JP2012148619A - 車両用エンジンフード - Google Patents
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Abstract
【課題】軽量で高剛性を有すると共に、交通事故時における歩行者の頭部障害を軽減することも可能となる車両用エンジンフードを提供すること。
【解決手段】台形形状断面をもつと共に、車両前後方向において該台形形状の頂部の幅が漸次変化する突条の複数の突条のうちの一つを、中央骨部14として中心線上に配置し、残りの突条を、該中央骨部14の両側に、所定距離を隔てて、前記中心線に対して傾斜した形態とされた側方骨部16として配置したアルミニウム合金製のインナーパネル10と、アルミニウム合金製のアウターパネルとを閉断面構造において重ね合わせて、車両用エンジンフードを構成した。
【選択図】図1
【解決手段】台形形状断面をもつと共に、車両前後方向において該台形形状の頂部の幅が漸次変化する突条の複数の突条のうちの一つを、中央骨部14として中心線上に配置し、残りの突条を、該中央骨部14の両側に、所定距離を隔てて、前記中心線に対して傾斜した形態とされた側方骨部16として配置したアルミニウム合金製のインナーパネル10と、アルミニウム合金製のアウターパネルとを閉断面構造において重ね合わせて、車両用エンジンフードを構成した。
【選択図】図1
Description
本発明は、自動車のエンジンフードに関し、特に、歩行者との衝突時における歩行者保護に良好に対応し得ると共に、軽量で、高剛性を備えた自動車のエンジンフードに関するものである。
一般に、自動車のエンジンフードは、アウターパネルと、このアウターパネルの補強部材として、アウターパネルの内面側に重ね合わされるようにして設けられ、エンジンフードの骨格を形成して、エンジンフードの剛性を確保するインナーパネルとから、構成されている。
そして、このような構成とされたエンジンフードにおいて、高剛性のエンジンフードを得るためには、エンジンフードを最も効果的に補強し得るインナーパネルの構成として、複数の補強梁を格子状に配置する構造が、考えられる。
しかしながら、近年、交通事故時における歩行者保護が強く要請されている状況下において、自動車が歩行者と衝突した際に、歩行者の頭部がエンジンフードに衝突することが少なくなく、これが致命傷になる恐れがあることが認められている。このため、上記のように、インナーパネルにおいて複数の補強梁を格子状に配置する構造とした場合には、かかる複数の補強梁の交差部が、エンジンフードの他の部位に比べて著しく高剛性となるために、自動車が歩行者と衝突したときに、歩行者が前記交差部により強い衝撃を受け易くなるといった問題を惹起することとなるのである。
そこで、そのような問題に対処すべく、特開2001−151159号公報(特許文献1)においては、アウターパネルに接合する補強パネルに多数のビードを配置して、曲げ剛性が縁部から中央部に向かって連続的に増加するようにして、実質的に同一の剛性を持たせて、局部的な高剛性部位を無くし、エンジンフードの如何なる部位への頭部衝突の場合にも、常に同一の衝撃を受けるようにしたエンジンフードが、明らかにされている。
また、国際公開:WO02/47961号公報(特許文献2)においては、アウターとインナーとが空間を介した閉断面構造をとって結合されたパネル構造体であって、インナーパネルを、インナー全面にわたって複数本の波形ビードが略平行に設けられた波形形状を呈するように構成して、その断面形状が、略頭部外径に近い波長のサイン曲線、サインn乗曲線、又はスプライン曲線である波形フード構造とされているエンジンフードが、明らかにされている。このようなエンジンフードによれば、エンジンフードへの衝突位置によらず、均一で優れた頭部衝突耐性を実現することが出来、且つ張り剛性等も高剛性化することが出来るとされている。
