JP5625523B2 - 樹脂成形品 - Google Patents

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本発明は、シルバー色やパール色等のメタリック感を備えた樹脂成形品に関する。
近年、自動車の内装品、パソコン等の電子機器や玩具等に用いられる樹脂成形品としては、意匠性向上のためにメタリック感を備えたものが用いられている。メタリック感を塗装によって付与した樹脂成形品の場合には、製造過程や車内や室内等において、揮発性有機化合物(VOC)が発生し、環境や人体に影響を及ぼす可能性があることが指摘されている。
このため、予め着色材や光輝材を混練した着色樹脂を用いて成形することによりメタリック感を備えた無塗装の樹脂成形品が使用されている。この樹脂成形品は、アルミニウム顔料やパール顔料等の光輝材を樹脂に混練して配合したものを射出成形することにより成形される。しかし、この樹脂を用いてシルバー色やパール色などのメタリック感を有するように着色した樹脂材料を射出成形した場合、黒色や白色などのメタリック感の無い色(ソリッド色)に着色した樹脂材料を射出成形した場合と比較して、金型内の樹脂の流動の仕方によってアルミニウム顔料やパール顔料などの光輝材が配向するため、ソリッド色に着色した樹脂成形品では目視上見えなかったウエルドラインやヒケなどが発生して外観上の不具合が目立ちやすいものとなる。
例えば、図5や図7に示すように、長尺平面形状の本体部51に対して、リブ、ボス、ツメ等となる立体部52が垂直方向に突設された形状を有する樹脂成形品50の場合、湯口53から金型内に射出された樹脂が本体部51の長手方向に沿って流動することにより成形が行われる。ここで、図5は、立体部52が樹脂の流動方向54に対して平行方向に延びている樹脂成形品50の例を示し、図7の樹脂成形品50は、立体部52が樹脂の流動方向54に対して直交方向に延びている樹脂成形品50の例を示しており、これらの樹脂成形品50では、立体部52を設けた面の反対側の面が意匠面55となる。
図5及び図7に示す樹脂成形品50に対して光輝材を配合した樹脂により射出成形すると、図5の樹脂成形品50では、図6に示すように、樹脂の流動方向54に沿った立体部52の延長線上の意匠面55にウエルドライン57が発生し、図7の樹脂成形品50では、図8に示すように、立体部52の設置箇所の意匠面55にヒケ59が発生する。そして、このようなウエルドライン57やヒケ59が意匠面55に発生することにより樹脂成形品50が不良品となる。
図9は、図5の樹脂成形品50にウエルドライン57は発生するメカニズムを示しており、図中、L1〜L5は樹脂が時間経過によって流動するフローラインを示している。図5に示すように、樹脂の流動方向54に対して平行方向に立体部52が設置される場合、立体部52に射出圧力が十分に加わり、流動樹脂が立体部52を充填しながら流動していく。このため、意匠面55の立体部52が設置してある部分は、立体部52が設置されていない部分よりも樹脂流動が遅れ、L3,L4,L5のフローフロントのように立体部52の設置部分で開合角を形成し、これによりウエルドラインが発生する。
また、図10は、図7の樹脂成形品50にヒケ59が発生するメカニズムを示している。図10に示すように、樹脂の流動方向54に対して直交する方向に立体部52が設置される場合、流動樹脂は一旦意匠面55のみを充填し、立体部52をほとんど充填することなく通過した後、徐々に立体部52を充填する。このため、ウエルドラインは発生しないが、立体部52内に射出圧力が加わり難く、樹脂の充填量が不足するため、ヒケ59やショートショットが発生する。なお、このヒケやショートショットは、慣性力が作用しやすい状態、例えば、意匠面55において立体部52が設置してある部分を通過する流動樹脂の流動速度が高い場合ほど起こりやすいものである。
従来、上述したウエルドライン57やヒケ59を発生させないため、図11に示す樹脂成形品60のように、樹脂の流動方向54と平行となるように立体部52を本体部51の側端側の端部に設けたり、或いは、図12に示す樹脂成形品60のように、樹脂の流動方向54と直交するように立体部52を本体部51の終端側の端部に設けたりすることも行われている。このように立体部52を本体部51の端部に設けることにより、図9に示すような開合角の形成や、図10に示すような樹脂の一旦通過現象が起きないため、外観不具合が発生することがない。
