JP2004035329A - ゼオライトの製造方法及び装置 - Google Patents
ゼオライトの製造方法及び装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004035329A JP2004035329A JP2002194946A JP2002194946A JP2004035329A JP 2004035329 A JP2004035329 A JP 2004035329A JP 2002194946 A JP2002194946 A JP 2002194946A JP 2002194946 A JP2002194946 A JP 2002194946A JP 2004035329 A JP2004035329 A JP 2004035329A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- alkali
- reaction
- incinerated ash
- concentration
- alkaline solution
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Granted
Links
Images
Landscapes
- Processing Of Solid Wastes (AREA)
- Silicates, Zeolites, And Molecular Sieves (AREA)
Abstract
【課題】効率的にゼオライトを製造することのできる製造技術を提供する。
【解決手段】ゼオライトの製造方法において、以下の工程:(a) 焼却灰と第1のアルカリ溶液とを加熱・混合する工程、及び(b) 前記工程で得られた処理物に水及び/又はアルカリ溶液を供給し、前記焼却灰と前記第1のアルカリ溶液よりも低い濃度の第2のアルカリ溶液との反応用組成物を調製し、この反応用組成物を加熱して前記焼却灰とアルカリとを反応させる工程、とを備えるようにする。前記(a)工程を実施することで、(b)工程における水熱反応が促進される。この結果、焼却灰から効率的にゼオライトが生成される。
【選択図】図1
【解決手段】ゼオライトの製造方法において、以下の工程:(a) 焼却灰と第1のアルカリ溶液とを加熱・混合する工程、及び(b) 前記工程で得られた処理物に水及び/又はアルカリ溶液を供給し、前記焼却灰と前記第1のアルカリ溶液よりも低い濃度の第2のアルカリ溶液との反応用組成物を調製し、この反応用組成物を加熱して前記焼却灰とアルカリとを反応させる工程、とを備えるようにする。前記(a)工程を実施することで、(b)工程における水熱反応が促進される。この結果、焼却灰から効率的にゼオライトが生成される。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、焼却灰をアルカリと反応させてゼオライトに改質する方法及び/又は装置に関し、特に、焼却灰を効率よく反応させて、ゼオライトを得る技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
石炭灰を始めとする焼却灰の利用方法として、石炭灰に水酸化ナトリウムなどのアルカリ溶液を加えてスラリー化し、水熱処理することにより多孔性物質であるゼオライトに改質する技術が特開昭59−86687号公報などに開示されている。このような改質ゼオライトは、人工ゼオライトとも言われ、ゼオライトの一種として、イオン交換能力、吸着能力、触媒能力、分子ふるい能力などの各種機能を有することから、多くの産業においてその利用が期待されている。
【0003】
石炭灰をゼオライトに改質する方法としては、高温及び高圧下で反応効率が高いことが知られている。また、特許第2019792号公報などには、特定の結晶組成の石炭灰を用いた場合に、大気圧下での煮沸状態で水熱反応を実施することが開示されている。
また、特開平7−109117号公報には、石炭灰と固形の水酸化ナトリウムとの混合物を加熱処理する方法が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許第2019792号による技術では、反応が長時間に及ぶとともに煮沸によるエネルギーの損失が大きくかつ回分方式のために装置が大型化してしまうという欠点がある。しかも、ランニングコストを低減させるため水酸化ナトリウム溶液を回収し再利用しようとすると、新しい水酸化ナトリウム水溶液を使用した場合に比べ、得られるゼオライトの品質が低下するという問題がある。
また、高温高圧下での水熱反応の場合、反応時間は短縮化されるが、耐圧容器を使用するため回分方式にならざるを得ず、規模に比して処理能力が小さく、しかもコストが著しく増大するという欠点がある。
また、特開平7−109117号公報の方法では、固形の水酸化ナトリウムを大量に使用するため、コストが増大するという欠点がある。
そこで、本発明では、焼却灰から効率的にゼオライトを製造することのできる製造技術を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記した課題を解決するために、焼却灰とアルカリとの水熱反応に先んじて焼却灰とアルカリとの反応を促進させる前処理について検討したところ、焼却灰を所定の濃度のアルカリ溶液で加熱処理した後、その後、より低い濃度のアルカリ溶液で水熱反応処理することにより、効率よくゼオライトを生成させることができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明によれば以下の手段が提供される。
【0006】
(1)ゼオライトの製造方法であって、以下の工程:
(a) 焼却灰と第1のアルカリ溶液とを加熱・混合する工程、及び
(b) 前記工程で得られた処理物に水及び/又はアルカリ溶液を供給し、前記焼却灰と前記第1のアルカリ溶液よりも低い濃度の第2のアルカリ溶液との反応用組成物を調製し、この反応用組成物を加熱して前記焼却灰とアルカリとを反応させる工程、
を備える、方法。
(2)前記(a)工程における加熱温度は100℃未満である、(1)記載の方法。
(3)前記(b)工程における加熱温度は100℃未満である、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)前記(b)工程における反応用組成物中に、ケイ素イオンあるいはケイ素イオン供給体を含有する、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)前記ケイ素イオン供給体は、前記第2の濃度のアルカリ溶液において3g/l以上のケイ素イオン濃度となっている、(4)記載の方法。
(6)前記(a)工程における混合物における焼却灰に対するアルカリの供給量は、当該焼却灰をアルカリと反応させてゼオライトを得る際のアルカリ消費量に相当する量とする、(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7)前記第1のアルカリ溶液のアルカリ濃度は、12wt%以上36wt%以下である、(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)前記(a)工程における焼却灰と第1アルカリ溶液とは、焼却灰:固形換算アルカリ分の重量比が100:10〜20となるように配合する、(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9)前記(b)工程において、前記処理物に供給されるアルカリ溶液のアルカリ濃度は、3.5wt%以上10.5wt%以下である、(1)〜(8)のいずれかに記載の方法。
(10)前記(b)工程における反応用組成物における焼却灰濃度は15wt%以上30wt%以下である、(1)〜(9)のいずれかに記載の方法。
(11)前記(a)工程で得られた混練物を、連続的に前記(b)工程に供給する、(1)〜(10)のいずれかに記載の方法。
(12)ゼオライトを得るための焼却灰の前処理方法であって、焼却灰と12wt%以上36wt%以下の濃度のアルカリ溶液とを加熱・混合する工程、を備える方法。
(13)前記焼却灰は、石炭灰である、(1)〜(12)のいずれかに記載の方法。
(14)ゼオライトの製造装置であって、焼却灰とアルカリ溶液とを100℃未満の温度で混合しながら加熱する、1あるいは2以上の処理手段と、
前記処理手段のいずれかに水及び/又はアルカリ溶液を供給して混合物における前記アルカリ濃度を低下させる希釈手段、とを備える、装置。
(15)前記処理手段は、焼却灰と第1のアルカリ溶液とを混合しながら加熱する第1の処理手段と、前記混合手段のうち少なくとも一つは、焼却灰と前記第1の濃度のアルカリ溶液よりも濃度の低い第2の濃度のアルカリ溶液とを加熱しながら混合する第2の混合手段とを備え、前記希釈手段は、前記第2の処理手段に対して、水及び/又はアルカリ溶液を供給する、(14)記載の装置。
(16)さらに、前記処理手段において得られる処理物を固液分離する手段と、固液分離後の液体を前記希釈手段に備えられる貯留槽に供給する手段、とを備える、(14)又は(15)に記載の装置。
【0007】
本発明の方法によれば、前記混合工程に次いで前記反応工程を実施することにより、結果として、焼却灰に含まれるケイ素とアルミニウムとがアルカリ溶液に溶解しやすくなる。このため、効率よくゼオライトを製造することができる。すなわち、時間的コスト、エネルギーコストなどを抑制して一定以上の品質のゼオライトを得ることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の方法は、以下の工程:
(a) 焼却灰と第1のアルカリ溶液とを加熱・混合する工程(以下、単に前処理工程という。)、及び
(b) 前記工程で得られた処理物にアルカリ溶液を供給し、前記焼却灰と前記第1のアルカリ溶液よりも低い濃度の第2のアルカリ溶液との反応用組成物を調製し、この反応用組成物を加熱して前記焼却灰とアルカリとを反応させる工程(以下、単に、反応工程という。)、
を備えている。
また、本発明は、ゼオライトを得るための焼却灰の前処理方法であって、
焼却灰と12wt%以上36wt%以下のアルカリ濃度のアルカリ溶液とを加熱・混合する工程、
を備えている。
さらに、本発明の装置は、焼却灰とアルカリ溶液とを混合しながら加熱する、1又は2以上の処理手段と、
前記処理手段のいずれかに水及び/又はアルカリ溶液を供給して混合物におけるアルカリ濃度を低下させる希釈手段、
とを備えている。
【0009】
焼却灰としては、非結晶質のケイ素とアルミニウム(典型的には、ケイ酸アルミニウム塩)とを含有する限り、石炭をエネルギー源とする発電設備などにおいて発生する石炭灰(フライアッシュ)の他、製紙スラッジ、都市ゴミ、汚泥などの可燃物を燃焼させた後に生ずる焼却残渣などの各種焼却灰を用いることができる。焼却灰としては、これらの各種焼却灰を1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましくは石炭灰を用い、より好ましくは石炭灰のみを用いる。
本発明においては、焼却灰として、例えば、石炭の燃焼の際に発生する粉塵を集塵器などで捕集した石炭灰をそのまま用いることができる。焼却灰の組成については特に限定しないが、好ましくは、SiO2、Al2O3を主成分として、さらに、CaO、Na2O、K2O、Fe分などを含有している。
好ましくは、Al2O3約15wt%以上約25wt%以下、SiO2約50wt%以上約75wt%以下のものを用いることができる。
なお、本発明の出発原料としては、焼却灰の他、ガラス、スラグ、鋳物廃砂、火山噴出物等を含んでいてもよい。また、後述するような、アルカリ溶液中においてSiイオンを供給できるような化合物を含有させることもできる。
