JP2012171907A - 新規ベンゾイソフラノン誘導体による臓器組織の修復再生治療薬 - Google Patents

新規ベンゾイソフラノン誘導体による臓器組織の修復再生治療薬 Download PDF

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Abstract

【課題】新規ベンゾイソフラノン誘導体がガンマーインターフェロンによる上皮系・間質系細胞間応答に作用することによって臓器組織傷害後の修復再生を誘導する医薬を提供する。あるいは、新規ベンゾイソフラノン誘導体がリンフォトキシンアルファによる上皮系・間質系細胞間応答に作用することによって臓器組織傷害後の修復再生を誘導する医薬を提供する。さらに、新規ベンゾイソフラノン誘導体がTGF-ベータ1による障害をうけた細胞の損傷過程の応答反応を修飾することにより臓器組織傷害後の修復再生を誘導する医薬を提供する。
【解決手段】傷害をうけた細胞の損傷過程を修飾する作用を有する臓器組織の修復再生治療薬。
【選択図】なし

Description

臓器組織の傷害をうけるとさまざまなサイトカイン、ケモカインを分泌し傷害の質と量に応じて急性炎症から慢性炎症によって組織傷害を最小に迅速に沈静化するための障害過程が惹起される。ひとつには、臓器および組織の傷害をうけた上皮系などの細胞は、選択的にT細胞から分泌産生されたProinflammatory cytokine であるリンフォトキシンアルファ(TNF-ベータと同義である) あるいはガンマーインターフェロン による炎症反応が惹起され傷害後の複雑な応答過程がすすむ(非特許文献1、非特許文献2)。抗炎症反応にともない一定の組織傷害を残すが、近年の研究成果から、宿主の恒常性を維持する機構を誘導し、障害後の組織傷害を軽減することが知られるようになっている(非特許文献2)。そして、免疫および炎症応答を沈静化するTGF-ベータが一定の役割を果たすが、TGF-ベータにもフィードバック機構が存在することも知られ(非特許文献3)、TGF-ベータの応答によっては組織修復に好ましい反応も誘導されうる。傷害をうけた臓器および組織には間質系細胞の局所応答が固有に存在するものと他の部位からの移入によるものとによって、間質系細胞と臓器組織の上皮系細胞間の複雑な応答による障害過程への反応が惹起されることが検討されている(非特許文献4)。
傷害をうけた細胞に対して、ガンマーインターフェロンあるいはリンフォトキシンアルファあるいはTGF-ベータによる複雑な応答機構がある一方、免疫・炎症による応答過程を修飾し宿主の恒常性を維持する修復再生機構もある。これらは、癌、リュウマチ様関節炎や抗炎症の領域における治療薬の技術分野に関わる。本発明は、一般式(A)で示される新規ベンゾイソフラノン誘導体がもつ多彩な作用によって、傷害をうけた細胞に対するガンマーインターフェロンあるいはリンフォトキシンアルファあるいはTGF-ベータによる複雑な応答過程を修飾することによって臓器組織の修復再生をもたらす医薬を提供する。
臓器や組織障害後の修復・再生について、神経組織、皮膚創傷、腎尿細管障害などに関わる宿主固有の自己免疫性細胞の応答が存在することが示唆されている(非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7)。臓器障害後の組織修復には、DNAレベルの修復、細胞レベルの修復、そして器官構造レベルの修復が必要であり、細胞レベルにおいては、臓器に存在する前駆細胞の増殖分化を含む、細胞増殖、蛋白合成が要求され、構造の再構築修復には、損傷した組織が選択的に修復されることが示唆されている(非特許文献7)。損傷した組織細胞に選択的に蛋白合成を促し修復や再生へと導くためには、修復再生の作用を有する細胞が選択的に病変の組織細胞に接着・融合する分子を持つと同時に、蛋白合成を促す分子も発現していることが合目的である。
Fusion-regulatory protein(FRP)−1、CD98、4F2hc(4F2 heavy chain)は同じ蛋白分子のことである。この分子は免疫刺激やウイルス感染時にT細胞やマクロファージに発現し、ウイルス感染時には細胞融合を促し多核細胞を形成することが知られており(非特許文献8)、β1インテグリンと関連をもった機能、造血作用、アポトーシス、リンパ球増殖、BおよびTリンパ球の機能、細胞融合から破骨細胞新生(osteoclastogenesis)、変異原性、ウイルス感染後の細胞癒合など多彩な細胞機能に関わっている。
そして、前記分子にくわえてrBAT(related to b0,+−type amino acid transporter)は、FRP−1/CD98/4F2hc分子と同じくアミノ酸トランスポーターのヘテロメリックアミノ酸トランスポーター(heteromeric amino acid transporter、HATと略す)の重鎖(H鎖)を構成する(非特許文献9、非特許文献10)。ヒトマクロファージ上にもこのヘテロメリックアミノ酸トランスポーターが発現することは知られている(非特許文献11)。このヘテロメリックアミノ酸トランスポーターは、アミノ酸輸送について選択性は少なく、非特異的に蛋白合成を促すものである。シスチンと塩基性アミノ酸の輸送にかかわる調節因子である。rBATは近位尿細管上皮の先端領域(apical region)に局在しアミノ酸トランスポーターとして機能する。また、rBATはヒトシスチン尿症の疾患原因遺伝子としても知られている(非特許文献8)。
重鎖(H鎖)であるFRP-1ノックアウトマウスが生存できないことからも(非特許文献12)、これらHAT蛋白分子はアミノ酸トランスポーターとしての機能からも細胞の生存に関わる重要なものである。
上皮間葉転換(Epithelial-Mesenchymal Transition) は、TGF-β1の作用により、上皮系細胞がE-cadherinの発現低下をともない細胞間接着性が失われ、上皮系細胞から形態的に線維芽細胞の形態を呈するin vitro の評価系となっている。癌の領域では、TGF-betaを阻害することでE-cadherinの発現が亢進し肝癌の転移が抑えられる実験結果もあり(非特許文献13)、転移の評価系として使用されTGF-ベータ1レセプター阻害薬として転移を抑制する薬剤を見出す根拠になっている。炎症領域においては例えば腎尿細管が間質系細胞に偏移し線維化の由来として腎尿細管細胞の傷害からの移行を裏付けるモデルとして検討されている(非特許文献14)。しかし、生体内の線維化を必ずしも再現するものとしての評価には至っていない。TGF-ベータ1は、ふたつの異なるレセプターALK1とALK2を介した応答を誘導することで血管内膜の増殖を惹起し、あるいは、抑制する調節応答が存在することが示された(非特許文献15、非特許文献16)。
間質系幹細胞は本来骨髄中にみいだされ、臓器組織に移行すると考えられている。そして、線維芽細胞はすべての臓器組織に存在し、多彩な生物学的な機能を有する。たとえば、自己免疫の寛容の調節、臓器器官の発育、創傷治癒、炎症と線維化、血管新生などに関わることが示されている。古くは線維化へのプロセスに関わるとされたが、最近では傷害組織を除去し組織の修復にも関わる(非特許文献4)。線維芽細胞、樹状細胞、マクロファージは臓器組織内にあり、これらをここでtissue-effector cellsとよぶ。線維化をきたすものがどのtissue-effector cellsかはあきらかにはなっていない。
リンフォトキシンアルファ(α)は、リンフォトキシンーβと3量体をつくりリンフォトキシンαβ2のかたちで活性化したTあるいはBリンパ球やナチュラルキラー細胞に存在する。そのレセプターを発現する細胞はリンパ球にはなく、炎症を生じている実質臓器の細胞と間質系細胞に限局することから、複雑な局所応答を担う重要なネットワークのひとつを形成している(非特許文献17)。そして、機能としては感染免疫のみならず、二次免疫応答にかかわる器官形成を誘導することが知られており、リンフォトキシンアルファを介した傷害をうけた細胞の修復応答にマクロファージをふくむtissue-effector cellsが相互に関連することが推測される。
例えば、腫瘍細胞の増殖に都合のよい血管新生をもたらすM2-angiogenic macrophages と抗腫瘍効果を発揮するM1-inflammatory macrophagesの存在が示唆されている(非特許文献18)。癌の転移機構として、局所のマクロファージからの上皮成長因子(Epithelial Growth Factor、EGF)の分泌により癌細胞の遊走能が高まり、また癌細胞からColony-Stimulating Factor-1が分泌されマクロファージ遊走を助長することが示唆されている。傷害をうけた細胞の修復再生に、癌の転移機構とおなじ局所の上皮・間質間応答あるいは白血球・間質間応答も関わる可能性が示唆される。マクロファージをふくむtissue-effector cellsを制御することが臓器組織の傷害から修復再生に重要な役割を有することは推察できる。
臓器および組織の傷害をうけた上皮系などの細胞は、たとえば選択的にT細胞から分泌産生されたProinflammatory cytokine であるリンフォトキシンアルファあるいはガンマーインターフェロン による炎症反応が惹起され傷害後の複雑な応答過程がすすむ(非特許文献1、非特許文献2)。そして、抗炎症反応にともない一定の組織傷害を残すが、近年の研究成果から、宿主の恒常性の維持をする機構を誘導し、障害後の組織傷害を軽減することが知られるようになっている(非特許文献1)。たとえば、ガンマーインターフェロンの場合、STAT1との反応経路により恒常性の維持をする機構が誘導され、”cross-regulation” により、すなわち、傷害をうけた細胞がガンマーインターフェロンにどのように応答するかは最初にどのようなサイトカインに暴露されたかで決まる(非特許文献1、非特許文献2)。リンフォトキシンアルファに対する炎症応答にひきつづくNF-kBによる応答も傷害をうけた細胞をアポトーシスへ向かわせ機構と細胞を生存に向かわせる機構とが推測されている(非特許文献19)。そして、傷害をうけた細胞へのTGF-ベータ1を介して応答についても、2種類のTGF-ベータ1レセプターの応答系が条件により異なる作用を示すことも知られている(非特許文献4)。
臓器組織の傷害に対しては、細胞増殖、細胞の生存、抗アポトーシス作用、血管新生作用など組織の修復と再生に向かう制御方法が不可欠である。そして、ガンマーインターフェロンとリンフォトキシンアルファ は、傷害をうけた細胞に作用するだけでなく、マクロファージなどtissue-effector cellsにも作用することから、両者の上皮細胞とマクロファージなどtissue-effector cellsとが相互に作用することによって有効な修復と再生を制御できる治療方法の可能性が推測できる。
そのためには、障害をうけた細胞の損傷過程に関わる応答反応を修飾する、具体的には、ガンマーインターフェロンあるいはリンフォトキシンアルファに対する炎症応答と炎症の収束に不可欠なTGF-ベータ1に対する応答にくわえて上皮細胞とマクロファージなどtissue-effector cells間の応答を修飾することである。方法のひとつとして、多彩な作用をもつ低分子化合物は、障害をうけた細胞の損傷過程に関わる複雑な応答反応を修飾でき、治療法となる可能性が示唆される。
マクロファージに存在するヘテロメリックアミノ酸トランスポーターの重鎖であるFRP−1/CD98/4F2hc分子/rBATの発現を調節し、腎臓の障害を軽減する作用をもった公知化合物は知られている(特許文献1、特許文献2)。公知化合物のうち化合物―11は、ヒトマクロファージ培養細胞株U937にヒトリンフォトキシンアルファと同時に添加し培養することでU937細胞内外に発現する重鎖であるrBATの発現調節をした。他の公知化合物のうち化合物―12は、ヒトマクロファージ培養細胞株THP-1にヒトガンマーインターフェロンと同時に添加し培養することでTHP-1細胞内外に発現する重鎖である4F2hcの発現調節をした。
WO/2007/142309 WO/2008/133036 WO/2001/072730
