JP2012171058A - 安定限界線図作成方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】S1で初期回転速度を設定し、S2で加工をスタートして加工データを取得する。加工データの収集が終了したら、S5で、びびり周波数及び位相差を用いてモーダルパラメータである機械系の固有振動数及び減衰比を同定する。同定したモーダルパラメータを用いて位相差−限界切込量の関係式が得られるので、この関係式と、S2で得られた加工データを積分した振動振幅分布とから、S6で仮の安定限界線図を作成し、S7で、補償パラメータであるコンプライアンス比及び位相オフセット量を同定する。そして、S8で、補償パラメータに基づいてS6で作成した仮の安定限界線図を修正し、S9で、最終的に得られた安定限界線図を表示装置によってオペレータに提示する。
【選択図】図4
Description
そこで、非特許文献1には、系のモーダルパラメータに基づいて、びびり振動を生じさせることなく安定に加工を行うことができる限界切込量を示す安定限界線図を作成することで、びびり振動が生じにくい加工条件を選択できることが示されている。
この安定限界線図の一例を図10に示す。これは、主軸回転速度に対してびびり振動を生じない軸方向の限界切込量(波形曲線)を表すもので、限界切込量の上側が不安定領域、下側が安定領域となる。ここから、切込量が同じでも、回転速度によっては限界切込量を超え、不安定領域に入ってびびり振動が生じたり、限界切込量までに余裕があってびびり振動が生じにくくなったりすることがわかる。よって、切込量が限界切込量を超えてびびり振動を発生させている場合は、この安定限界線図に基づいて主軸回転速度を変更すれば、安定領域に移行させることができる。
また、非特許文献2で述べられているように、加工データからモーダルパラメータを同定する手法を用いたとしても、安定限界線図には工具の形状や径方向の切込量など他の要因も影響するため、実際のびびりの分布とずれが生じる場合がある。さらに、非特許文献2の方法では、軸方向の切込量を順次変えて切削を行う必要がある。
一方、実加工により安定限界線図を得る場合には、限界切込量を知るために切込量を順次変化させて安定/不安定領域の境界を探る必要があり、これを複数の主軸回転速度に対して行わなければならないため、多くの手間と時間とが掛かってしまう。
設定された初期回転速度で加工を行い、前記主軸の振動に係る加速度及びびびり周波数を含む加工データを取得する加工データ取得ステップと、取得した前記加工データに基づいて工具又はワークのモーダルパラメータを求めるモーダルパラメータ取得ステップと、取得した前記加工データ及びモーダルパラメータから、下記の式の小数部分である位相差と限界切込量及び加速度との関係を得て、前記位相差を修正する補償パラメータを求める補償パラメータ取得ステップと、取得した前記モーダルパラメータ及び補償パラメータに基づいて前記安定限界線図を作成する作図ステップと、を実行することを特徴とするものである。
式:60×びびり周波数/(工具刃数×主軸回転速度)
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、主軸に装着した工具又はワークを回転させて加工を行う工作機械に対し、前記主軸の回転速度とびびり振動が生じない前記工具の限界切込量との関係を表す安定限界線図を作成する装置であって、
設定された初期回転速度で加工を行い、前記主軸の振動に係る加速度及びびびり周波数を含む加工データを取得する加工データ取得手段と、取得した前記加工データに基づいて工具又はワークのモーダルパラメータを求めるモーダルパラメータ取得手段と、取得した前記加工データ及びモーダルパラメータから、下記の式の小数部分である位相差と限界切込量及び加速度との関係を得て、前記位相差を修正する補償パラメータを求める補償パラメータ取得手段と、取得した前記モーダルパラメータ及び補償パラメータに基づいて前記安定限界線図を作成する作図手段と、前記安定限界線図を表示する表示手段と、を備えることを特徴とするものである。
式:60×びびり周波数/(工具刃数×主軸回転速度)
請求項2に記載の発明によれば、上記効果に加えて、安定限界線図の表示によって安定加工領域の選択がより簡単に行える。
図1は、工作機械の一例である立形マシニングセンタの概略構成図で、立形マシニングセンタ1は、上方に設けた主軸頭2にC軸回りで回転自在な主軸3を設け、その主軸3に取り付けた工具4によって、下方の加工テーブル5上にセットされたワーク6を加工する周知の構成で、NC装置10が主軸3の回転を制御すると共に、図示しない自動工具交換装置によって工具4を自動交換可能となっている。
これらの振動センサ7a〜7b、FFT演算装置11及び主軸制御部12が加工データ取得手段となる。
その他、図示しないが、NC装置10には、工具4の刃数等を入力する入力装置や、これらを含む加工データやパラメータ等を記憶する記憶装置が設けられている。
まず、S1で任意の回転速度を初期回転速度として設定し、S2で加工をスタートし、加工データを取得する(加工データ取得ステップ)。
S3で、得られた加工データを解析し、同定に十分な加工データが収集できたか判別する。この判別で加工データが不十分な場合、S4で別の加工条件を加工条件決定手段14にて再設定し、S2で加工を続行する。