【0010】
(前処理工程)
前処理工程では、焼却灰(典型的には、石炭灰である。以下、同じとする。)と第1のアルカリ溶液とを加熱する。前処理工程に供される焼却灰と第1のアルカリ溶液は前処理組成物を構成する。第1のアルカリ溶液は、この前処理組成物において液相を構成している。
第1のアルカリ溶液のアルカリとしては、水酸化ナトリウムの他、水酸化カリウムを使用できる。
第1のアルカリ溶液の濃度は、好ましくは約12wt%以上である。12wt%未満であると、従来の水熱反応時のアルカリ濃度と差があまりなく、前処理による水熱反応促進効果を得ることができない。また、アルカリ溶液のアルカリ濃度の上限は約36wt%とする。36wt%を超えると、後段の反応工程で焼却灰が使用用途が限られるソーダライトに変質しやすくなるからである。下限は、より好ましくは、約16wt%である。16wt%未満であると、水熱反応促進効果はあるが、短時間(3時間程度)の反応時間では効果の発現がやや不安定であるからである。さらに好ましくは約20wt%である。20wt%以上であると、短時間でも安定した水熱反応促進効果を得ることができる。また、上限は、約30%以下であることが好ましい。より好ましくは、約24%以下である。
本発明の前処理工程では、後段の反応工程で使用するアルカリ溶液よりも高濃度のアルカリ溶液と焼却灰とを接触させることにより、後段の反応工程における反応の促進効果を焼却灰に均一にかつ確実に付与することができる。
なお、本発明で使用する固体換算アルカリと同量の固体状アルカリと接触させた場合、直接接触部が部分的にゼオライト化反応が進行してしまったり、前処理の効果が発揮されにくいおそれがある。また、かかる不均一性を回避するには、長時間に渡る混合や固形アルカリの使用量を増大させることになり効率的でない。
【0011】
焼却灰と第1のアルカリ溶液との配合比とは特に限定しないが、当該焼却灰の量からみて、後段の反応工程において当該焼却灰中のケイ素やアルミニウムとアルカリと反応させてゼオライトを得るのに必要な量のアルカリを供給することが好ましい。当該アルカリ量は、換言すれば、当該焼却灰が、後段での反応工程で消費するアルカリ量である。前処理工程において、一定量の焼却灰からゼオライトを得るために必要な量のアルカリを供給することで、この処理物を反応させて得られる反応液を固液分離して回収したアルカリ溶液を再び反応工程でリサイクル利用する場合、当該反応工程では、消費されるアルカリが前処理工程の処理物から供給されるため、おおよそ、一定のアルカリ濃度を容易に維持することができる。
例えば、焼却灰:固形物換算アルカリ分の重量比が100:10〜20の範囲であることが好ましい。固形物換算アルカリ分の重量比が前記10未満であると、アルカリ量が不足するため、前処理効果が発揮されないおそれがあり、また、当該重量比が前記20を超えると、アルカリ量が過剰になる傾向があるからである。好ましくは、焼却灰:固形物換算アルカリ分が100:約15である。
【0012】
焼却灰と第1のアルカリ溶液とを加熱する温度は、好ましくは100℃以下である。100℃を超えると、焼却灰中のケイ素と水酸化ナトリウムにより水ガラスが生成し、アルカリ溶液の水が蒸発し混合物が固化してしまうと同時に、気化熱に消費熱エネルギーの増大によりランニングコストが上昇してしまうからである。また、焼却灰とアルカリとの水熱反応が進行してしまい、用途が限定されるソーダライトに変質してしまうおそれがあるからである。さらに、加圧容器が必要になり、生産能力の低下及び装置コストが上昇し、前処理工程を回分式とせざるを得ないからである。上限は好ましくは100℃未満であり、さらに好ましくは、80℃以下である。80℃を超えると、ソーダライトが生成しやすくなるからである。また、下限は、好ましくは、50℃以上である。50℃未満であると、短時間で有効な前処理を達成することが困難であるからである。より好ましくは、60℃以上である。さらに好ましくは、70℃以上80℃以下である。
【0013】
前処理工程に対する熱の供給形態は特に限定しない。焼却灰と第1のアルカリ溶液とを混合できる混合槽などの混合手段に対して、加熱手段を備えるようにすることができる。また、加熱した焼却灰を使用することにより、熱を供給することもできる。さらに、加熱した第1のアルカリ溶液を供給することもできる。さらに、これらの手段を2種類以上組み合わせて用いることもできる。
なお、前処理工程においては、焼却灰と第1のアルカリ溶液とは、加熱と同時に混合されることが好ましい。焼却灰粒子に前処理効果を均一に付与するためである。より好ましくは、予め、加熱した焼却灰に対して、第1のアルカリ溶液(予め加熱されていてもよいし加熱されていなくてもよい)を供給し、加熱及び混合することが好ましい。
【0014】
焼却灰と第1のアルカリ溶液との混合状態は、粘性の高いスラリー状であることが好ましい。好ましくは、固形分(焼却灰)が80wt%以下である。また、好ましくは、35wt%以上である。固形分が多すぎてもまた少なすぎても、後段の反応工程においてソーダライトが生成しやくなるからである。また、固形分が35wt%以上80wt%以下であると、焼却灰粒子表面とアルカリとをよく接触させることができる。
例えば、アルカリ濃度の上記好適範囲(12wt%以上36wt%以下)内の濃度のアルカリ溶液を用いて、上記焼却灰:アルカリの重量比の上記好適比(100:10〜20)を達成しようとすると、焼却灰100gに対して、アルカリ溶液は約27g(水量約18g)〜約167g(水量約147g)の範囲となる。この範囲においては、同時に、好ましい水分量のスラリーを得ることができる。
【0015】
前処理工程における加熱時間は、特に限定しないが、焼却灰粒子の表面が十分にアルカリと接触できる程度の範囲で行うことが好ましい。
好ましくは、1分以上20分以下とする。1分未満では、反応促進効果が得られにくく、20分を超えると、後段の反応工程で、水熱反応が促進されすぎてソーダライトが生成するおそれがあるからである。より好ましくは、5分以上15分以下であり、もっとも好ましくは10分程度である。
【0016】
前処理工程を実施することにより、焼却灰粒子とアルカリとの反応性を向上させることができる。このことは、前処理工程を実施しない焼却灰を用いた対比実験においても明らかである。本発明者らが確認したところによれば、前処理により、焼却灰粒子のケイ素及びアルミニウム(特にアルミニウム)が第2のアルカリ溶液中に溶解しやすくなることがわかっている。すなわち、前処理後の焼却灰と第2のアルカリ溶液とからなる反応用組成物とすると、前処理をしていない焼却灰よりも速やかに当該液相中にケイ素とアルミニウムの濃度が高くなる。これにより、反応用組成物においては、ゼオライト化反応が開始されるのに必要なケイ素とアルミニウム濃度に早く到達し、ゼオライト化反応が速やかに進行するもの推測される。
【0017】
また、本発明の前処理工程によれば、非常に短時間で十分な反応促進効果を得ることができる。したがって、前処理工程から後段の反応工程へ処理物を断続的にあるいは連続的に供給することに適している。特に、加熱温度が100℃未満でも十分に促進効果を得ることができるため、連続式の反応工程を容易に実施することができる。
【0018】
(反応工程)
次に、前処理工程で得られた処理物に水及び/又はアルカリ溶液を供給し、前記焼却灰と前記第1のアルカリ溶液よりも低い濃度の第2のアルカリ溶液との反応用組成物を調製する。この反応用組成物は、前処理された焼却灰と第2のアルカリ溶液から構成される。第2のアルカリ溶液は、反応用組成物の液相を構成している。
前記処理物は、焼却灰と第1のアルカリ溶液とを含んでいる。この処理物に、水及び/又はアルカリ溶液を供給することにより、焼却灰と第1のアルカリ溶液よりも低い濃度の第2のアルカリ溶液との反応用組成物を調製することができる。すなわち、反応工程においては、第1のアルカリ溶液は希釈される。
【0019】
希釈に用いる水及び/又はアルカリ溶液の量や濃度は、特に限定しない。反応工程において、第2のアルカリ溶液(液相)のアルカリ濃度が、第1のアルカリ溶液のアルカリ濃度よりも低くなるように調製されていればよい。一般的に、第2のアルカリ溶液の濃度が、焼却灰とアルカリ溶液とを混合してゼオライト化反応を生じさせるために用いられる当該アルカリ溶液の濃度となっていることが好ましい。すなわち、約8wt%以上約12wt%以下のアルカリ濃度となっていることが好ましい。
このためには、3.5wt%以上10.5wt%以下のアルカリ濃度の添加用アルカリ溶液を前記処理物に添加することが好ましい。3.5wt%未満であると、ゼオライト化反応が進まない又は遅れるおそれがあり、10.5wt%を超えるとアルカリ溶液の濃度が高すぎて使用用途の狭いソーダライトが生成するおそれがある。好ましくは、5wt%以上であり、また8wt%以下である。
【0020】
特に、本発明では、反応工程に存するアルカリは、前処理工程の処理物中のアルカリと、添加用アルカリ溶液から供給されるが、処理物中に、反応工程で消費されるであろうアルカリ分を補填するようにすれば、添加用アルカリ用溶液の濃度は反応工程前後でほぼ一定とすることができる。すなわち、無駄なアルカリの使用を抑制することができる。さらに、添加用アルカリ溶液を、反応工程後の生成組成物中の液相を用いることにより、さらにアルカリを効率よく使用することができる。なお、反応工程後の液相を用いる場合には、一旦、アルカリ濃度を、上記範囲、すなわち、3.5wt%〜10.5wt%に調整しておくことが好ましい。
【0021】
反応用組成物に、ケイ素イオン(Si+4イオン)が含まれていると、水熱反応をより一層促進し、また、好ましい人工ゼオライト(典型的にはフィリップサイト型)を得ることができる。すなわち、前述したように、前処理物における焼却灰においては、特にアルミニウムが溶出しやすくなっているため、予め反応用組成物中にケイ素イオンが存在すると、人工ゼオライトの生成条件に速やかに到達しゼオライト化が進行し、結果としてゼオライト化が促進されるからである。
かかる反応用組成物を調製するには、予め、前記した添加用のアルカリ溶液中に、ケイ素イオンあるいはケイ素イオン供給体を含有させておくことが好ましい。添加用アルカリ溶液におけるこれらの含有量は、ケイ素イオン供給量として3.0g/L以上となる量であることが好ましい。3g/L未満であると、ケイ素イオンによる水熱反応の促進効果が発現しにくくなる、あるいは用途の狭いソーダライトが生成するおそれがあるからである。特に、当該ケイ素イオン供給量は、石炭灰を出発原料とする場合において好ましい。なお、石炭灰以外の焼却灰を出発原料とする場合、石炭灰に比較した珪酸塩含有量の多少を考慮して、当該ケイ素イオン供給量を調節することができる。
なお、反応用組成物に、ケイ素イオンを含有させるには、例えば、水ガラス、メタケイ酸ソーダなどのケイ素イオン供給体を直接添加することもできる。
【0022】
また、既に記載したように、本発明の反応工程の反応液の固液分離工程で分離された液相を、添加用アルカリ溶液あるいはその調製用の液として用いることは、反応用組成物へのケイ素イオンの供給の点においても有用である。
一般的に、焼却灰とアルカリとのゼオライト合成反応後の液相には、未反応のケイ素イオンが残留する。従来において、反応後の液相を回収して繰り返し使用する場合には、この未反応ケイ素イオンが蓄積することにより、例えば、アルカリ溶液の水ガラス化、生成ゼオライトの品質低下等の焼却灰のゼオライト化に支障をきたしていた。
