JP2012155205A - 定着装置及び画像形成装置 - Google Patents

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泰男 片野
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幸通 染矢
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史育 金子
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Abstract

【課題】軟化した状態のトナー等の樹脂微粒子を担持する記録媒体を搬送する搬送部材に樹脂微粒子が付着することに起因する異常画像の発生を抑制できる定着装置、及び、この定着装置を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】未定着トナーTを軟化させる軟化剤を含有する液状定着液TLを泡状定着液Buとする泡状定着液供給部130と、未定着トナーTからなるトナー層を担持する転写紙Pの表面に泡状定着液Buを塗布する塗布ローラ41を備える泡状定着液塗布部140とを有する定着装置30において、泡状定着液Buを塗布された転写紙Pを搬送する搬送ローラ45の表面に、転写紙Pに接触する針状の凸部を有し、凸部とトナー層とが直接接触することを防止する介在物質である水を、凸部の表面に供給する介在物質供給手段である水供給パット46を備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置、及び、画像形成装置に用いられる定着装置に関するものである。詳しくは、トナーの樹脂成分の少なくとも一部を溶解または膨潤させて記録媒体上に定着させる定着液を記録媒体上またトナー像担持体上のトナー像に付与する定着装置、及びこれを備えた画像形成装置に関するものである。
プリンタ、ファクシミリ及び複写装置のような画像形成装置は、紙、布、及びOHP用シートのような記録媒体に、画像情報に基づいて文字や記号を含む画像を形成する装置である。画像形成装置には種々の方式があるが、電子写真方式の画像形成装置が普通紙に高精細な画像を高速で形成することができる点から広くオフィスで使用されている。この電子写真方式の画像形成装置では、定着速度、定着画像品質等の点から記録媒体上のトナーを加熱して軟化あるいは溶融させ、軟化等させたトナーを加圧することによって、トナーを記録媒体上に定着させる熱定着方式が広く普及している。この熱定着方式は、高い定着速度及び高い定着画像品質を提供することができるため、好適に用いられている。
しかし、このような熱定着方式を採用した定着装置を備えた電子写真方式の画像形成装置における消費電力の半分以上は、定着装置でトナーを加熱するために消費されている。一方、近年における環境問題対策の観点からは、低消費電力(省エネルギー)の画像形成装置が望まれている。そこで、従来の画像形成装置における消費電力の半分以上を消費する定着装置での省エネルギー化が求められている。従来の熱定着方式の定着装置では加熱処理に多くの電力を消費していたため、トナーを定着するためにトナーを加熱する温度を今までよりも極端に低下させる定着方式、または、トナーを加熱することを必要としない定着方式が望まれている。特に、トナーを加熱することなくトナーを記録媒体に定着させる非加熱定着方式が低消費電力の点で理想的である。
このような非加熱定着方式としては、トナーの樹脂成分の少なくとも一部を溶解または膨潤させることでトナーを軟化させる軟化剤を含有する定着液を記録媒体表面上のトナー像に付与してトナー像を定着させる湿式定着方式が知られている(例えば、特許文献1〜特許文献4に記載の定着装置で用いる定着方式)。このように、湿式定着方式の定着装置ではトナーを軟化させるために加熱処理を行う必要がないため、熱定着方式に比べて省エネルギー化を実現することができる。
湿式定着方式の定着装置では、定着液によって軟化したトナーが記録媒体上で硬化することで定着が成されるが、トナーが硬化して定着が成されるまでには時間を要する。このため、軟化した後の定着が成されるまでのトナーは一時的に粘着性が高い状態となる。このように粘着性が高い状態のトナーが搬送ローラ等の搬送部材に接触すると、記録媒体上のトナーの一部が搬送部材に付着し、と画像抜け等の異常画像となることがある。
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、軟化した状態のトナー等の樹脂微粒子を担持する記録媒体を搬送する搬送部材に樹脂微粒子が付着することに起因する異常画像の発生を抑制できる定着装置、及び、この定着装置を備えた画像形成装置を提供することである。
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂微粒子を軟化させる軟化剤を含有する定着液を、該樹脂含有微粒子からなる樹脂含有微粒子層を担持する定着液付与対象の表面に付与する定着液付与手段を有し、該定着液を該定着液付与対象に付与することで軟化した該樹脂含有微粒子層を記録媒体に定着させる定着装置において、表面が無端移動することにより、上記定着液によって軟化した該樹脂含有微粒子層を担持する上記記録媒体に搬送力を付与する搬送部材の表面に該記録媒体に接触する針状の凸部を有し、該凸部と該樹脂含有微粒子層とが直接接触することを防止する介在物質を該凸部の表面に供給する介在物質供給手段を備えることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の定着装置において、上記介在物質が水を含有することを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の定着装置において、上記介在物質が界面活性剤を含有することを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項2または3の定着装置において、上記介在物質が水に溶融し、且つ水よりも沸点の高い材料を含有することを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の定着装置において、上記凸部の表面の付着物を除去する凸部表面クリーニング手段を備えることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項5の定着装置において、上記凸部表面クリーニング手段は、面ファスナーに用いられるループ面を上記凸部に接触させる構成であることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の定着装置において、液状の定着液を液中に気泡が分散した泡状定着液とする定着液泡状化手段を備え、上記定着液付与手段は、該泡状定着液を上記定着液付与対象に付与することを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、樹脂と色剤とを含有する樹脂微粒子を含むトナーを用いて記録媒体上に画像情報に基づいてトナー像を形成するトナー像形成手段と、トナー像を担持する記録媒体の表面に泡状定着液を付与し、該記録媒体上に該トナー像を定着せしめる定着手段とを備える画像形成装置であって、該定着手段として、請求項1乃至7に記載の定着装置を用いることを特徴とするものである。
本発明においては、搬送部材の表面に該記録媒体に接触する針状の凸部を有するため、記録媒体上の軟化した該樹脂含有微粒子と搬送部材とが接触し得る面積を小さくすることができ、搬送部材に樹脂微粒子が付着することを抑制できる。また、介在物質供給手段が供給する介在物質によって樹脂含有微粒子層と凸部とが直接接触することを防止でき、より効果的に、搬送部材に樹脂微粒子が付着することを抑制できる。
本発明によれば、搬送部材に樹脂微粒子が付着することを抑制できるため、搬送部材に樹脂微粒子が付着することに起因する異常画像の発生を抑制できるという優れた効果を奏する。
本実施形態に係る定着装置の概略構成図。 本実施形態に係るプリンタの要部を示す概略構成図。 同プリンタのプロセスユニットを示す拡大構成図。 本実施形態の定着装置の泡状定着液供給部の構成図。 膜厚規制ブレードによる泡状定着液の膜厚制御の概略図、(a)は、ギャップ幅を狭くしたときの説明図、(b)は、ギャップ幅を広くしたときの説明図。 搬送ローラの説明図、(a)は、搬送ローラの上部を拡大した説明図、(b)は、搬送ローラの表面をさらに拡大した説明図。 凸部表面クリーニングローラの説明図。 介在物質供給手段の構成が異なる定着装置の説明図。 加圧ベルトを備える定着装置の概略構成図。
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のタンデム方式のカラープリンタ(以下、単にプリンタ100という)の実施形態について説明する。本発明を適用した画像形成装置としては、プリンタに限るものではなく、複写機、ファクシミリ等、定着装置を備えた画像形成装置であれば適用可能である。
まず、実施形態に係るプリンタ100の基本的な構成について説明する。図2は、プリンタ100の要部を示す概略構成図である。同図において、プリンタ100は、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),黒(K)のトナー像を形成する四つのプロセスユニット3(Y,M,C,K)、転写ユニット20、紙搬送ユニット28、レジストローラ対15、定着装置30、図示しない光書込装置などを備えている。
転写ユニット20は、トナー像担持体としての中間転写ベルト25を備えており、この中間転写ベルト25の上部の張架面に沿って、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各色の画像形成ユニットである四つのプロセスユニット3(Y,M,C,K)が配列されている。
四つのプロセスユニット3(Y,M,C,K)の上方には、図示しない光書込装置が配置されている。例えば、プリンタ100が複写機である場合には、不図示のスキャナで原稿の画像情報を読み込み、この画像情報に応じて、光書込装置のレーザーダイオードやLED等の光源を駆動して、プロセスユニット3(Y,M,C,K)におけるドラム状の感光体4(Y,M,C,K)に向けて各レーザー光L1〜L4を照射する。この照射により、感光体4(Y,M,C,K)の表面には静電潜像が形成され、この静電潜像は所定の現像プロセスを経由してトナー像になる。なお、符号の後に付されたY,M,C,Kという添字は、イエロー,マゼンタ,シアン,黒用の仕様であることを示している。
プロセスユニット3(Y,M,C,K)はそれぞれ、潜像担持体たる感光体4と、その周囲に配設される各種機器とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、プリンタ本体に対して着脱可能になっている。プロセスユニット3(Y,M,C,K)は現像に使用するトナーの色が異なる点以外は同様の構成である。
