JP2012187457A - 窒素酸化物選択還元触媒とその製造方法 - Google Patents

窒素酸化物選択還元触媒とその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】低温域から高温域まで窒素酸化物浄化活性を示し、かつ、耐熱性を有する窒素酸化物選択還元触媒とその製造方法を提供する。
【解決手段】窒素酸化物選択還元触媒は、セリアジルコニア複合固溶体を含む。セリアジルコニア複合固溶体は単相を形成している。酸化セリウムの含有量は25重量%以上50重量%以下である。また、この窒素酸化物選択還元触媒の製造方法は、少なくともセリウム源とジルコニウム源と酸化剤との混合液をアルカリ中和し、ろ過し、洗浄する第1工程と、第1工程で得られた混合液を加熱熟成する第2工程と、第2工程で得られた混合液をろ過し、洗浄し、乾燥し、焼成する第3工程とを備える。
【選択図】なし

Description

本発明は、一般的には窒素酸化物選択還元触媒とその製造方法に関し、特定的には、アンモニアまたは尿素を還元剤として窒素酸化物含有ガス中の窒素酸化物を選択的に窒素に接触還元するための触媒とその製造方法に関する。
従来、脱硝技術の1つとしてNH(urea)−SCR(選択的接触還元、Selective Catalytic Reduction)が古くから知られている。NH(urea)−SCRは近年、自動車の排気ガスの後処理方法としても利用されている。NH(urea)−SCRの脱硝触媒としては、V/TiO系が一般的に使用されている。しかし、Vの融点は690℃と低いので、V/TiO系の触媒は高温に曝されると性能低下が著しい。
また、Vは大気中に放出してはいけない6つの第一遷移金属の1つである。そのため、V/TiO系の触媒は自動車の排気ガスを浄化する用途には不向きである。
そのため、自動車の排気ガスを浄化する用途には、従来、Fe/ゼオライトが使用されている。例えば、特開2008−81348号公報(特許文献1)には、SiO/Alのモル比が20以上40未満、SEM粒径が0.35μm以上、X線結晶回折(302)面の半値幅が0.30°未満、なおかつNH吸着量が1mmol/gであるSCR触媒用β型ゼオライトと、これを用いる窒素酸化物の還元浄化方法が記載されている。特開2007−38182号公報(特許文献2)には、触媒活性な金属種を担持させることなく、水素型および/またはアンモニウム型のβゼオライトからなる触媒を、一酸化炭素および二酸化窒素を含有する処理ガスにアンモニアを還元成分として添加し、接触させることを特徴とする窒素酸化物を接触還元浄化する方法が記載されている。国際公開WO2006/011575号(特許文献3)には、鉄によりイオン交換されたゼオライト、好ましくはβゼオライトからなる担体と、該担体に担持された酸化第二鉄とを有してなる脱硝触媒が提供されることが記載されている。
しかしながら、特許文献1〜3に記載されているように窒素酸化物の還元浄化にゼオライトを使用する場合、次の問題がある。すなわち、ゼオライトが高温水蒸気に曝されると脱アルミニウムが起き、ゼオライトの結晶構造が崩壊して性能が劣化する。
また、貴金属をNH−SCR触媒として用いることも考えられる。しかしながら、貴金属を触媒として用いると、亜酸化窒素(NO)が大量に発生することがVita A. Kondratenko、外1名、「Applied Catalysis B:Environmental」、Elsevier B.V.、2007年、第70巻、p.111−118(非特許文献1)に記載されている。亜酸化窒素は、NHが解離吸着して生成したNHとNOとの相互作用等によって生成すると考えられている。亜酸化窒素は温室効果ガスであるので、大量に発生することは好ましくない。
