JP2012200132A - 発電装置及び電子機器 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡易な構成で効率よく発電できる発電装置と、その発電装置を備えた電子機器を実現する。
【解決手段】対向して配置された一対の電極11、21と、一対の電極11、21間にその一対の電極11、21と離間して配されるとともに、一対の電極11、21を通る直交軸に沿った方向に移動可能に備えられたエレクトレット膜31とを備えた発電装置100において、エレクトレット膜31の移動に応じた静電誘導により一対の電極11、21に誘導された電荷を取り出すための配線51、52を、固定されている電極11、21に接続する構成にした。
【選択図】図1

Description

本発明は、発電装置及びそれを用いた電子機器に関する。
従来、短冊状のエレクトレットと櫛歯状の動作電極を対向させて配置し、エレクトレットに対して動作電極が水平方向に振動することで、静電誘導による発電を可能にした静電誘導型の発電装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この発電装置では、図9(a)に示すように、エレクトレット3と動作電極1とが近接すると動作電極1に電荷が誘導され、その状態から動作電極1とエレクトレット3を水平方向に相対移動させると、図9(b)に示すように、動作電極1の誘導電荷量が変化し、その変化分が外部回路(負荷R)に電流として出力されるようになっている。
特開2006−180450号公報
しかしながら、上記従来技術の場合、エレクトレット3が下地電極2上に形成されているため、エレクトレット3の電荷から発する電気力線の大半が下地電極2に向かってしまう。よって、肝心な動作電極1にはごく一部しか向かわないため、動作電極1に誘導される電荷は下地電極2に比べて非常に少なく、エレクトレット3の表面電荷を有効に利用できていないという問題があった。
具体的には、図10に示すように、エレクトレット3の表面電荷密度をσ、動作電極1に誘導される電荷密度をσ1、下地電極2に誘導される電荷密度をσ2とすると、動作電極1とエレクトレット3が最接近して正面で対向した際の動作電極1と下地電極2に誘導される電荷密度はそれぞれ、下記の式で表される。
σ1=−σ・(d’)/(d+d’)
σ2=−σ・(d)/(d+d’)
’=d/ε
(εは、エレクトレットの比誘電率)
通常のエレクトレット3の膜厚dは、動作電極1との距離dに比べて遥かに小さい。例えば、d=10μm、d=100μm、またε=2とすると、大気中において、σ1≒−0.05σ、σ2≒−0.95σとなる。この例では、動作電極1に誘導される電荷は下地電極2に誘導される電荷の約1/19となる。
このように、下地電極2に誘導される電荷に比べて、実際に発電に寄与する動作電極1に誘導される電荷が少なく、エレクトレット3の表面電荷が有効に利用されていないことがわかる。
また、この発電装置から取り出すことができる最大電力Pmaxは下記の一般式(1)で表され、その出力はエレクトレット3の表面電荷密度σの2乗に比例している。
また、エレクトレット3の表面電荷密度σは、下記の一般式(2)で表され、エレクトレット3の表面電位Vに比例している。
ゆえに、発電量はエレクトレット3の表面電位を高めるほど多くなる。
Figure 2012200132
σ:エレクトレットの表面電荷密度
n:極数すなわちエレクトレットの数
A:動作電極とエレクトレットが重なる最大面積
f:動作電極の往復運動の周波数
:エレクトレットの厚さ
:エレクトレットと動作電極との距離
ε:エレクトレットの比誘電率
ε:真空の比誘電率
V:エレクトレットの表面電位
しかし、従来技術のように、エレクトレット3を短冊状に細線化して配線密度を高めると、コロナ放電によって電子をエレクトレット3に打ち込む際に、エッジ効果によって短冊状のエレクトレット3の端部の電界が強くなり、電子が反発する。よって、エレクトレット3が帯電し難くなり、エレクトレット3に高い表面電位を与えられず発電量を上げることが難しいという問題があった。
さらに、従来技術のエレクトレット発電装置(静電誘導型発電装置)には、次のような問題点もあった。
