JP6564293B2 - 水硬性組成物用早強剤 - Google Patents
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本発明に用いられるスクアリン酸又はその塩は、強酸であるオキソカーボン酸の一種であるが、特異的に、セメントと水との混練時には、セメントに含まれる鉱物の1つであるC3S(3CaO・SiO2、エーライト)の水和を促進し、水和反応速度が高められ早期にセメント硬化体の強度を向上させると推定される。
C3Sの水和反応促進効果は、添加した塩のうち、陰イオンの極限モル伝導率と高い相関関係にあることが知られている。また、極限モル伝導率が高い陰イオンほど拡散速度が速く、陰イオンと水酸化物イオンとの相互拡散作用によって、C3Sの溶出反応速度を高めることが知られている。(近藤連一他:セメント技術年報29 pp.57-60(1975))
また、塩酸や硫酸等の酸乖離定数が小さい強酸は拡散速度が速く、酢酸等の弱酸は拡散速度が遅いことから、酸乖離定数が小さい酸ほど拡散速度が速い傾向にあることが推察できる。スクアリン酸は分子中にエンジオール構造を有しており、共鳴構造を取ることによって水溶液中ではアニオンとして存在することが可能であり、低い酸乖離定数を有することが知られている。(Robert I. Gelb:Anal. Chem,43(8),pp.1110-1113(1971))以上の事から、強酸であるスクアリン酸は速い拡散速度を有することによってC3Sの溶出反応を高めていると推察している。
本発明の水硬性組成物用早強剤は、スクアリン酸又はその塩からなる。
スクアリン酸のアルカリ土類金属塩としては、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩等が挙げられ、スクアリン酸の2つの水酸基中の酸素原子が1つのアルカリ土類金属に結合した塩となる。具体的には、スクアリン酸マグネシウム、スクアリン酸カルシウム、スクアリン酸ストロンチウム等が挙げられる。
スクアリン酸のアルミニウム塩としては、トリスクアリン酸ジアルミニウム等が挙げられる。
スクアリン酸の鉄塩としては、トリスクアリン酸ジ鉄やスクアリン酸鉄等が挙げられる。
スクアリン酸のアンモニウム塩としては、スクアリン酸ジアンモニウム等が挙げられる。
スクアリン酸の有機アンモニウム塩としては、モノメチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、モノエタノールアンモニウム塩、ジエタノールアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩、N-メチルジエタノールアンモニウム塩、N-エチルジエタノールアンモニウム塩、イソプロパノールアンモニウム塩、ジイソプロパノールアンモニウム塩、トリイソプロパノールアンモニウム塩、1-[ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-プロパノール塩、2-[ビス(2-ヒドロキシプロピル)アミノ]エタノール塩、エチレンジアンモニウム塩、N,N,N,N-テトラ(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアンモニウム塩等が挙げられる。
17時間強度の向上の観点から、スクアリン酸のアルカリ金属塩が好ましく、スクアリン酸ナトリウムが好ましい。
また、中和度1にする量よりも多い量、すなわちスクアリン酸に対して過剰量の中和剤を使用してもよく、例えば、中和剤を、スクアリン酸1当量に対して、好ましくは1当量超、そして、好ましくは2当量以下、より好ましくは1.5当量以下で使用してもよい。このような、過剰量の中和剤を使用した混合物であっても、本発明の効果を損なわない限り、そのまま本発明の水硬性組成物用早強剤として使用することができる。
水溶液または水分散体である場合、スクアリン酸又はその塩が、酸型化合物換算で、0.1質量%以上で含有することが好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、また50質量%以下が好ましく、40質量%以下が更に好ましい。
本発明の水硬性組成物用早強剤組成物におけるスクアリン酸又はその塩の好ましい態様は、前記した本発明の水硬性組成物用早強剤におけるスクアリン酸又はその塩と同じである。
本発明の水硬性組成物用添加剤組成物は、本発明の水硬性組成物用早強剤と、分散剤とを含有する。すなわち、水硬性組成物用添加剤組成物は、スクアリン酸又はその塩と、分散剤とを含有する。本発明の水硬性組成物用添加剤組成物におけるスクアリン酸又はその塩の好ましい態様は、前記した本発明の水硬性組成物用早強剤におけるスクアリン酸又はその塩と同じである。
