本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
本実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る内燃機関の動弁装置の構成図である。図2は、弁駆動装置の概要図である。図3は、制御装置の構成図である。本実施形態に係る内燃機関の動弁装置100(以下、動弁装置という。)動弁装置は、シリンダブロック3内での燃焼用ピストン2の上下動に伴い、エンジンバルブとしての排気弁4a及び吸気弁4bを駆動する装置である。
図1に示すように、動弁装置100は、内燃機関1(エンジン)に設置される弁駆動装置10と、内燃機関1の状態を計測する計測装置20、21と、弁駆動装置10に油圧を供給する油圧ユニット30と、弁駆動装置10を制御する制御装置80と、信号ラインI1、I2、I3、I4、I5と、油圧ラインO1及びO2と、を有している。なお、ダイナモ200は、電力変換装置である。ダイナモ200は、必須の構成要素ではなく付加要素であり、例えば試験装置として使用する場合に用いる。
図2に示すように、弁駆動装置10は、弁駆動シリンダ11と、弁駆動シリンダ11内に移動可能に収納された弁駆動ピストン12と、弁駆動ピストン12を駆動するためのサーボ弁13と、弁駆動ピストン12の位置を計測する弁駆動ピストン変位計15とを有している。図1に示すように内燃機関1は、シリンダブロック3と、クランクケース9と、燃焼用ピストン2と、クランクシャフト7と、コネクティングロッド8とを有している。燃焼用ピストン2とクランクシャフト7とがコネクティングロッド8で連結されている。このような構造により、燃焼用ピストンの往復運動がクランクシャフト7で回転運動に変換される。ここで弁駆動装置10が故障し、弁駆動ピストン12が突き出る状態で停止すると、燃焼用ピストン2は慣性で往復運動を続けるため弁駆動ピストン2が突き出たまま、吸気弁又は排気弁に衝突して破損するおそれがある。
また、図1及び図2に示すように内燃機関1は、排気弁4a及び吸気弁4bと、弁ロッド5と、バルブスプリング6とを有している。排気弁4a、吸気弁4bは、各々、弁ロッド5の下端に固定されており、弁ロッド5に設けられたバルブスプリング6により閉弁方向に力が付勢されている。弁駆動装置10は、内燃機関1上に搭載され、弁駆動ピストン12が弁ロッド5と接続されている。又は、弁駆動装置10は、弁閉止時にわずかな隙間をあけ配置される。これにより、弁駆動ピストン12を駆動すると、弁ロッド5に応じて排気弁4a及び吸気弁4bが駆動される。なお、弁駆動ピストン12が弁ロッド5と接続される場合には、バルブスプリング6は不要となる。
図2に示す弁駆動シリンダ11内に移動可能に収納された弁駆動ピストン12は、油圧アクチュエータであって、弁駆動ピストン12は弁駆動シリンダ11に油圧が供給されると伸びて排気弁4a又は吸気弁4bを開動作させる。また弁駆動ピストン12は弁駆動シリンダ11から油圧が排出されると縮んで排気弁4a又は吸気弁4bを閉動作させる。サーボ弁13は、弁駆動シリンダ11の外部側面に取り付けられている。サーボ弁13は、後述する油圧ユニット30と油圧の供給ラインである油圧ラインO1及び戻りラインである油圧ラインO2で接続されている。サーボ弁13は、制御装置80からの信号ラインI2の指示に基づいて弁駆動シリンダ11への油圧の供給又は弁駆動シリンダ11から油圧の排出を制御する。例えば、サーボ弁13は、後述するスプール、油路、ノズルフラッパ機構等により構成されている。弁駆動ピストン変位計15は、弁駆動シリンダ11での弁駆動ピストン12の位置を計測し、計測した位置データを制御装置80へ出力する。
図1に示す計測装置20は、内燃機関1の回転数を計測するエンコーダである。また、計測装置21は、内燃機関1のクランク角度を計測するクランク角センサである。計測装置20、21で計測された内燃機関1の回転数情報及びクランク角度情報は、制御装置80へ出力される。ここで、回転数というときには、各クランク角度での単位時間当たりの角度変化である回転速度をいうものとする。