・動作電極1を櫛歯状にするため誘導電荷を発生させる動作電極1のエレクトレット3と対向する面の表面積が小さくなり、装置面積に対する発電効率が悪い。
・振動して動く動作電極1から配線を引き出す必要があり、安定して電力を取り出すために装置構造が複雑になる。
・一般式(1)(2)からもわかるように、エレクトレット3と動作電極1の間のギャップ(d)は狭い方が発電には効果的であるが、ギャップを狭くするほどエレクトレット3と動作電極1の間の静電吸着力が大きくなるため、エレクトレット3と動作電極1とが接触しないようにギャップを精度よく維持する機構が必要となり、装置構造が複雑になる。
本発明の目的は、簡易な構成で効率よく発電できる発電装置と、その発電装置を用いた電子機器を提供することである。
上記課題を解決するため、本発明の発電装置は、
対向して配置された一対の電極と、
前記一対の電極間に当該一対の電極と離間して配されるとともに、前記一対の電極を通る直交軸の方向に移動可能に備えられたエレクトレット部材と、
を備えていることを特徴としている。
また、本発明の電子機器は、上記発電装置が発電した電力を蓄えるバッテリーを備え、前記バッテリーに蓄えられた電力を用いて動作することを特徴としている。
また、本発明の電子機器は、上記発電装置が発電した電力を蓄えるバッテリーと、前記バッテリーで蓄えられた電力を他の電子機器に供給する電力出力部と、を備えていることを特徴としている。
本発明によれば、簡易な構成の発電装置で効率よく発電できる。
本発明の実施形態に係る発電装置を示す分解斜視図である。 図1のII−II切断線から見た発電装置を示す縦断面図である。 図1のIII−III切断線から見た発電装置を示す横断面図である。 発電装置を示す説明図であり、エレクトレット膜の振動(a)と、エレクトレット膜の振動に応じた電荷の移動(b)を示している。 発電装置の発電量を説明するための説明図である。 発電装置の変形例を示す横断面図である。 発電装置の変形例を示す縦断面図である。 発電装置の変形例を示す縦断面図である。 従来の発電装置を示す説明図であり、電荷が誘導された状態(a)と、誘導された電荷が外部負荷に流れる状態(b)を示している。 従来の発電装置の発電量を説明するための説明図である。 本発明の発電装置を用いた腕時計の概略構成を示す平面図である。 本発明の発電装置を用いた携帯電話の概略構成を示す平面図である。 本発明の発電装置を用いた発電マットの概略構成を示す平面図である。 図13のXIV−XIV切断線から見た発電マットの概略構成を示す断面図である。
以下、本発明に係る発電装置の詳細について説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
図1は、本発明に係る発電装置を示す分解斜視図である。図2は、図1のII−II切断線に沿った発電装置を示す縦断面図である。図3は、図1のIII−III切断線に沿った発電装置を示す横断面図である。
発電装置100は、図1〜図3に示すように、一対の固定基板である上基板10及び下基板20と、その上基板10及び下基板20を所定間隔に保持するように四方側面に配された保持部材である4つの側面板40と、を備えて略直方体形状を呈する筐体を外枠(フレーム)に有する装置である。
上基板10と下基板20と側面板40とは、絶縁性の材料からなる板状部材であり、本実施形態では、上基板10と下基板20と側面板40とにより筐体内部に湿気が入らない密閉構造体を形成するように組み付けられている。
この発電装置100は、対向して配置された一対の電極11、21を備えている。一方の電極11は上基板10の下面(内面側)に設けられ、他方の電極21は下基板20の上面(内面側)に設けられており、対を成す上基板10及び下基板20が一対の電極11、21を支持している。一対の電極11、21はそれぞれ矩形形状を呈する電極である。
また、上基板10の下面に配設されている一方の電極11の表面(内面側)には、放電防止膜12が設けられている。放電防止膜12は、絶縁性の材料からなるフィルム状部材である。なお、放電防止膜12は電極11からの気中放電を好適に防止するため、ピンホールの無い絶縁性フィルム材料である。
また、発電装置100における一方の電極11には、電極11に誘導された電荷を取り出すための配線51が接続されており、他方の電極21には、電極21に誘導された電荷を取り出すための配線52が接続されている(図4(a)参照)。
