JP2012170372A - 容器詰麦茶飲料 - Google Patents

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Abstract

【課題】麦特有の甘味と香ばしさを備えており、しかも冷めた状態で飲用しても甘味を感じることができる、長期保存に適した流通可能な容器詰麦茶飲料を提供する。
【解決手段】本発明の容器詰麦茶飲料は、マルトース量をMa(mg/L)、スクロース量をSc(mg/L)、デンプン量をSt(mg/100mL)、βグルカン量をbg(mg/100mL)、BrixをBx(%)としたとき、以下の(1)〜(3)の式を満たすことを特徴とする。
(1)0.017< Ma/St <0.040
(2)5.0 < (Sc+Ma)/Bx <14.0
(3)3.0 ≦ bg/Bx < 6.0
【選択図】なし

Description

本発明は、焙煎麦から抽出された麦茶抽出液を主成分とする麦茶飲料であって、これをプラスチックボトルや缶などに充填した容器詰麦茶飲料に関する。
麦茶飲料の香味に関しては、昔ながらの麦茶の香りや旨みを高めるため、或いは消費者の嗜好に合わせるためなど、様々な観点から発明が提案されている。
例えば、特許文献1には、麦茶飲料の全量中に、グルコースが0.09重量%〜0.9重量%の範囲内で含有され、さらにフラクトースが0.010重量%〜0.4重量%の範囲内で含有させることにより、甘みがあり、その甘みにより引き出された麦本来の香ばしさと旨みを感じることができる麦茶飲料にすることが開示されている。
特許文献2には、大麦芽の焙煎物を含有させた、甘味感のある香りが強い麦茶が開示されている。
特許文献3には、発芽の後、乾燥処理を施した水分8%以下の麦芽原料を、水分が30〜60%になるまで吸収させた後、焙煎処理を施すことにより、麦芽本来の甘味、コク味、旨味を充分味わうことができる風味に優れた麦芽茶の製造方法が開示されている。
特許文献4には、7mm篩を通過するが0.5mm篩を通過しない粒径を有する多孔性粒子の共存下において、殻付き大麦を300℃〜350℃で焙煎することで、殻がはじけた大麦粒と殻がはじけてない大麦粒との数比率を4:6〜6:4とし、その後、焙煎大麦を多孔性粒子と分離してから、95℃以上の熱水で抽出処理を行うことにより、大麦の持つ本来の優れた香味(香ばしい香りやほのかな甘みなど)を遺憾なく引き出すことができる麦茶の製造方法が開示されている。
特許文献5には、褐藻類由来のフコイダンを含有させることにより、従来の麦茶飲料よりもえぐ味が少なく、香味の高い麦茶飲料にすることが開示されている。
また、特許文献6には、原料大麦にアミノ酸類の1種又は2種以上を原料大麦に対して0.01〜2重量%程度直接散布或いはこれらを懸濁液又は水溶液にして含浸せしめた後、品温190〜280℃程度で焙焼させることにより、麦茶の香味を高めることができる麦茶の製造方法が開示されている。
特開2004−49145号公報 特開平6−197744号公報 特開平8−9885号公報 特開2006−42742号公報 特開2003−102450号公報 特公昭63−14942号公報
市販される容器詰麦茶飲料が普及するにつれて、消費者の嗜好も、飲用されるシチュエーションも多様化して来ており、特有の味と香りを備えた個性ある容器詰麦茶飲料が求められている。
しかし、容器詰麦茶飲料は、工場で大量生産されるため極力短時間で抽出されるものであり、昔のようにやかんなどで長時間煮出して抽出した麦茶などと比べて薄味であり、香り立ちなどが劣るものであった。味のなかでも、甘味が感じられず、さっぱりとし過ぎているものであった。
甘味は、糖類などを加えれば増すものであるが後味に残りやすく、また、冷めた状態では濃度感を感じにくいものであった。
本発明の容器詰麦茶飲料は、できるだけ添加物を用いずに成分を調整することにより、麦特有の甘味と香ばしさを備えており、しかも冷めた状態で飲用しても甘味を感じることができる、長期保存に適した流通可能な容器詰麦茶飲料を提供せんとするものである。
