JP2012154693A - カリウム蛍光プローブ - Google Patents

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Abstract

【課題】ナトリウムイオンの共存下においてもカリウムイオンを特異的に捕捉して高感度にカリウムイオンを測定することができる蛍光プローブを提供する。
【解決手段】式(I)(R1は水素原子、アルキル基、又はアリール基;R2及びR4はアルキル基;R3及びR5はカルボキシアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、スルホン酸アルキル基、又はアルキルスルホネートアルキル基;R6はアルキル基、アリール基、C1-6アルコキシカルボニル基、ビニル基、チエニル基、又はピロリル基;R7はアルコキシ基を示す)で表される化合物又はその塩。

【選択図】なし

Description

本発明はカリウムイオンを特異的に検出可能な蛍光プローブに関するものである。
カリウムイオンは細胞内で最も豊富に存在する金属イオンであり様々な生体機能に深く関与している。例えば、カリウムチャネルに作用する薬物は不整脈・高血圧・糖尿病等の治療薬として広く利用されている。カリウムイオン濃度を検出する蛍光プローブはこのような治療薬の薬効評価や生命現象の解明に有用なツールとなることが期待されている。
カリウムイオンの蛍光プローブとしては、例えばPBFI (インビトロジェン)などが市販されているが、カリウムイオンに対する選択性が低く、ナトリウムイオンの夾雑時にはカリウムイオンを正確に測定することができず、さらに励起波長が低波長であるという問題もあった。
最近、カリウムイオンを選択的に捕捉することができる化合物として2-トリアザクリプタンド[2,2,3]-1-(2-メトキシエトキシ)ベンゼン(TAC)が報告されており(J. Am. Chem. Soc., 125, pp1468-1469, 2003)、このTACをカリウム捕捉基として利用して蛍光団と結合させたカリウム蛍光プローブがいくつか提案されている(Nature Methods, 2, pp.825-827, 2005; J. Phys. Chem., 110, pp.21216-21221, 2006)。また、蛍光団として4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン骨格(ボロンジピロメテン:BODIPY骨格)を用いたプローブも提案されている(J. Am. Chem. Soc., 130, pp.7794-7795, 2008)。この蛍光プローブはインダセン骨格の8位にTAC残基が結合していることを特徴としている。さらにTACのオルトフェニレンオキシ基をピロールジイル基に置き換えた捕捉基を有する化合物も提案されている(Org. Lett., 12, pp.1160-1163, 2010)。しかしながら、これらの蛍光プローブの多くは励起波長が短波長であり、生体内や生きている細胞又は組織内で動的にカリウムイオンを測定する目的には適していないという問題がある。
J. Am. Chem. Soc., 125, pp1468-1469, 2003 Nature Methods, 2, pp.825-827, 2005 J. Phys. Chem., 110, pp.21216-21221, 2006 J. Am. Chem. Soc., 130, pp.7794-7795, 2008 Org. Lett., 12, pp.1160-1163, 2010
本発明の課題はカリウムイオンを特異的に捕捉して蛍光を発する蛍光プローブを提供することにある。より具体的には、ナトリウムイオンの共存下においてもカリウムイオンを特異的に捕捉して高感度にカリウムイオンを測定することができる蛍光プローブを提供することが本発明の課題である。また、上記の特徴を有する蛍光プローブであって、長波長の励起波長により蛍光を測定することができる蛍光プローブを提供することも本発明の課題である。
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行なった結果、4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン(DOBIPY)骨格を蛍光団として利用し、3位にリンカーを介してTAC又はその誘導体の残基を結合させることにより、それ自体は無蛍光であり、かつカリウムイオンを特異的に結合した後には600nm程度の長波長の励起光を照射することにより強い蛍光を発する蛍光プローブを製造することに成功した。本発明は上記の知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明により、下記の一般式(I):