また、発電装置100は、一対の電極11、21間にその一対の電極11、21と離間して配されるとともに、一対の電極11、21を通る軸に沿う方向、即ち図2に示すように、電極11が備える面のうち電極21に対向する面及び電極21が備える面のうち電極11に対向する面に直交する軸A(直交軸)の方向に移動可能に備えられたエレクトレット膜31を備えている。エレクトレット膜31は、上基板10と下基板20の間に配されている可動基板30の上面に設けられており、可動基板30がエレクトレット膜31を支持している。
可動基板30は、絶縁性の材料からなる板状部材である。また、略矩形の可動基板30の周縁に対して突出する平面形状が略三角形状、より好ましくは立体形状が略円錐形状であるように突き出た突片30aが各辺2つずつ一体的に形成されている。
エレクトレット膜31は、例えば、コロナ放電により注入された正電荷や負電荷を半永久的に保持することができる電荷保持材料からなり、矩形形状を呈する部材である。
このエレクトレット膜31として使用可能な電荷保持材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)、及びポリビニルフルオライド(PVF)のような高分子電荷保持材料や、シリコン酸化物(SiO)及びシリコン窒化物(SiN)のような無機電荷保持材料を挙げることができる。
具体的には、旭硝子株式会社製「サイトップ(CYTOP)」などを、本発明のエレクトレット膜31に適用できる。
また、発電装置100の上基板10及び下基板20と可動基板30には、同じ極が向き合うように、それぞれ基板の四隅に磁石Mが備えられている。各磁石Mは、各基板に交換可能に備えられている。
具体的に、可動基板30の四隅には、上基板10側にS極、下基板20側にN極を向けた磁石Mが設けられている。各磁石Mは、可動基板30に形成されている取付孔に埋め込まれており、可動基板30とほぼ面一に配設されている。
また、上基板10の四隅には、可動基板30側にS極を向けた磁石Mが設けられている。各磁石Mは、上基板10に形成されている取付孔に埋め込まれており、上基板10とほぼ面一に配設されている。
また、下基板20の四隅には、可動基板30側にN極を向けた磁石Mが設けられている。各磁石Mは、下基板20に形成されている取付孔に埋め込まれており、下基板20とほぼ面一に配設されている。
そして、磁石Mの反発力によって可動基板30が上基板10及び下基板20から浮遊しており、可動基板30に設けられているエレクトレット膜31が、一対の電極11、21を通る軸の方向に移動し振動するように構成されている。
なお、可動基板30に設けられた複数(本実施形態では8つ)の突片30aのうち、何れかの突片30aの先端が側面板40の内面に当接しており、この可動基板30は側面板40に点接触した状態で、上基板10と下基板20の間に浮遊している。尚、突辺30aの全ての突辺30aの先端が側面板40に点接触していてもよい。
このように構成された発電装置100に外部振動が作用すると、図4に示すように、磁石Mの反発力によって浮遊している可動基板30と一体のエレクトレット膜31が、一対の電極11、21を通る軸の方向に移動し振動するようになっている。
この可動基板30がエレクトレット膜31とともに上下に移動(振動)する際、可動基板30は側面板40と点接触するように極僅かに接触しているため、可動基板30と側面板40との間に摩擦は殆ど生じない。つまり、発電装置100に外部振動が作用した際、摩擦によって可動基板30の上下振動の動きが妨げられることがないので、微小な外部振動が可動基板30の上下振動に変換されるようになっている。
なお、可動基板30と側面板40の間の摩擦がより一層生じないようにするため、可動基板30と側面板40の少なくとも一方が、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))のような、摩擦係数の小さな絶縁材料で形成されていることが好ましい。
次に、本実施形態の発電装置100における発電のメカニズムについて説明する。