本発明の容器詰麦茶飲料は、マルトース量をMa(mg/L)、スクロース量をSc(mg/L)、デンプン量をSt(mg/100mL)、βグルカン量をbg(mg/100mL)、BrixをBx(%)としたとき、以下の(1)〜(3)の式を満たすことを特徴とする。
(1)0.017< Ma/St <0.040
(2)5.0 < (Sc+Ma)/Bx <14.0
(3)3.0 ≦ bg/Bx < 6.0
本発明の容器詰麦茶飲料は、マルトース及びスクロースの二糖の濃度、デンプン及びβグルカンの多糖の濃度、Brixを調整することにより、麦特有の甘味と香ばしさを備えており、しかも冷めた状態で飲用しても甘味を感じることができる、長期保存に適した流通可能な容器詰麦茶飲料を得ることができた。
以下、本発明の容器詰麦茶飲料の実施形態を説明する。但し、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。
本発明の容器詰麦茶飲料(以下、「本容器詰麦茶飲料」という。)は、マルトース量をMa(mg/L)、スクロース量をSc(mg/L)、デンプン量をSt(mg/100mL)、βグルカン量をbg(mg/100mL)、BrixをBx(%)としたとき、以下の(1)〜(3)の式を満たすことを特徴とする。
(1)0.017< Ma/St <0.040
(2)5.0 < (Sc+Ma)/Bx <14.0
(3)3.0 ≦ bg/Bx <6.0
本発明において「麦茶飲料」とは、大麦(二条、四条、六条の各皮麦、裸麦などの原料麦)や、水浸漬や酵素加工による加工麦、あるいはβグルカン高含有麦やアミロースフリー麦、低ポリフェノール麦のような改良種大麦を、熱風焙煎、砂炒焙煎、遠赤外線焙煎、開放釜焙煎、回転ドラム式焙煎、媒体焙煎などの焙煎処理をしたものを原料として、抽出、加工された飲料を意味する。なお、βグルカン高含有麦は、βグルカンを多く含む麦であり、例えば、CDC Fiber,CDC Alamo、Pronghorn、Salute、BG006、BG012、ビューファイバーなどの品種を挙げることができ、商標名としては「BGバーレイ」などを挙げることができる。
なお、焙煎麦としては、水に浸漬させて乾燥させた後、焙煎したもの、たとえば麦芽などを適宜用いることもできる。これは、マルトース及びスクロースを多く含むものである。
麦茶飲料は、原料となる原料麦の他に、茶樹(Camellia sinensis var.sinensisやCamellia sinensis var.assamica、またはこれらの雑種)の葉や茎から製造された茶葉、玄米、ハト麦、とうもろこし、アマランサス、キヌア、ナンバンキビ、モズク、甘草、ハス、シソ、マツ、オオバコ、ローズマリー、桑、ギムネマ、ケツメイシ、大豆、昆布、霊芝、熊笹、柿、ゴマ、紅花、アシタバ、陳皮、グァバ、アロエ、ギムネマ、杜仲、ドクダミ、チコリー、月見草、ビワ等の各種植物の葉、茎、根等を併用して得られるものであってもよい。
麦茶飲料を調製する際の原料麦の抽出条件は、原料麦の種類、抽出機の種類、最終製品の形態等により適宜選択されるものであるが、例えば、抽出液温は、50〜100℃が好ましく、80〜99℃がより好ましい。また、抽出時間は、1〜90分が好ましく、30〜60分がより好ましい。抽出水としては、例えば、天然水、水道水、蒸留水、海洋深層水などを挙げることができるが、これに限定されるわけではない。また、抽出時の焙煎麦の形態は、特に限定するものではなく、例えば、ホール(丸粒)、引き割などの形態を挙げることができる。
抽出水量は、原料麦に対して3〜50重量倍量が好ましい。原料麦抽出液は、以上のような条件で原料麦を抽出した後、原料麦浸出液をカートリッジフィルター、ネル濾布、濾過板、濾紙、濾過助剤を併用したフィルタープレス等の濾過法や遠心分離法によって固液分離し、原料麦や粒子を除去して得ることができる。
得られた原料麦抽出液は、適宜濃度調整して調合液とし、これを単独で、或いは複数を混合して麦茶飲料として製品化される。
本容器詰麦茶飲料は、マルトース量をMa(mg/L)、スクロース量をSc(mg/L)、デンプン量をSt(mg/100mL)、βグルカン量をbg(mg/100ml)、BrixをBx(%)としたとき、以下の(1)〜(3)の式を満たすように調整することにより製造することができる。
