JP2012159418A - 放射性廃棄物の固化処理方法 - Google Patents

放射性廃棄物の固化処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】原子力発電所から発生するシリカ質を含む各種放射性廃棄物を、効率的に処分する方法を提供する。
【解決手段】(i)シリカ質を含む放射性廃棄物に、アルカリ金属の水酸化物およびアルカリ土類金属の水酸化物からなる群より選ばれた化合物および水を添加して混合する混合工程と、(ii)前記混合工程で得られた混合物に潜在水硬性物質を主成分とする固化材およびアルカリ金属の水酸化物およびアルカリ土類金属の水酸化物からなる群より選ばれた化合物からなる硬化刺激剤を添加して混練する混練工程と、(iii)前記混練工程で得られた混練物を固化する固化工程とを有することを特徴とする、放射性廃棄物の固化処理方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、原子力発電所から発生するシリカ質を含む各種放射性廃棄物を、セメント系固化材を用いて固化処理する分野に適用できる。
近年、地球温暖化問題の顕在化に伴い、発電の過程で二酸化炭素を排出しない原子力発電への期待が急速に高まっている(非特許文献1)。
我が国は、国策として原子力発電を推進し、2030年以降も総発電電力量の30(40%以上を原子力発電により供給することを掲げている(非特許文献2)。したがって、原子力発電所、核燃料取扱施設、使用済核燃料再処理施設等の放射性物質取扱い施設の運用の過程で発生する放射性廃棄物の処理は緊急の課題であり、これらを適切な方法で処分する技術の確立が求められている。
現在、不燃性の放射性固体廃棄物を処理する方法としては、放射性廃棄物をセメントで固化する方法、圧縮する方法、あるいは高温度で加熱溶融して固化する方法などが知られている。
また、本出願人らは、特許文献1〜4にて、シリカゲル、ゼオライト、グラニュールなどの放射性廃棄物をセメント固化する処理方法を提案している。
ところで、このような放射性廃棄物セメント固化物を安定に固化し、埋設処分場における長期安定性を高めるために、特許文献5には、放射性廃棄物をセメントで固化処理する際に、放射性廃棄物をアルカリ性溶液に浸漬し、または浸漬後に加熱する前処理が開示されている。
特開2002−31698号公報 特開2002−286894号公報 特開平8−179095号公報 特開平10−104393号公報 特開平9−101398号公報
"原子力eye", 日刊工業新聞社, 2009, 55(2), p.6 "平成20年版原子力白書", 原子力委員会編, 2009, p. 75.
このような不燃性の放射性固体廃棄物中には、シリカ質を含有する物が多く含まれている。シリカ質は、たとえば、フィルタースラッジ、グラニュール、焼却灰およびHEPAフィルターなどに含まれている。
しかしながら、これらのシリカ質を含む放射性廃棄物を、セメント固化する場合にどのような処理が必要なのか、従来、なんら認識されていなかった。また、単に、アルカリ処理をしても、セメント固化により処理する場合、シリカ質がセメントの硬化に必要なアルカリ分と反応し、アルカリ分が消費される現象が生じる。そのため、セメントの硬化に必要なアルカリ分が不足し、セメントの硬化が困難になることを本発明者らは見いだした。その結果、セメント固化物を作成しても圧縮強度が不十分となり、、健全な固化体を得ることは困難であった。
本出願人は、このような状況に鑑みて鋭意研究した結果、以下の構成からなる本発明を完成するに至った。 本発明の放射性廃棄物の固化処理方法は、
(i)シリカ質を含む放射性廃棄物に、アルカリ金属の水酸化物およびアルカリ土類金属の水酸化物からなる群より選ばれた化合物および水を添加して混合する混合工程と、
(ii)前記混合工程で得られた混合物に潜在水硬性物質を主成分とする固化材およびアルカリ金属の水酸化物およびアルカリ土類金属の水酸化物からなる群より選ばれた化合物からなる硬化刺激剤を添加して混練する混練工程と、
(iii)前記混練工程で得られた混練物を固化する固化工程とを有することを特徴とする。