図4(a)に示すように、発電装置100に外部振動が作用することに伴い、磁石Mの反発力によって浮遊している可動基板30が上下に振動する。そして、可動基板30と一体のエレクトレット膜31が、一対の電極11、21を通る軸の方向に上下に移動するように振動する。
そして、図4(b)に示すように、発電装置100のエレクトレット膜31が負の電荷を保持している場合、エレクトレット膜31が上下に振動した際、近接した側の電極に正の電荷が静電誘導され、離れた側の電極では正の電荷が放電される。
具体的に、可動基板30と一体のエレクトレット膜31が上基板10側に近接した際、配線51を通じて電極11に正の電荷が静電誘導される。一方、下基板20側の電極21からは誘導された正の電荷が配線52を通じて放電されて外部負荷Rに電力が供給される。
同様に、可動基板30と一体のエレクトレット膜31が下基板20側に近接した際、配線52を通じて電極21に正の電荷が静電誘導される。一方、上基板10側の電極11からは誘導された正の電荷が配線51を通じて放電されて外部負荷Rに電力が供給される。
このように、エレクトレット膜31の振動に応じて誘導電荷量が変化し、その変化分を外部負荷R、Rに電流として取り出すことができる。なお、電極11と電極21とでは、電荷の誘導と放電が逆の動作となるため位相の反転した電流が取り出されることになる。
次に、本実施形態の発電装置100における発電量について説明する。
図5に示すように、エレクトレット膜31と電極11との距離d、エレクトレット膜31と電極21との距離d、エレクトレット膜31の厚みd、エレクトレット膜31の比誘電率εとし、エレクトレット膜31の電荷が膜の厚さ方向の中央に電荷密度σにて分布しているとすると、電極11の電荷密度σ1は、下記の一般式(3)で表される。
Figure 2012200132
このエレクトレット膜31が、角周波数ωで上下に振動しているとすると、ギャップd、dは、下記の一般式(4)(5)で表される。
Figure 2012200132
よって、電極11に誘導される電荷密度σ1は、下記の一般式(6)で表される。
Figure 2012200132
ここで、電極11の面積をSとすると、電極11に誘導される総電荷量Qは、下記の一般式(7)で表される。
=σ1・S ・・・(7)
そして、総電荷量Qを時間で微分したものが電極11に出入りする電流iとなる。
i=dQ/dt
∴i=−(σ/2)・S・ω・k・cos(ωt)
k=(d−d)/(d−d・(1−1/ε))
よって、出力電力Pは、下記の一般式(8)で表される。
P=i・R
=R・σ・S・ω・k・cos(ωt)/4 ・・・(8)
上記した一般式(8)から分かるように、発電装置100の電極11での発電量は、エレクトレット膜31の電荷密度σの2乗、電極面積Sの2乗、周波数ωの2乗に比例することが分かる。
また、発電装置100では、電極11と電極12の両方での発電が可能であるから、一般式(8)の2倍の発電量を得ることが期待できる。
以上のように、本発明に係る発電装置100は、一対の電極11、21から離間した可動基板30にエレクトレット膜31を備えているため、電荷が注入されて帯電しているエレクトレット膜31から発する電気力線の全てを電極11及び電極12に向かわせることができるので、エレクトレット膜31の表面電荷を有効に利用でき、発電効率を向上させることができる。
また、同一面積の可動基板上にエレクトレット膜を形成した、従来の発電装置と本発明の発電装置100とを比較した場合、本発明の発電装置100は、エレクトレット膜31を矩形形状としたことにより、短冊状に細線化したエレクトレットを用いる従来の発電装置に比べて、エレクトレット膜への電荷の打ち込み効率が高まり、表面電位を高くすることができ、発電能力を高めることができる。
また、同一面積の基板上に電極を形成した従来の発電装置と、本発明の発電装置100と、を比較した場合、本発明の発電装置100は、一対の電極11、21を矩形形状としたことによって、従来の櫛歯状の電極を備える従来の発電装置よりも電極面積を大きく取れるので、誘電電荷量が多くなり、発電能力を高めることができる。
また、エレクトレット膜31の上下に電極11、21を備えることにより、1つのエレクトレット膜31に対し、2倍の電極面積を確保できるので、発電能力を高めることができる。