(1)0.017< Ma/St <0.040
(2)5.0 < (Sc+Ma)/Bx <14.0
(3)3.0 ≦ bg/Bx < 6.0
また、この際、所望する組成の麦調合液を容易に得るために麦抽出物を添加してもよい。ここで「麦抽出物」とは、麦茶を熱水、含水有機溶媒、有機溶媒、高温水蒸気などにより抽出したものであり、市販品を用いることもできる。また、麦茶調合液には、麦茶本来の甘味の感じを失わない限りにおいて、必要に応じて、アスコルビン酸やアスコルビン酸ナトリウム等の酸化防止剤、香料、炭酸水素ナトリウム等のpH調整剤、乳化剤、保存料、甘味料、着色料、増粘安定剤、調味料、強化剤等の添加剤を単独又は組み合わせて配合することもできる。また、調合液のpH設定は、25℃換算値で4.0〜8.5が好ましく、4.5〜8.0がより好ましく、5.0〜8.0がさらに好ましい。さらには、海洋深層水を添加してもよい。
また、本発明において「容器詰」とは、金属、ガラス、プラスチック、金属やプラスチックフィルムと複合された紙容器等に対象物が充填、密封されてなる状態を意味する。上記のようにして調製された麦茶飲料を充填、密封するための容器として、透明なガラス瓶、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、多層成形容器等の透明プラスチック容器を使用することができる。
本容器詰麦茶飲料は、必要に応じて製造工程のいずれかの段階で殺菌を行って製造される。殺菌の条件は食品衛生法に定められた条件と同等の効果が得られる方法を選択すればよいが、例えば、容器として耐熱容器を使用する場合にはレトルト殺菌を行えばよい。また、容器として非耐熱性容器を用いる場合、本発明の容器詰麦茶飲料は、例えば、茶調合液を予めプレート式熱交換機等で高温短時間殺菌後、所定温度まで冷却し、熱時充填するか低温、たとえば10〜50℃で無菌充填を行うことで製造することができる。
本発明の容器詰麦茶飲料は、マルトース含量、スクロース含量、デンプン含量、βグルカン含量及びBrixを所望の値とすることができる原料麦を用いて麦茶飲料を調整することにより製造することができるが、麦茶飲料のマルトース含量、スクロース含量、デンプン含量、βグルカン含量は、複数の焙煎麦やその浸出液を適宜ブレンドして麦茶飲料を調製することで調整することができる。例えば、麦茶飲料のマルトース、スクロース、デンプン、βグルカンの含量を多くしたい場合には、これらの含量が多い原料麦を使用麦量に占める割合を多くすればよい。また逆に、これらの成分を少なくしたい場合には、原料麦の焙煎条件を強くし、焙煎麦の抽出条件を弱くすればよい。Brixについては、焙煎麦の抽出条件等により調整すればよい。
また、麦茶飲料のマルトース含量、スクロース含量、デンプン含量、βグルカン含量及びBrixは、麦茶飲料を調製する際に各成分の含量を調整するための副原料を添加することで調整することもできるが、麦茶本来の香りの余韻の感じを失わないようにするために副原料の使用は極力控えるべきであり、可能であれば使用しないのが好ましい。
本容器詰麦茶飲料は、マルトース量Ma(mg/L)とデンプン量St(mg/100mL)の重量比率(Ma/St)が0.017よりも大きく且つ0.040よりも小さいものである。
マルトース量Maとデンプン量Stとの重量比率(Ma/St)が0.017以下であると、容器詰麦茶飲料の滋味がきわめて希薄となり、容器詰麦茶飲料としてはきわめて印象が弱く不適でなる。また、マルトース量Maとデンプン量Stの重量比率(Ma/St)が0.040以上であると、容器詰麦茶飲料が滋味が濃くなり、容器詰麦茶飲料としては爽快感に乏しくなる。
かかる観点から、デンプン量とマルトース量との重量比率(Ma/St)は、好ましくは0.017よりも大きく0.040よりも小さく、特に好ましくは0.020よりも大きく0.034よりも小さい範囲である。
本容器詰麦茶飲料は、スクロース量Sc及びマルトース量Maの合計値と、Brixの値Bxとの比率((Sc+Ma)/Bx)が5よりも大きく且つ14よりも小さいものである。