ところで、自動車の乗員を保護するといった観点からすると、エンジンフードには高い剛性が必要とされるのであるが、近年、環境問題の面から、更には燃費を向上させるためにも、より軽量化が求められており、このため、エンジンフードをアルミニウム合金板で形成することが検討されている。しかしながら、アルミニウム合金板は、これまで一般的に自動車用エンジンフードの材料として用いられていた鋼板と比べて大きく軽量化出来るものの、強度や成形性の点において性能が低く、従来の構造を単にアルミニウム合金板で構成しただけでは、充分な剛性と歩行者保護特性(HIC値の軽減)の両方を得ることが出来ないものであった。
また、歩行者保護の観点においては、インナーパネルとエンジン等のボンネット内の部品とが接触すると、歩行者保護特性が悪化する(HIC値が大きくなる)ところから、それらを接触させない、或いは出来るだけそれらの接触を遅らせる必要がある。しかし、インナーパネルをエンジン等のボンネット内部品に接触させないようにするためには、インナーパネルの位置をエンジン等のボンネット内部品よりも充分に高くする必要があり、そうすると、アウターパネルの位置も高くなってしまい、その結果、車両デザインに制限が加わることに直結することとなる。
そこで、軽量で、高剛性を備えると共に、エンジンフードのインナー側とエンジンとの間の隙間を小さくした場合にあっても、交通事故等の衝突時における歩行者の頭部障害値を有利に軽減し、衝突時の歩行者保護に充分に対応することの出来る車両用エンジンフードが求められてきているのである。
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、軽量で、高剛性を有すると共に、交通事故時における歩行者の頭部障害値を軽減することも可能となる車両用エンジンフードを提供することにある。
そして、本発明にあっては、そのような課題を解決すべく、車両用エンジンフードの構造についてシミュレーションによる検討を鋭意重ねた結果として為された物であって、その要旨とするところは、アルミニウム合金製のアウターパネルとアルミニウム合金製のインナーパネルとを閉断面構造において重ね合わせてなる構造の車両用エンジンフードにして、前記インナーパネルからエンジン側に台形形状断面をもって突出して、車両前後方向に延びる、該突出した台形形状の頂部の幅が車両前後方向において漸次変化する突条の複数が、該インナーパネルに形成され、且つ該インナーパネルの車両前後方向に延びる中心線上に、該複数の突条のうちの一つが中央骨部として配置されていると共に、残余の突条が、側方骨部として、該中央骨部の両側に、それぞれ所定の間隔を隔てて該インナーパネルの車両前後方向に延びる中心線に対して傾斜した形態において配置されていることを特徴とする車両用エンジンフードにある。
なお、このような本発明に従う車両用エンジンフードの好ましい態様の一つによれば、前記複数の突条は、それぞれ、その台形形状の頂部の幅が車両前方側から車両後方側に向かって漸次増大する形態において、形成されることとなり、更に別の好ましい態様の一つによれば、前記複数の突条は、前記車両前後方向における頂部の幅の変化形態が交互に逆方向となるように形成されることとなる。
また、かかる本発明に従う車両用エンジンフードの望ましい態様の一つによれば、前記中央骨部に対して、前記側方骨部は、5°〜45°の傾斜角度において配置されることとなる。
さらに、本発明に従う車両用エンジンフードの別の望ましい態様の一つにあっては、前記複数の突条は、5個、7個又は9個の個数において形成されることとなる。
このように、本発明に従う車両用エンジンフードによれば、アルミニウム合金製のアウターパネルとアルミニウム合金製のインナーパネルとが閉断面構造において重ね合わせてなる構造とされているところから、エンジンフードの重量を、従来の鋼鉄製のエンジンフードよりも効果的に軽量化することが出来ると共に、慣性マスの低下により衝撃吸収性が悪化してしまうようなことも有利に抑制することが可能となる。
そして、そのような本発明に従う車両用エンジンフードにおいては、それを構成するアルミニウム合金製のインナーパネルに対して、かかるインナーパネル側からエンジン側に向かって台形形状断面(断面ハット形状)をもって突出し、車両前後方向に延びる、該突出した台形形状の頂部の幅が車両前後方向において漸次変化する突条が、骨部として、複数形成されているところから、エンジンフードの剛性を、効果的に高めることが可能となるのである。
