JP2012177985A - 交通信号制御装置及び方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明は、交差点ISの特定流入路L1,L5を通行する右折車両に通行権を与える時間帯を、交差点ISで特定流入路L1,L5と交差する道路の横断歩行者に通行権を与える時間帯と分離する、右折車両分離方式の歩車分離制御を行う交通信号制御装置1に関する。この装置1は、特定流入路L1,L5における右折需要を判定する判定部(制御部101)と、判定した右折需要に対応して、横断歩行者の通行権の有無を表示する歩行者灯器2Bの青時間を決定する時間設定部(制御部101)とを備える。
【選択図】 図1
Description
より具体的には、本発明は、上記右折車両分離方式の歩車分離制御の改良に関する。
一般的な十字路交差点の標準2現示制御では、特定方向(例えば、東西方向)の上り下りの流入路に通行権を与える第1の「双方向現示」(「対面現示」ともいう。)と、交差方向(例えば、南北方向)の上り下りの流入路に通行権を与える第2の「双方向現示」との、少なくとも2つの現示が必要である。
この「右折専用現示」(以下、単に「右折現示」ということがある。)は、右折車両を安全かつ円滑に処理するために、右折方向の青矢印表示等によって右折車両のみに通行権を与える現示のことである。十字路交差点において交差する双方向に右折現示を入れる場合には、2つの双方向現示と2つの右折現示との合計4つの現示が必要となる。
この場合、車両と歩行者の通行時間帯が完全に分離されるので、車両もスムーズに右左折できる利点がある。かかる歩車分離制御の種類としては、「スクランブル方式」、「歩行者専用現示方式」、「左折車両分離方式」及び「右折車両分離方式」などがある。
図9(a)に示すように、この交差点ISは、流入路において直進、右折及び左折の車線に分かれる南北方向及び東西方向の道路が交差する十字路交差点である。
また、図9(b)の現示方式では、東西方向の流入路に直進方向と左折方向の通行権を与える双方向現示であり、その際に直進方向の横断歩行者に通行権を与える第1現示1φと、東西方向の流入路に右折方向の通行権を与える右折現示である第2現示2φとを有する。なお、南北方向の流入路の第3現示3φ及び第4現示4φについても同様である。
また、図9(b)の現示方式では、直進方向と同じ方向に進む横断歩行者の歩行者青を直進青と同じ現示1φ,3φに割り当てて右折青を歩行者青と分離しており、交差点ISにおける人身事故の主要な発生原因の1つである、右折車両と横断歩行者との交錯を無くすようにしている。
このため、右折青の時間帯であっても横断歩行者が通行可能である通常の非分離の現示方式に比べて、歩行者青の時間が非常に短くなるケースがある。
しかし、現状の画像感知器では車両台数は正確に検出できるが、歩行者数を正確に検出すること難しい。従って、歩行者感応制御の実装は困難であり、また、歩行者を高精度に検出できる特殊な感知器を導入するとすれば、設備コストが高騰化することになる。
従って、右折車両の通行状況に応じて、右折車両と交錯しない出来るだけ長い通行時間を横断歩行者に与えることができる。
すなわち、後述の実施形態の通り、特定流入路での右折需要は、歩行者感知の必要がない比較的安価な汎用品である車両感知器(超音波式や画像式等)によって正確に検出できるので、通常の設備コストで本発明の交通信号制御装置を実装することができる。
その理由は、右折車両と横断歩行者を分離する現示方式の場合に、右折需要に対応して歩行者灯器の青時間を決定するには、車両灯器の右折青時間を先に決定する必要があるからである。
その理由は、右折青開始時刻から右折青終了時刻までの右折青時間は、右折需要に対応して変動するので、上記タイムスパンを一定時間として固定しないと、右折需要に対応した歩行者灯器の青時間を決定できないからである。
例えば、交通管制センター等に設けられた中央装置が、交通状況に応じてスプリット、サイクル長及びオフセットを自動的に更新する系統制御を行っている場合には、更新後のスプリットやサイクル長に基づいてタイムスパンを一定時間に更新すればよい。
すなわち、次の(a)の第1現示の後に次の(b)の第2現示を出す現示方式を採用する前記交差点の場合には、前記時間設定部は、前記タイムスパンからの減算値として前記(a)の第1現示に割り当てた前記車両灯器の右折青時間を含む減算を行うことにより、前記(b)の第2現示に割り当てた前記歩行者灯器の青時間を算出すればよい。