スクロース量Sc及びマルトース量Maの合計値と、Brixの値Bxとの比率((Sc+Ma)/Bx)が5以下であると、容器詰麦茶飲料の甘味が希薄となり容器詰麦茶飲料としては不適となる。また、スクロース量Sc及びマルトース量Maの合計値と、Brixの値Bxとの比率((Sc+Ma)/Bx)が15以上であると、容器詰麦茶飲料が甘味の強すぎる不自然なものとなり容器詰麦茶飲料としては不適となる。
かかる観点から、スクロース量Sc及びマルトース量Maの合計値と、Brixの値Bxとの比率((Sc+Ma)/Bx)は、好ましくは5.0よりも大きく14.0よりも小さく、特に好ましくは8.0よりも大きく13.0よりも小さい範囲である。
なお、Brixとは、焙煎麦から抽出して得られた麦由来の可溶性固形分をショ糖換算したときの値をいう。
本容器詰麦茶飲料は、βグルカン量bgとBrixも値Bxとの比率(bg/Bx)が3以上且つ6よりも小さいものである。
グルカン量bgとBrixの値Bxとの比率(bg/Bx)が3を下回ると、雑味が全面に現れてしまい味として好ましくない。また、グルカン量bgとBrixの値Bxとの比率(bg/Bx)が6以上であると、麦茶本来の香りが前面に出てくるもののその代わりに味の良さがやや薄れてくる傾向にある。
よって、麦茶本来の甘味の感じを保持するには、βグルカン量bgとBrixの値Bxとの比率(bg/Bx)は、3.0以上6.0よりも小さく、さらには4.0以上6.0よりも小さいのが好ましい。
本容器詰麦茶飲料は、デンプン量が5mg/100mL〜250mg/100mLであるのが好ましく、50mg/100mL〜200mg/100mLであるのがより好ましく、65mg/100mL〜150mg/100mLであるのがさらに好ましい。
この範囲であることにより、麦茶本来の甘味の感じを保持しながらも経時後のオリの発生を抑制することができる。
本容器詰麦茶飲料は、マルトース量が0.5mg/L〜5.0mg/Lであるのが好ましく、1.0mg/L〜4.0mg/Lであるのがより好ましく、1.0mg/L〜3.0mg/Lであるのがさらに好ましい。
本容器詰麦茶飲料は、スクロース量が0.001mg/L〜10.0mg/Lであるのが好ましく、0.001mg/L〜8.0mg/Lであるのがより好ましく、0.1mg/L〜4.0mg/Lであるのがさらに好ましい。
この前掲のマルトースとともに、糖類がこれらの範囲であることにより、適度な滋味を持つ麦茶が得られる。
本容器詰麦茶飲料は、βグルカン量が1.0mg/100mL〜10.0mg/100mLであるのが好ましく、1.0mg/100mL〜8.0mg/100mLであるのがより好ましく、1.5mg/100mL〜5.0mg/100mLであるのがさらに好ましい。
この範囲であることにより、さらに好適な味の余韻を有する麦茶が得られる。
本容器詰麦茶飲料は、Brixは、0.12%〜0.70%であるのが好ましく、0.2%〜0.60%であるのがより好ましく、0.25%〜0.60%であるのがさらに好ましい。
本容器詰麦茶飲料は、pHが20℃で5〜8であることが好ましく、5〜7であるのがより好ましく、6〜7であるのがさらに好ましい。
本容器詰麦茶飲料は、L値が70〜98であることが好ましく、75〜95であるのがより好ましく、80〜90であるのがさらに好ましい。
本容器詰麦茶飲料は、液中の溶存酸素量が5〜20(mg/L)であることが好ましく、7〜20であるのがより好ましく、10〜20であるのがさらに好ましい。
これにより、保管中に麦茶飲料と酸素が反応し、甘みが出てくる。
なお溶存酸素量は、Doメーター等と呼ばれる市販の溶存酸素計を用いて測定することができる。
本容器詰麦茶飲料は、工業的に生産される麦茶飲料を主に示し、これを充填する容器は、特に限定するものではなく、例えば、プラスチック製ボトル(所謂ペットボトル)、スチール、アルミなどの金属缶、ビン、紙容器などを用いることができ、特に、ペットボトルなどの透明容器等を好ましく用いることができる。
プラスチック製ボトルの場合は、25℃、湿度55%RHにおけるボトルの酸素透過量が0.01〜0.1(cc/Day/ボトル500mL)であるのが好ましく、0.015〜0.08がより好ましく、0.02〜0.06がさらに好ましい。
これにより、上述したように、保管中に麦茶飲料と酸素が反応し、甘みが出てくる。
