JP2012158128A - 光輝材を有する熱可塑性樹脂の射出成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】光輝材を有する熱可塑性樹脂を射出成形する場合において、成形品の形状が、樹脂の合流部を有する形状や、凹凸を有するような形状であっても、光輝材の配向乱れによる外観品位の低下を抑制すること。
【解決手段】少なくとも光輝材13と白色顔料14とを有する非透明の熱可塑性樹脂15を成形した射出成形品12において、前記光輝材13が、前記射出成形品12の厚み方向において、濃度勾配を有し、かつ、前記濃度勾配のうち最大値を意匠面から厚みの5%以上に有する構成である。
光輝材13が射出成形品12の厚み方向に濃度勾配を有し、かつ、光輝材13が最も多く存在する部位よりも意匠面側(人の目に近い側)に、非透明な熱可塑性樹脂15と白色顔料14が存在することにより、樹脂合流や凹凸形状の影響によって光輝材の配向乱れが発生していたとしても、熱可塑性樹脂15と白色顔料14のマスキング効果により、配向乱れが認識しにくくなる。
【選択図】図1
【解決手段】少なくとも光輝材13と白色顔料14とを有する非透明の熱可塑性樹脂15を成形した射出成形品12において、前記光輝材13が、前記射出成形品12の厚み方向において、濃度勾配を有し、かつ、前記濃度勾配のうち最大値を意匠面から厚みの5%以上に有する構成である。
光輝材13が射出成形品12の厚み方向に濃度勾配を有し、かつ、光輝材13が最も多く存在する部位よりも意匠面側(人の目に近い側)に、非透明な熱可塑性樹脂15と白色顔料14が存在することにより、樹脂合流や凹凸形状の影響によって光輝材の配向乱れが発生していたとしても、熱可塑性樹脂15と白色顔料14のマスキング効果により、配向乱れが認識しにくくなる。
【選択図】図1
Description
本発明は、光輝材を有する熱可塑性樹脂の射出成形品に関するものである。
従来、樹脂成形品の外観品位向上手段としては、塗装を用いることが多い。しかしながら塗装は、揮発性有機化合物や二酸化炭素の排出、リサイクル性の低下等による環境負荷が大きく、また、塗料との親和性が高い樹脂の選定の必要性や、親和性が低い樹脂を用いる場合に樹脂と塗膜の親和性を高めるためのプライマー処理の必要性、工数増等によりコストが増大するという問題がある。また、外部から擦れやぶつけ等の刺激を受けやすい部品は、塗装がはがれるリスクがあるため、塗装の適用は難しく、外観品位を上げるのが難しかった。これらの問題から、様々な分野で塗装代替技術が検討されている。
塗装代替技術の一つに「光輝材と呼ばれる材料を樹脂に練り込み、成形することによって光輝感を演出する技術」がある。塗装に比べて環境負荷が小さく、工数減によるコストダウンも見込める。
しかしながら、本技術には、光輝材の配向乱れによって外観品位が低下するという課題があり、射出成形においては、金型のキャビティ内での樹脂の流れ方により、光輝材の配向が乱れることがある。
例えば、別方向から流れる樹脂が合流する場合においては、樹脂の合流部で光輝材の配向が乱れるため、光輝材表面での反射強度や反射角度に差が生じ、外観品位が低下する。
また、ボスやリブ等、成形品の形状に凹凸がある場合は、該当部で樹脂の流れが乱れるのに伴って光輝材の配向も乱れるため、光輝材表面での反射強度や反射角度に差が生じ、外観品位が低下する。
そのため、従来より、外観を向上させる技術が検討されている。
射出成形時には光輝材の配向乱れの発生原因(リブ、ボス等)を出来るだけ排除した形状とし、後加工により所望の形状とする技術がある(例えば、特許文献1参照)。
また、成形品の意匠裏面とリブとを離間して配設した設計とすることで、リブ起因の光輝材の配向乱れを意匠面に発生させない技術がある(例えば、特許文献2参照)。
また、光輝材の配向乱れとは全く違った観点であるが、樹脂成形体において、着色剤の分布状態を規定した技術がある(例えば、特許文献3参照)。
図4は特許文献1に記載された従来の射出成形体を示すものである。図4に示すように、射出成形体1は、光沢材が混在された熱可塑性樹脂材により成形され、成形体本体2と取付部3とをそれぞれ別途に成形した後、成形体本体2と取付部3とを互いに接合する。これにより、成形体本体2の射出成形時には、金型に凹部が形成されていないため、樹脂材の流れに乱れが生じず、ウェルドマークは発生しない。