しかも、かかるインナーパネルに形成された複数の突条が、該インナーパネルの車両前後方向に延びる中心線上に、該複数の突条のうちの一つが中央骨部として配置されていると共に、残余の突条が、かかる中央骨部の両側に、それぞれ所定の間隔を隔てて、前記中心線に対して傾斜した形態において配置されているところから、車両前後方向の軸周りに変形し難くすることが出来、以て、交通事故時における歩行者の頭部衝突によるエンジンフードの車両幅方向に対する変形を、より効果的に抑制することが可能となる特徴がある。
このように、本発明に従う車両用エンジンフードによれば、軽量で、高い剛性を有すると共に、効率的に衝撃を吸収することが可能となり、交通事故時における歩行者の頭部傷害値を有利に軽減することが出来ることとなるのである。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
先ず、図1には、本発明に従う車両用エンジンフードを、アウターパネルと共に構成するインナーパネルの一実施形態が、平面図の形態において、概略的に示されている。そこにおいて、インナーパネル10には、その板状のパネル部材12の中央部位に、所定高さで突出する突条である中央骨部14が、かかるインナーパネル10の車両前後方向に延びる中心線20上に配置されると共に、その中央骨部14の両側に、所定高さで突出する突条である側方骨部16の複数(ここでは、片側で3個、合計で6個)が配置されて、構成されている。
より詳細には、インナーパネル10の全体形状を与えるパネル部材12は、所定のアルミニウム合金板に、公知のプレス加工等を施すことによって、その車両の前後方向に相当する図の上下方向における上辺及び下辺が、それぞれ、車両前方となる下方に凸なる略円弧形状を呈すると共に、その右辺及び左辺が、それぞれ車両前後方向に直線状となるように一体的に形成されて、構成されている。なお、かかるインナーパネル10(パネル部材12)や、このインナーパネル10の上に重ね合わされる、図示しないアウターパネルを形成するアルミニウム材料としては、公知の各種のアルミニウム合金が適宜に選択されて、用いられることとなるが、それらの中でも、JIS A3000系、A5000系、A6000系の各種のアルミニウム合金が、好適に用いられることとなる。
そして、そのようなパネル部材12の中央部位には、パネル部材12(インナーパネル10)からエンジン側に向かって所定高さをもって突出し、車両前後方向に所定長さをもって延びる、図2や図3に示される如き、その断面形状が台形形状(断面ハット形状)を呈する突条の複数が、中央骨部14や側方骨部16として、かかるパネル部材12と一体的に形成されている。なお、ここでは図示されていないが、通常、エンジンフードのインナーパネルには、剛性の確保や他部品とのシール性の確保を目的として、エンジン側に向かって所定高さで突出する骨部が、その外周部分を1周するように形成されており、そのような凸部(骨部)が形成される部位を外周部と呼称し、そしてそのような外周部の内側を、インナーパネルの内側部と称している。
また、かかる中央骨部14や側方骨部16を構成する突条は、図3に示される如く、その台形形状(ハット形状)の頂部の幅(W)が、車両前後方向において漸次変化するようにされており、ここでは、車両の前側から後側に向かって、頂部の幅(W)が、次第に幅広となるようにされている。なお、かかる頂部の幅(W)は、好ましくは20mm以上、150mm以下とされることとなる。これは、幅(W)を20mm未満とした場合には、ハット形状の高さ(h)の寸法にもよるが、プレス加工等によって、ハット形状の突条を成形する際に、割れやしわ等の成形不良が発生する可能性が高くなってしまうからである。一方、かかる幅(W)を150mmより大きくした場合には、歩行者の頭部(衝突試験の際のインパクター)が衝突した際に、ハット形状部が局部的に変形、即ち、断面で考えると、インパクター衝突部においてハット形状が開くように変形し、ハット形状の底面が折れるように変形する恐れがあり、そしてそれによって、初期の慣性マスが小さくなってしまい、優れた歩行者保護特性を得られないからである。