前記放射性廃棄物が、フィルタースラッジ、グラニュール、焼却灰、イオン交換樹脂およびHEPAフィルターのうちいずれか1つ以上であり、さらに、前記放射性廃棄物に含まれるシリカ質が、珪藻土、ゼオライト、バーミキュライト、カオリン、ろう石、タルク、ガラス繊維、アルカリ金属の珪酸塩およびアルカリ土類金属の珪酸塩のうちいずれか1つ以上である。
アルカリ金属の水酸化物およびアルカリ土類金属の水酸化物からなる群より選ばれた化合物を添加する際に、シリカ質の量に対し(SiO2換算)、アルカリ金属の水酸化物およびアルカリ土類金属の水酸化物を、0.2〜5 モルの量で添加することが好ましい。また、硬化刺激剤を、固化材100重量部に対して0.2〜20重量部の量で添加することが好ましい。
水の添加量(X)、固化材添加量(Y)として、(X:Y重量比)を1:1〜3:1の比率で添加することが好ましい。
前記混練物のフロー値が、200 mm以上であることが好ましい。
前記混練物の硬化日数が、2日以内であり、硬化後の固化体の圧縮強度(破壊強度)は、1.48 MPa以上であることが好ましい。
本発明は、特定の固化処理を採用しているため、シリカ質を含む放射性廃棄物のセメント固化に有用である。たとえば200 Lドラム缶に放射性固体廃棄物とセメント材とを充填固化することを想定する場合、ドラム缶1本あたりに充填する固体廃棄物の重量を85 kg以上にまで増量することができ、かつ、放射性固体廃棄物とセメント材等が含まれる前記混練物の流動性(フロー値)、硬化日数、硬化後の破壊強度等の特性に優れた固化体を得る固化処理方法を提供できる。
具体的には、以下の基準を満足する健全な固化体が得られる。
・混練物の流動性(フロー値):200 mm以上
(この値よりフロー値が大きいと、取扱い易く、圧縮強度が高い固化体が得られる。)
混練物がすぐに固化してしまい、取扱いが困難となる。)
・混練物の硬化日数:1(2日
(短いほど運用に有利である。)
・ブリージング:なし
(ないほうが好ましい。)
・混練物の硬化後の圧縮強度:8 MPa以上(強度が高いほど信頼性が高い。処分場の基準1.48 MPaをクリアしている。)
そして、記放射性廃棄物を200 Lドラム缶に充填して固化する方式を採用する場合、前記ドラム缶1本あたりに充填する廃棄物の重量を、従来の50 kgから85 kgにまで増量させることが可能であり、廃棄物処理に係るコストの大幅な削減が期待できる。
図1に、本発明の固化処理方法のフロー図を示す。
以下、本発明について具体的に説明する。
図1に示すように、本発明にかかる放射性廃棄物の固化処理方法は、シリカ質を含む放射性固体廃棄物に、アルカリ金属の水酸化物およびアルカリ土類金属の水酸化物からなる群より選ばれた化合物および水を添加した混合物を作成し、次いで前記混合物に潜在水硬性物質を主成分とする固化材およびアルカリ金属の水酸化物およびアルカリ土類金属の水酸化物からなる群より選ばれた化合物からなる硬化刺激剤を添加して混練し、固化することを特徴とする。
[混合工程]
まず、放射性固体廃棄物に、アルカリ金属の水酸化物およびアルカリ土類金属の水酸化物からなる群より選ばれた化合物および水を添加して混合物を調製する。
放射性廃棄物中にはシリカ質が含まれる。かかるシリカ質は、通常、珪藻土、ゼオライト、バーミキュライト、カオリン、ろう石、タルク、ガラス繊維、アルカリ金属の珪酸塩およびアルカリ土類金属の珪酸塩のうちいずれか1つ以上である。
これらは、原子力関連設備などに使用される処理設備、または原子力関連設備より排出される廃棄物に由来するものであり、具体的にはフィルタースラッジ、グラニュール、焼却灰、イオン交換樹脂およびHEPAフィルターのうちいずれか1つ以上である。
このようなフィルタースラッジ、イオン交換樹脂、グラニュールなどが水分を含む場合、あらかじめ乾燥してもよく、また乾燥せずに、これらの水分量を含めて後述のアルカリ化合物を添加する際の水分量を調整してもよい。また、フィルタースラッジ、グラニュール、焼却灰、イオン交換樹脂およびHEPAフィルターなどは、必要に応じて、解砕・粉砕処理を行ってもよく、また、焼成してもよい。
解砕・粉砕手段としては、ボールミルやハンマーミルなどが使用される。また、篩や振動性スクリーンで、廃棄物を整粒してもよい。
廃棄物の平均粒径は特に制限されるものではないが、10mm以下であることが、処理効率の点で望ましい。
