JP2012158537A - 嚥下障害改善剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 副作用がなく日常的に手軽に服用することができる嚥下障害改善剤を提供する。
【解決手段】 植物繊維質原料を含む培地を用いて担子菌の菌糸体を培養し、その培養物から抽出して得た、糖質、蛋白質、及び水溶性リグニンを含む抽出物を、嚥下障害改善剤の有効成分とする。その植物繊維質原料としては、禾本科植物から調製されたものであることが好ましく、バガス、トウモロコシの茎葉、小麦ふすま、米糠、稲藁、茅、熊笹、及び竹から選ばれた1種又は2種以上から調製されたものであることがより好ましい。担子菌としてはマンネン茸、ブクリョウ、コフキサルノコシカケ、カワラ茸、椎茸、ヒラ茸、マイ茸、エノキ茸、シメジ茸、ヤマブシ茸、アガリクス等が用いられる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、高齢者や脳卒中既往者など、飲食物を噛み下したり飲み込んだりすることに支障のある者の障害を改善するための嚥下障害改善剤に関する。
高齢者などは、飲食物を噛み下したり飲み込んだりする際にむせたり誤嚥を起すことがあり、これにより、往々にして、日常の食事の快適性が損なわれるという問題があった。そして老化の進行や病気などに起因して障害が進行すると、通常のように口から食事をするのが困難な症状となり、窒息を起こす危険もあった。また、脳卒中既往者においては、嚥下障害が30〜50%と高率で認められ、嚥下性の肺炎がリスクファクターとなって、脳卒中による合併症の中でも肺炎が死亡率の高いものの1つであった。従来、これら嚥下障害を改善するための改善剤への要望は高い。
一方、キノコ類の抽出物等を、嚥下に支障のある者に適した飲食品等に配合することが行われている。例えば、特許文献1には、茶を主な成分とする飲料に関し、とくに飲料の嚥下に支障のある高齢者にとって容易に飲用することができるようなゼリー状の飲料に関する発明が開示され、茶粉、茶抽出液、マッシュルーム抽出物及びゲル化剤が水に混合されているゼリー飲料を提供することが記載されている。(特許文献1の請求項3参照)。また、特許文献2には、咀嚼や嚥下等の生理機能が低下した高齢者でも容易に食することができ、さらにきのこ独特の風味をそのまま残した、リオフィラム属きのこ由来の食品素材を提供することを目的とする発明が開示され、脱脂処理することなく抽出されたリオフィラム属きのこ子実体由来の熱水抽出物であって、4℃で24時間放置した際に破断応力が1×10Pa以上のゲルを形成する熱水抽出物又はその乾燥物を提供することが記載されている。(特許文献2の請求項1参照)。また、特許文献3には、油脂含有量が製品に対して5%以下であり、魚介類エキス及び/又はきのこ類エキスを含有し、粘度が1〜30Pa・sであることを特徴とする咀嚼・嚥下機能低下者用酸性調味料の発明が開示されている(特許文献3の請求項1参照)。
特開2001−299297号公報 特開2004−215663号公報 特開2006−174830号公報
しかしながら、キノコ類の抽出物等を、嚥下に支障のある者に適した飲食品等に配合するだけでは、必ずしも嚥下障害を改善する効果が十分とはいえなかった。
したがって、本発明は、キノコ類等の担子菌由来成分を有効成分とし、副作用なく安全に服用できる嚥下障害改善剤であって、嚥下障害を改善する効果の高いものを提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明は、植物繊維質原料を含む培地を用いて担子菌の菌糸体を培養し、その培養物から抽出して得た、糖質、蛋白質、及び水溶性リグニンを含む抽出物を有効成分として含有することを特徴とする嚥下障害改善剤を提供するものである。