しかしながら、本発明の反応工程において、既に説明した前処理によりアルミニウムイオンが溶出しやすくなっており、反応系に予めケイ素イオンが存在すると、速やかにゼオライト化反応が進行する。すなわち、予め存在していたケイ素イオンは速やかに消費されはじめる。その一方、焼却灰からもケイ素イオンが溶出する。反応終了後には、予め存在していたケイ素イオン+溶出したケイ素イオンの総量から消費されたケイ素イオンを差し引いた量が未反応ケイ素イオンとして残存することになる。消費されるケイ素イオン量及び溶出するケイ素イオン量は、反応条件が一定であるならば、反応系における焼却灰の量に応じておおよそ決まってくるものである。しかも、両者はほぼ等しい量となる。
したがって、上記好ましい量のケイ素イオン濃度となるように調整された添加用アルカリ溶液(ある程度再利用を繰り返したアルカリ溶液であって、上記濃度に到達したもの、あるいは上記濃度に調整したものを同等に使用することができる。)を用いて反応用組成物を調製し、水熱反応後の液相を、添加用アルカリ溶液として再利用することにより、従来と異なり、逆にゼオライト化が促進される。すなわち、本発明の当該形態によれば、アルカリ有効利用と水熱反応促進との双方を実現することができる。
【0023】
なお、反応用組成物において、固形分(焼却灰)濃度が約15wt%以上約30wt%以下であることが好ましい。この範囲内で反応用組成物の取り扱いが容易であり、焼却灰とアルカリ溶液とを効率よく反応させることができる。30wt%を超えると、反応用組成物の取り扱いが困難となり、15wt%未満であると、アルミニウム及びケイ素の濃度がゼオライト化反応が開始される濃度に到達するのに時間を要し、前処理の効果を得られにくくなる。最も好ましくは約20wt%〜25wt%である。
【0024】
反応用組成物には、また、必要に応じてアルミン酸ナトリウムや水酸化アルミニウムなどを添加して、所望の組成ないし型のゼオライトが生成するように調整することができる。
【0025】
反応用組成物を加熱して焼却灰とアルカリとの水熱反応によりゼオライトを生成させる加熱温度は、好ましくは、100℃未満あるいは煮沸させない程度とする。前処理工程を経ることにより、100℃未満あるいは煮沸させなくても、短時間で効率よくゼオライト化を達成することができる。また、100℃未満あるいは煮沸させない温度範囲であると、アルカリ溶液を煮沸することなく、すなわち、蒸発による熱エネルギーロスなく、水熱反応を達成することができる。さらに、前段の前処理工程からの処理物を反応工程に連続的あるいは断続的に供給して、反応工程を連続的に実施することができるようになる。
一方、100℃以上とすると、加圧容器を要することになり、装置コストの他、回分方式に採用せざるを得なくなり、生産効率の向上が困難となる。好ましくは、98℃以下とする。また、好ましくは90℃以上とする。
【0026】
反応時間は、特に限定しないが、本反応工程では、3時間〜4時間程度でおおよそ好ましい品質のゼオライトを得ることができる。かかる反応時間内で反応工程を終了することにより、連続的な反応工程の実施が容易になる。より好ましくは4時間程度である。一方、4時間を超えて反応させても陽イオン交換容量の増加率は小さく、エネルギーコストの点から効率的でなくなる傾向がある。
【0027】
前処理工程と反応工程によれば、前処理工程を行うことにより、反応工程における反応性が向上されているため、反応条件を緩やかにしても十分に短時間で反応を実施し、一定以上の品質のゼオライトを得ることができる。また、前処理工程と反応工程とをいずれも100℃未満の温度で行うことにより、これらの工程を連続的に実施することが可能となり、ゼオライトの製造効率を一層向上させることができる。
なお、反応性が向上されているために、高温高圧での反応条件で反応工程を実施すれば、より一層の時間短縮を図ることができる。
また、本工程によれば、例えば、焼却灰から、フィリップサイト型ゼオライトや、条件を合わせることによりフォージャサイト型ゼオライトを効率的に得ることができる。
さらに、得られるゼオライトの陽イオン交換容量(CEC)は、約150以上約230以下のものを効率よく得ることができる。より好ましくは、約180以上約210以下のものを効率よく得ることができる。
なお、本発明方法は、連続式でも回分式でもいずれの反応方式でも容易に実施することができる。
【0028】
(製造装置)
上記前処理工程、反応工程を実施する装置については特に限定しないが、好ましくは、焼却灰とアルカリ溶液とを混合しながら加熱する、1又は2以上の処理手段と、前記処理手段の少なくとも一つに水及び/又はアルカリ溶液を供給して混合物におけるアルカリ濃度を低下させる希釈手段、とを備えている。
以下、本装置の一実施形態の概略を図1に例示し、図1を参照しながら説明する。なお、図1に示す実施形態は、説明のための例示であり、本発明の装置を当該形態に限定するものではない。
【0029】
図1に示すように、本装置2は、処理手段として、第1の処理手段4と、第2の処理手段24とを備えている。また、本装置2は、希釈手段44を備えている。
(処理手段)
処理手段は、容器と、容器内の内容物を攪拌、振動、循環などして混合ないし均一化する混合手段と、内容物に熱を供給する加熱手段とを備えている。前処理工程と反応工程においては、後段の反応工程で使用するアルカリ溶液の濃度が前段の前処理工程で使用するアルカリ溶液の濃度よりも低く、また、後段の反応工程におけるスラリー濃度が前段のスラリー濃度よりも低くなっている。すなわち、後段工程では、前段工程の処理物を希釈する形態となる。したがって、それぞれの工程を別の処理手段で実施することもできるが、単一の処理手段において、前処理工程と反応工程とを実施することも容易である。
図1に示す形態では、両工程をそれぞれ別の処理手段で実施するように、第1の処理手段4と第2の処理手段24とを備えている。
【0030】
第1の処理手段4は、前処理工程を実施するための手段として備えられている。当該処理手段4は、容器6と、混合手段10と、加熱手段14とを備えている。容器6は、前処理工程の被処理物であるスラリー状体の処理に適した構造を備えていればよく、特にその形態を限定しない。なお、内容物を100℃以上に加熱する場合には、加圧容器である必要がある。混合手段10は、特に限定しないで各種公知の混合手段を用いることができる。加熱手段14は、容器6内の内容物に熱を供給可能であれば足りる。特に、前処理工程を実施する処理手段においては、容器6に装備され、容器6内の内容物を直接加熱可能な形態の他、容器6に供給すべき原材料、すなわち、焼却灰あるいはアルカリ溶液のいずれかあるいは双方を、容器6に供給前に加熱可能な形態も採用することができる。さらに、この形態の双方を備えることもできる。内容物を直接加熱可能な形態としては、図1に示すように、容器6の外部にジャケット式に設けた加熱手段14の他、内部コイル式加熱手段あるいは容器6内の内容物の外部循環径路を設け、この循環径路に加熱手段を備えることもできる。また、加熱された原材料を供給する形態にあっては、アルカリ溶液および/または焼却灰をインラインで加熱しながら供給する手段あるいはこれらを貯留して加熱し、その後供給する手段などを採用することができる。
【0031】
第1の処理手段4は、回分方式及び連続方式のいずれの形態も採ることができる。ゼオライトの効率的製造の観点からは、連続式であることが好ましい。特に、100℃未満の加熱温度にて前処理する場合には、容易に連続方式とすることができ、また、処理物を後段の反応工程へ連続的に供給可能となる。
図1に例示する第1の処理手段4には、回分式であり、容器6内の処理物を排出し後段の反応工程に供給するための配管16とバルブ18とを備えている。
【0032】
第2の処理手段24は、反応工程を実施するために備えられている。第1の処理手段と同様に、容器26と、混合手段30と、加熱手段34とを備えている。容器26と混合手段30については、第1の処理手段4に採用できる手段を本処理手段24においても同様に採用することができる。
加熱手段34については、第1の処理手段4における加熱手段14と同様に、容器6内の内容物に熱を供給可能であれば足り、同様の加熱手段を採用することができるが、特に、本処理手段24においては、反応工程が時間単位で実施されるため、容器26に装備され、容器26内の内容物を直接加熱可能な形態を採用することが好ましい。したがって、前段の反応工程の処理物や他の材料(例えば、後述する希釈手段から供給される水及び/又はアルカリ溶液)などを、容器26に供給前に加熱可能な形態も採用できるが、直接加熱可能な形態に併用して採用することが好ましい。したがって、第2の処理手段24には、図1に示すようにジャケット式加熱手段などの直接加熱方式の加熱手段34を備えていることが好ましい。
なお、第2の処理手段24は、第1の処理手段4の下方に配置されていると、前処理工程の処理物が容易に第2の処理手段24の容器26内に搬送することができる。
【0033】
第2の処理手段24は、回分方式及び連続方式のいずれの形態も採ることができる。ゼオライトの効率的製造の観点からは、連続式であることが好ましい。特に、100℃未満の加熱温度にて反応させる場合には、容易に連続方式とすることができ、また、反応用組成物を後段へ連続的に供給可能となる。なお、図1に例示する第2の処理手段24は、回分式となっている。
【0034】
本装置2には、反応工程を実施する処理手段である第2の処理手段24には、前処理工程の処理物を反応工程の反応用組成物に調整するための手段、すなわち、希釈手段44を備えている。
希釈手段44は、前処理工程の処理物に水及び/又はアルカリ溶液を供給する手段である。本手段44は、水及び/又はアルカリ溶液である希釈用液を貯留する貯留手段46と、貯留手段46から第2の処理手段24にこれらの希釈用液を供給する配管50とを備えることができる。貯留手段46の希釈溶液は、配管50を介して、バルブ52の開閉に制御されて、図示しない制御手段により定量的に第2の処理手段24へ供給されるようになっている。
貯留手段46は、多くの場合アルカリ溶液を貯留するが、別途水の貯留手段を備えるようにして、水のみを処理手段に供給するように構成することもできる。
【0035】
貯留手段46は、水及び/又はアルカリ溶液を希釈用液として貯留するが、アルカリ濃度を調整可能になっていることが好ましい。この場合、水とアルカリ溶液(濃度の高い原液の場合もある)の供給源(図示しない)からそれぞれの液体が貯留手段46に供給されるようにすることができる。それぞれの供給量は、バルブの開閉で制御されるようにすることができる。さらに、好ましくは、貯留手段46には貯留するアルカリ溶液のアルカリ濃度を検出するためのアルカリ濃度検出手段を備えるようにする。
【0036】
貯留手段46へ供給されるアルカリ溶液の供給源は、反応用組成物の固液分離後の液体とすることができる。当該液体には、アルカリが含まれているとともに、ケイ素イオンを含有している観点から、反応工程に供給するアルカリ溶液源としては好ましい。この場合には、後段の固液分離手段から、分離後の液体を貯留手段46へ搬送する配管系54を備えるようにすることが好ましい。
【0037】
また、貯留手段46には、別途、反応用組成物にケイ素イオンを供給できるケイ素イオン供給体を添加できるようにすることもできる。また、貯留手段46には、攪拌装置や外部循環経路などの混合手段を備えることが好ましい。さらに、貯留手段46には、反応工程において調製される反応用組成物の温度を安定化し、早期に好ましい温度に到達させるために、希釈用液を一定温度に加熱する加熱手段を備えることが好ましい。
なお、単一の処理手段において前処理工程と反応工程とを実施する場合には、希釈手段44は、前処理工程を実施した後の処理手段の容器に希釈用液を供給するように構成される。
【0038】
本装置2は、さらに、通常のゼオライト製造装置と同様に、固液分離手段64、洗浄手段84、乾燥手段104を備えることができる。
固液分離手段64は、反応工程を実施する処理手段の後段、すなわち、図1においては第2の処理手段24の後段に配置されている。固液分離手段64には、遠心力、ろ過などの各種公知の手段を採用することができる。
