JP2012146806A - 格子不整合赤外化合物半導体受光素子 - Google Patents

格子不整合赤外化合物半導体受光素子 Download PDF

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Abstract

【課題】安価で量産性に富み、暗電流や表面リーク電流が低く、感光波長域が広く高感度で信頼性の高い赤外線検出素子を提供する。
【解決手段】比較的安価で大面積ウェファの入手が容易なGaAsやSi基板上に、PDを構成するエピタキシャル層に格子整合し、かつ機械強度の弱い緩和層を成長し、格子不整合や結晶成長前後の熱歪みを解消する。更に、感光層を夾んで、電子および正孔の相補的なバリア層を形成し、感光層の外からの電子および正孔の流入が選択的に抑制するとともに、光励起された電子正孔を、ポテンシャルバリア無しにそれぞれの電極に導く。
【選択図】図1

Description

本発明は、比較的安価でウェファ面積の大きいシリコンやGaAs基板上に、基板材料とは格子整合しない化合物半導体材料を用いて、安価で暗電流の少ない赤外化合物半導体フォトダイオードアレイを実現するものである。
赤外化合物半導体フォトダイオード(PD)に用いる化合物半導体混晶材料には、従来InP基板上に格子整合したIn0.53Ga0.47Asを感光層に用い、InPを窓層として用いることが一般的であるが波長感度は1.6μmまでに限定される。更に、感光波長を拡大するためには、バンドギャップの小さい2元化合物半導体であるGaSb、InAs、InSbやそれらに格子整合するInGaAsSbやInAsSbを感光層に用いそれらにAlを加えた化合物を窓層に用いる方法と、InP基板を用いたまま感光層となるInGaAs層のIn組成比を増す方法がある。
禁制帯幅の小さい2元化合物半導体基板を用いる場合には、波長6μm程度まで波長感度範囲が広がるが、比較的小面積で高価な基板を使用する必要がある。また基板に格子整合した混晶組成の場合、原子半径の類似したAlとGa系混晶を除いて、格子整合条件を満足しつつ所望の禁制帯幅を得ることは困難で、4元化合物を用いる必要がある。これは、3元混晶を構成する場合、組成の変化により格子定数と禁制帯幅が同時に推移するため、所望の禁制帯幅を得るためには、格子整合条件に適合し、エネルギー禁制帯幅の異なる2種類の3元化合物半導体を混合する必要があるためである。
また、InP基板を用いたままInGaAs層のIn組成比を増す方法では、InP基板との格子不整合のため、エピタキシャル層内に歪みが発生し、転位等の結晶欠陥により暗電流が増大する問題がある。また、実用的な波長の拡張範囲も2.5μm程度に限られる。
半導体光検出素子の検出限界を決める暗電流は、半導体内部に起因するものと、半導体表面に起因するものがある。InGaAs/InP系プレーナPDでは、素子面積が1mmφのPDにおいて、両者は同程度、素子面積が100μmφのPDにおいて表面に起因するリーク電流が2桁程度大きくなる。半導体内部に起因する暗電流を抑制するには、光が到達する感光層以外からの熱励起によるキャリア生成の影響を取り除くことが有効である。また、熱励起によるキャリア生成速度は、概して真性キャリア濃度の2乗に比例するため、光検出素子の表面をワイド禁制帯幅窓層で覆うことが有効である。例えば、特許文献1に記載されたInGaAs/InP系プレーナPD、特許文献2に記載された、ヘテロバイポーラフォトトランジスタ、いまだ公開されていないが、特許文献3に記載された反転プレーナ型PD等は上記要件を満たしている。
特開2002−100796号公報「受光素子アレイ」 PCT/JP2009/067689「光検出素子」 特願2010−12875「化合物半導体受光素子アレイ」
波長2μm以上の中赤外波長PDでは、InAsあるいはGaSb基板上に格子整合したアンチモン系化合物半導体を用いて、半導体内部に起因する暗電流を抑制する構造が開発されている。例えば、下記非特許文献1に開示されているように、広い禁制帯幅を有する半導体層を、狭い禁制帯幅を有するn型半導体の感光層と、同じく狭い禁制帯幅を有するn型コンタクト層とで上下に挟んだ所謂nBn構造による暗電流の抑制方法が示されている。
:S. Maimon and G.W.Wicks、"nBn detector,an infrared detector with reduced dark current and higher operating temperature"、Applied Physics Letters Vol.89、Oct. 2006,p.151109.
