JP2012185088A - マススペクトルの定性・定量方法 - Google Patents

マススペクトルの定性・定量方法 Download PDF

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Abstract

【課題】精密質量情報が得られる高分解能質量分析装置においては、精密質量情報を有するライブラリー・データ自体が存在しないため、精密質量情報と強度比との比較による解析は行なわれて来なかった。混合物の定性分析においては、クロマトグラフなどによる十分な成分分離を予め行なうことが必須である。また、夾雑物を多く含む試料においては、クロマトグラフによる成分分離だけでは不十分な場合もあり、そのような場合は、データシステムを用いて波形を分離するデコンボリューションなどの波形処理が必要であった。成分分離やデコンボリューションが不要な高分解能精密質量スペクトルの定性・定量方法を提供する。
【解決手段】理論的な精密質量と経験的な強度値に基づいて構築した高分解能精密質量スペクトルを、実測の高分解能精密質量スペクトルと比較する。
【選択図】図5

Description

本発明は、高分解能精密マススペクトルの定性・定量方法に関する。
従来、精密質量情報が得られない低分解能質量分析装置においては、質量電荷比の整数値情報と強度比のみを有する実測マススペクトルと、質量電荷比の整数値情報と強度比のみから成るライブラリー・データとを比較して解析することが広く行なわれてきた。
一方、精密質量情報が得られる高分解能質量分析装置においては、今日、精密質量情報を有するライブラリー・データ自体が存在しないため、精密質量情報と強度比との比較による解析は行なわれて来なかった。
不破敬一郎・藤井敏博編著『四重極質量分析計―原理と応用―』(講談社サイエンティフィク)、昭和52年(1977)1月30日、講談社刊、36〜42頁。
質量分析装置を用いたライブラリー定性分析では、分析対象の質量スペクトルは、単一成分のものでなければ、定性分析結果に対する確度が落ちる。そのため、混合物の定性分析においては、クロマトグラフなどによる十分な成分分離を予め行なうことが必須である。また、夾雑物を多く含む試料においては、クロマトグラフによる成分分離だけでは不十分な場合もあり、そのような場合は、データシステムを用いて波形を分離するデコンボリューションなどの波形処理が必要であった。
本発明の目的は、上述した点に鑑み、成分分離やデコンボリューションが不要な高分解能精密質量スペクトルの定性・定量方法を提供することにある。
本発明では、予め設定した質量を基準に、任意の範囲内にのみ存在するイオンの質量情報と強度値を用いて、定性分析を実施するため、上述した成分分離やデコンボリューションなどの処理は必須とならない。また、従来のライブラリー定性分析では、各イオンの強度値の比較のみで定性分析を実施していたが、本発明では、イオン強度値の比較による定性分析と、質量誤差による定性分析が同時にかつ迅速に行なえるため、従来の定性分析法に比べて確度の高い結果を提供することが可能になる。
また本発明では、高い精度で観測されたイオンの同定と、任意の範囲内に存在するイオンを瞬時に確認することができる。そのため、それらイオンを使用した定量解析を実施するにあたり、任意の範囲内に目的以外の夾雑イオンが存在する場合、そのイオンが含まれないようマスクロマトグラムを作成する質量幅を変更したり、もしくは定量解析には使用しない、などの選択を行なうことができる。これにより、質量スペクトルとマスクロマトグラムとを直結して考えることが簡便になり、定量解析に必要なパラメーター設定が容易になる。
本発明により、従来の定量分析方法に比べてより精度の高い結果を迅速に提供することが可能になる。
この目的を達成するため、本発明にかかるマススペクトルの定性方法は、
分析したい既知物質のマススペクトルから所望のイオンを選択する工程、
選択された1つないし複数のイオンの精密質量と相対的な強度値から、理論的に目的物質のマススペクトルAを作成する工程、
精密質量のレベルで測定された実測のマススペクトルを取得する工程、
マススペクトルAを作成する際に用いた精密質量の情報と、任意の値に設定した質量範囲から、マススペクトルBを作成する条件を決める工程、
