詰まりすることはなく、その結果、メンブレン部材20の弾性変形により、第1液室10Aの液圧上昇を抑制して、低動ばね特性を得ることができる。
図1へ戻って説明する。第1取付け金具1の凹部14に、メンブレン部材20及び変位規制部材30が順に装着されると、凹部14とメンブレン部材20とにより空気室40が形成される。この空気室40は、連通孔15を介して、外部に連通される。
次いで、液封入式防振装置100の組立方法について、図1及び図6を参照して説明する。図6は、図1の一部を拡大して示した液封入式防振装置100の部分拡大断面図である。
図1及び図6に示すように、液封入式防振装置100の組み立ては、まず、第1取付け金具1と筒状金具2aとを防振基体3により連結した加硫成形品を加硫金型により加硫成形し、その加硫成形品における第1取付け金具1の凹部14に対し、メンブレン部材20を設置した後、凹部14の被圧入壁部14aに変位規制部材30の圧入部31(筒部31a)を内嵌圧入する。
これにより、凹部14の内壁部14bと、変位規制部材30の規制板部32とが、メンブレン部材20を挟んで対向配置されると共に、内壁部14b及び規制板部32とメンブレン部材20の上下面との間には、それぞれ所定間隔が隔てられる。また、メンブレン部材20の周縁部は、凹部14の突条部14cと変位規制部材30の突条部31cとにより挟持され、シール状態とされる。その結果、内壁部14bとメンブレン部材20との対向面間に空気室40が形成される。
空気室40を形成した後は、筒状金具2aの内周側へ仕切り部材4及びダイヤフラム7を順に挿入した後、底金具2bを装着し、筒状金具2aの下端部をかしめ固定すると共に、筒状金具2aの上端部にストッパ金具5をかしめ固定し、カバー部材6を装着することで、液封入式防振装置100の製造が完了する。
以上のように構成された液封入式防振装置100によれば、振動入力時には、変位規制部材30の規制板部32に形成された複数の貫通孔を通じて液封入室10(第1液室10A)の圧力変動がメンブレン部材20に作用され、その結果、メンブレン部材20が変位(弾性変形)される。
この場合、例えば、アイドル状態のように、比較的小振幅の振動入力時には、メンブレン部材20が、変位規制部材30の規制板部32または凹部14の内壁部14bに規制されることなく、変位(弾性変形)することにより、液封入室10(第1液室10A)の液圧上昇を抑制して、低動ばね特性を確保することができる。
一方、例えば、走行時のように、比較的大振幅の振動入力時には、メンブレン部材20が、変位規制部材30の規制板部32または凹部14の内壁部14bに当接され、その変位(弾性変形)が規制されることで、剛性が高められる。これにより、液封入室10(第1液室10A)の液圧が逃げることを抑制できるので、流体流動効果を発揮させ、高減衰特性・高動ばね特性を確保することができる。
更に、液封入式防振装置100によれば、第1取付け部材1の第1液室10Aに面する底面1bに凹設された凹部14の開口をメンブレン部材20により閉封することで空気室40を形成するので、メンブレン部材20を、第1液室10Aを形成する内壁の一部とすることができる。即ち、従来品のように、第1液室10Aとメンブレン部材20との間にオリフィスは形成されないので、仕切り部材4のオリフィスが目詰まりする比較的高周波数の振動入力時であっても、メンブレン部材20の弾性変形により、液封入室10(第1液室10A)の液圧上昇を抑制して、低動ばね特性を得ることができる。
なお、液封入式防振装置100は、空気室40を外部(大気)に連通させる連通孔40を備えるので、空気室40の空気ばね(体積弾性率)を安定に保つことができる。即ち、第1取付け部材1はエンジン側に取り付けられるため、エンジン温度が上昇すると、その上昇に伴って空気室40も暖められ、空気室40内の空気が膨張する。そのため、メンブレン部材20の弾性変形に寄与する空気室40の空気ばねの値に変動が生じ、動的特性の不安定化を招く。これに対し、連通孔15を備えることで、空気室40内の空気が膨張した場合には、その膨張分を連通孔15により外部へ逃がすことができるので、空気室40の圧力変動を抑制して、空気ばねの値を安定に保つことができる。その結果、動的特性の安定化を得ることができる。
また、メンブレン部材20の変位が変位規制部材30の規制板部32または凹部14の内壁部14bに規制される際に、それらの衝突に起因して衝撃が発生しても、かかる衝撃の発生点から車体までの振動伝達経路には、防振基体3が存在する。よって、衝撃により振動が発生しても、防振基体3により低減して、車体側で異音が発生することを抑制することができる。
ここで、液封入式防振装置100では、メンブレン部材20の変位は、一方側(図6下側)への変位が変位規制部材30の規制板部32により規制され、他方側(図6上側)への変位が凹部14の内壁部14bにより規制されるので、メンブレン部材20の両側に変位規制部材30(規制板部32)を設ける必要がない。即ち、第1取付け部材1の凹部14における内壁部14bが、空気室40を形成するための役割と、メンブレン部材20の変位を規制する役割とを兼用する。これにより、メンブレン部材20の変位を規制するための部材の部品点数を削減して、その分、製品コストの低減を図ることができる。