なお、それらの突条(中央骨部14や側方骨部16)の高さ(h)は、好ましくは15mm以上、35mm以下とされることとなる。これは、高さ(h)を15mm未満とした場合には、ハット形状部の断面二次モーメントが低くなってしまい、歩行者の頭部(衝突試験の際のインパクター)が衝突した際、その衝突部位が折れる等、局所的な変形が発生してしまい、初期の慣性マスが小さくなってしまうのである。一方、かかる高さ(h)を35mmより高くした場合には、ハット形状部がエンジン等と早く衝突し、第二次ピークが大きくなり、優れた歩行者保護特性を得られなくなるからである。更に、かかるハット形状の側壁の角度(θ)は、好ましくは、底面に対して110°以上、135°以下とされることとなる。即ち、θが110°未満とされた場合には、ハット形状の他の寸法(ハットの高さ:h)にもよるが、プレス加工等によりハット形状を成形する際に、割れやしわ等の成形不良が発生する可能性が高くなってしまうのである。一方、θが135°より大きくされた場合には、インパクター(歩行者の頭部)が衝突した際に、ハット形状が局部的に変形、即ち、断面で考えると、インパクター衝突部においてハット形状が開くように変形する恐れがあり、そしてそれによって、初期の慣性マスが小さくなり、優れた歩行者保護特性を得られなくなってしまうのである。
そして、そのような形状とされた中央骨部14は、その突条の長さ方向に延びる中心線22がインナーパネル10(パネル部材12)の中心線20と重なるように、配置されていると共に、その中央骨部14の車両幅方向の両側には、所定の間隔を隔てて、中央骨部14と同様の、断面ハット形状を呈する突条にて構成された側方骨部16が、それぞれ3個ずつ、その中心線がインナーパネル10の中心線20に対して傾斜した形態において、配置されている。また、そのような側方骨部16の中心線24の傾斜角度は、ここでは、中央骨部14から離れるほど、インナーパネル10の中心線20より大きな傾斜角度とされることによって、骨部全体が、車両前側から後側に向かって広がるような角度配置とされている。なお、かかる側方骨部16の中心線24の、インナーパネル10の中心線20に対する傾斜角度としては、好ましくは5°以上、45°以下の角度が採用され、より好ましくは15°以上、40°以下の角度が採用されることとなる。このように、ハット形状の突条(側方骨部16)の各々の中心線24を、車両前後方向に対して5°以上の角度にて傾斜させることにより、それら突条によって車両幅方向における強度も有利に向上されて、車両前後方向の軸周りに折れ難くすることが可能となり、その結果、インナーパネル10の車両幅方向に対する変形を、より抑制することが可能となるのである。即ち、かかる中心線24の傾斜角度が5度未満となる場合には、そのような効果が発揮され得なくなる一方、傾斜角度を45°より大きくした場合には、中央骨部14の両側に配置される側方骨部16の配置数が制限されてしまうこととなり、そのため、充分な歩行者保護特性を発揮できなくなるのである。
なお、インナーパネル10(パネル部材12)の内側部のうち、隣り合う中央骨部14や側方骨部16との間の部分が、アウターパネルと接着される接着面18となるのであるが、その寸法については、好ましくは、車両幅方向で30mm以上、150mm以下とされることとなる。これは、その部分の幅が30mm未満とされた場合には、接着剤を塗布するための台座が形成出来なくなるためであり、一方、その幅を150mmより大きくした場合には、中央骨部14や側方骨部16の間隔が広くなりすぎ、インパクターが衝突した時に、それら骨部14,16から受ける抗力が小さくなってしまい、充分な歩行者保護特性が得られなくなってしまうのである。
そして、このような構成とされたインナーパネル10が、かかるインナーパネル10が採用される自動車のデザインに応じた、ここでは図示しない、所定形状に形成されたアルミニウム合金材料製のアウターパネルと重ね合わされて、それらパネルが、閉断面構造を呈するように所定方式をもって結合されることによって、車両用エンジンフードが構成されることとなる。なお、そのようなインナーパネル10とアウターパネルとの結合は、例えば、インナーパネル10のアウターパネルと対向する面において、インナーパネル10のエンジン側に突出した突条以外の部分(中央骨部14や側方骨部16以外の部分)、換言すれば、インナーパネル10のアウターパネル側に突出した部分において、インナーパネル10とアウターパネルとを接着剤等によって接合することによって、それらを結合、一体化させることが出来る。