この構造においては、多数キャリアとなる電子による電流を広い禁制帯幅の半導体層により形成された伝導帯に於ける障壁で阻止して、暗電流成分を抑制すると共に、フォトダイオード(PD)を構成するすべての半導体の価電子帯の障壁を除去し、価電子帯のバンドオフセットをほぼフラットにすることにより、光励起された正孔のみが、有効に光励起電流として検出される。
また、下記非特許文献2にはInAlAsSb等、広い禁制帯幅を有する表面バリア層を適用し、InAsSbなどの感光層との界面で価電子帯の不連続を無くすことで、光照射で生成する正孔を効率よく捕捉し、波長4μm帯においても室温での高感度化を図った構造が示されている。
:H.Shao,W.Li,A.Torfi,D.Moscicka,and W.I.Wang,"Room−Temperature InAsSb Photovoltaic Detectors for Mid−Infrared Applications",IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS,VOL.18,NO.16,AUGUST 15,(2006)p.1756−1758.
但し、上記非特許文献1、2においては、熱励起された電子に起因する暗電流は抑制されるものの、暗電流のもう一つの原因となる、基板側で熱励起された正孔を遮断する構造にはなっていない。
下記特許文献4において、熱励起された電子および正孔を遮断し、光生成された電子・正孔対をポテンシャル障壁無しにそれぞれ電子および正孔電流として検出する構造として、相補型PDが考案されている。
US2010/0006822 A1,”Complementary Barrier Infrared Detector (CBIRD)” この構造では、InAs/GaSb超格子からなる感光層の片側をInAs/AlSb超格子からなる電子バリア層、反対側を感光層とは周期の異なるInAs/GaSb超格子からなる正孔バリア層を設け、それぞれ、感光層以外で熱励起された電子および正孔が暗電流成分となることを防いでいる。
但し、上記構造では、超格子の厚さにより格子定数が変化し、厳密な格子整合条件が取れないこと、超格子の厚さ方向のキャリア移動度が低いこと、超格子界面の急峻性や3族および5族の表面分圧によりInSb/GaAs界面も混入する恐れがあるなど、結晶成長や構造の安定性を確保することは困難である。
更に、上記非特許文献1、2および特許文献4においては、結晶表面に起因した暗電流の抑制方法の記載が無い。光検出素子アレイなど直径100μm以下のPDにおいて、暗電流を低減させるためには、特許文献1、2および3に記載された表面リーク電流抑制構造を付加することが必須となる。
また、InP基板を用いた場合は、格子整合条件を満たしたIn組成0.53のInGaAs(1.6μm)からIn組成を増加させることにより、長波長側に感光波長範囲を拡大することになるが、既に述べたように、基板と感光層あるいは、感光層と窓層の間に格子歪みによる結晶欠陥が発生し、波長範囲の拡大とともに、暗電流が著しく増加し、感度の低下の原因となっている。例えば、従来のInGaAs/InP系近赤外PDの場合においては、In組成を0.53から0.77に増加することにより、波長範囲を1.6μmから2.4μmに拡張することができるが、約1.6%の格子歪みが発生し、それにともなう結晶欠陥密度の増加により、検出感度は、格子整合した検出器の感度を検出波長で外挿した場合に比べて、数十倍劣化している。
InP基板やGaSb基板は、比較的高価で、機械的強度も弱いため、より安価で大面積ウェファの入手が容易な、GaAsやSi基板を用いることができれば、光検出素子の単価を大幅に下げることが可能である。しかしながら、赤外光検出素子に用いられる、InGaAsなどの化合物半導体混晶の格子定数差が更に大きくなる方向となり、格子歪みによる結晶欠陥の影響が大きく、実用的な光検出素子は得られなかった。加えてSi基板の場合は、化合物半導体と比較して熱膨張係数が小さく、結晶成長温度から室温へと、素子の温度を下げる過程においても歪みが発生し、結晶欠陥やウェファのそり、クロスハッチの発生などが問題になってきた。
近年、比較的安価で大面積ウェファの入手が容易なGaAsやSi上にSb系の高品質エピタキシャル層が成長できることが明らかになった。
非特許文献3には、GaAs上に遷移層無しにGaSbをエピタキシャル成長することにより、GaAs
/GaSbヘテロ界面にミスフィット転位が発生し、GaSb基板上のGaSb層に遜色のないGaSbエピタキシャル層が得られている。
また、特許文献5には、InAsなど、機械的強度の弱い緩衝薄膜を基板とエピタキシャル層との間に挟むことにより、シリコン上のGaAsエピタキシャル層の転位密度を抑制できることが開示されている。
F.Royo,A.Giani,F.Pascal−Delannoy,L.Gouskov,J.P.Malzac, J.Camassel, "Optical and electrical characterization of thick GaSb buffer layers grown on 2 in GaAs wafers",Materials Science and Engineering B28 (1994) 169−173. 特開平6−338462 「化合物半導体結晶薄膜の成長方法」
更に非特許文献4では、シリコン基板上に、AlSbをエピタキシャル成長し、その上にInSbドットを形成すると、InSbドットが貫通転位を終端することにより、転位密度の低いSb系化合物半導体エピタキシャル層を得ている。
D.H.Nguyen,J.Park,Y.K.Noh,M.D.Kim,D.Lee.,and J.E.Oh,"Strong photoluminescnce at 1.53 μm from GaSb/AlGaSb multiple quantum wells grown on Si substrate",Applied Physics Letters 95,061910(2009).