固液分離後の液体は、前述したように、希釈手段44の貯留手段46に供給するように構成することができる。また、固液分離後の固形分は、洗浄手段84に供給され、固形分に残留するアルカリを洗浄する。なお、洗浄手段84には、通常、同時に、脱水手段を付随している。
次いで、洗浄された固形分は乾燥手段104に供給され、乾燥される。
【0039】
以下、本装置2を用いて焼却灰からゼオライトを製造する工程について説明する。
まず、第1の処理手段4の容器6に所定重量の焼却灰を投入し、混合手段10を作動させながら、加熱手段14を作動させることにより、焼却灰を所定温度にまで加熱する。その後、第1のアルカリ溶液の所定量を供給して、加熱手段14により前処理温度を所定時間維持して、前処理工程を実施する。
【0040】
次いで、第1の処理手段4の容器6内の処理物を、配管16のバルブ18を開いて下方に配置された第2の処理手段24の容器26に供給する。処理手段24の容器26には、予め、希釈手段44から、アルカリ濃度などが調整された希釈用液を供給しておくことができる。さらに、加熱手段34により、希釈用液を反応温度に予め加熱しておくことができる。
この容器26において、処理物と希釈用液とを供給し、混合手段30により混合することにより、焼却灰と第2のアルカリ溶液とを含む反応用組成物を調製する。このとき、添加する希釈用液により同時にスラリー濃度も調整することが好ましい。なお、希釈用液としては、必要に応じて水のみを単独供給することもありうる。
反応用組成物を、混合手段30で混合しつつ加熱手段34を作動させて所定温度に所定時間維持することにより、反応工程を実施する。
【0041】
反応工程後、反応生成物を、所定経路を通じて、固液分離手段64、洗浄手段84、乾燥手段104に順次搬送・供給し、乾燥されたゼオライトを得る。
【0042】
以上説明したように、本装置2によれば、本発明方法を効率的に実施することができる。特に、希釈手段44により、容易に前処理工程と反応工程における第1のアルカリ溶液から第2のアルカリ溶液への希釈を容易に実現することができる。また、固液分離後の液相を希釈用液の少なくとも一部として利用する構成の場合には、アルカリの効率的利用とケイ素イオンによる反応性向上とを同時に実現できる。
【0043】
【実施例】
以下、本発明を実施した具体例について説明するが、これらの具体例は本発明を限定するものではない。
石炭灰300gに対して、表1に示す、16wt%、20wt%、24wt%、36wt%の各種濃度のNaOH水溶液(本発明における第1のアルカリ溶液に相当する。)を、石炭灰:水酸化ナトリウムの重量比が100:15となるように添加し、4種類の前処理用組成物(試料1〜4)を調製した。試料1及び2については80℃にて10分間、試料3及び4については60℃にて10分間、それぞれ混練することにより、前処理工程を実施した。
次いで、得られた各処理物に、ケイ素イオン(Si4+)を含有しない6wt%水酸化ナトリウム溶液、あるいはSi4+として、3.56g/Lが溶解している6wt%水酸化ナトリウム溶液を、それぞれ石炭灰(固形分)濃度が20wt%となるように添加して合計8種類の反応用組成物を得た。なお、ケイ素イオン(Si4+)を含有しない6wt%水酸化ナトリウム溶液を添加した反応用組成物を表1において、それぞれaを付して示し、Si4+として、3.56g/Lが溶解している6wt%水酸化ナトリウム溶液を添加した反応用組成物を表1において、それぞれbを付して示した。
なお、最終的に得られた反応生成物の液相(第2のアルカリ溶液に相当する)におけるアルカリ濃度は、試料1〜4について、それぞれ約8wt%であった。また、Si4+として、3.56g/Lが溶解している6wt%水酸化ナトリウム溶液は、石炭灰をゼオライト化するのに使用した水酸化ナトリウム水溶液を、水酸化ナトリウム濃度を6wt%に調整したものであった。
【表1】
【0044】
このようにして得られた試料1〜4の計8種の反応生成物を、98℃で6時間加熱・混合する工程を実施し、水熱反応を行った。水熱反応2時間、3時間、4時間、5時間及び6時間経過時の反応生成物中の固形分を採取し、X線回折分析を行った。この結果を図2〜4に示す。また、水熱反応4時間及び6時間の反応生成物中の固形分を採取して、陽イオン交換容量を測定した。結果を表2に示す。
【表2】
【0045】
なお、比較例として、石炭灰300gに対して、Si4+として3.56g/Lを溶解している、あるいは溶解していない8wt%NaOH水溶液を、スラリー(石炭灰固形分)濃度が約20wt%となるように添加して、2種類の比較例の反応用組成物を得た。なお、Siイオン含有アルカリ溶液を用いた反応用組成物を従来例1の組成物とし、Siイオンを含有しないアルカリ溶液を用いた反応用組成物を従来例2の組成物というものとする。これらの反応用組成物を、100℃で6時間加熱して、水熱反応を行った。水熱反応2時間、3時間、4時間、5時間及び6時間経過時の反応生成物中の固形分を採取し、X線回折分析を行った。この結果を図5に示す。また、水熱反応4時間及び6時間の反応生成物中の固形分を採取して、陽イオン交換容量を測定した。
【0046】
図2〜4には、試料1〜3の各種反応時間におけるゼオライト(フィリップサイト型)の特性ピーク角度(回折角度)におけるピーク強度と、同反応時間における比較例の反応組成物(従来例1:Si含有)のピーク強度に対する%とを併せて示してある。
図2〜4によれば、特に、水熱反応3時間〜4時間の範囲で、試料のピーク強度は、従来例1に比較して大きかった。一方、水熱反応6時間では、大きな差がなかった。この結果によれば、試料の反応生成物においては、ゼオライト化の反応が、従来例1に比較して速やかに進行していたことを示している。
さらに、反応用組成物中におけるケイ素イオンの有無に着目すると、特に、試料1及び2の反応用組成物において、水熱反応3時間〜4時間の範囲で、ケイ素イオンを含有する反応用組成物に、より大きなピーク強度が得られていた。このことは、ケイ素イオンが存在することにより、より一層ゼオライト化反応が促進されることを意味している。
【0047】
なお、図5には、従来例1と従来例2からは、前処理を行わない場合には、ケイ素イオン含有組成物において、ケイ素イオンを含有しない組成物に比較してより低いピーク強度となっていた。すなわち、反応用組成物中にケイ素イオンを含有することにより、ゼオライト化が抑制されることが明らかであった。
【0048】
さらに、表2及び図6に示す陽イオン交換容量(CEC)の測定結果によれば、試料1〜3の反応生成物(ケイ素イオン含有)において、従来例1のCECよりも高い数値が得られていた。特に、4時間〜6時間の範囲において、相対的に高いCEC値が得られていることがわかった。このように、CECの測定結果からも、本発明によれば、短い反応時間において、ゼオライト化反応が促進され、相対的に高いCECのゼオライトを得られることがわかった。特に、このような促進効果は、試料1及び試料2において顕著であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のゼオライトの製造装置の概略を示す図である。
【図2】実施例の試料1の水熱反応の各経過時間におけるX線回折分析結果を示す表である。
【図3】実施例の試料2の水熱反応の各経過時間におけるX線回折分析結果を示す表である。
【図4】実施例の試料3の水熱反応の各経過時間におけるX線回折分析結果を示す表である。
【図5】従来例1及び2の水熱反応の各経過時間におけるX線回折分析結果を示す表である。
【図6】実施例の試料1b、2b、3bと従来例1における水熱反応の経過時間とCECとの関係を示す図である。
【符号の説明】
2 製造装置
4 第1の処理手段
6 容器
10 混合手段
14 加熱手段
16 配管
18 バルブ
24 第2の処理手段
26 容器
30 混合手段
34 加熱手段
44 希釈手段
46 希釈用液の貯留手段
50 配管
52 バルブ
64 固液分離手段
84 洗浄手段
104 乾燥手段
【発明の属する技術分野】
この発明は、焼却灰をアルカリと反応させてゼオライトに改質する方法及び/又は装置に関し、特に、焼却灰を効率よく反応させて、ゼオライトを得る技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
石炭灰を始めとする焼却灰の利用方法として、石炭灰に水酸化ナトリウムなどのアルカリ溶液を加えてスラリー化し、水熱処理することにより多孔性物質であるゼオライトに改質する技術が特開昭59−86687号公報などに開示されている。このような改質ゼオライトは、人工ゼオライトとも言われ、ゼオライトの一種として、イオン交換能力、吸着能力、触媒能力、分子ふるい能力などの各種機能を有することから、多くの産業においてその利用が期待されている。
【0003】
石炭灰をゼオライトに改質する方法としては、高温及び高圧下で反応効率が高いことが知られている。また、特許第2019792号公報などには、特定の結晶組成の石炭灰を用いた場合に、大気圧下での煮沸状態で水熱反応を実施することが開示されている。
また、特開平7−109117号公報には、石炭灰と固形の水酸化ナトリウムとの混合物を加熱処理する方法が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許第2019792号による技術では、反応が長時間に及ぶとともに煮沸によるエネルギーの損失が大きくかつ回分方式のために装置が大型化してしまうという欠点がある。しかも、ランニングコストを低減させるため水酸化ナトリウム溶液を回収し再利用しようとすると、新しい水酸化ナトリウム水溶液を使用した場合に比べ、得られるゼオライトの品質が低下するという問題がある。
また、高温高圧下での水熱反応の場合、反応時間は短縮化されるが、耐圧容器を使用するため回分方式にならざるを得ず、規模に比して処理能力が小さく、しかもコストが著しく増大するという欠点がある。
また、特開平7−109117号公報の方法では、固形の水酸化ナトリウムを大量に使用するため、コストが増大するという欠点がある。
そこで、本発明では、焼却灰から効率的にゼオライトを製造することのできる製造技術を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記した課題を解決するために、焼却灰とアルカリとの水熱反応に先んじて焼却灰とアルカリとの反応を促進させる前処理について検討したところ、焼却灰を所定の濃度のアルカリ溶液で加熱処理した後、その後、より低い濃度のアルカリ溶液で水熱反応処理することにより、効率よくゼオライトを生成させることができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明によれば以下の手段が提供される。
【0006】
(1)ゼオライトの製造方法であって、以下の工程:
(a) 焼却灰と第1のアルカリ溶液とを加熱・混合する工程、及び
(b) 前記工程で得られた処理物に水及び/又はアルカリ溶液を供給し、前記焼却灰と前記第1のアルカリ溶液よりも低い濃度の第2のアルカリ溶液との反応用組成物を調製し、この反応用組成物を加熱して前記焼却灰とアルカリとを反応させる工程、
を備える、方法。
(2)前記(a)工程における加熱温度は100℃未満である、(1)記載の方法。
(3)前記(b)工程における加熱温度は100℃未満である、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)前記(b)工程における反応用組成物中に、ケイ素イオンあるいはケイ素イオン供給体を含有する、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)前記ケイ素イオン供給体は、前記第2の濃度のアルカリ溶液において3g/l以上のケイ素イオン濃度となっている、(4)記載の方法。