また、磁石Mによる磁気浮遊力を利用してエレクトレット膜31を振動させる振動構造としたことにより、長期に亘って発電装置を使用する場合でも、その振動する周波数などは殆ど変化しないので、その振動構造の耐久性が上がり、長期間安定した発電を行うことが可能になる。
また、各基板に対して磁石Mを交換可能に備えているので、磁石Mを交換して磁石Mの磁力強度を変更することによって、可動基板30及びエレクトレット膜31が上下に振動する共振周波数を容易に変えることができる。そして、発電装置の設置箇所や用途に応じて適正な共振周波数に調整し、可動基板30及びエレクトレット膜31の振動を適正に調整することが可能になる。
例えば、通行人の歩行時の振動を発電に利用する場合、数Hzの振動周期に対応する磁石Mに交換し、また、高速道路などの高架を走行する自動車の振動を発電に利用する場合、20〜30Hzの振動周期に対応する磁石Mに交換することで、それぞれの振動条件に対応することができる。
また、エレクトレット膜31の移動に応じた静電誘導により一対の電極11、21に誘導された電荷を取り出すための配線51、52が、それぞれ電極11、21に接続されているので、従来技術の発電装置のように振動する電極から配線を引き出す必要がないため装置構造が簡単になり、電力を取り出しやすくなり発電の信頼性が向上する。
また、発電装置100を設置する場所が、例えば高速道路などの高架や鉄道の鉄橋などの鉄筋・鉄骨部分であれば、発電装置100に内蔵している磁石Mの磁力によって貼り付けて設置することができるので、固定冶具や接着剤などを使用する必要がなく、その設置作業が容易になる。
また、放電防止膜12を一対の電極11、21のそれぞれが備える内面側の面のうち、可動基板30を介さずにエレクトレット膜31と対向する面に設けたので、電極11からの気中放電を好適に防止することが出来る。また、振動が大きくなり過ぎたとしても、エレクトレット膜31が一方の電極に接触してしまうことを防ぐことができるので、エレクトリック膜と電極との接触によって電極に貯めた電荷を消滅させてしまうことを防ぐことができる。
このように、本発明に係る発電装置100は、簡易な構成で効率よく発電できる発電装置であるといえる。
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、図6に示す発電装置101のように、上基板10と下基板20を所定間隔に保持する保持部材が、上基板10と下基板20の四隅をそれぞれ繋ぐように設けられた4つの保持柱44である場合、その保持柱44に当接するように、略十字形状の可動基板33の縁から略三角形状(好ましくは略円錐形状)に突き出た突片30bを設けるようにしてもよい。
このような発電装置101であっても、可動基板33は保持柱44と点接触するように極僅かに接触しているため、可動基板33と保持柱44の間に摩擦は殆ど生じないので、発電装置101に外部振動が作用した際、摩擦によって可動基板33の上下振動の動きが妨げられることがなく、微小な外部振動も可動基板33に伝達され、可動基板33及びエレクトレット膜31の上下振動に変換されるようになっている。また、このような構成にすることで、一対の電極11、21の電極面積及びエレクトレット膜の表面積を広くとることが出来る。
また、図7に示す発電装置102のように、可動基板30の上下両面にエレクトレット膜31を設けてもよい。この場合、上基板10側の一方の電極11の表面(下面側)に設けた放電防止膜12と同様の放電防止膜22を、下基板20の上面に配設されている他方の電極21の表面(上面側)にも設ける。
このような発電装置102であれば、上下の電極11、21に対して、それぞれ同じ程度の距離にエレクトレット膜31が接近することができ、電極11と電極21での発電効率がほぼ同じになる。
また、図8に示す発電装置103のように、磁石Mによる磁気浮遊力を利用した振動構造ではなく、弾性部材としてのバネ部材であるコイルばねBで可動基板30及びエレクトレット膜31を弾性支持した振動構造としてもよい。コイルばねBには、任意の形状・素材を適用でき、例えば、絶縁材料からなるコイルばねを用いることができる。
このような発電装置103であれば、電極11とエレクトレット膜31の間にコイルばねBが介装されているため、電極11とエレクトレット膜31との間に一定以上の空気層が確保できる。この空気層によって放電が開始するほどにまで電極11とエレクトレット膜31とが近づくことがなく、放電を防止することができる。よって放電防止膜12は不要となる。