また、図5は特許文献2に記載された従来の樹脂成形品の側面図である。図5に示すように、樹脂成形品4は、意匠面を構成する本体部5と、本体部5の裏面に突設した補強構造部6とを備え、それらを射出成形で一体成形してなり、補強構造部6は、射出成形時の
樹脂流動方向と交差する方向に配向された複数の横リブ7と、横リブ7と直行して延在し横リブ7を相互に連結する縦リブ8との結合体で構成され、各横リブ7は意匠裏面に接続され、縦リブ8は意匠裏面から離間して設置されている。これにより、本体部5の意匠面側で発生するウェルドラインを防止可能であるとともに、射出成形時にゲート部が設定された横リブ7を経由して本体部5に樹脂が流入し、その際に横リブ7から縦リブ8に樹脂が分流して流入速度が低減されることにより、樹脂が噴流状態で意匠面に到達することがなく、フローマークやヒケ等の外観不良を防止できる。
樹脂流動方向と交差する方向に配向された複数の横リブ7と、横リブ7と直行して延在し横リブ7を相互に連結する縦リブ8との結合体で構成され、各横リブ7は意匠裏面に接続され、縦リブ8は意匠裏面から離間して設置されている。これにより、本体部5の意匠面側で発生するウェルドラインを防止可能であるとともに、射出成形時にゲート部が設定された横リブ7を経由して本体部5に樹脂が流入し、その際に横リブ7から縦リブ8に樹脂が分流して流入速度が低減されることにより、樹脂が噴流状態で意匠面に到達することがなく、フローマークやヒケ等の外観不良を防止できる。
また、図6は特許文献3に記載された従来の樹脂成形体における、断面図である。図6に示すように、樹脂成形体9は、エチレン含量2〜15重量%であり且つロックウェル硬度85以上の結晶性エチレン・プロピレン共重合体75〜50重量%と、エチレン含量が80〜95重量%のエチレン―αオレフィン共重合体25〜50重量%とからなる基本成分100重量部に対し、無機質充填剤0〜30重量部と、着色剤0.1〜10重量部とを添加し、混合してなり、樹脂成形体9の表面に、着色剤10を全く含んでいないか、極く少量含んでいる20μm以上のクリアー層11を有している。これにより、樹脂成形体9は、衝撃強度、光沢、深み感、メタリック感に優れる。
また、図7は特許文献4に記載された従来の樹脂組成物における光輝材の平均粒径及び添加量の範囲を示す線図である。図7に示すように、樹脂組成物は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、光屈折率1.8以上のウェルド消去剤0.01〜15.0重量部と、着色剤と、光輝材とを含有してなり、かつ光輝材が点A、B、C、Dを直線で結んで囲まれる範囲にある。これにより、樹脂組成物は、ウェルドラインが殆ど発生せず、かつメタリック調、パール調、シルク調等の高級色調を発揮することができる。
しかしながら、前記従来の特許文献1の方法では、成形品の形状が限定される、別部品の成形や接合が必要なために工数が増える、別部品を成形する場合には別途金型が必要なために金型費用がかかる、等の課題を有していた。
また、前記従来の特許文献2の方法では、本体とリブが離れて形成されているため、強度が弱く、強度が必要な用途には適用できない、等の課題を有していた。
また、前記従来の特許文献3の方法では、光輝材の配向乱れの抑制を重視した構成ではないため、光輝材の配向乱れそのものを抑制しようとすると成形品の形状が限定される、また、成形品の形状が樹脂合流部や凹凸形状を有する形状の場合にこの材料を用いると光輝材の配向乱れが見えやすい、等の課題を有していた。
また、前記従来特許文献4の方法では、ウェルドラインの定義は、JIS K6900にて、「共に流れているプラスチックの二またはそれ以上の流体の融合によって形成される成形プラスチック表面の痕跡」であり、金型内で別方向から流動する樹脂のフローフロントが合流した場所に、樹脂同士が完全溶融する前に固化することで成形品の表面に発生するV溝状の細いラインを指すため、特許文献4の構成では、ウェルドラインの発生を抑
えることはできない。また、光輝材と顔料の処方のみでは、配向乱れによる外観品位低下の抑制が不十分であった。
えることはできない。また、光輝材と顔料の処方のみでは、配向乱れによる外観品位低下の抑制が不十分であった。
