以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
インクジェットプリンタ101は、用紙Pを収納・供給する給紙部、用紙Pを搬送する搬送部、用紙Pに画像を形成する画像形成部、及び、画像形成後の用紙Pを収容する排紙部が用紙搬送経路に沿って配置されている。このうち、搬送部は、主に搬送ユニット20から構成される。画像形成部は、4つのインクジェットヘッド1(以下、ヘッド1と称する)、4つのインク供給ユニット10、加湿メンテナンスに用いられる加湿供給機構50(図7参照)、インクジェットプリンタ101全体の動作を制御する制御装置16を含む。画像形成を行う際、搬送ユニット20により搬送される用紙Pに、ヘッド1からインクが吐出される。
搬送ユニット20は、図1に示すように、2つのベルトローラ6、7と、両ローラ6、7間に架け渡されたエンドレスの搬送ベルト8とを有している。ベルトローラ7は、駆動ローラであって、図示しない搬送モータからの駆動力で回転する。ベルトローラ7が回転すると、搬送ベルト8が走行する。ベルトローラ6は、従動ローラであって、搬送ベルト8の走行に伴って回転する。搬送ベルト8の表面8aに載置された用紙Pは、図1中上方から下方へと搬送される。なお、本実施形態において、副走査方向とは搬送ユニット20による用紙Pの搬送方向と平行な方向であり、主走査方向とは副走査方向に直交する方向であって、水平面に沿った方向である。
ベルトローラ7と対向する位置には、インク除去部材22が設けられている。インク除去部材22は、基部23と、基部23に固定されたインク吸収部材24とを有している。インク吸収部材24は、スポンジなどの多孔質材料から構成されている。インク吸収部材24の主走査方向の長さは、搬送ベルト8の幅とほぼ同じである。また、インク吸収部材24は、鉛直方向に関して、ベルトローラ7の中心よりも下側部分と対向し、搬送ベルト8の表面8aと接触して配置されている。これにより、搬送ベルト8を走行させることで、表面8aに付着したインクなどの異物が除去される。
4つのヘッド1は、それぞれ主走査方向に沿って延在したライン式のヘッドであり、用紙Pにブラック、マゼンタ、シアン、イエローのインク滴をそれぞれ吐出する。これらヘッド1は、ヘッドホルダ3を介してキャリッジ4に支持され、互いに平行且つ副走査方向に隣接配置されている。ヘッドホルダ3はヘッド1にそれぞれ固定された枠状部材であり、キャリッジ4には4つのヘッドホルダ3が支持されている。各ヘッド1の下面は、複数の吐出口108が開口する吐出面2aである(図5参照)。キャリッジ4は、ヘッド1の吐出面2aと搬送ベルト8の表面8aとの間に記録に適した所定の間隙が形成されるように、ヘッド1を保持している。ヘッドホルダ3には、ヘッド1の下端近傍に環状のキャップ40が設けられている。キャップ40は、平面視でヘッド1を内包し、吐出面2aを取り囲む。なお、キャップ40の構成、動作、機能等については、後に詳述する。
各インク供給ユニット10は、ヘッド1の下面の図1中左方端部近傍に接続されている。インク供給ユニット10は、接続されたヘッド1にインクを供給する。
次に、制御装置16について説明する。制御装置16は、プリンタ101各部の動作を制御してプリンタ101全体の動作を司る。制御装置16は、例えば、外部装置(プリンタ101と接続されたPC等)から供給された画像データに基づいて、画像形成動作を制御する。具体的には、制御装置16は、用紙Pの搬送動作、用紙Pの搬送に同期したインク吐出動作等を制御する。制御装置1pはまた、ヘッド1に対するメンテナンス動作を制御する。
制御装置16は、外部装置から受信した記録指令に基づいて、給紙ユニット(不図示)、搬送ユニット20、及び、排紙ユニット(不図示)の各動作を制御する。給紙ユニットは、給紙部から用紙Pを搬送ユニット20に送り出す。搬送ユニット20は、用紙Pを副走査方向(用紙Pの搬送方向)に搬送する。用紙Pが各ヘッド1の真下を通過する際に、制御装置16の制御により、各吐出面2aから順次インクが吐出され、用紙P上にカラー画像が形成される。インクの吐出動作は、用紙Pの先端を検知する用紙センサ32からの検知信号に基づいて行われる。なお、用紙センサ32は、ヘッド1よりも搬送方向に沿って上流に設けられている。そして、画像が形成された用紙Pは、排紙ユニットによって排紙部に排出される。
制御装置16は、メンテナンス動作によって、ヘッド1のインク吐出特性の回復・維持や記録に係わる準備を行う。メンテナンス動作には、パージやフラッシング動作、ワイピングによる吐出面2aのクリーニング動作、キャッピングや加湿によるインクの増粘防止動作等が含まれる。
パージ動作には、気泡パージ及び吐出口パージが含まれ、パージポンプ86(後述する)などが駆動される。気泡パージでは、リザーバユニット71(後述する)の内部流路から気泡(異物)が排出される。吐出口パージでは、全ての吐出口108からインクが強制的に排出される。フラッシング動作では、アクチュエータが駆動されて、全ての吐出口108からインクが吐出される。インクの吐出は、フラッシングデータ(画像データと異なるデータ)に基づいて行われる。ワイピングでは、吐出面2aがワイパ(板状弾性部材)によって払拭される。ワイピングは、インク排出動作(吐出口パージ及びフラッシング)後に行われ、吐出面2a上の残留インクや異物が取り除かれる。キャッピングでは、図7に示すように、キャップ40により吐出空間(吐出面2a(吐出口108)と対向する空間)S1が外部空間S2から隔離される。加湿動作(加湿メンテナンス)では、図7に示すように、隔離された吐出空間S1に加湿空気が供給される。なお、本実施形態においては、気泡パージを行うときに加湿動作が行われ、吐出口108に形成されたインクメニスカスのインク側と気体側との圧力差が、インクメニスカスが破壊されない最大圧力であるメニスカス耐圧以下になるように調整されている。