安価で量産性に富み、かつ暗電流の低い赤外線検出素子を実現するためには、生産量が多く大面積ウェファが供給されているSiあるいはGaAsを基板に用いること、光検出機能を有する感光層以外の領域での、熱生成キャリアが暗電流を生成しないこと、また、結晶欠陥密度の大きな結晶表面において生成される熱励起電流や漏れ電流を抑制することが必要である。
感光層以外の領域での熱生成キャリアや漏れ電流の影響を低減するためには、nBnあるいは、相補型のバンドプロファイルとワイド禁制帯幅窓層の表面のみでPN接合を露出させる、いわゆるプレーナ型の素子構造とを同時に実現する必要がある。
更に化合物半導体フォトダイオードおよびアレイにおいては、内部に結晶欠陥の発生を防ぐために、互いに格子整合した感光層と窓層感光層を構成材料として、格子歪みを極力低減する必要がある。
従来は、格子歪みを低減するためにバイナリ化合物半導体基板と格子整合したエピタキシャル層を使用してきたが、格子整合条件を満たすために感光波長領域が、制限された。また、基板と格子不整合しないエピタキシャル層を用いた場合には、内部歪みにより結晶欠陥が発生し、リーク電流の増大をもたらしている。
特に、Si、GaAsなど安価な大面積基板が得られる基板材料を使用するためには、従来赤外光検出素子に用いられてきた基板、例えばInP、GaSb、InAsよりも更に大きな格子不整合と熱膨張差を克服する必要がある。即ち、結晶成長時における転位の発生頻度の抑制と、結晶成長後の冷却過程において熱歪みによる転位の発生を防ぐ必要がある。
本発明では、ヘテロ界面におけるミスフィット転位や超格子バッファ、量子ドットなど、近年発達してきた異種基板上のエピタキシャル成長技術を用い、基板との格子整合条件には必ずしもこだわらずに、必要な波長感度特性に応じて3元ないし4元化合物半導体の組成と膜厚を決定する。感光層に対して既存の2種の2元基板の間の格子定数を選ぶことにより、少ない元素種を用いて、禁制帯幅およびバンドオフセットの設計範囲が広く、格子整合条件を満たした窓層の構成元素、組成を選択することが可能になる。
例えば、InGaAsを感光層として用いると、GaAsの禁制帯幅に相当する0.87μmからInAsの禁制帯幅に相当する3.5μmまで感光波長範囲をカバーすることができる。更に、GaをAlに置き換えたInAlAsやGaをPに置き換えたInAsPを感光層に格子整合した窓層として用いることにより、InGaAsに格子整合したワイド禁制帯幅窓層において、伝導帯あるいは充満帯それぞれにのみポテンシャル障壁を設けることが可能になる。
また、SiやGaAsなど安価で大面積ウェファの入手が容易な材料を基板として用いる場合、基板とは格子状定数や熱膨張係数の異なる化合物半導体エピタキシャル層を光検出素子の構成材料として用いる必要がある。半導体基板と、感光層、あるいは半導体基板基板側バリア層間の歪みを軽減するために、感光層と格子整合する緩和層を挿入し、該緩和層は、感光層あるいはバリア層よりも弾性限界が低い材料を使用する。本発明においては、基板および光検出素子を構成する材料よりもボンド結合強度の弱い材料で、格子定数に関しては光検出素子を構成する材料と等しい材料を格子整合緩和層として基板とPDを構成するエピタキシャル層の中間に夾む。これらの緩和層により、結晶成長過程におけるミスフィット転位を基板と緩和層に集中し、光検出素子を構成するエピタキシャル層での転位の発生を抑制するとともに、結晶成長後の温度降下に伴う熱歪みに関しても、緩和層が先に塑性変形を開始するため、光検出素子を構成する材料における滑り転位などの新たな結晶欠陥の発生を防止することが可能となる。
代表的な2元化合物の弾性限界強度を示す下降伏点は、図4に示すように、概ね禁制帯幅が狭くなるに従い、あるいは材料の融点が低くなるに従い弱くなる。(非特許文献5)そこで、例えば、感光層をInGaSbとする場合、格子定数が等しく、ボンド結合強度の弱いInAsSbを緩和層として基板と感光層の間に挿入することにより、ミスフィット転位や熱歪みを吸収し、光検出素子部分の構成材料における結晶欠陥の発生を防止することができる。

I.Yonenaga,"Mechanical Properties and Dislocation Dynamics in III−V Compounds",Journal De Physique III Vol.7 1435−1450(1997).