同様の理由から、麦茶飲料を容器に充填する際には、常温で充填するのが好ましく、また、窒素を充填しない方が好ましい。さらには、本容器詰麦茶飲料の容器の口部と容器内の飲料の液面との間の空間(「ヘッドスペース」とも言う。)の酸素量が、内容液量あたり、0.0008〜0.008があるのが好ましく、0.0028〜0.0068であるのがより好ましく、0.004〜0.006であるのがさらに好ましい。
マルトース、スクロース、デンプン、βグルカンの各成分量の測定は、下記実施例で示す方法により測定することができる。また、Brix(%)に関しても、下記実施例で示す方法により測定することができる。
以下、本発明の実施例を説明する。但し、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
<焙煎麦の作製>
まず、以下の焙煎麦1〜8を作製した。なお、L値は日本電色工業(株)製の色差計(日本電色SE−2000)にて測定した。
(焙煎麦1)
カナダ産六条大麦に蒸気噴霧処理を施して含有水分量が約25重量%になるように調整し、回転ドラム式媒体焙煎窯に投入し、焙煎温度255℃で90秒間の一次焙煎を行った。その後、0.17L/分の割合で水をシャワー状に噴霧して品温が165℃になるように急冷し、焙煎温度を280℃で90秒間の二次焙煎を行った後、冷却装置のコンベアに移し、麦の品温が80〜140℃の温度域に47秒間滞留するように冷却ファン及びコンベアの速度を調整して緩慢冷却をし、焙煎麦1を製造した。この麦のL値は29.5であった。
(焙煎麦2)
オーストラリア産二条大麦を約24時間、室温にて水浸漬後、さらに24時間程度湿潤環境下において十分に吸水させた後、弱熱条件(75℃)にて乾燥した。これを再び室温にて12時間水浸漬し、余剰水分を除去後、引き続き、蒸気雰囲気下にて90℃以下で30分加熱した。これを乾燥後、排気温度205℃にて120kgを熱風焙煎機に投入し、5分後、品温164℃にて排出し、焙煎麦2を得た。この麦のL値は46であった。
(焙煎麦3)
オーストラリア産二条大麦を約48時間、室温にて水浸漬後、さらに24時間程度湿潤環境下において十分に吸水させたのち、弱熱条件(75℃)にて乾燥した。これを再び微温湯に6時間浸漬し、余剰水分を除去後、引き続き90℃以下の蒸気雰囲気下30分加熱した。これを乾燥後、排気温度205℃にて120kgを熱風焙煎機に投入し、5分後、品温164℃にて排出し、焙煎麦3を得た。この麦のL値は47であった。
(焙煎麦4)
オーストラリア産二条大麦を約36時間、室温にて水浸漬後、さらに24時間程度湿潤環境下において十分に吸水させたのち、弱熱条件(75℃)にて乾燥した。これを排気温度264℃にて150gを小型熱風焙煎機に投入し、3分後、品温190℃にて排出し、焙煎麦4を得た。この麦のL値は35であった。
(焙煎麦5)
カナダ産六条大麦150gを排気温度185℃にて小型熱風焙煎機に投入し、18分後、品温194℃にて排出し、焙煎麦5を得た。この麦のL値は34であった。
(焙煎麦6)
カナダ産六条大麦200gを排気温度180℃にて小型熱風焙煎機に投入し、13分後、品温195℃にて排出し、焙煎麦6を得た。この麦のL値は39であった。
(焙煎麦7)
カナダ産六条大麦200gを排気温度190℃にて小型熱風焙煎機に投入し、12分後、品温184℃にて排出し、焙煎麦7を得た。この麦のL値は46であった。
(焙煎麦8)
アメリカ産六条大麦(βグルカン高含有品種)を、連続式攪拌蒸機内に投入して蒸気流量40kg/h、蒸気噴霧時間12秒の蒸気噴霧処理後、回転ドラム式焙煎釜に投入し、焙煎温度256℃、90秒の一次焙煎を行なった後、引き続いて焙煎温度276℃、90秒の二次焙煎を行なった。その後、水冷却に続いて風力冷却を施し、焙煎麦8を得た。この麦のL値は32であった。
<抽出液の作製>
焙煎麦1〜8を、下記表1に示す1Lあたりの使用量(単位:g)の配合比、ならびに抽出条件で抽出操作を行った。得られた抽出原液をステンレスメッシュ(20メッシュ、80メッシュ、235メッシュ)で濾過し、25℃に冷却後、イオン交換水を用いて定容し、抽出液とした。なお、焙煎麦1〜8は、ホールの状態で抽出した。