(a) 特定流入路の直進、左折及び右折方向に通行権を与える第1現示
(b) 特定流入路の直進及び左折方向と横断歩行者に通行権を与える第2現示
また、「右折黄時間」(右折矢印の後に出す右折車両のための黄時間)が(a)の第1現示に含まれる場合には、その「右折黄時間」もタイムスパンから減算する必要がある。
更に、「左直残り青時間」(歩行者赤時間と重複する左折及び直進方向の青時間)と「左直黄時間」(歩行者赤時間と重複する左折及び直進方向の黄時間)が(b)の第2現示に含まれる場合には、それらの時間もタイムスパンから減算する必要がある。
従って、時間帯によっては特定流入路の右折需要がいっこうに無くならず、特定流入路の右折青時間が常に最大点灯時間となり、横断歩行者に十分な通行時間を与えられない場合がある。
この場合、前記時間設定部は、前記(c)の第1現示に割り当てた前記車両灯器の右折青時間と前記タイムスパンとに基づいて、前記歩行者灯器の青時間を含む残りの現示時間を決定すればよい。
(c) 特定流入路の右折方向に通行権を与える第1現示
このため、特定流入路の右折需要が対向流入路の通行量とは無関係に増減するので、特定流入路の右折需要が少ない場合にその右折青時間を確実に短く設定でき、出来るだけ長い通行時間を横断歩行者に与えることができる。
(d) 特定流入路の直進及び左折方向と横断歩行者に通行権を与える第2現示
この場合、前記時間設定部は、前記タイムスパンからの減算値として前記(c)の第1現示に割り当てた前記車両灯器の右折青時間を含む減算を行うことにより、前記(d)の第2現示に割り当てた前記歩行者灯器の青時間を算出すればよい。
また、「左直残り青時間」(歩行者赤時間と重複する左折及び直進方向の青時間)と「左直黄時間」(歩行者赤時間と重複する左折及び直進方向の黄時間)が(d)の第2現示に含まれる場合には、それらの時間もタイムスパンから減算する必要がある。
(e) 特定流入路の直進及び左折方向に通行権を与える第2現示
(f) 特定流入路の直進方向と横断歩行者に通行権を与える第3現示
この場合、前記時間設定部は、前記タイムスパンからの減算値として前記(c)の第1現示に割り当てた前記車両灯器の右折青時間と、前記(e)の第2現示に割り当てた前記車両灯器の左折青時間とを含む減算を行うことにより、前記(e)の第3現示に割り当てた前記歩行者灯器の青時間を算出すればよい。
また、「左折黄時間」(左折矢印の後に出す左折車両のための黄時間)が(e)の第2現示に含まれる場合には、その「左折黄時間」もタイムスパンから減算する必要がある。
更に、「直進残り青時間」(歩行者赤時間と重複する直進方向の青時間)と「直進黄時間」(歩行者赤時間と重複する直進方向の黄時間)が(f)の第3現示に含まれる場合には、それらの時間もタイムスパンから減算する必要がある。
このため、左折車両と歩行者を分離しない前記(d)の第2現示を採用する場合に比べて、車両と横断歩行者をより完全に歩車分離することができ、横断歩行者の安全をより確実に担保することができる。
もっとも、前記判定部が、前記特定流入路における左折需要を判定可能である場合には、前記時間設定部は、判定した前記左折需要に対応して、前記(e)の第2現示に割り当てた前記車両灯器の左折青時間を決定することが好ましい。
従って、右折車両の通行状況に加えて、左折車両の通行状況に応じて、歩行者灯器の青時間を設定することができ、右折車両及び左折車両と交錯しない出来るだけ長い通行時間を横断歩行者に与えることができる。
なお、本発明の交通信号制御方法においても、前記(2)〜(8)において述べた各処理と実質的に同じステップを含ませることにしてもよい。
〔第1実施形態〕
〔システムの全体構成〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る交通信号制御機を含む交通信号制御システムを示す道路平面図である。
なお、図1に示す十字路交差点(以下、単に「交差点」という。)ISの、流入路L1,L3,L5,L7や流出路L2,L4,L6,L8の車線数等は一例であって、交差点ISの構造は図1のものに限定されるものではない。
本実施形態の信号灯器2は、交差点ISの流入路L1,L3,L5,L7を通行する車両5にその通行権の有無を表示する合計4つの車両灯器2Aと、流入路L1,L3,L5,L7と交差する道路の横断歩行者(図示せず)にその通行権の有無を表示する合計8つの歩行者灯器2Bとからなる。