なお、以上の実施の形態においては、上基板10及び下基板20と可動基板30との四隅に磁石Mを備えるようにしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、磁石Mの数や形状は任意である。また、磁石Mを各基板に埋め込まずに、その表面に貼り付けてもよい。
また、エレクトレット膜31は負電荷を保持していることに限らず、正電荷を保持していてもよい。また、エレクトレット膜31の一方の面に負電荷、他方の面に正電荷を保持した両極性のエレクトレット膜であってもよい。
また、エレクトレット膜31の表面を覆う防湿膜を設けてもよい。エレクトレット膜31を防湿膜で被覆すれば、空気中の水分によりエレクトレット膜31の電荷が減衰してしまうことを低減することができ、発電効率が向上する。
また、エレクトレット膜31が適度な厚みを有し、適正な強度を有する板状部材である場合、可動基板30が不要になり、その板状のエレクトレット膜31に磁石Mを備えるようにしてもよい。
また、本実施形態では、一対の電極11、21及びエレクトレット膜31は矩形形状としたが、それに限らず例えば、それぞれを円板形状など種々の形状に成形してもよい。
また、エレクトレット膜31を一対の電極11、21を通る軸の方向に振動させることが出来れば、電極11、21はどのように配置してもかまわず、例えば、エレクトレット膜31を水平に移動するように振動させるものであっても良い。
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
次に、上記実施形態の発電装置を用いた電子機器を例示して説明する。
図11は、本発明の発電装置100を用いた電子機器としての腕時計200の概略構成を示す平面図である。
腕時計200は、図11に示すように、ケース201と、ケース201に繋がれたバンド202を備えている。そのケース201内に発電装置100、バッテリー500、時計モジュール203が搭載されている。発電装置100とバッテリー500と時計モジュール203とは電気的に接続されている。
このように、腕時計200に上記した発電装置100を搭載したので、腕時計200を身につけた人間が腕を振ることで発電装置100が発電し、発電した電力をバッテリー500に蓄え、バッテリーに蓄えられた電力を時計モジュール203に供給することができる。よって、使用中の腕時計200の電池切れを確実に防止できる。
図12は、本発明の発電装置100を用いた電子機器としての携帯電話300の概略構成を示す平面図である。
携帯電話300は、図12に示すように、ケース301と、ケース301の各部に設置された表示画面302、ダイヤルボタン303、マイク304及びイヤホン305を備えている。そして、ケース301内に発電装置100、バッテリー500及び携帯電話300を制御する制御回路が設けられた制御板(図示省略)が設けられている。発電装置100とバッテリー500と図示しない制御回路が設けられた制御板とは電気的に接続されている。
このように、携帯電話300に上記した発電装置100を搭載したので、携帯電話300を振ることで発電装置100が発電し、発電した電力をバッテリー500に蓄え、バッテリー500に蓄えられた電力を用いて携帯電話300を動作させることができる。よって、外部電源から充電することが出来ない場合であっても、内蔵している発電装置100によって携帯電話を充電することができる。
図13は、本発明の発電装置100を用いた電子機器としての発電マット400の概略構成を示す平面図である。図14は、図13のXIV−XIV切断線から見た発電マット400の概略構成を示す断面図である。
発電マット400は、図13、図14に示すように、マットの端部にケース部404が設けられており、そのケース部404内にバッテリー500と、プラグソケットやUSB接続部等の端子部405と、を有する電力出力部403を備えている。
また、発電マット400は、図14に示すように、布地部401と、布地部401の下部に配された発電装置設置部402を備えている。この発電装置設置部402内に発電装置100が複数台設置されている。