Immunity(2009);31:539-550 Cytokine Growth Factor Rev (2007); 18:419-423 J Oncology(2010); 2010:1-10 Haematologica(2009); 94:258-263 Renal Failure (1996); 18:355-375 Immunology Today (2000); 21:265-269 J Nephrology (2003); 16:186-195 Critical Review in Immunology (2000); 20: 167-196 Current Drug Metabolism (2001); 2: 339-354 Physiology (2005); 20: 112-124 Am J Physiol Cell Physiol (2001); C1964-C1970 Biochemical and Biophysical Research Communications (2004); 313: Hepatology(2008);47:1557-1566 J Clin Invest. (2003). 112:1776?1784 EMBO J (2002); 21:1743-1753 Journal of Oncology (2010); 2010: 1-10 Trends in Immunology (2007);28:169-175 J Leuko Biol(2006);80:705-713 Cell cycle(2005);4:1342-1345 J Med Chem(2008);51;7717-7730 Aust J Chem(1999);52;1013-2010
本発明は、一般式(A)であらわされる新規ベンゾイソフラノン誘導体がガンマーインターフェロンによる上皮系・間質系細胞間応答に作用することによって臓器組織傷害後の修復再生を誘導する医薬を提供するものである。あるいは、一般式(A)であらわされる新規ベンゾイソフラノン誘導体がリンフォトキシンアルファによる上皮系・間質系細胞間応答に作用することによって臓器組織傷害後の修復再生を誘導する医薬を提供するものである。さらに、一般式(A)であらわされる新規ベンゾイソフラノン誘導体がTGF-ベータによる障害をうけた細胞の損傷過程の応答反応を修飾することにより臓器組織傷害後の修復再生を誘導する医薬を提供するものである。そのためには、障害をうけた上皮細胞とマクロファージなどtissue-effector cells間における多彩な作用をもつ有効な低分子化合物が不可欠であるが、いまだ、多彩な作用を同時に発揮するような有効な低分子化合物は存在しない。
一般式(A)であらわされる新規ベンゾイソフラノン誘導体は、ガンマーインターフェロンあるいはリンフォトキシンアルファとともマクロファージの増殖活性、ヘテロメリックアミノ酸トランスポーター(heteromeric amino acid transporter、HATと略す)の活性と制御を示す。一般式(A)であらわされる新規ベンゾイソフラノン誘導体は、TGF-ベータ1とともに上皮細胞のE-cadherinの機能を維持することによって上皮細胞の機能を温存する作用を有す。たとえば、腎障害と同時に生体内に投与することによりそのリガンドである糖鎖結合蛋白であるガレクチンー3を誘導し、抗アポトーシス活性と血管新生をもたらし、組織の修復再生へと向かわせることができる。一般式(A)であらわされる低分子化合物が有効な解決手段となる。
本発明に係る上記一般式(A)で表される化合物は、臓器組織の修復再生作用、線維化阻害作用、および免疫応答を増強もしくは抑制する調節作用を有する。より詳しくは、本発明に係る化合物は、さまざまな臓器障害に起因して障害を受けた組織において、ガンマーインターフェロンあるいはリンフォトキシンアルファが関与する局所のマクロファージをふくむ間質系細胞間の応答によって損傷過程を修飾する作用を示す。そして、本発明に係る化合物は、臓器組織への選択的な修復再生効果をしめすが、その選択性はヘテロメリックアミノ酸トランスポーターの重鎖である4F2hcあるいはrBATがどの組織に優位に存在し、ガンマーインターフェロンあるいはリンフォトキシンアルファのいずれが優位に産生されるかによって決まる。その結果、障害を受けた特定の組織に対して選択的に修復再生作用を示し、同時に、線維化阻害作用も示す。加えて、ヘテロメリックアミノ酸トランスポーター(HAT)の活性と制御を示し、そのリガンドである糖鎖結合蛋白であるガレクチン−3を誘導することによって抗アポトーシス活性と血管新生をもたらし、組織の修復再生へと向かわせることができる。同時に、TGF-ベータ1を介した炎症を収束に向かわせる過程において傷害をうけた組織の上皮細胞のE−カドヘリンの機能を維持することによって傷害をうけた上皮細胞の機能を温存し、修復再生作用を有する。したがって下記一般式(A)で表される新規ベンゾイソフラノン誘導体が臓器組織の修復再生作用を有する。
本発明は、以下を提供する。
[1]
傷害をうけた細胞の損傷過程を修飾する作用を有する臓器組織の修復再生治療薬。
[2]
マクロファージあるいは組織エフェクター細胞とともに、傷害をうけた細胞の損傷過程を修飾する作用を有する臓器組織の修復再生治療薬。
[3]
リンフォトキシンアルファあるいはガンマーインターフェロンの存在下において傷害をうけた細胞の損傷過程を修飾する作用を有する臓器組織の修復再生治療薬。
[4]
リンフォトキシンアルファあるいはガンマーインターフェロンの存在下においてマクロファージあるいは組織エフェクター細胞とともに、傷害をうけた細胞の損傷過程を修飾する作用を有する臓器組織の修復再生治療薬。
[5]
TGF−ベータを介し、傷害をうけた細胞の損傷過程を修飾する作用を有する臓器組織の修復再生治療薬。
[6]
リンフォトキシンアルファあるいはガンマーインターフェロンの存在下においてアミノ酸トランスポターの4F2hcあるいはrBATの発現調節能を有するマクロファージあるいは組織エフェクター細胞とともに、傷害をうけた細胞の損傷過程を修飾する作用を有する臓器組織の修復再生治療薬。
[7]
リンフォトキシンアルファあるいはガンマーインターフェロンの存在下においてアミノ酸トランスポターの4F2hcあるいはrBATの発現調節能を有するマクロファージあるいは組織エフェクター細胞とともに、傷害をうけた腎尿細管細胞あるいは腎糸球体細胞の損傷過程を修飾する作用を有する臓器組織の修復再生治療薬。
[8]
マクロファージあるいは組織エフェクター細胞とともに、TGF−ベータを介し、傷害をうけた腎尿細管細胞あるいは腎糸球体細胞の損傷過程を修飾する作用を有する臓器組織の修復再生治療薬。
[9]
TGF−ベータを介し、傷害をうけた腎尿細管細胞あるいは腎糸球体細胞の損傷過程を修飾する作用を有する臓器組織の修復再生治療薬。
[10]
下記、一般式(A)で示される化合物、またはその薬学的に許容される塩:
式中RおよびRは、それぞれ独立に、水素、置換されていてもよい水酸基、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよくもしくは介在基で中断されていてもよい炭素数1〜12の鎖状の脂肪族炭化水素基、または、置換されていてもよくもしくは介在基で中断されていてもよい炭素数3〜12の環状の脂肪族炭化水素基であるが、ただし、RとRは、同時に水素ではなく;
は、水素、置換されていてもよくもしくは介在基で中断されていてもよい炭素数1〜12の鎖状の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよくもしくは介在基で中断されていてもよい炭素数3〜12の環状の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6〜12のアリール基、置換されていてもよい炭素数1〜12の複素環基、または、置換されていてもよい炭素数1〜12の縮合ヘテロ複素環基であり;
Xは、ハロゲン、置換されていてもよい水酸基、シアノ基、置換されていてもよいメルカプト基、置換されていてもよいスルフィニル基、置換されていてもよいスルホニル基、置換されていてもよいスルホ基、置換されていてもよいアミノ基、または、置換されていてもよいホスホリル基である。
(ただし、水酸基、メルカプト基、スルフィニル基、スルホニル基、およびスルホ基、アミノ基、およびホスホリル基の置換基は、ハロゲン、オキソ基、炭素数1〜8 アルカノイル基、炭素数1〜8 アルカノイルオキシ基、炭素数1〜8 アルカノイルアミノ基、カルボキシ基、炭素数2〜8 アルコキシカルボニル基、炭素数2〜8 ハロアルキルカルボニル基、炭素数1〜8 アルコキシ基、炭素数1〜8 ハロアルコキシ基、炭素数1〜20 アルキル基、アミノ基、炭素数1〜8 アルキルアミノ基、炭素数2〜16 ジアルキルアミノ基、環状アミノ基、炭素数2〜8 アルキルアミノカルボニル基、カルバモイル基、水酸基、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、炭素数1〜8 アルキルチオ基、炭素数1〜8 アルキルスルホニルオキシ基または炭素数1〜8 アルキルスルホニルアミノ基である。)
[11]
、Rがそれぞれ独立に、水素、置換されていてもよくもしくは介在基で中断されていてもよい炭素数3〜5の鎖状の脂肪族炭化水素基であり;
がフェニルで置換された炭素数1から3のアルキル基であり;
Xが、ハロゲン、置換されていてもよい水酸基である[10]に記載の化合物または、その薬学的に許容される塩。
[12]
、Rがそれぞれ独立に、水素、メトキシエチルオキシ基であり;
がベンジル基であり;
Xが、ハロゲン、炭素数1〜3のアルカノイル基で置換されていてもよい水酸基である[10]もしくは[11]に記載の化合物、または、その薬学的に許容される塩。
[13]
(RS)−1−ヒドロキシ−5−(2−メトシキエトキシ)−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステル;
(RS)−1−アセトキシ−5−(2−メトシキエトキシ)−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステル;
(RS)−1−クロロ−5−(2−メトシキエトキシ)−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステル;
(RS)−1−ヒドロキシ−6−(2−メトシキエトキシ)−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステル;および
(RS)−1−クロロ−6−(2−メトシキエトキシ)−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステル。
[14]
[10]〜[13]のいずれかに記載の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩を有効成分とする、[1]〜[9]のいずれかに記載の臓器組織の修復再生治療薬。
[15]
[10]〜[13]のいずれかに記載の化合物またはそれらの薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
[16]
ヒトを含む動物において傷害をうけた細胞の損傷過程を修飾する作用を有する臓器組織の修復再生治療のための医薬組成物であって、[10]〜[13]のいずれかに記載の化合物またはそれらの薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を有効量含む医薬組成物。
[17]
[10]〜[13]のいずれかに記載の化合物と別異の薬理学的活性剤との組み合わせを含む医薬組成物。
[18]
傷害をうけた細胞の損傷過程を修飾する作用を有する臓器組織の修復再生治療のための医薬組成物であって、有効量の[10]〜[13]のいずれかに記載の化合物。
新規ベンゾイソフラン誘導体がEpithelial−Mesenchymal Transition(EMT)による線維芽細胞様の形態変化とE−カドヘリンの発現が細胞膜から減弱しているかの阻害効果を公知化合物Comound−11と比較した観察結果である。