図3は、四つのプロセスユニット3(Y,M,C,K)のうちの一つのプロセスユニット3の拡大説明図である。図3に示すように、四つのプロセスユニット3はそれぞれ、潜像担持体である感光体4の周囲に、帯電装置の帯電ローラ7、現像装置6、ドラムクリーニング装置9、及び除電装置の除電ランプ8等が配置されている。また、中間転写ベルト25を挟んで感光体4と対向する位置には、一次転写装置の一次転写ローラ26が設けられている。
本実施形態の一次転写装置は、ローラ状の一次転写ローラ26を備え、中間転写ベルト25を挟んで一次転写ローラ26が感光体4に当接することで、感光体4の表面上に形成されたトナー像を中間転写ベルト25に転写する一次転写ニップを形成する。一次転写装置としては、導電性ブラシ、非接触のコロナチャージャー等を採用することもできる。
感光体4としては、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材の塗布による感光層を形成したドラム状のものを用いている。無端ベルト状のものを用いても良い。
本実施形態の帯電装置は、帯電バイアスが印加される帯電ローラ7を感光体4に接触させる接触型帯電方式である。帯電装置は、感光体4に当接させた帯電ローラ7に帯電バイアスを印加することにより、感光体4の表面を一様に帯電する。帯電装置としては、接触型帯電方式に限るものではなく、感光体4に対して非接触で帯電処理を行うスコロトロンチャージャ等を採用した非接触帯電方式の帯電装置を用いてもよい。
現像装置6は、図示しない磁性キャリアと非磁性トナーとを含有する二成分現像剤を用いて感光体4上の静電潜像にトナーを付着させてトナー像を得ることで、静電潜像を現像して可視化する二成分現象方式のものである。二成分現像剤の代わりに、磁性キャリアを含まない一成分現像剤によって現像を行うタイプのものを使用してもよい。感光体4の表面上で現像されたトナー像は、一次転写ニップで中間転写ベルト25に一次転写される。
ここで、各色に対応するトナーは、それぞれの色に着色された樹脂微粒子からなり、これらの樹脂微粒子は、後述する定着液により溶解または膨潤するものである。現像装置6は、二成分現像剤を収容し撹拌する攪拌部と、現像ローラが配置された現像部とを有し、現像ローラの表面に供給され現像に使用されなかった現像剤は、攪拌部に戻され、再利用される。攪拌部における二成分現像剤のトナー濃度は、トナー濃度センサによって検出され、トナー濃度が、一定であるように制御されている。
一次転写ニップを通過した後の感光体4表面に付着している転写残トナーは、ドラムクリーニング装置9によって感光体4表面から除去される。ドラムクリーニング装置9によって感光体4表面から除去されたトナーは、不図示の回収スクリュ及びトナーリサイクル装置によって現像装置6に搬送され、再利用される。本実施形態では、ドラムクリーニング装置9として、ポリウレタンゴム製のクリーニングブレードの先端を感光体4の表面に押し当てることによって転写残トナーを掻き取る方式のものを示している。ドラムクリーニング装置9としては、感光体4の表面に当接するブラシ、または、当接した状態で回転するブラシローラ等、他の方式によって転写残トナーを除去するものを用いてもよい。
除電ランプ8は、光照射によって感光体4を除電する。除電された感光体4の表面は初期化され、帯電ローラ7による一様帯電から始まる次の画像形成に備える。
先に示した図2において、四つのプロセスユニット3(Y,M,C,K)の感光体4(Y,M,C,K)には、これまで説明してきたプロセスによってY,M,C,Kトナー像が形成される。四つのプロセスユニット3(Y,M,C,K)の下方には、転写ユニット20が配設されている。この転写ユニット20は、複数の張架ローラ(21、22、23)によって張架している中間転写ベルト25を、感光体4(Y,M,C,K)に当接させてY,M,C,K用の一次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト25は駆動ローラ21の回転駆動によって図中時計回り方向(図中の矢印A方向)に無端移動する。
Y,M,C,K用の一次転写ニップの近傍では、中間転写ベルト25のベルトループ内側に配設された一次転写ローラ26(Y,M,C,K)によって中間転写ベルト25を感光体4(Y,M,C,K)に向けて押圧している。これら一次転写ローラ26(Y,M,C,K)には、それぞれ図示しない電源によって一次転写バイアスが印加されている。これにより、Y,M,C,K用の一次転写ニップには、感光体4(Y,M,C,K)上のトナー像を中間転写ベルト25に向けて静電移動させる一次転写電界が形成されている。図中時計回り方向の無端移動に伴ってY,M,C,K用の一次転写ニップを順次通過していく中間転写ベルト25のおもて面には、各一次転写ニップで各色トナー像が順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト25のおもて面には四色重ね合わせトナー像(以下、四色トナー像という)が形成される。
転写ユニット20の図中下方の中間転写ベルト25を挟んで、転写バックアップローラ23に対向する位置には、二次転写装置として機能する紙搬送ユニット28が設けられている。紙搬送ユニット28は、駆動ローラ29bと二次転写ローラ29aとの二つの支持ローラの間に、無端状の紙搬送ベルト29を掛け渡して無端移動させる構成である。この紙搬送ユニット28は、自らの二次転写ローラ29aと、転写ユニット20の中間転写ベルト25との間に、紙搬送ベルト29を挟み込んでいる。このような構成により、中間転写ベルト25のおもて面と、紙搬送ベルト29のおもて面とが当接する二次転写ニップが形成されている。二次転写装置としては、ベルト状の部材を中間転写ベルト25に対向させる構成に限らず、ローラ状の二次転写部材を中間転写ベルト25に対向させる構成であってもよい。
紙搬送ユニット28の二次転写ローラには図示しない電源によって二次転写バイアスが印加されている。一方、転写ユニット20の中間転写ベルト25のループ内で、中間転写ベルト25が掛け回されている転写バックアップローラ23は、接地されている。これにより、二次転写ニップに二次転写電界が形成されている。
二次転写ニップでは、不図示の給紙装置から供給された記録媒体である転写紙Pに中間転写ベルト25上トナー像が転写される。
この二次転写ニップの図中右側方には、レジストローラ対15が配設されており、ローラ間に挟み込んだ転写紙Pを中間転写ベルト25上の四色トナー像に同期させ得るタイミングで二次転写ニップに送り出す。二次転写ニップ内では、中間転写ベルト25上の四色トナー像が二次転写電界やニップ圧の影響によって転写紙Pに一括二次転写され、転写紙Pの白色と相まってフルカラー画像となる。未定着トナー像が転写され、二次転写ニップを通過した転写紙Pは、中間転写ベルト25から離間して、紙搬送ベルト29のおもて面に保持されながら、その無端移動に伴って定着装置30へと搬送される。定着装置30へと搬送された転写紙Pは、定着装置30で表面に担持したトナー像の定着が成され、その後、プリンタ100の装置外に排出される。
中間転写ベルト25の複数の張架ローラ(21、22、23)のうちのクリーニング対向ローラ22に対して中間転写ベルト25を挟んで対向する位置には、ベルトクリーニング装置24が配置されている。二次転写ニップを通過した中間転写ベルト25の表面には、二次転写ニップで転写紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着しており、この転写残トナーは、中間転写ベルト25に当接するベルトクリーニング装置24によって掻き取り除去される。
次に、定着装置30について説明する。図1は、実施形態に係る定着装置30の概略構成図である。定着装置30では、定着液を泡状としてトナー像に付与する構成であるが、本発明の特徴部は、泡状ではない、通常の液状の定着液をトナー像に付与する構成であっても適用可能である。
以下では、便宜上、泡を含まない定着液を「液状定着液TL」といい、気泡を含有し泡状となった定着液を「泡状定着液Bu」という。また、泡状定着液Buのうち、液状定着液TLの状態から起泡されて泡径が所望の泡径よりも大きい状態の泡状定着液Buを「初期泡状定着液Bu1」といい、初期泡状定着液Bu1の状態から分泡して所望の泡径となった泡状定着液Buを「小径泡状定着液Bu2」という。さらに、後述する塗布ローラ41の表面上で泡状定着液膜厚制御手段によって規制され所望の膜厚の状態の小径泡状定着液Bu2を泡状定着液膜Bu3という。また、何れの状態にも限定しない定着液を定着液Fという。
図1に示す定着装置30は、転写紙Pに定着液Fを塗布する定着液付与手段である泡状定着液塗布部140と、泡状定着液生成手段である泡状定着液供給部130とを備える。定着装置30、泡状定着液供給部130で生成した泡状定着液Buを泡状定着液塗布部140で転写紙P上の未定着トナーTに塗布することによって、未定着トナーTに定着液Fを付与する構成である。
泡状定着液塗布部140は、塗布ローラ41及び加圧ローラ43などを備える。
泡状定着液供給部130では、液状定着液TLを構成する二つの定着用液として、軟化剤を含有する液(以下、軟化剤液310aと称す)と起泡剤を含有する液(以下、起泡剤液310bと称す)とを独立して保管している。そして、泡状定着液Buを生成するときに軟化剤液310aと起泡剤液310bとを液混合部400で混合し、この混合によって得られた液状定着液TLを泡状定着液供給部130の泡生成部に供給して、泡状定着液Buを生成する構成である。
樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂微粒子を軟化させる軟化剤は、水と反応して加水分解してしまう傾向を持つ。このため、水を含む起泡剤液310bと軟化剤液310aとは、本実施形態の定着装置30のように、別々に保管し、使用時に混合して使用することが望ましい。
図4は、定着装置30の泡状定着液供給部130を示す拡大構成図である。
泡状定着液供給部130は、定着用液収容器31(軟化剤液収容器31a、起泡剤液収容器31b)及び液搬送ポンプ33(軟化剤液搬送ポンプ33a、起泡剤液搬送ポンプ33b)からなる液供給部と、液混合部400と、初期発泡部35及び泡微細化部38からなる泡生成部とを備える。
泡状定着液供給部130は、軟化剤液収容器31a内に収容されている軟化剤液310aと起泡剤液収容器31b内に収容されている起泡剤液310bとを混合して得られる液状定着液TLを泡化させ、得られた泡状定着液Buを塗布ローラ41に供給するものである。