(式中、R1は水素原子、置換基を有していてもよいC1-6アルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を示し;R2及びR4はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいC1-6アルキル基を示し;R3及びR5はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいカルボキシ置換C1-6アルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル置換C1-6アルキル基、置換基を有していてもよいスルホン酸置換C1-6アルキル基、又は置換基を有していてもよいアルキルスルホネート置換C1-6アルキル基を示し;R6は置換基を有していてもよいC1-6アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいC1-6アルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいビニル基、置換基を有していてもよいチエニル基、又は置換基を有していてもよいピロリル基を示し;R7は置換基を有していてもよいC1-6アルコキシ基を示し;Xは二重結合を1個又は2個含む直鎖状又は分枝鎖状のC2-6アルキレン基を示し;Y1及びY2はそれぞれ独立に酸素原子又は単結合を示し;Ar1及びAr2はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいオルト-アリールジイル基を示す)で表される化合物又はその塩が提供される。
この発明の好ましい態様によれば、R1が置換基を有していてもよいアリール基であり;R2及びR4がそれぞれ独立にC1-6アルキル基であり;R3及びR5がそれぞれ独立にカルボキシ置換C1-6アルキル基又はアルコキシカルボニル置換C1-6アルキル基であり;R6がC1-6アルキル基であり;R7がC1-6アルコキシ置換C1-6アルコキシ基であり;Y1及びY2が酸素原子であり;Ar1及びAr2が置換基を有していてもよいオルト-フェニレン基である上記の化合物又はその塩が提供される。
さらに好ましい態様によれば、R1がフェニル基であり;R2及びR4が共にメチル基であり;R3及びR5がそれぞれ独立にカルボキシ置換C1-6アルキル基又はアルコキシカルボニル置換C1-6アルキル基であり;R6がメチル基であり;R7がメトキシ置換エトキシ基であり;Ar1及びAr2がアルキル置換オルト-フェニレン基である上記の化合物又はその塩が提供される。
また、本発明により、上記の一般式(I)で表される化合物又はその塩を含むカリウム蛍光プローブが提供される。
別の観点からは、本発明により、カリウムイオンが配位した上記の一般式(I)で表される化合物又はその塩が提供される。
さらに別の観点からは、カリウムイオンの測定方法であって、(a)上記の一般式(I)で表される化合物又はその塩をカリウムイオンと反応させる工程;及び(b)上記工程(a)において生成したカリウムイオンを配位した上記の一般式(I)で表される化合物又はその塩に由来する蛍光を測定する工程を含む方法が本発明により提供される。
本発明により提供される一般式(I)で表される化合物又はその塩はカリウムイオンを特異的に捕捉して蛍光を発する蛍光プローブとして有用である。この蛍光プローブはナトリウムイオンの共存下においてもカリウムイオンを特異的に捕捉して高感度にカリウムイオンのみを測定することができ、カリウムイオンを捕捉した後には長波長の励起波長により高強度の蛍光を発するので、生体内や生きている細胞又は組織内などにおけるカリウムイオンのイメージングを細胞や組織に傷害を与えることなく高感度に行なうことができる。
実施例の例1で得られた化合物(3)(pH3TAC)を蛍光プローブとして用い、ナトリウムイオン150 mM存在下においてカリウムイオン濃度を変化させた場合の吸収スペクトル(左)及び蛍光スペクトル(右)を示した図である。
本明細書において、特に言及しない場合にはアルキル基は直鎖状、分枝鎖状、環状、又はそれらの組み合わせのいずれでもよい。アルキル部分を有する他の置換基(アルコキシ基)のアルキル部分についても同様である。また、ある官能基について「置換基を有していてもよい」と言う場合には、置換基の種類、個数、置換位置は特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のいずれでもよい)、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C1-6アルコキシ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホン酸基、又はアルキルスルホネート基などを1個又は2個以上置換基として有していてもよい。また、本明細書においてアリール基という場合には、単環性又は多環性のアリール基のいずれであってもよい。またアリール基は環構成ヘテロ原子を1個又は2個以上含んでいてもよく、2個以上のヘテロ原子は同一でも異なっていてもよい。環構成ヘテロ原子は、例えば窒素原子、硫黄原子、又は酸素原子などから選択することができる。