このように、本発明に従う構造とされたインナーパネル10を採用した車両用エンジンフードによれば、アルミニウム合金板にて形成されたインナーパネル10とアウターパネルとが重ね合わされて、閉断面構造を呈するように構成されているところから、従来の鉄製のエンジンフードと比して、その重量を有利に軽量化することが出来ると共に、高い剛性を効果的に発揮することが可能となり、その結果、交通事故時における歩行者の頭部傷害値をも、有利に軽減することが出来ることとなるのである。
すなわち、歩行者保護において、衝突時に頭部がぶつかる部位の衝撃吸収性能を向上させるためには、当該部分の慣性マスを大きくすることが、最も効果的である。この慣性マスとは、歩行者保護試験におけるインパクターがフードに衝突した際、インパクターは、フードから慣性の法則により抵抗を受けるのであるが、その慣性に影響を与える質量を、一般的に慣性マスと称している。そして、従来の鋼板にて構成されたエンジンフードの場合には、インナーパネルにおけるアウターパネルと接着する箇所のうち、不要部分はトリムして(切り欠いて)、軽量化されることが多いのであるが、本発明のように、アルミニウム合金にてエンジンフードを構成した場合には、密度が鋼板よりも大幅に低いため、そのような不要部分をトリムした場合、慣性マスが小さくなり、衝撃吸収特性が悪化してしまうのである。そこで、そのような不要部分もトリムせず、アウターパネルとインナーパネルとが閉断面となるように構成することによって、慣性マスの減少を抑えることが可能となり、以て、優れた衝撃吸収特性を発揮することが可能となるのである。
さらに、インナーパネル10に、断面半球状や断面波形の形状と異なり、断面二次モーメントが大きな断面ハット形状を呈する中央骨部14や側方骨部16が形成されていることによって、インナーパネル10の剛性を、有利に高めることが可能となる。その結果、衝突初期にはインパクターが衝突した部位の骨全体が移動するため、慣性マスを大きくすることが出来ると共に、インパクターの速度が低下した後も、かかる中央骨部14や側方骨部16によって高められた剛性によって、加速度の低下を抑えることが可能であり、以て、優れた衝撃吸収特性を得ることが可能となるのである。
また、かかる中央骨部14や側方骨部16を構成する突条の台形形状の頂部の幅(車両幅方向の寸法)が、車両前後方向で漸次変化するようにされているところから、インナーパネル10の中央部分における、隣り合う骨部の間のインナーパネル10表面、換言すれば、アウターパネルと接着されるための面の幅を、車両の前後方向で同程度にすることが出来ることとなり、その結果、衝突時に歩行者の頭部(衝突試験時のインパクター)がエンジンフードのどの部位に衝突しても、剛性の大きな骨部(中央骨部14や側方骨部16)で衝撃を吸収することが可能となるのである。即ち、隣り合う骨部(中央骨部14や側方骨部16)は、車両前後方向に対して角度を設けて設置されているため、それら骨部の間の面は、車両幅方向の寸法が車両の前後方向で異なってくる。例えば、ハット形状の幅が車両の前後方向で一定の場合、ハット形状骨部の中央線が、車両前側から車両後側にかけて徐々に広がるような形状に設計すると、車両後側においてはアウターパネルと接着されるための面の幅が広くなる。ここで、インパクターの衝突位置が、車両後側のアウターパネルと接着されるための面である場合、ハット形状骨部と離れた位置を打撃することになり、衝撃吸収特性が悪化してしまうのである。そこで、ハット形状の幅を、車両前側から車両後側にかけて徐々に大きくしていくことにより、インナーパネルにおけるアウターパネルと接着されるための面の車両幅方向の寸法を、車両の前後方向で同程度に調整することが出来るのである。