軟化剤液収容器31a内の軟化剤液310aは、軟化剤液搬送ポンプ33aを駆動することで軟化剤液搬送パイプ34aを通って液混合部400に供給される。また、起泡剤液収容器31b内の起泡剤液310bは起泡剤液搬送ポンプ33bを駆動することで起泡剤液搬送パイプ34bによって液混合部400に供給される。このとき、軟化剤液搬送ポンプ33aと起泡剤液搬送ポンプ33bとの駆動を制御して、軟化剤液310aの搬送量と起泡剤液310bの搬送量との比を調節することにより、二つの液を混合して成る液状定着液TLにおける軟化剤液310aと起泡剤液310bとの混合比を調節することが出来る。所定の混合比で供給された軟化剤液310aと起泡剤液310bとを液混合部400で混合し、この混合によって得られた液状定着液TLを、液状定着液搬送パイプ340を介して微小孔シート37を備える初期発泡部35に搬送する。
液搬送ポンプ33(33a及び33b)としては、特に限定されず、ギヤポンプ、ベローズポンプ、チューブポンプ等を用いることが可能であるが、中でもチューブポンプを用いることが望ましい。ギヤポンプ等のように、振動機構や回転機構といった定着用液中で駆動する機構があると、ポンプ内で液が起泡し、液に圧縮性が出て、搬送能力が低下するおそれがある。また、前述の駆動する機構の部品を構成する材料によって定着用液を汚染したり、逆に駆動する機構の部品を定着用液で劣化させたりするおそれもある。これに対し、チューブポンプは、チューブ内の液を、チューブを変形させながら押し出す機構であり、定着用液内で駆動する機構がない。このため、定着用液と接する部材はチューブだけであり、チューブとして搬送する定着用液に対して耐液性を有する部材を用いることで、定着用液の汚染や液搬送ポンプ33を構成する部品の劣化を防止することが出来る。また、チューブを変形させるだけであるため、定着用液が起泡せず、搬送能力の低下を防止できる。なお、液搬送ポンプ33が搬送する液体が軟化剤液310aや起泡剤液310bである場合に限らず、液状定着液TLそのものを定着用液として収容する定着用液収容器から搬送する場合の液搬送ポンプ33としてもチューブポンプを用いることが望ましい。この場合、チューブとして定着液Fに対して耐液性を有する部材を用いることで液の汚染や液搬送ポンプ33を構成する部品の劣化を防止することが出来る。
初期発泡部35には、空気口36が設けられており、軟化剤液搬送ポンプ33a及び起泡剤液搬送ポンプ33bを駆動することによって初期発泡部35に流入する液状定着液TLの流れが発生するとともに、空気口36に負圧が発生する。これにより、空気口36から空気が初期発泡部35に導入され、液状定着液TLと空気とが混合し、さらに微小孔シート37を通過することで、泡径のそろった大きな泡からなる初期泡状定着液Bu1を生成することができる。微小孔シート37の孔径は、例えば30〜100[μm]程度である。
液状定着液TLを発泡させる構成としては、図4に示す微小孔シート37を備える構成に限るものではなく、連泡構造の多孔質部材であればよい。例えば、孔径30[μm]〜100[μm]程度の連通孔を有する焼結セラミックス板や不織布、発泡樹脂シート等を用いてもよい。
液状定着液TLから大きな泡からなる初期泡状定着液Bu1を生成する別の生成方法としては、液搬送ポンプ33の駆動により供給される液状定着液TLと空気口36からの空気とを羽根状攪拌子で攪拌しながら、液状定着液TLに気泡を巻き込みながら初期泡状定着液Bu1を生成する方法を用いることができる。また、液搬送ポンプ33の駆動によって供給された液状定着液TLに空気供給ポンプ等でバブリングを行い、初期泡状定着液Bu1を生成する方法を採用してもよい。
初期発泡部35としては何れの構成であっても、例えば0.5〜1[mm]程度の比較的大きな泡径の泡からなる初期泡状定着液Bu1をごく短時間で生成することができる。ただし、泡状定着液Buを定着に用いるときの泡としては、できるだけ細かくする方が望ましい。このため、定着装置30では、初期発泡部35で得られた初期泡状定着液Bu1を、泡微細化部38で微細な泡径の泡からなる小径泡状定着液Bu2とする構成である。
初期発泡部35で生成された初期泡状定着液Bu1は、泡搬送パイプ38cを通って泡微細化部38に供給される。
泡微細化部38は、初期泡状定着液Bu1にせん断力を付与することによって径の大きな一つの泡を二つ以上に分割して泡の微細化を行う。泡微細化部38は、外側円筒38aの中に内側円筒38bを内包する二重円筒構造になっており、固定された外側円筒38aに対して内側円筒38bが回転可能な構成となっている。外側円筒38aの泡搬送パイプ38cが接続された箇所から外側円筒38aと内側円筒38bとの隙間に初期泡状定着液Bu1を供給し、この隙間を通過させることで内側円筒38bの回転により泡状定着液Buに対してせん断力を付与する。このせん断力の付与により、一つの大きな泡を二つ以上の微小な泡に分割しながら、外側円筒38aに設けられた泡の出口38dから泡供給ノズル39へ、所望の微小な泡径を有する小径泡状定着液Bu2を排出する。また、内側円筒38bにらせん状の溝を設けて、外側円筒38a内での搬送性を向上させてもよい。
一般的に、初期泡状定着液Bu1のように泡径が0.5[mm]〜1[mm]程度の大きな泡からなる泡状定着液の場合、単なる撹拌等により比較的容易に泡を生成可能であり、大きな泡からなる泡状定着液の生成には数秒以下の時間(0.1[秒]もかからない)で生成することができる。そこで、このように所望の泡径よりも大きな泡であって、目視で観察できる程度の大きさの泡からなる泡状定着液の生成が容易で、すばやく生成できることができる点に着目した。大きな泡からなる状態から素早く5[μm]〜50[μm]程度の微小な泡からなる泡状定着液を生成する方法を鋭意検討した結果、大きな泡からなる泡状定着液にせん断力を加えることで大きな泡を分泡すると、液状態から起泡させて微小な泡径の泡状定着液を生成する方法に比べて、極めて素早く所望の大きさの微小な泡径の泡状定着液が生成できることがわかった。
定着装置30では、液状定着液TLを大きな泡径の泡からなる初期泡状定着液Bu1へと泡化させる大きな泡生成部である初期発泡部35と、初期泡状定着液Bu1の大きな泡にせん断力を加えて微小な泡に分割する泡微細化部38とを組み合わせることで、液状定着液TLを極めて短時間に5〜50[μm]程度の微小な泡径の泡からなる小径泡状定着液Bu2に変化させることができる。
図1に示すように、泡供給ノズル39から排出される小径泡状定着液Bu2は、泡状定着液塗布部140の塗布ローラ41の表面に供給される。泡状定着液塗布部140は、小径泡状定着液Bu2を転写紙P上の樹脂微粒子である未定着トナーTに付与する塗布ローラ41を備える。また、泡状定着液塗布部140は、塗布ローラ41の表面上に供給された小径泡状定着液Bu2の膜厚を転写紙P上の未定着トナーTのトナー層の厚さに応じて制御し、小径泡状定着液Bu2の膜厚を最適な膜厚に制御する泡状定着液膜厚制御手段である膜厚調整ブレード42を備える。さらに、泡状定着液塗布部140は、膜厚調整ブレード42が対向する位置に対して塗布ローラ41の表面移動方向下流側で、塗布ローラ41と対峙する位置に加圧ローラ43を備える。
図1に示すように、泡状定着液供給部130で生成された所望の泡径の小径泡状定着液Bu2は、泡状定着液供給口を備えた泡供給ノズル39より塗布ローラ41と膜厚調整ブレード42との間に滴下される。
塗布ローラ41上の小径泡状定着液Bu2は、膜厚調整ブレード42との対向部を通過することにより、小径泡状定着液Bu2の気泡の大きさ、泡粘度及び塗布加圧力並びに未定着トナーTの層厚に応じて、泡状定着液Buの未定着トナーTのトナー層への浸透時間に対して最適化した膜厚の泡状定着液膜Bu3となる。
泡状定着液Buの嵩密度としては、0.01〜0.1[g/cm]の範囲が望ましい。更に、定着液Fを付与した後に媒体面に残液感を生じないようにするためには、泡の嵩密度として、0.01〜0.05[g/cm]が好ましく、0.025[g/cm]〜0.05[g/cm]が、特に好適である。嵩密度が0.01[g/cm]未満であると、定着液の付与が不十分となることがあり、0.1[g/cm]を超えると、定着液を付与した時に記録媒体に残液感が生じることがある。
また、定着液Fは、転写紙P上のトナー等の樹脂含有微粒子の層への塗布時に泡状となっていればよく、定着用液として定着用液収容器31(31a及び31b)内で泡状である必要はない。定着用液収容器31中では気泡を含有しない液体の状態にしておき、容器から定着用液を供給する時点や、樹脂含有微粒子の層へ付与するまでの液搬送経路で泡状にする、すなわち、定着用液として定着用液収容器から定着用液を取り出した後に泡状とする構成により、定着用液の輸送体積や保存体積の減容を図って、輸送コストや保存コストを低減することができる。
泡微細化部38で得られた小径泡状定着液Bu2は、図1に示したように、泡供給ノズル39から、塗布ローラ41表面に供給される。供給された泡状定着液Buは、塗布ローラ41表面に対して自らの先端を所定の間隙を介して対向させている膜厚調整ブレード42により、塗布ローラ41表面上での膜厚が調整される。
図5は、膜厚調整ブレード42の位置を制御することにより、塗布ローラ41表面上の泡状定着液Buの膜厚を調節する様子を示す概略図である。
図5(a)は、塗布ローラ41と膜厚調整ブレード42とのギャップ幅を狭くしたときの説明図であり、図5(b)は、塗布ローラ41と膜厚調整ブレード42とのギャップ幅を広くしたときの説明図である。
図5に示すように、膜厚調整ブレード42は片持ち支持された状態で固定端側のブレード回動軸42aを中心にして回動することで、自らの先端と、塗布ローラ41との間隙を変化させる。図示しない制御部は、モータ駆動によってブレード回動軸42aを回転させることで膜厚調整ブレード42を回転させて前述の間隙を調整する。膜厚調整ブレード42の先端と塗布ローラ41との間隙は、10〜100[μm]の範囲で調整可能となっている。泡状定着液膜Bu3の膜厚を薄くするときには、図5(a)に示すように膜厚調整ブレード42と塗布ローラ41表面との間の間隙を狭くし、泡状定着液膜Bu3の膜厚を厚くするときには、図5(b)に示すように膜厚調整ブレード42と塗布ローラ41表面との間の間隙を広くする。このように膜厚調整ブレード42の先端と塗布ローラ41表面との間の間隙を調整することにより、未定着トナーTのトナー層厚や環境温度等、更には泡状定着液Buの気泡の大きさ、泡粘度及び塗布加圧力に応じた定着液Fの未定着トナー層での浸透時間を調製するために最適な泡状定着液膜Bu3の膜厚を調整することができる。
また、定着装置30では、図示していない光書込装置で用いる画像情報に基づいて、膜厚調整ブレード42の回転を制御し、泡状定着液膜Bu3の膜厚を調整する。すなわち、転写紙Pに転写されたトナー像を形成する未定着トナーTには、図示していない光書込装置で用いる画像情報(例えば、カラー画像または黒ベタ画像)に基づいて泡状定着液膜Bu3の膜厚が調整された泡状定着液Buが塗布される。これにより、各トナー像を形成する未定着トナーTのトナー層の層厚に応じた泡状定着液Buの塗布を行うことができ、適切な定着条件でトナー像を転写紙Pに定着させることができる。