R1、R2:それぞれ独立に、水素原子又はメチル基
m1:0以上2以下の整数
AO:炭素数2又は3のアルキレンオキシ基
n1:AOの平均付加モル数であって、4以上300以下の数
X:水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基
を示す。〕
R3、R4、R5:それぞれ独立に、水素原子、メチル基、又は(CH2)m2COOM2
M1、M2:それぞれ独立に、対イオンを示し、水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン(1/2イオン)、有機アンモニウムイオン、又はアンモニウムイオン、
m2:0以上2以下の整数
を示す。〕
AOは、17時間強度の向上の観点から、炭素数2のアルキレンオキシ基及び炭素数3のアルキレンオキシ基から選ばれるアルキレンオキシ基であり、炭素数2のアルキレンオキシ基が好ましい。
nは、AOの平均付加モル数であり、4以上300以下の数である。nは、凝結遅延を抑制する観点と17時間強度の向上の観点から、100以上が好ましく、105以上がより好ましく、110以上が更に好ましく、共重合の容易性の観点と17時間強度の向上の観点から、200以下が好ましく、150以下がより好ましい。nは、水硬性組成物の粘性を低減する観点と17時間強度の向上の観点から、4以上が好ましく、8以上がより好ましく、そして、50以下が好ましく、30以下がより好ましい。
Xは、水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、水硬性組成物の流動保持性の観点と17時間強度の向上の観点から、水素原子又はメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
*ゲルパーミエーションクロマトグラフィー条件
装置:GPC(HLC−8320GPC)東ソー株式会社製
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー株式会社製)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH3CN=9/1
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:RI
サンプルサイズ:0.2mg/mL
標準物質:ポリエチレングリコール換算(分子量87500、250000、145000、46000、24000)
本発明の水硬性組成物用添加剤組成物は、分散剤を、17時間強度の向上の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、また、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下含有する。
なお、本発明の水硬性組成物用添加剤組成物は、スクアリン酸又はその塩と分散剤とからなる水硬性組成物用添加剤組成物であってよい。この場合のスクアリン酸又はその塩/分散剤の質量比は前記範囲が好ましい。
水溶液または水分散体である場合、本発明の水硬性組成物用添加剤中のスクアリン酸又はその塩が、酸型化合物換算で、0.1質量%以上で含有することが好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、また50質量%以下が好ましく、40質量%以下が更に好ましい。
本発明の水硬性組成物は、水硬性粉体と、水と、本発明の水硬性組成物用早強剤とを含有する。すなわち、本発明の水硬性組成物は、水硬性粉体と、水と、スクアリン酸又はその塩とを含有する。
また本発明の水硬性組成物は、水硬性粉体と、水と、本発明の水硬性組成物用早強剤と、分散剤とを含有する。すなわち、本発明の水硬性組成物は、水硬性粉体と、水と、スクアリン酸又はその塩と、分散剤とを含有する。
また、本発明の水硬性組成物におけるスクアリン酸又はその塩の好ましい態様は、前記した本発明の水硬性組成物用早強剤と同じである。
当該含有量は、酸型化合物換算(スクアリン酸換算)で0.01質量部以上がより好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、0.4質量部以上が更に好ましく、0.9質量部以上が更に好ましい。また、4.5質量部以下がより好ましく、3.0質量部以下が更に好ましい。
分散剤は、あらかじめスクアリン酸又はその塩と混合して用いることが好ましい。
