JP2012188812A - 水圧貫通式削孔装置及びこれを用いた削孔方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】インナーピースが必要なときには該インナーピースの離脱を確実に防止でき、一方で、必要量の削孔が完了してインナーピースが不要になれば簡単かつ確実に除去できる削孔装置を提供する。
【解決手段】水圧貫通式削孔装置は、ロッド3の先端に連結されるアウターピース4と、アウターピースに押出可能に収容されたインナーピース6と、アウターピースに対しインナーピースを仮止めする部材8を有する。インナーピースに作用する反掘進方向の荷重は段差部47で受け止められ、回動方向の荷重はキー63で受け止められるので、削孔中にこれらの荷重によって仮止め部材8が破断することはない。必要量の削孔を終えたら、インナーピースを押し出すためにロッド内の水圧を上昇させる。水圧の上昇に伴ってインナーピースの押出し力が上昇し、この押出し力が仮止め部材の破断限界を超えると、仮止め部材が破断し、同時にインナーピースが前方へ押し出される。
【選択図】図3

Description

本発明は、削孔装置及びこの装置を利用した削孔方法に関する。
削孔を伴う工法の代表例として、例えば、コンンパクショングラウチング工法、薬液注入工法、アンカー工法などが挙げられる。
コンパクショングラウチング工法では、ボーリングマシンを用いて、後の工程で圧送管をなすロッドを複数本継ぎ足しながら所定深度まで削孔する。次いで、特殊注入プラントで生成された改良材(特殊骨材・固化材・水で構成される流動性の極めて低い硬練りモルタル状の地盤改良材)を、特殊注入ポンプで強制圧送し、貫入させたロッドを介して地盤中に圧入する。地盤中に圧入された改良材は、その低い流動性のため土中で迷走や浸透することなく所定の位置で固結する。この固結体の体積増加により周辺地盤を圧縮し、密度を増大させることで液状化地盤を非液状化地盤へと改良することができる。
薬液注入工法では例えば、ボーリングマシンを用いて、ロッドを複数本継ぎ足しながら所定深度まで削孔する。次いで、目標深度に達したロッド内に注入管を挿入し、ロッドのみを回収した後、注入管を介して薬液を地盤中に注入する。注入された薬液は土粒子間へ浸透・固結し、地盤への透水性を減少させ、地盤に強度を与える。
アンカー工法では例えば、ボーリングマシンを用いて、ロッドを複数本継ぎ足しながら所定深度まで削孔する。続いて、ロッド内にテンドン(引張力を伝達する部材)を挿入した後、このロッドを地盤中から引抜きつつ該ロッド内を通して地盤中に固化材(例えばセメントミルク)を注入する。そして、固化材が固化した後、テンドンに緊張力を付与してテンドンの端部を構造物に定着させる。テンドンを介して伝わる緊張力によって不安定斜面の安定化等を図ることができる。
一方、特許文献1,2には削孔装置が開示されており、上述した工法をはじめとする種々の工法における削孔工程での利用が検討されている。
特許文献1の削孔装置は、ロッドの先端に掘削ツールを有している。この掘削ツールは、アウターピースと、該アウターピース内に収容されたインナーピースとを有している。インナーピースは、ラッチ部等の係合作用によって、アウターピース内の所定位置に収容された状態で仮止めされている。削孔が目標深度に達したら、オーバーショットを先端に備えたロッド状回収器具を送り込んで、その先端部で引っ張ってラッチ部等による仮止めを解除するとともに(特許文献1の図5)、インナーピースを引き抜いて地表側へ回収する。
特許文献2の削孔装置は、掘削ロッドと、その先端に収容されたインナーピースとを有している。インナーピースは、外観が洗濯ばさみ状のアーム部材によって、ロッド先端の所定位置に収容された状態で仮止めされている(特許文献2の図1)。削孔が目標深度に達したらロッド状回収器具を送り込み、その先端部でアーム部材による仮止めを解除するとともに、該アーム部材を手前に引き抜いて回収する(特許文献2の図4(b))。続いて、注入管を挿入して、仮止めが解除されたインナーピースを注入管の先端で突いて、アウターピースの前方へ押し出す(特許文献2の図4(d))。
特開2007−63782号公報(段落[0038][0042]) 特開2010−196349号公報(段落[0043]-[0046]、図4)
上述した従来の削孔装置を、前述したコンパクショングラウチング工法などにおける削孔工程で利用するにあたっては、次のような問題がある。
(インナーピースを除去する際の問題)
特許文献1,2に開示された削孔装置は、インナーピースを除去するにあたって、オーバーショットなどを備えた回収器具(押し棒)を地表側からロッド内の先端側へ送り込み、ラッチ部等の仮止め手段の所定位置に押し付けて、仮止め状態を解除する必要がある。
しかしながら、棒状の回収器具をロッド内に挿し込んだ際に、インナーピースの仮止め位置を目視できないため、作業者の手元に僅かに伝わる感覚や勘に頼って解除作業を進めざるを得ず、回収器具を所定位置に対し正確かつ確実に押し当てることができない。したがって、回収器具を一度挿入しただけで確実に解除することは難しく、インナーピースの仮止めが解除されるまで、回収器具を何度も抜き挿しする必要がある。このような作業者の勘に頼った作業は、確実性がなく、作業の遅延を招くといった問題がある。
また、特許文献1の削孔装置の場合では、インナーピースを引抜く際に先端部分に負圧が作用し、周辺の地山や切削ズリがロッド内に引き込まれ先端が閉塞するという、いわゆる「コア詰まり」が発生し、削孔完了後の次工程である地盤改良材の圧送や、注入管の挿入、テンドンの挿入が不能となる問題がある。
さらに、特許文献1の削孔装置の場合では、インナーピースを引き抜く際に、送り込んだ回収器具の先端が抜け出てくるまで、その先端がインナーピースを掴んでいるか否かを確認する術はない。したがって、地表側にインナーピースが抜け出てくるまで、長尺の棒状回収器具の抜き差しを何度も繰り返さなければならないといった問題がある。
同様に、特許文献2の削孔装置の場合でも、インナーピースを仮止めするアーム部材を地表側に回収できるまで、回収器具の挿入と引き抜きを何度も繰り返さなければならないといった問題がある。
また、特許文献1,2に開示されたような複雑な構造の仮止め手段を採用すると、いずれかの部位に砂粒などを噛み込んだだけで、仮止めを解除できなくなることがあり、インナーピースの除去が不能になるといったトラブルが生じやすい。よって、従来の削孔装置は、インナーピースの除去の確実性に欠けるといった問題がある。
また、上記特許文献に開示された仮止めを解除するための工程やインナーピースの回収工程そのものが極めて煩雑であり、作業の大幅な遅延を招いている。
(インナーピースを除去した後の問題)
上述した煩雑な作業を経てインナーピースを除去することができても、コンパクショングラウチング工法などに利用する場合には更に次のような問題が生じる。