(6)前記(a)工程における混合物における焼却灰に対するアルカリの供給量は、当該焼却灰をアルカリと反応させてゼオライトを得る際のアルカリ消費量に相当する量とする、(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7)前記第1のアルカリ溶液のアルカリ濃度は、12wt%以上36wt%以下である、(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)前記(a)工程における焼却灰と第1アルカリ溶液とは、焼却灰:固形換算アルカリ分の重量比が100:10〜20となるように配合する、(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9)前記(b)工程において、前記処理物に供給されるアルカリ溶液のアルカリ濃度は、3.5wt%以上10.5wt%以下である、(1)〜(8)のいずれかに記載の方法。
(10)前記(b)工程における反応用組成物における焼却灰濃度は15wt%以上30wt%以下である、(1)〜(9)のいずれかに記載の方法。
(11)前記(a)工程で得られた混練物を、連続的に前記(b)工程に供給する、(1)〜(10)のいずれかに記載の方法。
(12)ゼオライトを得るための焼却灰の前処理方法であって、焼却灰と12wt%以上36wt%以下の濃度のアルカリ溶液とを加熱・混合する工程、を備える方法。
(13)前記焼却灰は、石炭灰である、(1)〜(12)のいずれかに記載の方法。
(14)ゼオライトの製造装置であって、焼却灰とアルカリ溶液とを100℃未満の温度で混合しながら加熱する、1あるいは2以上の処理手段と、
前記処理手段のいずれかに水及び/又はアルカリ溶液を供給して混合物における前記アルカリ濃度を低下させる希釈手段、とを備える、装置。
(15)前記処理手段は、焼却灰と第1のアルカリ溶液とを混合しながら加熱する第1の処理手段と、前記混合手段のうち少なくとも一つは、焼却灰と前記第1の濃度のアルカリ溶液よりも濃度の低い第2の濃度のアルカリ溶液とを加熱しながら混合する第2の混合手段とを備え、前記希釈手段は、前記第2の処理手段に対して、水及び/又はアルカリ溶液を供給する、(14)記載の装置。
(16)さらに、前記処理手段において得られる処理物を固液分離する手段と、固液分離後の液体を前記希釈手段に備えられる貯留槽に供給する手段、とを備える、(14)又は(15)に記載の装置。
【0007】
本発明の方法によれば、前記混合工程に次いで前記反応工程を実施することにより、結果として、焼却灰に含まれるケイ素とアルミニウムとがアルカリ溶液に溶解しやすくなる。このため、効率よくゼオライトを製造することができる。すなわち、時間的コスト、エネルギーコストなどを抑制して一定以上の品質のゼオライトを得ることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の方法は、以下の工程:
(a) 焼却灰と第1のアルカリ溶液とを加熱・混合する工程(以下、単に前処理工程という。)、及び
(b) 前記工程で得られた処理物にアルカリ溶液を供給し、前記焼却灰と前記第1のアルカリ溶液よりも低い濃度の第2のアルカリ溶液との反応用組成物を調製し、この反応用組成物を加熱して前記焼却灰とアルカリとを反応させる工程(以下、単に、反応工程という。)、
を備えている。
また、本発明は、ゼオライトを得るための焼却灰の前処理方法であって、
焼却灰と12wt%以上36wt%以下のアルカリ濃度のアルカリ溶液とを加熱・混合する工程、
を備えている。
さらに、本発明の装置は、焼却灰とアルカリ溶液とを混合しながら加熱する、1又は2以上の処理手段と、
前記処理手段のいずれかに水及び/又はアルカリ溶液を供給して混合物におけるアルカリ濃度を低下させる希釈手段、
とを備えている。
【0009】
焼却灰としては、非結晶質のケイ素とアルミニウム(典型的には、ケイ酸アルミニウム塩)とを含有する限り、石炭をエネルギー源とする発電設備などにおいて発生する石炭灰(フライアッシュ)の他、製紙スラッジ、都市ゴミ、汚泥などの可燃物を燃焼させた後に生ずる焼却残渣などの各種焼却灰を用いることができる。焼却灰としては、これらの各種焼却灰を1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましくは石炭灰を用い、より好ましくは石炭灰のみを用いる。
本発明においては、焼却灰として、例えば、石炭の燃焼の際に発生する粉塵を集塵器などで捕集した石炭灰をそのまま用いることができる。焼却灰の組成については特に限定しないが、好ましくは、SiO2、Al2O3を主成分として、さらに、CaO、Na2O、K2O、Fe分などを含有している。
好ましくは、Al2O3約15wt%以上約25wt%以下、SiO2約50wt%以上約75wt%以下のものを用いることができる。
なお、本発明の出発原料としては、焼却灰の他、ガラス、スラグ、鋳物廃砂、火山噴出物等を含んでいてもよい。また、後述するような、アルカリ溶液中においてSiイオンを供給できるような化合物を含有させることもできる。
【0010】
(前処理工程)
前処理工程では、焼却灰(典型的には、石炭灰である。以下、同じとする。)と第1のアルカリ溶液とを加熱する。前処理工程に供される焼却灰と第1のアルカリ溶液は前処理組成物を構成する。第1のアルカリ溶液は、この前処理組成物において液相を構成している。
第1のアルカリ溶液のアルカリとしては、水酸化ナトリウムの他、水酸化カリウムを使用できる。
第1のアルカリ溶液の濃度は、好ましくは約12wt%以上である。12wt%未満であると、従来の水熱反応時のアルカリ濃度と差があまりなく、前処理による水熱反応促進効果を得ることができない。また、アルカリ溶液のアルカリ濃度の上限は約36wt%とする。36wt%を超えると、後段の反応工程で焼却灰が使用用途が限られるソーダライトに変質しやすくなるからである。下限は、より好ましくは、約16wt%である。16wt%未満であると、水熱反応促進効果はあるが、短時間(3時間程度)の反応時間では効果の発現がやや不安定であるからである。さらに好ましくは約20wt%である。20wt%以上であると、短時間でも安定した水熱反応促進効果を得ることができる。また、上限は、約30%以下であることが好ましい。より好ましくは、約24%以下である。
本発明の前処理工程では、後段の反応工程で使用するアルカリ溶液よりも高濃度のアルカリ溶液と焼却灰とを接触させることにより、後段の反応工程における反応の促進効果を焼却灰に均一にかつ確実に付与することができる。
なお、本発明で使用する固体換算アルカリと同量の固体状アルカリと接触させた場合、直接接触部が部分的にゼオライト化反応が進行してしまったり、前処理の効果が発揮されにくいおそれがある。また、かかる不均一性を回避するには、長時間に渡る混合や固形アルカリの使用量を増大させることになり効率的でない。
【0011】
焼却灰と第1のアルカリ溶液との配合比とは特に限定しないが、当該焼却灰の量からみて、後段の反応工程において当該焼却灰中のケイ素やアルミニウムとアルカリと反応させてゼオライトを得るのに必要な量のアルカリを供給することが好ましい。当該アルカリ量は、換言すれば、当該焼却灰が、後段での反応工程で消費するアルカリ量である。前処理工程において、一定量の焼却灰からゼオライトを得るために必要な量のアルカリを供給することで、この処理物を反応させて得られる反応液を固液分離して回収したアルカリ溶液を再び反応工程でリサイクル利用する場合、当該反応工程では、消費されるアルカリが前処理工程の処理物から供給されるため、おおよそ、一定のアルカリ濃度を容易に維持することができる。
例えば、焼却灰:固形物換算アルカリ分の重量比が100:10〜20の範囲であることが好ましい。固形物換算アルカリ分の重量比が前記10未満であると、アルカリ量が不足するため、前処理効果が発揮されないおそれがあり、また、当該重量比が前記20を超えると、アルカリ量が過剰になる傾向があるからである。好ましくは、焼却灰:固形物換算アルカリ分が100:約15である。
【0012】
焼却灰と第1のアルカリ溶液とを加熱する温度は、好ましくは100℃以下である。100℃を超えると、焼却灰中のケイ素と水酸化ナトリウムにより水ガラスが生成し、アルカリ溶液の水が蒸発し混合物が固化してしまうと同時に、気化熱に消費熱エネルギーの増大によりランニングコストが上昇してしまうからである。また、焼却灰とアルカリとの水熱反応が進行してしまい、用途が限定されるソーダライトに変質してしまうおそれがあるからである。さらに、加圧容器が必要になり、生産能力の低下及び装置コストが上昇し、前処理工程を回分式とせざるを得ないからである。上限は好ましくは100℃未満であり、さらに好ましくは、80℃以下である。80℃を超えると、ソーダライトが生成しやすくなるからである。また、下限は、好ましくは、50℃以上である。50℃未満であると、短時間で有効な前処理を達成することが困難であるからである。より好ましくは、60℃以上である。さらに好ましくは、70℃以上80℃以下である。
【0013】
前処理工程に対する熱の供給形態は特に限定しない。焼却灰と第1のアルカリ溶液とを混合できる混合槽などの混合手段に対して、加熱手段を備えるようにすることができる。また、加熱した焼却灰を使用することにより、熱を供給することもできる。さらに、加熱した第1のアルカリ溶液を供給することもできる。さらに、これらの手段を2種類以上組み合わせて用いることもできる。
なお、前処理工程においては、焼却灰と第1のアルカリ溶液とは、加熱と同時に混合されることが好ましい。焼却灰粒子に前処理効果を均一に付与するためである。より好ましくは、予め、加熱した焼却灰に対して、第1のアルカリ溶液(予め加熱されていてもよいし加熱されていなくてもよい)を供給し、加熱及び混合することが好ましい。
【0014】
焼却灰と第1のアルカリ溶液との混合状態は、粘性の高いスラリー状であることが好ましい。好ましくは、固形分(焼却灰)が80wt%以下である。また、好ましくは、35wt%以上である。固形分が多すぎてもまた少なすぎても、後段の反応工程においてソーダライトが生成しやくなるからである。また、固形分が35wt%以上80wt%以下であると、焼却灰粒子表面とアルカリとをよく接触させることができる。
例えば、アルカリ濃度の上記好適範囲(12wt%以上36wt%以下)内の濃度のアルカリ溶液を用いて、上記焼却灰:アルカリの重量比の上記好適比(100:10〜20)を達成しようとすると、焼却灰100gに対して、アルカリ溶液は約27g(水量約18g)〜約167g(水量約147g)の範囲となる。この範囲においては、同時に、好ましい水分量のスラリーを得ることができる。
【0015】
前処理工程における加熱時間は、特に限定しないが、焼却灰粒子の表面が十分にアルカリと接触できる程度の範囲で行うことが好ましい。
好ましくは、1分以上20分以下とする。1分未満では、反応促進効果が得られにくく、20分を超えると、後段の反応工程で、水熱反応が促進されすぎてソーダライトが生成するおそれがあるからである。より好ましくは、5分以上15分以下であり、もっとも好ましくは10分程度である。
【0016】
前処理工程を実施することにより、焼却灰粒子とアルカリとの反応性を向上させることができる。このことは、前処理工程を実施しない焼却灰を用いた対比実験においても明らかである。本発明者らが確認したところによれば、前処理により、焼却灰粒子のケイ素及びアルミニウム(特にアルミニウム)が第2のアルカリ溶液中に溶解しやすくなることがわかっている。すなわち、前処理後の焼却灰と第2のアルカリ溶液とからなる反応用組成物とすると、前処理をしていない焼却灰よりも速やかに当該液相中にケイ素とアルミニウムの濃度が高くなる。これにより、反応用組成物においては、ゼオライト化反応が開始されるのに必要なケイ素とアルミニウム濃度に早く到達し、ゼオライト化反応が速やかに進行するもの推測される。