Figure 2012170372
<麦茶飲料の作製>
抽出液1〜6を、以下の表2に示す割合で配合し、アスコルビン酸を300ppm添加した後、重曹を添加してpH6.3に調整し、イオン交換水を加えて全量を5000mlに調整し、この液を135℃、30秒のUHT殺菌の後、25℃に冷却し、ペットボトルに無菌環境で充填し、プラスチックキャップにて巻き締め、密封を行い、実施例1〜6および比較例1〜8の麦茶飲料を作製した。
上記方法で作製した麦茶飲料の溶存酸素量は15mg/L、充填に使用したペットボトルの酸素透過量は0.04cc/Day/ボトル500mL(25℃、55%RH)、ヘッドスペース中の酸素量は、液1mLあたり0.006mLであった。
Figure 2012170372
(分析)
実施例1〜6及び比較例1〜8の麦茶飲料の成分を測定し、各値を算出した。その結果を下記記表3に示す。なお、各成分の測定は以下のように行った。
Figure 2012170372
≪マルトース・スクロース≫
試料溶液100μLに、100ppmのラクト−ス水溶液を100μL、蒸留水を800μL加え分析用原液とした。分析用原液を、1mLのメタノールおよび蒸留水で洗浄した固層担体(BOND Elut−SAX、1mL,VARIAN社製)に通液した。最初の100μLは廃棄し、次いで得られる300μLを分析用検体とした。検量線用検体には、スクロース、マルトースおよびラクト−スの混合液を、各10ppmから1/2ずつの希釈で6点検量線となるように調整した原液を同様に処理したものを用いた。校正用検体にはラクトース10ppmとなるように調整した溶液を同様に処理したものを用いた。各検体はそれぞれ0.45μmカートリッジフィルターに通液した後、後述の機器・条件を用いてHPLC分析に供した。得られた結果は、校正用検体のラクト−ス値(L’)を各分析用検体のラクトース値(L)で除した補正係数k=(L’)/(L)を、各分析検体のグルコースおよびマルトース分析値に乗じて分析用原液の濃度を求め、さらに希釈率を乗じて試料溶液中の含量とした。
(分析条件)
サンプル注入量:25μL
流量:1.0mL/min
溶離液A:0.2M水酸化ナトリウム水溶液
溶離液B:1M酢酸ナトリウム水溶液
溶離液C:蒸留水
カラム温度30℃。
(分析機器)
HPLC装置の構成ユニットの型番は次の通り(全て日本ダイオネクス社製)。
ディテクター:統合アンペロメトリ検出器EC50A
オーブン:TCC−100
ポンプ:GP50
オートサンプラー:AS50
解析用ソフトウェア:CHROMELEON
カラム:CarboPac PA1(ガードカラム:径・4×長さ50mm,分離用カラム:径・4×長さ250mm)
(濃度勾配条件)
時間(溶離液A/溶離液B/溶離液C 各%)
0〜5分(5/0/95)
20分(60/0/40)
30分(80/0/20)
31〜40分(0/100/0)
41〜55分(5/0/95)
≪デンプン≫
試料溶液10gに対し、エタノールを10g加え、遠心分離(8000〜10000g、20分)処理を行い、上澄を廃棄する。残渣に再び蒸留水を適宜加え、3分間加熱糊化を行う。
これに、グルコアミラーゼ(AMYLOGLUCOSIDASE、Megazyme 日本バイオコン株式会社 製)を加えて37°Cにて2時間保温後、20mLに定容し、濾紙(ADVANTEC No.5B 東洋濾紙株式会社 製)にて濾過する。
この濾液について、市販のグルコース定量用キット(たとえば、グルコースCII−テストワコー 和光純薬株式会社 製)を用いてグルコース量を求める。グルコース量から次の式により、試料に含まれるデンプン量が算出される。

(式) デンプン(g/100g)=グルコース量(g/100g)×0.9
≪βグルカン≫