特許文献1,2に開示された削孔装置をコンパクショングラウチング工法に用いる場合には、削孔完了後に先端からインナーピースを除去し(特許文献1の場合では手前へ引き抜き、特許文献2の場合では前方へ押し出し)、次いで、ロッドを介して地盤中に低流動性の硬練り改良材を圧入する。
しかしながら、特許文献1の削孔装置では、インナーピースの仮止めや回収を可能にするために、ロッド及びアウターピースの内壁面側に複雑な凹凸形状や段部が採用されている(特許文献1の図2)。また、インナーピースが前方へ抜け出るのを阻止し、手前側へ回収できるように、アウターピースの内空部は、先端に近づくにつれて内径が縮径した「先細り形状」を有している(特許文献1の図2)。
同様に、特許文献2の削孔装置では、インナーピース仮止め用のアーム部材を固定するための凹部が、掘削ロッドの内壁に形成されている(特許文献2の図5)。
このようにアウターピースの内空部が先細り状に形成され、また、ロッドやアウターピースの内壁面に複雑な凹凸などが形成されていると、コンパクショングラウチング工法で用いる低流動性の改良材の圧送が困難になる。すなわち、低流動性の硬練り改良材を圧送する際に、先細りの内壁形状や凹凸部などが抵抗となって圧力損失(圧送元の圧力がそのまま圧送先の地盤内に伝わらない)が生じるとともに、凹凸部等で改良材が引っかかって脱水が生じるといった問題がある。また、凹凸部などで改良材が引っかかると、その部位で改良材が詰まって圧送そのものを妨げるといったトラブルが生じる。
なお、凹凸や先細りの程度がたとえ僅かであっても、低流動性の硬練り材料を強制圧送するコンパクショングラウチング工法では、それが極めて大きな抵抗となり、改良品質に大きな影響を及ぼす。そのため、特許文献1,2に開示された削孔装置をコンパクショングラウチング工法での削孔に用いると、対象地盤に対し設計どおりの改良効果を与えることができないといった問題がある。
また通常、掘削ロッドやアウターピースは再利用されるため、使用を重ねるうちに内壁面に錆びや土粒子、改良材などが付着し、これらの突起物が前述と同様に抵抗となって、改良材の圧送を妨げ、圧力損失を生じさせるといった問題もある。この問題を防ぐためには、再利用する際に錆びや土粒子、改良材などを除去する必要があるが、構造が複雑なため清掃自体が困難な作業であった。
また、特許文献1,2に開示された削孔装置を薬液注入工法に利用し、削孔後に注入管をロッドに挿入する際、ロッドやアウターピースの内壁面にある凹凸部や段差部に、注入管が引っかかり円滑に挿し込むことができないといった問題がある。同様の問題が、アンカー工法において削孔を完了した後で、テンドンを挿入する際にも生じる。仮に注入管やテンドンを挿入できたとしても、その後の工程であるロッド(ケーシング)の引抜き作業中に、アウターピースの内壁面にある凹凸部に注入管やテンドンが引っかかり、注入管やテンドンがロッドと共に引抜かれる現象(いわゆる「共上がり現象」)が発生することもあった。
その他、特許文献1,2に開示された削孔装置は、インナーピースの仮止めとその解除を行うために、複雑な構造を有している。そのため、インナーピースが取り外し難い上に、製造コストが高いといった問題がある。
(クローネンビット等を用いた場合の問題)
特許文献1,2に開示された削孔装置のほかにも、クローネンビットやロストビットと称される削孔ビット体を、コンパクショングラウチング工法などにおける削孔工程に利用することも検討された。
図15に示すタイプの削孔ビット体91は、筒状のドライブシュー93の先端部に挿脱可能に嵌め込まれている。削孔ビット体91とドライブシュー93には、それぞれ、周方向で係合して回転力を伝達する係合部96,97が設けられている。削孔時には、ドライブシュー93に連結したロッドを押し進めながら回転させることにより、嵌め込んである削孔ビット体91が一体回転しながら掘進する。削孔完了後には、ドライブシュー93に連結したロッドを引き抜き方向に後退させると、削孔ビット体91の軸部が抜け出てドライブシュー93から切り離すことができる。
図16に示すタイプの削孔ビット体92は、クランク状の鉤形係合部98を有している。削孔ビット体92の軸部をドライブシュー94に挿入した状態で、鉤形係合部98をドライブシューの鉤形係合部99に係合させる。削孔中は、正転(例えば、左回転)を与えることで鉤形係合部98がドライブシューの鉤形係合部99に係合した状態が保たれるので、削孔ビット体92の脱落が防止される。削孔完了後には、ドライブシュー94に連結したロッドを逆転(例えば、右回転)させることで、削孔ビット体92に対してドライブシュー94が回動し、鉤形係合部98,99の係合が解除される。続いてロッドを手前に引き抜くことで、削孔ビット体92の軸部が抜け出てドライブシュー94から切り離すことができる。
このような削孔ビット体を用いて削孔を行い、途中で削孔ビット体が玉石や固い層に突き当たった場合には、削孔ビット体を反削孔方向に引いて再度削孔方向に突く(フラッシング)ことが好ましい。しかしながら、図15に示すタイプの削孔ビット体を用いた場合には、ドライブシューを引くと削孔ビット体が簡単に抜けてしまうので、フラッシング動作は不可能であり、削孔に著しい時間を要するといった問題がある。
一方、図16に示す脱落防止タイプの削孔ビット体を用いた場合には、削孔途中でフラッシング動作を行っても削孔ビット体が外れる虞はない。しかしながら、削孔過程で削孔ビット体とドライブシューとの間の隙間で土砂等を噛み込むと、ドライブシューを逆転(右回転)させても削孔ビット体が一体回転してしまい、鉤形係合部の係合を解除できなくなるといった問題がある。また、逆転作業を続けると、鉤形係合部以外のネジ部でロッドが切断され、回収不能となり、削孔ビット体やロッドを地中に残置するといった問題が発生することもあった。
また、継ぎ足したロッドが長尺になれば、その分だけ捩れ易くなるので、地表側での逆転操作(鉤形係合部の係合を解除させる回転動作)がロッドの途中で吸収されてしまう。そのため、ロッドが長尺になると、その先端のドライブシューを必要量回動させることができず、削孔ビット体の切り離しが困難になるといった問題もある。またこのような状況下において、地表側でロッドを勢いよく回転させ、強制的にドライブシューの回動(鉤形係合部の係合の解除)を試みると、その勢いでロッド同士の連結部のネジが切れ、或いは、ロッドとドライブシューの連結部のネジが切れ、結果的に、削孔ビット体の切り離しが不能になるといった問題もある。
(従来のピン止め式削孔装置の問題)
上述した削孔ビット体の問題点を解決すべく、特開平4-198520号公報や特公平7-18161号公報に開示されたようなピン止め式の削孔装置の採用も検討された。
これらの公報に開示された削孔装置では、アウターピースをなすリングビット内に、インナーピースをなすクローネンビットを嵌め込み、両者をピンで連結している。不要になったクローネンビットを除去する際には、アウターロッド(ケーシングパイプ)内に、インナーロッドを継ぎ足しつつ差し込み、押込み力と打撃力でピンを破断させる。