なお、一般に塗装に用いられる光輝材の平均粒径は5〜25μm程度である。これより小さいと一粒あたりの反射面が小さくなるために光輝感が得にくくなり、これより大きいとノズルの目詰まりを起こすようになるからである。練り込みの場合には、ノズルの目詰まりの心配がないため、25μmを超える光輝材を使用しても、高い品位を得ることができる。しかし、大きすぎると、塗装の質感からかけ離れてしまう。従って、練り込みにて高品位かつ塗装同等の質感を得るためには、平均粒径5〜120μm未満が望ましい。
また、光輝材の平均粒径が120μm以上の場合は、単位体積当たりの粒子の数が少ないことで、光輝材の配向の状態は目視にて認識しにくくなるために、金型形状や工法や材料構成での工夫をあまり必要としないが、一方、塗装同等の品位を目指して光輝材の粒径を小さくすると、単位体積当たりの粒子数が多くなるため、光輝材の配向の状態が目視にて認識しやすくなる。この場合は、それぞれの工夫が必要になる。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、塗装に近い質感を演出するために比較的粒径が小さい、すなわち平均粒径120μm未満の光輝材を有する熱可塑性樹脂を成形する場合において、成形品の形状が、樹脂の合流部を有する形状や、凹凸を有するような形状の場合に発生する光輝材の配向乱れによる外観品位低下が抑制された成形品を提供することを目的とする。
前記従来の課題を解決するために、本発明の光輝材を有する熱可塑性樹脂を成形した射出成形品は、前記光輝材が、平均粒径が120μm未満であり、かつ、前記射出成形品の厚み方向において濃度勾配を有し、かつ、前記濃度勾配のうち最大値を意匠面から厚みの5%以上に有する構成であり、かつ、前記熱可塑性樹脂が、非透明樹脂であり、かつ、顔料として、少なくとも白色顔料を有する射出成形品である。
平均粒径が120μm未満の光輝材を有する熱可塑性樹脂を、樹脂の合流部を有する形状や、凹凸を有するような形状に成形する場合であっても、本構成であることにより、光輝材の濃度が濃い層よりも人の目に近い部分に、非透明樹脂と白色顔料が存在するために、光輝材の配向乱れによって生じる外観品位の低下が認識しにくくなる。
本発明の熱可塑性樹脂の射出成形品は、平均粒径が120μm未満の光輝材を有する熱可塑性樹脂を成形する場合において、得ようとする射出成形品の形状が、樹脂の合流部を有する形状や、凹凸を有するような形状であっても、塗装を行うことなく、外観品位に優れた射出成形品を得ることができる。
第1の発明は、少なくとも光輝材と顔料とを有する熱可塑性樹脂を成形した射出成形品において、前記光輝材が、平均粒径が120μm未満であり、かつ、前記射出成形品の厚み方向において、濃度勾配を有し、かつ、前記濃度勾配のうち最大値を意匠面から厚みの5%以上に有する構成であり、かつ、前記熱可塑性樹脂が、非透明樹脂であり、かつ、前記顔料として、少なくとも白色顔料を有する射出成形品であることにより、平均粒径が120μm未満の光輝材を有する熱可塑性樹脂を、樹脂の合流部を有する形状や、凹凸を有する形状に成形する場合であっても、光輝材の濃度が濃い層の手前の部分に非透明樹脂と白色顔料が存在するために、光輝材の配向乱れが目視にて認識しにくくなる。
光輝材の濃度勾配のうちの最大値を意匠面から厚みの5%以上に有すること、熱可塑性樹脂が非透明樹脂であること、顔料が白色顔料であることが、特にその効果が高い。
第2の発明は、特に、請求項1の発明の射出成形品を、前記光輝材を0.2wt%以上5wt%以下含む構成とした。
光輝材の含有量が、少なすぎると光輝感が得にくく、多すぎると配向が見えやすくなることに加え、射出成形品の機械強度が低下するが、上記範囲であると光輝感と配向の認識しにくさと機械強度のバランスが取れる。
第3の発明は、特に、請求項1または2の発明の射出成形品を、前記白色顔料を0.05wt%以上0.3wt%以下含む構成とした。
白色顔料は、少なすぎると配向乱れを認識しにくくする効果が小さく、多すぎると光輝感が損なわれるが、上記範囲であると光輝感を保持しつつ、配向乱れが認識しにくくなる。
第4の発明は、特に、請求項1から3の熱可塑性樹脂が、PPであることを特徴とする射出成形品である。