本発明の嚥下障害改善剤においては、前記抽出物は、前記培養物から、担子菌の自己消化を行って得られたものであることが好ましい。
また、前記植物繊維質原料が、禾本科植物から調製されたものであることが好ましく、バガス、トウモロコシの茎葉、小麦ふすま、米糠、稲藁、茅、熊笹、及び竹から選ばれた1種又は2種以上から調製されたものであることがより好ましい。
更に、前記担子菌が、マンネン茸、ブクリョウ、コフキサルノコシカケ、カワラ茸、椎茸、ヒラ茸、マイ茸、エノキ茸、シメジ茸、ヤマブシ茸、及びアガリクスから選ばれたものであることが好ましい。
植物繊維質原料を含む培地を用いて担子菌の菌糸体を培養すると、培地中に含まれるセルロース、ヘミセルロース、リグニンなどが、培養期間中に担子菌の菌糸体が生産するセルラーゼ、フェノールオキシダーゼ、ラッカーゼ、パーオキシダーゼ、プロテアーゼなどの酵素により、消化、分解、及び縮合を起こしてペントース主体のプロテオグリカンを生成する。また、水溶性化した変性水溶性リグニンが生成する。本発明によれば、このように培養培地からの成分を複合的に含む抽出物を有効成分とすることにより、優れた嚥下障害改善剤を提供することができる。また、その有効成分は天然物から得られた抽出物であり、日常的に、副作用なく安全に服用することができる。
試験例1の結果を示す図表である。 試験例2の結果を示す図表である。 試験例3において測定した筋電図の例を示す図表である。 試験例3の結果を示す図表である。 試験例4の結果を示す顕微鏡写真である。
本発明に用いられる担子菌としては、特に限定されず、例えば、マンネン茸、ブクリョウ、コフキサルノコシカケ、カワラ茸などの薬用茸や、椎茸、ヒラ茸、マイ茸、エノキ茸、シメジ茸、ヤマブシ茸、アガリクスなどの食用茸など各種のものが挙げられる。この中でも、特にマンネン茸、椎茸が好ましく採用される。
本発明では、これらの担子菌の菌糸体を、植物繊維質原料を含む培地を用いて培養し、その培養物から有効成分を抽出する。この場合、培地としては、固体培地、液体培地の何れも使用できる。培地に用いる植物繊維質原料としては、リグニンを含有する植物から調製されたものが好ましく用いられる。リグニンを含有する植物としては、禾本科植物、例えばバガス(さとうきびの搾り粕)、トウモロコシの茎葉、小麦ふすま、米糠、稲藁、茅などが好ましく用いられる。この他に、熊笹、竹なども使用できる。特に好ましくは、バガス、熊笹の茎葉、とうもろこしの茎から選ばれた少なくとも1種と、米糠とを含む培地が用いられる。また、培地には、必要に応じて他の栄養成分として、酵母エキス、乾燥酵母、クロレラ、スピルリナ、コーンミール、おからなどを添加混合してもよい。
担子菌の菌糸体の培養は、上記のような植物繊維質原料を含む培地に、前記担子菌の菌糸を接種して行う。固体培地の場合は、水分が60〜80%となるように調製し、常法に従い高圧蒸気滅菌した後、菌糸を接種し、例えば温度が18〜25℃に空調された培養室で3〜6か月培養する。こうして菌糸体が蔓延した培地は、温度処理室に移して変温処理を行うことが好ましい。変温処理は、例えば最初に30〜34℃で24〜48時間加温し、次に低温室に移して3〜5日間処理する。その後培養室に移すと子実体の発生が始まるが、この時点で培養を終了し、培養物を破砕機で破砕する。
一方、液体培地の場合は、上記のような植物原料を細かく破砕し、必要に応じて米糠等の他の栄養成分を加え、原料が5〜20質量%となるように培地を調製した後、通気攪拌培養もしくは振盪培養により、好ましくは20〜28℃の温度で1週間〜2か月間程度培養を行う。培養は培地のpHが3.5〜5に低下し、培地中に菌糸が蔓延した状態で終了する。