また、8つの歩行者灯器2Bは、交差点ISで交差する各交差道路の横断歩道6の入り口付近に設定されており、図1に示す歩行者灯器2Bには、歩行者青灯と歩行者赤灯の2種類の歩行者灯が含まれている。
従って、中央装置4は、交通信号制御機1とそれぞれ双方向通信が可能であり、交通信号制御機1は他の交差点の同制御機1とも双方向通信が可能である。なお、中央装置4は交通管制センターではなく道路上に設置してもよい。
すなわち、中央装置4は、所定周期(例えば、1分や1サイクル)ごとに各種の路側センサから収集した計測情報に基づいて、必要な交通情報を当該所定周期ごとに算出し、算出した交通情報に基づいて信号制御パラメータ(スプリット、サイクル長及びオフセット等)を設定する交通感応制御を行うことができる。
また、中央装置4は、交差点ISでの端末感応制御の許否を含む制御種別情報を、管轄エリア内の各交通信号制御機1に通知している。
交通信号制御機1は路側センサ3とも通信回線で繋がっている。路側センサ3は、交差点ISの交通信号制御機1が行う端末感応制御に必要な情報を計測し、その計測情報は交通信号制御機1に送信される。
本実施形態では、流入路L1,L3,L5,L7での右折需要に応じて車両灯器2Aの右折青時間を調整する。このため、路側センサ3は、流入路L1,L3,L5,L7の右折レーンを通行する車両5(右折車両)の有無を検出する車両感知器よりなる。
上記車両感知器としては、例えば、流入路L1,L3,L5,L7の右折レーンの所定箇所への車両通過を検出する、超音波感知式の車両感知器3A(図2(a)参照)を採用することができる。
図2(a)に示すように、超音波式の車両感知器3Aは、右折レーンの入り口付近の所定箇所(例えば、停止線から上流側に30m離れた位置)に超音波を所定時間おきに照射し、車両5からの反射波の受信如何によって車両5の有無を検出する。従って、超音波式の車両感知器3Aは、右折レーンの所定箇所に対する車両通過を、短時間でスポット的に監視するものである。
なお、右折レーンへの車両5の通過をスポット的に監視する車両感知器3Aとしては、超音波式の他に、赤外線やレーザ光などを用いる光学式センサや、インダクタンス変化で車両5を感知するループコイルを採用することもできる。
また、本実施形態に使用可能な路側センサ3としては、カメラ映像を画像処理して車両5の有無を計測する、画像式の車両感知器3B(図2(b)参照)を採用してもよい。
図2(b)に示すように、画像式の車両感知器3Bは、流入路L1,L3,L5,L7の右折レーンにおける、十分な延長の所定区間(例えば、停止線から30mまでの区間)を監視範囲とし、その監視範囲内のカメラ映像を画像処理することにより、右折レーンでの車両5の有無をほぼリアルタイムに検出することができる。
このため、右折需要の存否をより迅速に判定でき、延長の必要がない場合に早く打ち切ることで、右折青時間の点灯時間を正確に最適化することができる。
図1に示すように、本実施形態の交通信号制御機1は、制御部101、記憶部102、通信部103及び灯器駆動部104を内部に含んでいる。
制御部101は、1又は複数のマイクロコンピュータから構成され、内部バスを介して記憶部102、通信部103及び灯器駆動部104と接続されている。制御部101はこれらのハードウェア各部の動作を制御する。
灯器駆動部104は、半導体リレー(図示せず)を備え、制御部101が生成した信号切り替えタイミングに基づいて、信号灯器2の各信号灯に供給する交流電圧(AC100V)又は直流電圧をオン/オフする。
また、通信部103は、自装置が行う端末感応制御に必要な計測情報(本実施形態では、流入路L1,L3,L5,L7の右折レーンにおける車両5の検出情報)を路側センサ3から受信し、この計測情報を自装置の制御部101に転送する。
制御部101は、上記コンピュータプログラムを記憶部102から読み出して処理することにより、所定の端末感応制御を行う。
また、制御部101は、端末感応制御として、流入路L1,L3,L5,L7の右折需要に応じて車両灯器2Aの右折青時間を決定する「右折感応制御」を実行し、決定した右折青時間に基づいて歩行者灯器2Bの青時間を決定する「青時間設定」を行う。これらの各制御の内容についても後述する。
図3は、交差点ISで採用されている、パターン1の現示方式における1サイクル中に含まれる現示の遷移を示す遷移図である。
図3に示すように、パターン1の現示方式では、次の第1現示1φ〜第4現示4φの4つの現示が、1サイクルにおいて順に繰り返されるようになっている。