一般式(A)で表わされる化合物が酸性または塩基性を示す場合は、これら化合物の塩を上記医薬として用いることもできる。該化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例えば、無機酸、有機酸)や塩基(例えば、アルカリ金属)などとの塩が挙げられる。具体的には、例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸との塩などの無機酸塩;もしくは、例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸との塩などの有機酸塩;または、ナドリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などの無機塩基塩;もしくは、例えば、ジメチルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩などの有機塩基塩などが用いられる。
また、本発明に係る医薬または治療方法で用いられる化合物は、上記化合物のプロドラッグまたは誘導体であってもよい。
本明細書中、「炭素数1〜12の鎖状の炭化水素基」とは、炭素数1〜12であって、直鎖状または分枝状であってもよいし、飽和でも不飽和でもよい。例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、1,1−ジメチルプロピル基もしくは3−メチル−3−ブテニル基等のアルキル基;例えば、ビニル基、アリール基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基もしくは2−ペンテニル基等のアルケニル基;例えば、エチニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基もしくは2−ブチニル基等のアルキニル基が挙げられる。また、2−ペンテン−4−ニルイル基等のように二重結合と三重結合が一つの置換基の中に混在していても良い。好ましい炭素数は1〜8である。
これら炭化水素基は、後述の置換基で置換されてもよく、また結合手の位置や置換基の位置は化学的に許容されるならば、特に限定されるものではない。
「環状の脂肪族炭化水素基」は、飽和であっても不飽和であってもよい。また、架橋していても良い。具体的には、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、アダマンチル基もしくはビシクロ[2.2.1]ヘプチル基等のシクロアルキル基;例えば、2−シクロペンテン−1−イル基もしくは2,4−シクロペンテジエン−1−イル基等のシクロアルケニル基が挙げられる。
「介在基」とは、−O−、−CO−、−COO−、−S−、−SO−、−SO −、−NH−、−NR−、−NH−CO−、−NR−CO−、−NH−SO −、−NR−SO −、−Si−またはホスホリル基等を表す。Rは、水素、酸素、置換されていてもよくもしくは介在基で中断されていてもよい鎖状の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい環状の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい複素環基または置換されていてもよい縮合ヘテロ複素環基を表す。
「アリール基」とは、芳香族炭化水素基であり、一部飽和されていてもよい。例えば、フェニル基、ベンジル基、ビフェニル基、インデニル基、ナフチル基またはそれらの一部飽和体である例えば2,3−ジヒドロインデニル基もしくは1,2,3,4−テトラヒドロナフチル基等があげられる。
アリール基の好ましい炭素数は6〜20である。
これらアリール基は後述の置換基で置換されてもよく、また結合手の位置や置換基の位置は化学的に許容されるならば、特に限定されるものではない。
「複素環基」とは、窒素原子、酸素原子または硫黄原子から選ばれるヘテロ原子1〜3個を環内に含む5員または6員の飽和または不飽和環が挙げられる。
これら複素環基の例として、例えばピロリル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピラゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、オキサジアゾリル基、トリアゾリル基、インドリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、トリアゾリル基、テトラアゾリル基、キノリル基もしくはイソキノリル基等の芳香族複素環基;ピラニル基、1,2−ジヒドロキノリル基、1,2,3,4−テトラヒドロキノリル基、1,2−ジヒドロイソキノリル基、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリル基、ジヒドロフリル基もしくはジヒドロチエニル基等の一部飽和複素環基;ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、テトラヒドロフリル基もしくはテトラヒドロチエニル基等の飽和複素環基が挙げられる。
これら複素環基は後述の置換基で置換されてもよく、また結合手の位置や置換基を有する場合の置換基の位置は化学的に許容されるならば、特に限定されるものではない。
「縮合ヘテロ複素環基」とは、窒素原子、酸素原子または硫黄原子から選ばれる同一または異なるヘテロ原子を1〜3個環内に含む5員または6員の飽和、一部不飽和、または不飽和環とベンゼン環もしくは他の複素環との縮合環が置換基となる場合が挙げられる。縮合ヘテロ複素環の例としては、例えばインド−ル、3H−インド−ル、イソインド−ル、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、1H−インダゾ−ル、ベンズイミダゾ−ル、ベンズオキサゾ−ル、ベンゾチアゾ−ル、ベンズイソオキサゾ−ル、ベンズイソチアゾ−ル、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、1,2−ジヒドロキノリン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、1,2−ジヒドロイソキノリンまたは1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン等が挙げられる。
これら縮合ヘテロ複素環基は後述の置換基で置換されてもよく、また結合手の位置や置換基を有する場合の置換基の位置は化学的に許容されるならば、特に限定されるものではない。
鎖状もしくは環状の脂肪族炭化水素基、アリール基、複素環基または縮合ヘテロ複素環基における「置換基」としては、医薬品の分野で通常用いられる置換基を用いてよい。
置換基としては、例えば、ハロゲン(好ましくは、フッ素、塩素、臭素)、オキソ基、アルカノイル基(好ましくは炭素数1〜8 )、アルカノイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜8 )、アルカノイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜8 )、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜8 )、ハロアルキルカルボニル基(好ましくは炭素数2〜8 )、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜8 )、ハロアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜8 )、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20 )、アミノ基、アルキルアミノ基(好ましくは炭素数1〜8 )、ジアルキルアミノ基(好ましくは炭素数2〜16 )、環状アミノ基、アルキルアミノカルボニル基(好ましくは炭素数2〜8 )、カルバモイル基、水酸基、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜8 )、アルキルスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数1〜8 )、アルキルスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜8 )、またはフェニル基等が挙げられる。さらに、このような置換基により1または複数個所置換されていてもよい。
一般式(A)で表される化合物は不斉炭素を有しているので、2個の光学異性体が存在しえる。したがって、本発明における医薬は、そのうち一方の光学異性体のみを含むものであってもよいし、またラセミ体を含有するものであってもよい。
一般式(A)で表される化合物の薬理学的に許容される塩としては特に限定されないが、具体的には、例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸との塩などの無機酸塩;もしくは、例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸との塩などの有機酸塩;または、ナドリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などの無機塩基塩;もしくは、例えば、ジメチルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩などの有機塩基塩などが挙げられる。
本発明において上述する置換基の具体例としては、以下のような置換基があげられる。
上記「アルカノイル基」としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基またはピバロイル基等が挙げられる。
上記「アルカノイルオキシ基」としては、例えば、ホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基またはピバロイルオキシ基等が挙げられる。
上記「アルカノイルアミノ基」としては、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ブチリルアミノ基またはピバロイルアミノ基等が挙げられる。
上記「アルコキシカルボニル基」としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基またはペンチルオキシカルボニル等が挙げられる。
上記「ハロアルキルカルボニル基」としては、例えば、フルオロアセチル基、ジフルオロアセチル基、トリフルオロアセチル基、クロロアセチル基、ジクロロアセチル基、トリクロロアセチル基、ブロモアセチル基、ジブロモアセチル基、トリブロモアセチル基、3−クロロプロピオニル基または4−クロロブチリル基等である。
上記「アルコキシ基」とは、直鎖または分枝鎖アルコキシ基を表し、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基またはヘキシルオキシ基等が挙げられる。
上記「ハロアルコキシ基」とは、前記「アルコキシ基」にハロゲン原子が置換したものを表し、例えばフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、クロロメトキシ基、ジクロロメトキシ基、トリクロロメトキシ基、ブロモメトキシ基、ジブロモメトキシ基、トリブロモメトキシ基、ヨ−ドメトキシ基、ジヨ−ドメトキシ基、トリヨ−ドメトキシ基、2−フルオロエトキシ基、2,2−ジフルオロエトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、2−クロロエトキシ基、2,2−ジクロロエトキシ基、2,2,2−トリクロロエトキシ基、2−ブロモエトキシ基、2,2−ジブロモエトキシ基、2,2,2−トリブロモエトキシ基、3−クロロプロポキシ基または4−クロロブトキシ基等が挙げられる。
上記「アルキルアミノ基」とは、アミノ基にアルキル基が置換したものを表し、例えばメチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、イソペンチルアミノ基、tert−ペンチルアミノ基またはヘキシルアミノ基等が挙げられる。