そこで、近年、酸化セリウムを主成分とした触媒が提案されている。例えば、Gongshin Qi、外2名、「Applied Catalysis B:Environmental」、Elsevier B.V.、2004年、第51巻、p.93−106(非特許文献2)と、Ye Li、外4名、「Chemical Communication」、The Royal Society of Chemistry、2008年、p.1470−1472(非特許文献3)には、150℃以下の低温域において活性が高いMnO/CeO二元複合酸化物と、これに第3の金属酸化物を加えた三元複合酸化物よりなるSCR触媒が記載されている。
特開2010−142688号公報(特許文献4)には、酸化セリウムと酸化マンガンと酸化タングステンとをCeO>MnO>WOの組成比で含んでいる三元複合酸化物が記載されている。
特開2011−5462号公報(特許文献5)には、特に低温領域においても高いNO浄化活性を示す窒素酸化物還元を提供することを目的として、酸化セリウムまたはセリウムを含む複合酸化物と、酸化タングステンとを含み、セリウムの含有量がCeO2換算で30質量%以上であり、タングステンとセリウムとのモル比が0.01〜0.2である窒素酸化物浄化用触媒が記載されている。
特開2008−49290号公報(特許文献6)には酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化セリウムからなる複合金属酸化(WO/ZrO/CeO)を含む窒素酸化物浄化触媒が記載されている。
特開2008−81348号公報 特開2007−38182号公報 国際公開WO2006/011575号 特開2010−142688号公報 特開2011−5462号公報 特開2008−49290号公報
Vita A. Kondratenko、外1名、「Applied Catalysis B:Environmental」、Elsevier B.V.、2007年、第70巻、p.111−118 Gongshin Qi、外2名、「Applied Catalysis B:Environmental」、Elsevier B.V.、2004年、第51巻、p.93−106 Ye Li、外4名、「Chemical Communications」、The Royal Society of Chemistry、2008年、p.1470−1472
しかしながら、特許文献4に記載されている三元複合酸化物や特許文献5に記載されている窒素酸化物浄化用触媒は、耐熱性がよくない。そのため、排気ガス環境が低温であれば窒素酸化物を浄化する効果を発揮するが、これらの触媒が700℃の高温下に曝されると、急激な比表面積の低下を招き、活性も著しく低下する。
一方、特許文献6に記載の窒素酸化物浄化触媒は、耐熱性はよい。しかしながら、この触媒では、CeOの含有量が10〜30%と比較的少ない。そのため、初期性能、すなわち、低温域での窒素酸化物浄化活性が低下することが懸念される。
そこで、この発明の目的は、低温域から高温域まで窒素酸化物浄化活性を示し、かつ、耐熱性を有する窒素酸化物選択還元触媒とその製造方法を提供することである。
この発明に従った窒素酸化物選択還元触媒は、セリアジルコニア複合固溶体を含む。セリアジルコニア複合固溶体は、単相を形成している。酸化セリウムの含有量は25重量%以上50重量%以下である。
セリアとジルコニアとが固溶体を形成していない場合には、触媒の酸化力が弱く、また、比表面積が小さくなる。さらに、セリアジルコニア複合固溶体が単相を形成することにより、セリア量を高めても、触媒は高い耐熱性を有し、かつ、比較的高い活性を示すことが本発明者らの鋭意検討によって明らかになった。
そこで、窒素酸化物選択還元触媒がセリアジルコニア複合固溶体を含み、セリアジルコニア複合固溶体は、単相を形成しており、酸化セリウムの含有量は25重量%以上50重量%以下であるようにすることにより、低温域から高温域まで窒素酸化物浄化活性を示し、かつ、耐熱性を有する窒素酸化物選択還元触媒を提供することができる。
この発明に従った窒素酸化物選択還元触媒は、CuKα放射線を用いて測定される粉末X線回折パターンにおいて、2θ=29.4°−30.0°、33.9°−34.7°、48.8°−49.9°、58.3°−59.5°、61.3°−62.3°の位置にピークが観測され、かつ、2θ=29.4°−30.0°の位置のピーク強度の3%以上の強度を有するピークが、10°<2θ<70°の範囲内において2θ=29.4°−30.0°、33.9°−34.7°、48.8°−49.9°、58.3°−59.5°、61.3°−62.3°以外の位置に観測されないことが好ましい。