しかしながら、図11及び図12に示す構造を有する樹脂成形品60では、立体部52の強度が不足するため、樹脂成形品に対して補強リブを設ける必要がある。図13は図11の樹脂成形品60に対して補強リブ71を設けた樹脂成形品70を示しており、図13の樹脂成形品70では、補強リブ71が樹脂の流動方向54と直交するように設けられている。また、図14は図12の樹脂成形品60に対して補強リブ71を設けた樹脂成形品70を示しており、図14の樹脂成形品70では、補強リブ71が樹脂の流動方向54と平行となるように設けられている。すなわち、このように補強リブ71を設けた樹脂成形品70では、図9及び図10によって説明した発生メカニズムと同様の理由から、図15に示すように意匠面55にヒケ59が発生したり、図16に示すように意匠面55にウエルドライン57が発生したりする。
また、従来、例えば、特許文献1や特許文献2に記載されているように、上述した樹脂成形時の不具合を成形に用いる材料によって防止する技術も提案されている。すなわち、特許文献1では、樹脂材料に添加する光輝材の形状や粒子径を選定することによりウエルドラインの発生を抑制しており、また、特許文献2では、光輝材の粒子径や添加量の選定とウエルド消去剤としての酸化チタン、酸化鉛、酸化亜鉛、酸化アンチモンを添加することによりウエルドラインの発生を抑制している。
特開平8−41284号公報 特許第3571403号公報
しかしながら、上記した特許文献1及び2に記載された技術では、光輝材の形状、粒子径や添加量が制約されるため、光輝感やメタリック感などの質感が限定され、要求されるメタリック感が付与された樹脂成形品を成形することができないといった問題がある。
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、光輝材に対する制約を必要とすることなく、構造上の面からウエルドラインやヒケの発生を防止することが可能な樹脂成形品を提供することを目的とする。
上記した目的を達成するため、本発明は、光輝部材が配合された樹脂を射出して成形される樹脂成形品において、一端部側から他端部側に樹脂が射出される本体部と、該本体部の一方の面に突設される立体部と、対向する一対の長辺を有し、前記立体部を支持するように前記本体部に突設される補強リブとを備え、前記本体部は長尺形状の矩形平板から成り、前記樹脂が前記本体部の長手方向に沿って流動するように形成され、前記立体部は前記本体部の長手方向端部に突設され、前記補強リブが設置される前記立体部の設置面に対して前記一対の長辺を斜めに配置した時に前記樹脂の流動方向に沿って前記一対の長辺を直線状に結ぶ線分の寸法をbとし、前記立体部の設置面に対して前記一対の長辺を垂直に配置した時の前記補強リブの長さ寸法をcとし、前記立体部の設置面に対して前記一対の長辺を平行に配置した時の前記補強リブの幅寸法をdとした場合に、前記補強リブは、条件d<b<cを充足するように、前記樹脂の流動方向に対して斜めに設けられていることを特徴とする。
また、本発明に係る樹脂成形品において、前記補強リブは、前記一対の長辺が前記樹脂の流動方向に対して45°の傾斜角度を成すように設けられているのが好ましい。
本発明によれば、ウエルドラインやヒケの発生を防止できるため、光輝材に対する制約を必要とすることがなく、良好なメタリック感を有した樹脂成形品を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る樹脂成形品を示し、(A)は斜視図、(B)は平面図である。 本発明の一実施形態に係る樹脂成形品を成形するための条件を説明する平面図である。 樹脂成形品を成形するために好ましくない条件を説明する平面図である。 本発明の他の実施形態に係る樹脂成形品を示し、(A)は斜視図、(B)は平面図である。 従来の樹脂成形品の一例を示す斜視図である。 図5の樹脂成形品の問題点を示す斜視図である。 従来の樹脂成形品の他の例を示す斜視図である。 図7の樹脂成形品の問題点を示す斜視図である。 (A)は図5の樹脂成形品に発生するウエルドラインのメカニズムを説明する底面図、(B)はE−E線断面図である。 (A)は図7の樹脂成形品に発生するヒケのメカニズムを説明する底面図、(B)はF−F線断面図である。 ウエルドラインを発生させない従来の樹脂成形品の一例を示す斜視図である。 ヒケを発生させない従来の樹脂成形品の他の例を示す斜視図である。 補強リブを設けた従来の樹脂成形品の一例を示す斜視図である。 補強リブを設けた従来の樹脂成形品の他の例を示す斜視図である。 図13の樹脂成形品の問題点を示す斜視図である。 図14の樹脂成形品の問題点を示す斜視図である。