上記「ジアルキルアミノ基」とは、アミノ基にアルキル基が二置換したものを表し、アルキル基の種類は、同一であっても異なってもよい。例えばジメチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、エチルプロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ−tert−ブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジイソペンチルアミノ基、ジ−tert−ペンチルアミノ基またはジヘキシルアミノ基等が挙げられる。
上記「環状アミノ基」とは、アミノ基が環状になったものを表し、好ましくは4〜8員環アミノ基であって、例えばアゼチジニル基、ピロリジニル基もしくはピペリジノ基、さらにヘテロ原子として酸素原子、硫黄原子、窒素原子を有するモルホリノ基、チオモルホリノ基もしくはピペラジニル基等が挙げられ、ピペラジニル基の4位窒素原子には低級アルキル基またはアリール基等が置換してもよい。
上記「アルキルアミノカルボニル基」とは、「アルキルアミノ」部が前記「アルキルアミノ基」で示したものを表し、例えばメチルアミノカルボニル基、エチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、イソプロピルアミノカルボニル基、ブチルアミノカルボニル基、イソブチルアミノカルボニル基、tert−ブチルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、イソペンチルアミノカルボニル基、tert−ペンチルアミノカルボニル基またはヘキシルアミノカルボニル基等が挙げられる。
上記「アルキルチオ基」とは、直鎖または分枝鎖アルキルチオ基を表し、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、tert−ペンチルチオ基またはヘキシルチオ基等が挙げられる。
上記「アルキルスルホニルオキシ基」とは、直鎖または分枝鎖アルキルスルホニルオキシ基を表し、例えばメチルスルホニルオキシ基、エチルスルホニルオキシ基、プロピルスルホニルオキシ基、イソプロピルスルホニルオキシ基、ブチルスルホニルオキシ基、tert−ブチルスルホニルオキシ基、ペンチルスルホニルオキシ基、tert−ペンチルスルホニルオキシ基またはヘキシルスルホニルオキシ基等が挙げられる。
上記「アルキルスルホニルアミノ基」とは、アミノ基に直鎖または分枝鎖アルキルスルホニル基が置換したものを表し、例えばメチルスルフホニルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、プロピルスルホニルアミノ基、イソプロピルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、tert−ブチルスルホニルアミノ基、ペンチルスルホニルアミノ基、tert−ペンチルスルホニルアミノ基またはヘキシルスルホニルアミノ基等が挙げられる。
また、上記置換基としては具体的に以下のような置換基が挙げられる。
(a)介在基が−O−である置換基としては、例えばメトキシメチル基、エトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、プロポキシエチル基、イソプロポキシメチル基、ブトキシメチル基、ブトキシエチル基、ブトキシプロピル基、tert−ブトキシメチル基、tert−ブトキシエチル基、ペンチルオキシメチル基、ペンチルオキシエチル基、ペンチルオキシプロピル基、ペンチルオキシブチル基、tert−ペンチルオキシメチル基、tert−ペンチルオキシエチル基、ヘキシルオキシメチル基、ヘキシルオキシエチル基、ヘキシルオキシプロピル基、ヘキシルオキシブチル基、ベンジルオキシメチル基またはフェノキシメチル基等が挙げられる。
該置換の好ましい炭素数は1〜10である。
(b)介在基が−CO−である置換基としては、例えばアセチルメチル基、アセチルエチル基、アセチルプロピニル基、アセチルブチル基、アセチルペンチル基、アセチルヘキシル基、プロピオニルメチル基、ブチニルメチル基、イソブチニルメチル基、バレニルメチル基、イソバレニルメチル基、ヘキサノイルメチル基またはフェニルアセチルメチル基等が挙げられる。
該置換の好ましい炭素数は1〜10である。
(c)介在基が−COO−である置換基としては、例えばアセトキシメチル基、アセトキシエチル基、アセトキシプロピニル基、アセトキシブチル基、アセトキシペンチル基、アセトキシヘキシル基、プロピオニルオキシメチル基、t−ブチルオキシカルボニルメチル基、1−イソブチリルオキシエチル基、1−シクロヘキシルオキシカルボニルエチル基、ベンジルオキシカルボニルメチル基、フェノキシカルボニルメチル基またはピバロイルオキシメチル基等が挙げられる。
該置換の好ましい炭素数は1〜10である。
(d)介在基が−S−である置換基としては、例えばメチルチオメチル基、メチルチオエチル基、メチルチオプロピニル基、メチルチオブチル基、メチルチオヘプチル基、メチルチオヘキシル基、メチルチオイソブチル基、エチルチオメチル基、プロピルチオメチル基、ブチルチオメチル基、ヘプチルチオメチル基、ヘキシルチオメチル基、ベンジルチオメチル基またはフェニルチオメチル基等が挙げられる。
該置換の好ましい炭素数は1〜10である。
(e)介在基が−SO −である置換基としては、例えばメチルスルホニルメチル基、メチルスルホニルエチル基、メチルスルホニルプロピニル基、メチルスルホニルブチル基、メチルスルホニルヘプチル基、メチルスルホニルヘキシル基、メチルスルホニルイソブチル基、エチルスルホニルメチル基、プロピルスルホニルメチル基、ブチルスルホニルメチル基、ヘプチルスルホニルメチル基,ヘキシルスルホニルメチル基、ベンジルスルホニルメチル基、またはフェニルスルホニルメチル基等が挙げられる。
該置換の好ましい炭素数は1〜10である。
(f)介在基が−SO−である置換基としては、例えばメチルスルフィニルメチル基、メチルスルフィニルエチル基、メチルスルフィニルプロピニル基、メチルスルフィニルブチル基、メチルスルフィニルヘプチル基、メチルスルフィニルヘキシル基、メチルスルフィニルイソブチル基、エチルスルフィニルメチル基、プロピルスルフィニルメチル基、ブチルスルフィニルメチル基、ヘプチルスルフィニルメチル基、ヘキシルスルフィニルメチル基、ベンジルスルフィニルメチル基またはフェニルスルフィニルメチル基等が挙げられる。
該置換の好ましい炭素数は1〜10である。
(g)介在基が−NH−である置換基は、R−NH−R−で表される化合物であり、Rは上述したように置換されていてもよい鎖状もしくは環状炭化水素基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい複素環基または置換されていてもよい縮合ヘテロ基を表す。R−NH−としては、例えばメチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、イソペンチルアミノ基、tert−ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、アニリノ基、ベンジルアミノ基等が挙げられる。
該置換の好ましい炭素数は1〜10である。
(h)介在基が−NR−である置換基は、R−NR−R−で表される化合物であり、Rは上述したように置換されていてもよい鎖状もしくは環状炭化水素基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい複素環基または置換されていてもよい縮合ヘテロ基を表すR−NR−としては、例えばジメチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、エチルプロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ−tert−ブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジイソペンチルアミノ基、ジ−tert−ペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、ジベンジルアミノ基、メチルベンジルアミノ基等があげられる。置換基Rは上述の定義と同意義である。
該置換の好ましい炭素数は1〜10である。
(i)介在基が−NH−CO−、−NR−CO−、−NH−SO −または−NR−SO −である置換基としては、例えば、上述の介在基が−NH−または−NR−である化合物において、介在基が上記のものに替わった化合物が挙げられる。
(j)介在基が−Si−である置換基としては、例えばメチルシリルメチル基、メチルシリルエチル基、メチルシリルプロピニル基、メチルシリルブチル基、メチルシリルヘプチル基、メチルシリルヘキシル基、メチルシリルイソブチル基、エチルシリルメチル基、プロピルシリルメチル基、ブチルシリルメチル基、ヘプチルシリルメチル基、ヘキシルシリルメチル基、ベンジルシリルメチル基、またはフェニルシリルメチル基等が挙げられる。
該置換の好ましい炭素数は1〜10である。
(k)介在基がホスホリル基である置換基は、式;
(式中、置換基RおよびRは、同一であっても異なっていてもよく、置換されていてもよい鎖状もしくは環状炭化水素基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい複素環基または置換されていてもよい縮合ヘテロ基を表す。)
で表される。例えば、メチルホスホリル基、ジメチルホスホリル基、またはメチルエチルホスホリル基等が挙げられる。かかる置換基の炭素数は、好ましくは、1〜20である。
本発明にかかる医薬は、例えば、所望により糖衣を施しまたはフィルムコ−ティングされていてもよい錠剤、カプセル剤、エリキシル剤またはマイクロカプセル剤などの剤形を有し、経口的に投与されるものであってもよい。また、本発明にかかる医薬は、水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液または懸濁液剤などの注射剤に代表される非経口製剤であってもよい。
上記剤形は、自体公知の方法で製造することができる。
本発明にかかる医薬は、臓器障害後の進行性病変に対して効用のある他の薬理作用成分を含んでいてもよい。
また、本発明にかかる医薬は、例えば、結合剤、崩壊剤、賦形剤、防腐剤、安定剤、香味剤など当業界で用いられる添加剤を含有していてもよい。
錠剤またはカプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、結合剤、崩壊剤、賦形剤、防腐剤、安定剤、香味剤など当業界で用いられる添加剤が挙げられる。より具体的には、例えば、例えばヒドロキシプロピルセルロ−ス、ヒドロキシプロピルメチルセルロ−スもしくはマクロゴ−ルなどの結合剤ゼラチン、コ−ンスタ−チ、トラガントまたはアラビアゴムのような結合剤;例えばデンプンもしくはカルボキシメチルセルロ−スカルシウムなどの崩壊剤;例えば乳糖、デンプン、結晶性セルロ−スのような賦形剤;コ−ンスタ−チ、ゼラチンまたはアルギン酸などのような膨化剤;ステアリン酸マグネシウムまたはタルクのような滑沢剤;ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤;ペパ−ミント、アカモノ油またはチェリ−のような香味剤などが用いられる。剤形がカプセルである場合には、上記添加剤の他、さらに油脂のような液状担体を含有させることができる。