制御装置80は、弁駆動装置10を制御する装置である。図1に示すように、制御装置80は、信号ラインI1を介して油圧ユニット30を起動又は停止する制御を行う。また、制御装置80は、信号ラインI2を介してサーボ弁13を制御できる。また、制御装置80は、信号ラインI3、I4、I5を介して弁駆動ピストン変位計15及び計測装置20、21に接続されている。次に、図3を用いて、制御装置80を説明する。
図3に示す制御装置80は、入力処理回路81と、入力ポート82と、処理部90と、記憶部94と、出力ポート83と、出力処理回路84と、を有する。処理部90は、例えば、CPU(Central Processing Unit:中央演算装置)91と、RAM(Random Access Memory)92と、ROM(Read Only Memory)93とを含んでいる。制御装置80には、表示装置85と、入力装置86とが付随していてもよい。制御装置80には、表示装置85と、入力装置86とが必要に応じて接続可能である。また制御装置80は表示装置85と、入力装置86とがなくても動作可能である。
処理部90と、記憶部94と、入力ポート82及び出力ポート83とは、バス87、バス88、バス89を介して接続される。バス87、バス88及びバス89により、処理部90のCPU91は、記憶部94と、入力ポート82及び出力ポート83と相互に制御データをやり取りしたり、一方に命令を出したりできるように構成される。
入力ポート82には、入力処理回路81が接続されている。入力処理回路81には、例えば、計測データisが接続されている。そして、計測データisは、入力処理回路81に備えられるノイズフィルタやA/Dコンバータ等により、処理部90が利用できる信号に変換されてから、入力ポート82を介して処理部90へ送られる。これにより、処理部90は、必要な情報を取得することができる。計測データisは、例えば弁駆動ピストン変位計15、計測装置20、21から信号ラインI3、I4、I5を介して取得した変位データ、クランク角度データ、回転数データである。
出力ポート83には、出力処理回路84が接続されている。出力処理回路84には、表示装置85や、外部出力用の端子が接続されている。出力処理回路84は、表示装置制御回路、弁駆動装置等の制御信号回路、信号増幅回路等を備えている。出力処理回路84は、処理部90が算出したサーボ弁13への信号データを表示装置85に表示させる表示信号として出力したり、サーボ弁13へ伝達する指示信号idとして出力したりする。表示装置85は、例えば液晶表示パネルやCRT(Cathode Ray Tube)等を用いることができる。指示信号idは、サーボ弁13へ信号ラインI2を介して伝達される。
記憶部94は、動弁装置100の動作手順を含むコンピュータプログラム等が記憶されている。ここで、記憶部94は、RAMのような揮発性のメモリ、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ、ハードディスクドライブあるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。
上記コンピュータプログラムは、処理部90へすでに記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせによって、動弁装置100の動作手順を実行するものであってもよい。また、この制御装置80は、コンピュータプログラムの代わりに専用のハードウェアを用いて、動弁装置100の動作手順を実行するものであってもよい。
また、動弁装置100の動作手順は、予め用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーション、あるいは制御用コンピュータ等のコンピュータシステムで実行することによって実現することもできる。また、このプログラムは、ハードディスク等の記録装置、フレキシブルディスク(FD)、ROM、CD−ROM、MO、DVD、フラッシュメモリ等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」には、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線網を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものを含むものとする。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