【0017】
また、本発明の前処理工程によれば、非常に短時間で十分な反応促進効果を得ることができる。したがって、前処理工程から後段の反応工程へ処理物を断続的にあるいは連続的に供給することに適している。特に、加熱温度が100℃未満でも十分に促進効果を得ることができるため、連続式の反応工程を容易に実施することができる。
【0018】
(反応工程)
次に、前処理工程で得られた処理物に水及び/又はアルカリ溶液を供給し、前記焼却灰と前記第1のアルカリ溶液よりも低い濃度の第2のアルカリ溶液との反応用組成物を調製する。この反応用組成物は、前処理された焼却灰と第2のアルカリ溶液から構成される。第2のアルカリ溶液は、反応用組成物の液相を構成している。
前記処理物は、焼却灰と第1のアルカリ溶液とを含んでいる。この処理物に、水及び/又はアルカリ溶液を供給することにより、焼却灰と第1のアルカリ溶液よりも低い濃度の第2のアルカリ溶液との反応用組成物を調製することができる。すなわち、反応工程においては、第1のアルカリ溶液は希釈される。
【0019】
希釈に用いる水及び/又はアルカリ溶液の量や濃度は、特に限定しない。反応工程において、第2のアルカリ溶液(液相)のアルカリ濃度が、第1のアルカリ溶液のアルカリ濃度よりも低くなるように調製されていればよい。一般的に、第2のアルカリ溶液の濃度が、焼却灰とアルカリ溶液とを混合してゼオライト化反応を生じさせるために用いられる当該アルカリ溶液の濃度となっていることが好ましい。すなわち、約8wt%以上約12wt%以下のアルカリ濃度となっていることが好ましい。
このためには、3.5wt%以上10.5wt%以下のアルカリ濃度の添加用アルカリ溶液を前記処理物に添加することが好ましい。3.5wt%未満であると、ゼオライト化反応が進まない又は遅れるおそれがあり、10.5wt%を超えるとアルカリ溶液の濃度が高すぎて使用用途の狭いソーダライトが生成するおそれがある。好ましくは、5wt%以上であり、また8wt%以下である。
【0020】
特に、本発明では、反応工程に存するアルカリは、前処理工程の処理物中のアルカリと、添加用アルカリ溶液から供給されるが、処理物中に、反応工程で消費されるであろうアルカリ分を補填するようにすれば、添加用アルカリ用溶液の濃度は反応工程前後でほぼ一定とすることができる。すなわち、無駄なアルカリの使用を抑制することができる。さらに、添加用アルカリ溶液を、反応工程後の生成組成物中の液相を用いることにより、さらにアルカリを効率よく使用することができる。なお、反応工程後の液相を用いる場合には、一旦、アルカリ濃度を、上記範囲、すなわち、3.5wt%〜10.5wt%に調整しておくことが好ましい。
【0021】
反応用組成物に、ケイ素イオン(Si+4イオン)が含まれていると、水熱反応をより一層促進し、また、好ましい人工ゼオライト(典型的にはフィリップサイト型)を得ることができる。すなわち、前述したように、前処理物における焼却灰においては、特にアルミニウムが溶出しやすくなっているため、予め反応用組成物中にケイ素イオンが存在すると、人工ゼオライトの生成条件に速やかに到達しゼオライト化が進行し、結果としてゼオライト化が促進されるからである。
かかる反応用組成物を調製するには、予め、前記した添加用のアルカリ溶液中に、ケイ素イオンあるいはケイ素イオン供給体を含有させておくことが好ましい。添加用アルカリ溶液におけるこれらの含有量は、ケイ素イオン供給量として3.0g/L以上となる量であることが好ましい。3g/L未満であると、ケイ素イオンによる水熱反応の促進効果が発現しにくくなる、あるいは用途の狭いソーダライトが生成するおそれがあるからである。特に、当該ケイ素イオン供給量は、石炭灰を出発原料とする場合において好ましい。なお、石炭灰以外の焼却灰を出発原料とする場合、石炭灰に比較した珪酸塩含有量の多少を考慮して、当該ケイ素イオン供給量を調節することができる。
なお、反応用組成物に、ケイ素イオンを含有させるには、例えば、水ガラス、メタケイ酸ソーダなどのケイ素イオン供給体を直接添加することもできる。
【0022】
また、既に記載したように、本発明の反応工程の反応液の固液分離工程で分離された液相を、添加用アルカリ溶液あるいはその調製用の液として用いることは、反応用組成物へのケイ素イオンの供給の点においても有用である。
一般的に、焼却灰とアルカリとのゼオライト合成反応後の液相には、未反応のケイ素イオンが残留する。従来において、反応後の液相を回収して繰り返し使用する場合には、この未反応ケイ素イオンが蓄積することにより、例えば、アルカリ溶液の水ガラス化、生成ゼオライトの品質低下等の焼却灰のゼオライト化に支障をきたしていた。
しかしながら、本発明の反応工程において、既に説明した前処理によりアルミニウムイオンが溶出しやすくなっており、反応系に予めケイ素イオンが存在すると、速やかにゼオライト化反応が進行する。すなわち、予め存在していたケイ素イオンは速やかに消費されはじめる。その一方、焼却灰からもケイ素イオンが溶出する。反応終了後には、予め存在していたケイ素イオン+溶出したケイ素イオンの総量から消費されたケイ素イオンを差し引いた量が未反応ケイ素イオンとして残存することになる。消費されるケイ素イオン量及び溶出するケイ素イオン量は、反応条件が一定であるならば、反応系における焼却灰の量に応じておおよそ決まってくるものである。しかも、両者はほぼ等しい量となる。
したがって、上記好ましい量のケイ素イオン濃度となるように調整された添加用アルカリ溶液(ある程度再利用を繰り返したアルカリ溶液であって、上記濃度に到達したもの、あるいは上記濃度に調整したものを同等に使用することができる。)を用いて反応用組成物を調製し、水熱反応後の液相を、添加用アルカリ溶液として再利用することにより、従来と異なり、逆にゼオライト化が促進される。すなわち、本発明の当該形態によれば、アルカリ有効利用と水熱反応促進との双方を実現することができる。
【0023】
なお、反応用組成物において、固形分(焼却灰)濃度が約15wt%以上約30wt%以下であることが好ましい。この範囲内で反応用組成物の取り扱いが容易であり、焼却灰とアルカリ溶液とを効率よく反応させることができる。30wt%を超えると、反応用組成物の取り扱いが困難となり、15wt%未満であると、アルミニウム及びケイ素の濃度がゼオライト化反応が開始される濃度に到達するのに時間を要し、前処理の効果を得られにくくなる。最も好ましくは約20wt%〜25wt%である。
【0024】
反応用組成物には、また、必要に応じてアルミン酸ナトリウムや水酸化アルミニウムなどを添加して、所望の組成ないし型のゼオライトが生成するように調整することができる。
【0025】
反応用組成物を加熱して焼却灰とアルカリとの水熱反応によりゼオライトを生成させる加熱温度は、好ましくは、100℃未満あるいは煮沸させない程度とする。前処理工程を経ることにより、100℃未満あるいは煮沸させなくても、短時間で効率よくゼオライト化を達成することができる。また、100℃未満あるいは煮沸させない温度範囲であると、アルカリ溶液を煮沸することなく、すなわち、蒸発による熱エネルギーロスなく、水熱反応を達成することができる。さらに、前段の前処理工程からの処理物を反応工程に連続的あるいは断続的に供給して、反応工程を連続的に実施することができるようになる。
一方、100℃以上とすると、加圧容器を要することになり、装置コストの他、回分方式に採用せざるを得なくなり、生産効率の向上が困難となる。好ましくは、98℃以下とする。また、好ましくは90℃以上とする。
【0026】
反応時間は、特に限定しないが、本反応工程では、3時間〜4時間程度でおおよそ好ましい品質のゼオライトを得ることができる。かかる反応時間内で反応工程を終了することにより、連続的な反応工程の実施が容易になる。より好ましくは4時間程度である。一方、4時間を超えて反応させても陽イオン交換容量の増加率は小さく、エネルギーコストの点から効率的でなくなる傾向がある。
【0027】
前処理工程と反応工程によれば、前処理工程を行うことにより、反応工程における反応性が向上されているため、反応条件を緩やかにしても十分に短時間で反応を実施し、一定以上の品質のゼオライトを得ることができる。また、前処理工程と反応工程とをいずれも100℃未満の温度で行うことにより、これらの工程を連続的に実施することが可能となり、ゼオライトの製造効率を一層向上させることができる。
なお、反応性が向上されているために、高温高圧での反応条件で反応工程を実施すれば、より一層の時間短縮を図ることができる。
また、本工程によれば、例えば、焼却灰から、フィリップサイト型ゼオライトや、条件を合わせることによりフォージャサイト型ゼオライトを効率的に得ることができる。
さらに、得られるゼオライトの陽イオン交換容量(CEC)は、約150以上約230以下のものを効率よく得ることができる。より好ましくは、約180以上約210以下のものを効率よく得ることができる。
なお、本発明方法は、連続式でも回分式でもいずれの反応方式でも容易に実施することができる。
【0028】
(製造装置)
上記前処理工程、反応工程を実施する装置については特に限定しないが、好ましくは、焼却灰とアルカリ溶液とを混合しながら加熱する、1又は2以上の処理手段と、前記処理手段の少なくとも一つに水及び/又はアルカリ溶液を供給して混合物におけるアルカリ濃度を低下させる希釈手段、とを備えている。
以下、本装置の一実施形態の概略を図1に例示し、図1を参照しながら説明する。なお、図1に示す実施形態は、説明のための例示であり、本発明の装置を当該形態に限定するものではない。
【0029】
図1に示すように、本装置2は、処理手段として、第1の処理手段4と、第2の処理手段24とを備えている。また、本装置2は、希釈手段44を備えている。
(処理手段)
処理手段は、容器と、容器内の内容物を攪拌、振動、循環などして混合ないし均一化する混合手段と、内容物に熱を供給する加熱手段とを備えている。前処理工程と反応工程においては、後段の反応工程で使用するアルカリ溶液の濃度が前段の前処理工程で使用するアルカリ溶液の濃度よりも低く、また、後段の反応工程におけるスラリー濃度が前段のスラリー濃度よりも低くなっている。すなわち、後段工程では、前段工程の処理物を希釈する形態となる。したがって、それぞれの工程を別の処理手段で実施することもできるが、単一の処理手段において、前処理工程と反応工程とを実施することも容易である。
図1に示す形態では、両工程をそれぞれ別の処理手段で実施するように、第1の処理手段4と第2の処理手段24とを備えている。
【0030】
第1の処理手段4は、前処理工程を実施するための手段として備えられている。当該処理手段4は、容器6と、混合手段10と、加熱手段14とを備えている。容器6は、前処理工程の被処理物であるスラリー状体の処理に適した構造を備えていればよく、特にその形態を限定しない。なお、内容物を100℃以上に加熱する場合には、加圧容器である必要がある。混合手段10は、特に限定しないで各種公知の混合手段を用いることができる。加熱手段14は、容器6内の内容物に熱を供給可能であれば足りる。特に、前処理工程を実施する処理手段においては、容器6に装備され、容器6内の内容物を直接加熱可能な形態の他、容器6に供給すべき原材料、すなわち、焼却灰あるいはアルカリ溶液のいずれかあるいは双方を、容器6に供給前に加熱可能な形態も採用することができる。さらに、この形態の双方を備えることもできる。内容物を直接加熱可能な形態としては、図1に示すように、容器6の外部にジャケット式に設けた加熱手段14の他、内部コイル式加熱手段あるいは容器6内の内容物の外部循環径路を設け、この循環径路に加熱手段を備えることもできる。また、加熱された原材料を供給する形態にあっては、アルカリ溶液および/または焼却灰をインラインで加熱しながら供給する手段あるいはこれらを貯留して加熱し、その後供給する手段などを採用することができる。