気泡パージは、リザーバユニット71を介してインクが循環され、循環流路内の気泡が除去される。このとき、吐出口108からインクは排出されない。本実施形態においては、気泡パージに続けて吐出口パージが行われる。吐出口パージ及びフラッシングなどのインク排出動作は、クリーニング動作を伴い、吐出口108の吐出特性が回復され、吐出面108が清浄化される。キャッピングによりメニスカスの乾燥が抑制され、加湿により乾燥がさらに抑制される。なお、気泡パージ及びインク排出動作は、例えば、プリンタ101の電源投入直後、搬送経路内での紙ジャム(詰まり)時、所定時間以上継続した画像形成後や非吐出後等に行われる。電源投入直後のインク排出動作(特に、フラッシング)は、記録に係わる準備動作となる。インクの増粘防止動作は、例えば、プリンタ1の停止時や休止時に行われる。
次に、図2を参照しつつ、ヘッド1について詳細に説明する。図2に示すように、ヘッド1は、リザーバユニット71と、ヘッド本体2とを有している。
リザーバユニット71は、ヘッド本体2の上面に固定された略直方体形状の流路形成部材である。リザーバユニット71は、ヘッド本体2にインクを供給する。リザーバユニット71には、下面に流入口72aと流出口73aが配置され、内部に内部流路が形成されている。内部流路は、インク流入流路72、排気流路73、及び10個のインク流出流路75から構成される。流入口72aはインク流入流路72の一端であり、流出口73aは排気流路73の一端である。内部では、インク流入流路72が排気流路73と接続し、インク流入流路72側の接続部近傍からインク流出流路75が分岐している。インク流出流路75は、ヘッド本体2と連通している。なお、図2においては、1つのインク流出流路75のみが表れている。
インク流入流路72は、流入口72aを介して、インク供給ユニット10からのインクが供給される。インク流入流路72は、インクを一時的に貯溜するインクリザーバとして機能する。インク流入流路72の上壁には、孔72bが形成されている。孔72bは、ダンパー用の可撓性樹脂フィルム76により封止されている。樹脂フィルム76は、インク圧の変動に伴って変位するため、インク流入流路72内の圧力変動が抑制される。なお、通常印刷時においては、樹脂フィルム76はインク流入流路72内に向かって僅かに凸の状態となっている。リザーバユニット71の上側外壁面には、樹脂フィルム76を覆うように板形状の規制部材77が固定されており、樹脂フィルム76の自由な変形を規制している。これにより、インク流入流路72のインク圧が異常に高くなったとき、樹脂フィルム76が過剰に変位して破損するのが防止される。規制部材77には、大気連通孔77aが形成されており、樹脂フィルム76の変形のしやすさは損なわれていない。
インク流出流路75は、一端でフィルタ75aを介してインク流入流路72と連通し、他端で流路ユニット9の上面のインク供給口105bに接続されている(図3参照)。通常印刷時においては、インク供給ユニット10からのインクは、インク流出流路75を通過して、インク供給口105bから流路ユニット9に供給される。
排気流路73は、フィルタ75aの上流側でインク流入流路72と接続されていると共に、流出口73aを介してインク供給ユニット10に接続されている。なお、排気流路73にインクが流れるとき、インクはフィルタ75aの上流側の表面を横切って排気流路73に流れ込む。
排気流路73の下壁には、孔73bが形成されている。孔73bは、ダンパー用の可撓性樹脂フィルム78により封止されている。リザーバユニット71の下側外壁面には、規制部材79が固定されている。ここで、樹脂フィルム78及び規制部材79は、樹脂フィルム76及び規制部材77に相当し、同様の機能及び配置関係を有している。後述のメンテナンス動作に係る気泡パージ動作時においては、インク供給ユニット10からのインクが、流入口72aを介してインク流入流路72に流入し、排気流路73を介して流出口73aからインク供給ユニット10に還流する。
さらに、図3〜図5を参照しつつ、ヘッド本体2について説明する。なお、図4では説明の都合上、アクチュエータユニット21の下方にあって破線で描くべき圧力室110、アパーチャ112及び吐出口108を実線で描いている。
ヘッド本体2は、流路ユニット9と、流路ユニット9の上面に固定された4つのアクチュエータユニット21とを有している。流路ユニット9には、圧力室110を含むインク流路が形成されている。アクチュエータユニット21は、各圧力室110に対応した複数のユニモルフ型のアクチュエータを含んでおり、圧力室110内のインクに選択的に吐出エネルギーを付与する。
流路ユニット9は、ステンレス製の9枚の金属プレート122〜130を積層した積層体である。流路ユニット9の上面には、リザーバユニット71のインク流出流路75(図2参照)に連通する計10個のインク供給口105bが開口している。流路ユニット9の内部には、図4及び図5に示すように、インク供給口105bを一端とするマニホールド流路105、及び、マニホールド流路105から分岐した複数の副マニホールド流路105aが形成されている。さらに、流路ユニット9の内部には、各副マニホールド流路105aの出口から、圧力室110を介して吐出面2aの吐出口108に至る複数の個別インク流路132が形成されている。吐出面2aには複数の吐出口108がマトリクス状に配置されている。