以上説明した制御装置80は、計測装置20、21から、クランク角度及び回転数データを取得する。本実施形態では、制御装置80は、本来所望のクランク角度毎にリフト量が与えられた目標リフト波形が記憶部94又はRAM92に記憶されているものとする。例えば、4ストロークエンジンでは燃焼用ピストンが2往復する間に、吸気・圧縮・膨張・排気の4行程を行うことで1サイクルを完結する。制御装置80は、この1サイクル分の目標リフト波形を生成し、目標リフト波形と同一のドライブ波形で弁駆動ピストンを駆動できるようサーボ弁に制御コマンドを制御信号として送付する。
次に、本実施形態に係る油圧回路について説明する。図4は、本実施形態に係る油圧回路の一例を示す説明図である。図4に示す油圧回路10Aは、図2に示す弁駆動装置10の弁駆動シリンダ11と、弁駆動シリンダ11内に移動可能に収納された弁駆動ピストン12と、弁駆動ピストン12を駆動するためのサーボ弁13との油圧回路を示している。
油圧回路10Aは、弁駆動シリンダ11と、弁駆動ピストン12と、スプール17を有する方向切換制御弁機構18と、ノズルフラッパ機構60と、油路41、42、43、44、45、46、47、48、49と、絞り68、69とを含んでいる。スプール17のストローク(変位)は、例えばLVDT(Linear Variable Differential Transformer:差動変圧器)のような非接触式のスプール変位計19により計測される。スプール変位計19は、信号ラインI6を通じて、上述した制御装置80へ接続されている。同様に、弁駆動ピストン12のストローク(変位)は、非接触式の弁駆動ピストン変位計15により計測される。弁駆動ピストン変位計15は信号ラインI3を通じて、上述した制御装置80へ接続されている。また、必要に応じ、配管71、72、73、74、75、76、77が設けられている。なお、油路41、42、44、45、47、48、49、配管77は、油ポート51、52、53、54、55、56、57、58に接続されている。
油圧回路10Aは、ピストン待避油圧回路110と接続されている。ピストン待避油圧回路110は、安全弁111と、安全弁操作バルブ機構112と、タンク113と、油路121、122、123、124、125と、を含んでいる。また、安全弁操作バルブ機構112は、図1に示す信号ラインI2を通じて、上述した制御装置80へ接続されている。なお、油路124は、油ポート129に接続されている。
方向切換制御弁機構18は、3方向に切換可能な3方切換制御弁である。方向切換制御弁機構18は、スプール17が移動することで、弁駆動シリンダ11へ通じる油路46へ接続する油路45、48を切り換えることができる。これにより、油路46に供給する作動油圧力の供給対象を切り換えることができる。
ノズルフラッパ機構60は、ノズルの流路面積を絞ることにより圧力を変化させる機構である。図4に示すようにノズルフラッパ機構60が油路41中に介在する。油路41はノズルフラッパ機構60から油路42、43との管路接続43a側となる油路41Aと、ノズルフラッパ機構60から油ポート51側となる油路41Bとを含んでいる。
図5は、ノズルフラッパ機構の一例を示す説明図である。図5に示すように、ノズルフラッパ機構60は、油路41Aと油路41Bとの間に配置されている。また、ノズルフラッパ機構60は、油路41の配管41aと、ノズル63と、フラッパ61と、ノズルフラッパ駆動手段62とを含んでいる。ノズルフラッパ機構60は、油ポート51でタンク79と接続されている。また、油路41の配管41aにノズル63が設けられている。フラッパ61がノズル63の流路面積を絞り又は開口可能な部材である。ノズルフラッパ駆動手段62は、例えば圧電体又はソレノイド等の電磁コイルで構成できる。ノズルフラッパ駆動手段62は、上述した制御装置80と信号ラインI2を介して接続されている。
上述した制御装置80は制御信号コマンドを送信し、制御信号コマンドに応じて図5に示すノズルフラッパ駆動手段62が伸縮する。ノズルフラッパ駆動手段62の伸縮に沿って、フラッパ61がノズルの流路面積を絞り又は開口することで油路41Aの圧力を変化させることができる。