第2現示2φ:東西方向の流入路L1,L5について、直進及び左折方向に通行権を与え、かつ、その流入路L1,L5の交差道路の横断歩行者に通行権を与える双方向現示
第3現示3φ:南北方向の流入路L3,L7について、直進、左折及び右折方向に通行権を与える双方向現示
第4現示4φ:南北方向の流入路L3,L7について、直進及び左折方向に通行権を与え、かつ、その流入路L3,L7の交差道路の横断歩行者に通行権を与える双方向現示
このように、パターン1の現示方式は、東西方向の流入路L1,L5の右折車両に通行権を与える時間帯(第1現示1φ)を、その流入路L1,L5と交差する道路の横断歩行者に通行権を与える時間帯(第2現示2φ)と分離する、「右折車両分離方式」の歩車分離制御の一種である。
このように、パターン1の現示方式は、南北方向の流出路L3,L7の右折車両に通行権を与える時間帯(第3現示3φ)を、その流入路L3,L7と交差する道路の横断歩行者に通行権を与える時間帯(第4現示4φ)と分離する、「右折車両分離方式」の歩車分離制御の一種である。
また、以下においては、交差点ISに流入するすべての流入路L1,L3,L5,L7のうち、東西方向の流入路L1,L5を着目する「特定流入路」として、制御部101が行う「右折感応制御」(図5)と歩行者灯器2Bの「青時間設定」の内容を説明する。
図3において、「T1」は第1現示1φの時間帯、「T2」は第2現示2φの時間帯を示している。「tp」は第1現示1φの開始時刻、「tm」はその終了時刻(第2現示2φの開始時刻でもある。)、「tq」は第2現示2φの終了時刻を示している。
また、図3において、「Ts」は、第1現示1φの開始時刻tpから第2現示2φの終了時刻tqまでの「タイムスパン」を示している。従って、タイムスパンTsと時間帯T1,T2との間には、Ts=T1+T2の関係が成立する。
「右折黄時間」がない場合:
終了時刻tm=「右折青時間」の終了時刻
時間帯T1 =「右折青時間」
「右折黄時間」がある場合:
終了時刻tm=「右折黄時間」の終了時刻
時間帯T1 =「右折青時間」+「右折黄時間」
「左直残り青時間」と「左直黄時間」がない場合:
終了時刻tq=「青点滅時間」の終了時刻
時間帯T2 =「歩行者青時間」+「青点滅時間」
「左直残り青時間」と「左直黄時間」がある場合:
終了時刻tq=「左直黄時間」の終了時刻
時間帯T2 =「歩行者青時間」+「青点滅時間」+「左直残り青時間」
+「左直黄時間」
また、「青点滅時間」とは、歩行者青灯の点滅時間のことをいい、「左直残り青時間」とは、歩行者赤時間と重複する左折及び直進方向の青時間のことをいい、「左直黄時間」とは、歩行者赤時間と重複する左折及び直進方向の黄時間のことをいう。
もっとも、パターン1において、第2現示2φの終了時刻tqを「歩行者青時間」の終了時刻として定義することもでき、この場合のtqとT2は、次のようになる。
終了時刻tq=「歩行者青時間」の終了時刻(=「青点滅時間」の開始時刻)
時間帯T2 =「歩行者青時間」
従って、後述する右折感応制御(図5)によって定まる車両灯器2Aの「右折青時間」に基づいて第1現示1φの時間帯T1を決定すれば、T2=Ts−T1として、第2現示2φの時間帯T2を決定でき、この時間帯T2に基づいて歩行者灯器2Bの青時間である「歩行者青時間」を決定することができる。
なお、第2現示2φの終了時刻tqを「歩行者青時間」の終了時刻として定義している場合には、時間帯T2が「歩行者青時間」と一致するので、T2=Ts−T1の式によって算出した時間帯T2を、そのまま「歩行者青時間」とすればよい。
交通信号制御機1の制御部101は、後述の「右折感応制御」(図5)に先立ち、或いはその制御と並行して、図4のフローチャートに示す「右折需要の判定処理」を特定流入路L1,L5について行う。
ここで、前記超音波式の車両感知器3Aの場合には、右折レーンの所定箇所を狭い範囲で車両5の通過をスポット的に監視するため、短時間しか右折車両を検出できない。
つまり、制御部101は、特定流入路L1,L5の車両感知器3Aが車両5を検出しない状態が所定時間以上継続した場合には、当該流入路L1,L5での右折需要が完了、すなわち右折需要なしと判断する。
図4を参照してより具体的に説明すると、制御部101は、第1現示1φの開始時刻tpと同時に、判定タイマをリセットする(ステップST1)。この判定タイマは、現在時刻が後続判定時間Tdを経過したか否かを計測するためのタイムカウンタよりなる。