流路ユニット9におけるインクの流れについて説明する。図3〜図5に示すように、通常印刷時においては、リザーバユニット71のインク流出流路75からインク供給口105bに供給されたインクは、マニホールド流路105(副マニホールド流路105a)に流入する。副マニホールド流路105a内のインクは、各個別インク流路132に分配され、アパーチャ112及び圧力室110を介して吐出口108に至る。
次に、図2を参照しつつ、インク供給ユニット10について詳細に説明する。インク供給ユニット10は、サブタンク(第1タンク)80、補給ポンプ91、バルブ92、インク補給管81、パージポンプ(液体供給手段)86、インク供給管(第1供給流路)82、バルブ(液体遮断弁)87、インク帰還管(第1排出流路)83を含む。インク供給ユニット10は、サブタンク80を中心にして、インク補給管81、インク供給管82およびインク帰還管83が接続されている。インク補給管81には、補給ポンプ91およびバルブ92が設けられている。インク補給管81により、インクタンク90とサブタンク80とが接続されている。インク供給管82には、パージポンプ86が設けられている。インク供給管82により、サブタンク80と流入口72aとが接続されている。また、インク帰還管83には、バルブ87が設けられている。インク帰還管83により、サブタンク80と流出口73aとが接続されている。この構成において、バルブ87は、インク帰還管83におけるインクの流通を遮断可能な開閉弁である。
サブタンク80は、インクジェットヘッド1に供給されるインクを貯溜する。インクの貯留量が少なくなった時、バルブ92が開弁され且つ補給ポンプ91が駆動されることで、インクタンク90から新鮮なインクが補給される。また、サブタンク80の上壁には、サブタンク80内と大気とを連通する大気連通孔88が形成されている。これにより、サブタンク80内の気圧が、貯溜しているインクの量にかかわらず常に大気圧となり、安定したインク供給が可能となっている。
また、サブタンク80は、図2に示すように、内部に貯留されたインクの液面が鉛直方向に関して吐出面2aより下方に配置されている。これにより、吐出口108近傍に形成されるインクメニスカスとサブタンク80のインク液面とに水頭差が生じて、インクメニスカスのインク側が大気圧に比べ負圧となる。このときの負圧は、インクメニスカスが破壊されない程度に調整されている。
インク供給管82は、ジョイント82aを介してリザーバユニット71の流入口72aに接続されている。これにより、サブタンク80のインクが、リザーバユニット71のインク流入流路72に供給される。パージポンプ86は、サブタンク80のインクを、インク流入流路72に強制的に供給する。また、パージポンプ86は、ジョイント82aからサブタンク80に向かってインクが流れるのを防止する逆止弁でもある。なお、パージポンプ86が停止している場合であっても、サブタンク80のインクは、インク供給管82を流れてリザーバユニット71に供給可能となっている。
本実施形態においては、パージポンプ86として、容積型ポンプである電動の三相ダイヤフラムポンプが用いられている。図6に示すように、3つのダイヤフラムが互いに異なる位相で変位することで、インク送出時の圧力変動が抑制された構成となっている。また、パージポンプ86は、供給する電力を変化させることによって、単位時間当たりのインク送出量を制御することができる。本実施形態においては、パージポンプ86は、インク送出量が互いに異なる2種類のモードで駆動される。ここで、インク送出量が少ないモードをLOモード、インク送出量がLOモードよりも多いモードをHIモードと称する。LOモード時には、インク送出量が少なくなるため、インク流入流路72に生じる圧力も小さい。しかし、パージポンプ86は、バルブ87が開いた状態(インクが循環する状態)において、インクメニスカスにおける圧力差が、インクメニスカス耐圧を超えるように設定されている。さらにHIモード時には、LOモード時よりも、インク流入流路72に生じる圧力が大きくなる。
次に、図7及び図8を参照し、ヘッドホルダ3及びこれに取り付けられたキャップ40、ジョイント51の構成について説明する。
ヘッドホルダ3は、金属等からなる枠状フレームであり、リザーバユニット71の側面を全周に亘って支持している。ヘッドホルダ3には、キャップ40と一対のジョイント51とが取り付けられている。一対のジョイント51は、図7に示すように、対応するヘッド1の主走査方向の端部にそれぞれ近接配置されている。具体的には、一対のジョイント51は、図7に示すように、供給口51aを持つ左側ジョイント51と排出口51bを持つ右側ジョイント51とから構成され、リザーバユニット71を主走査方向に挟んで配置されている。加湿メンテナンスでは、吐出空間S1に対し、供給口51aから加湿空気が供給され、排出口51bから空気が排出される。また、供給口51a及び排出口51bは、図7に示すように、搬送ベルト8の表面8aに対して吐出面2aよりリザーバユニット71側に離れた位置に配置されている。