注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、またはブドウ糖やその他の例えばD−ソルビト−ル、D−マンニト−ル、塩化ナトリウムなど補助薬を含む等張液などが用いられる。このとき、例えば、エタノ−ルなどのアルコ−ル;例えば、プロピレングリコ−ルもしくはポリエチレングリコ−ルなどのポリアルコ−ル;例えば、ポリソルベ−ト80TM、HCO−50などの非イオン性界面活性剤などの適当な溶解補助剤を併用してもよい。注射用の油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられる。安息香酸ベンジル、ベンジルアルコ−ルなどの溶解補助剤を併用してもよい。また、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液など)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコ−ルなど)、保存剤(防腐剤)(例えば、クロロブタノ−ル、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、ベンジルアルコ−ル、フェノ−ルなど)、酸化防止剤などを配合してもよい。調製された注射液などの医薬組成物は、通常、適当なアンプルに充填される。
本発明に係る医薬の1日投与量は、有効成分の種類、対象疾患、投与ル−トまたは剤型などにより相違するので一概には言えないが、好ましくは約0.1〜100mg/kg程度、さらに好ましくは約1〜50mg/kg程度であるが、約0.5〜50mg/kg程度であってもよい。また、これらの化合物は低毒性であって、経口投与または非経口投与が可能である。
本発明に係る上記一般式(A)で表される化合物は、免疫抑制作用、線維化阻害作用、および臓器組織の修復再生作用を有する。より詳しくは、本発明に係る化合物は、臓器障害もしくは免疫疾患に起因して障害を受けた組織に発現するエフェクターマクロファージを選択的に抑制する効果を示すので、その結果特定の組織に対して選択的に免疫抑制作用を示すことができ、またさらに該エフェクターマクロファージによる疾病の進行または重篤化を有効に阻止でき、その結果、障害を受けた特定の組織に対して選択的に線維化阻害作用を示す。加えて、ヘテロメリックアミノ酸トランスポーター(HAT)の活性と制御を示し、そのリガンドである糖鎖結合蛋白であるガレクチン−3を誘導することによって抗アポトーシス活性と血管新生をもたらし、組織の修復再生へと向かわせることができる。同時に、上皮細胞のE−カドヘリンの機能を維持することによって上皮細胞の機能を温存する作用を有する。したがって下記一般式(A)で表される新規ベンゾイソフラノン誘導体が組織再生作用を有する。
したがって、本発明に係る上記一般式(A)で表される化合物を含む医薬は、臓器組織の修復再生治療薬、線維化阻害剤、および、免疫応答調節剤として用いることができる。より具体的には、腎臓糸球体疾患、間質性腎炎、尿路通過障害による腎尿細管障害、糖尿病性腎症、多発性腎のう胞、糖尿病性網膜症、皮膚創傷、強皮症、乾癬、慢性色素性皮膚疾患、四肢・顔面あるいは同種皮膚組織移植術の急性および慢性拒絶反応の予防と治療、臓器移植後の急性および慢性拒絶反応、膵島傷害による糖尿病、慢性肝炎、アルコール性肝炎、脂肪肝、慢性膵炎、癌又は癌の転移の予防又は治療、心筋梗塞、動脈硬化、動脈硬化再狭窄症、肺結核、喘息、肉芽性肺疾患、肺線維症、細菌や真菌感染症にともなう肺疾患、細菌毒素によるエンドトキシンショック反応、全身性血管内凝固、血球貪食症候群、エイズウィルス感染予防と治療、骨折、骨粗鬆症、リウマチ様関節炎、透析アミロイド−シス、糖尿病性神経障害、脳梗塞、脳脊髄変性症、睡眠障害、統合失調症の治療に用いることができる。また、ステロイド治療薬の代替となる。さらに臓器組織傷害後の修復再生治療に用いることができる。臓器組織傷害は、たとえば、腎臓の傷害、皮膚創傷、植皮術、膵島傷害による糖尿病の治療などである。
本発明に係る上記免疫抑制剤、線維化阻害剤、および組織修復再生治療薬として用いる医薬の1日投与量は、有効成分の種類、対象疾患、投与経路または剤型などにより相違するので一概には言えないが、式(A)で表される化合物として約0.01〜500mg/kg程度、さらに好ましくは約0.05〜250mg/kg程度となる量であるが、約0.1〜250mg/kg程度であってもよい。また、これらの化合物は低毒性であって、経口投与または非経口投与が可能である。
本発明に係る上記免疫抑制剤または線維化阻害剤、および修復再生治療薬として用いる医薬は、上述のように、他の免疫抑制作用、線維化阻害作用および/または組織修復再生治療薬を示す薬理成分が含まれていても良い。また、上述のような種々の剤形を有していても良く、また上述のような剤形に応じた公知の添加剤が含まれていても良い。
[化合物合成]
本発明にかかる化合物は、すべて公知の方法またはそれに準じる方法により製造されてよい。本発明の化合物の製造方法を以下に例示する。
実施例1
2−カルボキシメチル−5−(2−メトキシエトキシ)安息香酸の製造
2−カルボキシメチル−5−ヒドロキシ安息香酸 (500 mg, 2.55 mmol) のメタノ−ル (5.0 mL) 溶液に室温で炭酸カリウム (1.33 g, 9.60 mmol) を加え、同温で15分間撹拌した。反応混合物に2−ブロモエチルメチルエ−テル (0.780 mL, 8.25 mmol) を加え、加熱還流下、66時間反応させた。反応液に1N塩酸を加え、ジエチルエ−テル (50 mL×3) で抽出した。有機層を全て混合し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下溶媒を留去した。残渣を再結晶 (酢酸エチル) により精製し、2−カルボキシメチル−5−(2−メトキシエトキシ)安息香酸の無色板状結晶 (554 mg, 収率:86%) を得た。
M.p. 142.0−143.0 ℃ (酢酸エチル); H NMR (300 MHz, DMSO−d) δ:3.30 (s, 3H), 3.63−3.66 (m, 2H), 3.83 (s, 2H), 4.09−4.12 (m, 2H), 7.07 (dd, 1H, J = 8.5, 2.9 Hz), 7.22 (d, 1H, J = 8.5 Hz), 7.38 (d, 1H, J = 2.9 Hz); 13C NMR (75 MHz, DMSO−d) δ: 48.8, 58.4, 67.3, 70.5, 116.1, 118.2, 128.9, 131.8, 133.7, 157.3, 168.3, 173.0; IR (neat) cm−1: 2926, 1708, 1701; MS (EI): m/z (%) = 254 (26.2) [M], 236 (27.4), 178 (9.0), 134 (10.2), 105 (10.8), 59 (100); HRMS (EI): m/z [M] 計算値 C1214: 254.0790; 実測値: 254.0778.
実施例2
2−(1−オキソカルボキシメチル)−5−(2−メトキシエトキシ)安息香酸の製造
2−カルボキシメチル−5−(2−メトキシエトキシ)安息香酸 (5.11 g, 20.1 mmol) のキシレン (100 mL) 溶液に二酸化セレン (2.47 g, 22.1 mmol) を室温で加え、加熱還流下、5時間反応させた。反応液をろ過し、ろ液を飽和炭酸ナトリウム水溶液 (60 mL×4) で抽出した。集めた水層を3N塩酸で酸性にした後、ジエチルエ−テル (100 mL×3) で抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下溶媒を留去し、2−(1−オキソカルボキシメチル)−5−(2−メトキシエトキシ)安息香酸の黄色アモルファス (5.24 g, 収率: 97%) を得た。
H NMR (400 MHz, DMSO−d) δ: 3.33 (s, 3H), 3.71 (t, 2H, J = 3.9 Hz), 4.26 (t, 2H, J = 3.9 Hz), 7.39 (br s, 2H), 7.59−7.61 (m, 1H); IR (neat) cm−1: 2938, 1755; MS (EI): m/z (%) = 268 (2.1) [M], 250 (7.4), 223 (41.0), 178 (100); HRMS (EI): m/z [M] 計算値 C1212: 268.0583; 実測値: 268.0584.
実施例3
(RS)−1−ヒドロキシ−5−(2−メトシキエトキシ)−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステルと
(RS)−1−アセトキシ−5−(2−メトシキエトキシ)−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステルの製造
2−(1−オキソカルボキシメチル)−5−(2−メトキシエトキシ)安息香酸 (180 mg, 0.671 mmol) に無水酢酸 (0.7 mL) を室温で加え、100 ℃で1時間反応させた。反応液の溶媒を室温で減圧下留去した。残渣のTHF (2.2 mL) 溶液にベンジルアルコ−ル (0.071 mL, 0.680 mmol) とピリジン (0.055 mL, 0.680 mmol) を室温で加え、4時間反応させた。減圧下溶媒を留去した後、残渣に水を加え、クロロホルム (15 mL×3) で抽出した。有機層を3N塩酸と水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=3:2) により精製し、(RS)−1−ヒドロキシ−5−(2−メトシキエトキシ)−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステルの黄色油状物 (85.2 mg, 収率: 35%) と(RS)−1−アセトキシ−5−(2−メトシキエトキシ)−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステルの黄色油状物 (56.4 mg, 収率: 21%)を得た。
(RS)−1−ヒドロキシ−5−(2−メトシキエトキシ)−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステル: H NMR (400 MHz, CDCl) δ: 3.35 (s, 3H), 3.67 (t, 2H, J = 4.4 Hz), 4.08 (t, 2H, J = 4.4 Hz), 5.10 (s, 2H), 7.07−7.09 (m, 2H), 7.15−7.24 (m, 5H), 7.30 (d, 1H, J = 8.3 Hz); 13C NMR (75 MHz, CDCl) δ: 59.2, 67.9, 68.7, 70.6, 108.9, 123.4, 123.7, 124.1, 127.0, 127.8 (2C), 128.5, 128.6 (2C), 134.2, 137.0, 161.4, 167.4, 167.8; IR (neat) cm−1: 2936, 1778, 1755; MS (FAB): m/z = 381 [M+Na]; HRMS (FAB): m/z [M+Na] 計算値 C1918NaO: 381.0950; 実測値: 381.0948.
(RS)−1−アセトキシ−5−(2−メトシキエトキシ)−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステル: H NMR (400 MHz, CDCl) δ: 2.16 (s, 3H), 3.45 (s, 3H), 3.78 (t, 2H, J = 4.5 Hz), 4.19 (t, 2H, J = 4.5 Hz), 5.18 (d, 1H, J = 11.9 Hz), 5.27 (d, 1H, J = 11.9 Hz), 7.25−7.35 (m, 7H), 7.53 (d, 1H, J = 8.3 Hz); 13C NMR (75 MHz, CDCl) δ: 20.6, 59.3, 68.2, 68.6, 70.7, 98.3, 109.0, 124.0, 124.7 127.6, 128.2 (2C), 128.7 (3C), 134.5, 135.3, 162.1, 164.9, 166.9, 168.9; IR (neat) cm−1: 1797, 1792, 1771; MS (EI): m/z (%) = 400 (6.7) [M], 341 (3.3), 265 (14.6), 223 (100); HRMS (EI): m/z [M] 計算値 C2120: 400.1158; 実測値: 400.1143.