このようなタイプの削孔装置であれば、図15や図16に示す削孔ビット体の問題点はいずれも解決されるが、インナーロッドを介した打撃という煩雑な作業が必要となる。この打撃作業では、ピンの破断強度を超える力で打撃する必要があるが、これを人力で行う場合には作業者にとって大きな負担となり、作業性の点で大きな問題がある。また、マシンを利用して打撃を行う場合であっても、打撃用の機材が余計に必要になるため、施工コストの高騰を招くといった問題がある。
また、このような削孔装置では、インナーロッドで打撃する際に、ピンが破断するまで反力をとってアウターロッドを保持しなければならず、そのための煩雑な作業や余計な機材が更に必要となる。
したがって、特開平4-198520号公報や特公平7-18161号公報に開示されたピン止め式の削孔装置は、インナーピースを除去する際の作業性や施工コストの点で問題がある。
(本発明の目的)
そこで上述した従来技術の問題点に鑑み、本発明の目的は、インナーピースが必要なときには該インナーピースの離脱を確実に防止でき、一方で、必要量の削孔が完了してインナーピースが不要になれば、簡単かつ確実で誰でも速やかに除去できる、新たな削孔装置及び方法を提供することにある。
さらに本発明の目的は、削孔装置の構成自体が、インナーピース除去後の工程の妨げとなることがなく、また施工品質の低下を招くことがなく、しかも、従来装置に比べて低コストで製造できる削孔装置を提供することにある。
上述した目的は、ロッドの先端に連結される筒状のアウターピースと、前記アウターピースに押し出し可能に収容されたインナーピースと、前記アウターピースに対し前記インナーピースを仮止めするための部材(水圧で破断可能な仮止め部材)と、前記ロッドを介して送水される削孔水を吐出するための送水孔とを有し、必要量(すなわち目標深度又は目標位置まで)の削孔を終えたら水圧により前記仮止め部材を破断させてインナーピースを押し出すことができるように構成された水圧貫通式削孔装置によって達成される。
この仮止め部材は円周上に等間隔に少なくとも2箇所以上あることが好ましい。この場合、対角(180°)部分の部材同士が一体となっていてもよい。
上記水圧貫通式削孔装置は、前記インナーピースに作用する反掘進方向の荷重を受け止めて、前記仮止め部材に当該荷重が作用するのを阻止する反掘進方向制限手段と、前記インナーピースに作用する回転方向の荷重を受け止めて、前記仮止め部材に当該荷重が作用するのを阻止する回転方向制限手段と、をさらに有することが好ましい。
また上記水圧貫通式削孔装置は、前記破断可能な仮止め部材に対する衝撃を緩和するための緩衝手段をさらに有することが好ましい。この緩衝手段は、インナーピース、アウターピースまたは仮止め部材のいずれか1箇所以上または全てに有することが好ましい。
また上記水圧貫通式削孔装置は、前記インナーピースを押し出す際に用いられる押出補助部材を備えることが好ましい。この押出補助部材は、ロッド内で水圧を受けて押し流されるように構成され、前記送水孔を塞いで水圧の上昇を加速させる。
また上記押出補助部材は、ロッド内を押し流される過程でロッド内壁に摺接するロッド洗浄手段を備えることが好ましい。
また上述した目的は、ロッドの先端に水圧貫通式削孔装置を連結し、ロッドを押し込みつつ削孔水を送水しながら削孔し、必要量の削孔を終えたらロッド内の水圧を上げて、その水圧によって仮止め部材を破断するとともにアウターピースからインナーピースを押し出すことを特徴とする削孔方法によって達成される。
インナーピースを押し出す工程では、水圧の上昇を加速させる押出補助部材をロッド内に入れ、ロッドの先端側へ水圧で押し流すことが好ましい。
また、インナーピースを押し出すときには、流量及び水圧の少なくとも何れか一方の値を監視し、その値に基づいてアウターピースの貫通状況を把握することが好ましい。
本発明では、アウターピース内に収容されたインナーピースの仮止め手段として破断可能な部材を用いている。削孔時にはこの部材で仮止め状態を維持し、必要量の削孔を終えたときに、水圧(削孔時の送水圧力より高い水圧)により仮止め部材を破断させて仮止めを解除し、同時に水圧でインナーピースを押し出すようになっている。よって、作業者の勘に頼ることなく、単に水圧を上げるだけでアウターピースからインナーピースを簡単かつ確実に除去できる。
また、単に水圧を上げるだけでインナーピースを除去できるので、従来の削孔装置でインナーピースの除去に要していた煩雑な作業(押し棒やインナーロッド等で突くことによる仮止めの解除、インナーピースや仮止め部材の回収、インナーピースを叩き落とすための打撃など)が不要になる。したがって、インナーピースの除去に手間がかからないので、作業効率が大幅に改善され、次工程の遅延を招くことがなく、工期の短縮と施工コストの縮減を図ることができる。
また本発明では、インナーピースを仮止めする部材は、削孔時の水圧に十分に耐えて仮止めを維持する強度を持つように設計される。このような仮止め部材を破断させるにあたって、従来装置に見られるような長尺の押し棒(ロッド状回収器具)を用いると、撓み易いため、仮止め部材の破断限界を超える力で突き当てることができない。これに対し、本発明のように水圧を利用することで、簡単かつ確実に仮止め部材を破断させることが可能になる。
また本発明では、ロッド内を流れる削孔水の水圧を利用して仮止め部材を破断するようになっており、特開平4-198520号公報や特公平7-18161号公報に開示されたような煩わしい打撃作業(打撃によりインナーピースを叩き落とす作業)を必要としない。したがって、水圧でインナーピースを押し出す際に、「アウターピースに対する反力の確保」も不要である。よって本発明は、従来装置に比べてインナーピース除去時の作業性の点で優れており、また打撃用の機材や反力確保用の機材が一切不要なので、低コストでの施工が可能になる。
また本発明によれば、インナーピースをアウターピースの前方へ押し出す構成を採用しており、特許文献1の場合のように、インナーピースを除去する際に「引き抜く操作」が不要である。したがって、インナーピースを除去する際に、ロッド内に「引き抜きに起因する負圧」が生じることがないので、インナーピース除去時のコア詰まりを確実に防止でき、削孔完了後の次工程に支障をきたすことがない。
また本発明によれば、インナーピースを押し出す構成を採用しているので、従来装置の如くアウターピースの内空部を先細り状(特許文献1の図2)に形成する必要がない。また、インナーピースを仮止めするために、アウターピースの内壁面に、従来装置に見られるような複雑な凹凸形状を採用する必要がない。
よって、例えばコンパクショングラウチング工法に本発明を適用する場合には、削孔後の工程で硬練り改良材を圧送する際に、アウターピースの内壁が改良材の圧送を妨げることがなく、材料詰まりなどのトラブルを防ぐことができる。しかも、アウターピース内壁での改良材の引っかかりによる脱水や圧力損失が生じることがなく、所望の圧縮力を持った固結体を地盤内に造成できる。