βグルカン量は、βグルカン定量用キット(たとえば、Megazyme社製 分析用キット など)を用いて求められる。試料溶液5mLに2.5gの硫酸アンモニウムを加え、泡立たないように注意深く混和し、4°Cで20時間静置する。この溶液を遠心分離(1000g、10分)し、上澄を除去する。残渣に1.0mLの50%エタノールを加えて激しく攪拌し、さらに10mLの50%エタノールを加えて混合し、これを遠心分離(1000g、5分)し、上澄を除去する。得られた残渣に対し再度同様の操作を繰り返し行ったのち、20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 6.5)4.8mLに溶解し、リケナーゼ(10U)を0.2mL加えて40°Cで5分静置する。これを遠心分離(1000g、10分)し、得られた上澄を0.1mLずつ3本の試験管に移す。うち1本の試験管には50mM酢酸アンモニウム緩衝液(pH4.0)0.1mLを加える(ブランク用サンプル)。残りの2本にはβ−グルコシダーゼ・50mM酢酸アンモニウム緩衝液(pH4.0)溶液(0.2U)0.1mLを加える(反応用サンプル)。それぞれ40°C、15分間静置し、これにグルコース定量用試薬(GOPOD Reagent)をそれぞれ3.0mLずつ加えたのち、40°C,20分静置する。これらの溶液について、510nmにおける吸光度Aを測定し、次式により吸光度差ΔAを求める。

(式)ΔA=A(反応用サンプル)−A(ブランク)

さらに吸光度差ΔAより、次式により試料溶液に含まれるβグルカン量が算出される。

(式) βグルカン量(mg/L)=ΔA × F × 9
但し、F=100/A(グルコース標準液)

ここで、グルコース標準液は、50mM酢酸ナトリウム緩衝液(0.1mL)、1.0mg/mLグルコース水溶液(0.1mL)、グルコース定量用試薬GOPOD(3.0mL)を混合することにより得られる。
Brixは、アタゴ社製の測定機(DD-7)で測定した。
(評価項目)
表3に記載する実施例1〜6および比較例1〜8の麦茶飲料を、常温(日本薬局方)で3か月保管した。これらの飲料を、飲用試験の3時間前に冷蔵庫(5℃)に静置冷却し、一定温度となったサンプルを用いて、味(滋味、甘味)、香り(余韻)、および香味のバランスについての官能評価を実施した。以下に評価方法を詳述する。
(評価試験)
実施例1〜6及び比較例1〜8の麦茶飲料(温度5℃)を、5人の熟練した審査官に、試飲してもらい、以下の評価で点数を付け、合議にて絶対値による点数評価を行った。この結果を、上記表3に示す。
<滋味>
滋味は、薄い場合を「0」点、濃い場合を「4」点として5段階で評価した。
<甘味>
甘味は、弱い場合を「0」点、強い場合を「2」点として3段階で評価した。
<香りの余韻>
香りの余韻は、余韻ない場合を「0」点、余韻がある場合を「3」点として4段階で評価した。
<香味バランス>
香味のバランスは、味、香りを包括的に捉えて嗜好性を判断し、特に優れたものを「2」とし、逆にバランスが取れておらず違和感を感じるものを「0」として評価した。
(総合点)
総合点は、滋味、甘み、香りの余韻の点数を合計し、この合計点に香味バランスの点を乗じて算出した。総合点が6点以上を好適、3〜5点をやや不適、0〜3点を不適として評価した。
(結果)
比較例1は、Ma/St、(Sc+Ma)/Bxの値が共に高く、滋味・香ばしさが強すぎ焦げ臭がし、バランスが悪いものであった。
比較例2は、Ma/St、(Sc+Ma)/Bxの値が共に低く、薄味であり香味のバランスが悪いものであった。
比較例3は、Ma/Stの値が低く、甘みはあるが香味のバランスが悪いものであった。
比較例4は、(Sc+Ma)/Bxの値が低く、滋味はあるが香ばしさや甘味・香味のバランスが悪いものであった。
比較例5は、bg/Bxの値が低く、甘みが強すぎるものであった。
比較例6は、bg/Bxの値が高く、香ばしさが強すぎるものであった。
比較例7,8は、甘みは程よいが香ばしさが足りないものであった。
これら結果から、Ma/Stが0.017より大きく0.040より小さく、(Sc+Ma)/Bxが5.0より大きく14.0より小さく、bg/Bxが3.0以上6.0より小さい麦茶飲料は、麦特有の甘味と香ばしさを備えており、しかも冷めた状態で飲用しても甘味を感じることができる、長期保存に適した麦茶飲料になることが見出せた。

Claims (18)

  1. マルトース量をMa(mg/L)、スクロース量をSc(mg/L)、デンプン量をSt(mg/100mL)、βグルカン量をbg(mg/100mL)、BrixをBx(%)としたとき、以下の(1)〜(3)の式を満たす容器詰麦茶飲料。