以上、本発明の代表的な実施形態の一つについて詳述してきたが、それらは、あくまでも例示に過ぎないものであって、本発明は、そのような実施形態に係る具体的な記述によって、何等限定的に解釈されるものではないことが、理解されるべきである。
例えば、前述の実施形態においては、中央骨部14の両側に配置される側方骨部16の個数は、それぞれ3個ずつとされ、インナーパネル10に配置される中央骨部14と側方骨部16の合計数は7個とされていたが、側方骨部16をそれぞれ左右に2個、或いはそれぞれ左右に4個として、インナーパネル10に配置される中央骨部14と側方骨部16の合計数を、5個或いは9個とすることも可能である。
また、かかる実施形態にて例示したインナーパネル10にあっては、中央骨部14や側方骨部16は、車両前側から車両後側になるにつれて、その断面台形形状の頂部の幅(W)が大きくなる形状とされていたが、そのような頂部の幅(W)の可変量や、可変方向(前側を大きくするか、後側を大きくするか)は、それぞれの骨部(12,14)毎に異なる形態としてもよい。例えば、図4に示される如く、中央骨部14は、車両前側から車両後側になるにつれて、その幅(W)が順次大きくなる一方、そのような中央骨部14と隣り合う側方骨部16a,16aは、車両前側から車両後側になるにつれて幅狭になるようにし、更にそのような側方骨部16a,16aよりも車両幅方向外側に配置せしめられる側方骨部16b,16bは、中央骨部14と同様に、車両前側から車両後側になるにつれて幅が順次大きくなるようにし、更に最外側に配置される側方骨部16c,16cは、車両前側から車両後側になるにつれて幅狭となるように配置される形態として、隣り合う骨部で幅(W)の可変方向が異なる形態のインナーパネル30とすることも可能である。
さらに、それら例示したインナーパネル10やインナーパネル30においては、側方骨部16の傾斜角度、即ち、インナーパネル10(30)の中央線20に対する側方骨部16の中央線24の傾斜角度が、車両前側から車両後側に向かって広がるような角度配置とされていたが、そのような配置形態とは逆に、車両後側から前側に向かって広がるような配置とすることも、勿論可能である。
更にまた、図2や図3に示される断面形態においては、各骨部14,16の台形形状の角部が、二つの直線が交わる明確な角部として示されているが、一般にプレス成形等に形成される、湾曲した(R形状とされた)角部であっても、何等差し支えない。
その他、一々列挙はしないが、本発明が、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施されるものであり、またそのような実施の態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範疇に属するものであることは、言うまでもないところである。
以下に、本発明の代表的な実施例を示し、本発明の特徴について更に明確にすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等限定的に解釈されるものでないことは、言うまでもないところである。
市販のFEM解析ソフトにより、シミュレーションを実行するために、先ず、エンジンフードのインナーパネルとアウターパネルをメッシュモデル化したものを作製した。その際、アウターパネル、インナーパネルには、アルミニウム合金板(AA6111相当、調質T4)が使用されることを想定し、より実体フードに近い条件にてシミュレーションを実施する目的から、塗装焼付処理後の材料特性を解析モデルに入力した。
また、ここで作製したメッシュモデルとしては、本発明の実施例として、前述した実施形態において例示の図1及び図4に示したような形状である、モデル1,2の2つを用意した。即ち、モデル1は、図1に示されるように、車両後側ほど幅が広くなる断面ハット形状の骨部と、それら骨部間に形成されるアウターパネルとの接着面とにより構成され、そのハット形状の中心線が車両前後方向に対して扇状に広がるように配置されたインナーパネルとした。一方、モデル2は、図4に示されるように、車両後側ほど幅が広くなる断面ハット形状の骨部と、車両後側ほど幅が狭くなる断面ハット形状の骨部とを交互に配置すると共に、それら骨部間にアウターパネルとの接着面を設けることによって構成され、そのハット形状の中心線が車両前後方向に対して扇状に広がるように配置されたインナーパネルとした。なお、断面ハット形状の車両前後方向の長さは、インナーパネルの周辺部分を除く長さとした。また、それらモデル1,2において、骨部のハット形状断面における台形形状の頂部の幅(W)は、60mmから120mmまで可変させ、各ハット形状(骨部)の中心線は、車両前後方向に対し、15°〜40°の範囲内の角度となるようにした。その際、それら中心線は、車両の前側から後側にかけて扇形となるように配置した。