また、仮止めのための複雑な形状を採用しないので、従来装置に比べてアウターピースの内壁に土粒子や改良材が付着し難くなり、その分、アウターピース再利用のための清掃が容易になる。また、アウターピースの内壁構造が簡易なものになれば、その内壁が清掃作業を妨げることがないので、アウターピース再利用のための清掃が簡便になるといった効果も達成される。
また、仮止めのための複雑な形状を採用する必要がないので、例えば薬液注入工法に適用する場合には、注入管の挿入作業において、注入管がアウターピースの内壁に引っかかることがない。また例えばアンカー工法に適用する場合には、テンドンの挿入作業において、テンドンがアウターピースの内壁に引っかかることがない。さらに、注入管やテンドンがアウターピースに引っかからないので、後工程におけるロッド(ケーシング)の引抜き作業において、注入管やテンドンがロッドと共に引き抜かれる「共上がり現象」を防止できる。
また本発明によれば、破断可能なピンなどの極めて単純な部材で仮止め手段を構成することができ、また、アウターピースの内壁面に複雑な凹凸加工を施す必要がないので、削孔装置を低コストで製造できる。
また、本発明の削孔装置は、従来のクローネンビットやロストビットなどのように回転させて切り離すものではなく、水圧で仮止め部材を破断させてインナーピースを押し出すようになっている。したがって、インナーピースを除去する際に逆転操作が不要なので、連結部のネジが切れてインナーピースの除去が不能になるといった事態や、削孔ビット体やロッドを地中に残置するといったトラブルを生じさせることはなく、必要なときに確実にインナーピースを除去できる。
また本発明の削孔装置は、インナーピースに作用する反掘進方向の荷重を受け止める反掘進方向制限手段と、インナーピースに作用する相対回転方向の荷重を受け止める回転方向制限手段とを有しており、これらの荷重が削孔時に仮止め部材に作用するのを阻止している。したがって、削孔過程でインナーピースが受ける水圧(インナーピースの押し出し方向に作用する削孔水の送水圧力)に耐え得る強度を仮止め部材に与えることで、削孔時における仮止め部材の破断を防ぐことができる。その結果、削孔時におけるロッドの押し込み動作・回転動作・フラッシング動作にかかわらず、削孔が完了するまで、仮止め部材による抜け止め状態を維持しインナーピースの脱落を防止できる。
また本発明の削孔装置は、上記反掘進方向制限手段と上記回転方向制限手段に加え、仮止め部材に対し作用し得る衝撃荷重を緩和する緩衝手段を有している。緩衝手段は、インナーピース、アウターピースまたは仮止め部材のいずれか1箇所以上または全てに有している。または、仮止め部材自体に緩衝部材を有している。これにより、削孔時に仮止め部材に伝わる衝撃が緩和され、削孔時における仮止め部材の破断をより確実に防止することができるだけでなく、打撃(パーカッション)を伴う削孔を行うことも可能となる。これにより、インナーピース脱落を防止するだけでなく、より効率的な削孔が可能となり、施工能率を向上させることが可能となる。
また本発明の削孔装置は、水圧の上昇を加速させる押出補助部材を備えている。インナーピースを除去する際にこの押出補助部材を併用することで、ロッド内の水圧が、仮止め部材の破断強度を超える水圧まで速やかに上昇する。したがって、送水ポンプの負担を軽減できるとともに、作業時間を短縮することができる。
また上記押出補助部材は、好ましくは、ロッド内を押し流される過程でロッド内壁に摺接するロッド洗浄手段を備えている。この押出補助部材は、インナーピースを押し出す際に用いられ、水圧を受けることでロッド内を押し流されるように構成されている。したがって、押出補助部材にロッド洗浄機能を持たせることで、インナーピースを押し出す際に、ロッド内壁やそれに連結するアウターピース内壁に付着した錆びや土粒子、改良材などを掻取ることができる。その結果、ロッドやアウターピースの内壁面から突出物が除去されてより滑らかになるので、次工程での改良材の圧送や注入が良好に行われる。例えば本発明をコンパクショングラウチング工法に適用する場合には、錆びなどの突起物による改良材の脱水が防止され、また圧力損失が可及的に低減され、所望の固結体を地盤内に造成することが可能になる。
また本発明では、インナーピースを押し出すときに、流量及び水圧の少なくとも何れか一方の値を監視するようになっている。水圧によって仮止め部材が破断しインナーピースが押し出されれば、アウターピースが貫通すると同時に流量と水圧に変化が生じる(図12〜図14参照)。したがって、インナーピースの押し出しの状況を目視できなくても、流量及び水圧の少なくとも何れか一方の値を監視することで、インナーピースが押し出されてアウターピースが貫通したことを確実に検知できるので作業性が向上する。
本発明の水圧貫通式削孔装置をロッドに連結した状態を示す斜視図である。 図1の削孔装置の正面図である。 図2の削孔装置のA−A線に沿った断面図と、B−B線に沿った断面図である。 本発明の水圧貫通式削孔装置の作用の概略を示す図である。 本発明の水圧貫通式削孔装置の作用の概略を示す図である。 図5に示す押出補助部材の変形例を示す図である。 曲線ボーリング(自在ボーリング)の一例を示す図である。 本発明の水圧貫通式削孔装置の変形例を示す図である。 本発明の水圧貫通式削孔装置の変形例を示す図である。 本発明で採用可能な仮止め部材および緩衝材のバリエーションを例示する図である。 本発明の水圧貫通式削孔装置の変形例を示す図である。 アウターピースが貫通するまでの削孔水の流量と水圧の変化を示すグラフであって、実施例1の実験結果を示している。 アウターピースが貫通するまでの流量と水圧の関係を示すグラフであって、実施例1の実験結果を示している。 アウターピースが貫通するまでの削孔水の流量と水圧の変化を示すグラフであって、実施例2の実験結果を示している。 従来の削孔装置を示す図である。 従来の削孔装置を示す図である。
はじめに、図1〜図3に基づいて、水圧貫通式削孔装置の構成・作用の概略を説明する。
本発明の水圧貫通式削孔装置1は、主として、ロッド3の先端に連結される筒状のアウターピース4と、このアウターピースに収容される略円柱状のインナーピース6と、このインナーピース6をアウターピース4に対し仮止めする仮止め部材8とを有している。
削孔装置1は、削孔時において、アウターピース4内にインナーピース6を収容し仮止め部材8で仮止めされた状態にセットされている。本発明における「仮止め」とは、必要量の削孔を終えるまで暫定的にインナーピース6の抜け止め(脱落防止)を行い、必要量の削孔を終えてインナーピース6が不要になったら、水圧を受けて破断して該インナーピースを離脱可能にする機能を意味している。