また、水硬性組成物用早強剤は、早強剤の添加等との作業性の観点から、予め水と混合して水溶液として用いることもできる。すなわち、水と水硬性組成物用早強剤と分散剤とを含有する混合物を、水硬性粉体と混合することが好ましい。
また、水硬性組成物がモルタルの場合、細骨材の使用量は、800kg/m3以上が好ましく、900kg/m3以上がより好ましく、1000kg/m3以上が更に好ましく、そして、2000kg/m3以下が好ましく、1800kg/m3以下がより好ましく、1700kg/m3以下が更に好ましい。
本発明の硬化体の製造方法は、本発明の水硬性組成物を型枠に充填し養生し硬化させる工程と、硬化した前記水硬性組成物を脱型する工程、とを有する。
より具体的には、次の工程1〜工程5を含む水硬性組成物の硬化体の製造方法が挙げられる。
(工程1)水と、スクアリン酸又はその塩からなる水硬性組成物用早強剤とを混合する工程。
(工程2)工程1で得られた混合物と水硬性粉体と骨材とを混練して水硬性組成物を得る工程であって、前記混合物中のスクアリン酸又はその塩が水硬性粉体100質量部に対し0.01質量部以上4.5質量部以下となるように前記混合物を用いる、工程。
(工程3)工程2で得られた水硬性組成物を型枠に充填する工程。
(工程4)工程3で得られた型枠に充填された水硬性組成物を、50℃以上に保持される時間が1時間以下の条件で蒸気養生し、硬化させる工程。
(工程5)工程4で得られた硬化体を型枠から脱型する工程。
なお、型枠に充填された水硬性組成物を50℃以上に保持して養生を行う場合、オートクレーブ養生、蒸気等の加熱養生を行うことができる。
・スクアリン酸:東京化成工業株式会社製
・スクアリン酸ジナトリウム:スクアリン酸(東京化成工業(株)製)1モルに対して水酸化ナトリウム(48%水酸化ナトリウム水溶液、南海化学(株)製)2モルを、練り水用の水中で中和したもの。
・スクアリン酸トリエタノールアンモニウム塩:スクアリン酸(東京化成工業(株)製)1モルに対してトリエタノールアミン(関東化学(株)製)0.8モルを、練り水用の水中で中和したもの。
・スクアリン酸カルシウム:スクアリン酸(東京化成工業(株)製)1モルに対して水酸化カルシウム(シグマアルドリッチジャパン(株)製)1モルを、練り水用の水中で中和したもの。
・スクアリン酸モノナトリウム:スクアリン酸(東京化成工業(株)製)1モルに対して水酸化ナトリウム(48%水酸化ナトリウム水溶液、南海化学(株)製)1モルを、練り水用の水中で中和したもの。
・クロコン酸ジナトリウム:クロコン酸(東京化成工業(株)製)1モルに対して水酸化ナトリウム(48%水酸化ナトリウム水溶液、南海化学株式会社製)2モルを、練り水用の水中で中和したもの。
・W:練り水(セメント分散剤と早強剤とを含む水道水)
・C:普通ポルトランドセメント、太平洋セメント株式会社製、密度3.16g/cm3
・S:細骨材、城陽産、山砂、FM=2.67、密度2.56g/cm3
(1)モルタル調製工程
表2の早強剤と水とを混合した練り水(W)を調製した。前記早強剤は、表2の添加量となるように添加した。練り水中の早強剤の量は相対的に微量であるため、早強剤と水の合計を表1の練り水(W)の量にした。なお、表2では、スクアリン酸又はその塩と、比較化合物とを早強剤とした。
JIS A 1132に基づき、円柱型プラモールド(底面の直径:5cm、高さ10cm)の型枠3個に、それぞれ二層詰め方式によりモルタルを充填し、20℃の室内にて気中(20℃)養生を行い硬化させた。モルタル調製から17時間後に硬化した供試体を型枠から脱型し供試体を得た。これらの内3個の供試体を17時間後の圧縮強度の測定に用いた。
供試体の17時間強度をJIS A1108に基づいて測定し、供試体3個の平均値を求めた。結果を表2に示した。
Claims (5)
- スクアリン酸又はその塩からなる水硬性組成物用早強剤。
- スクアリン酸塩が、スクアリン酸のアルカリ金属塩、スクアリン酸のアルカリ土類金属塩、スクアリン酸のアンモニウム塩及びスクアリン酸の有機アンモニウム塩から選ばれる1種以上の塩である、請求項1記載の水硬性組成物用早強剤。
- 請求項1又は2記載の水硬性組成物用早強剤と、分散剤とを含有する、水硬性組成物用添加剤組成物。
- 水硬性粉体と、水と、請求項1又は2記載の水硬性組成物用早強剤とを含有する、水硬性組成物。
- 水硬性粉体と、水と、請求項1又は2記載の水硬性組成物用早強剤と、分散剤とを含有する、水硬性組成物。
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