一方、従来技術の比較例として、図5に示される如き、インナーパネル40からエンジン側に台形形状断面をもって突出し、車両前後方向に延びる7個の骨部42が形成されたものをメッシュモデル化し、これを、モデル3とした。ここで、骨部42の断面ハット形状(台形形状)の頂部の幅(W)は80mmの一定幅とした。また、隣り合う骨部42,42の間隔(アウターパネルとの接着面の幅)を180mmとし、更に、それぞれの骨部42の中心線は、インナーパネル40の中心線と平行となるように配置した。
なお、このようにモデル化したそれぞれのエンジンフードについては、特定の車種を対象としたものではなく、簡易的な形状とした。従って、ここで示した実施例と比較例の頭部傷害値の絶対値については、実際の車種のフード意匠によって異なってくる。そこで、ここでは、解析結果における加速度線図を相対的に比較した。なお、解析の際は、アウターパネル、インナーパネル共に、耐力が150MPa程度の6111−T4相当の応力−ひずみ特性を解析モデルに使用し、アウターパネルの板厚を1.0mm、インナーパネルの板厚を0.9mmに設定した。
そして、そのようなメッシュモデル化されたエンジンフードに対して、同様に、メッシュモデルによるインパクタを衝突させるシミュレーションを行なった。その際、解析条件として、JNCAP(Japan New Car Assessment Program)における子供用頭部の衝突条件に即した条件を入力した。具体的には、質量:3.5kg、外径:165mmのインパクターを使用して、そのようなインパクターを、速度:35km/h、衝突角度:65°で、エンジンフードの中央部に衝突させた。この試験によって得られたインパクターのストロークと加速度の関係のグラフを、図6(a),(b)にそれぞれ示す。
ここで、一般的な頭部衝突試験におけるインパクターがフードの中央部に衝突した際の現象を説明する。先ず、インパクターがアウターパネルに衝突し、変形を開始する。この時点では、アウターパネルとインナーパネルからの慣性マスと剛性でインパクターが減速し、その減速度(歩行者保護特性の評価においては加速度と称される)に与える影響因子は、慣性マスの方が大きい。そして、ある程度インパクターが進入すると、インパクターの加速度に与える影響因子は、剛性が殆どを占めるようになる。更に、インパクターが進入すると、インナーパネルとフード内部の部品であるエンジン等が接触する。この際、インパクターの持つエネルギーが充分に消費されていない場合、底付きと言われる現象が発生し、加速度が急上昇する。このように、衝突の前半と後半に加速度の大きな山(一般に、第一ピーク加速度、第二ピーク加速度と呼ばれる)が現れる場合、最終評価値であるHIC(頭部傷害値)の値も大きくなり、歩行者保護特性としての評価は低くなる。つまり、歩行者保護特性を向上させるためには、底付きするまでに、インパクターの持つ衝突エネルギーを充分に消費させ、第二ピーク加速度を低くすることが最良の方法となる。
ここで、図6(a)及び図6(b)に示される、本発明に従う構造とされたモデル1,2と従来の構造であるモデル3の加速度波形を比較すると、それぞれ、第一ピーク加速度、第二ピーク加速度が異なっていることが解る。即ち、第一ピーク加速度は、本発明例であるモデル1、モデル2の方が若干高い。これは、従来例であるモデル3は、車両前後方向にのみフードが変形しているのに対し、本発明例であるモデル1,2は、車両左右方向にも、変形が広がっているためである。また、第一ピーク加速度の後の加速度も、若干ではあるものの、本発明例のモデル1,2の方が高くなっている。即ち、エンジンとインナーフードの接触時に、インパクターの持つエネルギーは、本発明例のモデル1,2の方が少なく、第二ピーク加速度が低くなっている。従って、このような加速度波形の差は、本発明例であるモデル1,2の方が、HICが小さくなることを意味しており、歩行者保護特性に優れていることが確認されるのである。