なお、これらの廃棄物の固化処理にあたっては、あらかじめ、放射性廃棄物中のシリカ質濃度を評価しておくことが望ましい。評価方法は公知のたとえばICP分析などが好適である。
このような、シリカ質の含有量は、使用される放射性廃棄物にもよるが、通常、5〜50重量%の範囲にある。
この放射性放棄物に、アルカリ金属ないしアルカリ土類金属水酸化物および水を添加して混合する。
アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物としては、シリカ質と反応し珪酸塩を生成するものであれば特に制限なく、通常、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが使用される。
アルカリ金属水酸化物ないしアルカリ土類金属水酸化物量は、シリカ質の量に対し(SiO2換算)、0.1〜10 モルの量で添加することが好ましく、0.2〜5モルの量で添加することがより好ましい。
このような比率でアルカリ金属水酸化物ないしアルカリ土類金属水酸化物を添加することにより、あらかじめシリカ質を珪酸ナトリウム等の珪酸塩に変えることができ、後に続く混練工程で混練物が容易に固まらない程度のフロー値(200mm以上)とすることができる。
また、添加される水は、前記した放射性廃棄物中に水分が含まれている場合、その水分で代用することができる。
水分量は、特に制限はないものの、通常、混合物を混合できる粘度となるように添加される。
混合条件は、特に制限されるものではなく、また温度は40〜80℃にあることが望ましい。さらに、反応後、熟成処理を行ってもよく、熟成は、40〜100℃で、1〜24時間攪拌ないし無攪拌でおけばよい。
以上の工程では、アルカリ金属ないしアルカリ土類金属水酸化物とシリカ質とが反応した混合物が生じる。得られた混合物中には、前記シリカ質由来のアルカリ金属珪酸塩またはアルカリ土類金属珪酸塩が含まれる。
[混練工程]
次に、前記混合物と、潜在水硬性物質を主成分とする固化材と硬化刺激剤を混練して、混練物を調製する。
潜在水硬性物質としては、公知のセメント・モルタル材料が使用できる。
そのうち、本発明では高炉水砕スラグが好適に使用される。かかる高炉水砕スラグは、そのブレーン比表面積が2000cm2 /g以上のものが好ましく、特に3000cm2 /g以上のものが好ましい。本発明では、実質的にこのような潜在水硬性物質のみからなるものであっても、固化材としての機能を損なわないかぎり、他の成分を含むものであってもよい。
硬化刺激剤としては種々のアルカリ性物質が使用できる。用いうる硬化刺激剤の具体例としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等のアルカリ金属炭酸塩、更に水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、ピロ燐酸ナトリウム、ピロ燐酸カリウム、燐酸二カリウム、燐酸三カリウム、燐酸三ナトリウム等の燐酸塩、(メタ)ケイ酸ナトリウム、(メタ)ケイ酸カリウム等の珪酸塩が挙げられ、水酸化ナトリウムが好ましい。
放射性廃棄物をアルカリ処理するために加えるアルカリ金属水酸化物ないしアルカリ土類金属水酸化物と、前記硬化刺激剤としてのアルカリ性物質は同じ化合物を使用することができるが、どちらか一方の添加を省略することはできない。前者(アルカリ処理)はシリカ質を珪酸塩に変えるために加えるものであり、後者(硬化刺激剤)は混練物の固化刺激剤として添加するものであり、それぞれの役割は異なる。例えば、アルカリ処理量に相当する分を硬化刺激剤量に加えた総量を混練工程において一度に加えた場合には、過剰反応により急激に固化してしまい、混練することができなくなってしまう。 硬化刺激剤の使用量は、その塩基性度(アルカリ性の強さ)、高炉水砕スラグの粒径、更に必要により添加する種々の微粉の種類や量、及び水の量によっても異なるが、概ね固化材(高炉水砕スラグと微粉(後述、任意成分))の合計量100重量部に対して0.2〜20重量部、好ましくは2〜10重量部である。硬化刺激剤の量が少なすぎると、固化物が充分な強度を発現せず、処分基準を満足することが困難になる。また、混練物の固化に長時間を要する等、運用上不利となる。