InSbは、波長5μm帯の赤外検出器材料として使用されてきたが、結晶が脆弱で軽微な衝撃により室温においても結晶欠陥が発生しやすいこと、InSbに格子整合する窓層が無いことが問題であった。感光層としてInAsSbを用いることにより、合金効果により機械強度を増すことができるとともに、格子整合したInAlSb窓層を使用することが可能になる。また、InAlSbは、InAsSbよりも機械強度が強いため、これを基板側バリア層として用いることにより、基板からの格子歪みや弾性歪みをこの層でいったん吸収することが可能となり、感光層における結晶欠陥の発生を抑制することが可能となる。
本発明では、
半導体基板上に、基板側バリア層、感光層、窓層からなり;
上記基板側バリア層、感光層、窓層は、互いに格子整合条件を満たし;
半導体基板と光検出素子を構成する該基板側バリア層、感光層、窓層が格子不整合であり;
該半導体基板と光検出素子との間に緩和層があり、該緩和層は、感光層あるいは基板側バリア層よりも弾性限界が低いこと;
加えて該緩和層の一部は、該基板側バリア層、感光層および窓層と格子整合すること;
を特徴とする安価で高感度な赤外光検出素子を提供する。
更に、上記基板側バリア層および窓層は、上記感光層よりも禁制帯幅が大きく;
基板側バリア層および窓層は、N型の場合は、感光層に対して伝導帯よりは充満体において大きなポテンシャル障壁を形成し、P型の場合は、充満体よりは伝導帯において大きなポテンシャル障壁を形成し、電子あるいは正孔のいずれかのみを選択的に取り出すこと;
により、暗電流を抑制し、微弱光に対しても感度の高い光検出素子を提供する。
本発明の構造において感光層は基板および表面側の相補型バリアによりそれぞれ電極部分からの電子および正孔の流入が選択的に抑制されるため、暗電流を抑制しつつ、停留なく光生成された電子・正孔対を電極部分に導くことが可能である。更に、素子表面が、感光層よりも禁制帯幅の大きな窓層で覆われているため、プレーナ型あるいは特許文献3記載の反転プレーナ型PDによる表面結晶欠陥による暗電流抑制構造も容易に組み入れることがが可能である。
生産性や製品価格の観点から、安価で大面積ウェファの入手が容易なSiやGaAs基板上に赤外検出素子を形成することが重要である。本発明によると、比較的機械強度が弱くかつ赤外検出素子を構成するエピタキシャル層に完全に格子整合した緩和層を基板とエピタキシャル層の間に挿入することにより、結晶成長時の転位の形成と、結晶成長後、基板温度を室温に戻す時に生ずる熱歪みによる転位の導入を防ぐことができる。
従来は、格子不整合による歪みや転位あるいはクロスハッチを防ぐために、入手可能な2元化合物半導体基板にエピタキシャル層を格子整合させる必要があった。本発明により、基板と大きく格子定数が異なるエピタキシャル層を結晶欠陥の生成なしに結晶成長可能となったため、2元基板の格子定数に拘束されることなく、必要な光吸収波長帯と窓層に適した材料組成を選択することが可能となり、適応波長が大きく拡大した。
図1はGaAs等ヘテロ基板上にInGaAsSbを感光層とした化合物半導体受光素子の実施方法を示した説明図である。(実施例1) 図2はGaAs等ヘテロ基板上にInGaSbを感光層とした化合物半導体受光素子の実施方法を示した説明図である。(実施例2) 図3はGaAs等ヘテロ基板上にInGaAsを感光層とした化合物半導体受光素子の実施方法を示した説明図である。(実施例3) 図4は各種化合物半導体材料の臨界剪断応力の温度依存性を図示した説明図である。
図1(A)は波長0.6〜2.2μmまで感光波長を拡大するために、感光層としてInGaAsSbを用いた場合の相補型赤外光検出素子のバンド模式図を示す。
N型GaAs基板1上に450℃程度の比較的低温において、薄いGaSb緩和層10を成長させ、成長温度を100℃程度上昇させた後GaSb格子整合緩和層11兼カソードコンタクト層9を成長した。その後、GaSbに格子整合する、In0.68Al0.32As0.64Sb0.36基板側バリア層8、In0.15Ga0.85As0.14Sb0.86感光層2、Al0.2Ga0.8As0.02Sb0.98窓層3、および GaSbアノードコンタクト層12を成長した。