PPは塗膜との密着性が悪いことから一般的に塗装が難しく、外観品位を上げるのは難しかった。また、塗装をする場合には、密着性を上げるためのプライマー処理が必要となるため、他の樹脂に塗装を施すよりもコストUPになるという課題があった。
一方で、PPは、樹脂の中でも耐薬品性が高く、コストにも優れ、耐薬品性を必要とする外観部品としての使用が望まれる樹脂である。
本発明の方法では、熱可塑性樹脂がPPであることにより、外観品位を向上することができる。
第5の発明は、特に、請求項1から3の熱可塑性樹脂が、ABSであることを特徴とする射出成形品である。
ABSは、塗装をされて用いられることが多いが、外部から擦れやぶつけ等の力を受けやすい部品は、塗装がはがれるリスクがあるために塗装の適用は難しく、外観品位を向上させるのが難しいという課題があった。
一方で、ABSは、樹脂の中でも得られる製品の光沢が高く、強度やコストとのバランスにも優れ、外観部品としての使用が望まれる樹脂である。
本発明の方法では、熱可塑性樹脂がABSであることにより、外観品位を向上すること
ができる。
ができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における射出成形品の断面図である。
図1は、本発明の第1の実施の形態における射出成形品の断面図である。
図1において、射出成形品12は、少なくとも平均粒径が120μm未満の光輝材13と白色顔料14とを有する非透明の熱可塑性樹脂15からなり、前記熱可塑性樹脂15の合流部16を有する形状である。
本実施の形態の射出成形品12の製造方法について説明する。
まず、金型を閉じた状態で溶融した熱可塑性樹脂15を金型のキャビティ内に射出し、熱可塑性樹脂15がキャビティ内全体に充填されたら、金型を開き、射出成形品12を得る。
こうして得られた射出成形品12は、成形品の厚み方向に光輝材13の濃度勾配を有し、かつ、前記濃度勾配のうち、濃度の最大値を意匠面から厚みの5%以上に有する構成である。
光輝材13の濃度勾配は、自然現象を利用してもよいし、意図的に作り出してもよい。前者の場合、例えば、キャビティ内を樹脂が流れるときに、金型との接触により樹脂の表面が冷えて表面と中央の樹脂の粘性に差がつくが、これを利用して、光輝材を中央に集めるようにする方法、縦型の射出成形機の場合は、光輝材の比重が熱可塑性樹脂より重いことを利用して、樹脂が完全に固化するまでに光輝材を沈降させる方法、等がある。また、後者の場合は、樹脂の粘性や樹脂温度、金型温度、射出速度、射出圧力をコントロールすることで、意図的に作り出すこともできる。また、自然現象に意図的な要素を組み合わせてもよい。
以上のように、本実施の形態においては、平均粒径が120μm未満の光輝材を有する熱可塑性樹脂を、樹脂の合流部を有する形状に成形する場合であっても、本構成であることにより、光輝材の濃度が濃い層よりも人の目に近い部分に非透明樹脂と白色顔料が存在するために、光輝材の配向乱れによって生じる外観品位の低下が認識しにくい。
なお、成形品の厚み方向に光輝材の記濃度勾配のうち、濃度の最大値を意匠面から厚みの5%以上に有する構成であることは、成形品を、外部から擦れやぶつけ等の刺激を受けやすい部品として使用する場合でも、光輝材が剥がれ落ちにくいというメリットもある。
なお、濃度勾配の最大値の場所の上限については、特に指定するものではないが、裏面からの光輝材の剥がれ落ちを考慮すると、95%以内が望ましい。
なお、樹脂の合流部には、樹脂のフローフロント同士が衝突して合流する場合、流れる速度の異なる樹脂が併走しながら合流する場合があるが、そのいずれの場合でも同様の効果が得られる。
また、今回は樹脂の合流部を有する形状を例に挙げて説明したが、リブやボスのような凹凸を有する形状でも本構成により、同様の効果が得られる。
ここで、本発明の光輝材は、反射、透過、屈折等の作用により光輝感を演出するものであり、具体的には、金属顔料(アルミニウム粉、ブロンズ粉、等)やパール顔料(マイカに金属酸化物を被覆したもの、アルミナに金属酸化物を被覆したもの、ガラスに金属酸化物を被覆したもの、等)等があるが、特に指定するものではなく、求める外観、コスト、等から自由に選択でき、これらを複数種混合して使用することも可能である。
なお、光輝材は、アスペクト比が大きいほど高い光輝感が得られ、小さいほど配向乱れが目立ちにくくなる。