そして、ケース部404内のバッテリー500および電力出力部403と、発電装置設置部402内の発電装置100とが電気的に接続されている。発電装置100で発電した電力はバッテリー500に蓄えられる。
このように、発電マット400に上記した発電装置100を搭載したので、発電マット400上を人が歩くなどして生じる振動を電力に変換し、その発電した電力をバッテリー500に充電することができる。そして、バッテリー500に充電した電力は電力出力部403の端子部405を介して他の電子機器に供給することができる。
つまり、この発電マット400を、人の往来がある場所に設置することで自然と発電でき、発電した電力を蓄電することが可能となる。また、発電マット400は、持ち運びが容易であるので、効率よく発電が出来る場所に簡単に配置しなおすことができる。尚、人の歩行時の振動を発電に利用することになるので、発電装置100には、数Hzの振動周期に対応する磁石Mを利用すると良い。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
[付記]
[請求項1]
対向して配置された一対の電極と、
前記一対の電極間に当該一対の電極と離間して配されるとともに、前記一対の電極を通る直交軸の方向に移動可能に備えられたエレクトレット部材と、
を備えていることを特徴とする発電装置。
[請求項2]
前記一対の電極のうち一方が設けられた第1固定基板と、前記一対の電極のうち他方が設けられた第2固定基板と、前記エレクトレット部材が設けられた可動基板とを備え、
前記第1固定基板と前記可動基板とには、同じ極が向き合うようにそれぞれ磁石が備えられており、
前記第2固定基板には、前記可動基板に設けられた磁石と同じ極が向き合うように磁石が備えられており、
前記磁石の反発力によって前記可動基板が前記エレクトレット部材と共に、前記直交軸の方向に振動するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
[請求項3]
前記磁石は交換可能に備えられていることを特徴とする請求項2に記載の発電装置。
[請求項4]
前記一対の電極のうち一方が設けられた第1固定基板と、前記一対の電極のうち他方が設けられた第2固定基板と、前記エレクトレット部材が設けられた可動基板とを備え、
前記第1固定基板と前記可動基板との間、及び前記第2固定基板と前記可動基板との間には、前記第1及び第2固定基板と前記可動基板とを弾性支持する弾性部材が介装されており、
前記弾性部材の弾性力によって、前記可動基板が前記エレクトレット部材と共に前記直交軸の方向に振動するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
[請求項5]
前記弾性部材はバネ部材であることを特徴とする請求項4に記載の発電装置。
[請求項6]
前記第1及び第2固定基板を所定の間隔に保持する保持部材を備え、
前記可動基板には、前記可動基板の周縁に対して突出する形状の突片が一体的に形成されており、
前記可動基板の突片が、前記保持部材に点接触していることを特徴とする請求項2〜5の何れか一項に記載の発電装置。
[請求項7]
前記突片の平面形状が三角形状、または前記突片の立体形状が円錐形状であることを特徴とする請求項6に記載の発電装置。
[請求項8]
前記保持部材又は前記可動基板は絶縁材料により形成されていることを特徴とする請求項6または7に記載の発電装置。
[請求項9]
前記一対の電極が備える内面側の面のうち、前記可動基板を介さずに前記エレクトレット部材と対向する面に、絶縁性の材料からなる放電防止膜が設けられていることを特徴とする請求項2〜8の何れか一項に記載の発電装置。
[請求項10]
前記エレクトレット部材の移動に応じて前記一対の電極に誘導された電荷を取り出すための配線が、前記一対の電極に接続されていることを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載の発電装置。
[請求項11]
請求項1〜10の何れか一項に記載の発電装置が発電した電力を蓄えるバッテリーを備え、前記バッテリーに蓄えられた電力を用いて動作することを特徴とする電子機器。
[請求項12]
請求項1〜10の何れか一項に記載の発電装置が発電した電力を蓄えるバッテリーと、