インナーピース6は、削孔の間、図示するようにアウターピース4に収容されてコア詰まりを防止する。ここでいうコア詰まりとは、地盤や切削ズリがロッド内に入り込み、コア状に詰まることをいう。インナーピース6を収容するアウターピース4は、内側に通路を備えたロッド3(ケーシングパイプ)に連結されている。ロッド3内の通路は、削孔時には削孔水の送水などに利用され、削孔完了後の次工程では、地盤改良材の圧送経路、注入管の挿入、テンドンの挿入などに利用される。
削孔が完了したら、インナーピース6は、水圧を利用してアウターピース4の前方へ押し出されて除去される。インナーピース6が除去されて貫通したアウターピース4は、貫入したロッド3の先端に連結した状態のままで、次工程に供される。
以下、削孔装置の各部の構成について詳細に説明する。
(アウターピース)
図1〜図3には、アウターピース4をロッド3の先端に連結した状態を示す。
筒状のアウターピース4は、その先端の環状端面に植設された複数のビット41と、基端側の外周に形成されたネジ部43と、通路として機能するとともにインナーピース収容空間として機能する内空部45と、収容されたインナーピース6の位置決め手段、および反掘進方向制御手段として作用する環状の段差部47と、インナーピース抜け止め用の仮止め部材8が差し込まれる差込孔49と、仮止め部材8に対する衝撃を緩和する緩衝材51と、インナーピース6のキー63が抜き差し自在に差し込まれ、回転方向制御手段として作用するキー溝53とを有している。
ネジ部43は、図3に示すように外ネジとして形成され、ロッド3の先端のネジ部(内ネジ)と螺合する。ロッド3にアウターピース4を連結する際には、アウターピースのネジ部43をロッド3のネジ部の内側にねじ込む。
アウターピースの内空部45は、基端から段差部47までの小径領域と、段差部47から先端までの大径領域とを含んでおり、段差部47から先が拡径している。小径領域および大径領域のいずれも、均一な内径であって、凹凸のない滑らかな内壁面を有している。このように、本実施形態の削孔装置では、アウターピース4の内径が先端側寄りで拡径し(すなわち先細り形状ではない)、かつ、凹凸のない滑らかな内壁面を有しているので、後の工程で例えば硬練りの地盤改良材を圧送するときに、圧力損失や材料の脱水が生じるのを防止できる。また、アウターピースの内壁には注入管やテンドンなどが引っかかるような突出構造がないので、後の工程でロッドを引き抜く際に、テンドンや注入管がロッドとともに引き抜かれる「共上がり現象」を防止できる。
基端から段差部47までの小径領域は、ロッド3内の通路と等しい内径・形状を有している。したがって、アウターピース4をロッド3に連結した状態では、図3に示すように両者の内壁側の継ぎ目に段差はなく、段差部47に至るまで均一な内径を有している。また小径領域は、インナーピース6の外径よりも小さな内径を有している。
段差部47から先の大径領域は、小径領域よりも大きな内径寸法を有し、かつ、インナーピース6を自在に挿脱可能な寸法を有している。
環状の段差部47は、削孔装置1の組み立て時には位置決め手段として機能し、削孔時には反掘進方向制限手段として機能する。
組み立て時に、インナーピース6をアウターピース4の先端開口部から挿し込むと、インナーピースとアウターピースの先端面が面一状に揃ったところで(両者の先端に段差がなくなった位置で)、図3に示すようにインナーピース6が段差部47に引っかかって位置決めされる。
削孔時には、インナーピース6が土圧を受けて基端側(反掘進方向)へ押し込まれても、段差部47にインナーピース6が引っかかるので、該インナーピースが段差部47を超えてアウターピース内に陥没することはない。
差込孔49は、本実施形態では、アウターピース4の周方向において等間隔で2つ穿設されている。収容されたインナーピース6をアウターピース4に対し仮止めする際に、差込孔49を介して仮止め部材8が差し込まれる。
差込孔49には、仮止め部材8に対する衝撃荷重を緩和するためのリング状の緩衝材51が埋設されている。この緩衝材51は、アウターピース4と仮止め部材8との間に介在し、削孔時の衝撃を吸収して仮止め部材8が破断するのを防いでいる。
キー溝53は、図1に示すように、アウターピース4の先端側を軸方向に切り欠いた形状を有し、またインナーピースのキー63が自在にスライド可能な寸法を有している。インナーピースのキー63がキー溝53で引っかかることで、収容されたインナーピース6の回動(相対回転)が妨げられる。
(インナーピース)
インナーピース6は、略円柱状のブロック形状を有している。削孔中はアウターピース4内に収容された状態で仮止め部材8によって仮止めされて、該アウターピースの先端開口部を塞ぐ。これにより、ロッド内に掘削土が詰まる、いわゆるコア詰まりを防止する。
このインナーピース6は、図3に示すように、仮止め部材8の先端側が差し込まれる差込孔61と、アウターピースのキー溝53との組み合わせで回転方向制限手段として機能するキー63と、水密性を確保するためのOリング65と、削孔時に土圧受け面67の前方へ削孔水を送水するための送水孔69とを有している。
インナーピースの差込孔61は本実施形態では2つ設けられており、各差込孔61は、アウターピースの差込孔49と対向する位置に形成されている。収容されたインナーピース6をアウターピース4に対し仮止めする際に、両者の差込孔49,61の位置を合わせて仮止め部材8が差し込まれる。
突起状のキー63は、本実施形態では2つ設けられている。各キーは、図3のB−B断面に示すようにインナーピース6の先端側外周面上に突設され、また、アウターピース4のキー溝53に進入可能な位置に形成されている。また各キーは、キー溝53に沿って自在にスライド可能な寸法を有している。
組み立て時において、インナーピース6の挿入過程でそのキー63をキー溝53に差し込んで、該インナーピースが段差部47に引っかかれば、同時に、差込孔49,61の位置合わせが完了する。削孔時には、アウターピースのキー溝53にインナーピースのキー63が引っかかることによって、収容されたインナーピース6の回動が妨げられる。
インナーピース6の外周面上には、Oリング位置決め用の環状凹部71が刻設されており、この環状凹部に沿ってOリング65が配設されている。このOリング65は、アウターピース内周面とインナーピース外周面との間に介在するシール材であって、削孔時に削孔装置の先端から地下水や土砂が流入するのを防止する役割を担っている。
送水孔69は、アウターピースの内空部45を介して、ロッド3内の通路と連通している。削孔時にロッド3を介して送水された削孔水は、送水孔69を介して土圧受け面67の前方へ吐出される。
(仮止め部材)
仮止め部材8は、インナーピース6をアウターピース4に挿入した状態で、対向した差込孔49,61に差し込まれる。差し込まれた仮止め部材8の一端側は、図3のA−A断面に示すように、差込孔61に埋入した状態でインナーピース6と係合するようになっている。仮止め部材8の他端側は、差込孔49に埋入した状態で、緩衝材51を介してアウターピース4と係合するようになっている。