また、本発明の非透明樹脂は、JIS K7136によるヘーズが、厚み1mmで40以上の樹脂を指し、PP(ポリプロピレン)、ABS(アクリロニトリルブタジェンスチレン共重合樹脂)、PS(ポリスチレン)等、特に指定するものではなく、外観品位、機械物性、コスト等を考慮して自由に選択できる。半透明の樹脂でもかまわないが、より望ましくは、ヘーズが80以上の樹脂である。非透明樹脂を用いることは、光輝材の配向乱れを認識させてにくくするだけでなく、機械物性、コストの面からもメリットがある。
また、本発明の白色顔料は、特に指定するものではなく、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム等が使用可能であり、これらを複数種混合して使用することも可能である。一般に樹脂用着色剤には顔料と染料があるが、顔料を指定するのは、顔料のほうが隠蔽性に優れるため、配向乱れを認識しにくくする効果が高いからである。また、白色を指定するのは、他の色に比べて、光輝材の配向乱れを認識しにくくする効果が高いからある。この原因は、光輝材の配向乱れが発生している部位では光の反射強度が弱くなっていることで暗く見えるため、明度が高い白色が効果的に働くと考える。ここで、白色顔料の粒径は、100〜500nmが望ましい。粒径が小さすぎると透明になることでマスキング効果が弱く、粒径が大きすぎると均一分散が難しくなることでマスキング効果が不均一になるからである。
また、本発明の熱可塑性樹脂は、光輝材や白色顔料の他に、所望の色調を得るためにその他の着色剤を有していてもよい。
また、付与したい性能等に合わせて他のフィラーや添加剤等、例えば、繊維状フィラー、酸化防止剤、難燃剤等を有していてもよい。
光輝材濃度勾配、光輝材濃度、白色顔料の濃度について、検証を行った。
(実施例1)
図2は、実施例1における射出成形品17の外観図である。射出成形品17は、2つのゲート18A,18Bから樹脂が金型内に注入されることで、樹脂の合流部19を有する形状である。これを、横型の射出成形機を用いて、射出成形を行った。
図2は、実施例1における射出成形品17の外観図である。射出成形品17は、2つのゲート18A,18Bから樹脂が金型内に注入されることで、樹脂の合流部19を有する形状である。これを、横型の射出成形機を用いて、射出成形を行った。
材料は、少なくとも、平均粒径が40μmのアルミニウム粉末0.5wt%と70μmのマイカベースのパール顔料1.5wt%(トータルの光輝材量2wt%)と白色顔料0.1wt%とを含むブロックPP(非透明)である。
このとき、光輝材の分布状態は、光輝材の濃度勾配のうちの最大値が厚みの中央部分にあった。
配向乱れは認識しにくく、また光輝感も確保できた。
この樹脂をベースに、熱可塑性樹脂中の光輝材の含有率や白色顔料の含有率を変えて、光輝材の配向乱れの認識しにくさと光輝感の関係を評価した。
その結果を表1に示す。
配向を認識しにくくするためには、光輝材の含有率を増やすならば、白色顔料の含有量も増やす必要がある。しかし、光輝材の含有率が多くなりすぎると、白色顔料でカバーしきれなくなるため、光輝材の含有率は5wt%以下であることが望ましいと分かった。
また、光輝材が少なすぎると光輝感が得られないため、光輝材は0.2wt%以上であることが望ましいと分かった。
(実施例2)
実施例1と同じ射出成形機を用いて射出成形を行った。
実施例1と同じ射出成形機を用いて射出成形を行った。
材料は、少なくとも、平均粒径が60μmのアルミニウム粉末1wt%と50μmのマイカベースのパール顔料2wt%(トータルの光輝材含有率3wt%)と白色顔料0.2wt%とを含むABS(非透明樹脂)である。
このとき、光輝材の分布状態は、光輝材の濃度勾配のうちの最大値が厚みの中央部分にあった。
配向乱れは認識しにくく、また、光輝感も確保できた。
この樹脂をベースに、熱可塑性樹脂中の光輝材の含有率や白色顔料の含有率を変えて、光輝材の配向乱れの認識しにくさと光輝感の関係を評価した。
その結果を表2に示す。
配向を認識しにくくするためには、光輝材の含有率を増やすならば、白色顔料の含有量も増やす必要がある。しかし、光輝材の含有率が多くなりすぎると、白色顔料でカバーしきれなくなるため、光輝材の含有率は5wt%以下であることが望ましいと分かった。