培養終了後培養物を抽出する。その好ましい方法としては、菌糸体に内在する酵素を利用して菌糸体を自己消化させると共に培養物を抽出するようにすることが好ましい。
具体的には、固体培地の場合は培養が終了した培養物を破砕し、必要に応じて少量の水を加え、30〜60℃で3〜6時間処理し、菌糸体の酵素反応を進め、自己消化させる。次いで、この破砕物を50℃以上の温水又は熱水に浸潤させ、有効成分を抽出する。抽出は、例えば1.2kg/cmの蒸気圧下で120℃というような加圧高温下で行うこともできる。こうして得られた抽出懸濁液を、好ましくは濾過または遠心分離して濾液又は上清を採取することにより、培地の分解物、菌糸体の代謝産物及び菌糸体細胞の分解物などを含む抽出物を得ることができる。
一方、液体培養の場合は、培養物全体を30〜60℃で3〜6時間処理し、菌糸体を自己消化させ、液体の懸濁培養物を得る。次いで、必要に応じて少量の水を加え、50℃以上、場合によっては高圧条件下(例えば1.2kg/cmの蒸気圧下)に加熱し、抽出物を採取する。この抽出物を、必要に応じて濾過又は遠心分離して濾液又は上清を採取することにより、培地の分解物、菌糸体の代謝産物及び菌糸体細胞の分解物などを含む抽出物を得ることができる。
こうして得られた抽出物は、液状のものをそのまま又は濃縮して利用することもできるが、凍結乾燥や噴霧乾燥などの手段によって粉末化して利用することもできる。抽出物として液状のものをそのまま又は濃縮して利用する場合には、例えば液状又はゼリー状のドリンクタイプの製品とすることもできるし、そのまま各種の飲食品に添加して利用することもできる。抽出物を粉末化して利用する場合には、常法によって、粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤等として製品化することができるし、同様に各種の飲食品に添加して利用してもよい。
本発明の有効成分である上記抽出物(植物繊維質原料を含む培地に担子菌の菌糸体を培養して得られた培養物から抽出された成分)は、糖質を主体とした物質であるが、次のような物理化学的性質を有していることが好ましい。
(1) 分子量:100万以下
(2) 化学組成:
・糖質:30〜50質量%
・蛋白質:8〜20質量%
・水溶性リグニン:20〜40質量%
なお、上記抽出物中の糖質、蛋白質、及び水溶性リグニンの組成の範囲を特定するためには、それぞれフェノール硫酸法、セミミクロケルダール法、アセチルブロマイド法で測定して求められる質量組成で特定することが好ましい。
マンネン茸を用いて得られた上記培養抽出物(粉末)について安全性を試験した結果は次の通りである。
(A) 急性毒性試験(最小致死量)
・ラット単回経口投与 雄:22,500mg/Kg 以上
雌:22,500mg/Kg 以上
・マウス単回経口投与 雄:2,000mg/Kg 以上
雌:2,000mg/Kg 以上
(B) ラット3か月反復経口投与試験(最大無作用量)
雄:3,610mg/Kg
雌:4,190mg/Kg
本発明の嚥下障害改善剤の有効投与量は、上記抽出物の固形分換算で、経口摂取において成人1日当たり1〜10gである。投与量がこれよりも少ないと、嚥下障害を改善する効果が十分に得られず、投与量がこれよりも多いと、軟便又は腹部膨満感が生じることがある。ただし、投与量が上記より多くても安全性には問題がない。
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
(1)培養培地抽出物の調製例