【0031】
第1の処理手段4は、回分方式及び連続方式のいずれの形態も採ることができる。ゼオライトの効率的製造の観点からは、連続式であることが好ましい。特に、100℃未満の加熱温度にて前処理する場合には、容易に連続方式とすることができ、また、処理物を後段の反応工程へ連続的に供給可能となる。
図1に例示する第1の処理手段4には、回分式であり、容器6内の処理物を排出し後段の反応工程に供給するための配管16とバルブ18とを備えている。
【0032】
第2の処理手段24は、反応工程を実施するために備えられている。第1の処理手段と同様に、容器26と、混合手段30と、加熱手段34とを備えている。容器26と混合手段30については、第1の処理手段4に採用できる手段を本処理手段24においても同様に採用することができる。
加熱手段34については、第1の処理手段4における加熱手段14と同様に、容器6内の内容物に熱を供給可能であれば足り、同様の加熱手段を採用することができるが、特に、本処理手段24においては、反応工程が時間単位で実施されるため、容器26に装備され、容器26内の内容物を直接加熱可能な形態を採用することが好ましい。したがって、前段の反応工程の処理物や他の材料(例えば、後述する希釈手段から供給される水及び/又はアルカリ溶液)などを、容器26に供給前に加熱可能な形態も採用できるが、直接加熱可能な形態に併用して採用することが好ましい。したがって、第2の処理手段24には、図1に示すようにジャケット式加熱手段などの直接加熱方式の加熱手段34を備えていることが好ましい。
なお、第2の処理手段24は、第1の処理手段4の下方に配置されていると、前処理工程の処理物が容易に第2の処理手段24の容器26内に搬送することができる。
【0033】
第2の処理手段24は、回分方式及び連続方式のいずれの形態も採ることができる。ゼオライトの効率的製造の観点からは、連続式であることが好ましい。特に、100℃未満の加熱温度にて反応させる場合には、容易に連続方式とすることができ、また、反応用組成物を後段へ連続的に供給可能となる。なお、図1に例示する第2の処理手段24は、回分式となっている。
【0034】
本装置2には、反応工程を実施する処理手段である第2の処理手段24には、前処理工程の処理物を反応工程の反応用組成物に調整するための手段、すなわち、希釈手段44を備えている。
希釈手段44は、前処理工程の処理物に水及び/又はアルカリ溶液を供給する手段である。本手段44は、水及び/又はアルカリ溶液である希釈用液を貯留する貯留手段46と、貯留手段46から第2の処理手段24にこれらの希釈用液を供給する配管50とを備えることができる。貯留手段46の希釈溶液は、配管50を介して、バルブ52の開閉に制御されて、図示しない制御手段により定量的に第2の処理手段24へ供給されるようになっている。
貯留手段46は、多くの場合アルカリ溶液を貯留するが、別途水の貯留手段を備えるようにして、水のみを処理手段に供給するように構成することもできる。
【0035】
貯留手段46は、水及び/又はアルカリ溶液を希釈用液として貯留するが、アルカリ濃度を調整可能になっていることが好ましい。この場合、水とアルカリ溶液(濃度の高い原液の場合もある)の供給源(図示しない)からそれぞれの液体が貯留手段46に供給されるようにすることができる。それぞれの供給量は、バルブの開閉で制御されるようにすることができる。さらに、好ましくは、貯留手段46には貯留するアルカリ溶液のアルカリ濃度を検出するためのアルカリ濃度検出手段を備えるようにする。
【0036】
貯留手段46へ供給されるアルカリ溶液の供給源は、反応用組成物の固液分離後の液体とすることができる。当該液体には、アルカリが含まれているとともに、ケイ素イオンを含有している観点から、反応工程に供給するアルカリ溶液源としては好ましい。この場合には、後段の固液分離手段から、分離後の液体を貯留手段46へ搬送する配管系54を備えるようにすることが好ましい。
【0037】
また、貯留手段46には、別途、反応用組成物にケイ素イオンを供給できるケイ素イオン供給体を添加できるようにすることもできる。また、貯留手段46には、攪拌装置や外部循環経路などの混合手段を備えることが好ましい。さらに、貯留手段46には、反応工程において調製される反応用組成物の温度を安定化し、早期に好ましい温度に到達させるために、希釈用液を一定温度に加熱する加熱手段を備えることが好ましい。
なお、単一の処理手段において前処理工程と反応工程とを実施する場合には、希釈手段44は、前処理工程を実施した後の処理手段の容器に希釈用液を供給するように構成される。
【0038】
本装置2は、さらに、通常のゼオライト製造装置と同様に、固液分離手段64、洗浄手段84、乾燥手段104を備えることができる。
固液分離手段64は、反応工程を実施する処理手段の後段、すなわち、図1においては第2の処理手段24の後段に配置されている。固液分離手段64には、遠心力、ろ過などの各種公知の手段を採用することができる。
固液分離後の液体は、前述したように、希釈手段44の貯留手段46に供給するように構成することができる。また、固液分離後の固形分は、洗浄手段84に供給され、固形分に残留するアルカリを洗浄する。なお、洗浄手段84には、通常、同時に、脱水手段を付随している。
次いで、洗浄された固形分は乾燥手段104に供給され、乾燥される。
【0039】
以下、本装置2を用いて焼却灰からゼオライトを製造する工程について説明する。
まず、第1の処理手段4の容器6に所定重量の焼却灰を投入し、混合手段10を作動させながら、加熱手段14を作動させることにより、焼却灰を所定温度にまで加熱する。その後、第1のアルカリ溶液の所定量を供給して、加熱手段14により前処理温度を所定時間維持して、前処理工程を実施する。
【0040】
次いで、第1の処理手段4の容器6内の処理物を、配管16のバルブ18を開いて下方に配置された第2の処理手段24の容器26に供給する。処理手段24の容器26には、予め、希釈手段44から、アルカリ濃度などが調整された希釈用液を供給しておくことができる。さらに、加熱手段34により、希釈用液を反応温度に予め加熱しておくことができる。
この容器26において、処理物と希釈用液とを供給し、混合手段30により混合することにより、焼却灰と第2のアルカリ溶液とを含む反応用組成物を調製する。このとき、添加する希釈用液により同時にスラリー濃度も調整することが好ましい。なお、希釈用液としては、必要に応じて水のみを単独供給することもありうる。
反応用組成物を、混合手段30で混合しつつ加熱手段34を作動させて所定温度に所定時間維持することにより、反応工程を実施する。
【0041】
反応工程後、反応生成物を、所定経路を通じて、固液分離手段64、洗浄手段84、乾燥手段104に順次搬送・供給し、乾燥されたゼオライトを得る。
【0042】
以上説明したように、本装置2によれば、本発明方法を効率的に実施することができる。特に、希釈手段44により、容易に前処理工程と反応工程における第1のアルカリ溶液から第2のアルカリ溶液への希釈を容易に実現することができる。また、固液分離後の液相を希釈用液の少なくとも一部として利用する構成の場合には、アルカリの効率的利用とケイ素イオンによる反応性向上とを同時に実現できる。
【0043】
【実施例】
以下、本発明を実施した具体例について説明するが、これらの具体例は本発明を限定するものではない。
石炭灰300gに対して、表1に示す、16wt%、20wt%、24wt%、36wt%の各種濃度のNaOH水溶液(本発明における第1のアルカリ溶液に相当する。)を、石炭灰:水酸化ナトリウムの重量比が100:15となるように添加し、4種類の前処理用組成物(試料1〜4)を調製した。試料1及び2については80℃にて10分間、試料3及び4については60℃にて10分間、それぞれ混練することにより、前処理工程を実施した。
次いで、得られた各処理物に、ケイ素イオン(Si4+)を含有しない6wt%水酸化ナトリウム溶液、あるいはSi4+として、3.56g/Lが溶解している6wt%水酸化ナトリウム溶液を、それぞれ石炭灰(固形分)濃度が20wt%となるように添加して合計8種類の反応用組成物を得た。なお、ケイ素イオン(Si4+)を含有しない6wt%水酸化ナトリウム溶液を添加した反応用組成物を表1において、それぞれaを付して示し、Si4+として、3.56g/Lが溶解している6wt%水酸化ナトリウム溶液を添加した反応用組成物を表1において、それぞれbを付して示した。
なお、最終的に得られた反応生成物の液相(第2のアルカリ溶液に相当する)におけるアルカリ濃度は、試料1〜4について、それぞれ約8wt%であった。また、Si4+として、3.56g/Lが溶解している6wt%水酸化ナトリウム溶液は、石炭灰をゼオライト化するのに使用した水酸化ナトリウム水溶液を、水酸化ナトリウム濃度を6wt%に調整したものであった。
【表1】
【0044】
このようにして得られた試料1〜4の計8種の反応生成物を、98℃で6時間加熱・混合する工程を実施し、水熱反応を行った。水熱反応2時間、3時間、4時間、5時間及び6時間経過時の反応生成物中の固形分を採取し、X線回折分析を行った。この結果を図2〜4に示す。また、水熱反応4時間及び6時間の反応生成物中の固形分を採取して、陽イオン交換容量を測定した。結果を表2に示す。
【表2】
【0045】
なお、比較例として、石炭灰300gに対して、Si4+として3.56g/Lを溶解している、あるいは溶解していない8wt%NaOH水溶液を、スラリー(石炭灰固形分)濃度が約20wt%となるように添加して、2種類の比較例の反応用組成物を得た。なお、Siイオン含有アルカリ溶液を用いた反応用組成物を従来例1の組成物とし、Siイオンを含有しないアルカリ溶液を用いた反応用組成物を従来例2の組成物というものとする。これらの反応用組成物を、100℃で6時間加熱して、水熱反応を行った。水熱反応2時間、3時間、4時間、5時間及び6時間経過時の反応生成物中の固形分を採取し、X線回折分析を行った。この結果を図5に示す。また、水熱反応4時間及び6時間の反応生成物中の固形分を採取して、陽イオン交換容量を測定した。
【0046】
図2〜4には、試料1〜3の各種反応時間におけるゼオライト(フィリップサイト型)の特性ピーク角度(回折角度)におけるピーク強度と、同反応時間における比較例の反応組成物(従来例1:Si含有)のピーク強度に対する%とを併せて示してある。
図2〜4によれば、特に、水熱反応3時間〜4時間の範囲で、試料のピーク強度は、従来例1に比較して大きかった。一方、水熱反応6時間では、大きな差がなかった。この結果によれば、試料の反応生成物においては、ゼオライト化の反応が、従来例1に比較して速やかに進行していたことを示している。
さらに、反応用組成物中におけるケイ素イオンの有無に着目すると、特に、試料1及び2の反応用組成物において、水熱反応3時間〜4時間の範囲で、ケイ素イオンを含有する反応用組成物に、より大きなピーク強度が得られていた。このことは、ケイ素イオンが存在することにより、より一層ゼオライト化反応が促進されることを意味している。
【0047】
なお、図5には、従来例1と従来例2からは、前処理を行わない場合には、ケイ素イオン含有組成物において、ケイ素イオンを含有しない組成物に比較してより低いピーク強度となっていた。すなわち、反応用組成物中にケイ素イオンを含有することにより、ゼオライト化が抑制されることが明らかであった。
【0048】