一般式(I)において、R1は水素原子、置換基を有していてもよいC1-6アルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を示す。好ましくは水素原子、C1-6アルキル基、ハロゲン化C1-6アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を示し、さらに好ましくは置換基を有していてもよいフェニル基を示す。ハロゲン化C1-6アルキル基としては、例えばトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基などを挙げることができる。フェニル基が置換基を有する場合には、例えば、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C1-6アルコキシ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホン酸基、及びアルキルスルホネート基からなる群から選ばれる1又は2個の置換基を有していてもよい。これらのうちC1-6アルキル基又はC1-6アルコキシ基が置換基として好ましい。例えば、2個の置換基を有する場合には、2個の同一又は異なるC1-6アルキル基の組み合わせ、1個のC1-6アルキル基と1個のC1-6アルコキシ基の組み合わせ、あるいは2個のC1-6アルコキシ基の組み合わせなどを有していてもよい。フェニル基は無置換であってもよく、その場合も好ましい態様である。
一般式(I)において、R2及びR4はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいC1-6アルキル基を示す。R2及びR4が示すC1-6アルキル基が置換基を有する場合には、例えばハロゲン原子、水酸基、又はカルボキシル基などを1個又は2個程度有していてもよい。好ましくはR2及びR4はそれぞれ独立に無置換のC1-6アルキル基を示し、さらに好ましくはR2及びR4は共にメチル基である。
一般式(I)において、R3及びR5はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいカルボキシ置換C1-6アルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル置換C1-6アルキル基、置換基を有していてもよいスルホン酸置換C1-6アルキル基、又は置換基を有していてもよいアルキルスルホネート置換C1-6アルキル基を示す。これらの基において、C1-6アルキル基に置換するカルボキシル基やスルホン酸基は1個又は2個程度である。例えば、置換基を有していてもよいスルホン酸置換C1-6アルキル基としては末端炭素原子上に2個のスルホン酸基を有するスルホン酸置換C1-6アルキル基を挙げることができ、さらにアルキル鎖中に1個程度のアミド結合を含むこともできる。このようなスルホン酸置換C1-6アルキル基として、具体的には-(CH2)m-CO-NH-CH2-CH(SO3H)2 (m=0〜2)などを挙げることができる。また、カルボキシ置換C1-6アルキル基に存在するカルボキシル基はアミド結合を形成していてもよい。例えば、カルボキシ置換C1-6アルキル基に存在するカルボキシル基は-(NH-CH2-CH(SO3H)-CO)n-OH (n=1〜3)で表される基とアミド結合していてもよい。このような態様はカルボキシ置換C1-6アルキル基が置換基を有する場合に包含される。好ましくはR3及びR5はそれぞれ独立にカルボキシ置換C1-6アルキル基又はアルコキシカルボニル置換C1-6アルキル基を示し、さらに好ましくはR3及びR5はそれぞれ独立にカルボキシ置換C1-6アルキル基を示す。特に好ましいくはR3及びR5がともに1個のカルボキシル基で置換されたエチル基の場合である。
一般式(I)において、R6は置換基を有していてもよいC1-6アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいC1-6アルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいビニル基、置換基を有していてもよいチエニル基、又は置換基を有していてもよいピロリル基を示す。好ましくはR6は置換基を有していてもよいC1-6アルキル基を示し、さらに好ましくは無置換のC1-6アルキル基を示し、特に好ましくはメチル基を示す。
一般式(I)において、R7は置換基を有していてもよいC1-6アルコキシ基を示す。C1-6アルコキシ基上に存在する置換基としては水酸基、カルボキシル基、又はC1-6アルコキシ基などが好ましい。R7が1個のC1-6アルコキシ基を有するC1-6アルコキシ基であることが好ましく、R7がメトキシ置換エトキシ基、エトキシ置換エトキシ基、メトキシ置換メトキシ基などであることが好ましい。特に好ましいのはメトキシ置換エトキシ基である。