実施例4
(RS)−1−ヒドロキシ−5−(2−メトシキエトキシ)−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステルの製造
2−(1−オキソカルボキシメチル)−5−(2−メトキシエトキシ)安息香酸 (200 mg, 0.746 mmol) に無水酢酸 (0.8 mL) を室温で加え、100 ℃で1時間反応させた。反応液の溶媒を50 ℃に加熱しながら減圧下留去した。残渣のTHF (2.6 mL) 溶液にベンジルアルコ−ル (0.084 mL, 0.804 mmol) とピリジン (0.065 mL, 0.804 mmol) を室温で加え、6時間反応させた。減圧下溶媒を留去した後、水を加え、クロロホルム (15 mL×3) で抽出した。有機層を6 N塩酸により洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ− (n−ヘキサン:酢酸エチル=3:2) により精製し、(RS)− 1−ヒドロキシ−5−(2−メトシキエトキシ)−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステルの黄色油状物 (216 mg, 収率: 75%) を得た。
実施例5
(RS)−1−クロロ−5−(2−メトシキエトキシ)−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステルの製造
(RS)−1−ヒドロキシ−5−(2−メトシキエトキシ)−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステル (85.0 mg, 0.238 mmol) のエ−テル (0.8 mL) 溶液に塩化オキサリル (0.136 mL, 1.56 mmol) とDMF (4滴) を0 ℃で加え、室温で6時間反応させた。反応液に飽和炭酸カリウム水溶液を加え、ジエチルエ−テル (10 mL×3)で抽出した。有機層を水により洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (n−ヘキサン:酢酸エチル=4:1) により精製し、(RS)−1−クロロ−5−(2−メトシキエトキシ)−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステルの黄色油状物 (56.7 mg, 収率: 63%) を得た。
H NMR (400 MHz, CDCl) δ: 3.37 (s, 3H), 3.70 (t, 2H, J = 4.6 Hz), 4.11 (t, 2H, J = 4.6 Hz), 5.19 (d, 1H, J = 12.4 Hz), 5.23 (d, 1H, J = 12.4 Hz), 7.18−7.27 (m, 7H) , 7.59 (d, 1H, J = 8.3 Hz); 13C NMR (75 MHz, CDCl) δ: 59.2, 68.1, 69.1, 70.5, 92.0, 108.4, 124.5, 125.3, 125.8, 128.2 (2C), 128.7 (2C), 128.8, 134.1, 138.5, 161.8, 163.9, 165.9; IR (neat) cm−1: 2928, 1800, 1761; MS (EI): m/z (%) = 376 (6.6) [M], 341 (3.9), 241 (100); HRMS (EI): m/z [M] 計算値 C1917ClO: 376.0713; 実測値: 376.0717.
実施例6
2−カルボキシメチル−4−(2−メトキシエトキシ)安息香酸の製造
2−カルボキシメチル−4−ヒドロキシ安息香酸 (100 mg, 0.510 mmol) のメタノ−ル (1.1 mL) 溶液に室温で炭酸カリウム (247 mg, 1.79 mmol) を加え、同温で15分間撹拌した。反応混合物に2−ブロモエチルメチルエ−テル (0.145 mL, 1.53 mmol) を加え、加熱還流下、48時間反応させた。反応液に水を加え、酢酸エチルで洗浄した。水層に1N塩酸を加え、酢酸エチル (30 mL×3) で抽出した。有機層を全て混合し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下溶媒を留去した。残渣を再結晶 (酢酸エチル) により精製し2−カルボキシメチル−4−(2−メトキシエトキシ)安息香酸の無色板状結晶 (102 mg, 収率: 79%) を得た。
m.p. 189.0−190.0 ℃ (酢酸エチル); H NMR (400 MHz, DMSO−d) δ: 3.26 (s, 3H), 3.61−3.63 (m, 2H), 3.86 (s, 2H), 4.10−4.12 (m, 2H), 6.86−6.89 (m, 2H), 7.84 (d, 1H, J = 8.7 Hz); 13C NMR (75 MHz, DMSO−d) δ: 40.7, 58.7, 67.6, 70.7, 112.7, 119.1, 122.9, 133.3, 139.8, 161.5, 168.2, 172.9; IR (neat) cm−1: 3368, 2893, 1722, 1680; MS (EI): m/z (%) = 254 (22.3) [M], 236 (14.9), 178 (3.7), 134 (13.7), 105 (8.1), 59 (100); 元素分析 計算値 (%)C1214: C 56.69, H 5.55: 実測値 C 56.62, H 5.70.
実施例7
(RS)−1−ヒドロキシ−6−(2−メトシキエトキシ)−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステルの製造
2−カルボキシメチル−4−(2−メトキシエトキシ)安息香酸 (204 mg, 0.802 mmol) のキシレン (6.1 mL) 溶液に二酸化セレン (98.7 mg, 0.882 mmol) を室温で加え、加熱還流下、20時間反応させた。反応液をろ過し、ろ液を減圧下、溶媒留去した。残渣に無水酢酸 (1.3 mL) を室温で加え、100 ℃で1時間反応させた。反応液の溶媒を50 ℃に加熱しながら減圧下留去した。残渣のTHF (4.3 mL) 溶液にベンジルアルコ−ル (0.136 mL, 1.31 mmol) とピリジン (0.105 mL, 1.31 mmol) を室温で加え、6時間反応させた。減圧下溶媒を留去した後、水を加え、クロロホルム (30 mL×3) で抽出した。有機層を6N塩酸により洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (n−ヘキサン:酢酸エチル=3:2) により精製し、(RS)−1−ヒドロキシ−6−(2−メトシキエトキシ)−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステルの黄色油状物 (146 mg, 収率: 51%) を得た。
H NMR (400 MHz, CDCl δ: 3.45 (s, 3H), 3.77 (t, 2H, J = 4.6 Hz), 4.15−4.16 (m, 2H), 5.21 (s, 2H), 6.92 (d, 1H, J = 2.2 Hz), 7.14−7.18 (m, 3H), 7.30−7.31 (m, 3H) , 7.79 (d, 1H, J = 8.2 Hz); 13C NMR (75 MHz, CDCl δ: 59.3, 68.1, 69.1, 70.5, 99.0, 107.1, 119.2, 119.3, 127.3, 127.9 (2C), 128.6 (2C), 128.7, 134.0, 147.5, 164.4, 167.3, 167.9; IR (neat) cm−1: 3316, 1778, 1755; MS (EI): m/z (%) = 358 (0.5) [M], 223 (54.1), 178 (100); HRMS (EI): m/z [M] 計算値 C1918: 358.1053; 実測値: 358.1055.
実施例8
(RS)−1−クロロ−6−(2−メトシキエトキシ)−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステルの製造
(RS)−1−ヒドロキシ−6−(2−メトシキエトキシ)−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステル (44.9 mg, 0.125 mmol) のエ−テル (0.4 mL) 溶液に塩化オキサリル (0.054 mL, 0.625 mmol) とDMF (2滴) を0 ℃で加え、室温で16時間反応させた。反応液に飽和炭酸カリウム溶液を加え、ジエチルエ−テル (15 mL×3) で抽出した。有機層を水により洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (n−ヘキサン:酢酸エチル=4:1) により精製し、(RS)−1−クロロ−6−(2−メトシキエトキシ)−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステルの黄色油状物 (32.0 mg, 収率: 68%) を得た。
H NMR (400 MHz, CDCl) δ: 3.46 (s, 3H), 3.77 (t, 2H, J = 4.3 Hz), 4.10−4.22 (m, 2H), 5.27 (d, 1H, J = 12.1 Hz), 5.33 (d, 1H, J = 12.1 Hz), 7.16−7.21 (m, 2H), 7.35−7.36 (m, 5H) , 7.79 (d, 1H, J = 8.3 Hz); 13C NMR (75 MHz, CDCl) δ: 59.3, 68.3, 69.2, 70.4, 108.4, 116.1, 120.0, 125.9, 127.3, 128.2 (2C), 128.7 (2C), 128.8, 134.1, 149.1, 163.9, 164.8, 165.6; IR (neat) cm−1: 1798, 1765; MS (EI): m/z (%) = 376 (4.3) [M], 341 (0.9), 241 (87.5), 91 (100); HRMS (EI): m/z [M] 計算値 C1917ClO: 376.0713; 実測値: 376.0705.
上記実施例に使用される以下の原料、中間体はそれぞれ下記文献に従って合成した。
2−カルボキシメチル−5−ヒドロキシ安息香酸の製造方法(非特許文献20):J Med Chem(2008);51;7717-7730
2−カルボキシメチル−4−ヒドロキシ安息香酸の製造方法(非特許文献21):Aust J Chem(1999);52;1013-2010
[生物活性評価]
実施例1−1.試験管内による被検化合物のヘテロメリックアミノ酸トランスポ−タ重鎖(heavy−chain)FRP−1/CD98/4F2hc/rBAT分子のうち4F2hc の産生調節活性の測定
方法は、公知の方法(石橋道男、PCT/JP2007/061573、特願2006−161569 「名称:腎糸球体治療剤のスクリーニング方法」)に従って実施した。すなわち、(a)ウシ胎児血清中、ヒト単球もしくはヒトマクロファージの性質を有するヒト培養細胞樹立株THP−1をリポ多糖類もしくはヒトリコンビナントガンマ−インターフェロン(Peprotech社、米国より購入)および被検化合物の存在下に培養し、(b)得られる培養液からヒト単球もしくはヒトマクロファージの性質を有するヒト培養細胞樹立株を回収し、(c)回収した該ヒト培養細胞樹立株THP−1をサポニン処理により細胞膜を貫通し細胞膜と細胞内をふくむTHP−1の4F2hcの産生をラビット抗4F2hcペプチド抗体と反応させ、(d)FACScan解析により4F2hc量のGeoMean値を実測し、(e)該4F2hc量を被検化合物の非存在下のときの4F2hc量と比較して4F2hc産生調節活性をみた。
結果:非検化合物としてCompound−4、Compound−5、Compound−6、Compound−9、Compound−10は、公知化合物に比べ、4F2hc産生調節活性はいずれも統計的に有為に高まっている。