そこで、併せてS7では、補償パラメータ同定手段17において、このズレを補償する位相オフセット量を同定し(補償パラメータ取得ステップ)、S8で、作図手段18が、S6で作成した仮の安定限界線図を修正する(作図ステップ)。これにより、実加工結果に即した安定限界線図が得られる。そして、S9で、最終的に得られた安定限界線図をモニタ等の表示装置19に表示してオペレータに提示することで(表示ステップ)、オペレータは任意の安定領域を選択して加工を行うことが可能となる。
本形態では、図5のように加速度分布と位相差−限界切込量の形状からコンプライアンス比及び位相オフセット量を同定するため、各モードのびびりについてそれぞれ最低3点はデータが必要となる。そこで、S1,2においては、以下の式(2)を用いて、位相差が初期条件と異なる初期回転速度を2点以上設定して加工データを取得する。また、びびり周波数は各モードの固有振動数周辺に分布することから、加工データ収集中にびびり周波数が大きく変化した場合は別のモードのびびりに移行したと判断でき(S3でNO)、この場合はこの新しいモードについても3点以上の加工データを取得するようにS4において加工条件を再計算する。
先に提示した非特許文献1によると、加工条件で決まる係数行列をA0、系の伝達関数をGとしたとき、びびりが生じる臨界条件は次式(3)で表される。ここで、F0は切削力ベクトル、alimは限界切込量、Ktは比切削抵抗、ωCはびびり周波数、Tは切刃通過周期、iは虚数単位である。
式(8)の位相差が実測値と一致するようにパラメータ同定を行うと、以下の表1の結果が得られる。
ここで、びびりの振動振幅と切込量とは線形関係にあると考えられるので、限界切込量とびびり振動振幅の逆数(1/振動振幅)とは相似形状の分布となる。一方でこの限界切込量の分布はコンプライアンス及び減衰比で決定されるが、このうち減衰比は既に得られているため、S7では、限界切込量の分布形状が実際の振動振幅の逆数の分布と一致するようにコンプライアンス値を選べば良いことになる。ここでは形状を一致させているだけなので求めた値そのものには意味が無いが、複数のモードでびびりが生じている場合、ここで求めた値の比が各モードのコンプライアンス比に相当する。このコンプライアンス比を用いることで、複数のモードでのびびりが混在する場合でも正確に安定加工領域を求めることができる。
また、図9の安定限界線図から、図示した範囲だけでも多くの安定域があることがわかる。従って、オペレータは安定限界線図から任意の安定加工領域を選択してびびりを生じさせずに加工を行うことができる。
また、上記形態では、工作機械のNC装置を利用して安定限界線図作成装置を構成しているが、加工データをNC装置に接続されたネットワークを介して、工作機械外部に設けられて入力手段やモニタを備えたコンピュータに送信し、外部コンピュータで安定限界線図を作成させるようにしてもよい。
その他、工作機械としては立形マシニングセンタに限らず、主軸に装着したワークを回転させて加工を行うNC旋盤等の他の工作機械であっても本発明は適用可能である。
Claims (3)
- 主軸に装着した工具又はワークを回転させて加工を行う工作機械に対し、前記主軸の回転速度とびびり振動が生じない前記工具の限界切込量との関係を表す安定限界線図を作成する方法であって、
設定された初期回転速度で加工を行い、前記主軸の振動に係る加速度及びびびり周波数を含む加工データを取得する加工データ取得ステップと、
取得した前記加工データに基づいて工具又はワークのモーダルパラメータを求めるモーダルパラメータ取得ステップと、
取得した前記加工データ及びモーダルパラメータから、下記の式の小数部分である位相差と限界切込量及び加速度との関係を得て、前記位相差を修正する補償パラメータを求める補償パラメータ取得ステップと、
取得した前記モーダルパラメータ及び補償パラメータに基づいて前記安定限界線図を作成する作図ステップと、
を実行することを特徴とする安定限界線図作成方法。
式:60×びびり周波数/(工具刃数×主軸回転速度) - 前記安定限界線図を表示手段によって表示する表示ステップをさらに実行することを特徴とする請求項1に記載の安定限界線図作成方法。
- 主軸に装着した工具又はワークを回転させて加工を行う工作機械に対し、前記主軸の回転速度とびびり振動が生じない前記工具の限界切込量との関係を表す安定限界線図を作成する装置であって、
設定された初期回転速度で加工を行い、前記主軸の振動に係る加速度及びびびり周波数を含む加工データを取得する加工データ取得手段と、
取得した前記加工データに基づいて工具又はワークのモーダルパラメータを求めるモーダルパラメータ取得手段と、
取得した前記加工データ及びモーダルパラメータから、下記の式の小数部分である位相差と限界切込量及び加速度との関係を得て、前記位相差を修正する補償パラメータを求める補償パラメータ取得手段と、
取得した前記モーダルパラメータ及び補償パラメータに基づいて前記安定限界線図を作成する作図手段と、
前記安定限界線図を表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする安定限界線図作成装置。
式:60×びびり周波数/(工具刃数×主軸回転速度)
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