図4に示す油路42は、油ポート52を介して油圧ユニット30と接続され、パイロット圧力が加えられている。絞り68はオリフィスであり、パイロット圧力を調整する圧力絞りである。
油路43は、管路接続43aで、油路41A及び油路42に接続されている。油路43は、方向切換制御弁機構18のスプール17を押圧する押圧部でもある。油路44は、油ポート53を介して油圧ユニット30と接続され、パイロット圧力が加えられている。
油路45は、油ポート54を介して油圧ユニット30と接続され、弁駆動ピストン12の第1の作動油圧力が加えられている。方向切換制御弁機構18により、油路45及び油路46の接続がスプール17の位置によって切り換えられる。
油路46は、方向切換制御弁機構18と弁駆動シリンダ11の弁駆動シリンダ上室11aとを接続している。油路49は、方向切換制御弁機構18と弁駆動シリンダ11の弁駆動シリンダ上室11aとを接続する間の管路接続46aで油路46と接続されている。また、油路49は、油ポート58を介してピストン待避油圧回路110の油路121と接続している。ここで、弁駆動シリンダ上室11aは、弁駆動シリンダ11内の空間であって、図2に示す弁ロッド5の逆側となる弁駆動ピストン12と弁駆動シリンダ11とで囲まれる空間である。弁駆動シリンダ上室11aには、配管71が接続されており、配管71が必要に応じ空気を抜く作用をしている。
また、弁駆動シリンダ下室11bは、図2に示す弁ロッド5側となる弁駆動ピストン12と弁駆動シリンダ11とで囲まれる空間である。油路47は、油ポート57を介して油圧ユニット30と接続され、弁駆動ピストン12の第2の作動油圧力が加えられている。油路47には、絞り69が設けられている。絞り69はオリフィスであり、第2の作動油圧力を調整する圧力絞りである。絞り69により、第2の作動油圧力は上述した第1の作動油圧力よりも小さくなるように設定されていることが好ましい。油路47は、管路接続47aを有しており、配管72が接続されている。配管72は、必要に応じ空気を抜く作用をしている。
油路48は、方向切換制御弁機構18からの戻り管路であり、油ポート55を介して油タンクと接続している。
配管73、74、75、76、77は、ドレン配管であり、水分が油ポート56を介して排出される。油ポート51、52、53、54、55、56、57、58は、サーボ弁13に開口した油又は水分を運ぶ開口部である。
ピストン待避油圧回路110は、緊急時に方向切換制御弁機構18の動作と無関係に弁駆動ピストン12を動弁シリンダ内へ縮めるための油圧回路である。安全弁111は、圧力平衡型のリリーフ弁であり、パイロットピストン111aと、スプリング111bとを有している。安全弁111は、油路121を介して上述した油路46と接続している。また、安全弁111は、油路122を介して安全弁操作バルブ機構112と接続している。安全弁111は、動弁装置100の通常駆動時に使用する最大の油路121からの圧力でもパイロットピストン111aが油路を閉じるようにスプリング111bのスプリング圧及び安全弁操作バルブ機構112からの油圧が設定されている。例えば、吸気弁又は排気弁が開閉する間隔は、20m秒等の数から数十m秒であることから、パイロットピストン111aが油路を閉じるように設定する圧力は、応答速度を吸気弁又は排気弁が開閉する間隔で開口できる圧力及びパイロットピストンの面積設定であることが好ましい。なお、油路123は、安全弁111の動作時に作動油をタンク113に戻すための戻り経路である。
安全弁操作バルブ機構112は、油路124と接続している。この油路124は油ポート129を通じて、油圧ユニット30と接続され、パイロット圧力が加えられている。安全弁操作バルブ機構112は、動弁装置100の通常駆動時に安全弁111へパイロット圧を供給するように、油路124と油路122とを接続する。緊急の場合、安全弁操作バルブ機構112は、上述した制御装置80の制御信号を信号ラインI2より受け、ソレノイド等を駆動するか、ソレノイド等の電源を切り、付勢したバネ力等により油路122をタンク113に接続した油路125へ切り換えることが可能な方向切換制御弁である。