<調製例1>(バガスを用いたマンネン茸菌の固体培養)
バガス90質量部と、脱脂米糠10質量部とを配合し、水分70%となるように調整して固形培地を作り、常法通り高圧蒸気滅菌した。この固体培地にマンネン茸の菌糸を接種し、25℃に温度調節した培養室内で3か月培養し、培地中に菌糸体が蔓延した後、温度処理室に移して35℃で24時間加温し、次いで10℃の低温室で3日間処理した。その後、上記培養室で3日間培養し、培地を破砕機で親指程度の大きさに破砕した。破砕した培地を40℃で6時間処理し、自己消化を促進させた後、抽出タンクに詰め、60℃の温水を循環させながら16時間抽出した。得られた抽出液をカートリッジフィルターで濾過し、更にメンブランフィルターで濾過除菌後、濃縮し、凍結乾燥により褐色の粉末を得た。その成分を分析した結果は以下の通りであった。
・糖質 :40質量%(フェノール硫酸法)
・蛋白質 :12質量%(セミミクロケルダール法)
・水溶性リグニン :30質量%(アセチルブロマイド法)
・無機質 :13質量%(直接灰化法)
(2)動物試験
上記調製例1の方法で得たマンネン茸の菌糸体培養培地抽出物(以下、「MAK」という。)について、ラット(Sprague-Dawley、三協ラボサービス)を利用した動物試験により、その嚥下障害の改善の効果を検討した。
まず、ラットをハロタン麻酔し、その頸部を正中切開し両側の総頚動脈を迷走神経より剥離し、これを結紮する手術を施すことにより、嚥下能力の低下したラットを作出した。一方、頸部切開および両側総頚動脈の剥離のみの手術を施したラットを、偽手術群とした。その手術の2週間後又は4週間後に、Kajii らの方法(Kajii et al., (2002) Physiology & Behavior 77 321- 325)を参考に、嚥下測定のための処置を施した。具体的には、ウレタン麻酔下、口腔内にポリエチレン製ガイドカニューレを挿入、固定し、そのガイドカニューレを介してポリエチレン製カニューレを咽頭に留置した。これにより、そのカニューレを通じて咽喉頭部に刺激用の試験液を直接注入することができるようにした。また、顎舌骨筋に筋電図用の電極を刺入し、嚥下に伴う筋収縮を記録できるようにした。
MAKを投与する場合には、嚥下能力を低下させるための手術の終了後から嚥下測定まで2週間、1g/kgの投与量3mL/kgの容量で、ラットに1日1回経口ゾンデにて投与した。また、対照として蒸留水を、同様に手術終了後から嚥下測定までの2週間投与した。
以下、試験例1では基礎検討として各種の試験液で刺激したとき嚥下回数を測定し、試験例2では目視により測定した嚥下回数と筋電図を用いた嚥下に伴う筋収縮回数との相関について検討し、試験例3においてMAK投与の効果を調べた。
<試験例1>
基礎検討として蒸留水、クエン酸(1、3、又は10mM)、又はカプサイシン(100nM)の溶液を注入して咽喉頭を刺激したとき嚥下回数を、目視により測定した。すなわち、刺激用ポリエチレン製カニューレをマイクロシリンジポンプ(KD SCIENTIFIC社)につなげて流速を調整し、3.3μL/秒の流速で各試験液50μLを注入し、それを3回繰り返して、その間の嚥下回数を目視により観察した。試験では、同じラットに対し、試験液を、蒸留水、1mMクエン酸、3mMクエン酸、10mMクエン酸、100nMカプサイシンの順番で繰り返し注入して、それぞれの試験液による刺激に対する嚥下回数を測定した。