上記構成の仮止め部材8は、削孔時には、アウターピース4からインナーピース6が抜け落ちないように、該インナーピースを仮止めする。一方、必要量の削孔を終えてインナーピース6が不要になれば、地表側からの送水量を増して水圧を上昇させる。インナーピースの水圧受け面68に作用する水圧が上昇し、上昇した水圧によりインナーピースの押出し力が上昇し、この押出し力が仮止め部材8の破断強度を超えると、仮止め部材が破断してインナーピース6が前方へ押し出される。
仮止め部材8の破断強度は、削孔時における削孔水の水圧(インナーピース6の水圧受け面68に作用する水圧)を受けても破断しないように、当該水圧に十分に耐え得る強度が与えられる。例えば、削孔時の水圧が1MPaであれば、3MPaの水圧で破断するように強度を設定する。また例えば、削孔時の水圧が2MPaであれば、5MPaの水圧で破断するように強度を設定する。そのような所望の破断強度は、仮止め部材8の本数と断面積の設定、材質の選択などにより、仮止め部材に付与することができる。
なお、仮止め部材の形状・寸法・材質は特に限定されるものではなく、前述した「仮止め」機能を発揮できるものであれば如何なるものでも採用することができる。
仮止め部材の本数は特に限定されるものではないが、2箇所以上にあることが好ましく、さらに円周上に等間隔に配置されていることが好ましい。円周上に等間隔に配置することにより、インナーピース押出し時に偏芯による引っかかりを防止することができる。また、対角(180°)部分に位置する仮止め部材同士が一体となるように、構成してもよい。図10(E)参照。
仮止め部材の構成材料としては、力を加えたときに伸びが少ない状態で破断する材料であればよく、例えばアルミニウムや鋳物などの金属、樹脂などを挙げることができる。
(削孔が完了するまで仮止め部材の破断を防止する構成)
仮止め部材8は最終的には破断されるべき構成部材ではあるが、削孔が完了するまでの間は仮止め部材の破断を確実に防止して、削孔途中でのインナーピース6の脱落を防止する必要がある。
しかしながら、削孔時において、インナーピース6とこれを仮止めする仮止め部材8には、次に掲げるような外力が作用する。
1.インナーピース6の水圧受け面68に作用する削孔水の水圧。
2.インナーピース6の土圧受け面67に作用する土圧・打撃荷重。
3.削孔装置を正転・逆転させることでインナーピース6に作用する周方向の荷重。
4.削孔時に仮止め部材8に作用する衝撃荷重。
上記1の水圧は、インナーピース6をアウターピース4の前方へ押し出す方向(掘進方向)に作用する。
上記2の土圧・打撃荷重は、インナーピース6をアウターピース4内に押し込む方向(反掘進方向)に作用する。
上記3の周方向荷重は、インナーピース6を回動(相対回転)させる方向に作用する。
上記4の衝撃荷重は、仮止め部材8に対しあらゆる方向に作用し、その衝撃で破断させる可能性がある。
これらの圧力荷重のうち、上記1の水圧は予め予測可能であり、削孔時の送水圧力に十分に耐え得るように仮止め部材8を設計することは可能である。
しかしながら、上記2〜4の荷重をすべて正確に予測することは困難であり、その上、これらのすべての荷重に十分に耐え得る強度を仮止め部材8に与えれば、強度が過大になってインナーピース6を除去する際に仮止め部材8を破断できなくなる。すなわち、破断不能な強固な抜け止め部材となり、実質的に「仮止め部材」として機能しなくなる。
そこで本発明では、仮止め部材8には、上記1の水圧に十分に耐え得る強度を与えている。また、上記2,3の圧力荷重が仮止め部材8に作用するのを阻止する構成として、反掘進方向制限手段と回転方向制限手段を設けている。さらに、上記4の衝撃荷重を緩和する構成として緩衝手段を設けている。
反掘進方向制限手段は、例えば本実施形態では、アウターピース4の段差部47から構成されている。この段差部47は、インナーピース6に作用する反掘進方向の荷重(上記2の土圧・打撃荷重)を受け止め、それによって仮止め部材8に当該荷重が作用するのを阻止する役割を担っている。
回転方向制限手段は、例えば本実施形態では、インナーピースのキー63とアウターピースのキー溝53から構成されている。キー溝53に差し込まれたキー63は、インナーピース6に作用する回動方向の荷重(上記3の周方向荷重)を受け止め、それによって仮止め部材8に当該荷重が作用するのを阻止する役割を担っている。
緩衝手段は、例えば本実施形態では、アウターピースの差込孔49に埋設された緩衝材51から構成されている。この緩衝材51はアウターピース4と仮止め部材8との間に介在し、該仮止め部材に対する衝撃荷重(上記4の衝撃荷重)を緩和する役割と、仮止め部材の脱落を防止する役割とを担っている。緩衝材51は、例えばゴムや樹脂などの弾性部材から構成される。
(削孔方法)
次に、上述した削孔装置を用いた削孔方法について説明する。
はじめに、アウターピース4の先端開口部からインナーピース6を挿し込んで、該インナーピースをアウターピースに対し仮止め部材8で仮止めする。次に、図1に示すように、組み立てた削孔装置1を、ロッド3の先端に連結する。
続いて、削孔装置1を先端に備えたロッド3をボーリングマシンにセットして地盤に貫入させ、ロッドを継ぎ足しながら削孔装置1を目標深度又は目標位置まで掘進させる。その際、ロッド3を回転させながら押し込み、同時に、ロッド内の通路を介して削孔水を送水する。ボーリングマシンからの推進力・打撃力・回転力は、ロッド3を介してその先端の削孔装置1へと伝達される。また、ロッド3を介して送られた削孔水は、送水孔69を介して土圧受け面67の前方へ吐出される。
削孔時にインナーピース6の押出方向に作用する水圧は、仮止め部材8によって受け止められる。
また、ロッド3の押し込み時にインナーピース6に作用する反掘進方向の土圧や打撃荷重は、仮止め部材8に作用することなく、アウターピースの段差部47によって受け止められる。
また、ロッド3の正転又は逆転時にインナーピース6に作用する回動方向の荷重は、仮止め部材8に作用することなく、インナーピースのキー63によって受け止められる。
また、削孔時に仮止め部材8に作用し得る衝撃荷重は、アウターピース4と仮止め部材8との間に介在する緩衝材51によって緩和される。
したがって、削孔過程で受ける種々の外力にかかわらず仮止め部材8の破断は確実に防止され、削孔が完了するまでは、図4(A)に示すように、インナーピース6がアウターピース4に収容された状態が確実に維持される。
削孔装置1が目標深度又は目標位置に達したら、インナーピース6は不要になる。そこで図4(B)に示すように、アウターピース4からインナーピース6を除去する操作を行う。具体的には、送水ポンプからの削孔水の流量を上げて、ロッド3内の水圧を上昇させる。この水圧は、インナーピース6を前方へ押し出す方向に作用するが、仮止め部材の破断限界を超えるまでは、該仮止め部材によってインナーピース6の抜け止め状態が維持される。なお、送水孔69をノズル形状にすることにより、削孔水の水圧上昇を効率よく行うことも可能である。