すなわち、制御部101は、上記ステップST1〜ST2を、ステップST2にて右折車両を検出しなくなるまで繰り返す。
この際、判定タイマ値が後続判定時間Td以上でない場合(ステップST3においてNo)には、制御部101は、ステップST2に戻って車両感知器3Aで右折車両を検出しているか否かを再判定する。
判定タイマ値が後続判定時間Td 以上である場合(ステップST3でYes)には、制御部101は、特定流入路L1,L5における右折車両の交通需要が完了したと判定する(ステップST4)。
従って、画像式の車両感知器3Bの場合には、右折需要の有無をほぼリアルタイムに判定することができる。
図5は、制御部101による右折感応制御を示すフローチャートである。
なお、図5において、「最小点灯時間Tmin」とは、特定流入路L1,L5の車両灯器2Aの右折青矢印灯を点灯させる場合に予め最小値として設定された、1サイクル中で固定された点灯時間のことである。また、「最大点灯時間Tmax」とは、その右折青矢印を点灯させる場合に予め最大値として設定された、1サイクル中で固定された点灯時間のことである。
他方、最大点灯時間Tmaxは、例えば中央装置4の交通感応制御において、特定流入路L1,L5の交通量を最適化する観点から決定される。すなわち、制御部101は、中央装置4からの信号制御指令に従って最大点灯時間Tmaxを設定する。もっとも、交通信号制御機1が行う当該右折感応制御の一環として、最大点灯時間Tmaxを予め定めた設定値に固定してもよい。
図5を参照してより具体的に説明すると、まず制御部101は、最小点灯時間Tminを経過しているか否かを繰り返し判定し(ステップSS1)、その最小点灯時間Tminの経過を待つ。
その判定の結果、右折需要が完了している場合(ステップSS3でYes)には、制御部101は、車両灯器2Aの右折青矢印灯を滅灯させる(ステップSS5)。逆に、右折需要が完了していない場合(ステップSS3でNo)には、制御部101は、最大点灯時間Tmaxを経過しているか否かを判定する(ステップSS4)。
すなわち、制御部101は、ステップSS3とステップSS4の判定を、ステップSS3において右折需要が完了するか、或いは、ステップSS4において最大点灯時間Tmaxが経過するまで繰り返す。
また、特定流入路L1,L5についての右折需要がある場合には、その右折需要が無くなった時点、或いは、最大点灯時間Tmaxが経過した時点で、車両灯器2Aの右折青矢印灯の点灯が打ち切られるようになっている。
図5に示す右折感応制御により、特定流入路L1,L5についての車両灯器2Aの右折青矢印灯の打ち切り時点が決まると、制御部101は、第1現示1φの開始時刻tpから当該打ち切り時点までの時間を「右折青時間」として確定させ、これに基づいて第1現示1φの時間帯T1を決定する。
具体的には、制御部101は、第1現示1φに「右折黄時間」が含まれない場合は、確定させた「右折青時間」をそのまま時間帯T1とし、含まれる場合には、確定させた「右折青時間」に「右折黄時間」(固定秒数)を加えた時間を時間帯T1とする。
具体的には、制御部101は、第2現示2φに「左直残り青時間」と「左直黄時間」が含まれない場合には、決定した時間帯T2から「青点滅時間」を減算した値を「歩行者青時間」とし、含まれる場合には、決定した時間帯T2から「青点滅時間」、「左直残り青時間」及び「左直黄時間」を減算した値を「歩行者青時間」とする。
また、制御部101は、決定した時間帯T2の終了時刻tpから所定の全赤時間を経た後に、現示を次の第3現示3φに移行させる。
以上の通り、本実施形態の交通信号制御機1によれば、制御部101が、特定流入路L1,L5の右折需要を判定し、判定した右折需要に基づいて右折感応制御(図5)を行って車両灯器2Aの右折青時間を決定し、決定した右折青時間を用いて次の現示2φで表示する歩行者灯器2Bの青時間を算出するので、特定流入路L1,L5の右折需要が少ない場合(ない場合も含む。)には、右折青時間が最小点灯時間Tminとなり、横断歩行者のための歩行者灯器2Bの青時間が長めに設定される。
また、本実施形態の交通信号制御機1では、歩行者感知の必要がない比較的安価な汎用品である車両感知器3A,3Bによって検出可能な特定流入路L1,L5の右折需要を利用して、歩行者灯器2Bの青時間を決定するので、通常の設備コストで実装できるという利点もある。
すなわち、本実施形態の交通信号制御機1において、南北方向の流入路L3,L7について、前記した右折需要の判定処理(図4)、右折感応制御(図5)及び歩行者灯器2Bの青時間設定を行えば、南北方向の流入路L3,L7についても同様の効果が得られる。