その結果、図1に示すように、総頚動脈を結紮しない偽手術群(図中、「1」又は「2」で示す。)においては、その手術後2週間と4週間において、蒸留水、1mMクエン酸、3mMクエン酸、10mMクエン酸、100nMカプサイシンの順で、刺激による嚥下回数が増加した。一方、両側総頚動脈に結紮を施した手術群(図中、「3」又は「4」で示す。)においても、同様に、水、1mMクエン酸、3mMクエン酸、10mMクエン酸、100nMカプサイシンの順で、刺激による嚥下回数が増加したが、各試験液における嚥下回数は、偽手術群に比べて顕著に低下していた。なお、手術後4週間の10mMクエン酸と100nMカプサイシンの嚥下回数は、手術後2週間に比べて増加していた。これは、自然治癒的に嚥下の能力が一部回復したためであると考えられた。
<試験例2>
目視により測定した嚥下回数と筋電図を用いた嚥下に伴う筋収縮回数との相関について検討した。そのために、手術後2週間のラットに対して、試験例1と同様にして、蒸留水、クエン酸(1、3、又は10mM)、又はカプサイシン(100nM)の溶液を注入して咽喉頭を刺激し、各試験液において、目視により測定した嚥下回数と、筋電図に基づく筋収縮回数との測定結果を比較した。
その結果、図2に示すように、目視により測定した嚥下回数(図中、「1」又は「3」で示す。)と、筋電図に基づく筋収縮回数(図中、「2」又は「4」で示す。)とは、ほぼ良好に相関していた。
<試験例3>
MAK投与の効果を調べた。そのために、総頚動脈を結紮しない偽手術を施してその後2週間蒸留水を投与したラットと、両側総頚動脈に結紮を施してその手術後2週間蒸留水を投与したラットと、両側総頚動脈に結紮を施してその手術後2週間MAKを投与したラットに対して、試験例1と同様にして、蒸留水、クエン酸(1、3、又は10mM)、又はカプサイシン(100nM)の溶液を注入して咽喉頭を刺激し、各試験液における嚥下回数を測定した。
図3には、総頚動脈を結紮しない偽手術を施してその後2週間蒸留水を投与したラット(図中、「1」で示す。)と、両側総頚動脈に結紮を施してその手術後2週間蒸留水を投与したラット(図中、「2」で示す。)と、両側総頚動脈に結紮を施してその手術後2週間MAKを投与したラット(図中、「3」で示す。)について、蒸留水(図中、「a」で示す。)、3mMクエン酸(図中、「b」で示す。)、又は100nMカプサイシン(図中、「c」で示す。)の溶液を注入して咽喉頭を刺激したときのそれぞれの筋電図の一例を示す。すなわち合計9例の筋電図を示す。また図中上段には、各試験液による刺激での筋収縮のシグナルについて、その強度(縦軸)と時間(横軸)のスケールを拡大した筋電図を示す。
図3に示されるように、総頚動脈を結紮しない偽手術を施したラットであって蒸留水を投与したもの(図中、「1」で示す。)においては、試験液として蒸留水、3mMクエン酸、100nMカプサイシンの順で、これらの刺激による筋収縮回数が増加した。一方、両側総頚動脈に結紮を施したラットであって蒸留水を投与したもの(図中、「2」で示す。)においては筋収縮回数が減り、100nMカプサイシンでの刺激による筋収縮回数の減少が特に顕著であった。これに対して、両側総頚動脈に結紮を施したラットであってMAKを投与したもの(図中、「3」で示す。)においては、偽手術群であって蒸留水を投与したラット(図中、「1」で示す。)の場合と同程度にまで、筋収縮回数が回復した。
図4には全ての結果をまとめたグラフを示す。なお結果は、目視により測定した嚥下回数又は筋電図に基づく筋収縮回数の総計で示した。