実施例1−2.試験管内による被検化合物のヘテロメリックアミノ酸トランスポ−タ−重鎖(heavy−chain)FRP−1/CD98/4F2hc/rBAT分子のうちrBATの産生調節活性の測定
方法は、公知の方法(石橋道男、PCT/JP2008/057148、特願2007−105067 「名称:腎尿細管治療剤のスクリーニング方法」)に従って実施した。
すなわち、(a)ウシ胎児血清中、ヒトマクロファージ培養細胞株U937 を 0.5 x 10 /well の濃度にて、培養液 ( RPMI1640 に10%ウシ胎児血清、2mML−グルタミン, 抗生物質を含む) にてヒトリコンビナント リンフォトキシンアルファ ( Peprotech 社) を終濃度 10ng/mL とし、被検化合物としてCompound−10、公知化合物としてCompound−11をそれぞれ培養開始時に添加し6日間培養する。
なお、Compound−11(1−クロロ−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステル)は以下の構造を有する。
(b)得られる培養液からヒト単球もしくはヒトマクロファージの性質を有するヒト培養細胞樹立株U937をすべて回収し、細胞数を算定し、トリパンブルー染色にて細胞の 生存率(viability)を目視法にて生細胞と死細胞数をカウントした。(c)回収した該ヒト培養細胞樹立株U937をサポニン処理により細胞膜を貫通し細胞膜と細胞内をふくむU937のrBATの産生をラビット抗rBATペプチド抗体と反応させ、(d)FACScan解析によりrBAT量のGeoMean値を実測した。同時に、被検化合物の非存在下のときのrBAT量のGeoMean 値を測定した。rBAT 発現陽性細胞分画(R3)の GeoMean値(移動度)から以下の式にて % Repsonse を求めた。
% Response = ( Geomean of test sample − GeoMean of vehicle ) / ( GeoMean of vehicle )
5) 判定:被検化合物の rBAT産生調節活性の正および負の% Response20%以上を陽性と判定した。
結果:
結語:被検化合物としてCompound−10は、1μM, 0.1μMいずれにおいても% Response20%以上で陽性を示し、一方、Compound−11は、1μMにて陽性活性を示したが0.1μMでは陰性であった。すなわち、被検化合物としてCompound−10はCompound−11より10倍以上の活性が高まっていた。
Compound−4,Compound−5、Compound−6、Compound−9についてもCompound−10と同様に、Compound−11より活性が高まっている。
実施例2.ヒトマクロファージ培養細胞株U937をヒトリコンビナント リンフォトキシンアルファと6日間培養したときの、被検化合物存在下におけるU937の生存率(viability)と細胞増殖活性
(a)ウシ胎児血清中、ヒトマクロファージ培養細胞株U937 を 0.5 x 10 /well の濃度にて、培養液 ( RPMI1640 に10%ウシ胎児血清、2mM L−グルタミン、抗生物質 を含む) にてヒトリコンビナント リンフォトキシンアルファ( Peprotech 社)を終濃度 10ng/mL とし、被検化合物としてCompound−10、公知化合物としてCompound−11をそれぞれ培養開始時に添加し6日間培養する。(b)得られる培養液からヒト単球もしくはヒトマクロファージの性質を有するヒト培養細胞樹立株U937をすべて回収し、細胞数を算定し、トリパンブルー染色にて細胞の生存率(viability)を目視法にて生細胞と死細胞数をカウントした。
結果2−1:培養後のU937の生存率
結語:Compound−11は、1μMにて対照−1と同じ生存率を示したが、0.1μM濃度以下では低い値であった。一方、Compound−6とCompound−10は、1μM, 0.1μM, 0.01μMのいずれにおいても対照−1と同じ生存率を示した。すなわち、Compound−11においては0.1μM, 0.01μMの濃度にて生存率の低下が観察されたが被検化合物Compound−6とCompound−10はいずれにおいても低濃度でも変化がなく、より安全域が広まったといえる。
結果2−2:培養後のU937の細胞増殖活性
結語:対照の結果から、ヒトリコンビナントリンフォトキシンアルファにより、U937の細胞増殖が刺激されていることがわかる。Compound−11は、1μM の濃度で細胞増殖活性が維持されたが0.1μMと 0.01μMでは細胞増殖活性が失われている。一方、Compound−6とCompound−10はいずれも、1μM 、0.1μM、0.01μM において増殖活性は維持された。すなわち、Compound−11に比して、Compound−6とCompound−10はいずれも100倍の活性が高まった。
実施例3.ラット腎尿細管培養細胞株NRK52EへのEMT阻害効果
方法
1)ラット尿細管培養細胞株、NRT52E を継代(passage)4から継代6にて使用する。10%FBS−RPMI1640, 2mML−グルタミン, 抗生物質の培養液で継代したものを、トリプシンにてサブカルチャー(subculture)し、Lab−Tek II Chamber Slide System(Nalge Nunc, IL)を用いて各チャンバ−(chamber) に2 x 10 をくわえ10%FBS−RPMI1640で培養する。終夜後に細胞をHAM−DMEM 培養液にて洗浄したのちに、最終 50ng/mL の濃度のヒトリコンビナントTGF−ベータ1(hrTGF−ベータ1)(和光) を添加すると同時に、被検化合物を 0.1μM, 0.01μM, 0.001μM の濃度で加え、2日間から5日間培養した。
2)培養後に対照が線維芽細胞様を示した時点で、E−カドヘリン(cadherin)の発現の抑性が生じるかを一次抗体としてウサギ抗Eカドヘリンポリクロナル抗体(rabbit anti−E−cadherin polyclonal antibody)x200 (abcom53033)を用い4℃にて終夜反応させ、二次抗体としてAlexa−Flour488にて染色し、核をDAP1にて染色し、共焦点レ−ザ−顕微鏡(オリンパス)にて、細胞の性状とともにE−カドヘリン染色性を測定した。
3)EMT阻害効果の判定:
1)Epithelial−Mesenchymal Transition(EMT)による線維芽細胞様の形態変化とE−カドヘリン の発現が細胞膜から減弱しているかを観察されるかを検討した(図1参照)。
2)蛍光染色の強さは、共焦点レ−ザ−顕微鏡の解析ソフトを用い、細胞をROIで数箇所とり強さを測定し平均値を求めた。
結果1.尿細管上皮細胞の形態維持によるEMT阻害活性
結果2.E−カドヘリンの蛍光染色の強さ
結果1および結果2:ラット腎尿細管培養細胞NRK52EをリコンビナントTGF−ベータ1にて添加培養した結果、Epithelial−Mesenchymal Transition (EMT) の阻害効果として、1)形態的に尿細管上皮細胞が維持されたこと、2)E−カドヘリン の発現と細胞間接着が維持されたことから判定すると、Compound−11が0.01μMの濃度においてのみ阻害効果がみられたのに比べて、Compound−10は0.1μM, 0.01μM, 0.001μMのいずれにも阻害効果を示した。すなわち、腎尿細管上皮細胞のEMT阻害効果として、10倍の高濃度でも活性があり10倍以下の低濃度においても活性を示したことから、10倍に濃度の安全域が高まり、10倍にEMT阻害活性が高まった。
実施例4.ラット一側尿管閉塞解除モデルを用いた腎尿細管傷害の修復再生による軽減効果
方法は、公知の方法(石橋道男、PCT/JP2008/057148、特願2007−105067 「名称:腎尿細管治療剤のスクリーニング方法」)に従って実施した。
(1)ラット一側尿管閉塞解除モデルの作成
8−9週齢、約280gのSDラット雄を用いて実験モデルを作成した(石橋道男ほか:日本腎臓学会誌42:248,2000)。すなわち、ラットをエーテル麻酔下にて開腹し左腎下極の高さで尿管を7−0ナイロンで結紮閉腹し、閉塞14日目に閉塞を解除しカフを用い尿路を再建した。具体的には、14日後に結紮された閉塞尿管を部分切除し、25ゲージポリエチレンチューブ(日本シャーウッド製)をカフとして、下方正常尿管断端より内腔に挿入留置し、次に上方の拡張した尿管内にもカフを留置し、それぞれ7−0ナイロンにて結紮固定し尿路を再建した。同時に、対側の右腎を摘出した。閉塞解除後6日目か7日目に麻酔下にて下大静脈からヘパリン加に採血し、犠死させたのちに左閉塞解除腎を摘出した。
1)閉塞解除腎の腎機能:ヘパリン加に採血より血漿クレアチニン値とBUNを測定した。摘出した腎について病理形態学的検査を実施した。このモデルにおいては、被検化合物を投与しない対照群の閉塞解除後6日目か7日目に採血した血漿クレアチニン値は2.16±0.22mg/dl (n=21)であった。
2)閉塞解除後の腎尿細管病変の観察:腎構造の破壊をきたし、糸球体ボーマン嚢壁肥厚、メサンギウム細胞増生、糸球体硬化、尿細管の萎縮、拡張、間質への細胞浸潤、繊維化を呈するが、腎尿細管病変として尿細管の拡張に伴う尿細管の萎縮、尿細管基底膜の肥厚および尿細管間質の繊維化を観察し、±(ごく軽度の変化が認められた)を0.5点、+(軽度の変化が認められた)を1点、++(中程度の変化が認められた)を2点、+++(高度の変化が認められた)を3点とし、その合計を算出した。
(2)被検化合物の投与
上記(1)で得たモデルに対して、被検化合物はアラビアゴムとともに被検化合物の原末を滅菌生理食塩水に溶解し、アラビアゴムは5%、被検化合物Compound−10は30mg/mlに調整し適宜希釈した。一般式(A)であらわされる化合物のうち被検化合物Compound−10の投与群(n=4)にはアラビアゴムとともに連日3mg/kg/dayと0.3mg/kg/dayの用量とし、14日間の閉塞期間と7日間の閉塞解除の延べ21日間連日皮下注射として投与した。なお、対照群は溶媒である5%アラビアゴムのみを投与した。Compound−11の投与群では30mg/kg/day、3mg/kg/day、0.3mg/kg/dayを同様に14日間の閉塞期間と7日間の閉塞解除の延べ21日間連日皮下注射として投与した。
(3)結果
被検化合物Compound−10とCompound−11の効果について、ラット一側尿管閉塞解除モデルへの用量依存からみた腎機能の評価と腎尿細管病変の形態学的検討から軽減効果から判定した。被検化合物Compound−10は、Compound−11と同等もしくは10倍以上の低用量にて同等の効果があきらかとなる。
実施例5.ラット一側尿管閉塞解除モデルを用いた腎糸球体傷害モの修復再生による軽減効果
方法は、公知の方法(公知文献1.石橋道男、PCT/JP2007/061573、特願2006-161569 「名称:腎糸球体治療剤のスクリーニング方法」)に従って実施した。
(1)ラット一側尿管閉塞解除モデルの作成
8−9週齢、約280gのSDラット雄を用いて実験モデルを作成した(石橋道男ほか:日本腎臓学会誌42:248,2000)。すなわち、ラットをエーテル麻酔下にて開腹し左腎下極の高さで尿管を7−0ナイロンで結紮閉腹し、閉塞14日目に閉塞を解除しカフを用い尿路を再建した。具体的には、14日後に結紮された閉塞尿管を部分切除し、25ゲージポリエチレンチューブ(日本シャーウッド製)をカフとして、下方正常尿管断端より内腔に挿入留置し、次に上方の拡張した尿管内にもカフを留置し、それぞれ7−0ナイロンにて結紮固定し尿路を再建した。同時に、対側の右腎を摘出した。閉塞解除後6日目か7日目に麻酔下にて下大静脈からヘパリン加に採血し、犠死させたのちに左閉塞解除腎を摘出した。
1)閉塞解除腎の腎機能:ヘパリン加に採血より血漿クレアチニン値とBUNを測定した。摘出した腎について病理形態学的検査を実施した。このモデルにおいては、被検化合物を投与しない対照群の閉塞解除後6日目か7日目に採血した血漿クレアチニン値は2.16±0.22mg/dl (n=21)であった。