感光層2となるIn0.15Ga0.85As0.14Sb0.86に対して、基板側バリア層8となるIn0.68Al0.32As0.64Sb0.36においては、伝導帯はほぼ一致し(ΔEc28〜0)、充満体のみがΔEv28=0.33eVのポテンシャル障壁を形成している。一方窓層3となるAl0.2Ga0.8As0.02Sb0.98は、感光層2となるIn0.15Ga0.85As0.14Sb0.86に対して、充満帯はほぼ一致し(ΔEv23〜0)、伝導帯のみΔEc230.41eVのポテンシャル障壁を形成している。なお、In0.15Ga0.85As0.14Sb0.86感光層2の禁制帯幅は、0.56eV、In0.68Al0.32As0.64Sb0.36基板側バリア層8および、Al0.2Ga0.8As0.02Sb0.98表面側窓層3の禁制帯幅は、それぞれ、0.92および0.96eVである。
図1(B)は、上記バンド図に基づくエピタキシャル層を用いたプレーナ型PDの模式図を示す。SiNx誘電体膜5の感光部分を開口し、亜鉛拡散により、Al0.2Ga0.8As0.02Sb0.98窓層3とIn0.15Ga0.85As0.14Sb0.86感光層2の一部をP型に転換した。結晶表面に露出するPN接合は、比較的広い禁制帯幅(0.96eV)を持つ窓層3となり、表面リーク電流が抑制されている。また、基板側バリア層8および表面側窓層3は、光生成された電子正孔対を障壁無くそれぞれの電極に導くとともに、感光層2の外側で熱励起された電子、正孔を遮断することにより暗電流を抑制している。
GaAs基板1上に低温にて成長されたGaSb緩和層10は、GaAs基板よりも機械的強度が弱いため、GaAs/GaSb界面においてミスフィット転位を発生し、格子不整合による歪みを緩和する効果がある。また、格子整合緩和層11兼カソードコンタクト層9となるGaSbは、PDを構成する基板側バリア層8、感光層2および窓層3と厳密に格子整合しているため、新たな結晶欠陥発生の原因とならない。更に、格子整合緩和層11としてGaSbに格子整合したInAs0.91Sb0.09を用いることも貫通転位の抑制に有効である。
図1においては、PDを構成する各層にGaSbに格子整合する化合物半導体混晶を選んだが、基板としてPDを構成する各層とは格子整合しないGaAsやSiを選んだ場合は、必ずしも各エピタキシャル層を2元化合物半導体材料に格子整合させる必要は無い。図2は、感光波長0.6〜2.4μmに対応するIn0.25Ga0.75Sb三元化合物半導体を感光層として選び、それに格子整合する窓層やバリア層を選定した場合のバンド模式図(A)および素子模式図(B)、(C)を示す。
GaAs基板上に薄いGaSb緩和層10を成長させ、感光層に格子整合し、それよりも機械強度の弱いInAs0.68Sb0.32を格子整合緩和層11として0.5μm成長した。更に2μmのIn0.25Ga0.75Sb感光層2を夾んで、基板側バリア層8として、充満帯のみにポテンシャルバリアを有し、感光層に格子整合したIn0.67Al0.33As0.41Sb0.59を、表面側窓層3には伝導帯のみにポテンシャルバリアを有し、感光層に格子整合したIn0.22Al0.23Ga0.55Sbを設けている。