前記バッテリーに蓄えられた電力を他の電子機器に供給する電力出力部と、
を備えていることを特徴とする電子機器。
10 上基板(第1固定基板)
11 電極
12 放電防止膜
20 下基板(第2固定基板)
21 電極
22 放電防止膜
30、33 可動基板
30a、30b 突片
31 エレクトレット膜(エレクトレット部材)
40 側面板(保持部材)
44 保持柱(保持部材)
51 配線
52 配線
100 発電装置
101、102、103 発電装置
200 腕時計(電子機器)
300 携帯電話(電子機器)
400 発電マット(電子機器)
403 電力出力部
500 バッテリー
M 磁石
、R 外部負荷
B コイルばね(弾性部材、バネ部材)
A 軸(直交軸)

Claims (12)

  1. 対向して配置された一対の電極と、
    前記一対の電極間に当該一対の電極と離間して配されるとともに、前記一対の電極を通る直交軸の方向に移動可能に備えられたエレクトレット部材と、
    を備えていることを特徴とする発電装置。
  2. 前記一対の電極のうち一方が設けられた第1固定基板と、前記一対の電極のうち他方が設けられた第2固定基板と、前記エレクトレット部材が設けられた可動基板とを備え、
    前記第1固定基板と前記可動基板とには、同じ極が向き合うようにそれぞれ磁石が備えられており、
    前記第2固定基板には、前記可動基板に設けられた磁石と同じ極が向き合うように磁石が備えられており、
    前記磁石の反発力によって前記可動基板が前記エレクトレット部材と共に、前記直交軸の方向に振動するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
  3. 前記磁石は交換可能に備えられていることを特徴とする請求項2に記載の発電装置。
  4. 前記一対の電極のうち一方が設けられた第1固定基板と、前記一対の電極のうち他方が設けられた第2固定基板と、前記エレクトレット部材が設けられた可動基板とを備え、
    前記第1固定基板と前記可動基板との間、及び前記第2固定基板と前記可動基板との間には、前記第1及び第2固定基板と前記可動基板とを弾性支持する弾性部材が介装されており、
    前記弾性部材の弾性力によって、前記可動基板が前記エレクトレット部材と共に前記直交軸の方向に振動するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
  5. 前記弾性部材はバネ部材であることを特徴とする請求項4に記載の発電装置。
  6. 前記第1及び第2固定基板を所定の間隔に保持する保持部材を備え、
    前記可動基板には、前記可動基板の周縁に対して突出する形状の突片が一体的に形成されており、
    前記可動基板の突片が、前記保持部材に点接触していることを特徴とする請求項2〜5の何れか一項に記載の発電装置。
  7. 前記突片の平面形状が三角形状、または前記突片の立体形状が円錐形状であることを特徴とする請求項6に記載の発電装置。
  8. 前記保持部材又は前記可動基板は絶縁材料により形成されていることを特徴とする請求項6または7に記載の発電装置。
  9. 前記一対の電極が備える内面側の面のうち、前記可動基板を介さずに前記エレクトレット部材と対向する面に、絶縁性の材料からなる放電防止膜が設けられていることを特徴とする請求項2〜8の何れか一項に記載の発電装置。
  10. 前記エレクトレット部材の移動に応じて前記一対の電極に誘導された電荷を取り出すための配線が、前記一対の電極に接続されていることを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載の発電装置。
  11. 請求項1〜10の何れか一項に記載の発電装置が発電した電力を蓄えるバッテリーを備え、前記バッテリーに蓄えられた電力を用いて動作することを特徴とする電子機器。
  12. 請求項1〜10の何れか一項に記載の発電装置が発電した電力を蓄えるバッテリーと、
    前記バッテリーに蓄えられた電力を他の電子機器に供給する電力出力部と、
    を備えていることを特徴とする電子機器。
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