JP2012201577A - 水硬性組成物の硬化体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】グリセリンと、セメントと、水とを混合して得られた水硬性組成物の硬化体の製造方法であって、水硬性組成物の原料として硫酸イオンを含む物質を用い、且つ、硫酸イオンとグリセリンのモル比が硫酸イオン/グリセリンで5.0〜20であり、硫酸イオンの含有量がセメント100重量部に対して3.0〜15重量部である水硬性組成物を得る工程1、及び工程1で得られた水硬性組成物を養生して硬化させる工程2を含む、水硬性組成物の硬化体の製造方法。
【選択図】なし
Description
硫酸イオンとグリセリンのモル比が硫酸イオン/グリセリンで5.0〜20であり、硫酸イオンの含有量がセメント100重量部に対して3.0〜15重量部である水硬性組成物を得る工程1、及び
工程1で得られた水硬性組成物を養生して硬化させる工程2
を含む、水硬性組成物の硬化体の製造方法に関する。
水硬性組成物中の硫酸イオンの含有量がセメント100重量部に対して3.0〜15重量部であり、
水硬性組成物中の硫酸イオンとグリセリンのモル比が硫酸イオン/グリセリンで5.0〜20である、
水硬性組成物に関する。
本発明に係る水硬性組成物は、グリセリンと、セメントと、水とを混合して得られたものであり、且つ水硬性組成物の原料として硫酸イオンを含む物質が用いられている。かかる水硬性組成物は、硫酸イオン(セメント由来を含む)を含むものである。
C3S:3CaO・SiO2 エーライト
C2S:2CaO・SiO2 ビーライト
C3A:3CaO・Al2O3 カルシウムアルミネート
C4AF:4CaO・Al2O3・Fe2O3 カルシウムアルミノフェライト
CaSO4:硫酸カルシウム 石膏(当業界では三酸化硫黄に換算して示されることが多い。)
CaCO3:炭酸カルシウム
CaO:酸化カルシウム
MgO:酸化マグネシウム
セメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、エコセメント(例えばJIS R5214等)が挙げられる。
本発明ではセメントに含まれている硫酸イオン以外に、8時間強度及び24時間強度を向上する観点から、工程1で、硫酸塩を更に混合して硫酸イオンの量、更には硫酸イオンとグリセリンのモル比、を調整することができる。従って、本発明では、水硬性組成物の原料である硫酸イオンを含む物質として、硫酸塩を用いることができる。
水硬性組成物中の硫酸イオンの含有量は、8時間強度を向上する観点及び経済性の観点から、セメント100重量部に対して、3.0〜15重量部であり、3.0〜10重量部がより好ましく、3.0〜6.0重量部が更に好ましく、3.0〜5.0重量部がより更に好ましく、3.0〜3.5重量部がより更に好ましい。ここでのセメントの量は、原料として用いたセメントの量である。
本発明に係る水硬性組成物は、8時間強度及び24時間強度を向上する観点から、グリセリンを含有する。
水硬性組成物中のグリセリンの含有量は、8時間強度および24時間強度を向上する観点から、セメント100重量部に対して0.15〜1.3重量部が好ましく、0.20〜1.0重量部がより好ましく、0.25〜0.80重量部が更に好ましく、0.30〜0.60重量部がより更に好ましい。グリセリンは、通常、セメントや骨材には含まれておらず、セメントや骨材以外の剤(又は材)の添加によりもたらされる。したがって、水硬性組成物中のグリセリンの含有量は、水硬性組成物の調製に用いたグリセリンの量から求めることができる。本発明では、8時間強度及び24時間強度を向上する観点から、工程1で、セメント(原料として用いるセメント)100重量部に対して、グリセリンを0.15〜1.3重量部、より好ましくは0.20〜1.0重量部、更に好ましくは0.25〜0.80重量部、より更に好ましくは0.30〜0.60重量部混合することが好ましい。
C3Aは、通常はセメント及びセメント以外の剤(又は材)の添加によりもたらされる。したがって、本発明では水硬性組成物中のC3Aの含有量はセメント中のC3Aの含有量と添加したC3Aを含むセメント以外の剤(又は材)から由来するC3Aの含有量から求めることができる。C3Aを含むセメント以外の剤(又は材)としてカルシウムアルミネート等が挙げられる。
水硬性組成物中の水の含有量は、コンクリートの場合、コンクリートを型枠に充填する際の、充填性を向上する観点から5重量%以上が好ましい。また、ブリージング水を抑えて、表面欠陥を少なくし、8時間強度及び24時間強度を向上する観点から、水硬性組成物中の水の含有量は、8重量%以下が好ましく、7.5重量%以下がより好ましく、7重量%以下が更に好ましい。したがって、これらの観点を総合すると、コンクリートの場合、水硬性組成物中の水の含有量は、5〜8重量%が好ましく、5〜7.5重量%がより好ましく、5〜7重量%が更に好ましい。