図6は、現示方式の変形例である、パターン2の現示方式における1サイクル中に含まれる現示の遷移を示す遷移図である。
すなわち、上述の実施形態において、交通信号制御機1の制御部101は、図3に示すパターン1の現示方式に代えて、図6に示すパターン2の現示方式を採用できる。その上で、制御部101は、上述した右折需要の判定処理(図4)、右折感応制御(図5)及び歩行者灯器2Bの青時間設定を行う。
第1現示1φ:東西方向の流入路L1,L5について、右折方向に通行権を与える右折専用現示
第2現示2φ:東西方向の流入路L1,L5について、直進及び左折方向に通行権を与え、かつ、その流入路L1,L5の交差道路の横断歩行者に通行権を与える双方向現示
第4現示4φ:南北方向の流入路L3,L7について、直進及び左折方向に通行権を与え、かつ、その流入路L3,L7の交差道路の横断歩行者に通行権を与える双方向現示
従って、パターン2の現示方式は、東西方向の流入路L1,L5の右折車両に通行権を与える時間帯(第1現示1φ)を、その流入路L1,L5と交差する道路の横断歩行者に通行権を与える時間帯(第2現示2φ)と分離する、「右折車両分離方式」の歩車分離制御の一種である。
従って、パターン2の現示方式は、南北方向の流出路L3,L7の右折車両に通行権を与える時間帯(第3現示3φ)を、その流入路L3,L7と交差する道路の横断歩行者に通行権を与える時間帯(第4現示4φ)と分離する、「右折車両分離方式」の歩車分離制御の一種である。
上記の通り、パターン2の現示方式は、特定流入路L1,L5の通行権の有無を表示する車両灯器2Aの右折青時間を含む第1現示1φ(時間帯T1)の後に、歩行者灯器2Bの青時間を含む第2現示2φ(時間帯T2)を出す点で、パターン1の場合と共通しており、制御部101は、かかる現示方式を採用した上で、前述の右折需要の判定処理(図4)、右折感応制御(図5)及び歩行者灯器2Bの青時間設定を行う。
従って、時間帯によっては特定流入路L1の右折需要がいっこうに無くならず、特定流入路L1の右折青時間が右折感応制御(図5)において常に最大点灯時間Tmaxに設定され、横断歩行者に十分な通行時間を与えられない可能性がある。
このため、右折感応制御(図5)を実行した場合に、特定流入路L1の右折需要が対向流入路L5の通行量とは無関係に増減するので、特定流入路L1の右折需要が少ない場合にその右折青時間を確実に短く設定でき、出来るだけ長い通行時間を横断歩行者に与えることができる。
図7は、現示方式の他の変形例である、パターン3の現示方式における1サイクル中に含まれる現示の遷移を示す遷移図である。
すなわち、上述の実施形態において、交通信号制御機1の制御部101は、図3に示すパターン1の現示方式に代えて、図7に示すパターン3の現示方式を採用できる。その上で、制御部101は、上述した右折需要の判定処理(図4)、右折感応制御(図5)及び歩行者灯器2Bの青時間設定を行う。
第1現示1φ:東西方向の流入路L1,L5について、右折方向に通行権を与える右折専用現示
第2現示2φ:東西方向の流入路L1,L5について、直進及び左折方向に通行権を与える双方向現示
第3現示3φ:東西方向の流入路L1,L5について、直進方向に通行権を与え、かつ、その流入路L1,L5の交差道路の横断歩行者に通行権を与える双方向現示
第5現示5φ:南北方向の流入路L3,L7について、直進及び左折方向に通行権を与える双方向現示
第6現示6φ:南北方向の流入路L3,L7について、直進方向に通行権を与え、かつ、その流入路L3,L7の交差道路の横断歩行者に通行権を与える双方向現示
従って、パターン3の現示方式は、東西方向の流入路L1,L5の右折車両に通行権を与える時間帯(第1現示1φ)を、その流入路L1,L5と交差する道路の横断歩行者に通行権を与える時間帯(第3現示3φ)と分離する、「右折車両分離方式」の歩車分離制御の一種である。
従って、パターン3の現示方式は、南北方向の流出路L3,L7の右折車両に通行権を与える時間帯(第4現示4φ)を、その流入路L3,L7と交差する道路の横断歩行者に通行権を与える時間帯(第6現示6φ)と分離する、「右折車両分離方式」の歩車分離制御の一種である。
このように、図7に示すパターン3の現示方式は、右折現示(1φ,4φ)を先出しする点で、図6に示すパターン2と同様であるが、右折方向に加えて左折方向も歩行者と通行を分離する点で、図6に示すパターン2と相違する。