油路122をタンク113に接続した油路125へ切り換える場合、安全弁111は、パイロットピストン111aが受けていたパイロット圧がなくなり、平衡がくずれ、油路121を油路123へ繋ぐ動作を行う。これにより、作動油が油路123を通じてタンク113へ供給される。
上述したように、本実施形態の内燃機関の動弁装置は、制御信号で動作する油圧の流れ方向と圧力を制御するスプールを有するサーボ弁と、前記スプールにより制御された油圧に応じて弁駆動シリンダ内でピストン運動する内燃機関の排気弁又は吸気弁を駆動可能な弁駆動ピストンと、前記弁駆動シリンダと前記サーボ弁との間の前記油圧を下げる安全弁と、を含む。
これにより、吸気弁、排気弁が高速で動作していても安全弁が動作し弁駆動シリンダ内に弁駆動ピストンを縮めて格納できる。このため、弁駆動ピストンが弁駆動シリンダ中へ縮んでからスプールが移動することがない。その結果、弁駆動ピストンが弁駆動シリンダより突き出ることがなく、弁駆動ピストンが突き出たまま、吸気弁又は排気弁に衝突して破損するおそれが低減される。
次に、図1から図10を参照して、本実施形態に係る動弁装置の動作を説明する。図6は、本実施形態に係る動弁装置の動作を示すフローチャートである。図7及び図8は、本実施形態に係る弁駆動ピストンの動作を示す説明図である。図9は、本実施形態に係る内燃機関の動弁装置のブロック線図を示す説明図である。図10は、本実施形態に係る弁駆動ピストンの動作を示す説明図である。
図6に示すように、動弁装置100の制御装置80は、制御信号のコマンドをサーボ弁13へ送信する(ステップS1)。図1及び図2に示すように、制御装置80からの制御信号コマンドは、信号ラインI2を介し、サーボ弁13へ伝達される。サーボ弁13では、図5に示すノズルフラッパ機構60のノズルフラッパ駆動手段62が制御信号のコマンドに応じ伸縮する。
図5に示すノズルフラッパ駆動手段62が駆動され、ノズル63の流路面積を絞ることにより油路41Aの圧力を変化させると、図7に示すように油路42にパイロット圧力が減圧されることなく、油路43へ印加される。油路43へは圧力PPBが印加されることになる。上述したように、油路44にもパイロット圧力が印加されている。ここで、油路44に加わる圧力を圧力PPAとする。
本実施形態では、圧力PPAは、図5に示すノズルフラッパ駆動手段62が駆動され、ノズル63の流路面積を最も絞る状態での圧力PPBの略半分となるように、絞り68が設定されていることが好ましい。これにより、圧力PPAは、図5に示すノズルフラッパ駆動手段62が駆動され、ノズル63の流路面積を所定以上絞ると、圧力PPAよりも圧力PPBが大きくなり、スプール17が移動する。スプール17が移動すると、スプール変位計19がスプールの変位を読み取り、スプール変位計19は信号ラインI6を通じて、スプールの変位情報を制御装置80へ送出する。
スプール17の移動に伴い、方向切換制御弁機構18が油路45と油路46を接続する。これにより、弁駆動シリンダ上室11aが第1の作動油圧力となり、弁駆動シリンダ下室11bの第2の作動油圧力よりも大きくなることから弁駆動ピストン12が、図2に示す弁ロッド5の方向、図7に示す矢印Z1方向へ移動することになる。弁駆動ピストン12の変位は、図2に示す弁駆動ピストン変位計15で計測され、弁駆動ピストン変位計15は信号ラインI3を通じて、ピストンの変位情報を制御装置80へ送出する。
図5に示すノズルフラッパ駆動手段62が駆動され、ノズル63の流路面積の絞りを開放することにより油路41Aの圧力を変化させると、図8に示すように油路42のパイロット圧力が減圧される。このため油路43へ印加される圧力も減圧される。その結果、油路43へ印加されるPPBが油路44に加わる圧力PPAよりも小さくなる。
すなわち、圧力PPAは、図5に示すノズルフラッパ駆動手段62が駆動され、ノズル63の流路面積の絞りが所定以上開放されると、圧力PPBよりも圧力PPAが大きくなり、スプール17が移動する。スプール17が移動すると、スプール変位計19がスプールの変位を読み取り、スプール変位計19は信号ラインI6を通じて、スプールの変位情報を制御装置80へ送出する。