10 インナーパネル
12 パネル部材
14 中央骨部
16 側方骨部
20 中心線
22 中心線
24 中心線
12 パネル部材
14 中央骨部
16 側方骨部
20 中心線
22 中心線
24 中心線
Claims (5)
- アルミニウム合金製のアウターパネルとアルミニウム合金製のインナーパネルとを閉断面構造において重ね合わせてなる構造の車両用エンジンフードにして、
前記インナーパネルからエンジン側に台形形状断面をもって突出して、車両前後方向に延びる、該突出した台形形状の頂部の幅が車両前後方向において漸次変化する突条の複数が、該インナーパネルに形成され、且つ該インナーパネルの車両前後方向に延びる中心線上に、該複数の突条のうちの一つが中央骨部として配置されていると共に、残余の突条が、側方骨部として、該中央骨部の両側に、それぞれ所定の間隔を隔てて該インナーパネルの車両前後方向に延びる中心線に対して傾斜した形態において配置されていることを特徴とする車両用エンジンフード。 - 前記複数の突条が、それぞれ、その台形形状の頂部の幅が車両前方側から車両後方側に向かって漸次増大する形態において、形成されている請求項1に記載の車両用エンジンフード。
- 前記複数の突条が、前記車両前後方向における頂部の幅の変化形態が交互に逆方向となるように形成されている請求項1に記載の車両用エンジンフード。
- 前記中央骨部に対して、前記側方骨部が、5°〜45°の傾斜角度において配置されている請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の車両用エンジンフード。
- 前記複数の突条が、5個、7個又は9個の個数において形成されている請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載の車両用エンジンフード。
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JP2011007308A JP2012148619A (ja) | 2011-01-17 | 2011-01-17 | 車両用エンジンフード |
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JP2011007308A JP2012148619A (ja) | 2011-01-17 | 2011-01-17 | 車両用エンジンフード |
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Cited By (1)
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CN114919667A (zh) * | 2022-06-28 | 2022-08-19 | 浙江吉利控股集团有限公司 | 一种发动机盖外板支撑支架及车辆 |
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2011
- 2011-01-17 JP JP2011007308A patent/JP2012148619A/ja active Pending
Cited By (2)
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CN114919667A (zh) * | 2022-06-28 | 2022-08-19 | 浙江吉利控股集团有限公司 | 一种发动机盖外板支撑支架及车辆 |
CN114919667B (zh) * | 2022-06-28 | 2023-07-25 | 浙江吉利控股集团有限公司 | 一种发动机盖外板支撑支架及车辆 |
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