また、本例では、P型In0.22Al0.23Ga0.55Sb窓層(電子バリア層)3とIn0.25Ga0.75Sb感光層2との接合面において、伝導帯のバンドオフセットΔEc23が0.24eV、価電子帯のバンドオフセットΔEv23が0.08eVであり、価電子帯のバンドオフセットのほうが伝導帯のバンドオフセットよりも小さくなっている。また、N型In0.67Al0.33As0.41Sb0.59基板側バリア層(正孔バリア層)8とIn0.25Ga0.75Sb感光層2との接合面において、伝導帯のバンドオフセットΔEc23が0.10eV、価電子帯のバンドオフセットΔEv23が0.26eVであり、伝導帯のバンドオフセットのほうが価電子帯のバンドオフセットよりも小さくなっている。そのため、微弱光や低バイアス条件において、光励起により生成されたキャリアは、障壁無し電極に導かれ、キャリアの停留が抑制されている。なお、In0.25Ga0.75Sb感光層2の禁制帯幅は、0.51eV、In0.67Al0.33As0.41Sb0.59基板側バリア層(正孔バリア層)8および、In0.22Al0.23Ga0.55Sb表面側窓層(電子バリア層)3の禁制帯幅は、それぞれ、0.87eVである。
格子整合緩和層11としてInAs0.68Sb0.32を用いた場合、弾性限界強度が低いため、格子歪みの緩和の点は優れているが、バンド構造上キャリアの輸送が困難となる。そのため、図2(B)に示すように、表面側からエッチングを行い、カソードコンタクト層9に対してN型電極6を形成した。
図2(C)は、未だ開示されていないが、特許文献3に基づいた反転プレーナ型PDを構成した断面模式図を示す。拡散層4は、感光層2の周囲を巡り、感光層2を貫通して基板側バリア層81まで到達している。本図の場合、PDに対するバイアス方向が逆になるため、窓層(正孔バリア)31として、充満帯のみにポテンシャルバリアを有し、感光層に格子整合したN型In0.67Al0.33As0.41Sb0.59を、基板側バリア層(電子バリア層)81として、伝導帯のみにポテンシャルバリアを有し、感光層に格子整合したP型In0.22Al0.23Ga0.55Sbを使用する。図2(C)の構造は、PN接合が浅く、短波長においても感度が高いこと、アレイを形成した時に、拡散ポテンシャルにより光生成キャリアが閉じこめられクロストークが少ないという利点がある。
アンチモンを含む化合物半導体材料ほどバンドオフセットの自由度は無いが、光検出素子用材料としてより一般的なInGaAsを光吸収材料として用いても光ディテクタの暗電流を抑制し、キャリアの走行障壁を取り除いた相補型PDに準ずるバンドプロファイルを実現することが可能である。図3は、InGaAs感光層2のIn組成を増加させ、吸収端波長を2.4μmまで拡張した場合のバンドプロファイルを示す。エピタキシャル層と基板とは格子整合条件を満たしていないことから、もはや感光層を2元基板と格子整合する必然性が無い。
電子バリアとなるIn0.76Al0.24As窓層3および正孔バリアとなるInAs0.50.5基板側バリア層8は、格子定数5.87ÅのIn0.77Ga0.23As感光層2に格子整合している。それぞれAlを添加することで、伝導帯側により大きくバンドプロファイルが拡張すること、Pを添加することで、価電子帯側により大きくバンドプロファイルが拡張することを利用して、InGaAs感光層に格子整合条件を取りながら電子および正孔バリアを有する相補的PDを構成している。緩和層として、In0.77Ga0.23As感光層2に格子整合したGaAs0.31Sb0.69格子整合緩和層11が低温シード層として用いたGaSb緩和層10上に形成され、GaAs基板との格子不整合による残留歪みを緩和している。
なお、In0.77Ga0.23As感光層2の禁制帯幅は、0.51eV、In0.76Al0.24As窓層(電子バリア層)3および、InAs0.50.5基板側バリア層(正孔バリア層)8の禁制帯幅は、それぞれ、0.86eVおよび0.83eVである。また、本例では、In0.76Al0.24As窓層(電子バリア層)3がP型であり、In0.77Ga0.23As感光層2との接合面において、伝導帯のバンドオフセットΔEc23が0.28eV、価電子帯のバンドオフセットΔEv23が0.07eVで価電子帯のバンドオフセットのほうが伝導帯のバンドオフセットよりも小さくなっている。