次いで、図7を参照して、第2実施の形態における液封入式防振装置200について説明する。第1実施の形態では、空気室40を外部(大気)に連通させる場合を説明したが、第2実施の形態における空気室240は、密閉された空間として形成される。なお、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
図7は、第2実施の形態における液封入式防振装置200の断面図であり、図1に対応する。第2実施の形態における第1取付け金具201は、第1実施の形態における第1取付け金具1に対して、連通孔15の形成が省略されている点を除き、他の構成は同一に形成される。
よって、第1取付け金具201の凹部14に、メンブレン部材20及び変異規制部材30が順に装着され、メンブレン部材20の周縁部がシール状態とされると、凹部14とメンブレン部材20との間には、密閉された空間(即ち、外部(大気)と連通しない空間)として、空気室240が形成される。
なお、第2実施の形態における液封入式防振装置200のように、空気室240が外部と連通されない空間として形成される場合であっても、メンブレン部材20の変位(弾性変形)とその変位の変位規制部材30及び凹部14による規制とにより、第1実施の形態の場合と同様に、比較的小振幅の振動入力時の低動ばね特性と比較的大振幅の振動入力時の高減衰特性・高動ばね特性とを確保しつつも、比較的高周波数の振動入力時における低動ばね特性を得ることができる。
次いで、図8を参照して、第3実施の形態におけるメンブレン部材320について説明する。第1実施の形態では、メンブレン部材20の厚み寸法が一定に形成される場合を説明したが、第3実施の形態におけるメンブレン部材320は、一部の厚み寸法が大きくされている。なお、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
図8(a)は、第3実施の形態におけるメンブレン部材320の上面図であり、図8(b)は、図8(a)のVIIIb−VIIIb線におけるメンブレン部材320の断面図である。第3実施の形態におけるメンブレン部材320は、第1実施の形態におけるメンブレン部材20に対して、中央部に部分球状の球状部320aが上下両面に突設されている点を除き、他の構成は同一に形成される。このメンブレン部材320によっても、第1実施の形態における場合と同様の効果を得ることができる。
ここで、メンブレン部材320の球状部320は、変位規制部材30の規制板部32及び第1取付け金具1の凹部14における内壁部14bの間で挟持される高さ寸法に形成されていても良く、或いは、規制板部32及び内壁部14bの少なくとも一方との間に隙間を有していても良い。メンブレン部材320と規制板部32及び内壁部14bとの衝突を抑制またはその衝突を段階的として、異音の発生を低減することができる。
なお、規制板部32及び内壁部14bの間に球状部320aを挟持させる場合には、連通孔15の縦孔15aを、球状部320aによって塞がれない位置に形成する。
一方、球状部320aと内壁部14bとの間に隙間を形成する場合には、球状部320aが内壁部14bへ向けて変位した際に、連通孔15の縦孔15aが球状部320aにより塞がれるように構成しても良い。即ち、メンブレン部材320の球状部320aと連通孔1の縦孔15aとを同心に配置すると共に、縦孔15aの内径を、縦孔15aへ向けて球状に突出する球状部320aの突出部分の外径よりも小さな値に設定する。
これにより、連通孔15が球状部32aにより塞がれるまでの間は、空気室40の空気ばね(体積弾性率)を低くして、メンブレン部材320の変形性を確保しつつ、連通口15が球状部320aにより塞がれた後は、メンブレン部材320の変位に伴う空気室40内の空気の圧縮により、空気室40の空気ばね(体積弾性率)を高くすることができる。即ち、メンブレン部材320の剛性の振幅依存性(入力振幅に対する非線形性)をより大きくする効果もある。
次いで、図9を参照して、第4実施の形態におけるメンブレン部材420について説明する。第1実施の形態では、メンブレン部材20の中央部が板状に形成される場合を説明したが、第4実施の形態におけるメンブレン部材420は、中央部が蛇腹条に屈曲して形成されている。なお、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
図9(a)は、第4実施の形態におけるメンブレン部材420の上面図であり、図9(b)は、図9(a)のIXb−IXb線におけるメンブレン部材420の断面図である。第4実施の形態におけるメンブレン部材420は、第1実施の形態におけるメンブレン部材20に対して、中央部の形状(蛇腹形状)を除き、他の構成は同一に形成される。このメンブレン部材420によっても、第1実施の形態の場合と同様の効果を得ることができる。
