JP2012158851A - 芳香族ポリエステル繊維の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 溶融時に異方性を示す芳香族ポリエステルを溶融紡糸し、単糸繊度3dtex以下のマルチフィラメントを得る芳香族ポリエステル繊維の製造方法において、紡糸口金直下にヒーターを設けて、紡糸口金表面温度を融点−10℃から融点に保持し、更に、ヒーター下方部に保温筒を設けて、紡糸口金孔から吐出した繊維を徐冷することを特徴とする芳香族ポリエステル繊維の製造方法。
【選択図】 図1
Description
また、溶融異方性芳香族ポリエステルの極細繊維を製造する方法については、急冷することが必要であり、徐々に冷却したのでは繊維の太さ斑になったり、断糸が頻発したりすることが開示されている(特許文献2等参照)。
本発明の目的は、高強度、高弾性率有する、溶融異方性芳香族ポリエステルからなる細物繊維(単糸繊度3dtex以下のマルチフィラメント)を安定的に製造することができる芳香族ポリエステル繊維の製造方法を提供することにある。
また、本発明により、高強度、高弾性率有する、細物(単糸繊度3dtex以下)の溶融異方性芳香族ポリエステルマルチフィラメントが得られる。
図1において、1は紡糸ヘッド、2は紡糸パック、3は紡糸口金、4はヒーター、5は保温筒である。
押出された樹脂は、配管を通り、紡糸ヘッド1へ送られ、ギアーポンプ等の公知の計量装置(図示せず)で計量され、紡糸パック2内で、フィルターを通過した後、紡糸口金3に入る。ポリマー配管から紡糸口金3までの温度は、溶融異方性芳香族ポリエステルの融点以上、熱分解温度以下とすることが好適である。
ここでいう融点とは、DSC曲線の融解吸熱ピークの頂点である。
ヒーターの紡糸方向の長さは、過度に長いと製糸性が悪くなるため、紡糸口金表面から100mmまでとすることが好ましい。
また、ヒーターとしては、雰囲気の温度を上げ、紡糸口金表面温度を厳密にコントロールするために、金属(真鍮、アルミニウム、鉄等)の鋳込ヒーターが好ましい。
また、紡糸口金直下全体を覆うように、円筒状、多角形筒状であることが好ましい。
紡糸口金表面温度を一定に保つことにより、紡出される繊維の繊維径を安定させることができる。
積極的に冷却する目的で、冷却風を吹き出すこと、または、ドラフトを容易にする目的で、温風または熱風を吹き出し、積極的に加熱することは、紡糸口金下の雰囲気温度が変動して、断糸を助長するものであり、本発明においては不適である。
γ=4Q/πr3
(但し、rは紡糸口金孔の半径(cm)、Qは単孔当たりのポリマー吐出量(cm3/sec))
上記範囲を外れると、繊維の配向が不十分であったり、曳糸性の点から細繊度の繊維が得られず、目的の物性(強度)が得られなかったりする傾向にある。
そのためには、紡糸口金の孔径(直径)は好ましくは0.2mm以下、より好ましくは0.18mm以下であることが好ましい。
溶融異方性芳香族ポリエステルの場合、流動特性(紡糸時高温下での溶融異方性芳香族ポリエステル樹脂の粘度は50パスカル秒以下)により、5μm以下のフィルターを使用しても紡糸パック圧の上昇がなく、工業的に長時間の紡糸は可能である。
熱処理中、固相重合を安定的に進ませるため、窒素雰囲気下で行うことが好ましい。ただし、コスト面から乾燥空気を使用する場合には、予め露点−40℃以下に除湿することが望ましい。すなわち、固相重合時に水分が存在すると、加水分解を誘発し、強度が十分に上がらない場合がある。
なお、実施例中の各評価は以下のようにして行った。
JIS L−1013(2010)に準じ、オリエンテック社の引張り試験機RTA−100を用い、試料長200mm、引張り速度200mm/分で10回測定し、その平均値で表した。