本発明では、8時間強度及び24時間強度を向上する観点から、水硬性組成物中の硫酸イオンとグリセリンのモル比が硫酸イオン/グリセリンで5.0〜20であり、8時間強度を向上する観点から、硫酸イオンとグリセリンのモル比(硫酸イオン/グリセリン)は5.0〜12が好ましく、6.0〜11がより好ましく、7.0〜10が更に好ましく、8.0〜9.5がより更に好ましい。
本発明に係る水硬性組成物は、セメント等の水硬性粉体の使用量を低減し材料コストを削減する観点から、更に骨材を含有することができる。骨材として細骨材や粗骨材等が挙げられ、細骨材は山砂、陸砂、川砂、砕砂が好ましく、粗骨材は山砂利、陸砂利、川砂利、砕石が好ましい。コンクリートの場合は、粗骨材の使用量は、水硬性組成物の強度の発現とセメント等の水硬性粉体の使用量を低減し、型枠等への充填性を向上する観点から、嵩容積50〜100%が好ましく、55〜90%がより好ましく、60〜80%が更に好ましい。また、細骨材の使用量は、型枠等への充填性を向上する観点から、好ましくは500〜1000kg/m3、より好ましくは600〜900kg/m3、更に好ましくは700〜900kg/m3である。モルタルの場合は、細骨材の使用量は、好ましくは、800〜2000kg/m3、より好ましくは900〜1800kg/m3、更に好ましくは1000〜1600kg/m3である。用途によっては、軽量骨材を使用してもよい。なお、骨材の用語は、「コンクリート総覧」(1998年6月10日、技術書院発行)による。
セメント種として、セメント(C1)を用いたコンクリートの試験を行った(表1、2)。
セメント種として、セメント(C2)を用いたコンクリートの試験を行った(表1、3)。
セメント種として、セメント(C3)を用いたモルタルの試験を行った(表4、5)。
セメント種として、セメント(C4)を用いたモルタルの試験を行った(表4、6)。
セメント種として、セメント(C1)を用い、種々のグリセリンを用いたコンクリートの試験を行った(表1、7)。
(1−1)コンクリート及び供試体の調製
(工程1)
表1〜表3、表7に示す配合条件で、コンクリートミキサーを用いて、セメント、細骨材、粗骨材、グリセリン、二水石膏(CaSO4(2H2O))を投入し空練りを10秒間行い、目標スランプ21±1cm、目標空気連行量2±1%となるようAE剤、消泡剤を含む練り水と、セメント100重量部に対して分散剤1重量部(固形分で0.4重量部)とを加え、90秒間本練りし(回転数45rpm)、コンクリートを得た。グリセリン及び二水石膏の添加量、並びにセメント中の硫酸カルシウム量から計算した硫酸イオンとグリセリンのモル比を表2、表3及び表7に示した。
JIS A 1132に基づき、円柱型プラモールド(底面の直径:10cm、高さ20cm)の型枠に、二層詰め方式によりコンクリートを充填し、20℃にて気中養生を行い、供試体を得た。
・グリセリン:精製グリセリン(花王(株)製、ヤシ由来の油脂のエステル交換で得られたグリセリン)
・二水石膏:二水石膏(和光純薬工業(株)製、和光一級)
・AE剤:AE02(花王(株)製)
・消泡剤:消泡剤No.21 (花王(株)製)
・分散剤:マイテイ150(花王(株)製、ナフタレン系重合体、固形分40重量%)
・練り水(W):AE剤、消泡剤を含む水道水
・セメント(C1):普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント(株)製)、密度3.16g/cm3、セメント中の硫酸カルシウム相当量、C3Aの含有量は、表2中に示す。
・セメント(C2):普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント(株)製)、密度3.16g/cm3、セメント中の硫酸カルシウム相当量、C3Aの含有量は、表3中に示す。
・細骨材(S1):砕砂(石川県河内村産 安山砕砂)、密度2.55g/cm3
・細骨材(S2):陸砂(石川県内難産 浜系陸砂)、密度2.55g/cm3
・粗骨材(G1):砕石(石川県河内村産 砕石1505)、密度2.55g/cm3
・コンクリートミキサー:IHI社製 強制2軸ミキサー、35リッター練り
・粗かん水(牛脂):牛脂の加水分解によって得られたグリセリン水溶液(固形分12.4重量%)
・粗かん水(植物):植物油脂の加水分解によって得られたグリセリン水溶液(固形分16.6重量%)
・粗かん水(動植物混合):粗かん水(牛脂)と粗かん水(植物)の混合品(固形分12.6重量%)
・粗かん水(蒸発品):粗かん水(動植物混合)中の水を蒸発させ、濃縮したもの(固形分50.2重量%)
・精製かん水:粗かん水(蒸発品)を炭処理およびイオン交換処理し微量不純物を除去したもの(固形分99.1重量%)
(工程1)
表4〜表6に示す配合条件で、モルタルミキサーを用いて、セメント、細骨材、グリセリンを投入し空練りを10秒間行い、空気連行量が2%以下になるように消泡剤を含む練り水と、セメント100重量部に対して固形分換算で分散剤0.48重量部を加え、回転数63rpmで1分間、回転数128rpmで2分間本練りし、モルタルを得た。グリセリンの添加量、並びにセメント中の硫酸カルシウム量から計算した硫酸イオンとグリセリンのモル比を表5及び表6に示した。