なお、第4実施の形態では、メンブレン部材420の中央部が蛇腹状に屈曲して形成され、剛性が低くされることで、比較的小振幅の振動入力に対しては、メンブレン部材420の変位(弾性変形)により液封入室10(第1液室10A)の液圧を逃がして、低動ばね特性を確保することができる一方、蛇腹状に屈曲した部位が伸びて展張された状態では、剛性が高くされることで、比較的大振幅の振動入力に対しては、液圧の逃げを抑制して、オリフィスを介して行われる流体流動効果を高めることで、高減衰特性・高動ばね特性を確保することができる。また、比較的高周波数の振動入力に対しては、第1実施の形態の場合と同様に、低動ばね特性を得ることができる。
なお、このように、第4実施の形態では、メンブレン部材420自体に非線形特性を持たせることができるので、変位規制部材30の規制板部32を省略すると共に、凹部14の内壁部14bの凹設深さを大きくして、これら両部32、14bによってメンブレン部材420の変位を規制しない構成としても良い。
次いで、図10を参照して、第5実施の形態におけるメンブレン部材520について説明する。第1実施の形態では、メンブレン部材20がゴム状弾性体のみから形成される場合を説明したが、第5実施の形態におけるメンブレン部材520は、内部に非伸縮性の布状体520aが埋設されている。なお、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
図10(a)は、第5実施の形態におけるメンブレン部材520の上面図であり、図10(b)は、図10(a)のXb−Xb線におけるメンブレン部材520の断面図である。第5実施の形態におけるメンブレン部材520は、第1実施の形態におけるメンブレン部材20に対して、内部に布状体520aが埋設される点を除き、他の構成は同一に形成される。このメンブレン部材420によっても、第1実施の形態の場合と同様の効果を得ることができる。
布状体520aは、複数本の繊維(本実施の形態では、互いに直行する経糸及び緯糸)を平織りした繊維織布の両面にエラストマーをコーティングした引き布として構成される。なお、エラストマーとしては、メンブレン部材520を加硫する際に架橋反応を得られるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、天然ゴムやSBR、BR、NBR、CR、EPDMなどの架橋タイプのエラストマーが例示される。また、繊維には、ポリアミド繊維を使用することが好ましい。
本実施の形態では、布状体520aは、メンブレン部材520の厚み方向(図10(b)上下方向)中央に埋設されると共に、上面視円形に形成される。なお、布状体520aの外径は、突条部14c,31c(図2及び図5参照)よりも大径に設定されている。即ち、第1取付け金具1の凹部14に装着されると、布状体520aの周縁部が突条部14c,31c間に挟持される。これにより、比較的大振幅の振動入力時には、布状体520aを構成する繊維の張力を利用して、メンブレン部材520の剛性を高くすることができる。
よって、第5実施の形態においても、比較的小振幅の振動入力に対しては、メンブレン部材520の変位(弾性変形)により液封入室10(第1液室10A)の液圧を逃がして、低動ばね特性を確保することができる一方、比較的大振幅の振動入力に対しては、液圧の逃げを抑制して、オリフィスを介して行われる流体流動効果を高めることで、高減衰特性・高動ばね特性を確保することができる。また、比較的高周波数の振動入力に対しては、第1実施の形態の場合と同様に、低動ばね特性を得ることができる。
なお、このように、第5実施の形態においては、第4実施の形態の場合と同様に、メンブレン部材520自体に非線形特性を持たせることができるので、変位規制部材30の規制板部32を省略すると共に、凹部14の内壁部14bの凹設深さを大きくして、これら両部32、14bによってメンブレン部材420の変位を規制しない構成としても良い。
次いで、図11を参照して、第6実施の形態から第8実施の形態における液封入式防振装置600〜800について説明する。第6実施の形態から第8実施の形態における液封入式防振装置600〜800は、第1実施の形態における液封入式防振装置100に対して、第1取付け金具601〜801に形成される横孔615b〜815bの形成位置(及び縦孔615a〜815aの長さ)が異なる点を除き、他の構成はそれぞれ同一に形成される。
図11(a)は、第6実施の形態における液封入式防振装置600の断面図であり、図1に対応する。第1実施の形態では、横孔15bの他端側がカバー部材6よりも上方となる位置で、第1取付け金具1の外周面に開口される場合を説明したが、第6実施の形態における横孔615bは、カバー部材6よりも下方となる位置で、第1取付け金具601の外周面に他端側を開口させる。なお、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