以下、本発明の実施形態に係る樹脂成形品について図面を参照しつつ説明する。ここで、図1は本発明の一実施形態に係る樹脂成形品を示し、(A)は斜視図、(B)は平面図、図2は本発明の一実施形態に係る樹脂成形品を成形するための条件を説明する平面図、図3は樹脂成形品を成形するために好ましくない条件を説明する平面図、図4は本発明の他の実施形態に係る樹脂成形品を示し、(A)は斜視図、(B)は平面図である。
図1に示すように、樹脂成形品1は、長尺形状の矩形平板からなる本体部2と、本体部2の一方の面2aの端部に突設された立体部3と、立体部3を支持するように本体部2の一方の面2aに突設された補強リブ5とを備えて構成されている。この樹脂成形品1は、光輝材が配合された熱可塑性樹脂を金型内に射出することにより成形され、光輝材としては、アルミニウム顔料、パール顔料を始めとし、銅、ニッケル、マイカ、その他の金属光沢を有した材料を使用することができる。そして、この光輝材を配合することにより、樹脂成形品1にメタリック感を付与することができる。
立体部3は樹脂成形品1におけるリブ、ボス、ツメ等の機能部となるものであり、立体部3を設けた本体部2の一方の面2aの反対側の面(裏面)が意匠面6となる。このような樹脂成形品1は、長尺形状の本体部2の長手方向における一端部側(始端部側)から他端部側(終端部側)に樹脂が金型内に射出されて成形されるものであり、樹脂が射出される湯口7が本体部2の長手方向の一端部に設けられている。符号8は樹脂成形品1を成形するための金型内での樹脂の流動方向を示しており、溶融樹脂は本体部2の長手方向に沿って流動するようになっている。そして、立体部3は、この樹脂の流動方向8の終端部に位置するように設けられ、矩形の平板形状を有し、本体部2の長手方向(すなわち、樹脂の流動方向8)に直交するように本体部2に突設されている。
補強リブ5は、立体部3に強度を付与するものであり、立体部3の設置面である樹脂の流動方向8側の面3a(以下「樹脂流動側の面3a」と言う。)に設けられ、立体部3と同様に本体部2の一方の面2aに立体部3より突設されている。また、補強リブ5は、立体部3に対して一対に設けられており、いずれの補強リブ5も対向した一対の長辺11を有し、直角三角形の平板形状を有している。一対の補強リブ5のそれぞれは、立体部3の樹脂流動側の面3aに対して斜めに取り付けられており、立体部3側の基端部に対して先端部が相互に離間するように配置されている。
補強リブ5は、立体部3の樹脂流動側の面3aに対する一対の長辺11の傾斜角度αが0°<α<90°の範囲となるように取り付けられ、傾斜角度αは45°が最適である。一対の長辺11の傾斜角度αを45°とすることにより、流動樹脂の遅れがなくなって開合角を形成しなくなるため、ウエルドラインが発生するのを抑制することができると共に、射出される樹脂圧力が加わりやすくなるため、ヒケやショートショットが発生するのを抑制することができる。
次に、図2を参照しつつ、補強リブ5の一対の長辺11が立体部3の樹脂流動側の面3aに対して斜めとなるように配置された場合の補強リブ5の配置条件について詳細に説明する。
図2(A)に示すように、樹脂の流動方向8に沿って流動する樹脂が補強リブ5を跨ぐ幅、すなわち、補強リブ5の一対の長辺11を樹脂の流動方向8に沿って直線状に結ぶ線分13の寸法をbとし、図2(B)に示すように、立体部3の樹脂流動側の面3aに対して垂直に一対の長辺11を配置した場合の補強リブ5の長さ寸法をcとし、図2(C)に示すように立体部3の樹脂流動側の面3aに対して平行に一対の長辺11を配置した場合の補強リブ5の幅寸法をdと設定した場合に、線分13の寸法bが、幅寸法dよりも大きく、長さ寸法cよりも小さくなるように補強リブ5を配置する(d<b<c)。