ジョイント51は、図8に示すように、方形状の基端部51x、及び、基端部51xから延出した円柱状の先端部51yを含んでいる。基端部51xの方が、先端部51yより外形サイズが大きい。内部には、基端部51xから先端部51yに亘って、鉛直方向に沿った円柱状の中空空間51zが形成されている。中空空間51zは、鉛直方向に沿って一定の断面サイズを有する。基端部51xは、副走査方向を長手方向とし、その長手方向の幅(長さ)は、吐出面2aとほぼ同じになっている。
ヘッドホルダ3には、平面視円形の貫通孔3aが形成されており、ジョイント51は、先端部51yが貫通孔3aに貫挿された状態で、ヘッドホルダ3に固定されている。先端部51yは、貫通孔3aよりも一回り小さいが、両者間の隙間にはシール材等が充填されて、封止される。
キャップ40は、平面視でヘッド1の外周を取り囲む矩形の環状部材であり、主走査方向に長い。キャップ40は、図8に示すように、ヘッドホルダ3に支持された弾性体41、及び、昇降可能な可動体42を含む。
弾性体41は、ゴム等の環状弾性材料からなり、平面視でヘッド1を囲んでいる。弾性体41は、図8に示すように、基部41x、基部41xから下方に突出した突出部41a、ヘッドホルダ3に固定された固定部41c、及び、基部41xと固定部41cとを接続する接続部41dを含む。このうち、突出部41aは、基部41xの下面から突出し、断面が三角形である。また、固定部41cの断面はT字状である。固定部41cの上端部分は、接着剤等によって、ヘッドホルダ3に固定されている。固定部41cはまた、ヘッドホルダ3と各ジョイント51の基端部51xとで挟持されている。接続部41dは、固定部41cの下端から湾曲しつつ外側(平面視で吐出面2aから離隔する方向)に延び、基部41xの下端に接続している。接続部41dは、可動体42の昇降に伴って変形可能である。基部41xの上面には、凹部41bが形成されており、可動体42の下端と嵌合している。
可動体42は、環状の剛材料(例えば、ステンレス)からなり、平面視でヘッド1の外周を取り囲んでいる。可動体42は、弾性体41を介してヘッドホルダ3に支持されつつ、ヘッドホルダ3に対して鉛直方向に相対移動可能である。可動体42は、複数のギア43と接続されている。制御装置16による制御の下、昇降モータ44(図9参照)が駆動されると、ギア43が回転して昇降する。このとき、基部41xも可動体42と共に昇降する。これにより、突出部41aの先端41a1と吐出面2aとの相対位置が、鉛直方向に変化する。本実施形態では、1つの昇降モータ44から、各キャップ40用の複数のギア43に対して、その駆動力が選択的に伝達される。
突出部41aは、可動体42の昇降に伴って、先端41a1が搬送ベルト8の表面8aに当接する当接位置(図7に示す位置)と、先端41a1が表面8aから離隔した離隔位置(図8に示す位置)とを選択的に取る。当接位置では、吐出空間S1が、吐出面2aと表面8aとに挟まれて、外部空間S2から隔離された封止状態となっている。また、離隔位置では、吐出空間S1が外部空間S2に対して開放された非封止状態となっている。このようなキャップ40、複数のギア43を含む伝達機構、ヘッドホルダ3、昇降モータ44、及び、搬送ベルト8によって、キャップ手段が構成されている。
次に、図7を参照し、加湿空気供給機構50の構成について説明する。
加湿空気供給機構50は、図7に示すように、一対のジョイント51、チューブ55,57、ポンプ56、バルブ59、水温センサ46、ヒータ58及びタンク54などを含む。チューブ(第2供給流路)55は、4つのヘッド1に共通の主部55a及び主部55aから分岐してジョイント51まで延在した4つの分岐部55bを含む。ポンプ56は主部55aに設けられている。チューブ(第2排出流路)57も、チューブ55と同様に4つのヘッド1に共通の主部57a及び主部57aから分岐してジョイント51まで延在した4つの分岐部57bを含む。なお、図7では、1組の分岐部55b、57bと1つのヘッド1との接続状態が示されている。実際は、1つの主部55a、57aに対して、4つのヘッド1が分岐部55b、57bを介して並列的に接続されている。
チューブ55の一端(分岐部55bの先端)は左側ジョイント51の先端部51yに嵌合し、他端はタンク54に接続されている。一方、チューブ57の一端(分岐部57bの先端)は右側ジョイント51の先端51yに嵌合し、他端はタンク54に接続されている。このように、チューブ55、57は、吐出空間S1とタンク54とを連通させている。
タンク54は、下部空間に水を貯留し、且つ、上部空間に、下部空間の水により加湿された加湿空気を貯蔵している。また、タンク54の上壁には、タンク54内と大気とを連通する大気連通孔53が形成されている。チューブ57は、タンク54の下部空間(水中)と連通している。一方、チューブ55は、タンク54の上部空間と連通している。なお、タンク54内の水がチューブ57に流れ込まないよう、チューブ57には図示しない逆止弁が取り付けられており、図7中白抜き矢印方向にのみ空気が流れるようになっている。
また、タンク54には水の温度を計測する水温センサ46が設置され、タンク54(下部空間)の近傍には、タンク54内の水を温めるヒータ58が設置されている。加湿に際して、制御装置16による制御の下、水温センサ46による温度検出結果に基づいてヒータ58が制御され、加湿空気の湿度が調整される。本実施形態においては、プリンタ1の電源がONされることで、自動的に加湿空気の湿度が所望の湿度に調整される。なお、タンク54に貯留された水が少なくなった時は、図示しない補給タンクから水が補給される。