Xは二重結合を1個又は2個含む直鎖状又は分枝鎖状のC2-6アルキレン基を示す。Xとしては二重結合を1個含む直鎖状又は分枝鎖状のC2-6アルキレン基が好ましく、さらに好ましいくは二重結合を1個含む直鎖状のC2-6アルキレン基を用いることができる。例えば、-CH=CH-、-CH2-CH=CH-、-CH=CH-CH2-、-CH=C-CH2-CH2-(左側がBODIPY骨格に結合する)などが例示される。
一般式(I)において、Y1及びY2はそれぞれ独立に酸素原子又は単結合を示し、Ar1及びAr2はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいオルト-アリールジイル基を示す。アリール環としてはベンゼン環、ナフタレン環などの芳香族炭化水素環のほか、ピリジン環、ピロール環などを用いることができる。好ましくはベンゼン環又はピロール環を用いることができる。アリール環上にはC1-6アルキル基又はC1-6アルコキシ基などの置換基が1個又は2個程度存在していてもよい。アリール環上に1個のC1-6アルキル基が存在していることが好ましく、アリール環上に1個のメチル基が存在することがさらに好ましい。
Ar1及びAr2が同一のオルト-アリールジイル基であることが好ましく、Ar1及びAr2が共に無置換のオルトフェニレン基又は1個又は2個のC1-6アルキル基で置換されたオルトフェニレン基であることが好ましい。1個又は2個のC1-6アルキル基で置換されたオルトフェニレン基としては、例えば、Ar1及びAr2が共に3-メチルベンゼン-1,6-ジイル基などを挙げることができる。Ar1及びAr2が共に無置換のオルトフェニレン基又は1個又は2個のC1-6アルキル基で置換されたオルトフェニレン基である場合には、Y1及びY2が共に酸素原子である場合が好ましい。Ar1及びAr2が共にオルト-ピロールジイル基など5員環ヘテロアリールジイル基の場合にはY1及びY2が共に単結合であることが好ましい。このような捕捉基はOrg. Lett., 12, pp.1160-1163, 2010に具体的に示されている。
上記一般式(I)で表される本発明の化合物は塩を形成する場合もある。塩の種類は特に限定されず、酸付加塩又は塩基付加塩のいずれであってもよい。酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩などの鉱酸塩、又はメタンスルホン酸塩、クエン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、シュウ酸塩などの有機酸塩を挙げることができる。また、塩基付加塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などの金属塩、アンモニウム塩、又はメチルアミン塩、トリエチルアミン塩などの有機アミン塩を挙げることができる。さらに、グリシンなどのアミノ酸の塩を形成する場合もある。もっとも、本発明の化合物の塩はこれらの具体例に限定されることはない。
上記一般式(I)で表される本発明の化合物は1個又は2個以上の不斉炭素を有している場合がある。従って、1個又は2個以上の不斉炭素に基づく光学的に純粋な形態の任意の光学異性体、光学異性体の任意の混合物、ラセミ体、純粋な形態のジアステレオ異性体、ジアステレオ異性体の混合物などはいずれも本発明の範囲に包含される。また、本発明の化合物又はその塩は水和物又は溶媒和物として存在する場合もあるが、これらの物質も本発明の範囲に包含されることはいうまでもない。
本明細書の実施例には本発明に包含される代表的な化合物の製造方法を示した。また、BODIPY骨格については、例えば、特開平10-338695号公報及び特開平11-5796号公報のほか、New J. Chem., 25, pp.289-292, 2001; Tetrahedron Letters, 42, pp.6711-6713, 2001; Angew. Chem. Int. Ed., 40, pp.385-387, 2001;及び特願2002-80230号明細書などに合成方法が示されているので、これらの刊行物を参照することにより当業者は本発明の化合物を容易に製造することができる。
本発明の一般式(I)で表される化合物又はその塩は、600nm程度の励起光を照射した場合にはほとんど蛍光を発しないが、カリウムイオンを捕捉してキレート錯体を形成した後には上記励起光を照射することにより高強度の蛍光を発する性質を有している。また、本発明の一般式(I)で表される化合物又はその塩はナトリウムイオンとはキレート錯体を形成せず、カリウムイオンと特異的にキレート錯体を形成する性質を有している。従って、一般式(I)で表される化合物又はその塩を生体内や生きている細胞又は組織内に取り込ませてカリウムイオンを捕捉させ、それにより生じた蛍光性のキレート化合物の蛍光を測定することにより、生体内や生きている細胞又は組織内のカリウムイオンを測定することができる。特に、本発明の一般式(I)で表される化合物又はその塩はカリウムイオンに対して高い特異性を有しており、かつカリウムイオンを捕捉したキレート化合物は長波長の励起光により高強度の蛍光を発することから、生体内や生きている細胞又は組織に対して障害を与えることなくカリウムイオンを高感度に測定することができるという特徴を有している。
本発明により提供されるカリウムイオンの測定方法は、一般式(I)で表される化合物又はその塩とカリウムイオンとを反応させて、カリウムイオンを捕捉した蛍光性のキレート化合物を生成させ、このキレート化合物に対して励起光を照射して蛍光を測定する工程を含んでいる。本明細書において「測定」という用語は、検出、定量、又は定性など種々の目的の測定を含めて最も広義に解釈されるべきである。上記反応は好ましくは中性条件下に行うことができ、例えば、pH5.0〜9.0 の範囲、好ましくはpH 6.0〜8.0 の範囲で行うことができる。もっとも、本発明の化合物を用いたカリウムイオンの測定は中性領域ないし弱酸性領域に限定されることはない。
蛍光の測定は一般的に利用されている蛍光測定方法に準じて行うことができる(例えば、Wiersma, J.H., Anal. Lett., 3, pp.123-132, 1970; Sawicki, C.R., Anal. Lett., 4, pp.761-775, 1971; Damiani, P. and Burini, G., Talanta, 8, pp.649-652, 1986; Damiani, P. and Burini, G., Talanta, 8, pp.649-652, 1986; Misko, T.P., Anal. Biochem. 214, pp.11-16, 1993 などの刊行物を参照)。本発明のカリウムイオンの測定においては、例えば、励起光として550〜600 nm 程度の光を照射し580〜650 nm程度の蛍光を測定することが好ましい。本発明の一般式(I)とカリウムイオンとが結合したキレート化合物は、長波長の励起光によっても充分な蛍光強度を与えるという優れた性質があり、生体や組織、細胞などへの障害を軽減することが可能である。また、このような波長の光を用いると、汎用の蛍光顕微鏡に備えられた蛍光フィルターでも効率的に分光することができ、特殊なフィルターを用いずに高感度な測定が可能になる。本発明のカリウムイオンの測定では、例えばカリウムイオン濃度として0.1〜100mM、好ましくは1〜10mM程度の濃度の測定を行なうことができるが、この濃度は細胞外液のカリウム濃度に相当することから、本発明のカリウムイオンの測定は生体内条件におけるカリウムイオンを測定するために最適である。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
例1
以下のスキームに従って化合物(3)を合成した。
(a)化合物(1)(TAC-aldehyde)の合成
文献既知(J. Am. Chem. Soc., 125, pp1468-1469, 2003)の化合物であるTAC-CHO 20.6 mg (29.7 μmol)を脱水ジメチルホルムアミド(DMF) 1 mLに溶解し、POCl3 400 mgを加えてアルゴン雰囲気下に室温で20時間撹拌し、その後70℃で1時間撹拌した。反応溶液に20 mLの水を加え、1 M NaCO3水溶液を用いて溶液をpH 7に中和し、20 mLのジクロロメタンで3回抽出した。有機層に無水硫酸ナトリウムを加えてろ過した後に溶媒を減圧下で除去し、化合物(1)をガム状固体として得た。この固体を精製することなくそのまま次の反応に供した。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3) δppm 2.24 (m, 6H), 3.12-4.54 (m, 39H), 6.61-7.38 (m, 9H), 8.02 (s, 1H)
(b)化合物(2)(pMe3TAC)の合成
上記工程(a)で得られた化合物(1)の全量と文献既知(国際公開WO 2008/059910又はNature Medicine, 15, pp.104-109、2009)の化合物であるBODIPY PMe 14.7 mg (29.6 μmol, 1 eq)を脱水トルエン 1 mLに溶解し、酢酸 30 μL (525 μmol, 17.7 eq)及びピペリジン 36 μL (364 μmol, 12.3 eq)を加えてアルゴン雰囲気下で6時間加熱還流した。溶媒を減圧下で除去し、シリカゲルクロマトグラフィーで精製を行ない(シリカゲル60、ジクロロメタン/メタノール=100/0 -100/20)、化合物(2)(9.0 mg, 7.5 μmol, 25%)を得た。得られた化合物は精密質量分析により構造を確認し、逆相HPLCにより純度を確認した。
HRMS (ESI+): calcd for [M+H]+, 1200.6256; found 1200.6234 (-2.2 mmu)
(c)化合物(3)(pH3TAC)の合成
化合物(2) 9.0 mg (7.5 μmol)をジクロロメタン 0.6 mL、メタノール 4 mL、1N 水酸化ナトリウム水溶液 1 mLの混合溶媒に溶かし、室温で5時間撹拌した。反応溶液に20 mLの水を加え、20 mLのジクロルメタンで3回洗浄した。水層を2N 塩酸水溶液で酸性にして20 mLのジクロルメタンで5回抽出し、無水硫酸ナトリウムを加えてろ過し、溶媒を減圧下で除去した。得られた個体をHPLCにて精製し(eluent A:H2O 0.1 M 酢酸トリエチルアンモニウム、及びeluent B:アセトニトリル80%及び水20%、A/B = 80/20 to 0/100 for 15 min)、目的化合物(1.3 mg, 15%)を得た。得られた化合物は、精密質量分析により構造を確認し、逆相HPLCにより純度を確認した。
HRMS (ESI+): calcd for [M+H]+, 1172.5943; found 1172.5958 (1.5 mmu)
例2
上記の方法で合成した化合物(3)を蛍光プローブとして用いて、HEPES 緩衝液/アセトニトリル = 70/30の溶液中でのカリウムイオンに対する応答性を検討した。5 mM HEPES 緩衝液(pH 7.0)/アセトニトリル = 70/30の混合溶媒に過塩素酸ナトリウムを300 mM溶解したものと、過塩素酸カリウムを最終濃度の2倍となるように溶解したものをそれぞれ用意した。これらを250 μLずつ吸光測定用セル(光路長0.5 cm)に加え、ここに化合物(3)の0.2 mM ジメチルスルホキシド溶液を5 μL加えて、化合物(3) 2 μM、ジメチルスルホキシド 1%の条件下で吸光スペクトル及び蛍光スペクトルを測定した。その結果、高濃度(150 mM)のナトリウムイオン存在下においてもカリウムイオンの濃度変化に選択的に応答し、蛍光強度が21倍上昇した。結果を図1に示す。

Claims (5)

  1. 下記の一般式(I):
    (式中、R1は水素原子、置換基を有していてもよいC1-6アルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を示し;R2及びR4はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいC1-6アルキル基を示し;R3及びR5はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいカルボキシ置換C1-6アルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル置換C1-6アルキル基、置換基を有していてもよいスルホン酸置換C1-6アルキル基、又は置換基を有していてもよいアルキルスルホネート置換C1-6アルキル基を示し;R6は置換基を有していてもよいC1-6アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいC1-6アルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいビニル基、置換基を有していてもよいチエニル基、又は置換基を有していてもよいピロリル基を示し;R7は置換基を有していてもよいC1-6アルコキシ基を示し;Xは二重結合を1個又は2個含む直鎖状又は分枝鎖状のC2-6アルキレン基を示し;Y1及びY2はそれぞれ独立に酸素原子又は単結合を示し;Ar1及びAr2はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいオルト-アリールジイル基を示す)で表される化合物又はその塩。
  2. R1がフェニル基であり;R2及びR4が共にメチル基であり;R3及びR5がそれぞれ独立にカルボキシ置換C1-6アルキル基又はアルコキシカルボニル置換C1-6アルキル基であり;R6がメチル基であり;R7がメトキシ置換エトキシ基であり;Y1及びY2が共に酸素原子であり;Ar1及びAr2がアルキル置換オルト-フェニレン基である請求項1に記載の化合物又はその塩。
  3. カリウムイオンがキレートを形成した請求項1又は2に記載の化合物又はその塩。
  4. 請求項1又は2に記載の化合物又はその塩を含むカリウム蛍光プローブ。
  5. カリウムイオンの測定方法であって、下記の工程:
    (a)請求項1又は2に記載の化合物又はその塩をカリウムイオンと反応させる工程;及び
    (b)上記工程(a)において生成したカリウムイオンとキレートを形成した上記化合物又はその塩に由来する蛍光を測定する工程を含む方法。
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