スプール17の移動に伴い、方向切換制御弁機構18が油路45と油路46との接続を、油路48と油路46との接続に切り替わらせる。これにより、弁駆動シリンダ上室11aが戻り管路の圧力となり、弁駆動シリンダ下室11bの第2の作動油圧力よりも小さくなることから弁駆動ピストン12が、図2に示す弁ロッド5の逆方向、図8に示す矢印Z2方向へ移動することになる。弁駆動ピストン12の変位は、図2に示す弁駆動ピストン変位計15で計測され、弁駆動ピストン変位計15は信号ラインI3を通じて、ピストンの変位情報を制御装置80へ送出する。
以上説明したように、本実施形態の内燃機関の動弁装置は、制御信号で動作して、ノズルの流路面積を絞ることにより圧力を変化させるノズルフラッパ機構と、前記ノズルフラッパ機構の動作に応じて、作動油圧力の供給対象を切り換える方向切換制御弁と、前記方向切換制御弁により切り換えられた作動油圧力の供給対象に応じて弁駆動シリンダ内で往復運動して、内燃機関の排気弁と吸気弁との少なくとも一方を駆動可能な弁駆動ピストンと、を含み、前記ノズルフラッパ機構のノズルの流路面積を絞ることにより圧力を変化させると、前記圧力の変化に従って前記方向切換制御弁により切り換えられた作動油圧力の供給対象が変化し、前記作動油圧力の供給対象に応じて前記弁駆動ピストンが前記弁駆動シリンダから突き出る。逆に、前記ノズルフラッパ機構のノズルの流路面積の絞りを開放することにより圧力を変化させると、前記方向切換制御弁により作動油圧力の供給対象が変化し、前記作動油圧力の供給対象に応じて前記弁駆動ピストンが前記弁駆動シリンダへ格納される方向(縮む方向)へ移動する。
これにより、ノズルフラッパ機構60の電気系統が故障した場合、制御信号に応じてノズルフラッパ機構60のノズル63の流路面積を絞ることがない。圧力PPAは、図5に示すノズルフラッパ駆動手段62が駆動できないので、ノズル63の流路面積の絞りが所定以上開放されたままとなる。このため、図8に示すように、圧力PPBよりも圧力PPAが大きくなったままとなり、方向切換制御弁機構18が油路45と油路46との接続を、油路48と油路46との接続に切り替わる。一度、スプール17の移動に応じて弁駆動ピストン12が弁駆動シリンダ11の中へ縮む(Z2方向の動作)とその後、スプール17が移動することがない。その結果、スプール17の移動に応じて弁駆動ピストン12が弁駆動シリンダ11より突き出ることがなく、弁駆動ピストン12が突き出たまま、吸気弁4b又は排気弁4aに衝突して破損するおそれが低減される。
また、本実施形態の内燃機関の動弁装置は、弁駆動ピストン12が弁駆動シリンダ11内でピストン運動する場合、油路46の油圧が上下する。ここで、油路46と油路121を介して接続される上述した安全弁111は、油路46の油圧が上下してもパイロットピストン111aが閉じた状態となっている。この場合、ピストン待避油圧回路110は、油圧回路10Aへ影響を及ぼしていない。
本実施形態の内燃機関の動弁装置は、制御装置80が制御信号のコマンドをサーボ弁13へ送信する(ステップS1)と、次に、制御装置80がピストン変位との偏差演算する(ステップS2)。このため、CPU91が、次に図9に示すブロック線図に基づいて説明するようにピストン変位のデータをフィードバックする。
図9に示すブロック線図は、制御装置ブロックG1、スプールブロックG2、弁駆動ピストンブロックG3を有している。制御装置ブロックG1の制御信号のコマンドに基づく目標リフト変位LFと、弁駆動ピストン変位計15で計測したピストン変位信号PS1のフィードバックピストン変位信号PS2とが加算点Q1で加算され、CPU91が制御信号のコマンドに基づく目標リフト変位LFとピストン変位PS2との偏差を演算し、記憶部94又はRAM92に記憶する。CPU91は、制御装置ブロックG1の制御信号のコマンドに基づく目標リフト変位LFに目標リフト変位LFとピストン変位PS1との偏差をフィードバック制御し、PID制御されたスプール変位制御信号FB1を生成する。
スプール変位制御信号FB1と、スプール変位計19により計測したスプール変位信号SP1のフィードバックスプール変位信号SP2とが加算点Q2で加算され、CPU91がスプール変位制御信号FB1に基づくスプール変位とスプール変位SP2との偏差を演算し、記憶部94又はRAM92に記憶する。CPU91は、スプール変位制御信号FB1に基づくスプール変位とスプール変位SP2との偏差をフィードバック制御し、PID制御されたスプール変位制御信号FB2を生成する。スプールブロックG2は、スプール変位制御信号FB2を所定の伝達関数で変換し、スプール変位信号SP1とする。弁駆動ピストンブロックG3は、スプール変位信号SP1を所定の伝達関数で変換し、ピストン変位信号PS1とする。制御装置80がピストン変位との偏差演算する(ステップS2)と、次のステップに進む。