このように線分13の寸法bを補強リブ5の長さ寸法cよりも小さくすることにより、樹脂の流動方向8と平行な直線が補強リブ5の長辺11方向と重なることがなくなる。このため、流動樹脂の遅れがなくなって開合角を形成することがなく、意匠面6にウエルドラインが発生するのを抑制することができる。
また、線分13の寸法bを補強リブ5の幅寸法dよりも大きくすることにより、射出される樹脂圧力が加わりやすくなる。これにより、意匠面6にヒケやショートショットが発生するのを抑制することができる。
なお、図3の場合には、立体部3の樹脂流動側の面3aに対する一対の長辺11の傾斜角度αが0°<α<90°の範囲となるように補強リブ5が取り付けられているが、樹脂の流動方向8と補強リブ5の対角線が重なり、b>cとなるため、ウエルドライン発生に対する抑制効果はない。
以上のように、補強リブ5が、条件d<b<cを充足するように、立体部3の設置面に対して斜めに設けられることにより、意匠面6にウエルドラインやヒケ又はショートショットが発生するのを抑制することができる。したがって、光輝材に対する制約の必要がなく、良好なメタリック感を有した良好な外観の樹脂成形品1を提供することができる。
なお、上記した実施の形態に係る樹脂成形品1では、一対の補強リブ5が、立体部3側の基端部に対して先端部が相互に離間するように樹脂流動側の面3aに対して斜めに取り付けられているが、本発明はこの場合に限定されるものではない。すなわち、例えば、図4に示すように、一対の補強リブ5が、立体部3側の基端部に対して先端部が相互に接近するように樹脂流動側の面3aに対して斜めに取り付けられていてもよく、この場合の樹脂成形品1Aであっても、上述した条件d<b<cを充足するように、補強リブ5を立体部3の設置面に対して斜めに設けることにより、意匠面6にウエルドラインやヒケ又はショートショットが発生することを抑制し、良好な外観の樹脂成形品1Aを提供することができる。
また、上記した実施の形態では、立体部3が樹脂の流動方向8の終端部に位置するように形成され、長尺形状の本体部2の長手方向の一端部側から他端部側に樹脂が金型内に射出されて成形される樹脂成形品1,1Aについて説明したが、これは単なる例示に過ぎず、本発明は、例えば、立体部3が樹脂の流動方向8と平行となるように本体部2の側端側の端部に設けられている場合や、或いは、本体部2が円形板形状で立体部3が外周端部に設けられており、本体部2の中央から樹脂が放射状に金型内に射出されて成形される場合等、他の場合にも適用可能である。
さらに、上記した実施の形態では、補強リブ5は直角三角形の平板形状を成し、2個一対で設けられているが、補強リブ5の形状や設置数はこの場合に限定されるものではないことは言う迄もない。
1,1A 樹脂成形品
2 本体部
2a 本体部の一方の面
3 立体部
3a 樹脂流動側の面(立体部の設置面)
5 補強リブ
8 樹脂の流動方向
11 一対の長辺
13 線分

Claims (2)

  1. 光輝材が配合された樹脂を射出して成形される樹脂成形品において、
    一端部側から他端部側に樹脂が射出される本体部と、該本体部の一方の面に突設される立体部と、対向する一対の長辺を有し、前記立体部を支持するように前記本体部に突設される補強リブとを備え、前記本体部は長尺形状の矩形平板から成り、前記樹脂が前記本体部の長手方向に沿って流動するように形成され、前記立体部は前記本体部の長手方向端部に突設され、
    前記補強リブが設置される前記立体部の設置面に対して前記一対の長辺を斜めに配置した時に前記樹脂の流動方向に沿って前記一対の長辺を直線状に結ぶ線分の寸法をbとし、前記立体部の設置面に対して前記一対の長辺を垂直に配置した時の前記補強リブの長さ寸法をcとし、前記立体部の設置面に対して前記一対の長辺を平行に配置した時の前記補強リブの幅寸法をdとした場合に、前記補強リブは、条件d<b<cを充足するように、前記樹脂の流動方向に対して斜めに設けられていることを特徴とする樹脂成形品。
  2. 前記補強リブは、前記一対の長辺が前記樹脂の流動方向に対して45°の傾斜角度を成すように設けられている請求項1に記載の樹脂成形品。
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