膜厚調整の構成としては、膜厚調整ブレード42の代わりに、ワイヤーバーによって膜厚を調整してもよい。ワイヤーバーによって膜厚を調整する場合、上述した泡状定着液供給部130で生成される所望の泡径の小径泡状定着液Bu2は、泡状定着液供給口を備えた泡供給ノズル39より塗布ローラ41とワイヤーバーとの間に滴下される。このように、ワイヤーバーを泡状定着液膜厚調整手段として用いた場合、膜厚調整ブレード42に比べ、塗布ローラ41表面上における軸線方向の膜厚を均一にすることが可能になる。
トナー像が形成された転写紙Pに泡状定着液Buを塗布するための塗布ローラ41には、弾性ローラ部を具備する加圧ローラ43が当接して塗布ニップCを形成している。上述した紙搬送ベルト29によって二次転写ニップから定着装置30に向けて搬送される転写紙Pは、画像面を塗布ローラ41に向けた状態でこの塗布ニップC内に挟み込まれる。そして、塗布ニップC内において、塗布ローラ41上の泡状定着液Buが画像面に塗布される。
次に本発明に係る定着装置30の定着の原理について概説する。
本発明は、樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂を含有する微粒子を軟化させる軟化剤を含有した泡状定着液Buを、記録媒体等の定着液付与対象の表面上の樹脂微粒子に付与する。これにより、定着液付与対象の表面上の樹脂微粒子を軟化させ、樹脂微粒子を記録媒体に定着する定着方法を取っている。言うまでもないことだが、ここで、表記している樹脂微粒子とは、特に何であるかを限定はしないが、画像形成装置に適用した場合だと、トナーのことを指す。
ここで、従来の湿式定着方式を用いた定着装置について説明する。
上記特許文献1には、トナーを溶解または膨潤可能で、水に不溶または難溶な有機化合物が水に分散混合された水中油滴型の定着液を用いる湿式定着方式の定着装置が記載されている。この定着装置では、未定着のトナーが所定位置に配設された被定着物の表面に対して定着液を噴霧または滴下してトナーを溶解または膨潤させた後、被定着物を乾燥させる構成である。
しかし、上記特許文献1の定着装置では、水に不溶または難溶な有機化合物が、水に分散混合された水中油滴型の定着液を用いている。このため、多量の定着液を未定着トナーに付与した場合には、転写紙などの記録媒体(被定着物)が、定着液の水分を吸収し、記録媒体にシワやカールが発生する。これにより、画像形成装置に必要とされる安定かつ高速な記録媒体の搬送を著しく損なうこととなる。そこで、乾燥装置を用いて定着液に含まれる多量の水を蒸発させることにより、記録媒体に付与された定着液から水分を除去しようとすると、熱定着方式を用いる画像形成装置の消費電力に匹敵する電力を必要とすることとなる。
また、撥水性処理された未定着トナーを弾かない定着液として、油性溶媒に、トナーを溶解または膨潤させる材料を溶解させた油性の定着液が従来よりいくつか提案されている。その一つとして例えば、上記特許文献2には、トナーを構成する樹脂成分を溶解または膨潤させる材料を成分としての脂肪族二塩基酸エステル等を希釈液(溶媒)として不揮発性のジメチルシリコーンで希釈した(溶解させた)定着液が提案されている。また、上記特許文献3には、定着液として、トナーを溶解し、かつシリコーンオイルと相溶性を有する溶剤の100の容量に対し、シリコーンオイル8〜120容量部を混合してなる相溶状態の定着液が提案されている。これにより、静電気的方式で形成された未定着トナー像を、画像を乱すことなく鮮明にかつ容易に記録媒体上に固着できる。このような油性の定着液は、撥水性処理された未定着トナーとの高い親和性を有する油性溶媒を含むため、撥水性処理された未定着トナーを弾くことなく、トナーを溶解または膨潤させ、トナーを記録媒体に定着させることができる。
このような従来の湿式定着方式では定着液を通常の液体状のまま記録媒体上のトナー像に付与していた。このため、記録媒体上のトナー像に定着液を付与する構成として、塗布ローラ等の接触型の定着液付与部材を用いて定着液を塗布する構成の場合、記録媒体上のトナー像への定着液の微量塗布と塗布ローラへのトナーオフセット防止とを両立することが極めて難しいという問題があった。以下、この問題について説明する。
塗布ローラを用いて記録媒体上の未定着トナー像へ定着液を塗布する構成において、定着液を記録媒体に微量付与するために、塗布ローラ上の定着液の層の厚みが未定着トナー像の層よりも薄くした場合、次のような問題が生じることがあった。塗布ローラの表面が記録媒体と接触した後、塗布ローラの表面が記録媒体から剥離する位置で、記録媒体に付与されず塗布ローラ表面に残った定着液の液膜によって生じる表面張力で記録媒体上のトナー層のトナー粒子が引っ張られてしまう。これにより、塗布ローラの表面にオフセットしたトナー粒子が付着し、塗布ローラと剥離した後の記録媒体上のトナー像が大幅に乱れてしまう。
逆に、塗布ローラ上の定着液の層の厚みを未定着トナー層よりも十分厚くすると、塗布ローラが記録媒体から剥離する位置では、液量が多いため塗布ローラの表面の液膜による表面張力が記録媒体上のトナー層のトナー粒子に作用しにくくなる。これにより、塗布ローラ側にトナーが付着しにくくなるが、記録媒体の表面に多量の定着液が塗布されるため、記録媒体上で過剰な定着液により定着液の拡散にともないトナー粒子が流れ画質劣化を生じたり、定着液の乾燥時間が長くなり定着応答性に問題が生じたりしてしまう。また、記録媒体に著しい残液感(紙を手で触れたときの湿った感触)が発生する。また、定着液が水を含有するものであると、紙等のセルロースを含有する記録媒体への定着液の塗布量が多い場合、紙等の記録媒体が著しくカールし、画像形成装置などの装置内における記録媒体搬送時に紙詰まりが発生の恐れがある。
このように、塗布ローラを用いて定着液を塗布する構成では、定着液の塗布量が多すぎると、トナー粒子が流されることによる画質劣化、定着液の乾燥時間が長くなることによる定着応答性の低下、記録媒体によっては紙詰まりが発生しやすくなる、といった問題が生じる。一方、これらの問題を防止するために定着液を微量塗布する構成とすると、上述したように塗布ローラの表面にトナー粒子がオフセットしてしまう。
よって、塗布ローラで定着液を塗布する構成では、定着応答性向上や残液感低減やカール防止のために記録媒体上のトナー層に定着液を微量塗布することと塗布ローラへのトナーオフセットを防止することとを両立することが極めて難しい。
定着液の微量塗布とトナーオフセットの防止とを両立することができる定着方式として、特許文献4には、定着液を液中に気泡が分散した泡状定着液とし、この泡状定着液を記録媒体上のトナー像に塗布する構成が記載されている。このように、定着液を泡状とすることにより定着液の嵩密度を下げることが出来るため、従来よりも少量の定着液で塗布ローラ表面上の定着液の膜厚を厚くすることが出来、液体の表面張力の記録媒体上のトナー粒子に対する影響を軽減することができる。また、少量の定着液であるため、記録媒体上の残液感を抑制することが出来、泡状の定着液は通常の液体状の定着液よりも流れ難いため、定着液によってトナー粒子が流されることによる画像劣化も防止することができる。よって、特許文献4のように泡状定着液を用いて定着を行うことにより、従来よりも少量の定着液塗布量でトナー画像を乱すことなく定着することができる。
そして、本実施形態の定着装置30も上記特許文献4と同様に定着液を泡状にして記録媒体上のトナー層に塗布する構成である。
また、上記特許文献4に記載の定着装置は、塗布部材である塗布ローラ上の泡状定着液の膜厚を制御する泡状定着液膜厚制御手段を備えている。そして、塗布ローラが記録媒体に接して泡状定着液を記録媒体上の樹脂微粒子に付与している時間が、塗布ローラによって塗布される泡状定着液が記録媒体上の樹脂微粒子層を浸透して記録媒体に到達する浸透時間より同じ又は長くなるように膜厚を制御する。これにより、樹脂微粒子の塗布ローラへのオフセット付着を防止でき、樹脂微粒子を乱すことなく、かつ樹脂微粒子を担持した記録媒体に定着液を塗布した後は素早く樹脂微粒子の記録媒体への定着が可能となる。このため、定着応答性に優れた定着を行うことができる。
未定着トナーTのトナー粒子の平均粒径が5〜10[μm]程度である場合、未定着トナーTのトナー層を乱すことなく泡状定着液Buを未定着トナーTに付与するには、泡状定着液Buの泡径範囲を5〜50[μm]程度にすることが望ましい。プリンタ100では、泡微細化部38での泡微細化により、このような微細な径の泡をつくり出している。
定着装置30の加圧ローラ43は、弾性層としてスポンジ素材を用いている。ここで、塗布ニップCでは、泡状定着液Buが樹脂微粒子である未定着トナーTのトナー層に浸透して、記録媒体である転写紙Pまで到達した後に、塗布ローラ41とトナー層とが分離するように、転写紙Pの塗布ニップ通過時間のタイミングを設定するする必要がある。
定着装置30では、転写紙Pの塗布ニップ通過時間(例えば先端が塗布ニップCの入口に進入してから先端が塗布ニップCの出口から排出される間での時間)を、50[ms](ミリ秒)〜300[ms]の範囲に設定している。これにより、転写紙Pの塗布ニップ通過時間を、泡状定着液Buの浸透時間と同じかそれ以上にしている。そして、この範囲の転写紙Pの塗布ニップ通過時間を確保するために、定着装置30は、小さな加圧力の変化で比較的大きく変形可能なスポンジ素材からなる弾性層を備えた加圧ローラ43を用いている。加圧ローラ43は、塗布ローラ41の押圧により撓む(塗布ローラ41に沿って変形する)材質であればよく、例えば、ゴム、合成樹脂等からなるものを用いることができ、特に限定されない。
塗布ニップ通過時間(以下、ニップ時間という)については、「ニップ時間=(ニップ幅)/(紙の搬送速度)」という数式によって算出することが可能である。転写紙Pの搬送速度は、紙搬送駆動機構の設計データにより求めることができる。ニップ幅は、塗布ローラ全面に乾燥しない着色塗料を薄く付けて、転写紙Pを塗布ローラ41及び対峙する加圧ローラ43に挟んで加圧(ローラは回転させない状態で)して転写紙Pに着色塗料を付着させ、着色部(通常長方形の形に着色)における紙搬送方向の長さをニップ幅として測定することで求めることができる。転写紙Pの搬送速度に応じて、ニップ幅を調整することでニップ時間を定着液Fのトナー層浸透時間と同じかそれ以上にする必要がある。