2)閉塞解除後の腎糸球体病変の観察:被検化合物の投与開始から22日目に、麻酔下に犠死させ、左閉塞解除腎を摘出し、中性ホルマリンにて固定した。固定されたパラフィン包埋腎組織を4ミクロンの厚みにて薄切し検討した。組織切片を顕微鏡で観察し、視野内に入る糸球体の数と、病変(尿細管極におけるボーマン嚢上皮細胞の腫大を伴う拡張またはボーマン嚢基底膜の肥厚)の認められる糸球体の数を計数し、50個の糸球体当たりの病変の認められる糸球体(病変糸球体という)の数を算出した。
(2)被検化合物の投与
上記(1)で得たモデルに対して、被検化合物はアラビアゴムとともに被検化合物の原末を滅菌生理食塩水に溶解し、アラビアゴムは5%、被検化合物Compound−6は30mg/mlに調整し適宜希釈した。一般式(A)であらわされる化合物のうち被検化合物Compound−6の投与群(n=4)にはアラビアゴムとともに連日3mg/kg/dayと0.3mg/kg/dayの用量とし、14日間の閉塞期間と7日間の閉塞解除の延べ21日間連日皮下注射として投与した。なお、対照群は溶媒である5%アラビアゴムのみを投与した。Compound−12の投与群では30mg/kg/day、3mg/kg/day、0.3mg/kg/dayを同様に14日間の閉塞期間と7日間の閉塞解除の延べ21日間連日皮下注射として投与した。
なお、Compound−12(2−フロロ−5−オキソテトラヒドロフラン−2−カルボン酸ベンジルエステル)は以下の構造を有する。
(3)結果
被検化合物Compound−6とCompound−12の効果について、ラット一側尿管閉塞解除モデルへの用量依存からみた血漿クレアチニンによる腎機能の評価と腎尿細管病変の形態学的検討から軽減効果から判定した。被検化合物Compound−6は、Compound−12と同等もしくは10倍以上の低用量にて同等の効果があきらかとなる。
実施例6.ラットpuromycin急性ネフローゼモデル用いた腎糸球体傷害モの修復再生による軽減効果
(1)方法は、Yamamoto,らの方法を用いた(公知非特許文献I Kihara, Yatoita Y, Kawasaki K, Yamamoto T. Limitation of podocyte adaptation for glomerular injury in puromycin aminonucleoside nephrosis. Pathology International 1995; 45: 625-634)。
すなわち、SPF、WKY/Izmラット雄、7週齢を用いる。エーテル麻酔下で、puromycin 50mg/kg(シグマ社、p-7130)を1回静注する。puromycin投与後、6日目、10日目の2回、代謝ケージで24時間尿を採取する。尿中ラットアルブミン排泄量は抗ラットアルブミン抗体を用いてEIA法にて測定した。
(2)被検化合物の投与
被検化合物Compound−6は30mg/mlに調整し適宜希釈した。puromycin投与前6日前から、被検化合物Compound−6(n=5)とCompound−12(n=5)をそれぞれ3mg/kg/dayの用量にて投与した。同時に、対照群(n=5)には溶媒のアラビアゴムは5%を投与した。
(3)結果
被検化合物Compound−6とCompound−12の効果について、puromycin投与後、6日目、10日目の尿中による尿中ラットアルブミン排泄量を比較した。被検化合物Compound−6の投与を受けた動物では、Compound−12の投与を受けた動物に比べ、尿中ラットアルブミン排泄量が減少する。
炎症性サイトカインであるガンマ−インターフェロンによる上皮系・間質系細胞間応答に一般式(A)で表わされる新規化合物が作用することによる臓器組織傷害後の修復再生を誘導する医薬を提供する。同時に、炎症性サイトカインであるリンホトキシンアルファ(TNF−ベータ)による上皮系・間質系細胞間応答に一般式(A)で表わされる新規化合物が作用することによる臓器組織傷害後の修復再生を誘導する医薬を提供するため、産業上有用である。

Claims (18)

  1. 傷害をうけた細胞の損傷過程を修飾する作用を有する臓器組織の修復再生治療薬。
  2. マクロファージあるいは組織エフェクター細胞とともに、傷害をうけた細胞の損傷過程を修飾する作用を有する臓器組織の修復再生治療薬。
  3. リンフォトキシンアルファあるいはガンマーインターフェロンの存在下において傷害をうけた細胞の損傷過程を修飾する作用を有する臓器組織の修復再生治療薬。
  4. リンフォトキシンアルファあるいはガンマーインターフェロンの存在下においてマクロファージあるいは組織エフェクター細胞とともに、傷害をうけた細胞の損傷過程を修飾する作用を有する臓器組織の修復再生治療薬。
  5. TGF−ベータを介し、傷害をうけた細胞の損傷過程を修飾する作用を有する臓器組織の修復再生治療薬。
  6. リンフォトキシンアルファあるいはガンマーインターフェロンの存在下においてアミノ酸トランスポターの4F2hcあるいはrBATの発現調節能を有するマクロファージあるいは組織エフェクター細胞とともに、傷害をうけた細胞の損傷過程を修飾する作用を有する臓器組織の修復再生治療薬。
  7. リンフォトキシンアルファあるいはガンマーインターフェロンの存在下においてアミノ酸トランスポターの4F2hcあるいはrBATの発現調節能を有するマクロファージあるいは組織エフェクター細胞とともに、傷害をうけた腎尿細管細胞あるいは腎糸球体細胞の損傷過程を修飾する作用を有する臓器組織の修復再生治療薬。
  8. マクロファージあるいは組織エフェクター細胞とともに、TGF−ベータを介し、傷害をうけた腎尿細管細胞あるいは腎糸球体細胞の損傷過程を修飾する作用を有する臓器組織の修復再生治療薬。
  9. TGF−ベータを介し、傷害をうけた腎尿細管細胞あるいは腎糸球体細胞の損傷過程を修飾する作用を有する臓器組織の修復再生治療薬。
  10. 下記、一般式(A)で示される化合物、またはその薬学的に許容される塩:
    式中RおよびRは、それぞれ独立に、水素、置換されていてもよい水酸基、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよくもしくは介在基で中断されていてもよい炭素数1〜12の鎖状の脂肪族炭化水素基、または、置換されていてもよくもしくは介在基で中断されていてもよい炭素数3〜12の環状の脂肪族炭化水素基であるが、ただし、RとRは、同時に水素ではなく;
    は、水素、置換されていてもよくもしくは介在基で中断されていてもよい炭素数1〜12の鎖状の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよくもしくは介在基で中断されていてもよい炭素数3〜12の環状の脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6〜12のアリール基、置換されていてもよい炭素数1〜12の複素環基、または、置換されていてもよい炭素数1〜12の縮合ヘテロ複素環基であり;
    Xは、ハロゲン、置換されていてもよい水酸基、シアノ基、置換されていてもよいメルカプト基、置換されていてもよいスルフィニル基、置換されていてもよいスルホニル基、置換されていてもよいスルホ基、置換されていてもよいアミノ基、または、置換されていてもよいホスホリル基である。
    (ただし、水酸基、メルカプト基、スルフィニル基、スルホニル基、およびスルホ基、アミノ基、およびホスホリル基の置換基は、ハロゲン、オキソ基、炭素数1〜8 アルカノイル基、炭素数1〜8 アルカノイルオキシ基、炭素数1〜8 アルカノイルアミノ基、カルボキシ基、炭素数2〜8 アルコキシカルボニル基、炭素数2〜8 ハロアルキルカルボニル基、炭素数1〜8 アルコキシ基、炭素数1〜8 ハロアルコキシ基、炭素数1〜20 アルキル基、アミノ基、炭素数1〜8 アルキルアミノ基、炭素数2〜16 ジアルキルアミノ基、環状アミノ基、炭素数2〜8 アルキルアミノカルボニル基、カルバモイル基、水酸基、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、炭素数1〜8 アルキルチオ基、炭素数1〜8 アルキルスルホニルオキシ基または炭素数1〜8 アルキルスルホニルアミノ基である。)
  11. 、Rがそれぞれ独立に、水素、置換されていてもよくもしくは介在基で中断されていてもよい炭素数3〜5の鎖状の脂肪族炭化水素基であり;
    がフェニルで置換された炭素数1から3のアルキル基であり;
    Xが、ハロゲン、置換されていてもよい水酸基である請求項10に記載の化合物または、その薬学的に許容される塩。
  12. 、Rがそれぞれ独立に、水素、メトキシエチルオキシ基であり;
    がベンジル基であり;
    Xが、ハロゲン、炭素数1〜3のアルカノイル基で置換されていてもよい水酸基である請求項10もしくは請求項11に記載の化合物、または、その薬学的に許容される塩。
  13. (RS)−1−ヒドロキシ−5−(2−メトシキエトキシ)−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステル;
    (RS)−1−アセトキシ−5−(2−メトシキエトキシ)−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステル;
    (RS)−1−クロロ−5−(2−メトシキエトキシ)−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステル;
    (RS)−1−ヒドロキシ−6−(2−メトシキエトキシ)−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステル;および
    (RS)−1−クロロ−6−(2−メトシキエトキシ)−3−オキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−1−カルボン酸ベンジルエステル。
  14. 請求項10〜13のいずれか一項に記載の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩を有効成分とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の臓器組織の修復再生治療薬。
  15. 請求項10〜13のいずれか一項に記載の化合物またはそれらの薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
  16. ヒトを含む動物において傷害をうけた細胞の損傷過程を修飾する作用を有する臓器組織の修復再生治療のための医薬組成物であって、請求項10〜13のいずれか一項に記載の化合物またはそれらの薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を有効量含む医薬組成物。
  17. 請求項10〜13のいずれか一項に記載の化合物と別異の薬理学的活性剤との組み合わせを含む医薬組成物。
  18. 傷害をうけた細胞の損傷過程を修飾する作用を有する臓器組織の修復再生治療のための医薬組成物であって、有効量の請求項10〜13のいずれか一項に記載の化合物。
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Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2001072730A1 (fr) * 2000-03-28 2001-10-04 Michio Ishibashi Medicaments preventifs/remedes selectifs pour lesions evolutives apres endommagement d'un organe
JP2009178052A (ja) * 2008-01-29 2009-08-13 Michio Ishibashi 膵臓の膵島病変を予防、緩和または治療する化合物のスクリーニング方法

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