また、InAs0.50.5基板側バリア層(正孔バリア層)8がN型であり、In0.77Ga0.23As感光層2との接合面において、伝導帯のバンドオフセットΔEc28が0.07eV、価電子帯のバンドオフセットΔEv28が0.24eVで伝導帯のバンドオフセットのほうが価電子帯のバンドオフセットよりも小さくなっている。従って、それぞれアノードコンタクト層12及びカソードコンタクト層9兼GaAs0.31Sb0.69格子整合緩和層11間に生じるバンドオフセットのバリアにより感光層2以外で発生する電子および正孔の感光層への流入を防止し、かつ、感光層2で生成された正孔および電子を選択的に外部に出力する事が出来る。
基板側バリア層をN型とした場合、GaAs0.31Sb0.69格子整合緩和層11をP型にすることにより、InAs0.50.5基板側バリア層(正孔バリア層)8の伝導帯とGaAs0.31Sb0.69格子整合緩和層11の充満帯のエネルギーバンド位置がほぼ一致し、良好なオーミック伝導特性を得ることが可能である。本実施例では、InP基板の代わりに機械強度が大きく、価格が安いGaAs基板上にInGaAs感光層に格子整合したGaAsSbを緩和層に用いることにより、安価で感光波長の調節範囲の広いPDを比較的組成制御の容易な3元化合物半導体エピタキシャル層により実現した。
同様な構成により、感光層2としてInP基板に格子整合するIn0.53Ga0.47Asを用い、GaAs基板1上に格子整合緩和層11としてGaAs0.5Sb0.5、基板側バリア層8としてGa0.26In0.74As0.550.45、窓層3としてAl0.19Ga0.28In0.53Asを用いた1.6μm帯PDを構成することも可能である。 GaAs基板が安価なことや赤外カメラ用PDアレイとして薄片化するときに、ウェットエッチングによる基板1と基板側バリア層8の選択比が大きいなどの利点がある。
1 基板
2 感光層
3 窓層(電子バリア層)
31 窓層(正孔バリア層)
4 P型層
5 誘電体膜
6 N側電極
7 P側電極
8 基板側バリア層(正孔バリア層)
81 基板側バリア層(電子バリア層)
9 カソードコンタクト層
10 緩和層
11 格子整合緩和層
12 アノードコンタクト層

Claims (5)

  1. 半導体基板上に、光検出素子を構成し互いに格子整合条件を満たす基板側バリア層、感光層、窓層からなり;半導体基板と光検出素子を構成する該基板側バリア層、感光層、窓層が格子不整合であり;該半導体基板と光検出素子との間に緩和層があり、該緩和層は、感光層あるいは基板側バリア層よりも弾性限界が低いこと;該緩和層の一部は、該基板側バリア層、感光層および窓層と格子整合すること;を特徴とする光検出素子。
  2. 請求項1において;
    上記基板側バリア層および窓層は、上記感光層よりも禁制帯幅が大きく;基板側バリア層および窓層は、N型の場合は、感光層に対して伝導帯よりは充満体において大きなポテンシャル障壁を形成し、P型の場合は、充満体よりは伝導帯において大きなポテンシャル障壁を形成し、電子あるいは正孔のいずれかのみを選択的に取り出すこと;を特徴とする光検出素子。
  3. 請求項1および2において、半導体基板がSiあるいはGaAs、感光層がInGaSb、窓層および基板側バリア層が感光層に格子整合したAlGaAsSb,あるいはInAlAsSb、緩和層が感光層に格子整合したGaAsSbあるいはInAsSbであることを特徴とする光検出素子。
  4. 請求項1および2において、半導体基板がSiあるいはGaAs、感光層がInGaSb、窓層および基板側バリア層が感光層に格子整合したInAlGaSb、あるいはInAlAsSb、緩和層が感光層に格子整合したInAsSbであることを特徴とする光検出素子。
  5. 請求項1および2において、半導体基板がSiあるいはGaAs、感光層がInGaAs、窓層および基板側バリア層が感光層に格子整合したInAlAsおよびInAsP、緩和層が感光層に格子整合したGaAsSbであることを特徴とする光検出素子。
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