従って、パターン3の現示方式を採用すれば、パターン2(図6)の現示方式を採用した交通信号制御機1と同様の効果が得られるとともに、左折車両を歩行者と分離することから、交差点ISに流入する車両5と横断歩行者との歩車分離をより確実に行えるという効果を奏する。
従って、第3現示3φに含まれる歩行者灯器2Bの青時間(歩行者青時間)を算出するためには、タイムスパンTsと第1現示1φに含まれる右折青時間に加えて、更に、第2現示2φに含まれる左折青時間を考慮に入れる必要がある。以下、その算出方法を説明する。
また、図7において、「Ts」は、第1現示1φの開始時刻tpから第3現示3φの終了時刻tqまでの「タイムスパン」を示している。従って、タイムスパンTsと時間帯T1〜T3との間には、Ts=T1+T2+T3の関係が成立する。
「右折黄時間」がない場合:
終了時刻tm=「右折青時間」の終了時刻
時間帯T1 =「右折青時間」
「右折黄時間」がある場合:
終了時刻tm=「右折黄時間」の終了時刻
時間帯T1 =「右折青時間」+「右折黄時間」
「左折黄時間」がない場合:
終了時刻tn=「左折青時間」の終了時刻
時間帯T2 =「左折青時間」
「左折黄時間」がある場合:
終了時刻tn=「左折黄時間」の終了時刻
時間帯T2 =「左折青時間」+「左折黄時間」
「直進残り青時間」と「直進黄時間」がない場合:
終了時刻tq=「青点滅時間」の終了時刻
時間帯T3 =「歩行者青時間」+「青点滅時間」
「直進残り青時間」と「直進黄時間」がある場合:
終了時刻tq=「直進黄時間」の終了時刻
時間帯 T3=「歩行者青時間」+「青点滅時間」+「直進残り青時間」
+「直進黄時間」
また、「直進残り青時間」とは、歩行者赤時間と重複する直進方向の青時間のことをいい、「直進黄時間」とは、歩行者赤時間と重複する直進方向の黄時間のことをいう。
もっとも、パターン3において、第3現示3φの終了時刻tqを「歩行者青時間」の終了時刻として定義することもでき、この場合のtqとT3は、次のようになる。
終了時刻tq=「歩行者青時間」の終了時刻(=「青点滅時間」の開始時刻)
時間帯T3 =「歩行者青時間」
なお、第3現示3φの終了時刻tqを「歩行者青時間」の終了時刻として定義している場合には、時間帯T3が「歩行者青時間」と一致するので、T3=Ts−T1−T2の式によって算出した時間帯T3を、そのまま「歩行者青時間」とすればよい。
その後、制御部101は、一定時間である時間帯T2(左折青時間又はこれに左折黄時間を加えた時間)が経過して終了時刻tnとなると、車両灯器2Aの左折青矢印灯を滅灯し、直進方向と横断歩行者に通行権を与える第3現示3φに現示を移行させる。
この場合、制御部101が、車両感知器3A,3Bの計測情報から左折需要を判定し、その左折需要に対応して左折青時間を求めるようにすれば、特定流入路L1,L5における左折需要が少ない場合(ない場合を含む。)に、第2現示2φに含まれる左折青時間が短くなり、第3現示3φに割り当てた歩行者灯器2Bの青時間を長めに設定できるようになる。
図8は、本発明の第2実施形態に係る交通信号制御機を含む交通信号制御システムを示す道路平面図である。
第2実施形態のシステム(図8)が第1実施形態のシステム(図1)と異なる点は、ITS(Intelligent Transport Systems )無線通信が可能な路側通信機7が交差点ISに設置されており、この路側通信機7と各車両5に搭載した車載機(図示せず)とが、所定の通信領域Aにおいて電波による通信が可能である点にある。
なお、図8では省略しているが、交差点ISには、他の流入路L3,L5,L7や流出路L2,L4,L6を通行する車両5と無線通信する路側通信機も設置されている。
制御部101は、通信部103から得たプローブ情報に基づいて、流入路L1,L3,L5,L7を通行する車両5の車線ごとの交通需要や、流出路L2,L4,L6,L8における先詰まりの発生如何を判定することができる。
従って、車載機との無線通信で得られるプローブ情報を利用すれば、図8に示すように、車両感知器3A,3Bを右折レーンに設置しなくても、本発明に係る歩車分離制御の交通信号制御方法を実行することができる。
今回開示した実施形態(上述の変形例を含む。)はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲とその構成と均等の範囲内のすべての変更が含まれる。