○・・・2時間以上糸切れがなく、安定的に紡糸ができた。
△・・・2時間の紡糸中に、5回以内の糸切れが発生した。
×・・・糸切れが多発して、巻き取りができなかった。
溶融異方性を示す芳香族ポリエステルとして、p−アセトキシ安息香酸40モル、テレフタル酸15モル、イソフタル酸5モル及び4,4’−ジアセトキシジフェニル20.2モルで重合した芳香族ポリエステルを用いた。この樹脂の物性は、融点340℃であった。
この樹脂を140℃の真空乾燥機中で24時間乾燥し、水分率5ppmとした後、直径25mmの単軸押出機にて溶融押出し、ギアポンプで計量して、紡糸パックに樹脂を供給した。このときの押出機出口から紡糸パックまでの紡糸温度は360℃とした。
紡糸パックには、金属不織布フィルター(フィルター孔サイズ 5μm)を用いて、樹脂をろ過し、孔径0.09mm、ランド長0.18mmの孔を48個有する紡糸口金より吐出量11.6cc/分(単孔あたり0.24cc/分)で樹脂を吐出した。吐出した樹脂を、長さ100mmの口金直下のヒーター(温度設定300℃)内を通過させた後、長さ500mmの保温筒内で徐々に冷却し固化させ、その後油剤を付与し、48フィラメント共に867m/分で捲き取った。このときの剪断速度は、56,000/秒、紡糸ドラフトは23とした。
約120分間の捲き取り中、糸切れは発生せず、製糸性は良好であった。
この繊維を、320℃で3時間、窒素中で処理したところ、総繊度144.3dtex、単糸繊度3.0dtex、強度26.0cN/dtex、伸度2.0%、弾性率1,005cN/dtexの繊維が得られた。
上記紡糸条件及び結果を表1に合わせて示す。
実施例1で用いた芳香族ポリエステルを用い、捲き取り速度を1,300m/分にした以外は実施例1と同一条件で紡糸した。このときの剪断速度は、56,000/秒、紡糸ドラフトは34とした。
約120分間の捲き取り中、糸切れは発生せず、製糸性は良好であった。
この繊維を、実施例1と同一条件で熱処理し、総繊度110.5dtex、単糸繊度2.0dtex、強度25.1cN/dtex、伸度2.1%、弾性率1,010cN/dtexの繊維が得られた。
上記紡糸条件及び結果を表1に合わせて示す。
実施例1で用いた芳香族ポリエステルを用い、捲き取り速度を2,600m/分にした以外は実施例1と同一条件で紡糸した。このときの剪断速度は、56,000/秒、紡糸ドラフトは68とした。
約120分間の捲き取り中、糸切れは発生せず、製糸性は良好であった。
この繊維を、実施例1と同一条件で熱処理し、総繊度55.1dtex、単糸繊度1.0dtex、強度25.1cN/dtex、伸度2.1%、弾性率1,002cN/dtexの繊維が得られた。
上記紡糸条件及び結果を表1に合わせて示す。
実施例2において、ノズルを孔径0.075mm、ランド長0.15mmの孔を48個有する紡糸口金を用いた以外は実施例2と同一条件で紡糸した。このときの剪断速度は、100,000/秒、紡糸ドラフトは21とした。約120分間の捲き取り中、糸切れは発生せず、製糸性は良好であった。
この繊維を、実施例1と同一条件で熱処理し、総繊度110.8dtex、単糸繊度2.0dtex、強度25.2cN/dtex、伸度2.1%、弾性率1,002cN/dtexの繊維が得られた。
上記紡糸条件及び結果を表1に合わせて示す。
実施例2において、ノズルを孔径0.12mm、ランド長0.24mmの孔を48個有する紡糸口金を用いた以外は実施例2と同一条件で紡糸した。このときの剪断速度は、24,000/秒、紡糸ドラフトは61とした。約120分間の捲き取り中、糸切れは発生せず、製糸性は良好であった。