この液封入式防振装置600によれば、横孔615bの開口をカバー部材6により覆うことができるので、空気室40内への異物の侵入を抑制することができる。
図11(b)は、第7実施の形態における液封入式防振装置700の断面図であり、図1に対応する。第1実施の形態では、横孔15bが第1取付け金具1の内部に形成される場合を説明したが、第7実施の形態における横孔715bは、第1取付け金具701の上端面1aに凹設される。なお、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
この液封入式防振装置700によれば、第1取付け金具401の上端面1aに対し、縦孔715aの終端から第1取付け金具701の外周面まで溝を凹設することで、横孔715bを形成するので、かかる横孔715bの形成に要するコストの削減を図ることができる。
図11(c)は、第8実施の形態における液封入式防振装置800の断面図であり、図1に対応する。第1実施の形態では、横孔15bが水平に形成される場合を説明したが、第8実施の形態における横孔815bは、縦孔815aの終端から他端側(開口側)へ向けて下降傾斜して形成される。なお、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
この液封入式防振装置800によれば、横孔815bが下降傾斜して形成されているので、空気室40内への異物の侵入を抑制することができる。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
上記各実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。また、各構成の大小関係は一例であり、他の関係を採用することは当然可能である。例えば、連通孔15〜815の形成本数は一例であり、2本以上を設けても良い。また、縦孔15a〜815aの内径と横孔15b〜815bの内径との大小関係は一例であり、逆の関係としても良い。
上記各実施の形態では、仕切り部材4が2本のオリフィスを備えて構成される場合(いわゆるダブルオリフィスタイプ)を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、仕切り部材4を他の構成としても良い。他の構成としては、例えば、第1液室10Aと第2液室10Bとを連通させるオリフィスを1本のみ備える構成(いわゆるシングルオリフィスタイプ)や、異なる特性の2本のオリフィスを備えると共にそれら2本のオリフィスを選択的に切り替える構成(いわゆる切り替え式タイプ、例えば、特開2009−085405号)であっても良い。
上記各実施の形態において説明した液圧上昇とは、液圧の絶対値が増加することを意味し、第1取付け金具1が仕切り部材4へ近接する方向(図1下方)へ相対変位して、第1液室10aが正圧となる場合と、第1取付け金具1が仕切り部材4から離間する方向(図1上方向)へ相対変位して、第1液室10aが負圧となる場合との両者を含む。
上記各実施の形態では、連通孔15,615〜815の縦孔15a,615a〜815aが軸心Oに一致する位置に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、軸心Oからずれた位置に形成することは当然可能である。なお、横孔15b,615b〜815bについても同様であり、任意の位置に形成することができる。
また、上記各実施の形態で説明した連通孔15,615〜815(縦孔15a,615a〜815a及び横孔15b,615b〜815b)の形成角度は一例であり、それらの角度とは異なる他の角度に設定することは当然可能である。
なお、第1取付け金具1,601〜801の少なくとも一部(例えば、張出部13と上端面1aとの間)が横断面長円形状または横断面楕円形状に形成される場合には、第1取付け金具の上面視において、縦孔15a等が長軸上に位置し、かつ、横孔15b等が長軸に沿う位置に形成されても良く、縦孔15a等が短軸上に位置し、かつ、横孔15b等が短軸に沿う位置に形成されても良い。前者の場合には、第1取付け金具の剛性を確保でき、後者の場合には、第1取付け金具への連通口15等の形成コストを低減できる。
ここで、上記各実施の形態において説明した比較的小振幅の振動としては、例えば、0.05mm〜0.3mmの振幅の振動が、比較的大振幅の振動としては、例えば、0.3mm〜1.5mmの振幅の振動が、比較的高周波数の振動としては、例えば、100Hz以上の振動が、それぞれ例示される。なお、比較的小振幅の振動は、例えば、アイドル状態における振動(問えば、20Hz〜40Hz)が想定され、比較的大振幅の振動は、例えば、走行中のシェイク振動(例えば、10Hz〜20Hz)が想定される。また、比較的高周波数の振動は、上記振幅よりも更に小振幅の振動となる。
また、請求項に記載の振幅依存付与手段としては、例えば、上記第1から第8実施の形態では、凹部14及び変位規制部材30が、第3から第5実施の形態では、メンブレン部材320,420,520(球状部320a、蛇腹状形状または布状体520a)が、それぞれ該当する。