また、光輝材が少なすぎると光輝感が得られないため、光輝材は0.2wt%以上であ
ることが望ましいと分かった。
ることが望ましいと分かった。
(実施例3)
図3は、実施例3における射出成形品20の外観図である。
図3は、実施例3における射出成形品20の外観図である。
射出成形品20は、中央部に穴21を有し、穴21により二手に分かれた樹脂が穴21の末端部で合流することで合流部22を有する形状である。これを、縦型の射出成形機を用いて射出成形を行った。
材料は実施例1と同じである。
このとき、光輝材の分布は、光輝材の濃度勾配のうちの最大値が厚みの下方(意匠面から厚みの80%)にあった。
配向乱れは認識しにくく、光輝感も確保できた。
また、光輝材の濃度勾配の最大値の場所と、光輝材の配向乱れの認識しにくさの関係を評価したところ、表3のような結果となった。
従って、光輝材の配向乱れを認識できないようにするためには、光輝材が、成形品の厚み方向において濃度勾配を有し、かつ、前記濃度勾配のうち最大値を意匠面から厚みの5%以上に有する構成であることが望ましいと分かった。
(比較例1)
実施例1における熱可塑性樹脂をランダムPP(透明樹脂)に変えた。
実施例1における熱可塑性樹脂をランダムPP(透明樹脂)に変えた。
光輝材の分布状態は、実施例1同様、光輝材の濃度勾配のうちの最大値が厚みの中央部分にあったのにもかかわらず、樹脂が透明になったことにより、光輝材の配向乱れが認識できるようになってしまった。
このとき、白色顔料を多くすれば、光輝材の配向乱れを認識しにくくすることはできるが、透明樹脂を用いて白色顔料の使用量を多くする手段をとるよりも、非透明樹脂のほうがコストが安く、機械強度も優れるため、非透明樹脂を使用するほうが望ましい。
(比較例2)
実施例2における熱可塑性樹脂を透明ABS(透明樹脂)に変えた。
実施例2における熱可塑性樹脂を透明ABS(透明樹脂)に変えた。
光輝材の分布状態は、実施例2同様、光輝材の濃度勾配のうちの最大値が厚みの中央部分にあったのにもかかわらず、樹脂が透明になったことにより、光輝材の配向乱れが認識できるようになってしまった。
このとき、白色顔料を多くすれば、光輝材の配向乱れを認識しにくくすることはできるが、透明樹脂を用いて白色顔料の使用量を多くする手段をとるよりも、透明樹脂よりも非透明樹脂のほうがコストが安く、機械強度も優れるため、非透明樹脂を使用するほうが望
ましい。
ましい。
なお、実施の形態及び実施例では、樹脂の合流部が、樹脂のフローフロント同士が衝突することで形成される形状で検証を行ったが、流れる速度の異なる樹脂が併走しながら合流する場合でも同様の効果が得られる。
また、樹脂の合流部を有する形状だけでなく、凹凸を有する形状でも同様の効果が得られる。
以上のように、本発明にかかる光輝材を有する熱可塑性樹脂の射出成形品は、塗装を行うことなく、熱可塑性樹脂中の光輝材により塗装同等の質感を得ることができるため、外観品位を要求される用途に適用できる。例えば、掃除機、冷蔵庫、エアコン、洗濯機、温水洗浄便座、電子レンジ、等の家電製品に利用可能である。また、家電製品に限らず自動車用部品等他の製品にも利用可能である。
12 射出成形品
13 光輝材
14 白色顔料
15 熱可塑性樹脂
13 光輝材
14 白色顔料
15 熱可塑性樹脂
Claims (5)
- 少なくとも光輝材と顔料とを有する熱可塑性樹脂を成形した射出成形品において、前記光輝材が、平均粒径が120μm未満であり、かつ、前記射出成形品の厚み方向において濃度勾配を有し、かつ、前記濃度勾配のうち最大値を意匠面から厚みの5%以上の範囲に有する構成であり、かつ、前記熱可塑性樹脂が、非透明樹脂であり、かつ、前記顔料として、少なくとも白色顔料を有する射出成形品。
- 前記射出成形品は、前記光輝材を0.2wt%以上5wt%以下含む請求項1に記載の射出成形品。
- 前記射出成形品は、前記白色顔料を0.05wt%以上0.3wt%以下含む請求項1または2に記載の射出成形品。
- 前記熱可塑性樹脂が、PPである請求項1から3のいずれか一項に記載の射出成形品。
- 前記熱可塑性樹脂が、ABSである請求項1から3のいずれか一項に記載の射出成形品。
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