インナーピース押出方向の水圧が削孔時の水圧を大幅に超え、さらに水圧による押出し力が仮止め部材の破断限界を超えると、該仮止め部材が破断し、同時に、インナーピース6がアウターピース4の前方へ押し出される。インナーピース6が押し出されてアウターピース4が貫通したら、貫入したロッド3及び削孔装置1を利用する次工程の作業に移る。
次工程の作業とは、例えばコンパクショングラウチング工法であれば、低流動性改良材を、特殊注入ポンプで強制圧送し、貫入させたロッドを介して地盤中に圧入する作業である。また、例えば薬液注入工法であれば、ロッド内に注入管を挿入し、該注入管を介して薬液を地盤中に注入する作業である。また、例えばアンカー工法であれば、ロッド内にテンドンを挿入する作業である。
なお、削孔が完了してアウターピース4からインナーピース6を押し出す際には、作業効率を上げるために、さらに次のような手法を採用することもできる。
インナーピース6を押し出すための操作において、図5に示すように、インナーピースの押し出しを補助する押出補助部材5を併用してもよい。ここでいう「押出補助部材」とは、水圧を受けてロッド3内で押し流される外観スポンジ状のブロック体である。この押出補助部材5を、地表側にあるロッド3の基端からロッド内に押込み、水圧を利用して先端側へ押し流す。インナーピース6の手前まで押し流された押出補助部材5は、インナーピースの送水孔を塞いで送水を妨げるので、ロッド内での水圧の上昇を加速させる。
押出補助部材5は、上述したように水圧の上昇を加速させるものであれば、特に限定されないが、効率よく水圧を上昇させるためには、樹脂などで形成し不透水性を持たせることが好ましい。また、貫入させたロッドが湾曲している場合でも、ロッド内を円滑に流れてインナーピース手前に達するように、弾性を持たせてもよい。
また図6に示すように、ロッド3内で押し流される押出補助部材5は、金属ブロックなどからなりロッド先端側でインナーピース6に当接する押出し材と、ロッド3の内壁を洗浄するロッド洗浄手段とを含んで構成されてもよい。ここでいう「ロッド洗浄手段」とは、ロッド3内を押し流される過程で、ロッド内壁面に摺接し、該内壁に付着した錆びや土粒子、改良材などを掻取って内壁を洗浄する機能を持った手段をいう。このロッド洗浄手段は、例えば、押し流されながらロッドの内壁に摺接可能なゴム製または樹脂製または金属製のブロックや環状部材、あるいはスポンジなどから構成することができる。またロッド洗浄手段の両端には、図6に示すように、ゴムなどの不透水性材を持たせてもよい。
また、ロッドの基端と送水ポンプとの間に流量圧力監視装置を接続し、インナーピースを押し出すための送水操作において、流量・水圧の一方又は双方の値を監視し、その値に基づいてアウターピースの貫通状況を把握するようにしてもよい。
(変形例・応用例)
上述した実施形態は本発明の実施態様の一例であって、特許請求の範囲の記載の範囲内で種々の変形例を採用することが可能である。
例えば、図7に示すような曲線ボーリング(自在ボーリング)を行う場合には、図8に示す変形例を採用することができる。図8において、前述した実施形態の削孔装置1と同様の構成については、同じ符号を用いている。
図8の変形例に係る削孔装置2は、竹槍形状の筒状のアウターピース4bと、傾斜した土圧受け面が形成されたインナーピース6bとを有している。アウターピース4bの土圧受け面55と、インナーピース6bの土圧受け面73は、傾斜角度が同一であり、インナーピース6bを収容した状態で面一の斜面を形成するように位置決めされる。
この削孔装置を用いて曲線ボーリングを行う場合において、直線削孔を行うときには、ロッド3を連続回転させて、削孔装置の先端面(アウターピースとインナーピースの傾斜した土圧受け面55,73)を特定の回転角に固定させないようにする。一方、曲線削孔を行うときには、ロッド3を回転させることなく押し込む。これにより、傾斜した土圧受け面55,73が、同一方向の土圧を継続的に受けて掘進方向が変化するので、この押し込み操作をそのまま継続することによって、曲線削孔がなされる。
また、本発明の削孔装置は、特許文献1に開示されたような回収方式ではなく、インナーピースを押し出す方式を採用しているため、インナーピースの先端に、傾斜した土圧受け面の面積を拡大させるビットプレートを設けてもよい。例えば図9に示すようなヘラ状のビットプレート75を設けることにより、地盤からの反力を大きく取ることができ、曲線削孔時に掘進方向が曲がりやすくなるので、軟弱な地盤に対してより精密な方向制御を行うことが可能になる。
また、上述した実施形態では、図10(A)に示すように緩衝材51をアウターピース4側の差込孔に埋設し、仮止め部材8とアウターピース4との間に介在させる態様を例示した。しかしながら、仮止め部材および緩衝材の態様はこれに限定されず、仮止め作用と緩衝作用を発揮可能な種々の変形例を採用することができる。
例えば図10(B)に示すように、アウターピース4及びインナーピース6の各差込孔に緩衝材51を埋設してもよく、或いは、図10(C)に示すようにインナーピース6側の差込孔のみに緩衝材51を埋設してもよい。
また図10(D)に示すように、予め仮止め部材8の外周全面に筒状の緩衝材51を装着しておき、これを差し込むようにしてもよい。
さらに図10(E)に示すように、「緩衝機能」と「破断可能な仮止め機能」の双方を備えた一体型の仮止め部材8を差し込むようにしてもよい。すなわち、仮止め部材に、「緩衝手段」としての機能を持たせるようにしてもよい。
さらに、図10(A)(B)(C)のいずれかに示す配置と、図10(D)又は(E)に示す態様を適宜組み合わせることも可能である。
また、削孔装置の送水孔は、図3や図8に示すような形態に限定されず、例えば、インナーピースとアウターピースの間の隙間の一部を送水孔として構成してもよい。或いは、インナーピースの外周面の軸方向に刻設した溝と、アウターピースの内周面の軸方向に刻設した溝との組み合わせで、一つの送水孔を構成するようにしてもよい。また、図10(E)に示すように複数形成するようにしてもよい。
また、削孔の際には、地盤内における削孔装置の位置情報や削孔線形を計測するジャイロなどの計測装置を併用することも可能である。またその場合には、図11に示すように、計測装置用ガイドロッド76を設けるようにしてもよい。
また、削孔装置に連結するロッドとして、好ましくは、凹凸のない滑らかな内壁面を有し、内径が均一であって、連結部に段差が生じることのないロッドを用いるようにする。これにより、例えばコンパクショングラウチング工法に用いる場合には、後の工程で低流動性改良材を圧送する際に、内壁での改良材の引っかかりによる脱水や圧力損失が生じることがなく、所望の固結体を地盤内に造成できる。また、例えば薬液注入工法に用いる場合には、注入管の挿入作業およびロッドの引抜き作業において、注入管がロッド内壁に引っかかることがない。また、例えばアンカー工法に用いる場合には、テンドンの挿入作業およびロッド(ケーシング)の引抜き作業において、テンドンがロッド内壁に引っかかることがない。