次に、制御装置80はピストン変位との偏差が所定のしきい値を超えるか判断する(ステップS3)。このしきい値は、記憶部94又はRAM92に予め記憶されている。制御装置80は所定のしきい値をRAM92のワークエリアに読み出し、演算したピストン変位との偏差と比較する。ピストン変位との偏差が所定のしきい値を超える場合(ステップS3、Yes)、制御装置80は後述する安全弁の制御(ステップS6)へ進む。ピストン変位との偏差が所定のしきい値を超えない場合(ステップS3、No)、制御装置80は上述したスプール変位との偏差を演算する(ステップS4)。
制御装置80は上述したスプール変位との偏差を演算する(ステップS4)のは、本実施形態の内燃機関の動弁装置が、スプール17の動作に連動して弁駆動ピストン12の移動方向が決まるので、スプール17の動作が適切であるかをモニタリングすることは重要である。なお、このステップS4及び後述するステップ5を省略し、ピストン変位との偏差が所定のしきい値を超えない場合、制御信号のコマンド送信(ステップS1)へ戻るようにしてもよい。
次に、制御装置80は、スプール変位との偏差が所定のしきい値を超えるか判断する(ステップS5)。このしきい値は、記憶部94又はRAM92に予め記憶されている。制御装置80は所定のしきい値をRAM92のワークエリアに読み出し、演算したスプール変位との偏差と比較する。スプール変位との偏差が所定のしきい値を超える場合(ステップS5、Yes)、制御装置80は安全弁の制御(ステップS6)へ進む。ピストン変位との偏差が所定のしきい値を超えない場合(ステップS5、No)、制御装置80は制御信号のコマンド送信(ステップS1)へ戻る。
次に、安全弁の制御(ステップS6)では、制御装置80は、安全弁操作バルブ機構112へ制御信号を信号ラインI2を通じて送信し、安全弁111を開放する。例えば、図10に示す安全弁操作バルブ機構112のソレノイドが駆動され、安全弁111へパイロット圧を供給していた油路122は、油路125との接続に切り換えられ、油路122のパイロット圧が開放される。または、安全弁操作バルブ機構112の電源を切ると、パイロット圧が開放する機構であれば、制御装置80は、安全弁操作バルブ機構112の電源供給を停止する制御を行う。安全弁操作バルブ機構112の駆動手段が圧電体であれば、電圧印加を停止する。安全弁操作バルブ機構112の駆動手段がソレノイドであれば励磁のための電流を停止する。これにより、例えば停電時でも安全弁操作バルブ機構112を動作させることができる。
油路122をタンク113に接続した油路125へ切り換える場合、安全弁111は、パイロットピストン111aが受けていたパイロット圧がなくなり、平衡がくずれ、油路121を油路123へ繋ぐ動作を行う。このため、方向切換制御弁機構18の動作状態と無関係に、油路46が減圧される。その結果、弁駆動シリンダ上室11aが戻り管路の圧力となり、弁駆動シリンダ下室11bの第2の作動油圧力よりも小さくなることから弁駆動ピストン12が、図2に示す弁ロッドの逆方向、図10に示す矢印Z2方向へ移動することになる。
上述したように、本実施形態の内燃機関の動弁装置は、制御信号で動作して、作動油圧力の供給対象を切り換える方向切換制御弁と、前記方向切換制御弁により切り換えられた作動油圧力の供給対象に応じて弁駆動シリンダ内で往復運動して、内燃機関の排気弁と吸気弁との少なくとも一方を駆動可能な弁駆動ピストンと、前記弁駆動シリンダと前記方向切換制御弁との間の前記油圧を下げる安全弁と、を含む。
これにより、吸気弁、又は排気弁が高速で動作していても安全弁が動作し弁駆動シリンダ内に弁駆動ピストンを縮めて格納できる。このため、弁駆動ピストンが弁駆動シリンダ中へ縮んでからスプールが移動することがない。その結果、弁駆動ピストンが弁駆動シリンダより突き出ることがなく、弁駆動ピストンが突き出たまま、吸気弁又は排気弁に衝突して破損するおそれが低減される。