図1に示す定着装置30では、加圧ローラ43を弾性多孔質体(以下、スポンジと記す)とすることで、転写紙Pの搬送速度に応じて、塗布ローラ41とスポンジの加圧ローラ43の軸間距離を変更し、ニップ幅を変えることが容易になる。加圧ローラ43のスポンジの代わりに、弾性ゴムも適するが、スポンジは、弾性ゴムよりも弱い力で変形させることが可能であり、塗布ローラ41の加圧力を過剰に高くすることなく長いニップ幅を確保することができる。
定着液F中には樹脂を軟化または膨潤する軟化剤が含有されており、スポンジ素材で形成された加圧ローラ43に定着液Fが万が一付着した場合、スポンジ素材が軟化する等の不具合が発生する恐れがある。このため、加圧ローラ43を構成するスポンジ素材の樹脂材は、軟化剤に対して軟化や膨潤を示さない素材が望ましい。また、ローラ部がスポンジ素材からなる加圧ローラ43については、ローラ表面を可撓性フィルムで覆った構成であってもよい。このような構成であれば、スポンジ素材が軟化剤で劣化する素材であっても、軟化剤により軟化や膨潤を示さない可撓性フィルムで覆うことでスポンジローラの劣化を防止することができる。スポンジ素材としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドなどの樹脂の多孔質体などが適する。また、スポンジを覆う可撓性フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、四フッ化エチレン・バーフロロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、金属材料などが適する。
図1に示す定着装置30において、塗布ローラ41とローラ部がスポンジからなる加圧ローラ43とが常時接触している場合、転写紙Pが搬送されていない時に塗布ローラ41上の泡状定着液Buがスポンジの加圧ローラ43に付着し汚す恐れがある。この付着を防止する狙いから、紙先端検知手段(図示せず)を塗布ニップCに転写紙Pが搬送される手前に設け、紙先端検知信号に応じて、転写紙Pの先端から後方にのみ泡状定着液Buが塗布されるようなタイミングで塗布ローラ41に泡状定着液Buを供給することが望ましい。これにより、塗布ローラ41と加圧ローラ43とが常時接触している構成であっても、転写紙Pが搬送されていない待機時に、塗布ローラ41上の泡状定着液Buが加圧ローラ43に付着することを抑制することができる。
また、定着装置30においては、不図示の接離機構により、待機時には塗布ローラ41と加圧ローラ43とを互いに離間させ、塗布時のみ、塗布ローラ41と加圧ローラ43とを当接させる構成とすることが望ましい。このような構成では、塗布ローラ41と加圧ローラ43とを互いに離間させた待機時の状態から上記紙先端検知手段による転写紙Pの先端検知の検知結果に基づいて、接離機構を駆動し、塗布ローラ41と加圧ローラ43とを当接させる。そして、紙先端検知手段による転写紙Pの後端検知、または、別に設けた不図示の紙後端検知手段による転写紙Pの後端検知の検知結果に基づいて、接離機構を駆動し、塗布ローラ41と加圧ローラ43とを離間させる。
また、定着装置30としては、塗布ニップCで泡状定着液Buをトナーに供給した後の転写紙Pを加圧し、トナーに含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させる成分(軟化剤)によって溶解または膨潤したトナーを加圧する、一対の平滑化ローラ(ハードローラ)を設けてもよい。
一対の平滑化ローラ(ハードローラ)を用いて、溶解または膨潤したトナーを加圧することによって、トナー層の表面を平滑化して、定着後のトナー層の表面に光沢を付与することが可能となる。さらに、記録媒体内へ溶解または膨潤したトナーを押し込むことによって、転写紙Pに対するトナーの定着性を向上させることができる。
次に、本実施形態の定着装置30の特徴部について説明する。
定着装置30は、図1に示すように塗布ニップCに対して転写紙Pの搬送方向下流側に、定着液塗布後転写紙搬送部50を備える。
図1に示す定着液塗布後転写紙搬送部50は、搬送ローラ45と搬送加圧ローラ47とを備え、この二つのローラ部材に転写紙Pは挟持され、搬送される。図6は、搬送ローラ45の説明図である。図6(a)は、搬送ローラ45の上部を拡大した説明図であり、図6(b)は、搬送ローラ45の表面をさらに拡大した説明図である。
塗布ニップCで未定着トナーTに泡状定着液Buが塗布された転写紙Pの表面上では、トナーの軟化が始まっており、トナーは一時的に粘着性が高い状態となる。このように粘着性が高い状態のトナーが搬送ローラ等の搬送部材に接触すると、記録媒体上のトナーの一部が搬送部材に付着する。ここで一度に多くのトナーが搬送部材に付着すると画像抜けとなる。また、一度に付着するトナーが僅かであっても、このトナーが付着した部分の表面は搬送部材の表面よりも粘着性のトナーが付着し易いため、搬送部材の表面上にしたトナーが少しずつ成長する。この成長によって一度に付着するトナーの量も多くなり、視認できる画像抜けの異常画像となる。
このような問題に対して、定着液塗布後転写紙搬送部50の搬送ローラ45は、その表面に転写紙Pと接触する針状の凸部を有する。このため、転写紙P上の軟化したトナーと搬送ローラ45とが接触し得る面積を小さくすることができる。このような搬送ローラ45で搬送する際、トナー像が当接する搬送ローラ45の凸部には微量ではあるがトナーが付着する。そこで、搬送ローラ45の凸部は先端部が50[μm]以下、好ましくは20[μm]以下とする。これは、凸部の先端部が50[μm]以下であると一度凸部に付着したトナーが転写紙Pの余白(トナー層の無い部分)に再付着しても肉眼では目立たないためである。
そして、繰り返し通紙することで、凸部に付着したトナーが転写紙Pに付着してセルフクリーニングすることになる。
搬送対象である転写紙Pとの接触面積を小さくするために、ローラ部材の表面に凹凸を設ける構成としては、ローラ部材にローレット加工を施すことが考えられる(例えば、特許文献5)。しかし、ローレット加工は20〜50[μm]以下の加工は困難である。そこでサンドペーパー(エメリーペーパー)の#80が先端部の幅が20〜50[μm]の凸部を作り出すことが確認された。
以下、サンドペーパーを用いた凸部を形成する方法について、図6(b)を用いて説明する。
サンドペーパーのベース45aの布に接着剤45c(フェノール樹脂)を塗布した後にベース45aに電界を付与してアルミナ45bを電着させる。これにより、図6(b)に示すように、アルミナ45bの先端形状の鋭利な部分が立つ様に接着され、次いでもう一度、フェノール樹脂等によってオーバーコート45dを施して仕上げている。これを搬送ローラ45の基体となるローラ部材に巻きつけて、搬送ローラ45を作成した。
サンドペーパーのベース45aとしては、布に限るものではなく、樹脂フィルムからなるものでも良い。
本実施形態の定着装置30が備える定着液塗布後転写紙搬送部50では、より信頼性を向上・維持するために、搬送ローラ45の凸部の表面の付着物を除去する凸部表面クリーニングローラ48を備える。
図7は、凸部表面クリーニングローラ48の拡大説明図である。
凸部表面クリーニングローラ48の表面は、クリーニングローラ本体48aの表面上に面ファスナーのループ面側に用いられるループ部48bを設けた構成である。ループ部48bはナイロンからなり、搬送ローラ45に付着したトナー汚れを掻き取る働きがある。凸部表面クリーニングローラ48に付着したトナー汚れは対向している搬送ローラ45の凸部に押し込められて、ループ部48bの最下層側へと押されて集められる。凸部表面クリーニングローラ48は、クリーニングローラ本体48aの表面上に面ファスナーのループ面側を巻きつけて作成した。
また、図1に示すように、定着装置30の定着液塗布後転写紙搬送部50は、搬送ローラ45の凸部とトナー像とが直接接触することを防止する介在物質として、水を凸部の表面に供給する水供給パット46を備える。水供給パット46が搬送ローラ45の凸部に当接することで、粘着性が高い状態のトナーが搬送ローラ45に付着することを抑制している。
水供給パット46は、不織布やコットンなどによって水がホールドされており、搬送ローラ45に水が少量ずつ供給されるようになっている。また、水供給パット46には不図示の水供給パイプが接続されており、必要に応じて水供給パット46に水が供給されるように構成されている。また、水供給パット46としては、ナイロンなどの繊維状のものも可能である。
搬送ローラ45の凸部に供給する介在物質としては、水だけでも十分効果は得られるが、水に界面活性剤を0.1[wt%]以下添加するだけで、針状の凸部を含む搬送ローラ45の表面の凹凸形状の隅々まで均一に濡らすことが可能となる。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、いずれも効果が認められた。また、介在物質としては、他に低表面エネルギーのシリコーンオイルも用いることができる。
また、介在物質が水を含有するものを用いる場合、水に溶融し、且つ水よりも沸点の高い材料を含有することが望ましい。
このような材料としては、以下の表1に記載のものを挙げることができる。
Figure 2012155205
表1に示す「水」以外の各材料と水とを1:1の割合で混合することで、水を含有する介在物質が蒸発することを低減することができる。ここで水と各材料とを混合する割合は、任意に設定することができるが、コストを考慮すると水の比率を多くすることが望ましい。
本実施形態の搬送ローラ45の代わりに、上記特許文献5に記載されたローレットコロ(凸部形状が400[μm]の台形状)を用いたところ、転写紙Pからローレットコロに付着し、ローレットコロから転写紙Pに再付着したトナー汚れは、異常画像の許容範囲を超えていた。
図8は、介在物質供給手段の構成が図1とは異なる定着装置30の説明図である。
図8に示す定着装置30では、搬送ローラ45に介在物質である水を供給する方式がスプレー方式となっている。不図示の水タンクより供給された水(界面活性剤添加)をスプレーヘッド49によりミスト状にして搬送ローラ45に均一に供給する構成である。
図9は、本発明を適用した定着装置30の他の例の概略構成図である。
図9に示す定着装置30では、図1に示す定着装置30が備える加圧ローラ43の代わりに、加圧ベルト430を備えている。加圧ベルト430としては、例えばシームレスニッケルベルト、シームレスPETファイルなどの基体にPFAのような離型性フッ素樹脂をコートした部材を用いる。
図1を用いて説明した定着装置30と同様に、図9に示す定着装置30は、初期泡状定着液Bu1を生成する、初期発泡部35と、初期泡状定着液Bu1をせん断力で分泡して小径泡状定着液Bu2を生成する泡微細化部38とを備える泡状定着液供給部130で生成した泡状定着液Buを泡供給ノズル39から塗布ローラ41の表面に供給する。一方、不図示の制御部は不図示のモータの駆動を制御することによって、膜厚調整ブレード42と塗布ローラ41表面との間の間隙を調整する。そして、塗布ローラ41の表面に供給された泡状定着液Buは、この間隙を通過することで最適な膜厚の泡状定着液膜Bu3となって塗布ニップCに供給される。