すなわち、中央装置4がそれらの制御処理を実行して車両灯器2Aの右折青時間や歩行者灯器2Bの青時間の算出を行い、その算出結果に基づく「歩進指令」を交通信号制御機1に送信することにしてもよい。
2B:歩行者灯器 3:路側センサ 3A:車両感知器 3B:車両感知器
4:中央装置 5:車両 6:横断歩道 7:路側通信機
101:制御部(判定部、時間設定部) 102:記憶部 103:通信部
104:灯器駆動部 IS:交差点
Claims (9)
- 交差点の特定流入路を通行する右折車両に通行権を与える時間帯を、前記交差点で前記特定流入路と交差する道路の横断歩行者に通行権を与える時間帯と分離する、右折車両分離方式の歩車分離制御を行う交通信号制御装置であって、
前記特定流入路における右折需要を判定する判定部と、
判定した前記右折需要に対応して、前記横断歩行者の通行権の有無を表示する歩行者灯器の青時間を決定する時間設定部と、
を備えていることを特徴とする交通信号制御装置。 - 前記時間設定部は、前記特定流入路の通行権の有無を表示する車両灯器の右折青時間を含む現示の後に、前記歩行者灯器の青時間を含む現示を出す現示方式を採用しており、
判定した前記右折需要に基づいて前記車両灯器の右折青時間を決定し、決定した前記右折青時間に基づいて前記歩行者灯器の青時間を決定する請求項1に記載の交通信号制御装置。 - 前記時間設定部は、前記車両灯器の右折青時間を含む現示の開始時刻から前記歩行者灯器の青時間を含む現示の終了時刻までのタイムスパンを一定時間として、前記歩行者灯器の青時間を決定する請求項2に記載の交通信号制御装置。
- 次の(a)の第1現示の後に次の(b)の第2現示を出す現示方式を採用する前記交差点の場合には、
前記時間設定部は、前記タイムスパンからの減算値として前記(a)の第1現示に割り当てた前記車両灯器の右折青時間を含む減算を行うことにより、前記(b)の第2現示に割り当てた前記歩行者灯器の青時間を算出する請求項3に記載の交通信号制御装置。
(a) 特定流入路の直進、左折及び右折方向に通行権を与える第1現示
(b) 特定流入路の直進及び左折方向と横断歩行者に通行権を与える第2現示 - 次の(c)の第1現示の後に前記歩行者灯器の青時間を設ける現示方式を採用する前記交差点の場合には、
前記時間設定部は、前記(c)の第1現示に割り当てた前記歩行者灯器の右折青間と前記タイムスパンとに基づいて、前記歩行者灯器の青時間を含む残りの現示時間を決定する請求項3に記載の交通信号制御装置。
(c) 特定流入路の右折方向に通行権を与える第1現示 - 前記(c)の第1現示の後に次の(d)の第2現示を出す現示方式を採用する前記交差点の場合には、
前記時間設定部は、前記タイムスパンからの減算値として前記(c)の第1現示に割り当てた前記車両灯器の右折青時間を含む減算を行うことにより、前記(d)の第2現示に割り当てた前記歩行者灯器の青時間を算出する請求項5に記載の交通信号制御装置。
(d) 特定流入路の直進及び左折方向と横断歩行者に通行権を与える第2現示 - 前記(c)の第1現示の後に次の(e)の第2現示と(f)の第3現示とを順に出す現示方式を採用する前記交差点の場合には、
前記時間設定部は、前記タイムスパンからの減算値として前記(c)の第1現示に割り当てた前記車両灯器の右折青時間と、前記(e)の第2現示に割り当てた前記車両灯器の左折青時間とを含む減算を行うことにより、前記(e)の第3現示に割り当てた歩行者灯器の青時間を算出する請求項5に記載の交通信号制御装置。
(e) 特定流入路の直進及び左折方向に通行権を与える第2現示
(f) 特定流入路の直進方向と横断歩行者に通行権を与える第3現示 - 前記判定部は、前記特定流入路における左折需要を判定可能であり、
前記時間設定部は、判定した前記左折需要に対応して、前記(e)の第2現示に割り当てた前記車両灯器の左折青時間を決定する請求項7に記載の交通信号制御装置。 - 交差点の特定流入路を通行する右折車両に通行権を与える時間帯を、前記交差点で前記特定流入路と交差する道路の横断歩行者に通行権を与える時間帯と分離する、右折車両分離方式の歩車分離制御に係る交通信号制御方法であって、
前記特定流入路における右折需要を判定するステップと、
判定した前記右折需要に対応して、前記横断歩行者の通行権の有無を表示する歩行者灯器の青時間を決定するステップと、
を含むことを特徴とする交通信号制御方法。
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