次に、制御装置80は、ノズルフラッパの制御(ステップS6)を行う。制御装置80は、ノズルフラッパ機構60のノズルの絞りを開放する。例えば、図5に示すノズルフラッパ駆動手段62が駆動され、ノズル63の流路面積の絞りを開放することにより油路41Aの圧力を変化させる。または、ノズルフラッパ駆動手段62が電源を切ると、縮みノズル63の流路面積の絞りを開放する機構であれば、制御装置80は、ノズルフラッパ駆動手段62の電源供給を停止する制御を行う。ノズルフラッパ駆動手段62が圧電体であれば、電圧印加を停止する。ノズルフラッパ駆動手段62がソレノイドであれば励磁のための電流を停止する。
図8に示すように油路42のパイロット圧力が減圧される。このため油路43へ印加される圧力も減圧される。その結果、油路43へ印加されるPPBが油路44に加わる圧力PPAよりも小さくなる。このため、スプール17が一方向にのみ移動し、方向切換制御弁機構18が油路45と油路46との接続を、油路48と油路46との接続に切り替わらせる。そして、弁駆動シリンダ上室11aが戻り管路の圧力となり、弁駆動シリンダ下室11bの第2の作動油圧力よりも小さくなる。この状態では、弁駆動ピストン12が、図2に示す弁ロッドの逆方向、図8に示す矢印Z2方向へ移動した状態と一致し、内燃機関の動弁装置100が再始動するときのスプール動作と弁駆動ピストン動作をあわせることができる。
本実施形態の内燃機関の動弁装置100は、弁駆動ピストン12の変位を検出する弁駆動ピストン変位検出手段である弁駆動ピストン変位計15と、制御信号を送信する制御装置80と、を含み、制御装置80は、前記制御信号と弁駆動ピストン変位計15が検出したピストン変位信号との偏差を演算し、前記偏差がしきい値を超える場合には前記制御装置80が安全弁111を動作させることが好ましい。
これにより、スプールの状態に関わらず、弁駆動ピストンが弁駆動シリンダ中へ縮んでから移動することがない。このためスプールの移動にかかる時間を考慮せず、弁駆動ピストンが弁駆動シリンダ格納できる。その結果、弁駆動ピストンが突き出たまま、吸気弁又は排気弁に衝突して破損するおそれが低減される。
本実施形態の内燃機関の動弁装置100は、方向切換制御弁機構18の作動油圧力の供給対象を変えるスプール17と、スプール17の変位を検出するスプール変位検出手段であるスプール変位計19と、制御信号を送信する制御装置80と、を含み、制御装置80は、前記制御信号とスプール変位計19が検出したスプール変位との偏差を演算し、前記偏差がしきい値を超える場合には制御装置80が安全弁111を動作させることが好ましい。
弁駆動ピストンがスプールの動作と連動しているので、スプールの不具合に起因する弁駆動ピストンの動作遅れ、動作不具合を事前に検知する。このスプールに起因する弁駆動ピストンの動作遅れ等を事前に考慮して、弁駆動ピストンが弁駆動シリンダ格納できる。その結果、弁駆動ピストンが突き出たまま、吸気弁又は排気弁に衝突して破損するおそれが低減される。
上述したように、内燃機関の動弁駆動方法は、弁駆動シリンダ内の駆動力で往復運動する弁駆動ピストンにより内燃機関の排気弁と吸気弁との少なくとも一方を駆動可能な動弁駆動方法であって、弁駆動の制御信号と、弁駆動ピストンの変位信号との偏差を演算し、前記偏差が所定のしきい値を超える場合には、弁駆動ピストンを縮める安全弁動作信号を送信することができる。これにより、吸気弁、又は排気弁が高速で動作していても安全弁が動作し弁駆動シリンダ内に弁駆動ピストンを縮めて格納できる。このため、弁駆動ピストンが弁駆動シリンダ中へ縮んでからスプールが移動することがない。その結果、弁駆動ピストンが弁駆動シリンダより突き出ることがなく、弁駆動ピストンが突き出たまま、吸気弁又は排気弁に衝突して破損するおそれが低減される。
なお、本実施形態に係る動弁装置及び動弁駆動方法は、内燃機関の吸気弁又は排気弁を開閉駆動する試験機にも適している。また、本実施形態の内燃機関は、シリンダブロックと、前記シリンダブロック内を上下動する燃焼用ピストンと、排気弁及び吸気弁と、前記排気弁及び前記吸気弁を各々駆動することが好ましい。これにより、清浄な排気と燃費向上とによりNOx、未燃HCの排出量の低減と二酸化炭素排出量の低減とに寄与することができる。