バルブ59は、チューブ57における空気の流通を遮断可能な開閉弁である。変形例として、バルブはチューブ57における空気の流通を段階的に制限することが可能な空気制限弁であってもよい。この場合、バルブ59と同様な、閉にするタイミングで、チューブ57の流路抵抗を大きくすることができる。さらに、段階的に流路抵抗を大きくすることが可能となり、インクメニスカスを挟む両側での圧力バランスを取りやすくなる。
本実施形態においては、ポンプ56も容積型ポンプである電動の三相ダイヤフラムポンプが用いられており、パージポンプ86と同様な構成を有している。つまり、3つのダイヤフラムが互いに異なる位相で変位することで、加湿空気送出時の圧力変動を抑制する構成となっている。また、ポンプ56は、供給する電力を変化させることによって、吐出空間S1への単位時間当たりの加湿空気送出量を制御することが可能となっている。
本実施形態においては、ポンプ56は、加湿空気送出量が互いに異なる2種類のモードで駆動される。ここで、加湿空気送出量が少ないモードをLOモード、加湿空気送出量がLOモードよりも多いモードをHIモードと称する。LOモード時には、加湿空気送出量が少なくなるため、封止状態の吐出空間S1に生じる圧力も小さい。このとき、ポンプ56は、バルブ59が開いた状態において、封止状態の吐出空間S1に生じる圧力が、インクメニスカス耐圧以下になるように設定されている。一方、HIモード時には、加湿空気送出量が多いため、封止状態の吐出空間S1に生じる圧力も大きくなる。本実施形態においては、パージポンプ86がLOモードで駆動されているときに、バルブ59が閉の状態でポンプ56がHIモードで駆動されると、吐出空間S1内に生じる圧力とインクメニスカスのインク側に生じる圧力との圧力差が、インクメニスカスの耐圧以下となるように設定されている。
この構成において、増粘防止動作の加湿メンテナンスが実行されると、制御装置16による制御の下、ポンプ56が駆動され、タンク54内の加湿空気が図7中の白抜き矢印に沿って流れる。上部空間の加湿空気は、タンク54から供給口51aに向かって流れ、吐出空間S1に供給される。このとき、タンク54内には負圧が生じ、吐出空間S1内の空気が排出口51bから吸引され、タンク54に向かって流れる。なお、バルブ59は開状態に保たれている。また、チューブ57がタンク54と水中で連通しているため、加湿メンテナンスにおいて、タンク54の加湿空気が吐出空間S1へ、吐出空間S1の空気がタンク54へと循環する構成となる。一方、パージ動作において加湿動作が実行されるときは、後述するように吐出空間S1内に生じる圧力が、増粘防止動作の加湿メンテナンスにおけるよりも大きくなる。
次に、図9を参照しつつ、制御装置16について説明する。制御装置16は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶するROM(Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。制御装置16を構成する各機能部は、これらハードウェアとROM内のソフトウェアとが協働して構築されている。制御装置16は、インクジェットプリンタ101全体を制御するものであり、搬送制御部141と、画像データ記憶部142と、ヘッド制御部143と、パージ制御部144と、メンテナンス制御部145とを有している。
搬送制御部141は、用紙Pが搬送方向に沿って所定の速度で搬送されるように搬送ユニット20の搬送モータを制御する。画像データ記憶部142は、用紙Pに印刷すべき画像に関する画像データを記憶する。
ヘッド制御部143は、通常印刷時において、吐出口108から画像データに基づく所望の体積のインク滴が所望のタイミングで吐出されるように、生成した吐出駆動信号をアクチュエータユニット21に供給する。
パージ制御部144は、パージ動作において、各インク供給ユニット10のパージポンプ86及びバルブ87の動作を制御するものである。具体的な動作内容については後述する。なお、パージ制御部144は、インク補給のために補給ポンプ91と補給バルブ92も制御しているが、図9では省略している。
メンテナンス制御部145は、加湿動作において、キャップ40の昇降動作、加湿空気供給機構50のヒータ58、ポンプ56及びバルブ59等の動作を制御するものである。また、メンテナンス制御部145は、インク排出動作において表面8a上に吐出されたインクを除去するインク除去動作において、搬送ユニット20の搬送モータを制御する。なお、メンテナンス制御部145は、ワイパなどの払拭機構(不図示)なども制御し、吐出面2aに付着したインクなどの異物を払拭する。
次に、図10を参照しつつ、制御装置16が実行するパージ動作(気泡パージ及び吐出口パージ)の制御内容について説明する。
制御装置16は、図10に示すように、先ず、パージ指令の受信の有無を判断する(F1)。パージ指令の受信前、キャップ40は離隔位置にある。また、ポンプ56及びパージポンプ86は停止しており、バルブ59が開にバルブ87が閉になっている。また、補給ポンプ91も停止しており、補給バルブ92が閉になっている。また、搬送ユニット20も停止している。
制御装置16は、パージ指令を受信すると(F1:YES)、まずはインクを循環させる気泡パージ動作を行う。メンテナンス制御部145が、昇降モータ44を駆動し、各キャップ40の先端41a1を搬送ベルト8の表面8aに当接(離隔位置から当接位置に移動)させる(ステップ2:F2)。これにより、吐出面2aと表面8aとの間に形成される吐出空間S1が、外部空間S2から隔離された封止状態となる(図7参照)。