以下、本発明の具体的実施例について説明する。
[実施例1]
本発明の水圧貫通式削孔装置を用いて、水圧でインナーピースを除去する際の作用効果を確認した。なお本実験では、水圧の上昇を加速させる「押出補助部材」は用いなかった。具体的な実験方法は次のとおりである。
図1〜図3に示す形態の水圧貫通式削孔装置を用意し、インナーピースをアウターピースに対し仮止めした状態で、ロッドの先端に連結した。ロッドの他端側は、送水ホースを介して送水ポンプに接続した。続いて、アウターピースからインナーピースを水圧で押し出すために、削孔水の流量を上昇させた。流量の上昇開始からアウターピースの貫通が確認できるまでの間、削孔水の流量・水圧と経過時間を計測するとともに、アウターピースの貫通状況を監視した。
実験結果を図12及び図13に示す。
図12は、アウターピースが貫通するまでの削孔水の流量と水圧の変化を示すグラフである。図13は、アウターピースが貫通するまでの流量と水圧の関係を示すグラフである。
図12及び図13に示すように、流量の上昇に伴って水圧も上昇し、300秒の経過時点で流量及び水圧がピーク(図において矢印で示す)に達し、その直後に、流量と水圧のいずれもが急降下した。
一方、貫通状況を監視し続けた結果、流量及び水圧がピークに達したときに、インナーピースが押し出されるのを確認した。また、押し出された後に仮止め部材の破断状況を確認したところ、すべての仮止め部材が破断しているのが確認された。
以上の実験結果より、水圧を上げることによって、仮止め部材を破断できるとともに、インナーピースを押し出せることが確認された。
また、流量及び水圧がピークに達したタイミングで、インナーピースが押し出されたことから、流量及び水圧の少なくとも何れか一方を監視することによって、アウターピースの貫通(インナーピースの除去)を把握できることが確認された。
[実施例2]
水圧の上昇を加速させる「押出補助部材」を併用して、上述した実施例1と同様の実験を行い、押出補助部材の作用効果を確認した。
実験結果を図14に示す。図14は、アウターピースが貫通するまでの削孔水の流量と水圧の変化を示すグラフである。
図14において、A,B,C,Dの各区間の値は、それぞれ次の状況下における値を示している。
A区間:押出補助部材をロッド内に押し込んでいる状況。
B区間:押出補助部材が押し流されて先端に到達して、先端が閉塞され、
水圧が上昇し、流量が低下している状況。
C区間:仮止め部材が破断し、インナーピースが押し出される状況。
D区間:インナーピースが完全に取り除かれた状況。
図14に示す実験結果より、B区間において水圧の急上昇が認められ、実験1の場合と比較して短時間で水圧がピーク値(図において矢印で示す)に達することが確認された。すなわち、押出補助部材を用いた場合には、より速やかにインナーピースを除去できることが分かる。
また図14に示す実験結果より、C区間に至ると水圧が急降下する一方で、流量が急上昇していることが分かる。したがって、押出補助部材を用いる場合でも、流量及び水圧の少なくとも何れか一方を監視することによって、アウターピースの貫通(インナーピースの除去)を把握できることが確認された。
本発明の削孔装置は、従来技術として前述した削孔装置の代わりにあらゆる削孔工程で用いることが可能である。また本発明の削孔装置を適用可能な工法は、コンパクショングラウチング工法、薬液注入工法、アンカー工法に限定されず、削孔を伴うあらゆる工法に適用可能である。
1 水圧貫通式削孔装置
2 水圧貫通式削孔装置(変形例)
3 ロッド(ケーシングパイプ)
4 アウターピース
4b アウターピース
5 押出補助部材
6 インナーピース
6b インナーピース
8 仮止め部材(抜け止め部材)
41 ビット
43 ネジ部
45 内空部
47 段差部(反掘進方向制限手段)
49 差込孔
51 緩衝材(緩衝手段)
53 キー溝(回転方向制限手段)
55 土圧受け面
61 差込孔
63 キー(回転方向制限手段)
65 Oリング
67 土圧受け面
68 水圧受け面
69 送水孔
71 環状凹部
73 土圧受け面
75 ビットプレート
76 計測装置用ガイドロッド
91 削孔ビット体
92 削孔ビット体
93 ドライブシュー
94 ドライブシュー
96 係合部
97 係合部
98 鉤形係合部
99 鉤形係合部

Claims (8)

  1. ロッドの先端に連結されるアウターピースと、
    前記アウターピースに押し出し可能に収容されたインナーピースと、
    前記アウターピースに対し前記インナーピースを仮止めし、破断可能な仮止め部材と、
    前記ロッドを介して送水される削孔水を吐出するための送水孔と、を有し、
    必要量の削孔を終えたら水圧により前記仮止め部材を破断させてインナーピースを押し出すように構成されたことを特徴とする水圧貫通式削孔装置。
  2. 前記インナーピースに作用する反掘進方向の荷重を受け止めて、前記破断可能な仮止め部材に当該荷重が作用するのを阻止する反掘進方向制限手段と、
    前記インナーピースに作用する回転方向の荷重を受け止めて、前記破断可能な仮止め部材に当該荷重が作用するのを阻止する回転方向制限手段と、
    をさらに有することを特徴とする請求項1記載の水圧貫通式削孔装置。
  3. 前記破断可能な仮止め部材に対する衝撃を緩和するための緩衝手段を
    さらに有することを特徴とする請求項1又は2記載の水圧貫通式削孔装置。
  4. 前記インナーピースを押し出す際に用いられ、ロッド内で水圧を受けて押し流されるように構成され、水圧の上昇を加速させる押出補助部材を
    さらに有することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の水圧貫通式削孔装置。
  5. 前記押出補助部材は、ロッド内を押し流される過程でロッド内壁に摺接するロッド洗浄手段を備えることを特徴とする請求項4記載の水圧貫通式削孔装置。
  6. 請求項1記載の水圧貫通式削孔装置を用いた削孔方法であって、
    ロッドの先端に水圧貫通式削孔装置を連結し、
    ロッドを押し込みつつ削孔水を送水しながら削孔し、
    必要量の削孔を終えたらロッド内の水圧を上げて、その水圧によって仮止め部材を破断するとともにアウターピースからインナーピースを押し出す、
    ことを特徴とする削孔方法。
  7. 前記インナーピースを押し出す工程において、
    水圧の上昇を加速させる押出補助部材をロッド内に入れ、ロッドの先端側へ水圧で押し流すことを特徴とする請求項6記載の削孔方法。
  8. 前記インナーピースを押し出すときに、流量及び水圧の少なくとも何れか一方の値を監視することを特徴とする請求項6又は7記載の削孔方法。
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