この発明に従った窒素酸化物選択還元触媒においては、当該窒素酸化物選択還元触媒の一次粒子径が5nm以上50nm以下であることが好ましい。
この発明に従った窒素酸化物選択還元触媒においては、当該窒素酸化物選択還元触媒中の結晶子は、(111)面において10nm以下の大きさであることが好ましい。
このようにすることにより、触媒中の活性点を増大させることができる。
この発明に従った窒素酸化物選択還元触媒においては、当該窒素酸化物選択還元触媒のBET比表面積が40m/g以上であることが好ましい。
このようにすることにより、触媒中の活性点を増大させることができる。
この発明に従った窒素酸化物選択還元触媒は、酸化タングステンを含むことが好ましい。
酸化タングステンを含むことによって、酸性度と酸化力とが高まり、窒素酸化物の還元反応を促進させて窒素酸化物選択還元触媒の活性を高めることができる。また、酸化タングステンを含むことによって、窒素酸化物選択還元触媒の耐熱性を高めることができる。
この発明に従った窒素酸化物選択還元触媒においては、酸化タングステンの含有量は3重量%以上18重量%以下であることが好ましい。
酸化タングステンの含有量が18重量%を超えると、18%以下の場合と比較して、比表面積が低下する場合がある。比表面積が減少すると、活性化点が減少するため、好ましくない。
上記のいずれかの窒素酸化物選択還元触媒の製造方法は、第1工程と第2工程と第3工程を備えることが好ましい。第1工程は、少なくともセリウム源とジルコニウム源と酸化剤との混合液をアルカリ中和し、ろ過し、洗浄する工程である。第2工程は、第1工程で得られた混合液を加熱熟成する工程である。第3工程は、第2工程で得られた混合液をろ過し、洗浄し、乾燥し、焼成する工程である。
第1工程においては、セリウム源とジルコニウム源と酸化剤との混合物をアルカリ中和し、水酸化物を得る。酸化剤を混合させるのは、セリウムの出発原料がIII価のときには過酸化水素などの過酸を加え、IV価にする必要があるためである。セリウムをIV価にすればセリウムのイオン半径がジルコニウムのイオン半径に近くなり、セリウムとジルコニウムとが固溶しやすくなる。第1工程においては中和の後、混合液をろ過し、ろ取物を洗浄する。これは、ろ取物から硫酸や硝酸イオンなどのイオン成分を取り除くためである。
第2工程においては、混合液を加熱熟成して水酸基を増大させる。このようにすることにより、最終的に得られる触媒の比表面積が増大する。また、結晶成長しにくくなり、結晶子径が小さくなる。加熱熟成は、硫酸や硝酸イオンなどのイオン成分を取り除いてから、すなわち、第1工程においてろ過、洗浄を経てから行われる。イオン成分を含んだ状態で加熱熟成すると、最終的に得られる触媒の比表面積を増大させることができないためである。
第3工程においては、第2工程で得られた混合液をろ過し、洗浄し、乾燥し、焼成して触媒を得る。
このようにすることにより、低温域から高温域まで窒素酸化物浄化活性を示し、かつ、耐熱性を有する窒素酸化物選択還元触媒の製造方法を提供することができる。
この発明に従った窒素酸化物選択還元触媒の製造方法においては、酸化剤は酸化力がある過酸またはオキソ酸であることが好ましい。
以上のように、この発明によれば、低温域から高温域まで窒素酸化物浄化活性を示し、かつ、耐熱性を有する窒素酸化物選択還元触媒とその製造方法を提供することができる。
実施例1の触媒のX線回折パターンを示す図である。 比較例1と比較例2の触媒のX線回折パターンを示す図である。 実施例1の触媒の透過型電子顕微鏡像の写真である。 700℃で24時間保持した後のハニカム触媒構造体のNO転化率を示す図である。 800℃で3時間保持した後のハニカム触媒構造体のNO転化率を示す図である。
