JP2012182080A - 鉛蓄電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 電槽と、この電槽底面に設けたリブと接するように配置されるエキスパンド格子体を使用した極板を備え、前記電極がその上端に集電部としての耳部を有し、前記電槽底面に設けたリブが、前記耳部が変形可能な応力により、前記耳部が変形するよりも前に凹変形するようにする。
【選択図】図6
Description
自動車用の鉛蓄電池はエンジンルームに搭載されるため、特に真夏は、ボンネットやエンジンなどからの輻射熱により、高温環境下にさらされる。極板の格子体は、高温で使用されると腐食が進行する。鋳造格子体がその左右両側部に枠骨を有しているのに対し、エキスパンド格子体は当該枠骨を有していないため、前記腐食に起因する上下方向への膨張が大きい。一方、極板は、下辺を電槽底部に当接し、上辺上の集電部としての耳部をストラップに溶接して、上下方向の寸法を規制されている。従って、鉛蓄電池の継続使用により、エキスパンド格子体の上下方向への膨張が徐々に大きくなり、エキスパンド格子体が変形すると、耳部の付け根部分に応力が集中するようになる。すると、前記耳部の付け根部分にて、耳部の折れ、又は、破断する可能性が徐々に増す。
本発明は、エキスパンド格子体の上下方向の伸びにより発生した応力を、耳の付け根部分に集中させない鉛蓄電池を提供することを目的とする。
本発明にて述べる電槽は、その内部に、正極板と負極板とその両者の間に介在させたセパレータにより構成した極板群を収納するものであり、極板群の収納し易さから、上面が開放された箱体と、この箱体の上面を覆う蓋体とを有するものを、好適に使用することができる。尚、箱体と蓋体との一体化は、接着剤、熱溶着、超音波溶着等を適宜用いることができる。
電槽の形状は、特に限定されるものではないが、通常極板群がほぼ直方体であることから、電極収納時に無効空間が少なくなるように、方形のものを用いることが好ましい。
電槽の材質は、特に制限されるものではないが、電解液(希硫酸)に対し耐性を有するものである必要があり、具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS)等を用いることができ、ポリプロピレンであると、耐酸性、加工性(ABSでは電槽と蓋の熱溶着が困難)、コストの面で有利である。
電槽には、必要に応じて、安全弁を設けることがでる。制御弁式鉛蓄電池においては、何らかの不具合等により過大な充電電流が流れた場合、発生したガスによる内圧を大気中へ放出させるための安全弁が設けられている。
本発明にて述べる極板は、エキスパンド格子体を使用した極板を用いる。
先ず、所定合金組成になるように鉛中に所定量のCa、Snを溶解する。前記鉛合金を金型で鋳造することで、正極用鋳造スラブを作製する。
前記正極用鋳造スラブを、例えば、厚さが1.0mmになるまで連続的に圧延加工を行い、厚さ:1.0mm、幅:78mmとなる圧延シートを作製する。
また、負極用については、例えば、同様の工程にて厚さ:0.6mm、幅:55mmとなる圧延シートを作製する。
前記正極板と負極板とを、セパレータを介して交互に積層し、正極6枚/負極7枚構成の極板群を作製する。この極板群を電槽に挿入し、正極板の耳部と負極板の耳部を各々溶接し、蓋を電槽にかぶせて溶着し、電池を組み立てた。
前記電池に希硫酸を注液し、40℃の水槽内に静置した。次に、直流電流を通電して電槽化成した。電槽化成後の電池の電解液比重を1.280(20℃換算)に調整し、電池を作製した。
本発明にて述べるリブの凹変形とは、電槽底面に設けたリブが、下方に凹むことを意味する。より詳細には、リブそのものが下側に凹むか、リブがリブ本体とこのリブ本体に固定された弾性体とを有し、この弾性体が下側に凹むことを意味する。
但し、凹むのは、耳部を変形させるに足る応力よりも大きい応力が、エキスパンド格子体の耳部に対して発生した場合であり、その際に、耳部が変形するよりも前に、電槽底面に設けたリブが凹変形して、耳部の変形を阻止する。
凹変形の量は、特に限定されるものではなく、エキスパンド格子体の上下方向長さによるが、大凡その上下方向の長さの1〜3%程度であり、格子体の上下方向長さが100mmであれば、1〜3mmとすることができる。
本発明にて述べるリブは、電槽の内側底面に設けられるものであり、その数は単数でも複数でも良いが、このリブに先に述べたエキスパンド格子体を使用した極板を配置することから、複数とすることが好ましい。これは、前記極板を、安定して載置できることによる。
また、リブは、1つの材質により形成しても、リブ本体とこのリブ本体に固定される軟質で弾力性を有する材料とを有する構成としても良い。但し、1つの材質にて形成する場合は、電槽底面とリブとの材質を代える必要があり、リブ本体と軟質で弾力性を有する材料とを有する場合は、電槽とリブ本体とを同じ材質にできるが、後に軟質で弾力性を有する材料をリブ上に固定する必要がある。
軟質で弾力性を有する材料を用いる場合は、リブ本体として、先に述べた電槽と同様のポリプロピレン、ポリエチレン、ABS等を用いることができる。特にポリプロピレンであると、耐酸性、加工性、コストの面で好ましい。
また、軟質で弾力性を有する材料は、ブチルゴム又はエチレンプロピレンゴム等を用いることができ、特にエチレンプロピレンゴムを用いることが、応力を吸収しやすく好ましい。