図4に示されるように、総頚動脈を結紮しない偽手術を施したラットであって蒸留水を投与したもの(図中、「1」で示す。)においては、試験液として蒸留水、1mMクエン酸、3mMクエン酸、10mMクエン酸、100nMカプサイシンの順で、これらの刺激による嚥下又は筋収縮の回数が増加した。一方、両側総頚動脈に結紮を施したラットであって蒸留水を投与したもの(図中、「2」で示す。)においては嚥下又は筋収縮の回数が顕著に減少した。これに対して、両側総頚動脈に結紮を施したラットであってMAKを投与したもの(図中、「3」で示す。)においては、偽手術群であって蒸留水を投与したラット(図中、「1」で示す。)の場合と同程度にまで、各試験液での刺激による嚥下又は筋収縮の回数が回復した。
以上から、MAKの投与によって、嚥下障害が改善されることが明らかとなった。
<試験例4>
総頚動脈結紮による嚥下障害にはチロシンヒドロキシラーゼ(ドパミン神経系)が関与しているとの報告がある。そこで本試験では、総頚動脈を結紮しない偽手術を施してその後2週間蒸留水を投与したラット(図中、「1」で示す。)と、両側総頚動脈に結紮を施してその手術後2週間蒸留水を投与したラット(図中、「2」で示す。)と、両側総頚動脈に結紮を施してその手術後2週間MAKを投与したラット(図中、「3」で示す。)について、線条体を含む脳冠状切片を作成し、免疫組織染色法により、チロシンヒドロキシラーゼの発現の状態を調べた。具体的には、正常ヤギ血清でブロッキングを行った後抗チロシンヒドロキシラーゼ抗体 (1:1,000希釈, Chemicon社製) と反応させ、アビジン・ビオチンペルオキシダーゼ法にて二次抗体反応を行い、ジアミノベンチジンにて発色させ、顕微鏡観察した。図5にその顕微鏡写真を示す。
その結果、両側総頚動脈に結紮を施してその手術後2週間蒸留水を投与したラット(図中、「2」で示す。)では、総頚動脈を結紮しない偽手術を施してその後2週間蒸留水を投与したラット(図中、「1」で示す。)に比べ、線条体でのチロシンヒドロキシラーゼの発現量が減少していた。一方、両側総頚動脈に結紮を施してその手術後2週間MAKを投与したラット(図中、「3」で示す。)では、その発現量が偽手術ラットと同程度まで回復していた。したがって、チロシンヒドロキシラーゼの発現量の減少がMAK投与により正常に近づいたことが、嚥下障害改善効果の一端を担っていると考えられた。
(3)培養培地抽出物のその他の調製例
<調製例2>(バガスを用いた椎茸菌の固体培養)
バガス80質量部と、脱脂米糠20質量部とを配合し、水分70%となるように調整して固体培地を作り、常法通り高圧蒸気滅菌した。この固体培地に椎茸の菌糸を接種し、22〜24℃に温度調節した培養室内で4か月間培養し、培地中に菌糸体が蔓延した後、温度処理室に移して32〜34℃で24時間加温し、次いで10℃の低温室で5日間処理した。その後、上記培養室で2日間培養し、培地を破砕機で2回破砕した。破砕した培地を50℃で4時間処理し、自己消化を促進させた後、抽出タンクに詰め、60℃の温水を循環させながら16時間抽出した。得られた抽出液を珪藻土のフィルターケーキで予備濾過し、更にメンブランフィルターで濾過除菌後、濃縮し、凍結乾燥により褐色の粉末を得た。その成分を分析した結果は以下の通りであった。
・糖質 :35%(フェノール硫酸法)
・蛋白質 :12%(セミミクロケルダール法)
・水溶性リグニン :35%(アセチルブロマイド法)
・無機質 :13%(直接灰化法)
<調製例3>(トウモロコシの茎を用いた椎茸菌の固体培養)
トウモロコシの茎を水洗いし乾燥した後、破砕し、米糠を質量比で2割加え、水分70%となるように調整して固体培地を作り、常法通り高圧蒸気滅菌した。この固体培地に椎茸の菌糸を接種し、調製例2と同様にして培養抽出物を得た。その成分を分析した結果は以下の通りであった。
・糖質 :40%(フェノール硫酸法)
・蛋白質 :12%(セミミクロケルダール法)
・水溶性リグニン :35%(アセチルブロマイド法)
・無機質 :12%(直接灰化法)