図9に示す定着装置30のように、塗布ニップCを形成する部材にベルトを用いる構成では、ニップ幅を容易に広くすることが可能となる。従って、塗布ニップCを形成する部材にベルトを用いる構成としては、図9に示すように加圧部材にベルト部材を用いる構成に限らず、塗布ローラ41の代わりにベルト状の塗布部材を用い、加圧部材をローラ状の部材を用いる構成であっても良い。
このように、塗布部材または加圧部材の少なくとも一方をベルト状の部材とする構成にすることで、ニップ幅を容易に広くすることが可能となり、紙にしわが発生するような無理な力をかけることもなく、ニップ時間が同じだとすると紙の搬送速度を速くすることが可能となり、高速定着が可能となる。
本実施形態の定着装置30では、液状定着液TLを構成する軟化剤液310aと起泡剤液310bとを独立して保管しているが、これに限るものではない。軟化剤と起泡剤とを含有した液状定着液TLを定着用液収容器31内で保管し、この液状定着液TLから泡状定着液生成手段によって泡状定着液Buを生成する構成としてもよい。液状定着液TLの状態で保管する構成では、複数の定着液成分液を混合して定着液を作製する定着液作製手段が不要であるため、装置の構成を簡略化できる。
次に、定着液Fの液処方について説明する。
泡状定着液Buは、上述したように、軟化剤を含有した定着液中に気泡を含有した構造である。定着液は、泡状としたときに気泡を安定に含有し、なるべく均一な気泡の大きさからなる気泡層を構成する泡状とするため、起泡剤及び増泡剤を有することが望ましい。また、ある程度粘度が高いほうが、気泡が安定して液体中に分散するため、増粘剤を含有することが望ましい。
起泡剤としては、陰イオン界面活性剤、特に、脂肪酸塩が望ましい。脂肪酸塩は界面活性を有するため、水を含有する定着液の表面張力を下げ、定着液を発泡しやすくするとともに、泡表面で脂肪酸塩が層状ラメラ構造をとるため泡壁(プラトー境界)が他の界面活性剤よりも強くなり、泡沫安定性が極めて高くなる。
また、脂肪酸塩の起泡性を効果的にするため、定着液には水を含有することが望ましく、脂肪酸としては、大気中での長期安定性の観点から酸化に強い飽和脂肪酸が望ましい。
ただし、飽和脂肪酸塩を含有する定着液に若干の不飽和脂肪酸塩を含有することで脂肪酸塩の水に対する溶解・分散性を助けることができる。これにより、5[℃]〜15[℃]の低温環境下においても優れた起泡性を有することができ、広い環境温度範囲において安定した定着が可能となる。また、定着液に若干の不飽和脂肪酸塩を含有することで、定着液長期放置中の脂肪酸塩の定着液中での分離を防止することができる。
飽和脂肪酸塩に用いる脂肪酸としては、炭素数12、14、16及び18の飽和脂肪酸が適しており、具体的にはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等がある。
炭素数が11以下の飽和脂肪酸塩は臭気が大きくなり、オフィス・家庭で用いる画像形成機器で用いる定着液には適さない。また、炭素数19以上の飽和脂肪酸塩は、水に対する溶解性が低下し、定着液の放置安定性を著しく低下させてしまうため適さない。
上述した使用に適した飽和脂肪酸による飽和脂肪酸塩を、単独もしくは混合して起泡剤として用いる。
また、起泡剤に用いる脂肪酸塩としては、不飽和脂肪酸塩を用いてもよく、炭素数18で2重結合数が1から3の不飽和脂肪酸が望ましい。具体的には、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸が適する。不飽和脂肪酸の2重結合が4以上では反応性が強いため、定着液の放置安定性が低下してしまう。
これらの使用に適した不飽和飽和脂肪酸による不飽和脂肪酸塩を単独もしくは混合して起泡剤として用いる。また、上述した飽和脂肪酸塩と不飽和脂肪酸塩を混合して起泡剤として用いてもよい。
本実施形態の定着装置30で用いる定着液の起泡剤として、上述した飽和脂肪酸塩または上述した不飽和脂肪酸塩を用いる場合、ナトリウム塩、カリウム塩もしくはアミン塩であることが望ましい。
ここで、定着装置に電源を投入後、素早く定着可能な状態にすることは定着装置の商品価値として重要な要素である。定着装置において定着可能な状態とするためには、定着液が適切な泡状となっていることが必須であるが、上述した脂肪酸塩は素早く起泡することで、電源投入後に定着可能な状態を短時間でつくることができる。特に、アミン塩とすることで、定着液にせん断力を加えたときに他の起泡剤に比べて短時間で起泡し、泡状定着液を容易に作製することが可能であり、定着装置への電源投入後の定着可能な状態を短時間でつくることができる。
樹脂を溶解または膨潤することで軟化させる軟化剤は、脂肪族エステルを含む。この脂肪族エステルは、トナー等に含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させる溶解性または膨潤性に優れている。
記録媒体に対するトナーの定着は、密封された環境において頻繁に使用される機器で行われ、トナーを記録媒体に定着した後にも軟化剤はトナー中に残留する。このため、記録媒体に対するトナーの定着は揮発性有機化合物(VOC)及び不快臭の発生を伴わないことが好ましい。
すなわち、定着液に含まれる軟化剤は、揮発性有機化合物(VOC)及び不快臭の原因となる物質を含まないことが好ましい。
軟化剤として使用することができる脂肪族エステルは、一般に汎用される有機溶剤(トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチルなど)と比較して、高い沸点及び低い揮発性を有し、刺激臭を持たない。
オフィス環境等における臭気を高い精度で測定することができる実用的な臭気の測定尺度として、官能測定である三点比較式臭袋法による臭気指数(10×log{物質の臭気が感じられなくなるまでの物質の希釈倍率})を用いることができる。そして、軟化剤に含まれる脂肪族エステルの臭気指数は10以下であることが好ましい。臭気指数が10以下であれば、通常のオフィス環境では不快臭を感じなくなる。
また、軟化剤のみならず、定着液に含まれる他の液剤も同様に、不快臭及び刺激臭を有さないことが好ましい。
本実施形態の定着装置30で用いる定着液において、上述した脂肪族エステルは、飽和脂肪族エステルを含むことが好ましい。これは、脂肪族エステルが飽和脂肪族エステルを含む場合には、軟化剤の保存安定性(酸化、加水分解などに対する耐性)を向上させることができるためである。また、多くの飽和脂肪族エステルは、トナーに含まれる樹脂を1秒以内で溶解又は膨潤させることができる。さらに、飽和脂肪族エステルは、記録媒体に提供されたトナーの粘着感を低下させることができる。これは、飽和脂肪族エステルが、溶解または膨潤したトナーの表面に油膜を形成するためであると考えられる。
よって、定着液としては、上記飽和脂肪族エステルが「R1COOR2」の一般式で表される化合物を含むものを用いることが望ましい。
この化合物の一般式におけるR1は、炭素数が11以上14以下のアルキル基を示しており、R2は、炭素数が1以上6以下の直鎖型もしくは分岐型アルキル基を示している。
R1及びR2の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。
このため、定着液として、上記飽和脂肪族エステルが「R1COOR2」の一般式で表される化合物を含むものを用いることにより、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性または膨潤性を向上させることができる。また、上記一般式「R1COOR2」で表される化合物の臭気指数は、10以下であり、不快臭及び刺激臭を有さない。
上記一般式「R1COOR2」で表される化合物である脂肪族モノカルボン酸エステルとしては、例えば、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、トリデシル酸エチル、トリデシル酸イソプロピル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル等が挙げられる。上記一般式「R1COOR2」で表される化合物であるこれらの脂肪族モノカルボン酸エステルの多くは、油性溶媒に溶解するが、水には溶解しない。よって、上記一般式「R1COOR2」で表される化合物である脂肪族モノカルボン酸エステルの多くについては、水性溶媒を用いる場合には、グリコール類を溶解助剤として定着液に含有し、溶解またはマイクロエマルジョンの形態とする。
また、定着液としては、上記脂肪族エステルが脂肪族ジカルボン酸エステルを含むものを用いることが望ましい。上記脂肪族エステルが、脂肪族ジカルボン酸エステルを含む場合には、より短い時間でトナーに含まれる樹脂を溶解または膨潤させることができる。
例えば、60[ppm]程度の高速印字では、記録媒体における未定着のトナーに定着液を付与し、トナーが記録媒体に定着するまでの時間は、1[秒]以内であることが望ましい。上記脂肪族エステルが、脂肪族ジカルボン酸エステルを含む場合には、記録媒体における未定着のトナー等に定着液を付与し、トナーが記録媒体に定着するのに要する時間を、0.1[秒]以内にすることが可能となる。さらに、より少量の、軟化剤の添加によってトナーに含まれる樹脂を溶解又は膨潤させることができるため、定着液に含まれる、軟化剤の含有量を低減することができる。
よって、定着液としては、上記脂肪族ジカルボン酸エステルが「R3(COOR4)」の一般式で表される化合物を含むものを用いることが望ましい。この化合物の一般式におけるR3は、炭素数が3以上8以下のアルキレン基を示しており、R4は、炭素数が3以上5以下の直鎖型または分岐型アルキル基を示している。R3及びR4の炭素数が、それぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。
定着液としては、上記脂肪族ジカルボン酸エステルが「R3(COOR4)」の一般式で表される化合物を含むものを用いることにより、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性または膨潤性を向上させることができる。また、「R3(COOR4)」の一般式で表される化合物の臭気指数は、10以下であり、不快臭及び刺激臭を有さない。
「R3(COOR4)」の一般式で表される化合物である脂肪族ジカルボン酸エステルとしては、例えば、コハク酸2エチルヘキシル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソデシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。「R3(COOR4)」の一般式で表される化合物であるこれらの脂肪族ジカルボン酸エステルの多くは、油性溶媒に溶解するが、水には溶解しない。よって、水性溶媒を用いる場合には、グリコール類を溶解助剤として定着液に含有し、溶解またはマイクロエマルジョンの形態とする。