    (1)0.017< Ma/St <0.040
    (2)5.0 < (Sc+Ma)/Bx <14.0
    (3)3.0 ≦ bg/Bx < 6.0
  2. デンプン量が5mg/100mL〜250mg/100mLであることを特徴とする請求項1に記載の容器詰麦茶飲料。
  3. マルトース量が0.5mg/L〜5.0mg/Lであることを特徴とする請求項1又は2に記載の容器詰麦茶飲料。
  4. スクロース量が0.001mg/L〜10.0mg/Lであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の容器詰麦茶飲料。
  5. βグルカン量が1.0mg/100mL〜10.0mg/100mLであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の容器詰麦茶飲料。
  6. Brixが0.12%〜0.70%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の容器詰麦茶飲料。
  7. マルトース量をMa(mg/L)、スクロース量をSc(mg/L)、デンプン量をSt(mg/100mL)、βグルカン量をbg(mg/100ml)、BrixをBx(%)としたとき、以下の(1)〜(3)の式を満たすように調整することを特徴とする容器詰麦茶飲料の製造方法。
    (1)0.017< Ma/St <0.040
    (2)5.0 < (Sc+Ma)/Bx <14.0
    (3)3.0 ≦ bg/Bx < 6.0
  8. デンプン量を5mg/100mL〜250mg/100mLに調整することを特徴とする請求項7に記載の容器詰麦茶飲料の製造方法。
  9. マルトース量を0.5mg/L〜5.0mg/Lに調整することを特徴とする請求項7又は8に記載の容器詰麦茶飲料の製造方法。
  10. スクロース量を0.001mg/L〜10.0mg/Lに調整することを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の容器詰麦茶飲料の製造方法。
  11. βグルカン量を1.0mg/100mL〜10.0mg/100mLに調整することを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の容器詰麦茶飲料の製造方法。
  12. Brixを0.12%〜0.70%に調整することを特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載の容器詰麦茶飲料の製造方法。
  13. マルトース量をMa(mg/L)、スクロース量をSc(mg/L)、デンプン量をSt(mg/100mL)、βグルカン量をbg(mg/100mL)、BrixをBx(%)としたとき、以下の(1)〜(3)の式を満たすように調整することを特徴とする容器詰麦茶飲料の香味改善方法。
    (1)0.017< Ma/St <0.040
    (2)5.0 < (Sc+Ma)/Bx <14.0
    (3)3.0 ≦ bg/Bx < 6.0
  14. デンプン量を5mg/100mL〜250mg/100mLに調整することを特徴とする請求項13に記載の容器詰麦茶飲料の呈味改善方法。
  15. マルトース量を0.5mg/L〜5.0mg/Lに調整することを特徴とする請求項13又は14に記載の容器詰麦茶飲料の呈味改善方法。
  16. スクロース量を0.001mg/L〜10.0mg/Lに調整することを特徴とする請求項13〜15のいずれかに記載の容器詰麦茶飲料の呈味改善方法。
  17. βグルカン量を1.0mg/100mL〜10.0mg/100mLに調整することを特徴とする請求項13〜16のいずれかに記載の容器詰麦茶飲料の呈味改善方法。
  18. Brixを0.12%〜0.70%に調整することを特徴とする請求項13〜17のいずれかに記載の容器詰麦茶飲料の呈味改善方法。
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