また、前記硬化刺激剤の添加の際、必要に応じて更に防浸剤を添加する。本発明で用いる防浸剤とは、放射性廃棄物と固化材とを混練した際の固形分の分離防止効果やブリージング防止効果、固化物の硬化収縮又は乾燥収縮防止効果、場合により膨張効果、固化物が水に曝された場合における廃棄物の溶けだし防止効果、同じく水に曝された場合における浸水防止効果等の効果を、少なくとも1つ以上有するものをいい、例えばゲル形成能または冷却ゲル形成能をもつ種々の物質が使用できる。用いうる防浸剤の具体例としては寒天、アガロース、アミロペクチン、カラギーナン、コンニャクマンナン、アルギン酸ナトリウム、ファーセラン、ペクチン、澱粉、タマリンドガム、キサンタンガム、タンニン、カルボキシメチルセルロース、カードラン、ザンサン、ジェラン、大豆蛋白質、ゼラチン、卵、魚肉蛋白質が挙げられる。
これらの防浸剤の内、寒天、アガロース、アミロペクチン、カラギーナン、コンニャクマンナン、アルギン酸ナトリウム塩が好ましく、中でも寒天、アガロース、アミロペクチンが特に好ましい。
また、防浸剤の粒度は通常100メッシュ以下、好ましくは55メッシュ以下である。
また、防浸剤の添加方法に特に制限はないが、一様に分散されるように、予め高炉水砕スラグなどの粉体と混ぜ合わせておくのが好ましい。
防浸剤の使用量は、その塩基性度(アルカリ性の強さ)、高炉水砕スラグの粒径、更に添加する種々の微粉の種類や量、及び水の量によっても異なるが、概ね高炉水砕スラグと微粉(任意成分)の合計量100重量部に対して、通常0.05〜10重量部、好ましくは0.1〜6重量部、特に好ましくは0.2〜4重量部である。防浸剤の添加量がこの範囲にあれば、前記したような防浸剤の添加目的が十分に発現される。なお防浸剤の使用量が少なすぎると前述の防浸剤としての効果が充分でなく、逆に多すぎても防浸剤として期待される効果よりも、それらが有機物であることに由来する様々な欠点が顕著になり、また混練が困難になるなど操作性に問題が出てくる。
本発明の固化材は、必要により微粉を含有する。微粉としては、その平均粒径が高炉水砕スラグの平均粒径より小さいもの、好ましくは高炉水砕スラグの平均粒径よりも1オーダー以上小さいもの、より好ましくは2オーダー以上小さいものを使用する。
微粉の好ましい平均粒径は、10μm以下であり、より好ましくは0.01〜5μmであり、最も好ましくは0.05〜1μmである。
使用し得る具体的な微粉としては、例えばシリカフューム、フライアッシュ、珪砂、珪石粉、クレー、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、陶磁器粉砕物、徐冷高炉スラグ粉砕物、チタニア、ジルコニア、アルミナ、アエロジル、等が挙げられるが、流動性等が向上する他、固化後の固化物の機械的強度が向上するなどの効果が顕著なことから、シリカフュームを使用することが特に好ましい。微粉の使用量は、高炉水砕スラグの大きさ(粒径)や種類、必要に応じて添加する他の種々の混和材の種類や量によっても異なるが、高炉水砕スラグ100重量部に対して通常2〜50重量部、好ましくは5〜25重量部である。
固化材には必要により分散剤を含有していてもよい。分散剤は分子中に、カルボン酸基またはその塩を有する高分子で例えばポリ(メタ)アクリル酸塩、アクリル酸・マレイン酸共重合物、アクリル酸・マレイン酸・ビニルエーテル共重合物、アクリル酸・イタコン酸・スチレン共重合物、アクリル酸・イタコン酸・メタクリル酸・スチレン共重合物、無水マレイン酸・C5 〜C8 オレフィン共重合化合物等である。
前記において、C5 〜C8 オレフィンとしては、2メチルブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、シクロペンテン、シクロヘキセン等が挙げられる。
また、分散剤がカルボン酸基の塩を有する場合、塩の種類としては、アルカリ金属塩、例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられ、更にアンモニウム塩、アミン塩も使用できる。具体的には、アクリル酸・マレイン酸共重合体のナトリウム塩、アクリル酸・イタコン酸・スチレンの共重合体のナトリウム塩、アクリル酸・イタコン酸・メタクリル酸・スチレンの共重合体のナトリウム塩、アクリル酸・無水マレイン酸・イソブチルビニルエーテル共重合体のナトリウム塩、アクリル酸・無水マレイン酸・スチレンの共重合体のナトリウム塩、無水マレイン酸・2メチルブテン−1・ペンテン−1共重合体のナトリウム塩等も用いうる分散剤として挙げられる。