前記精密質量のレベルで測定されたマススペクトルから、前記条件に当てはまるすべてのイオンの精密質量と強度の情報を抽出し、マススペクトルBを作成する工程、
マススペクトルA、Bの各イオンの質量誤差と強度値の類似度を計算し、質量誤差と強度値の類似度がともに閾値を超えていれば、目的物質と測定された物質は高い確度をもって一致していると判定する工程、
マススペクトルA、Bの各イオンの質量誤差と強度値のうち少なくとも一方の類似度が閾値を超えていなければ、前記計算に使用するイオンのピークを変更するか、もしくはそのイオンを除外してマススペクトルA、Bの各イオンの質量誤差と強度値の類似度を再計算し、質量誤差と強度値の類似度がともに閾値を超えていれば、目的物質と測定された物質は高い確度をもって一致していると判定する工程、
再計算の結果、マススペクトルA、Bの各イオンの質量誤差と強度値のうち少なくとも一方の類似度が閾値を超えていなければ、目的物質と測定された物質は高い確度をもって一致していないと判定する工程、
を備えたことを特徴としている。
また、本発明にかかるマススペクトルの定量方法は、
分析したい既知物質のマススペクトルから所望のイオンを選択する工程、
選択された1つないし複数のイオンの精密質量と相対的な強度値から、理論的に目的物質のマススペクトルAを作成する工程、
精密質量のレベルで測定された実測のマススペクトルを取得する工程、
マススペクトルAを作成する際に用いた精密質量の情報と、任意の値に設定した質量範囲から、マススペクトルBを作成する条件を決める工程、
前記実測のマススペクトルから、前記条件に当てはまるすべてのイオンの精密質量と強度の情報を抽出し、マススペクトルBを作成する工程、
マススペクトルBの各イオンの周辺に、目的外夾雑イオンが観測されているかを確認し、もし夾雑イオンがほとんどなければ、マススペクトルBを作成する質量幅でマスクロマトグラムを作成し、その面積を計測して、定量解析を実施する工程、
もし夾雑イオンが観測されていれば、マススペクトルBの作成条件において、質量幅を変更すれば夾雑イオンを排除可能か確認し、排除可能な場合はマススペクトルBを作成する質量幅を変更してマスクロマトグラムを作成し、その面積を計測して、定量解析を実施する工程、
マススペクトルBを作成する質量幅を変更しても、夾雑イオンの影響が大きく、影響を排除困難な場合は、そのイオンは定量解析には使用しないと判定する工程、
を備えたことを特徴としている。
本発明のマススペクトルの定性方法によれば、
分析したい既知物質のマススペクトルから所望のイオンを選択する工程、
選択された1つないし複数のイオンの精密質量と相対的な強度値から、理論的に目的物質のマススペクトルAを作成する工程、
精密質量のレベルで測定された実測のマススペクトルを取得する工程、
マススペクトルAを作成する際に用いた精密質量の情報と、任意の値に設定した質量範囲から、マススペクトルBを作成する条件を決める工程、
前記精密質量のレベルで測定されたマススペクトルから、前記条件に当てはまるすべてのイオンの精密質量と強度の情報を抽出し、マススペクトルBを作成する工程、
マススペクトルA、Bの各イオンの質量誤差と強度値の類似度を計算し、質量誤差と強度値の類似度がともに閾値を超えていれば、目的物質と測定された物質は高い確度をもって一致していると判定する工程、
マススペクトルA、Bの各イオンの質量誤差と強度値のうち少なくとも一方の類似度が閾値を超えていなければ、前記計算に使用するイオンのピークを変更するか、もしくはそのイオンを除外してマススペクトルA、Bの各イオンの質量誤差と強度値の類似度を再計算し、質量誤差と強度値の類似度がともに閾値を超えていれば、目的物質と測定された物質は高い確度をもって一致していると判定する工程、
再計算の結果、マススペクトルA、Bの各イオンの質量誤差と強度値のうち少なくとも一方の類似度が閾値を超えていなければ、目的物質と測定された物質は高い確度をもって一致していないと判定する工程、
を備えたので、
成分分離やデコンボリューションが不要な高分解能精密質量スペクトルの定性・定量方法を提供することが可能になった。
また、本発明にかかるマススペクトルの定量方法によれば、
分析したい既知物質のマススペクトルから所望のイオンを選択する工程、
選択された1つないし複数のイオンの精密質量と相対的な強度値から、理論的に目的物質のマススペクトルAを作成する工程、