更に、接着剤は、必ずしも使用する必要はない。軟質で弾力性を有する材料は、これに載置される極板の底辺によりリブ本体に押しつけられ、脱落することはない。
<エキスパンド格子体を使用した極板>
(正極板の作製)
鉛−カルシウム−スズ合金からなる、厚さ:1.0mm、幅:78mmの長尺の圧延シートを作製する。次に、圧延シートの幅方向中央部を除く左右両側領域に圧延シート長手方向のスリットを入れ、圧延シートの幅方向に展開加工(エキスパンド加工)を行い、これを所定寸法に裁断すると共に、圧延シートの非展開部から所定の形状に打ち抜き加工をして、図7のエキスパンド格子体21を作製する。図7に示すように、エキスパンド格子体21は、展開部22、上枠骨23、下枠骨24、前記打ち抜き加工により形成された耳部25から構成される。前述のように、エキスパンド格子体21には、左右両端に枠骨がない。
次に、酸化鉛を主成分とする鉛粉に水と希硫酸を加えて混練して、正極用ペースト状活物質を作製する。このペースト状活物質を前記エキスパンド格子体21の展開部22に充填し、熟成、乾燥を経て、正極板1を作製する。
(負極板の作製)
負極板については、正極板と同様の工程にて、エキスパンド格子体を作製する。
次に、酸化鉛を主成分とする鉛粉に、添加剤(リグニン、硫酸バリウム、カーボン)を加えて混合し、続いて水と希硫酸を加えて混練して、負極用ペースト状活物質を作製する。このペースト状活物質を前記エキスパンド格子体の展開部に充填し、熟成、乾燥を経て、負極板2を作製する。
前記負極板2を、袋状に加工したポリエチレン製セパレータ3に挿入し、前記正極板1と交互に組み合わせて、図1に示すような極板群4を作製する。極板群4は正極板1が6枚、負極板2が7枚で構成され、極板群の積層方向両端が負極板2となる。なお、図1は極板群4を側面から見ているが、耳部25は図示を省略した。
(電槽の作製)
電槽材料はポリプロピレンを用い、射出成形機を用いて図2に示すような電槽5を作製する。外寸は、長さ:230mm、幅:170mm、高さ:200mmであり、電槽内部は隔壁6により6分割されている。電槽5の底面には、各隔壁にて区画された部位毎に、図3に示すような、2本のエチレンプロピレンゴム製のリブ8を配置する。リブ8は、台座7の上面に射出成形により一体成形されたものであり、台座7は電槽5に対し接着されることなく、配置される。
リブ8の高さは、台座7と合わせて8mmとし、極板群4の底面を、電槽底面から8mmだけ、上に持ち上げる。
前述した極板群4は電圧:2Vであり、極板群を6個直列に配置することにより電圧:12Vの鉛蓄電池を構成する。
前述した極板群4の正極板1、負極板2の耳部25は、それぞれキャストオンストラップ(COS)方式で、図4に示すように、ストラップ9を形成させて接続する。また、前述した電槽5には、極板群4のストラップ9位置に対応する隔壁箇所に孔を開けておく。電槽5に極板群4を6個挿入し、ストラップ9同士を抵抗溶接する。
その後、図5に示すように、電槽5と同じくポリプロピレンを材料に用い、射出成形により作製された蓋10と、電槽5とを熱溶着する。蓋10には、注液口11が配置されており、比重:1.230(20℃換算)の希硫酸を注入して、直流電流を所定時間通電し、電槽化成して、鉛蓄電池を作製した。
(電槽の作製)
電槽内部底面のリブを設けず、電槽高さを190mmとした以外は、実施例1にて述べた電槽と同じ物を作製した。
(鉛蓄電池の作製)
比較例1の鉛蓄電池は、前述した底面にリブを有さない電槽を用いた以外は、実施例1と同様にして鉛蓄電池を作製した。即ち、実施例1と比較例1は同じ電極群を用いる。
実施例1、比較例1の電池を用いて、これを75℃の水槽内に静置し、放電電流:25Aにて1分間の放電を行い、その後、14.8V、制限電流:25Aの定電圧充電を10分間行うことを1サイクルとし、これを連続で610サイクル行い、56時間放置する。放置後、放電電流:520Aにて30秒間放電を行い、30秒目の電圧が、7.2V未満であれば試験を終了し、7.2V以上であれば、同様の試験を繰り返し続行する。
その結果、比較例1では、8540回にて耳部の付け根が折れて、寿命に達した。
実施例1では、リブが耳部に掛かる応力を変形吸収することにより、耳部の付け根が折れることはない。しかし、充放電を繰り返すことで正極板のエキスパンド格子体が腐食し、体積膨張により格子体が伸びる。耳部はストラップで固定されその近傍は伸びを抑えられているので、上枠骨の耳部から遠い両端側が上方に反るように変形して、対向する負極板の耳部に接触し、正極板と負極板の短絡により、9760回にて寿命に達した。
即ち、本発明では、耳部の根元にかかる応力を軽減することができ、寿命を延ばすことができる。
Claims (4)
- 電槽と、この電槽底面に設けたリブと当接するように配置されるエキスパンド格子体の極板とを備え、前記格子体がその上辺に集電部としての耳部を有し、前記電槽底面に設けたリブが、耳部を変形させるに足る応力よりも小さい応力で凹変形するように構成された鉛蓄電池
- 請求項1において、リブが、電槽底面よりも弾性変形し易い材質により構成される鉛蓄電池。
- 前記第1又は第2の発明において、リブが、リブ本体と、このリブ本体に固定された軟質で弾力性を有する材料とで構成される鉛蓄電池。
- 請求項3において、軟質で弾力性を有する材料が、ブチルゴム又はエチレンプロピレンゴムである鉛蓄電池。
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