なお、本発明で用いられる分散剤は、ここに挙げた共重合体に限定されるものではない。即ち、セメント、コンクリートの減水剤として知られている、ナフタリンスルホン酸のホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物、リグニンスルホン酸縮合物等を併用する事もできる。又、これら減水剤は単独使用だけでなく、2種以上を併用することも出来る。
これらの分散剤の使用量は、本発明の固化材を固化して得られる固化物の要求特性や放射性廃棄物の処理方法等により異なるが高炉水砕スラグ及び微粉(任意成分)の合計量100重量部に対して通常0.1〜10重量部、好ましくは0.3〜6重量部、特に好ましくは0.5〜3重量部である。この範囲の使用量であれば、混練が容易であり、流動性を高める効果が発揮できる。
本発明の固化材は必要に応じて針状無機質粉末を含有していていもよい。用いうる針状無機質粉末の具体例としては、ウォラストナイト、セピオライト、アスベスト、クリソタイル、アモサイト、トレモライト等が挙げられるが、固化物の強度の向上、耐久性の改良等から、ウォラストナイトが好ましい。
針状無機質粉末の使用量は、高炉水砕スラグ100重量部に対して通常2〜50重量部、好ましくは5〜25重量部である。
固化材には、更に必要に応じて種々の混和材を含有せしめることが出来る。混和材としては、例えば粉砕された徐冷スラグ、フェロクロムスラグ、シリカ、アルミナ、タルク、硅砂、硅石粉、クレー、カオリン、炭酸カルシウム、陶磁器粉砕物、チタニア、ジルコニア、砂利等の無機充填材があげられる。さらに砂糖、グルコース等の硬化遅延剤、シランカップリング剤のような表面処理剤、顔料及び消泡剤等を用いてもよい。
これら種々の混和材を用いる場合、その使用量は、無機充填材の場合には高炉水砕スラグ100重量部に対して通常10〜300重量部、又、硬化遅延剤、表面処理剤、顔料及び消泡剤等の混和材の場合には高炉水砕スラグ100重量部に対して通常0.1〜20重量部である。
また、得られる固化物の靭性向上等を目的として繊維などを添加することもできる。用いうる繊維の具体例としては、ガラス繊維、カーボン繊維、ビニロン、ナイロン、アラミド、ポリプロピレン、アクリル、ポリエステルなどの繊維、セルロース繊維、スチール、アルミナ繊維などが挙げられる。繊維の使用量は高炉水砕スラグ100重量部に対して通常0.1〜10重量部である。
本発明の固化材は上記各成分を所定の割合で混合して得ることができる。尚、硬化刺激剤及び分散剤(任意成分)はそれら以外の成分と予め混合してあってもよいし、下記で述べるように固化処理の際に別途添加してもよい。
本発明の固化処理法における固化材の使用量は、対象とする放射性廃棄物によって異なるものの、放射性廃棄物の量が、通常乾燥時換算で(以下同様)10〜80重量%、好ましくは20〜70重量%となる量使用する。
本発明の固化処理方法では、上記固化材、アルカリ金属ないしアルカリ土類金属水酸化物と放射性廃棄物との混合物と必要に応じて水を混合、混練する。
水の使用量は、使用する高炉水砕スラグ及び微粉(任意成分)の種類と量、その他放射性廃棄物の種類と量によって異なり、放射性廃棄物と固化材との混練物が良好な流動性を示し、また固化物が高強度、耐久性を示すように決めることが重要である。
水の合計添加量(X)、固化材添加量(Y)として、(X:Y重量比)を1:1〜3:1の比率で添加することが好ましく、1.5:1〜2.5:1の比率で添加することがより好ましい。シリカを含む放射性廃棄物を処理する場合、水と固化材との量比がセメント硬化に重要な要因となり、この比率にあると、フロー値が200 mm以上の取扱い易い混練物が得られ、しかも圧縮強度が高い硬化物が得られることが可能である。