この発明に従った一つの実施形態の窒素酸化物選択還元触媒は、セリアジルコニア複合固溶体を含む。セリアジルコニア複合固溶体は、単相を形成している。酸化セリウムの含有量は24重量%以上40重量%以下である。
このようにすることにより、低温域から高温域まで窒素酸化物浄化活性を示し、かつ、耐熱性を有する窒素酸化物選択還元触媒を提供することができる。
なお、窒素酸化物選択還元触媒中のセリアジルコニア複合固溶体が単相であることは、例えば、X線回折パターンを測定することによって確認できる。
窒素酸化物選択還元触媒は、CuKα放射線を用いて測定される粉末X線回折パターンにおいて、2θ=29.4°−30.0°、33.9°−34.7°、48.8°−49.9°、58.3°−59.5°、61.3°−62.3°の位置にピークが観測され、かつ、2θ=29.4°−30.0°の位置のピーク強度の3%以上の強度を有するピークが、10°<2θ<70°の範囲内において2θ=29.4°−30.0°、33.9°−34.7°、48.8°−49.9°、58.3°−59.5°、61.3°−62.3°以外の位置に観測されないことが好ましい。
また、窒素酸化物選択還元触媒においては、当該窒素酸化物選択還元触媒の一次粒子径が5nm以上50nm以下であることが好ましい。
窒素酸化物選択還元触媒においては、当該窒素酸化物選択還元触媒中の結晶子は、(111)面において10nm以下の大きさであることが好ましい。このようにすることにより、触媒中の活性点を増大させることができる。
本発明に従った窒素酸化物選択還元触媒の結晶構造は立方晶または正方晶であることが好ましい。触媒中の結晶子の大きさは(111)面において10nm以下である。なお、結晶子の大きさは、後述するようにX線回折パターンのピークの半値幅から求められる。
窒素酸化物選択還元触媒のBET比表面積は、40m/g以上であることが好ましい。このようにすることにより、触媒中の活性点を増大させることができる。
窒素酸化物選択還元触媒は、酸化タングステンを含むことが好ましい。酸化タングステンを含むことによって、酸性度と酸化力とが高まり、窒素酸化物の還元反応を促進させて窒素酸化物選択還元触媒の活性を高めることができる。また、酸化タングステンを含むことによって、窒素酸化物選択還元触媒の耐熱性を高めることができる。
窒素酸化物選択還元触媒においては、酸化タングステンの含有量は3重量%以上18重量%以下であることが好ましい。酸化タングステンの含有量が18重量%を超えると、18%以下の場合と比較して、比表面積が低下する場合がある。比表面積が減少すると、活性化点が減少するため、好ましくない。
次に、上記の窒素酸化物選択還元触媒の製造方法について説明する。
本発明の窒素酸化物選択還元触媒の製造方法の1つの形態は、第1工程と第2工程と第3工程を備える。第1工程は、少なくともセリウム源とジルコニウム源と酸化剤との混合液をアルカリ中和し、ろ過し、洗浄する工程である。第2工程は、第1工程で得られた混合液を加熱熟成する工程である。第3工程は、第2工程で得られた混合液をろ過し、洗浄し、乾燥し、焼成する工程である。
第1工程においては、セリウム源とジルコニウム源と酸化剤との混合物をアルカリ中和し、水酸化物を得る。酸化剤を混合させるのは、セリウムの出発原料がIII価のときには過酸化水素などの過酸を加え、IV価にする必要があるためである。セリウムをIV価にすればセリウムのイオン半径がジルコニウムのイオン半径に近くなり、セリウムとジルコニウムとが固溶しやすくなる。第1工程においては中和の後、混合液をろ過し、ろ取物を洗浄する。これは、ろ取物から硫酸や硝酸イオンなどのイオン成分を取り除くためである。
第2工程においては、混合液を加熱熟成して水酸基を増大させる。このようにすることにより、最終的に得られる触媒の比表面積が増大する。また、結晶成長しにくくなり、結晶子径が小さくなる。加熱熟成は、硫酸や硝酸イオンなどのイオン成分を取り除いてから、すなわち、第1工程においてろ過、洗浄を経てから行われる。イオン成分を含んだ状態で加熱熟成すると、最終的に得られる触媒の比表面積を増大させることができないためである。
第3工程においては、第2工程で得られた混合液をろ過し、洗浄し、乾燥し、焼成して触媒を得る。
特に、第1工程において酸化剤を用ることによって、セリアジルコニア複合固溶体を単相にすることができる。
このようにすることにより、低温域から高温域まで窒素酸化物浄化活性を示し、かつ、耐熱性を有する窒素酸化物選択還元触媒の製造方法を提供することができる。
また、窒素酸化物選択還元触媒の製造方法においては、酸化剤は酸化力がある過酸またはオキソ酸であることが好ましい。
以上の効果を確認するために、次の実施例1〜実施例2と、比較例1〜比較例6の触媒を調製し、性能を比較した。
(実施例1)
第1工程として、次の工程を行った。すなわち、硫酸ジルコニウム・4水和物1.66kgと、硝酸セリウム・6水和物816gとを水5Lに溶解した。得られた溶液に35%過酸化水素水500gを加えて、反応溶液とした。この反応溶液を、28%アンモニア水と1Lの水とを含む容器内に、攪拌しながら、pH8.5になるまでゆっくりと滴下して中和した。生成した沈殿物にメタタングステン酸アンモニウム水溶液180gを滴下した。その後、ろ過し、ろ取された沈殿物を水洗した。次に、第2工程として、得られた沈殿物を水と混合して懸濁液とした。懸濁液を97℃で3時間、加熱熟成させた。最後に、第3工程として、加熱熟成されたものを再びろ過し、ろ取された沈殿物を水洗した。得られた沈殿物を、140℃で15時間乾燥させた。乾燥された沈殿物を粉砕した。粉砕された沈殿物を700℃で6時間焼成した。このようにして、酸化ジルコニウム/酸化セリウム/酸化タングステン複合酸化物粉体(酸化物基準重量比57/32/9)が定量的収量で得られた。
(実施例2)
セリウム源とジルコニウム源の量を変えて、実施例1と同様の工程を行った。酸化ジルコニウム/酸化セリウム/酸化タングステン複合酸化物粉体(酸化物基準重量比56/35/9)が定量的収量で得られた。
(比較例1)
硫酸ジルコニウム・4水和物1.66kgと、硝酸セリウム・6水和物816gとを水5Lに溶解して、反応溶液とした。この反応溶液を、28%アンモニア水と1Lの水とを含む容器内に、攪拌しながら、pH8.5になるまでゆっくりと滴下して中和した。生成した沈殿物にメタタングステン酸アンモニウム水溶液180gを滴下した。得られた混合液を97℃で3時間、加熱熟成させた。加熱熟成されたものをろ過し、ろ取された沈殿物を水洗した。得られた沈殿物を、140℃で15時間乾燥させた。乾燥された沈殿物を700℃で6時間焼成した。焼成された沈殿物を粉砕した。このようにして、酸化ジルコニウム/酸化セリウム/酸化タングステン複合酸化物粉体(酸化物基準重量比57/32/9)が定量的収量で得られた。
このように、比較例1の触媒の製造工程では、実施例1の触媒の製造工程と異なる主な点として、実施例1の第1工程において過酸化水素水を加えなかった。
(比較例2)
硫酸ジルコニウム・4水和物1.66kgと、硝酸セリウム・6水和物816gとを水5Lに溶解した。得られた溶液に35%過酸化水素水500gを加えて、反応溶液とした。この反応溶液を、28%アンモニア水と1Lの水とを含む容器内に、攪拌しながら、pH8.5になるまでゆっくりと滴下して中和した。生成した沈殿物にメタタングステン酸アンモニウム水溶液180gを滴下した。その後、ろ過し、ろ取された沈殿物を水洗した。得られた沈殿物を、140℃で15時間乾燥させた。乾燥された沈殿物を700℃で6時間焼成した。焼成された沈殿物を粉砕した。このようにして、酸化ジルコニウム/酸化セリウム/酸化タングステン複合酸化物粉体(酸化物基準重量比57/32/9)が定量的収量で得られた。
このように、比較例2の触媒の製造工程では、実施例1の触媒の製造工程と異なる主な点として、実施例1の第2工程の加熱熟成を行わなかった。
(比較例3)
酸化セリウム粉体(比表面積115m/g)91gを水と混合して懸濁液とした。この懸濁液にメタタングステン酸アンモニウム水溶液18gを加えた。得られた混合物をろ過し、ろ取された沈殿物を水洗した。水洗された沈殿物を140℃で15時間乾燥させた。その後、700℃で6時間焼成した。焼成された沈殿物を粉砕した。このようにして、酸化セリウム/酸化タングステン複合酸化物粉体(酸化物基準重量比91/9)が定量的収量で得られた。
このように、比較例3の触媒の製造工程では、実施例1の触媒の製造工程と異なる主な点として、実施例1の第1工程においてジルコニウム源を加えなかった。
(比較例4)
セリウム源とジルコニウム源の量を変えて、実施例1と同様の工程を行った。酸化ジルコニウム/酸化セリウム/酸化タングステン複合酸化物粉体(酸化物基準重量比71/20/9)が定量的収量で得られた。
(比較例5)
セリウム源とジルコニウム源の量を変えて、実施例1と同様の工程を行った。酸化ジルコニウム/酸化セリウム/酸化タングステン複合酸化物粉体(酸化物基準重量比38/53/9)が定量的収量で得られた。
(比較例6)
セリウム源とジルコニウム源の量を変えて、実施例1と同様の工程を行った。酸化ジルコニウム/酸化セリウム/酸化タングステン複合酸化物粉体(酸化物基準重量比61/20/19)が定量的収量で得られた。
(結晶構造解析)
上述の実施例1と比較例1、比較例2の触媒について、X線回折パターンを測定した。スペクトリス株式会社製X’Pert−Pro MPDを用いて、管電流40mA、管電圧45kVとして、CuKα線で測定した。
実施例1の触媒について得られたX線回折パターンを図1に示す。また、図1に示すX線回折パターンから読み取られるピークの位置、面間隔(d)、ミラー指数、相対強度を表1に示す。
図1と表1とに示すように、実施例1の触媒のX線回折パターンには、特徴的なピークが2θ=29.6°、34.3°、49.5°、58.9°、61.8°(10°≦2θ≦70°)に観測された。これらのピークは、セリアジルコニア複合固溶体に帰属するピークである。一方、2θ=29.6°の位置のピーク強度の3%以上の強度を有するピークは、10°<2θ<70°の範囲内において、2θ=29.6°、34.3°、49.5°、58.9°、61.8°以外の位置に観測されなかった。
このことから、実施例1の触媒においては、セリアジルコニア複合固溶体は単相を形成していることがわかった。
図2に示すように、比較例1の触媒について得られたX線回折パターンにおいては、比較的強度の強いピークが2θ=30.1°、33.2°、34.8°、50.1°、59.0°、59.9°、62.3°(10°≦2θ≦70°)に観測された。また、比較例1の触媒について得られたX線回折パターンでは、例えば2θ=28.2°など、図2に矢印Aで示す位置にもピークが観測された。図2に矢印Aで示すピークは、酸化セリウムに帰属されるピークである。このように、比較例1の触媒のX線回折パターンでは、2θ=30.1°、33.2°、34.8°、50.1°、59.0°のピークと図2に矢印Aで示すピークのように、10°<2θ<70°の範囲において、2θ=29.4°−30.0°、33.9°−34.7°、48.8°−49.9°、58.3°−59.5°、61.3°−62.3°以外の位置にピークが観測された。
また、比較例2の触媒について得られたX線回折パターンでは、比較的強度の強いピークが2θ=30.0°、34.3°、35.1°、50.0°、58.9°、60.0°、62.5°(10°≦2θ≦70°)に観測された。また、比較例2の触媒について得られたX線回折パターンでは、図2に矢印Bで示す位置や矢印Cで示す位置にもピークが観測された。図2に矢印Bで示すピークは、単斜晶酸化ジルコニウムに帰属されるピークである。図2に矢印Cで示すピークは、酸化タングステンに帰属されるピークである。このように、比較例2の触媒のX線回折パターンでは、2θ=35.1°、50.0°、60.0°、62.5°のピークと図2に矢印B、矢印Cで示すピークのように、10°<2θ<70°の範囲において、2θ=29.4°−30.0°、33.9°−34.7°、48.8°−49.9°、58.3°−59.5°、61.3°−62.3°以外の位置にピークが観測された。また、10°≦2θ≦30°の範囲にもいくつかの弱いピークが観測された。
このことから、比較例1と比較例2の触媒においては、セリアジルコニア複合固溶体は単相を形成していないことがわかった。
(電子顕微鏡像の観察)
実施例1の触媒の透過型電子顕微鏡像を撮影した。図3に示すように、実施例1の触媒の一次粒子径が5nm以上50nm以下であることが確認できた。
次に、実施例1、実施例2と比較例1〜比較例6の触媒について、高温で保持した後の結晶子径と比表面積とを測定した。
それぞれの触媒を、大気中で700℃に24時間保持した後、結晶子径と比表面積とを測定した。また、それぞれの触媒を、大気中で800℃に3時間保持した後、結晶子径と比表面積とを測定した。結晶子径と比表面積とは次のようにして求めた。
(結晶子径)
上述のようにして測定されたX線回折パターンから、触媒中の結晶子の大きさを求めた。結晶子の大きさDhklは、Sherrer式(式1)から求めた。
(式1) Dhkl=κ・λ/βcosθ
ここで、Dhklは(hkl)面における結晶子の大きさ、λは測定X線の波長、βは(hkl)面における結晶子の大きさによる回折線の広がりとして回折線の半値幅、θは(hkl)面の回折線のブラッグ角、κは定数でありβとして回折線の半値幅を用いる場合にはκ=0.9である。
(比表面積)
触媒の粉末の比表面積は、全自動比表面積計(株式会社マウンテック製Macsorb HM model 1208)を使用して、BET一点法吸着理論に基づいて算出した。
700℃で24時間保持した触媒について、上述のようにして求めた結晶子の大きさと比表面積とを表2に示す。
表2に示すように、700℃で24時間保持した後、実施例1、実施例2、比較例4の触媒では、結晶子の大きさが比較的小さく、かつ、比表面積が比較的大きかった。
800℃で3時間保持した触媒について、上述のようにして求めた結晶子の大きさと比表面積とを表3に示す。
表3に示すように、800℃で3時間保持した後、実施例1と実施例2の触媒では、結晶子の大きさが比較的小さく、かつ、比表面積も大きく保たれていた。一方、比較例4の触媒では、結晶子の大きさが比較的大きくなり、また、比表面積が比較的小さくなった。
この結果から、実施例1と実施例2の触媒は、比較例1〜比較例6の触媒と比較して、耐熱性が高く、高温で保持された後にも性能が劣化しにくいと考えられる。
次に、実施例1、実施例2と比較例1〜6の触媒の性能試験の結果について説明する。
実施例1、実施例2と比較例1〜6のそれぞれの触媒について、次のようにしてハニカム触媒構造体を作製した。まず、触媒30gにチタニアゾル(テイカ株式会社製チタニアゾル、TiOとして30重量%)12gと適量の水とを加えて混合した。得られた混合物に、粉砕媒体として1.5mmのガラスビーズ50gを加え、ペイントコンディショナーで10分間粉砕した。このようにしてウォッシュコート用スラリーを得た。このスラリーを、1inあたり400セルのコージェライト製ハニカム基体に塗布した。スラリーを塗布されたハニカム基体を600℃で3時間焼成した。このようにして、表面に触媒成分を200g/L(ハニカム容積)の割合で担持するハニカム触媒構造体が得られた。
上述のハニカム触媒構造体について、高温で保持した後のNO転化率を次のようにして測定した。
まず、容積2mLのハニカム触媒構造体を常圧下、固定床上に設置した。それぞれのハニカム触媒構造体を、大気中で700℃に24時間保持した。その後、反応ガスにハニカム触媒構造体を通過させた。反応ガスは、NOを500ppm、NHを500ppm、Oを9%、HOを4%含み、残部はNであった。また、反応ガスの空間速度は50,000h−1、温度は200℃〜550℃であった。ケミルミネセンスNO計(柳本製作所製ECL-77型)を用いて、ハニカム触媒構造体の入口と出口のそれぞれにおいて、反応ガス中のNO濃度を測定した。得られたNO濃度から、(式2)に基づいて、NO転化率を算出した。
(式2) NO転化率=(入口NO濃度−出口NO濃度)/(入口NO濃度)×100
500℃と350℃の反応ガスについて算出された、700℃で24時間保持されたハニカム触媒構造体のNO転化率を表4と図4に示す。