この繊維を、実施例1と同一条件で熱処理し、総繊度110.0dtex、単糸繊度2.0dtex、強度25.0cN/dtex、伸度2.0%、弾性率1,001cN/dtexの繊維が得られた。
上記紡糸条件及び結果を表1に合わせて示す。
実施例2において、ノズルを孔径0.16mm、ランド長0.32mmの孔を48個有する紡糸口金を用いた以外は実施例2と同一条件で紡糸した。このときの剪断速度は、10,000/秒、紡糸ドラフトは108とした。約120分間の捲き取り中、糸切れは発生せず、製糸性は良好であった。
この繊維を、実施例1と同一条件で熱処理し、総繊度110.5dtex、単糸繊度2.0dtex、強度24.5cN/dtex、伸度2.0%、弾性率1,000cN/dtexの繊維が得られた。
上記紡糸条件及び結果を表1に合わせて示す。
実施例2において、ノズルを孔径0.20mm、ランド長0.40mmの孔を48個有する紡糸口金を用いた以外は実施例2と同一条件で紡糸した。このときの剪断速度は、5,000/秒、紡糸ドラフトは169とした。約120分間の捲き取り中、糸切れは2回発生し、製糸性は幾分低下した。
この繊維を、実施例1と同一条件で熱処理し、総繊度110.9dtex、単糸繊度2.0dtex、強度22.3cN/dtex、伸度1.9%、弾性率930cN/dtexの繊維が得られた。幾分物性は低下したが、実用上は問題ないものであった。
上記紡糸条件及び結果を表1に合わせて示す。
実施例1において、保温筒を取り外した以外は実施例1と同一条件で紡糸した。このときの剪断速度は、56,000/秒、紡糸ドラフトは23とした。
紡糸を始めてから10分以内に糸切れが発生し、とても実用に供し得るものではなかった。
上記紡糸条件及び結果を表1に合わせて示す。
実施例2において、保温筒を取り外した以外は実施例2と同一条件で紡糸した。このときの剪断速度は、56,000/秒、紡糸ドラフトは34とした。
紡糸を始めてから10分以内に糸切れが発生し、とても実用に供し得るものではなかった。
上記紡糸条件及び結果を表1に合わせて示す。
実施例3において、保温筒を取り外した以外は実施例3と同一条件で紡糸した。このときの剪断速度は、56,000/秒、紡糸ドラフトは68とした。
紡糸を始めてから10分以内に糸切れが発生し、とても実用に供し得るものではなかった。
上記紡糸条件及び結果を表1に合わせて示す。
実施例2において、口金直下にヒーターを設置しない以外は実施例2と同一条件で紡糸した。このときの剪断速度は、56,000/秒、紡糸ドラフトは17とした。
口金直下にヒーターを設置しなかったため、ノズル表面温度は325℃で、設置した場合に比べて10℃低下した。紡糸を始めてから10分以内に糸切れが発生し、とても実用に供し得るものではなかった。
上記紡糸条件及び結果を表1に合わせて示す。
2 紡糸パック
3 紡糸口金
4 ヒーター
5 保温筒
6 油剤付与装置
7 第一ゴデットロール
8 第二ゴデットロール
9 巻取ワインダー
Claims (2)
- 溶融時に異方性を示す芳香族ポリエステルを溶融紡糸し、単糸繊度3dtex以下のマルチフィラメントを得る芳香族ポリエステル繊維の製造方法において、紡糸口金直下にヒーターを設けて、紡糸口金表面温度を融点−10℃から融点に保持し、更に、ヒーター下方部に保温筒を設けて、紡糸口金孔から吐出した繊維を徐冷することを特徴とする芳香族ポリエステル繊維の製造方法。
- 紡糸口金孔内の剪断速度を104〜105/秒とする請求項1記載の芳香族ポリエステル繊維の製造方法。
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