さらに、表2及び図6に示す陽イオン交換容量(CEC)の測定結果によれば、試料1〜3の反応生成物(ケイ素イオン含有)において、従来例1のCECよりも高い数値が得られていた。特に、4時間〜6時間の範囲において、相対的に高いCEC値が得られていることがわかった。このように、CECの測定結果からも、本発明によれば、短い反応時間において、ゼオライト化反応が促進され、相対的に高いCECのゼオライトを得られることがわかった。特に、このような促進効果は、試料1及び試料2において顕著であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のゼオライトの製造装置の概略を示す図である。
【図2】実施例の試料1の水熱反応の各経過時間におけるX線回折分析結果を示す表である。
【図3】実施例の試料2の水熱反応の各経過時間におけるX線回折分析結果を示す表である。
【図4】実施例の試料3の水熱反応の各経過時間におけるX線回折分析結果を示す表である。
【図5】従来例1及び2の水熱反応の各経過時間におけるX線回折分析結果を示す表である。
【図6】実施例の試料1b、2b、3bと従来例1における水熱反応の経過時間とCECとの関係を示す図である。
【符号の説明】
2 製造装置
4 第1の処理手段
6 容器
10 混合手段
14 加熱手段
16 配管
18 バルブ
24 第2の処理手段
26 容器
30 混合手段
34 加熱手段
44 希釈手段
46 希釈用液の貯留手段
50 配管
52 バルブ
64 固液分離手段
84 洗浄手段
104 乾燥手段
Claims (16)
- ゼオライトの製造方法であって、以下の工程:
(a) 焼却灰と第1のアルカリ溶液とを加熱・混合する工程、及び
(b) 前記工程で得られた処理物に水及び/又はアルカリ溶液を供給し、前記焼却灰と前記第1のアルカリ溶液よりも低い濃度の第2のアルカリ溶液との反応用組成物を調製し、この反応用組成物を加熱して前記焼却灰とアルカリとを反応させる工程、
を備える、方法。 - 前記(a)工程における加熱温度は100℃未満である、請求項1記載の方法。
- 前記(b)工程における加熱温度は100℃未満である、請求項1又は2に記載の方法。
- 前記(b)工程における反応用組成物中に、ケイ素イオンあるいはケイ素イオン供給体を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- 前記ケイ素イオン供給体は、前記第2の濃度のアルカリ溶液において3g/l以上のケイ素イオン濃度となっている、請求項4記載の方法。
- 前記(a)工程における混合物における焼却灰に対するアルカリの供給量は、当該焼却灰をアルカリと反応させてゼオライトを得る際のアルカリ消費量に相当する量とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
- 前記第1のアルカリ溶液のアルカリ濃度は、12wt%以上36wt%以下である、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
- 前記(a)工程における焼却灰と第1アルカリ溶液とは、焼却灰:固形換算アルカリ分の重量比が100:10〜20となるように配合する、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
- 前記(b)工程において、前記処理物に供給されるアルカリ溶液のアルカリ濃度は、3.5wt%以上10.5wt%以下である、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
- 前記(b)工程における反応用組成物における焼却灰濃度は15wt%以上30wt%以下である、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
- 前記(a)工程で得られた混練物を、連続的に前記(b)工程に供給する、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
- ゼオライトを得るための焼却灰の前処理方法であって、
焼却灰と12wt%以上36wt%以下の濃度のアルカリ溶液とを加熱・混合する工程、
を備える方法。 - 前記焼却灰は、石炭灰である、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
- ゼオライトの製造装置であって、
焼却灰とアルカリ溶液とを100℃未満の温度で混合しながら加熱する、1あるいは2以上の処理手段と、
前記処理手段のいずれかに水及び/又はアルカリ溶液を供給して混合物における前記アルカリ濃度を低下させる希釈手段、
とを備える、装置。 - 前記処理手段は、焼却灰と第1のアルカリ溶液とを混合しながら加熱する第1の処理手段と、前記混合手段のうち少なくとも一つは、焼却灰と前記第1の濃度のアルカリ溶液よりも濃度の低い第2の濃度のアルカリ溶液とを加熱しながら混合する第2の混合手段とを備え、
前記希釈手段は、前記第2の処理手段に対して、水及び/又はアルカリ溶液を供給する、請求項14記載の装置。 - さらに、前記処理手段において得られる処理物を固液分離する手段と、
固液分離後の液体を前記希釈手段に備えられる貯留槽に供給する手段、
とを備える、請求項14又は15に記載の装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002194946A JP3406592B1 (ja) | 2002-07-03 | 2002-07-03 | ゼオライトの製造方法及び装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002194946A JP3406592B1 (ja) | 2002-07-03 | 2002-07-03 | ゼオライトの製造方法及び装置 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP3406592B1 JP3406592B1 (ja) | 2003-05-12 |
JP2004035329A true JP2004035329A (ja) | 2004-02-05 |
Family
ID=19195591
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002194946A Expired - Fee Related JP3406592B1 (ja) | 2002-07-03 | 2002-07-03 | ゼオライトの製造方法及び装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3406592B1 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012159418A (ja) * | 2011-02-01 | 2012-08-23 | Jgc Corp | 放射性廃棄物の固化処理方法 |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN113857201B (zh) * | 2021-09-01 | 2024-07-19 | 四川轻化工大学 | 一种流水线形式的酒糟综合处理系统 |
-
2002
- 2002-07-03 JP JP2002194946A patent/JP3406592B1/ja not_active Expired - Fee Related
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012159418A (ja) * | 2011-02-01 | 2012-08-23 | Jgc Corp | 放射性廃棄物の固化処理方法 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP3406592B1 (ja) | 2003-05-12 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
RU2243937C2 (ru) | Способ и установка для получения цеолита | |
JP4414394B2 (ja) | 石炭を脱塩するための方法 | |
EP2749541A1 (en) | Method for retreating dewatered sludge | |
JP2011509236A (ja) | 炭素質材料を精製するためのシステム及び方法 | |
CN110156044A (zh) | 一种无钠粉煤灰基zsm-5分子筛的制备方法 | |
JP2010527876A (ja) | 硫酸カルシウム二水和物からα‐硫酸カルシウム半水和物を製造する方法 | |
JP2004035329A (ja) | ゼオライトの製造方法及び装置 | |
JP2013527112A (ja) | 硫酸第一鉄一水和物の製造方法 | |
CN104291351B (zh) | 一种利用β分子筛母液合成β分子筛的方法 | |
JP2002137917A (ja) | 加熱反応管接触によるゼオライトの連続合成方法およびその連続合成装置 | |
JP5562606B2 (ja) | 放射性アンモニア含有排液の処理方法 | |
TW491814B (en) | Method and device for producing artificial zeolite | |
JP2002037622A (ja) | 人工ゼオライトの製造方法および人工ゼオライトの製造装置 | |
JP2003145092A (ja) | 製紙スラッジ焼却残渣から得られる多孔質物質原料及び多孔質物質並びにその製造方法 | |
ES2145693A1 (es) | Sintesis de zeolitas a partir de residuos de combustion mediante microondas. | |
CN106540651B (zh) | 一种利用微波加热技术改性沉积物制备除磷材料的方法 | |
JP2006239541A (ja) | 湿式酸化分解処理装置およびその触媒洗浄方法 | |
JP3942588B2 (ja) | 表面ゼオライト化ガラスの製造方法 | |
JP4343467B2 (ja) | 硫酸アルミニウムの製造方法 | |
Inada et al. | Mechanism and morphological change in zeolite formation from coal fly ash | |
JP2003313025A (ja) | ゼオライト製造方法およびゼオライト製造装置 | |
EP4299533A1 (en) | A method for treating wastewaters from anaerobic digestion, a system for treating wastewaters, use of dry lime composition and a fertilizer product | |
EP2132145B1 (en) | Composition for the treatment of acidic waste water | |
EP0195723A1 (fr) | Procédé et dispositif pour le conditionnement, par liants hydrauliques, d'effluents radioactifs de faible et moyenne activité | |
JPS5921520A (ja) | 化学残渣の水熱処理方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |