JP2012149247A - ポリプロピレン樹脂組成物、およびその製造方法、ならびにそれを成形してなる成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】引張強度が高く、脆性破壊しにくいポリプロピレン樹脂組成物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】共重合ポリプロピレン樹脂100質量部と、ビニロン繊維5〜100質量部を含有し、引張強度が35MPa以上であるポリプロピレン樹脂組成物、および以下の工程からなるポリプロピレン樹脂組成物の製造方法。工程(i):ビニロン繊維の表面に、酸変性ポリオレフィン樹脂を被覆する工程。工程(ii):工程(i)で得られた酸変性ポリオレフィン樹脂によって表面が被覆されたビニロン繊維と共重合ポリプロピレン樹脂を混合する工程。
【選択図】図1
【解決手段】共重合ポリプロピレン樹脂100質量部と、ビニロン繊維5〜100質量部を含有し、引張強度が35MPa以上であるポリプロピレン樹脂組成物、および以下の工程からなるポリプロピレン樹脂組成物の製造方法。工程(i):ビニロン繊維の表面に、酸変性ポリオレフィン樹脂を被覆する工程。工程(ii):工程(i)で得られた酸変性ポリオレフィン樹脂によって表面が被覆されたビニロン繊維と共重合ポリプロピレン樹脂を混合する工程。
【選択図】図1
Description
本発明は、脆性破壊しにくいポリプロピレン樹脂組成物に関するものである。
ポリプロピレン樹脂の機械的特性を向上させる手法として、有機繊維を含有させることは一般的におこなわれている。
例えば、特許文献1には、有機繊維であるビニロン繊維をポリプロピレン樹脂に含有させることが開示されている。また、特許文献2には、接着助剤として被覆したビニロン繊維をポリプロピレン樹脂に含有させることが開示されており、接着助剤の具体例として、オレフィンモノマーとカルボキシル基又は無水カルボン酸基を有するビニル系モノマーからなるブロック共重合体が開示されている。しかしながら、これらのポリプロピレン樹脂組成物は、衝撃強度は高いものの、引張強度が十分ではなく、脆性破壊しやすい傾向があった。脆性破壊とは、ガラスが割れる時のように、ほとんど塑性変形をともなわないで生じる破壊のことである。成形品にこのような破壊が生じると、その破壊部位が鋭利な形状となるため、人体と接触する用途には適しておらず、用途展開が制約される一因となっていた。
本発明は、引張強度が高く、脆性破壊しにくいポリプロピレン樹脂組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、かかる従来技術を鑑み、酸変性ポリオレフィン樹脂によって表面が被覆されたビニロン繊維を用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は下記の通りである。
(1)共重合ポリプロピレン樹脂100質量部と、ビニロン繊維5〜100質量部を含有し、引張強度が35MPa以上であるポリプロピレン樹脂組成物。
(2)以下の工程からなる請求項1記載のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法。
工程(i):ビニロン繊維の表面に、酸変性ポリオレフィン樹脂を被覆する工程。
工程(ii):工程(i)で得られた酸変性ポリオレフィン樹脂によって表面が被覆されたビニロン繊維と共重合ポリプロピレン樹脂を混合する工程。
(3)酸変性ポリオレフィン樹脂が、酸成分が共重合されたポリオレフィンであって、酸成分とオレフィン成分がランダム共重合している(2)記載のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法。
(4)工程(i)において、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体を用いて、ビニロン繊維の表面に酸変性ポリオレフィン樹脂を被覆することを特徴とする(2)または(3)記載のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法。
(5)工程(ii)において、工程(i)で得られた表面が被覆されたビニロン繊維を構成繊維とするビニロン繊維束を、溶融状態にある共重合ポリプロピレン樹脂内を通過させることにより、ビニロン繊維と共重合ポリプロピレン樹脂を混合することを特徴とする(2)〜(4)いずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法。
(6)溶融状態にある共重合ポリプロピレン樹脂内を通過させることにより、ビニロン繊維束を開繊させながら、共重合ポリオレフィン樹脂を含浸させる(5)記載のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法。
(7)酸変性ポリオレフィン樹脂が無水マレイン酸とアクリル酸エチルを共重合したポリエチレンである(2)〜(6)いずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法。
(8)(1)記載のポリプロピレン樹脂組成物を成形してなる成形体。
(9)自動車部品、自転車部品、家電部品、または産業資材の用途に用いる(8)記載の成形体。
(1)共重合ポリプロピレン樹脂100質量部と、ビニロン繊維5〜100質量部を含有し、引張強度が35MPa以上であるポリプロピレン樹脂組成物。
(2)以下の工程からなる請求項1記載のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法。
工程(i):ビニロン繊維の表面に、酸変性ポリオレフィン樹脂を被覆する工程。
工程(ii):工程(i)で得られた酸変性ポリオレフィン樹脂によって表面が被覆されたビニロン繊維と共重合ポリプロピレン樹脂を混合する工程。
(3)酸変性ポリオレフィン樹脂が、酸成分が共重合されたポリオレフィンであって、酸成分とオレフィン成分がランダム共重合している(2)記載のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法。
(4)工程(i)において、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体を用いて、ビニロン繊維の表面に酸変性ポリオレフィン樹脂を被覆することを特徴とする(2)または(3)記載のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法。
(5)工程(ii)において、工程(i)で得られた表面が被覆されたビニロン繊維を構成繊維とするビニロン繊維束を、溶融状態にある共重合ポリプロピレン樹脂内を通過させることにより、ビニロン繊維と共重合ポリプロピレン樹脂を混合することを特徴とする(2)〜(4)いずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法。
(6)溶融状態にある共重合ポリプロピレン樹脂内を通過させることにより、ビニロン繊維束を開繊させながら、共重合ポリオレフィン樹脂を含浸させる(5)記載のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法。
(7)酸変性ポリオレフィン樹脂が無水マレイン酸とアクリル酸エチルを共重合したポリエチレンである(2)〜(6)いずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法。
(8)(1)記載のポリプロピレン樹脂組成物を成形してなる成形体。
(9)自動車部品、自転車部品、家電部品、または産業資材の用途に用いる(8)記載の成形体。
本発明によれば、引張強度が高く、脆性破壊しにくいポリプロピレン樹脂組成物を提供することができる。このポリプロピレン樹脂組成物からなる成形体は、自動車部品、自転車部品、家電部品、産業資材等の用途に好適に用いることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、共重合ポリプロピレン樹脂とビニロン繊維を含有する。
本発明における共重合ポリプロピレン樹脂とは、プロピレン以外の成分が3質量%以上共重合されたプロピレン樹脂である。プロピレン以外の成分としては、エチレン、イソブチレン、1−ブテン、2−ブテン、ペンテン、ヘキセン、マレイン酸等が挙げられる。プロピレン以外の成分の共重合量は、融点の低下を抑制しながら、衝撃強度を向上させることができるので、5〜20質量%が好ましく、5〜10質量%がより好ましい。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、共重合ポリプロピレン樹脂とビニロン繊維を含有する。
本発明における共重合ポリプロピレン樹脂とは、プロピレン以外の成分が3質量%以上共重合されたプロピレン樹脂である。プロピレン以外の成分としては、エチレン、イソブチレン、1−ブテン、2−ブテン、ペンテン、ヘキセン、マレイン酸等が挙げられる。プロピレン以外の成分の共重合量は、融点の低下を抑制しながら、衝撃強度を向上させることができるので、5〜20質量%が好ましく、5〜10質量%がより好ましい。
共重合ポリプロピレン樹脂の230℃、2160g荷重下におけるメルトフローレートは、5〜40g/10分であることが好ましく、8〜30g/10分であることがより好ましく、10〜20g/10分であることがさらに好ましい。
ビニロン繊維は、公知のものを用いることができる。ビニロン繊維の引張強度は11cN/dtex以上であることが好ましく、14cN/dtex以上であることがより好ましく、15cN/dtex以上であることがさらに好ましい。
ビニロン繊維は、共重合ポリプロピレン樹脂と溶融混練する時に剪断力を受けると、切断されて短くなる。そのため、樹脂組成物中のビニロン繊維の平均繊維長は、溶融混練前のビニロン繊維の平均繊維長よりも短くなる。樹脂組成物中のビニロン繊維の平均繊維長は200μm〜15mmとすることが好ましく、5〜15mmとすることがより好ましい。ビニロン繊維の平均繊維径は3〜200μmとすることが好ましく、5〜30μmとすることがより好ましい。樹脂組成物中のビニロン繊維の平均繊維長が200μm〜15mm、平均繊維径が3〜200μmの範囲であれば、樹脂組成物に適度な耐衝撃性を付与することができる。
ビニロン繊維の含有量は、共重合ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、5〜100質量部であることが必要で、8〜80質量部であることが好ましく、10〜60質量部であることがさらに好ましい。ビニロン繊維の含有量が5質量部未満であると、樹脂組成物の耐衝撃性が低下するので好ましくない。ビニロン繊維の含有量が100質量部を超えると、ビニロン繊維を均一に樹脂組成物に含有させることができなくなるので好ましくない。
ビニロン繊維の製造方法としては、例えば、以下の2つの方法が挙げられる。第1の方法としては、ポリビニルアルコールをジメチルスルホキシド等の有機溶媒に溶解した紡糸原液を、ノズルからメタノール中に紡糸する方法である。メタノール中に紡糸した際、紡糸原液中のポリビニルアルコールは瞬時にゲル状態となり、紡糸原液に用いた有機溶媒はゲル全体から均一に抜けていく。その後、紡糸された繊維は、湿熱延伸、洗浄、乾熱延伸の工程に付される。湿熱延伸時の延伸倍率は5倍以上、乾熱延伸時の延伸倍率は4倍以上、総延伸倍率は20倍以上とすることが好ましい。第2の方法としては、ポリビニルアルコール水溶液100質量部にほう酸を0.5〜5質量部加えた紡糸原液を、水酸化ナトリウムを溶解した凝固浴中へ紡糸する方法である。紡糸した繊維は、さらに中和、湿熱延伸、水洗、乾燥、乾熱延伸の工程に付される。湿熱工程時の延伸倍率は5倍以上、乾熱延伸時の延伸倍率は4倍以上、総延伸倍率は20倍以上とすることが好ましい。
ポリビニルアルコールの平均重合度は、特に限定されないが、1500〜3000であることが好ましく、1700〜2500であることがより好ましい。ポリビニルアルコールの平均重合度を1500〜3000の範囲とすることで、紡糸原液の溶液粘度を適切な値とすることができ、生産性よくビニロン繊維を作製することができる。
ビニロン繊維は、酸変性ポリオレフィン樹脂によって表面が被覆されていることが好ましい。このようにすることにより、共重合ポリプロピレン樹脂中でのビニロン繊維の分散性が向上すると推定され、結果として、樹脂組成物の引張強度が向上する。
酸変性ポリオレフィン樹脂は、酸成分が共重合されたポリオレフィンである。
酸変性ポリオレフィン樹脂のオレフィン成分は、1種であっても、2種以上であってもよい。オレフィン成分としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、2−ブテン、ペンテン、ヘキセン等が挙げられる。
酸成分としては、不飽和カルボン酸およびその無水物が挙げられ、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。酸成分の共重合量は、酸変性ポリオレフィン樹脂に対して、0.5〜15質量%とすることが好ましく、1〜10質量%とすることがより好ましく、1〜5質量%とすることがさらに好ましい。酸成分の共重合量を0.5〜15質量%の範囲とすることで、後述する酸変性ポリオレフィン樹脂を水性分散体とする工程において、容易に樹脂を水に分散させることができる。
酸変性ポリオレフィン樹脂には、エステル化合物を共重合することが好ましい。エステル化合物としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル等が挙げられる。エステル化合物の共重合量は、酸変性ポリオレフィン樹脂に対して、30質量%以下とすることが好ましく、10〜25質量%とすることがより好ましい。エステル化合物の共重合量を30質量%以下とすることで、共重合ポリプロピレン樹脂とビニロン繊維の相溶性を向上させ、樹脂組成物の引張強度を向上させることができる。
酸変性ポリオレフィン樹脂は、オレフィン成分と酸成分のモノマーがランダム共重合したものであることが好ましい。このような酸変性ポリオレフィン樹脂は、共重合ポリプロピレン樹脂とビニロン繊維の相溶性が高いので、樹脂組成物の引張強度を向上させることができる。
酸変性ポリオレフィン樹脂の190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートは、0.01〜10000g/10分であることが好ましく、0.1〜5000g/10分であることがより好ましく、0.1〜1000g/10分であることがさらに好ましく、0.5〜500g/10分であることが最も好ましい。メルトフローレートを0.01〜10000g/10分の範囲とすることで、ビニロン繊維の表面に、酸変性ポリオレフィン樹脂を均一に被覆することができる。
次に、本発明のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法について説明する。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法は、以下の工程から構成される。
工程(i):ビニロン繊維の表面に、酸変性ポリオレフィン樹脂を被覆する工程。
工程(ii):工程(i)で得られた酸変性ポリオレフィン樹脂によって表面が被覆されたビニロン繊維と共重合ポリプロピレン樹脂を混合する工程。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法は、以下の工程から構成される。
工程(i):ビニロン繊維の表面に、酸変性ポリオレフィン樹脂を被覆する工程。
工程(ii):工程(i)で得られた酸変性ポリオレフィン樹脂によって表面が被覆されたビニロン繊維と共重合ポリプロピレン樹脂を混合する工程。
工程(i)では、ビニロン繊維の表面に、酸変性ポリオレフィン樹脂を被覆して、酸変性ポリオレフィン樹脂によって表面が被覆されたビニロン繊維を得る。以下、酸変性ポリオレフィン樹脂によって表面が被覆されたビニロン繊維を、「処理済ビニロン繊維」と略称する場合があり、処理済ビニロン繊維から構成される繊維束を、「処理済ビニロン繊維束」と略称する場合がある。
酸変性ポリオレフィン樹脂は、1本ごとにビニロン繊維の表面に被覆してもよく、まとめてビニロン繊維の表面に被覆してもよい。大量に処理できることから、後者の方が好ましい。後者の場合、ビニロン繊維束を開繊させながらおこなうことが好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂をビニロン繊維の表面に被覆する方法としては、溶融した酸変性ポリオレフィン樹脂にビニロン繊維を通過させる方法、酸変性ポリオレフィン樹脂を含む表面処理液にビニロン繊維を浸漬させ乾燥させる方法(ディップ法)、前記表面処理液をビニロン繊維に噴霧して乾燥させる方法(スプレー法)等が挙げられる。中でも、ディップ法が、汎用性が高く好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂の表面処理液としては、有機溶剤溶液、水性分散体が挙げられる。有機溶剤溶液を用いると、有機溶剤の種類によっては、ビニロン繊維が溶解する場合がある。そのため、水性分散体を用いることが好ましい。
ディップ法において、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体を用いる場合、その固形分濃度は、2.0〜15質量%とすることが好ましく、2.5〜7質量%とすることがより好ましい。水性分散体の固形分濃度を2〜15質量%の範囲とすることで、酸変性ポリオレフィン樹脂をビニロン繊維の表面に均一に被覆させることができる。
ディップ法において、乾燥させる温度は、110〜140℃とすることが好ましく、120〜130℃とすることがより好ましい。また、乾燥時間は、30〜90分とすることが好ましく、45〜75分とすることがより好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂によるビニロン繊維の被覆量は、ビニロン繊維100質量部に対して、2.0〜15質量部とすることが好ましく、2.5〜7.0質量部とすることがより好ましい。被覆量を2.0〜15質量部の範囲とすることで、樹脂組成物の引張強度を向上させることができる。なお、被覆量の測定方法は後述の実施例において説明する。
酸変性ポリオレフィン樹脂は、例えば、塩基性化合物とともに、水性媒体中で加熱攪拌することにより、水性分散体とすることができる。水性分散体を作製する際、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等の界面活性剤類は、使用しないことが好ましい。
水性分散体を製造する際に用いる塩基性化合物は、揮発性の塩基性化合物が好ましい。中でも、アンモニアまたは沸点が250℃以下である有機アミン化合物がより好ましい。沸点が250℃を超えると乾燥によって有機アミン化合物を飛散させることが困難となり、樹脂組成物中に有機アミン化合物が残存する場合がある。
有機アミン化合物としては、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等が挙げられる。
水性分散体には、本発明の効果を損なわない範囲で、他の樹脂の水性分散体、シランカップリング剤、潤滑剤、帯電防止剤等を混合してもよい。他の樹脂としては、酢酸ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。
工程(ii)では、処理済ビニロン繊維と共重合ポリプロピレン樹脂を混合し、樹脂組成物を得る。この時、以下に説明するチョップドストランド法またはロングファイバー法を用いることが好ましい。
チョップドストランド法とは、処理済ビニロン繊維を所定長に裁断しチョップドストランドとし、それらを共重合ポリプロピレン樹脂と溶融混練する方法である。
チョップドストランドの長さは3〜15mmとすることが好ましく、4〜10mmとすることがより好ましい。チョップドストランドの長さを3〜15mmの範囲とすることで、溶融混練時の取り扱い性を損なうことなく、樹脂組成物中のビニロン繊維の平均繊維長を200μm〜15mmとすることができる。
チョップドストランドを共重合ポリプロピレン樹脂と溶融混練する方法としては、押出機を用いて溶融混練する方法等が挙げられる。溶融混練温度は、170〜230℃とすることが好ましい。
得られる樹脂組成物は、ストランド状に押し出し、冷却したのち、ストランドカッター等によりペレット状とすることができる。
ロングファイバー法とは、処理済ビニロン繊維束を溶融状態にある共重合ポリプロピレン樹脂内を通過させて、ビニロン繊維束を開繊させながら該共重合ポリプロピレン樹脂を含浸させ、次いで冷却し裁断する方法である。
共重合ポリプロピレン樹脂と処理済ビニロン繊維束の比率は、処理済ビニロン繊維束の引き取り速度と共重合ポリプロピレン樹脂の吐出量で調整することができる。ビニロン繊維束は、一定速度で引きながら溶融した共重合ポリプロピレン樹脂を通過させることが好ましい。一定速度で引き取ると、共重合ポリプロピレン樹脂とビニロン繊維の比率を制御しやすい。
処理済ビニロン繊維束は、ビニロン繊維束を開繊させながら、通過させることが好ましい。このような方法としては特に限定されないが、溶融した共重合ポリプロピレン樹脂を、引き抜き方向とは平行でない部分を有する非直線構造を通過させることが好ましい。非直線構造としては、例えば、蛇行構造、螺旋構造、ジグザグ構造、階段構造が挙げられ、中でも、蛇行構造が好ましい。非直線構造を通過させることによって、ビニロン繊維束を開繊させながら、さらに、ビニロン繊維束にしごきを与え、ビニロン繊維束中に含有する空気の排出を促進させ、溶融した共重合ポリプロピレン樹脂を効率よく含浸させることができる。
共重合ポリプロピレン樹脂の溶融温度は、200〜230℃であることが好ましい。溶融温度をこの範囲とすることで、適度な溶融粘度とすることができる。溶融温度が230℃を超えると、ビニロン繊維の融点である240℃に近づくため、樹脂組成物ペレットの製造中に、ビニロン繊維が溶融または切断され、処理済ビニロン繊維束を含浸ダイに通過させることができなくなる場合がある。
処理済ビニロン繊維束の繊維本数は、200〜10000本とすることが好ましく、275〜6000本とすることがより好ましく、350〜2000本とすることがさらに好ましい。処理済ビニロン繊維束の繊維本数を200〜10000本とすることで、取り扱い性を低下させずに、衝撃強度を向上させることができる。
ロングファイバー法においては、共重合ポリプロピレン樹脂と処理済ビニロン繊維とを含有する樹脂組成物をストランド状に押出した後、冷却、裁断の工程を経て、ペレット状とする。裁断機としては、ストランドカッター、ロータリーカッター、スライドカット式カッターが好ましく、ロータリーカッター、スライドカット式カッターがより好ましい。ロータリーカッター、スライドカット式カッターを用いて裁断することで共重合ポリプロピレン樹脂が処理済ビニロン繊維束から剥がれ落ちることを防止できる。
ロングファイバー法においては、前記のような製造プロセスに由来して、処理済ビニロン繊維の長さが、樹脂組成物ペレットの長さの90〜110%になる。すなわち、裁断後のペレットの長さとペレット中の処理済ビニロン繊維の平均繊維長は、ほぼ同じとなる。また、製造プロセスに由来して、処理済ビニロン繊維の長さ方向と、ペレットの長さ方向とが実質的に平行となる。ペレットの長さは、3mm〜30mmとすることが好ましく、10〜30mmとすることがより好ましい。
ロングファイバー法に用いる含浸装置の例を図1に示す。含浸装置は、芯鞘タイプの含浸ダイ3、およびアウトダイ5(非直線構造を有する貫通部)が接合部品6により連結されているものである。処理済ビニロン繊維束1が、含浸ダイ3内の空洞部8を通って、繊維束導入口4に導入される。それと同時に、溶融樹脂導入口2(取付部品7により溶融押出混練機の吐出側と連結されている。)から吐出される溶融状態の共重合ポリプロピレン樹脂を流入させて、処理済ビニロン繊維束1を共重合ポリプロピレン樹脂に接触させる。そして、アウトダイ5(非直線構造を有する貫通部)に通すことにより、処理済ビニロン繊維束1を、移動中心軸に対し徐々に偏心させ蛇行させ、ストランド状の共重合ポリプロピレン樹脂と処理済ビニロン繊維とを含有する樹脂組成物を作製することができる。
本発明の樹脂組成物の引張強度は、35MPa以上とすることが必要で、40MPa以上とすることが好ましい。引張強度を35MPa以上とすることで、脆性破壊しにくい成形体とすることができる。引張強度を35MPa以上とするためには、本発明の製造方法のように、酸変性ポリオレフィン樹脂によって、ビニロン繊維の表面を被覆した後、共重合ポリプロピレン樹脂と混合すればよい。この方法によれば、ビニロン繊維と共重合ポリプロピレン樹脂の分散性が向上し、従来は達成できなかった引張強度が得られる。
樹脂組成物の曲げ強度は、40MPa以上とすることが好ましく、荷重たわみ温度は、100℃以上とすることが好ましい。曲げ強度が40MPa以上、荷重たわみ温度が100℃であれば、通常の用途で十分に使用することができる。
また、比重は1.1以下とすることが好ましい。比重が1.1以下であれば、十分に軽量といえる。
本発明の樹脂組成物には、特性を損なわない範囲において、他の熱可塑性樹脂、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、難燃剤、難燃助剤、可塑剤等を添加してもよい。これらは、通常、溶融混練時または成形時に添加する。
本発明の樹脂組成物は、射出成形、圧縮成形、押出成形、トランスファー成形等公知の成形方法により、各種成形体に加工することができる。
本発明の樹脂組成物からなる成形体は、引張強度が高く、低比重であるため、自動車部品、自転車部品、家電部品、産業資材等の用途に好適に使用できる。自動車部品としては、バンパー、フロントフェンダー、リアフェンダー、ダッシュボード、ベースプレート、スイッチ類、サンバイザー、ラジエーター、コンソールボックス、キャニスタ等が挙げられる。自転車部品としては、ブレーキ類、レバー類、ライトカバー、ホイールカバー、サドルカバー、スタンド、かご、チャイルドシート、ヘルメット等が挙げられる。家電部品としては、リモコンの筐体、スイッチ類、携帯電話の筐体が挙げられる。産業資材としては、上下水道、ガス等の配管材料、ジオテキスタイル等の土壌補強材料、鉄道の枕木部分の補強材料、タンク等が挙げられる。また、本発明の樹脂組成物からなる成形体は、脆性破壊しにくいことから、破壊部位が鋭利な形状とはなりにくい。こうした特性を利用して、人体と接触する用途への使用も期待できる。
次に実施例に基づき、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
1.測定方法
(1)ビニロン繊維の引張強度、引張弾性率
JIS L−1013に従い、つかみ間隔20cm、引張速度50cm/分で測定した。
(1)ビニロン繊維の引張強度、引張弾性率
JIS L−1013に従い、つかみ間隔20cm、引張速度50cm/分で測定した。
(2)酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体の固形分濃度
酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体の質量と、この水性分散体を150℃で2時間乾燥した後の残存物の質量から、水性分散体の固形分濃度を求めた。
酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体の質量と、この水性分散体を150℃で2時間乾燥した後の残存物の質量から、水性分散体の固形分濃度を求めた。
(3)酸変性ポリオレフィン樹脂によるビニロン繊維の被覆量
ビニロン繊維束を長さ100mmに切り出し、ビニロン繊維1本あたりの質量を5回測定し、その平均値をW1gとした。一方、酸変性ポリオレフィン樹脂が表面に付着したビニロン繊維を熱風乾燥機中130℃で24時間乾燥し、そのビニロン繊維1本あたりの質量を5回測定し、その平均値をW2gとした。被覆量(質量%)は次式で求めた。
被覆量(質量%)=(W2−W1)/W1×100
ビニロン繊維束を長さ100mmに切り出し、ビニロン繊維1本あたりの質量を5回測定し、その平均値をW1gとした。一方、酸変性ポリオレフィン樹脂が表面に付着したビニロン繊維を熱風乾燥機中130℃で24時間乾燥し、そのビニロン繊維1本あたりの質量を5回測定し、その平均値をW2gとした。被覆量(質量%)は次式で求めた。
被覆量(質量%)=(W2−W1)/W1×100
(4)ポリプロピレン樹脂組成物の引張強度、引張降伏伸度
ポリプロピレン樹脂組成物を十分に乾燥した後、射出成形機(東芝機械社製:EC−100型)を用いて射出成形をおこない、縦8mm×横10mm×厚み4mmの成形片を作製した。シリンダ温度は190℃、金型温度は40℃、射出時間は30秒、冷却時間は40秒であった。
得られた成形片を用いて、ISO527に従って測定した。
また、応力−ひずみ曲線から、破壊の状態を以下の基準で評価した。
脆性破壊:降伏点に達するまでに破壊したもの、または、降伏点に達すると同時に破壊したもの。
靭性破壊:降伏点に達してから破壊したもの。
ポリプロピレン樹脂組成物を十分に乾燥した後、射出成形機(東芝機械社製:EC−100型)を用いて射出成形をおこない、縦8mm×横10mm×厚み4mmの成形片を作製した。シリンダ温度は190℃、金型温度は40℃、射出時間は30秒、冷却時間は40秒であった。
得られた成形片を用いて、ISO527に従って測定した。
また、応力−ひずみ曲線から、破壊の状態を以下の基準で評価した。
脆性破壊:降伏点に達するまでに破壊したもの、または、降伏点に達すると同時に破壊したもの。
靭性破壊:降伏点に達してから破壊したもの。
(5)曲げ強度
(4)で作製した成形片を用いて、ISO178に従って測定した。
(4)で作製した成形片を用いて、ISO178に従って測定した。
(6)シャルピー衝撃強度
(4)で作製した成形片にノッチを付けたものを用いて、ISO179に従って測定した。
(4)で作製した成形片にノッチを付けたものを用いて、ISO179に従って測定した。
(7)荷重たわみ温度
(4)で作製した成形片を用いて、ISO75に従って荷重0.45MPa下で測定した。
(4)で作製した成形片を用いて、ISO75に従って荷重0.45MPa下で測定した。
(8)比重
電子比重計(京都電子工業社製)を用いて、温度20℃で測定した。
電子比重計(京都電子工業社製)を用いて、温度20℃で測定した。
(9)成形片中のビニロン繊維の平均繊維長
長さ方向に切断した成形片を、試薬染料ネオカルミン中にて80℃×10分間ボイル処理し、ビニロン繊維を染色した。切断面に露出したビニロン繊維の長さを、マイクロスコープを用いて100点測定し、平均の長さを求めた。
長さ方向に切断した成形片を、試薬染料ネオカルミン中にて80℃×10分間ボイル処理し、ビニロン繊維を染色した。切断面に露出したビニロン繊維の長さを、マイクロスコープを用いて100点測定し、平均の長さを求めた。
(10)融点
示差走査熱量測定装置(パーキンエルマー社製、DSC7)を用いて、窒素気流中、20℃から昇温速度20℃/分で、280℃まで昇温し、昇温時の融解温度のピークを融点とした。
示差走査熱量測定装置(パーキンエルマー社製、DSC7)を用いて、窒素気流中、20℃から昇温速度20℃/分で、280℃まで昇温し、昇温時の融解温度のピークを融点とした。
2.使用材料
<共重合ポリプロピレン樹脂>
(1)プロピレン・エチレンブロック共重合体(A−1)
プライムポリマー社製、J762HP、融点165℃、エチレン含有量=10質量%、メルトフローレート=12g/10分
(2)プロピレン・エチレンランダム共重合体(A−2)
日本ポリプロ社製、ノバテックBC06C、融点140℃、エチレン含有量=5質量%、メルトフローレート=60g/10分
<共重合ポリプロピレン樹脂>
(1)プロピレン・エチレンブロック共重合体(A−1)
プライムポリマー社製、J762HP、融点165℃、エチレン含有量=10質量%、メルトフローレート=12g/10分
(2)プロピレン・エチレンランダム共重合体(A−2)
日本ポリプロ社製、ノバテックBC06C、融点140℃、エチレン含有量=5質量%、メルトフローレート=60g/10分
<ビニロン繊維束>
重合度2500のポリビニルアルコールの12質量%の水溶液100質量部にほう酸を3質量部加えた紡糸原液を、ノズルから10〜25℃のアルカリ性凝固浴に紡糸した。中和した後、5倍に湿式延伸し、水洗、乾燥し、230℃で5倍に乾熱延伸し(総延伸倍率25倍)、所定の本数を束ねながら捲き取り、ビニロン繊維束(B−1)を得た。
重合度2500のポリビニルアルコールの12質量%の水溶液100質量部にほう酸を3質量部加えた紡糸原液を、ノズルから10〜25℃のアルカリ性凝固浴に紡糸した。中和した後、5倍に湿式延伸し、水洗、乾燥し、230℃で5倍に乾熱延伸し(総延伸倍率25倍)、所定の本数を束ねながら捲き取り、ビニロン繊維束(B−1)を得た。
ビニロン繊維束の製造条件を表1に示すように変更した以外は、ビニロン繊維束(B−1)を作製した時と同様の操作をおこなって、ビニロン繊維束(B−2)〜(B−4)を得た。
表1に、ビニロン繊維束の製造条件およびその特性値を示す。
<表面処理液>
(1)酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体(C−1)
ヒーター付の密閉できる耐圧ガラス容器(内容量1L)に、無水マレイン酸とアクリル酸エチルとエチレンがランダム共重合されている酸変性ポリオレフィン(アルケマ社製ボンダイン、無水マレイン酸2.5質量%、アクリル酸エチル15質量%)60g、イソプロパノール60g、トリエチルアミン4.5gおよび蒸留水175.5gを投入し、300rpmで10分間攪拌した。続いて、加熱し、系内温度が140〜145℃に到達してからさらに20分間攪拌した。その後、攪拌しながら室温まで水冷し、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)を用いて加圧ろ過し(0.2MPa)、固形分濃度25質量%の水性分散体を得た。その後、固形分濃度が10質量%となるように水で希釈したものを(C−1)とした。
(1)酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体(C−1)
ヒーター付の密閉できる耐圧ガラス容器(内容量1L)に、無水マレイン酸とアクリル酸エチルとエチレンがランダム共重合されている酸変性ポリオレフィン(アルケマ社製ボンダイン、無水マレイン酸2.5質量%、アクリル酸エチル15質量%)60g、イソプロパノール60g、トリエチルアミン4.5gおよび蒸留水175.5gを投入し、300rpmで10分間攪拌した。続いて、加熱し、系内温度が140〜145℃に到達してからさらに20分間攪拌した。その後、攪拌しながら室温まで水冷し、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)を用いて加圧ろ過し(0.2MPa)、固形分濃度25質量%の水性分散体を得た。その後、固形分濃度が10質量%となるように水で希釈したものを(C−1)とした。
(2)エポキシ樹脂系水性分散体(C−2)
DIC社製ディックファインEN−0270、固形分濃度20質量%
固形分濃度が10質量%となるように水で希釈したものを(C−2)とした。
DIC社製ディックファインEN−0270、固形分濃度20質量%
固形分濃度が10質量%となるように水で希釈したものを(C−2)とした。
(3)ポリビニルアルコール水溶液(C−3)
日本酢ビ・ポバール社製JL05EY
固形分濃度10質量%となるように水に溶解したものを(C−3)とした。
日本酢ビ・ポバール社製JL05EY
固形分濃度10質量%となるように水に溶解したものを(C−3)とした。
(4)ポリウレタン水性分散体(C−4)
日華化学社製ネオステッカー700、固形分濃度37質量%
固形分濃度が10質量%となるように水で希釈したものを(C−4)とした。
日華化学社製ネオステッカー700、固形分濃度37質量%
固形分濃度が10質量%となるように水で希釈したものを(C−4)とした。
(5)酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体(C−5)
ヒーター付の密閉できる耐圧ガラス容器(内容量1L)に、無水マレイン酸とアクリル酸エチルとエチレンがランダム共重合されている酸変性ポリオレフィン(アルケマ社製ボンダイン、無水マレイン酸2.5質量%、アクリル酸エチル4.5質量%)60g、イソプロパノール60g、トリエチルアミン4.5gおよび蒸留水175.5gを投入し、300rpmで10分間攪拌した。続いて、加熱し、系内温度が140〜145℃に到達してからさらに20分間攪拌した。その後、攪拌しながら室温まで水冷し、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)を用いて加圧ろ過し(0.2MPa)、固形分濃度25質量%の水性分散体を得た。その後、固形分濃度が10質量%となるように水で希釈したものを(C−5)とした。
ヒーター付の密閉できる耐圧ガラス容器(内容量1L)に、無水マレイン酸とアクリル酸エチルとエチレンがランダム共重合されている酸変性ポリオレフィン(アルケマ社製ボンダイン、無水マレイン酸2.5質量%、アクリル酸エチル4.5質量%)60g、イソプロパノール60g、トリエチルアミン4.5gおよび蒸留水175.5gを投入し、300rpmで10分間攪拌した。続いて、加熱し、系内温度が140〜145℃に到達してからさらに20分間攪拌した。その後、攪拌しながら室温まで水冷し、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)を用いて加圧ろ過し(0.2MPa)、固形分濃度25質量%の水性分散体を得た。その後、固形分濃度が10質量%となるように水で希釈したものを(C−5)とした。
<処理済ビニロン繊維束>
ビニロン繊維束(B−1)を、開繊させながら、水性分散体(C−1)に通過させた。その後、130℃で乾燥させ、再び束ねながら巻き取り、処理済ビニロン繊維束(D−1)を得た。(B−1)100質量部に対する酸変性ポリオレフィン樹脂の被覆量は、3.8質量部であった。
ビニロン繊維束(B−1)を、開繊させながら、水性分散体(C−1)に通過させた。その後、130℃で乾燥させ、再び束ねながら巻き取り、処理済ビニロン繊維束(D−1)を得た。(B−1)100質量部に対する酸変性ポリオレフィン樹脂の被覆量は、3.8質量部であった。
ビニロン繊維束、表面処理液および被覆量を表2に示すように変更する以外は、処理済ビニロン繊維束(D−1)を作製した時と同様の操作をおこなって、処理済ビニロン繊維束(D−2)〜(D−10)を得た。
表2に、用いたビニロン繊維束と表面処理液およびその被覆量を示す。
実施例1
二軸押出機(池貝製作所製:PCM−30)の先端に、図1の含浸ダイ(アウトダイ5に蛇行構造を有する。)を取り付け、長繊維樹脂含浸装置とした。共重合ポリプロピレン(A−1)を長繊維樹脂含浸装置の主ホッパーに供給し、230℃で溶融した。含浸ダイに貫通させてあった処理済ビニロン繊維束(D−1)と、溶融した(Aー1)とを含浸ダイ内で接触させた。100質量部の(A−1)に対して、(D−1)が11質量部になるように調整し、押出し、2個の回転するロールの間を通して引き取った。その後、ロータリーカッターで裁断し、ペレット長が10mmである共重合ポリプロピレン樹脂組成物を得た。
二軸押出機(池貝製作所製:PCM−30)の先端に、図1の含浸ダイ(アウトダイ5に蛇行構造を有する。)を取り付け、長繊維樹脂含浸装置とした。共重合ポリプロピレン(A−1)を長繊維樹脂含浸装置の主ホッパーに供給し、230℃で溶融した。含浸ダイに貫通させてあった処理済ビニロン繊維束(D−1)と、溶融した(Aー1)とを含浸ダイ内で接触させた。100質量部の(A−1)に対して、(D−1)が11質量部になるように調整し、押出し、2個の回転するロールの間を通して引き取った。その後、ロータリーカッターで裁断し、ペレット長が10mmである共重合ポリプロピレン樹脂組成物を得た。
実施例2〜5、8〜11、比較例1、2、4〜7
原料配合比および被覆量を表3、4のように変更する以外は、実施例1と同様にしてポリプロピレン樹脂組成物を得た。
原料配合比および被覆量を表3、4のように変更する以外は、実施例1と同様にしてポリプロピレン樹脂組成物を得た。
実施例6
処理済ビニロン繊維束(D−1)を3mmの長さに裁断したチョップドストランドを、共重合ポリプロピレン樹脂(A−1)とドライブレンドした。その後、それらを二軸押出機(東芝機械社製:TEM26SS)に供給し、押出温度230℃で押し出し、ストランドカッターを用いて、共重合ポリプロピレン樹脂組成物を得た。
処理済ビニロン繊維束(D−1)を3mmの長さに裁断したチョップドストランドを、共重合ポリプロピレン樹脂(A−1)とドライブレンドした。その後、それらを二軸押出機(東芝機械社製:TEM26SS)に供給し、押出温度230℃で押し出し、ストランドカッターを用いて、共重合ポリプロピレン樹脂組成物を得た。
実施例7
処理済ビニロン繊維束(D−1)を7mmの長さに裁断する以外は、実施例6と同様の操作をおこなって共重合ポリプロピレン樹脂組成物を得た。
処理済ビニロン繊維束(D−1)を7mmの長さに裁断する以外は、実施例6と同様の操作をおこなって共重合ポリプロピレン樹脂組成物を得た。
比較例3