ステップ2の後、パージ制御部144が、バルブ87を制御して、閉から開にする。このとき、メンテナンス制御部145が、バルブ59を制御して、開から閉にする(ステップ3:F3)。これにより、チューブ57において、空気の流通が遮断される(すなわち、流路抵抗が高くなる)。一方、インク帰還管83において、インクの流通が可能となる。
ステップ3の後、メンテナンス制御部145が、ポンプ56の駆動原点を出すように、ポンプ56を制御する。このとき、パージ制御部144も、パージポンプ86の駆動原点を出すように、パージポンプ86を制御する(ステップ4:F4)。ステップ4において各ポンプ56,86の原点出しが行われた後、パージ制御部144及びメンテナンス制御部145は、ポンプ56,86を同時に駆動する(ステップ5:F5)。これにより、ポンプ56,86のダイヤフラムの位相が揃い、ポンプ56による加湿空気供給及びパージポンプ86によるインク供給時の脈動が揃う。このため、気泡パージ動作における内部流路に生じる圧力(インクメニスカスのインク側の圧力)と吐出空間S1に生じる圧力(インクメニスカスの気体側の圧力)との圧力差が安定する。
変形例として、パージポンプ86の駆動開始以降に、両ポンプ56,86のダイヤフラムの位相が揃うように、ポンプ56の駆動を開始してもよい。こうすれば、気泡パージ動作の際に、吐出空間S1内よりも先に内部流路(インク流入流路72及び排気流路73)に正圧が生じる。このため、吐出空間S1の空気が吐出口108から侵入するのを防ぐことが可能となる。
また、ポンプ56、86の駆動によって、タンク54内の加湿空気が供給口51aから吐出空間S1に強制的に供給され(加湿動作)、サブタンク80のインクがインク流入流路72に強制的に供給される。バルブ59は閉であるため、吐出空間S1内の圧力が大気圧以上に上昇する。このとき、吐出空間S1内に生じる圧力(インクメニスカスの気体側の圧力)と、インク流入流路72内に生じる圧力(インクメニスカスのインク側の圧力)との圧力差がインクメニスカス耐圧以下となるように、ポンプ56がHIモードで駆動されている。なお、パージポンプ86はLOモードで駆動され、バルブ87が開になっている。
このように、インクメニスカスにおける圧力差がインクメニスカス耐圧以下となっているため、インクが、インク流出流路75に流れ込むことなく、排気流路73及びインク帰還管83を順に通過してサブタンク80に帰還する。このインク循環におけるインク流入流路内に生じる圧力は、インクメニスカスの気体側が大気圧のときにおいて当該インクメニスカスを破壊する圧力となっている。このような高い圧力を保ったまま、このインク循環が行われることによって、循環経路のうちパージポンプ86からサブタンク80に至るまでの流路内に滞留している気泡などの異物、特にフィルタ75a上に滞留している気泡などの異物が、短時間に効率的にサブタンク80にトラップされる(気泡パージ)。なお、気泡パージ動作におけるインク循環を行っているときは、通常印刷時と比較してインク流入流路72及び排気流路73内のインク圧が高くなるため、樹脂フィルム76が規制部材77に密着し、樹脂フィルム78が規制部材79に密着している。
ポンプ56,86を所定時間だけ駆動した後、メンテナンス制御部145が、ポンプ56を停止する(ステップ6:F6)。そして、ステップ6の後、パージ制御部44が、パージポンプ86の駆動をLOモードからHIモードに切り替えるとともに、バルブ87を開から閉にする。このとき、メンテナンス制御部145が、バルブ59を閉から開にして吐出空間S1内の圧力を大気圧にする(ステップ7:F7)。
これにより、インク送出量が増加するとともに、排気流路73を流れていたインクが急激に塞き止められることで、排気流路73内及びインク流入流路72内のインク圧力が急上昇する。一方、吐出空間S1内の圧力は急激に低下する。このため、インクメニスカスのインク側の圧力が気体側よりも遥かに大きくなって、インクメニスカス耐圧を大幅に超える。こうして、インク流入流路72に供給されたインクの全量が、インク流出流路75に流れ込み、すべての吐出口108から排出される(吐出口パージ)。排出されたインクは、搬送ベルト8の表面8a上にて受け止められる。また、吐出口パージの際に、キャップ40によって吐出空間S1内が封止されているので、吐出されたインクが周囲に飛び散らない。
本実施形態においては、気泡パージ動作から吐出口パージ動作に移行するため、予めインク流入流路72及び排気流路73内の圧力を上昇させた状態(すなわち、インクメニスカスの気体側が大気圧のときにおいて当該インクメニスカスを破壊する圧力にまで高めた状態)で吐出口パージ動作を行うことができる。このため、インク流入流路72及び排気流路73内の圧力を瞬時に所望圧力(インクメニスカス耐圧を大幅に超える圧力)にすることが可能となって、吐出口パージ開始時からすべての吐出口108に高い圧力が付与されてインクが排出される。このとき、フィルタ75aから吐出口108までが、速やかに新鮮なインクで置換されるとともに、インク流出流路75以降に滞留していた異物(気泡含む)や増粘インクが、短時間で排出される。この間、無駄に消費されるインク量は、少なくて済む。
本実施形態においては、気泡パージ動作から吐出口パージ動作に移行する際に、パージポンプ86の駆動モードの切り替えと、バルブ87の切り替えとを同時に行っているが、バルブ87を先に切り替えてからポンプ86の駆動モードを切り替えてもよい。この変形例においても、上述と同様に、排気流路73内及びインク流入流路72内のインク圧力を急激に上昇させて、吐出口108から異物を含んだインクを短時間で排出させることができる。