精密質量のレベルで測定された実測のマススペクトルを取得する工程、
マススペクトルAを作成する際に用いた精密質量の情報と、任意の値に設定した質量範囲から、マススペクトルBを作成する条件を決める工程、
前記実測のマススペクトルから、前記条件に当てはまるすべてのイオンの精密質量と強度の情報を抽出し、マススペクトルBを作成する工程、
マススペクトルBの各イオンの周辺に、目的外夾雑イオンが観測されているかを確認し、もし夾雑イオンがほとんどなければ、マススペクトルBを作成する質量幅でマスクロマトグラムを作成し、その面積を計測して、定量解析を実施する工程、
もし夾雑イオンが観測されていれば、マススペクトルBの作成条件において、質量幅を変更すれば夾雑イオンを排除可能か確認し、排除可能な場合はマススペクトルBを作成する質量幅を変更してマスクロマトグラムを作成し、その面積を計測して、定量解析を実施する工程、
マススペクトルBを作成する質量幅を変更しても、夾雑イオンの影響が大きく、影響を排除困難な場合は、そのイオンは定量解析には使用しないと判定する工程、
を備えたので、
成分分離やデコンボリューションが不要な高分解能精密質量スペクトルの定性・定量方法を提供することが可能になった。
理論的な精密質量と経験的な強度値に基づいて構築した仮想的な高分解能精密質量スペクトルAを示す図である。 実測の高分解能精密質量スペクトルから関心領域のピークを抽出する方法を示す図である。 実測の高分解能精密質量スペクトルから質量スペクトルBを作成する方法を示す図である。 仮想的な高分解能精密質量スペクトルAと実測の高分解能精密質量スペクトルBを比較する図である。 本発明にかかるマススペクトルの定性方法を示すフローチャートである。 理論的な精密質量と経験的な強度値に基づいて構築した仮想的な高分解能精密質量スペクトルAを示す図である。 実測の高分解能精密質量スペクトルから関心領域のピークを抽出する方法を示す図である。 実測の高分解能精密質量スペクトルから質量スペクトルBを作成する方法を示す図である。 仮想的な高分解能精密質量スペクトルAと実測の高分解能精密質量スペクトルBを比較する図である。 本発明にかかるマススペクトルの定量方法を示すフローチャートである。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
[実施例1]
最初に、定性分析への応用について、実施例を述べる。本実施例は、環境試料中の農薬成分など、既知物質の高分解能GC−TOFマススペクトルから、1つまたは複数の所望のイオンピークを選択して、それらの選択されたイオンピークを精密質量に基づいて定性分析する場合に用いられる。図1は、精密質量を用いたバー型マススペクトルの作り方を説明する図である。
まず、既知イオンの組成式から、精密質量(m/z)の理論値を計算する。図1の「定量イオン」(Quantification ion)は、例えば分子イオンなどの、信号強度の強い、主としてイオン種の定量に用いられるイオンピークの精密質量の理論値(イオンの組成式から計算される値)である。今、仮想的なイオン種として、109.00546なる精密質量を持ったイオンを想定する。
次に、図1の「参照イオン1〜4」(Identification ion)は、例えばフラグメントイオンなどの、信号強度が必ずしも強くはないけれども、分子イオンなどと併せてスペクトル・パターンとして比較する際に有用な、複数のイオンピークの精密質量の理論値(イオンの組成式から計算される値)である。今、仮想的なイオン種として、参照イオン1=184.97705、参照イオン2=78.99489、参照イオン3=186.9741、参照イオン4=46.96868なる精密質量を持ったイオンを想定する。
また、図1のI/Q比は、定量イオンの信号強度に対する参照イオンの信号強度比を表わす。通常は、質量電荷比の整数値情報と強度比のみから成るライブラリー・データより強度比の情報を読み出して、各参照イオンのI/Q比に当てはめる。今、仮想的なI/Q比の値として、参照イオン1=0.250、参照イオン2=0.180、参照イオン3=0.080、参照イオン4=0.070なるI/Q比の値を持ったイオンを想定する。これらは、マススペクトル全体のパターンを認識、識別する上で、重要な情報となる。
これらの精密質量の理論値とI/Q比の値とから、精密質量に横軸を置き換えた仮想的なバー型マススペクトルAを得ることができる。
次に、精密質量が測定された実測マススペクトルから、マススペクトルAと比較するためのマススペクトル情報を抽出する作業を行なう。
すなわち、図2に示すように、定量イオン=109.00546、参照イオン1=184.97705、参照イオン2=78.99489、参照イオン3=186.9741、参照イオン4=46.96868なる精密質量の理論値を持ったイオン種群に対し、例えば予め指定した閾値の±0.025u(±25ミリマスユニット)の範囲に存在する実測信号とその強度比に関する情報をすべて抽出して、対比用の実測マススペクトルBを作成する。結果は図3のようになる。
このようにして得たマススペクトルBを先に作成したマススペクトルAと比較すると、図4に示すように、イオンの質量誤差に関する情報や、イオンの強度値の類似性に関する情報を得ることができる。
図4では、マススペクトルAとマススペクトルBを対比した結果、例えばマススペクトルBの精密質量78.99555の信号強度がマススペクトルAの精密質量109.00521の信号強度に対し、例えば予め指定した信号強度の閾値を超えて相対的に強すぎると見なされた場合は、これをミスアサインと判断して、マススペクトルB中、精密質量78.99555の信号の左隣(低質量側)にある、より信号強度の弱い別の信号にアサインの対象を変更すれば良い。
また、マススペクトルAとマススペクトルBを対比した結果、例えばマススペクトルBの精密質量46.97777の信号強度がマススペクトルAの精密質量46.96868の信号強度に対し、例えば予め指定した信号強度の閾値を超えて相対的に強すぎるにも関わらず、周囲に手ごろな強度の信号が見当たらない場合は、これをミスアサインと判断して、マススペクトルBの精密質量78.99555の信号をスペクトルの定性分析を行なう際に、非使用とすれば良い。
このようにして判断して得られた最終的なマススペクトルB’を、スペクトルの定性分析に用いれば良い。
以上の流れをフローチャートにまとめたものが、図5である。まず、1つないし複数のイオンの精密質量と相対的な強度値から、理論的に目的物質のマススペクトルAを作成する(ステップS1−1)。
次に、精密質量のレベルで測定されたマススペクトルを取得する(ステップS1−2)。
ここで、ステップS1−1とステップS1−2は、順番が逆であっても良い。
次に、マススペクトルAを作成する際に用いた精密質量の情報と、任意の値に設定した精密質量範囲から、マススペクトルBを作成する条件を決める(ステップS1−3)。
次に、ステップS1−2で取得した実測のマススペクトルから、ステップS1−3で決めた条件に当てはまるすべてのイオンの精密質量と強度の情報を抽出し、マススペクトルBを作成する(ステップS1−4)。
次に、マススペクトルA、Bの各イオンの精密質量誤差と強度値の類似度を計算し、精密質量誤差と強度値の類似度がともに閾値を超えていれば、目的物質と測定された物質は高い確度をもって一致していると判定する(ステップS1−5)。
マススペクトルA、Bの各イオンの精密質量誤差と強度値のうち少なくとも一方の類似度が閾値を越えていなければ、前記計算に使用するイオンのピークを変更するか、もしくはそのイオンを除外して、マススペクトルA、Bの各イオンの精密質量誤差と強度値の類似度を再計算し、精密質量誤差と強度値の類似度がともに閾値を超えていれば、目的物質と測定された物質は高い確度をもって一致していると判定する(ステップS1−6)。
再計算の結果、マススペクトルA、Bの各イオンの精密質量誤差と強度値のうち少なくとも一方の類似度が閾値を越えていなければ、目的物質と測定された物質は高い確度をもって一致していないと判定する(ステップS1−7)。
[実施例2]
次に、定量分析への応用について、実施例を述べる。本実施例は、環境試料中の農薬成分など、既知物質の高分解能GC−TOFマススペクトルから、1つまたは複数の所望のイオンピークを選択して、それらの選択されたイオンピークを精密質量に基づいて定量分析する場合に用いられる。
定量分析では、目的イオンのマスクロマトグラムの面積値を計測して、イオンの量を定量するのが一般的である。まず図6は、精密質量を用いたバー型マススペクトルの作り方を説明する図である。
まず、既知イオンの組成式から、精密質量(m/z)の理論値を計算する。図6の「定量イオン」(Quantification ion)は、例えば分子イオンなどの、信号強度の強い、主としてイオン種の定量に用いられるイオンピークの精密質量の理論値(イオンの組成式から計算される値)である。今、仮想的なイオン種として、109.00546なる精密質量を持ったイオンを想定する。
次に、図6の「参照イオン1〜4」(Identification ion)は、例えばフラグメントイオンなどの、信号強度が必ずしも強くはないけれども、分子イオンなどと併せてスペクトル・パターンとして比較する際に有用な、複数のイオンピークの精密質量の理論値(イオンの組成式から計算される値)である。今、仮想的なイオン種として、参照イオン1=184.97705、参照イオン2=78.99489、参照イオン3=186.9741、参照イオン4=46.96868なる精密質量を持ったイオンを想定する。
また、図6のI/Q比は、定量イオンの信号強度に対する参照イオンの信号強度比を表わす。通常は、質量電荷比の整数値情報と強度比のみから成るライブラリー・データより強度比の情報を読み出して、各参照イオンのI/Q比に当てはめる。今、仮想的なI/Q比の値として、参照イオン1=0.250、参照イオン2=0.180、参照イオン3=0.080、参照イオン4=0.070なるI/Q比の値を持ったイオンを想定する。これらは、マススペクトル全体のパターンを認識、識別する上で、重要な情報となる。
これらの精密質量の理論値とI/Q比の値とから、精密質量に横軸を置き換えた仮想的なバー型マススペクトルAを得ることができる。
次に、精密質量が測定された実測マススペクトルから、マススペクトルAと比較するためのマススペクトル情報を抽出する作業を行なう。
すなわち、図7に示すように、定量イオン=109.00546、参照イオン1=184.97705、参照イオン2=78.99489、参照イオン3=186.9741、参照イオン4=46.96868なる精密質量の理論値を持ったイオン種群に対し、例えば予め指定した閾値の±0.025u(±25ミリマスユニット)の範囲に存在する実測信号とその強度比に関する情報をすべて抽出して、対比用の実測マススペクトルBを作成する。結果は図8のようになる。
このようにして得たマススペクトルBを先に作成したマススペクトルAと比較すると、図9に示すように、イオンの精密質量誤差に関する情報や、イオンの強度値の類似性に関する情報を得ることができる。
図9では、マススペクトルAとマススペクトルBを対比した結果、例えばマススペクトルBの精密質量186.9701の信号とマススペクトルAの精密質量184.97711の信号は、予め指定した閾値に照らして精密質量が良く一致し、周辺に目的外(夾雑)イオンはない。そこで、そのまま定量解析に使用できると判定する。
また、マススペクトルAとマススペクトルBを対比した結果、例えばマススペクトルBの精密質量109.00521の信号とマススペクトルAの精密質量109.00000の信号は、予め指定した閾値に照らして精密質量が良く一致し、目的成分の信号と判定されるが、周辺に目的外(夾雑)イオンがある。そこで、定量解析では、夾雑イオンが含まれないように、マスクロマトグラム作成のための精密質量幅を設定する。
また、マススペクトルAとマススペクトルBを対比した結果、例えばマススペクトルBの精密質量78.99555付近の信号は、予め指定した閾値に照らして精密質量が良く一致し、目的成分の信号と判定されるが、周辺に目的外(夾雑)イオンがたくさんある。またマススペクトルBの精密質量46.97777付近の信号は、予め指定した閾値に照らして夾雑イオンの信号と判定され、目的成分のイオンが観測されていない。そこで、定量解析では、これらの信号を使用しないと判断できる。
以上の流れをフローチャートにまとめたものが、図10である。まず、1つないし複数のイオンの精密質量と相対的な強度値から、理論的に目的物質のマススペクトルAを作成する(ステップS2−1)。
次に、精密質量のレベルで測定されたマススペクトルを取得する(ステップS2−2)。
ここで、ステップS2−1とステップS2−2は、順番が逆であっても良い。
次に、マススペクトルAを作成する際に用いた精密質量の情報と、任意の値に設定した精密質量範囲から、マススペクトルBを作成する条件を決める(ステップS2−3)。
次に、ステップS2−2で取得した実測のマススペクトルから、ステップS2−3で決めた条件に当てはまるすべてのイオンの精密質量と強度の情報を抽出し、マススペクトルBを作成する(ステップS2−4)。
次に、マススペクトルBの各イオンの周辺に、目的外(夾雑)イオンが観測されているかを確認し、もし夾雑イオンがほとんどなければ、マススペクトルBを作成する条件(精密質量幅)でマスクロマトグラムを作成し、その面積を計測して、定量解析を実施する(ステップS2−5)。
もし夾雑イオンが観測されていれば、マススペクトルBの作成条件において、精密質量幅を変更すれば夾雑イオンを排除可能か確認し、排除可能な場合はマススペクトルBを作成する条件(精密質量幅)を変更してマスクロマトグラムを作成し、その面積を計測して、定量解析を実施する(ステップS2−6)。
マススペクトルBを作成する条件(精密質量幅)を変更しても、夾雑イオンの影響が大きく、影響を排除困難な場合は、そのイオンは定量解析には使用しないと判定する(ステップS2−7)。
高分解能質量分析計のマススペクトル解析に広く利用できる。

Claims (2)

  1. 分析したい既知物質のマススペクトルから所望のイオンを選択する工程、
    選択された1つないし複数のイオンの精密質量と相対的な強度値から、理論的に目的物質のマススペクトルAを作成する工程、
    精密質量のレベルで測定された実測のマススペクトルを取得する工程、
    マススペクトルAを作成する際に用いた精密質量の情報と、任意の値に設定した質量範囲から、マススペクトルBを作成する条件を決める工程、
    前記精密質量のレベルで測定されたマススペクトルから、前記条件に当てはまるすべてのイオンの精密質量と強度の情報を抽出し、マススペクトルBを作成する工程、
    マススペクトルA、Bの各イオンの質量誤差と強度値の類似度を計算し、質量誤差と強度値の類似度がともに閾値を超えていれば、目的物質と測定された物質は高い確度をもって一致していると判定する工程、
    マススペクトルA、Bの各イオンの質量誤差と強度値のうち少なくとも一方の類似度が閾値を超えていなければ、前記計算に使用するイオンのピークを変更するか、もしくはそのイオンを除外してマススペクトルA、Bの各イオンの質量誤差と強度値の類似度を再計算し、質量誤差と強度値の類似度がともに閾値を超えていれば、目的物質と測定された物質は高い確度をもって一致していると判定する工程、
    再計算の結果、マススペクトルA、Bの各イオンの質量誤差と強度値のうち少なくとも一方の類似度が閾値を超えていなければ、目的物質と測定された物質は高い確度をもって一致していないと判定する工程、
    を備えたマススペクトルの定性方法。
  2. 分析したい既知物質のマススペクトルから所望のイオンを選択する工程、
    選択された1つないし複数のイオンの精密質量と相対的な強度値から、理論的に目的物質のマススペクトルAを作成する工程、
    精密質量のレベルで測定された実測のマススペクトルを取得する工程、
    マススペクトルAを作成する際に用いた精密質量の情報と、任意の値に設定した質量範囲から、マススペクトルBを作成する条件を決める工程、
    前記実測のマススペクトルから、前記条件に当てはまるすべてのイオンの精密質量と強度の情報を抽出し、マススペクトルBを作成する工程、
    マススペクトルBの各イオンの周辺に、目的外夾雑イオンが観測されているかを確認し、もし夾雑イオンがほとんどなければ、マススペクトルBを作成する質量幅でマスクロマトグラムを作成し、その面積を計測して、定量解析を実施する工程、
    もし夾雑イオンが観測されていれば、マススペクトルBの作成条件において、質量幅を変更すれば夾雑イオンを排除可能か確認し、排除可能な場合はマススペクトルBを作成する質量幅を変更してマスクロマトグラムを作成し、その面積を計測して、定量解析を実施する工程、
    マススペクトルBを作成する質量幅を変更しても、夾雑イオンの影響が大きく、影響を排除困難な場合は、そのイオンは定量解析には使用しないと判定する工程、
    を備えたマススペクトルの定量方法。
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