尚、前記したように、アルカリ金属ないしアルカリ土類金属水酸化物と放射性廃棄物とを混合する際に、すでに水分が添加されている場合、かかる水分を加えた量が上記使用量となるよう水を使用する。また、遠心分離処理等で表面水のみを取り除いた使用済イオン交換樹脂を固化する場合、イオン交換樹脂中に含まれる水が一部浸出するのでこの水分を加えた量が上記使用量となるよう水を使用する。また、完全に乾燥したイオン交換樹脂を固化する場合、加えた水の一部がイオン交換樹脂の膨潤に消費されるため、この消費量を除いた量が上記使用量となるよう水を使用する。また廃棄物の種類によっては上記範囲を越える水を含有している場合があるが、この場合不要の水分は公知の方法で除去するのが好ましい。
本発明の固化処理法においては、対象となる放射性廃棄物の種類または形状により固化処理法が異なる。以下にその固化処理法の代表的な例を説明する。
(A)放射性廃棄物が焼却灰や粉末化したもの、イオン交換樹脂などである場合;
ミキサーに固化材、並びに放射性廃棄物とアルカリ化合物とを加えて混合し、これに必要に応じて分散剤、硬化刺激剤を添加し、混練し流動性のある混練物を作る。次いでこれを収納容器に詰めて養生固化させる。
(B)放射性廃棄物が紙(フィルター類)、布、プラスチック等の可燃性雑固体等の水不溶性固体である場合であって固化材成分と均一に混合(混練)することが困難である場合;
本発明の固化材成分と水とをミキサー等で混合して得たスラリー状組成物を、放射性廃棄物を詰めた収納容器に流し込み、必要により振動等を加えながら、固化材を空隙のないように充填し養生固化させる。なお、放射性廃棄物はあらかじめ、前記したようなアルカリ処理がされている)
なお、固化材と放射性廃棄物と任意成分である分散剤を加える順は上記に限定されるものではなく、放射性廃棄物に固化材を加える前に分散剤を加えてもよい。また、放射性廃棄物と本発明の固化材とを混合、混練する工程は、収納容器中で必要により水を加えながら行ってもよいし(インドラム法)、予め放射性廃棄物と固化材とを混合、混練したものを収納容器に流し込んでもよい(アウトドラム法)。ここで収納容器とは例えば鋼鉄製等のオープンドラム等が挙げられる。
混練条件は、固化材と、前記放射性廃棄物とを混練できれば特に制限されるものではなく、温度は40〜100℃にあることが望ましい。
また混練時間も均一に混練できれば特に制限されるものではなく、1〜60分であればよい。
混練物の流動性(フロー値)は、取扱いの観点からは200 mm以上(より好ましくは250 mm以上)であることが望ましい。
なお、前記フロー値の測定は、JIS R 5201「セメントの物理試験方法」に準拠して実施する。より詳しくは、混練後の混練物を抜き出し、JIS規定のフローテーブルによりフロー値を測定する。
[固化工程]
前記混練工程で得られた混練物をJIS R5201に規定される型枠に流し込み、固化させる。通常固化する際には養生が行われる。固化のための養生は通常、室温〜100℃の温度で行われるが、室温〜60℃での温度が好ましい。この際、飽和蒸気圧下、或いは、水分が飛ばないよう蓋をして加熱下で行うことが好ましい。養生時間は、硬化日数が短いほど運用上有利であり、2日以内(より好ましくは1日以内)であることが望ましい。
特に、本発明では、特定のアルカリ処理と固化処理を組み合わせているので、ブリージングの発生を抑制できる。
硬化後の固化体の圧縮強度(破壊強度)は、処分上の信頼性の観点から強度が高いことが望ましく、1.48 MPa以上(より好ましくは8 MPa)以上を満足することが望ましい。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
模擬廃棄物の調製
原子力発電所に保管されているフィルタースラッジの分析結果から、硫酸ナトリウム3.19重量%、活性炭4.09重量%、酸化鉄(III)9.93重量%、珪藻土8.76重量%、水酸化ナトリウム0.76重量%および硫酸鉄(II)七水和物1.67重量%を混合して模擬廃棄物とした。
前記模擬廃棄物に、水酸化ナトリウム3.0重量%および水38重量%を添加し、EYELA製攪拌機により60 ℃で5分間混合した。
固化材
潜在水硬性物質を主成分とする固化材として、高炉水砕スラグ90重量%およびシリカヒューム10重量%からなる固化材を使用した。
固化処理
前記混合物を東洋製作所製恒温槽内で90℃に保持し、一夜静置した。その後、前記混合物を60 ℃に加熱し、前記固化材19.95重量%、25 %水酸化ナトリウム水溶液10重量%および分散剤0.65重量%を添加して、MKSハイピレス製卓上万能ミキサーにより20分間混練した。混練物のフロー値は、混練の終わった組成物をJIS R5201に準じて、測定した。