共重合ポリプロピレン樹脂(A−1)を長繊維樹脂含浸装置の主ホッパーに供給し、230℃で溶融した。含浸ダイに貫通させてあった処理済ビニロン繊維束(D−1)を、溶融した(A―1)に通過させ、共重合ポリプロピレン樹脂100質量部に対してビニロン繊維が110質量部になるように調整し、ダイスから押し出した。得られたストランドは、ビニロン繊維の表面に共重合ポリプロピレン樹脂が塊状に付着しており、ペレット化できなかった。
共重合ポリプロピレン樹脂(A−1)を長繊維樹脂含浸装置の主ホッパーに供給し、230℃で溶融した。含浸ダイに貫通させてあった処理済ビニロン繊維束(D−1)を、溶融した(A―1)に通過させ、共重合ポリプロピレン樹脂100質量部に対してビニロン繊維が110質量部になるように調整し、ダイスから押し出した。得られたストランドは、ビニロン繊維の表面に共重合ポリプロピレン樹脂が塊状に付着しており、ペレット化できなかった。
比較例8
原料配合比を表4のように変更する以外は、実施例7と同様の操作をおこなって共重合ポリプロピレン樹脂組成物を得た。
原料配合比を表4のように変更する以外は、実施例7と同様の操作をおこなって共重合ポリプロピレン樹脂組成物を得た。
表3、4に、原料配合比、被覆量、ビニロン繊維の引張強度および共重合ポリプロピレン樹脂組成物の特性値を示す。
実施例1〜11は、ビニロン繊維の表面に、酸成分とオレフィン成分のモノマーがランダム共重合されている酸変性ポリオレフィン樹脂が被覆されており、共重合ポリプロピレン樹脂とビニロン繊維の配合比が適切であったため、成形体の引張強度が高く、脆性破壊しにくいポリプロピレン樹脂組成物であった。また、引張伸度を測定した成形片の破壊状態はすべて靭性破壊であった。
比較例1、2は、ビニロン繊維を使用しなかったか、ビニロン繊維の含有量が少なかったため、引張強度が低いものであった。
比較例3では、ビニロン繊維の含有量が多くペレット化できなかったため、評価しなかった。
比較例4〜6は、酸変性ポリオレフィン樹脂ではない樹脂によってビニロン繊維を被覆していたため、引張強度が低かった。
比較例7、8では、ビニロン繊維を酸変性ポリオレフィン樹脂で被覆せずに用いたため、引張強度が低かった。
比較例3では、ビニロン繊維の含有量が多くペレット化できなかったため、評価しなかった。
比較例4〜6は、酸変性ポリオレフィン樹脂ではない樹脂によってビニロン繊維を被覆していたため、引張強度が低かった。
比較例7、8では、ビニロン繊維を酸変性ポリオレフィン樹脂で被覆せずに用いたため、引張強度が低かった。
1 処理済ビニロン繊維束
2 溶融樹脂流入口
3 含浸ダイ
4 繊維束導入口
5 アウトダイ(蛇行貫通部)
6 接合部品
7 取付部分
8 空洞部
9 溶融樹脂の流れ
2 溶融樹脂流入口
3 含浸ダイ
4 繊維束導入口
5 アウトダイ(蛇行貫通部)
6 接合部品
7 取付部分
8 空洞部
9 溶融樹脂の流れ
Claims (9)
- 共重合ポリプロピレン樹脂100質量部と、ビニロン繊維5〜100質量部を含有し、引張強度が35MPa以上であるポリプロピレン樹脂組成物。
- 以下の工程からなる請求項1記載のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法。
工程(i):ビニロン繊維の表面に、酸変性ポリオレフィン樹脂を被覆する工程。
工程(ii):工程(i)で得られた酸変性ポリオレフィン樹脂によって表面が被覆されたビニロン繊維と共重合ポリプロピレン樹脂を混合する工程。 - 酸変性ポリオレフィン樹脂が、酸成分が共重合されたポリオレフィンであって、酸成分とオレフィン成分がランダム共重合している請求項2記載のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法。
- 工程(i)において、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体を用いて、ビニロン繊維の表面に酸変性ポリオレフィン樹脂を被覆することを特徴とする請求項2または3記載のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法。
- 工程(ii)において、工程(i)で得られた表面が被覆されたビニロン繊維を構成繊維とするビニロン繊維束を、溶融状態にある共重合ポリプロピレン樹脂内を通過させることにより、ビニロン繊維と共重合ポリプロピレン樹脂を混合することを特徴とする請求項2〜4いずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法。
- 溶融状態にある共重合ポリプロピレン樹脂内を通過させることにより、ビニロン繊維束を開繊させながら、共重合ポリオレフィン樹脂を含浸させる請求項5記載のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法。
- 酸変性ポリオレフィン樹脂が無水マレイン酸とアクリル酸エチルを共重合したポリエチレンである請求項2〜6いずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1記載のポリプロピレン樹脂組成物を成形してなる成形体。
- 自動車部品、自転車部品、家電部品、または産業資材の用途に用いる請求項8記載の成形体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2011285994A JP2012149247A (ja) | 2010-12-27 | 2011-12-27 | ポリプロピレン樹脂組成物、およびその製造方法、ならびにそれを成形してなる成形体 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2018515643A (ja) * | 2015-04-27 | 2018-06-14 | ボレアリス エージー | ポリプロピレン複合材 |
-
2011
- 2011-12-27 JP JP2011285994A patent/JP2012149247A/ja active Pending
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