JIS A 1132に基づき、円柱型プラモールド(底面の直径:10cm、高さ20cm)の型枠に、二層詰め方式によりモルタルを充填し、20℃にて気中養生を行い、供試体を得た。
・グリセリン:精製グリセリン(花王(株)製)
・消泡剤:消泡剤No.21(花王(株)製)
・分散剤:マイテイ150(花王(株)製、ナフタレン系重合体)
・練り水(W):消泡剤を含む水道水
・セメント(C3):ポルトランドセメント(CEM I42,5、Heidelberger製)、密度3.15g/cm3、セメント中の硫酸カルシウム相当量、C3Aの含有量は、表5に示す。
・セメント(C4):ポルトランドセメント(サイアムセメント製)、密度3.15g/cm3、セメント中の硫酸カルシウム相当量、C3Aの含有量は、表6に示す。
・細骨材(S1):城陽産 山砂、密度2.55g/cm3
・モルタルミキサー:ダルトン社製、万能混合撹拌機、型式:5DM−03−γ
(2−1)セメント中の硫酸カルシウムの定量
セメント中の硫酸カルシウム(CaSO4)の定量は、粉末X線装置、RINT-2500((株)リガク製)を使用して行った。測定条件は、ターゲットCuKα、管電流40mA、管電圧200kV、走査範囲5〜70deg.2θ、走査条件はステップ走査、ステップ幅0.02°、計数時間2秒とした。
セメント中のC3Aの定量は、解析対象鉱物C3Aとした以外は、硫酸カルシウムの定量と同様の方法で行った。
コンクリートまたはモルタル中の硫酸イオンの含有量は、硫酸イオンを与える化合物がセメントと添加した二水石膏のみであることから、セメントの分析から求めた硫酸カルシウムの量と、添加した二水石膏の量の和から求めた。
コンクリートまたはモルタル中のグリセリン含有量は、水硬性組成物の調製に用いたグリセリンの量から計算した。
コンクリートまたはモルタルについて、以下に示す試験法にしたがって、脱型強度を評価した。評価結果を表2、3及び5〜7に示した。
コンクリートまたはモルタル調製から8時間後に硬化した供試体を型枠から脱型し、JIS A 1108に基づいて、圧縮強度を測定し、8時間強度とした。また、8時間後の脱型までを8時間強度の測定と同様に行い、脱型後、更に24時間までは20℃で気中に保存した後、JIS A 1108に基づいて、圧縮強度を測定し、24時間強度とした。圧縮強度は、基準品の強度に対する相対値を強度比(%)として表2、3及び5〜7に記載した。基準と示した比較品は、表2、3、7では、グリセリン、二水石膏を添加せず、AE剤、消泡剤と分散剤のみを添加した系である(比較例1−1、比較例2−1)また、表5、6では、グリセリンを添加せず、消泡剤と分散剤のみを添加した系である(比較例4−1、比較例5−1)。なお、硫酸イオンの含有量及びモル比は、硫酸イオン(SO4 2-)の分子量を96として計算した値である。また、表2、3及び5〜7のグリセリンの添加量は、固形分換算である。
Claims (9)
- グリセリンと、セメントと、水とを混合して得られた水硬性組成物の硬化体の製造方法であって、水硬性組成物の原料として硫酸イオンを含む物質を用い、且つ、
硫酸イオンとグリセリンのモル比が硫酸イオン/グリセリンで5.0〜20であり、硫酸イオンの含有量がセメント100重量部に対して3.0〜15重量部である水硬性組成物を得る工程1、及び
工程1で得られた水硬性組成物を養生して硬化させる工程2
を含む、水硬性組成物の硬化体の製造方法。 - 工程1において、硫酸塩を更に混合する、請求項1記載の硬化体の製造方法。
- 工程1において、セメント100重量部に対してグリセリンを0.15〜1.3重量部混合する請求項1又は2に記載の硬化体の製造方法。
- セメントがカルシウムアルミネート(以下C3Aと表記する)を含み、水硬性組成物中のC3Aの含有量が1.0〜2.5重量%である請求項1〜3のいずれかに記載の硬化体の製造方法。
- 工程2において、水硬性組成物が養生温度50℃以上で保持される時間が1時間以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の硬化体の製造方法。
- グリセリンと、セメントと、水とを混合して得られた、硫酸イオンを含む水硬性組成物であって、
水硬性組成物中の硫酸イオンの含有量がセメント100重量部に対して3.0〜15重量部であり、
水硬性組成物中の硫酸イオンとグリセリンのモル比が硫酸イオン/グリセリンで5.0〜20である、
水硬性組成物。 - 更に、硫酸塩を添加してなる請求項6記載の水硬性組成物。
- 水硬性組成物中のグリセリンの含有量がセメント100重量部に対して0.15〜1.3重量部である請求項6又は7に記載の水硬性組成物。
- セメントがC3Aを含み、水硬性組成物中のC3Aの含有量が1.0〜2.5重量%である請求項6〜8のいずれかに記載の水硬性組成物。
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