混練後の物質をJIS R5201に規定される型枠に流し込み、室温で4週間、養生固化した。養生後の固化体の圧縮強度は、島津製作所製材料試験機UDH−20により測定した。
実施例1の方法により得られた混練物および養生固化体の特性値を表1に示す。
[比較例1A]
(アルカリ金属(アルカリ土類金属)水酸化物添加工程がなく、その後の混練工程においても硬化刺激剤(アルカリ性溶液)を添加しない場合)
模擬廃棄物の調製
原子力発電所に保管されているフィルタースラッジの分析結果から、硫酸ナトリウム3.19重量%、活性炭4.09重量%、酸化鉄(III)9.93重量%、珪藻土8.76重量%、水酸化ナトリウム0.76重量%および硫酸鉄(II)七水和物1.67重量%を混合して模擬廃棄物とした。
固化材
潜在水硬性物質を主成分とする固化材として、高炉水砕スラグ90重量%およびシリカヒューム10重量%からなる固化材を使用した。
固化処理
前記模擬廃棄物に、水43重量%を添加し、EYELA製攪拌機により60℃で5分間混合した。
前記混合物を東洋製作所製恒温槽内で90 ℃に保持し、一夜静置した。その後、前記混合物を60 ℃に加熱し、前記固化材27.95重量%および分散剤0.65重量%を添加して、MKSハイピレス製卓上万能ミキサーにより20分間混練した。混練物のフロー値は、混練の終わった組成物をJIS R5201に準じて、測定した。
混練後の物質をJIS R5201に規定される型枠に流し込み、室温で(4週間、養生固化した。養生後の固化体の圧縮強度は、島津製作所製材料試験機UDH−20により測定した。
比較例1Aの方法により得られた混練物および養生固化体の特性値を表1に示す。
[比較例1B]
(アルカリ金属(アルカリ土類金属)水酸化物添加工程があるが、その後の混練工程において硬化刺激剤(アルカリ性溶液)を添加しない場合)
模擬廃棄物の調製
原子力発電所に保管されているフィルタースラッジの分析結果から、硫酸ナトリウム3.19重量%、活性炭4.09重量%、酸化鉄(III)9.93重量%、珪藻土8.76重量%、水酸化ナトリウム0.76重量%および硫酸鉄(II)七水和物1.67重量%を混合して模擬廃棄物とした。
前記模擬廃棄物に、水酸化ナトリウム3.0重量%および水48重量%を添加し、EYELA製攪拌機により60℃で5分間混合した。
固化材
潜在水硬性物質を主成分とする固化材として、高炉水砕スラグ90重量%およびシリカヒューム10重量%からなる固化材を使用した。
固化処理
前記模擬廃棄物に、水43重量%を添加し、EYELA製攪拌機により60℃で5分間混合した。
前記混合物を東洋製作所製恒温槽内で90 ℃に保持し、一夜静置した。その後、前記混合物を60 ℃に加熱し、前記固化材27.95重量%および分散剤0.65重量%を添加して、MKSハイピレス製卓上万能ミキサーにより20分間混練した。混練物のフロー値は、混練の終わった組成物をJIS R5201に準じて、測定した。
混練後の混練物をJIS R5201に規定される型枠に流し込み、室温で養生固化した。養生後の固化体の圧縮強度は、島津製作所製材料試験機UDH−20により測定した。結果を表1に示す。
Figure 2012159418
実施例1は、 シリカ質を含む放射性廃棄物であっても混練物の硬化が早く、また、得られた固化体の圧縮強度も十分なものであり、さらにブリージングの発生も抑制できる。
これに対し、比較例1Aは、硬化日数が長く、またブリージングが発生する等の問題が生じる。比較例1Bは、アルカリ添加量が足りず、混練物が相当期間固化しない。なお、比較例1Bにおいて、硬化刺激剤の量を、実施例1におけるアルカリ処理量に相当する分も含めるように増やした場合、アルカリが過剰に存在するため、混練物が急結する(急速に固まる)。前記の実施条件では、混練物を所望の型枠に流し込むことができず、また、混練物が攪拌機内部で急結する等、安定運転を困難にする重大なトラブルが生じるおそれがある。
[実施例2]
模擬廃棄物
原子力発電所に保管されているフィルタースラッジの分析結果から、硫酸ナトリウム3.19重量%、活性炭4.09重量%、酸化鉄(III)9.93重量%、珪藻土8.76重量%、水酸化ナトリウム0.76重量%および硫酸鉄(II)七水和物1.67重量%を混合して模擬廃棄物とした。
前記模擬廃棄物に、水酸化ナトリウム3.0重量%および水X重量%を添加し、EYELA製攪拌機により60 ℃で5分間混合した。
固化材
また、潜在水硬性物質を主成分とする固化材として、高炉水砕スラグ90重量%およびシリカヒューム10重量%からなる固化材を使用した。
前記混合物を東洋製作所製恒温槽内で90 ℃に保持し、一夜静置した。その後、前記混合物を60 ℃に加熱し、前記固化材Y重量%、硬化刺激剤である25 %水酸化ナトリウム水溶液10重量%および分散剤(0.65重量%を添加して、MKSハイピレス製卓上万能ミキサーにより20分間混練した。
混練後の物質をJIS R5201に規定される型枠に流し込み、室温で養生固化した。養生後の固化体の圧縮強度は、島津製作所製材料試験機UDH−20により測定した。
XとYは表2に示すようにして、フロー値および圧縮強度を評価した。結果を合わせて表2に示す。
Figure 2012159418
上記の実験の結果、健全な混練物および養生固化体が得られる条件は表2の通りであった。ただし、本発明では、混練物のフロー値の目標値を200 mm以上とし、養生固化体の圧縮強度の目標値を8.0 MPa以上とした。
本発明によればシリカ質を含む放射性廃棄物を、特定の処理を行い、固化材と混合しているので、圧縮強度の高い固化体を効率的に作製可能となる。とくに、混練物のフロー値200 mm以上し、養生固化体の圧縮強度8.0 MPa以上とする高い目標値を達成させることも可能となる。
本発明によれば、シリカ質を含む放射性廃棄物を効率的にセメント固化し、廃棄できる。

Claims (8)

  1. (i)シリカ質を含む放射性廃棄物に、アルカリ金属の水酸化物およびアルカリ土類金属の水酸化物からなる群より選ばれた化合物および水を添加して混合する混合工程と、
    (ii)前記混合工程で得られた混合物に潜在水硬性物質を主成分とする固化材およびアルカリ金属の水酸化物およびアルカリ土類金属の水酸化物からなる群より選ばれた化合物からなる硬化刺激剤を添加して混練する混練工程と、
    (iii)前記混練工程で得られた混練物を固化する固化工程とを有することを特徴とする、
    放射性廃棄物の固化処理方法。
  2. 前記放射性廃棄物が、フィルタースラッジ、グラニュール、焼却灰、イオン交換樹脂およびHEPAフィルターのうちいずれか1つ以上を含む請求項1に記載の固化処理方法。
  3. 前記放射性廃棄物に含まれるシリカ質が、珪藻土、ゼオライト、バーミキュライト、カオリン、ろう石、タルク、ガラス繊維、アルカリ金属の珪酸塩およびアルカリ土類金属の珪酸塩のうちいずれか1つ以上を含む請求項1または請求項2に記載の固化処理方法。
  4. アルカリ金属の水酸化物およびアルカリ土類金属の水酸化物からなる群より選ばれた化合物を添加する際に、シリカ質の量に対し(SiO2換算)、アルカリ金属の水酸化物およびアルカリ土類金属の水酸化物を、0.1〜10モルの量で添加することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載に固化処理方法。
  5. 硬化刺激剤を、硬化刺激剤を、固化材100重量部に対して0.2〜20重量部の量で添加することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の固化処理方法。
  6. 水の添加量(X)、固化材添加量(Y)として、(X:Y重量比)を1:1〜3:1の比率で添加することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の固化処理方法。
  7. 混練物のフロー値が、200 mm以上にあることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の固化処理方法。
  8. 前記混練物の硬化日数が、2日以内であり、硬化後の固化体の圧縮強度(破壊強度)は、1.48 MPa以上である請求項1〜7のいずれかに記載の固化処理方法。
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