パージ制御部144は、所定量のインクが吐出口108から排出されると(すなわち、所定時間だけパージポンプ86をHIモードで駆動すると)、パージポンプ86の駆動を停止する(ステップ8:F8)。このステップ8の後、メンテナンス制御部145が、昇降モータ44を制御して、各キャップ40の先端41a1を表面8aから離隔(当接位置から離隔位置に移動)させる(ステップ9:F9)。これにより、吐出空間S1が外部空間S2に開放された非封止状態となる(図6参照)。以上のパージ動作は、これを必要とするヘッド1に対して施されれば良く、常に全てのヘッド1に施されるものではない。
ステップ9の後、メンテナンス制御部145が、図示しない昇降機構を制御して、キャリッジ4を画像形成に適した印字位置からワイパによる払拭動作に適した払拭位置に移動する。これにより、搬送ベルト8の表面8aと吐出面2aとの間に、ワイピングに必要な空間が形成される。続いて、メンテナンス制御部145が、図示しない払拭機構を制御して、ワイパを吐出面2aに接触させつつ吐出面2aに沿って主走査方向に移動させる(ステップ10:F10)。これにより、吐出口パージ動作によって吐出面2aに付着した余分なインクが除去されると共に、吐出口108に形成されるメニスカスが整えられる(クリーニング動作)。
ステップ10の後、メンテナンス制御部145が、図示しない昇降機構を制御して、キャリッジ4を払拭位置から印字位置に戻す。さらにメンテナンス制御部145が、搬送ユニット20の搬送モータを制御して、搬送ベルト8を数回転だけ走行させる(ステップ11:F11)。これにより、表面8aに付着したインクがインク除去部材22によって除去される(インク除去動作)。こうして、パージ動作が終了し、印刷待機状態となる。
次に、図11を参照しつつ、制御装置16が実行するインクの増粘防止動作(キャッピング及び加湿メンテナンス)の制御内容について説明する。
制御装置1pは、図11に示すように、先ず、増粘防止指令の受信の有無を判断する(G1)。増粘防止指令の受信前、キャリッジ4は印字位置にあり、キャップ40は離隔位置にある。また、ポンプ56は停止しており、バルブ59が開になっている。また、搬送ユニット20も停止している。
制御装置16は、増粘防止指令を受信すると(G1:YES)、まずはキャッピングを行う。つまり、メンテナンス制御部145が、昇降モータ44を駆動し、各キャップ40の先端41a1を表面8aに当接(離隔位置から当接位置に移動)させる(ステップ2:G2)。これにより、吐出空間S1が外部空間S2から隔離された封止状態となる。
ステップ2の後、メンテナンス制御部145は、ポンプ56をLOモードで駆動して、タンク54内の加湿空気を吐出空間S1に供給し、吐出空間S1内の空気を排出する加湿メンテナンスを所定時間だけ行う(ステップ3:G3)。これにより、加湿空気がタンク54から吐出空間S1へ、吐出空間S1からタンク54へと循環し、吐出空間S1内の空気の湿度が所望湿度に調整される。これにより、吐出口108内のインクの増粘を抑制することが可能となる。
こうして、キャッピング及び加湿メンテナンスが終了する。この後、外部装置から記録指令などの信号を受信すると、制御装置1pは、昇降モータ44を駆動し、キャップ40の先端41a1を表面8aから離隔(当接位置から離隔位置に移動)させる。これにより、吐出空間S1が外部空間S2に開放された非封止状態となり、上述したように記録動作が制御装置16の制御によって行われる。
以上のように、本実施形態のインクジェットプリンタ101によると、気泡パージ動作を行う際に、インクメニスカスを挟んだインク側の圧力と気体側の圧力との間の圧力差がインクメニスカスの耐圧以下となる圧力が吐出空間S1に生じているため、内部流路(インク流入流路72及び排気流路73)内の気泡を効果的に除去するためにインクの流量を増やし内部流路に生じる圧力が上昇しても、インクメニスカスが破れて吐出口108からインクが漏れ出すのを抑制することが可能となる。つまり、吐出口108からの廃液を増やすことなく、気泡パージ動作による気泡の排出性を向上させることが可能となる。
また、気泡パージ動作を行う際に、ポンプ56をHIモードで駆動し、加湿メンテナンスにおけるよりも加湿空気送出量を多くしている。このようにポンプ56の駆動条件を変更するだけで、吐出空間S1内の圧力を容易に高くできる。
また、気泡パージ動作を行う際に、バルブ59を制御してチューブ57における流路抵抗を大きくしているため、インクメニスカスを挟んだ両側の圧力のつり合いを正確に取ることができる。また、気泡パージ動作を行う際に、バルブ59は閉じられている。これにより、吐出空間S1内の圧力を簡単に上昇させることが可能となる。
また、インク帰還管83がサブタンク80と連通しているため、気泡パージ動作において、インク帰還管83に移送されてきたインクがサブタンク80に戻される(インク循環)。したがって、廃棄するインク量を効果的に減少させることができる。変形例として、インク帰還管83を廃棄タンク(不図示)に連通させてもよいし、サブタンク80と廃棄タンクとに選択的に切換可能な構成としてもよい。例えば、前段のインク循環では、インク帰還管83を廃棄タンクに連通させ、異物等を含むインクは廃棄する。後段のインク循環では、サブタンク80に連通させ、インクをサブタンク80に戻す。少なくとも後段のインク循環動作では、清浄なインクがサブタンク80に戻ることになる。これによって、サブタンク80内における、異物等の蓄積を抑制できる。