さらに、本実施形態の定着装置30で用いる定着液において、上記脂肪族エステルは、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含むものであることが好ましい。上記脂肪族エステルが、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含む場合には、記録媒体に対するトナーの定着性を向上させることができる。
本実施形態の定着装置30で用いる定着液としては、上記脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルが「R5(COOR6−O−R7)」の一般式で表される化合物を含むものを用いることが望ましい。この化合物の一般式におけるR5は、炭素数が2以上8以下のアルキレン基を示しており、R6は、炭素数が2以上4以下のアルキレン基を示し、R7は、炭素数が1以上4以下のアルキル基を示している。R5、R6及びR7の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。
定着液としては、上記脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルが「R5(COOR6−O−R7)」の一般式で表される化合物を含むものを用いることにより、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性または膨潤性を向上させることができる。また、R5(COOR6−O−R7)」の一般式で表される化合物の臭気指数は10以下であり、不快臭及び刺激臭を有さない。
R5(COOR6−O−R7)」の一般式で表される化合物である脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルとしては、例えば、コハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジブトキシエチル、アジピン酸ジエトキシエチル、アジピン酸ジブトキシエチル、セバシン酸ジエトキシエチル等が挙げられる。これらの脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを水性溶媒で用いる場合には、グリコール類を溶解助剤として定着液に含有し、溶解またはマイクロエマルジョンの形態とする。
また、脂肪酸エステルではないが、クエン酸エステルや炭酸エチレンや炭酸プロピレンも軟化もしくは膨潤剤として用いることができる。
ところで、泡状定着液において、塗布位置に到達する前に泡状定着液が破泡すると液状定着液を塗布する構成と同様の問題が生じる。そこで生成した泡状定着液が泡の状態で塗布位置まで到達できるような泡沫安定性に優れる泡が求められる。このため、定着液中に脂肪酸アルカノールアミド(1:1)型を含有することが望ましい。脂肪酸アルカノールアミドには(1:1)型と(1:2)型があるが、本発明における泡沫安定性には(1:1)型が適することがわかった。
定着液は軟化剤を含有しており、この軟化剤は、一般的に消泡作用が強い。このため、本実施形態の定着装置のように、液状の定着液を泡状定着液として用いる場合、定着液中の軟化剤の濃度が高いほど、定着液の起泡性及び泡沫安定性が悪くなり、起泡し難くなったり、泡状定着液が破泡し易くなったりするおそれがある。起泡し難いと嵩密度の低いの泡状定着液を得ることが出来ず、所望の嵩密度の泡状定着液を得たとしても、泡状定着液が破泡し易いと定着ニップで完全に破泡してしまい液状定着液を塗布する構成と同様の問題が生じる。
また、起泡剤としては、アニオン系界面活性剤が優れた起泡性と泡沫安定性とを実現することができ、起泡剤として優れている。アニオン系界面活性剤のなかでも、脂肪酸塩は、最も泡沫安定性に優れ、定着液の起泡剤として最も適する。
ここで、泡沫安定性とは、泡状となった定着液が液状となり難い性質をいう。本実施形態の定着装置で未定着トナーに付与する泡状定着液としては、泡の状態で1分間放置しても消泡せず、泡の状態を保てる程度の泡沫安定性を有することが望ましい。
本発明者らは、定着液中の軟化剤濃度を高めたときの起泡性及び泡沫安定性の劣化問題を解決するため、アニオン系界面活性剤の種類や濃度を因子として多種の試作を行った。また、非特許文献1にも記載されている「スーパーファット」と呼称される技術、つまり固形洗浄剤(石鹸)に含有されている遊離脂肪酸に着目して試作を行った。
ここで、スーパーファットと呼称される技術について概説すると、酸化されにくい遊離脂肪酸を少量加え、過剰油脂分を増やす方法であり、ケン化されない油脂を少量分残すことによって、例えば保湿作用を高めるなどの効果があるとされている。上記非特許文献1には、石鹸水溶系に極少量の脂肪酸を添加すると、起泡性能が向上する上、泡質が一層クリーミィになることが知られており、スーパーファットソープと呼ばれていると記載されている。このスーパーファットと同様に軟化剤を有する定着液に極少量の脂肪酸を添加して泡化しようとしたが起泡性及び泡沫安定性のいずれも悪かった。
これに対して、本発明者らは、起泡剤として炭素数12から18の脂肪酸塩を用い、更に炭素数12から18の脂肪酸を定着液中に含有することにより、軟化剤の濃度が高くなっても、定着液の起泡性が劣化しない泡状定着液を提供できることを見出した。
軟化剤を含有した定着液において、単に水を起泡する場合に比較して、脂肪酸塩の炭素数としては、12から18が起泡性に優れている。具体的には、ラウリン酸塩(炭素数12)、ミリスチン酸塩(炭素数14)、パルミチン酸塩(炭素数16、)、ステアリン酸塩(炭素数18)が適する。また、ペンタデシル酸(炭素数15)、マルガリン酸(炭素数17)なども適する。
ここで、脂肪酸と軟化剤との作用について説明すると、軟化剤はエステル基を化学構造中に有しており、脂肪酸はカルボニル基を化学構造中に有している。この点から、軟化剤のエステル基と脂肪酸のカルボニル基が定着液の系内で、電気的な作用を示し、またそれが分子間の結合作用を生じさせ、定着液の特性として起泡性及び泡沫安定性を向上させている。
また、炭素数12から18の範囲においても、炭素数が少ないほうが起泡性に優れているが泡沫安定性が悪く、炭素数が多いほうが起泡性にあまりよくないが泡沫安定性に極めて優れている。このため、定着液中には、単独の脂肪酸塩を含有させても良いが、炭素数12から18の脂肪酸塩を混合して含有させる方がさらに優れている。混合比率としては、ミリスチン酸塩(炭素数14)を最も多く含み、ラウリン酸塩(炭素数12)、ステアリン酸塩の割合を低くすることが望ましい。より具体的な脂肪酸塩の比率としては、ラウリン酸塩:ミリスチン酸塩:パルミチン酸塩:ステアリン酸塩の重量比で、0:6:3:1、1:5:3:1、1:4:4:1などが適する。
ところで、定着液中に起泡剤である脂肪酸塩と同じ炭素数の脂肪酸を含有することで軟化剤の濃度が高くなっても起泡性及び泡沫安定性を維持することができる。軟化剤の濃度として、10[wt%]未満では、脂肪酸を含有しなくても起泡性は問題ない。しかし、軟化剤の濃度が10[wt%]以上、特に軟化剤の濃度が30[wt%]以上になると、脂肪酸塩だけでは、ほとんど起泡しなくなり起泡性が悪くなる。このような軟化剤の濃度が30[wt%]となる定着液において、脂肪酸塩と同じ炭素数の脂肪酸を含有させると、起泡性を維持できる。
但し、脂肪酸の含有量が多くなりすぎると、起泡剤である脂肪酸塩の比率が下がり、起泡性が再び悪くなる。そこで、脂肪酸塩のモル数を、脂肪酸のモル数と同じに、またはは大きくするほうがよい。あるいは、脂肪酸と脂肪酸塩の比率を、5:5から1:9の範囲とした場合起泡性が優れている。
なお、同じ炭素数の脂肪酸と脂肪酸塩の組合せだけでなく、例えば、脂肪酸塩がミリスチン酸アミンで、脂肪酸がステアリン酸の組合せや脂肪酸塩がパルミチン酸カリウムで脂肪酸がステアリン酸のような炭素数が12から18の範囲で異なる組合せであってもよい。要は、炭素数12から18の範囲の脂肪酸を定着液に含有することで、高濃度の軟化剤を含有しても、起泡性が悪くならず、泡沫安定性に優れ、嵩密度の極めて低い泡化を可能とする。
また、他のアニオン系界面活性剤、例えばアルキルエーテル硫酸塩(AES)を起泡剤として、炭素数12から18の脂肪酸を含有した定着液であっても、軟化剤濃度増加による起泡性が悪くなるのを防止する効果があることがわかった。但し、最も組合せとして優れているのは脂肪酸塩との組合せである。
更に、脂肪酸塩としては、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸アミンが適している。更に、最も適している脂肪酸アミンは、具体的には、水を加熱し、脂肪酸を添加し、その後トリエタノールアミンを添加して、一定時間撹拌しながら加熱してケン化反応させることで作製することができる。このとき、脂肪酸とトリエタノールアミンとのモル比を、1:0.5から1:0.9の範囲と脂肪酸比率を高くすることで、ケン化後、未反応の脂肪酸が残留し、定着液中に脂肪酸と脂肪酸アミンを混合させることができる。同じことは、ナトリウム塩やカリウム塩でも可能である。
ところで、定着液中の軟化剤濃度が高くなると希釈溶媒である水に軟化剤が溶解しにくくなる。そこで、検討した結果、多価のアルコール類、具体的にはエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコール、グリセリンなどを定着液中に含有させることで、軟化剤が高濃度でも溶解し、かつ脂肪酸塩による起泡性を劣化させず、むしろ起泡性が向上することがわかった。また、多価のアルコール類の含有量は、1[wt%]から30[wt%]の範囲が適当である。30[wt%]より多い含有量では、起泡性がむしろ劣化するため適さない。
なお、定着の対象となる樹脂を含有する微粒子は、トナーに限定されず、樹脂を含有する微粒子であれば何れでもよい。例えば、導電性部材を含有した樹脂含有微粒子でもよい。また、記録媒体は、転写紙に限定されず、金属、樹脂、セラミックス等何れでもよい。但し、定着液塗布対象は定着液に対し浸透性を有することが望ましく、定着液塗布対象の基板が液浸透性を持たない場合は、基板上に液浸透層を有する定着液塗布対象が望ましい。定着液塗布対象が記録媒体である場合の記録媒体の形態もシート状に限定されず、平面及び曲面を有する立体物でもよい。
また、紙のごとき定着液塗布対象に透明樹脂微粒子を均一に定着させ紙面を保護する(所謂、ニスコート)用途においても、本発明は適用できる。