<調製例4>(熊笹を用いたマンネン茸菌の固体培養)
熊笹の色素、香りをエチルアルコールで抽出した繊維残渣を破砕したものに米糠を質量比で1割加え、水分70%となるように調整して固体培地を作り、常法通り高圧蒸気滅菌した。この固体培地にマンネン茸の菌糸を接種し、調製例2と同様にして培養抽出物を得た。その成分を分析した結果は以下の通りであった。
・糖質 :30%(フェノール硫酸法)
・蛋白質 :15%(セミミクロケルダール法)
・水溶性リグニン :35%(アセチルブロマイド法)
・無機質 :10%(直接灰化法)
<調製例5>(バガスを用いた椎茸菌の液体培養)
水1L(リットル)に対し、ミキサーで細かく破砕したバガス60g、乾燥オカラ20g、米糠20g、イーストエキス2gを加え、常法通り高圧蒸気滅菌した。この液体培地に椎茸の菌糸を接種し、23℃で3週間通気培養した後、培養液を60℃で1時間、80℃で2時間加温し、菌糸の酵素による自己消化反応を進行させると共に代謝物を抽出させた。培養液は3,000rpmで30分間遠心分離し、沈殿物を除き、褐色の液を得た。この抽出液を凍結乾燥し、分析した結果は、以下の通りであった。
・糖質 :38%(フェノール硫酸法)
・蛋白質 :16%(セミミクロケルダール法)
・水溶性リグニン :35%(アセチルブロマイド法)
・その他 :11%
<調製例6>(熊笹を用いたマンネン茸菌の液体培養)
熊笹の色素、香りをエチルアルコールで抽出した繊維残渣をミキサーで細かく破砕したものを水1Lに対し90g、米糠10g、イーストエキス5gを加え、常法通り高圧蒸気滅菌した。この液体培地にマンネン茸の菌糸を接種して、23℃で2週間通気培養を行った。培養物は、調製例4と同様の方法で加熱、遠心処理し、濃褐色の液を得た。この抽出液を凍結乾燥し、分析した結果は、以下の通りであった。
・糖質 :33%(フェノール硫酸法)
・蛋白質 :18%(セミミクロケルダール法)
・水溶性リグニン :40%(アセチルブロマイド法)
・その他 : 9%
<調製例7>(バガスを用いたヤマブシ茸の固体培養)
バガス65質量部、小麦ふすま20質量部、米糠10質量部、乾燥イースト5質量部を配合し、水分70%となるように調整して固体培地を作り、常法通り高圧蒸気滅菌した。この固体培地にヤマブシ茸の菌糸を接種し、調製例2と同様にして培養抽出物を得た。その成分を分析した結果は以下の通りであった。
・糖質 :43%(フェノール硫酸法)
・蛋白質 :12%(セミミクロケルダール法)
・水溶性リグニン :28%(アセチルブロマイド法)
・無機質 :10%

Claims (5)

  1. 植物繊維質原料を含む培地を用いて担子菌の菌糸体を培養し、その培養物から抽出して得た、糖質、蛋白質、及び水溶性リグニンを含む抽出物を有効成分として含有することを特徴とする嚥下障害改善剤。
  2. 前記抽出物は、前記培養物から、担子菌の自己消化を行って得られたものである請求項1記載の嚥下障害改善剤。
  3. 前記植物繊維質原料が、禾本科植物から調製されたものである請求項1又は2記載の嚥下障害改善剤。
  4. 前記植物繊維質原料が、バガス、トウモロコシの茎葉、小麦ふすま、米糠、稲藁、茅、熊笹、及び竹から選ばれた1種又は2種以上から調製されたものである請求項1又は2記載の嚥下障害改善剤。
  5. 前記担子菌が、マンネン茸、ブクリョウ、コフキサルノコシカケ、カワラ茸、椎茸、ヒラ茸、マイ茸、エノキ茸、シメジ茸、ヤマブシ茸、及びアガリクスから選ばれたものである請求項1〜4のいずれか1つに記載の嚥下障害改善剤。
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