また、チューブ57がタンク54と連通しているため、気泡パージ動作の加湿動作において、タンク54の加湿空気が吐出空間S1へ、吐出空間S1の空気がタンク54へと循環する構成となる。変形例として、チューブ57が大気に開放されていてもよいし、タンク54と大気開放とに選択的に切換可能な構成としてもよい。
上述の実施形態においては、気泡パージ動作においてリザーバユニット71の内部流路に正圧を生じさせ、吐出空間S1内に正圧を生じさせていたが、これら内部流路及び吐出空間S1内に負圧を生じさせてもよい。つまり、図12に示すように、流入口72aとサブタンク80とをインク供給管82で直接接続し、インク帰還管83にはバルブ87の代わりにパージポンプ86を設ける。そして、図13に示すように、チューブ57にバルブ59を設けずにポンプ56を設ける。この構成において、パージポンプ86を駆動すると、インク帰還管83及び内部流路(インク流入流路72及び排気流路73)が負圧になり、サブタンク80内のインクがインク供給管82を通って内部流路に供給される。一方、ポンプ56を駆動すると、チューブ57及び吐出空間S1内が負圧になり、タンク54内の加湿空気がチューブ55を通って吐出空間S1に供給される。このとき、両ポンプ56,86は、同じ位相で駆動される。
気泡パージ動作において、上述の実施形態と同様に、制御装置がこれらポンプ56,86を駆動することで、吐出空間S1内に生じる負圧(インクメニスカスの気体側の圧力)と、インク流入流路72内に生じる負圧(インクメニスカスのインク側の圧力)との圧力差がインクメニスカス耐圧以下となる。つまり、パージ動作の際に、吐出空間S1にインクメニスカスの耐圧以下で内部流路の圧力とつり合う負圧が生じる構成となる。これにより、高い圧力(負圧)を保ったままインク循環が行われ、循環経路の流路内に滞留している気泡などの異物が、インクと共に排気流路73及びインク帰還管83を順に通過してサブタンク80にトラップされる。このような変形例においても、上述の実施形態と同様に、気泡パージ動作において、インクメニスカスが破れて吐出口108からインクが漏れ出すのを抑制することが可能となり、吐出口108からの廃液を増やすことなく、気泡パージ動作の気泡排出性を向上させることが可能となる。なお、上述の実施形態と同様な構成においては、同じ効果を得ることができる。
また、変形例として、ポンプ56の駆動開始以降に、両ポンプ56,86のダイヤフラムの位相が揃うように、パージポンプ86の駆動を開始してもよい。こうすれば、気泡パージ動作の際に、内部流路(インク流入流路72及び排気流路73)よりも先に吐出空間S1内に負圧が生じる。このため、吐出空間S1の空気が吐出口108から侵入するのを防ぐことが可能となる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態においては、気泡パージ動作から吐出口パージ動作へと連続して移行しているが、気泡パージ動作と吐出口パージ動作とが別々(不連続)に行われてもよい。つまり、気泡パージ動作又は吐出口パージ動作だけが単独で行われてもよい。気泡パージ動作に続いてフラッシング動作が行われてもよい。
また、吐出空間S1を封止状態と非封止状態とに取り得るキャップ手段として、吐出面2aと対向する底部及びこの底部の周縁に立設された環状部を有するキャップと、環状部の先端が吐出面2aと当接する位置及び吐出面2aから離隔した位置にキャップを移動させる移動機構とを含んで構成されていてもよい。この場合、キャップの底部に加湿空気を供給する供給口と排出口とが設けられていてもよい。
また、上述の実施形態においては、気泡パージ動作及び吐出口パージ動作において、パージポンプ86の駆動モードを変化させているが、変化させなくてもよい。この場合、バルブ87の開閉だけで、リザーバユニット71の内部流路(インク流入流路72及び排気流路73)の圧力を変化させてもよい。さらに、気泡パージで内部流路に生じる圧力が、インクメニスカスの気体側を大気圧にすると当該インクメニスカスを破壊する圧力となっておれば、単に吐出空間S1内の圧力を大気圧にまで下げればよい。
また、気泡パージにおける加湿動作および増粘防止動作における加湿動作においても、ポンプ56の駆動モードを変化させなくてもよい。この場合、バルブ59の開閉だけで、吐出空間S1内の圧力を変化させればよい。また、バルブ59,87が、設けられていなくてもよい。この場合、パージポンプ86によるインク送出量を、気泡パージ動作と吐出口パージ動作とで変化させ、内部流路に生じる圧力を変えればよい。ポンプ56による加湿空気送出量を、気泡パージにおける加湿動作および増粘防止動作における加湿動作で異ならせ、吐出空間S1内に生じる圧力を変化させればよい。このとき、吐出空間S1内に生じる圧力とインクメニスカスのインク側の圧力とをつり合わせばよい。また、両ポンプ56,86は、ダイヤフラムポンプ以外の容積型ポンプであってもよい。
本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能であり、さらに、インク以外の液体を吐出させることで記録を行う液体吐出装置にも適用可能である。記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な様々な媒体であってよい。さらに、本発明は、インクの吐出方式にかかわらず適用できる。例えば、本実施の形態では、圧電素子を用いたが、抵抗加熱方式でも、静電容量方式でもよい。