上記樹脂を含有する微粒子のうち、電子写真プロセスで用いるトナーは、本実施形態の定着装置30の定着液との組合せにおいて最も定着への効果が高い。トナーは、色剤と帯電制御剤と結着樹脂や離型剤などのような樹脂を含む。トナーに含まれる樹脂は、特に限定されないが、好適な結着樹脂としては、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。離型剤としては、例えばカルバナウワックスやポリエチレンなどのワックス成分などが挙げられる。
トナーは、結着樹脂の他に、公知の着色剤、電荷制御剤、流動性付与剤、外添剤などを含んでもよい。また、トナーは、メチル基を有する疎水性シリカ及び疎水性酸化チタンのような疎水性微粒子をトナーの粒子の表面に固着させることによって、撥水性処理されていることが好ましい。定着液塗布対象のうち、記録媒体は、特に限定されず、例えば、紙、布、及び液体透過層を有するOHP用シートのようなプラスチックフィルムなどが挙げられる。本発明における油性とは、室温(20[℃])における水に対する溶解度が、0.1[重量%]以下である性質を意味する。
また、泡状となった定着液は、撥水性処理されたトナーの粒子に対して、十分な親和性を有することが望ましい。ここで、親和性とは、液体が固体に接触したときに、固体の表面に対する液体の拡張濡れの程度を意味する。すなわち、泡状となった定着液は、撥水性処理されたトナーに対して十分な濡れ性を示すことが好ましい。疎水性シリカ及び疎水性酸化チタンのような疎水性微粒子で撥水性処理されたトナーの表面は、疎水性シリカや疎水性酸化チタンの表面に存在するメチル基によって覆われており、おおよそ20[mN/m]程度の表面エネルギーを有する。現実には撥水性処理されたトナーの表面の全面が疎水性微粒子によって完全に覆われてはいないため、撥水性処理されたトナーの表面エネルギーは、おおよそ、20〜30[mN/m]であると推測される。よって、撥水性トナーに対して親和性を有する(十分な濡れ性を有する)ためには、泡状となった定着液の表面張力は、20〜30[mN/m]であることが好ましい。
水性溶媒を用いる場合、界面活性剤を添加することで、表面張力を20〜30[mN/m]とすることが好ましい。また、水性溶媒の場合、単価もしくは多価アルコールを含有していることが望ましい。これらの材料は、泡状の定着液における気泡の安定性を高め、破泡しにくくする利点を有する。例えばセタノールなどの単価アルコールや、グリセンリン、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコールなどの多価アルコールが望ましい。また、これらの単価または多価のアルコール類を含有することで紙等の吸水性のある記録媒体のカール防止に効果を有する。
また、定着液中に浸透性改善や紙等の記録媒体のカール防止のために油性成分を含有してO/WエマルジョンやW/Oエマルジョンを形成する構成も望ましく、その場合、具体的な分散剤としては、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノステレート、及び、ソルビタンセスキオレートなどのソルビタン脂肪酸エステルや、ショ糖ラウリン酸エステル、及び、ショ糖ステアリン酸エステルなどのショ糖エステルなどが望ましい。
定着液中での軟化剤を溶解もしくはマイクロエマルジョン分散させるため方法としては、例えば、回転羽根によるホモミキサーやホモジナイザーのような機械的に攪拌する手段、及び超音波ホモジナイザーのような振動を与える手段が挙げられる。いずれにしても、強いせん断応力を定着液中の軟化剤に加えることで溶解もしくはマイクロエマルジョン分散させる。
以上、本実施形態の定着装置30は、樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂微粒子であるトナーを軟化させる軟化剤を含有する定着液Fを、トナーからなるトナー層を担持する定着液付与対象である転写しPの表面に付与する定着液付与手段である塗布ローラ41を有し、定着液Fを転写紙Pに付与することで軟化したトナー層を記録媒体である転写紙Pに定着させる定着装置である。このような定着装置30において、表面が無端移動することにより、定着液Fによって軟化したトナー層を担持する転写紙Pに搬送力を付与する搬送部材である搬送ローラ45の表面に転写紙Pに接触する針状の凸部を有し、凸部とトナー層とが直接接触することを防止する介在物質である水を凸部の表面に供給する介在物質供給手段である水供給パット46を備える。このような定着装置30では、搬送ローラ45の表面に転写紙Pに接触する針状の凸部を有するため、転写紙P上の軟化したトナーと搬送ローラ45とが接触し得る面積を小さくすることができ、搬送ローラ45にトナーが付着することを抑制できる。また、水供給パット46が供給する介在物質としての水によってトナー層と凸部とが直接接触することを防止でき、より効果的に、搬送ローラ45にトナーが付着することを抑制できる。これにより、搬送ローラ45にトナーが付着することを抑制できるため、搬送ローラ45にトナーが付着することに起因する異常画像の発生を抑制できる。
また、定着装置30は、介在物質が水であることにより、ランニングコストの低減を図ることができる。
また、定着装置30は、水を含有する介在物質に界面活性剤を含有させることにより、水の表面エネルギーを抑制することできる。これにより、搬送ローラ45の凸部に供給された介在物質が濡れ拡がり、針状の凸部を含む搬送ローラ45の表面の凹凸形状の隅々まで均一に濡らすことが可能となる。
また、定着装置30は、水を含有する介在物質に、水に溶融し、且つ水よりも沸点の高い材料を含有させることにより、水を含有する介在物質が蒸発することを低減することができる。
また、定着装置30は、搬送ローラ45の凸部の表面の付着物を除去する凸部表面クリーニング手段である凸部表面クリーニングローラ48を備える。これにより、定着液塗布後転写紙搬送部50による搬送に対する信頼性を向上・維持することができる。
また、定着装置30は、凸部表面クリーニングローラ48は、面ファスナーのループ面側に用いられるループ部48bを搬送ローラ45の凸部に接触させる構成である。これにより、簡易な構成で、搬送ローラ45の凸部を栗にングすることができる。
また、定着装置30は、液状定着液TLを液中に気泡が分散した泡状定着液Buとする定着液泡状化手段である泡状定着液供給部130を備え、定着液付与手段である塗布ローラ41は、泡状定着液Buを定着液付与対象である転写紙Pに付与する。これにより、塗布ローラ41による定着液Fの塗布であっても、転写紙P上のトナー像への定着液Fの微量塗布と塗布ローラ41へのトナーオフセット防止とを両立することができる。
また、本実施形態の画像形成装置としてのプリンタ100は、樹脂と色剤を含有する樹脂微粒子であるトナーを用いて記録媒体である転写紙P上に未定着トナーTを形成するトナー像形成手段であるプロセスユニット3等と、トナー像を担持する転写紙Pの表面に定着液Fを付与し、転写紙P上にトナー像を定着せしめる定着手段とを備える。そして、定着手段として、図1等に示す本実施形態の定着装置30を用いることにより、搬送ローラ45にトナーが付着することに起因する異常画像の発生を抑制できるため、良好な画像形成を実現できる。
3 プロセスユニット
20 転写ユニット
25 中間転写ベルト
28 紙搬送ユニット
30 定着装置
31 定着用液収容器
33 液搬送ポンプ
35 初期発泡部
38 泡微細化部
41 塗布ローラ
42 膜厚調整ブレード
43 加圧ローラ
45 搬送ローラ
46 水供給パット
47 搬送加圧ローラ
48 凸部表面クリーニングローラ
49 スプレーヘッド
50 定着液塗布後転写紙搬送部
100 プリンタ
130 泡状定着液供給部
140 泡状定着液塗布部
400 液混合部
430 加圧ベルト
Bu 泡状定着液
Bu1 初期泡状定着液
Bu2 小径泡状定着液
Bu3 泡状定着液膜
C 塗布ニップ
F 定着液
P 転写紙
T 未定着トナー
TL 液状定着液
特許第3290513号 特許第4185742号 特開昭59−119364号公報 特開2007−219105号公報 特開昭01−057791号公報
「泡のエンジニアリング」初版(石井淑夫著,株式会社テクノシステム,2005年3月25日発行,P.489)

Claims (8)

  1. 樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂微粒子を軟化させる軟化剤を含有する定着液を、該樹脂含有微粒子からなる樹脂含有微粒子層を担持する定着液付与対象の表面に付与する定着液付与手段を有し、
    該定着液を該定着液付与対象に付与することで軟化した該樹脂含有微粒子層を記録媒体に定着させる定着装置において、
    表面が無端移動することにより、上記定着液によって軟化した該樹脂含有微粒子層を担持する上記記録媒体に搬送力を付与する搬送部材の表面に該記録媒体に接触する針状の凸部を有し、
    該凸部と該樹脂含有微粒子層とが直接接触することを防止する介在物質を該凸部の表面に供給する介在物質供給手段を備えることを特徴とする定着装置。
  2. 請求項1の定着装置において、
    上記介在物質が水を含有することを特徴とする定着装置。
  3. 請求項2の定着装置において、
    上記介在物質が界面活性剤を含有することを特徴とする定着装置。
  4. 請求項2または3の定着装置において、
    上記介在物質が水に溶融し、且つ水よりも沸点の高い材料を含有することを特徴とする定着装置。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の定着装置において、
    上記凸部の表面の付着物を除去する凸部表面クリーニング手段を備えることを特徴とする定着装置。
  6. 請求項5の定着装置において、
    上記凸部表面クリーニング手段は、面ファスナーのループ面側に用いられるループを上記凸部に接触させる構成であることを特徴とする定着装置。
  7. 請求項1乃至6のいずれか1項に記載の定着装置において、
    液状の定着液を液中に気泡が分散した泡状定着液とする定着液泡状化手段を備え、
    上記定着液付与手段は、該泡状定着液を上記定着液付与対象に付与することを特徴とする定着装置。
  8. 樹脂と色剤とを含有する樹脂微粒子を含むトナーを用いて記録媒体上に画像情報に基づいてトナー像を形成するトナー像形成手段と、
    トナー像を担持する記録媒体の表面に泡状定着液を付与し、該記録媒体上に該トナー像を定着せしめる定着手段とを備える画像形成装置であって、
    該定着手段として、請求項1乃至7に記載の定着装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
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