表4と図4とに示すように、実施例1または実施例2の触媒を用いたハニカム触媒構造体では、比較例1〜比較例6の触媒を用いたハニカム触媒構造体と比較して、500℃の反応ガスに対するNO転化率が高かった。一方、350℃の反応ガスに対するNO転化率は、実施例1、実施例2、比較例3の触媒を用いたハニカム触媒構造体で高かった。
次に、容積2mLのハニカム触媒構造体を常圧下、固定床上に設置した。それぞれのハニカム触媒構造体を、大気中で800℃に3時間保持した。その後、上述の反応ガスに、上述の条件で、ハニカム触媒構造体を通過させた。上述のようにしてNO転化率を算出した。
500℃と350℃の反応ガスについて算出された、800℃で3時間保持されたハニカム触媒構造体のNO転化率を表5と図5に示す。
表5と図5とに示すように、実施例1または実施例2の触媒を用いたハニカム触媒構造体では、比較例1〜比較例6の触媒を用いたハニカム触媒構造体と比較して、500℃の反応ガスに対するNO転化率も、350℃の反応ガスに対するNO転化率も高かった。
以上の結果から、実施例1または実施例2の触媒は、比較例1〜比較例6の触媒と比較して、低温域から高温域まで窒素酸化物浄化活性を示し、かつ、耐熱性を有することがわかった。
以上に開示された実施の形態と実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態と実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものである。

Claims (9)

  1. セリアジルコニア複合固溶体を含み、
    前記セリアジルコニア複合固溶体は単相を形成し、
    酸化セリウムの含有量が25重量%以上50重量%以下である、窒素酸化物選択還元触媒。
  2. CuKα放射線を用いて測定される粉末X線回折パターンにおいて、2θ=29.4°−30.0°、33.9°−34.7°、48.8°−49.9°、58.3°−59.5°、61.3°−62.3°の位置にピークが観測され、かつ、2θ=29.4°−30.0°の位置のピーク強度の3%以上の強度を有するピークが、10°<2θ<70°の範囲内において2θ=29.4°−30.0°、33.9°−34.7°、48.8°−49.9°、58.3°−59.5°、61.3°−62.3°以外の位置に観測されない、請求項1に記載の窒素酸化物選択還元触媒。
  3. 当該窒素酸化物選択還元触媒の一次粒子径が5nm以上50nm以下である、請求項2に記載の窒素酸化物選択還元触媒。
  4. 当該窒素酸化物選択還元触媒中の結晶子は、(111)面において10nm以下の大きさである、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のl窒素酸化物選択還元触媒。
  5. 当該窒素酸化物選択還元触媒のBET比表面積が40m/g以上である、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の窒素酸化物選択還元触媒。
  6. 酸化タングステンを含む、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の窒素酸化物選択還元触媒。
  7. 前記酸化タングステンの含有量は3重量%以上18重量%以下である、請求項6に記載の窒素酸化物選択還元触媒。
  8. 少なくともセリウム源とジルコニウム源と酸化剤との混合液をアルカリ中和し、ろ過し、洗浄する第1工程と、
    前記第1工程で得られた混合液を加熱熟成する第2工程と、
    前記第2工程で得られた混合液をろ過し、洗浄し、乾燥し、焼成する第3工程とを備える、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の窒素酸化物選択還元触媒の製造方法。
  9. 前記酸化剤は、酸化力がある過酸またはオキソ酸である、請求項8に記載の製造方法。
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