JP2012144636A - 孔版印刷用エマルションインク - Google Patents

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Abstract

【課題】孔版印刷用エマルションインクを通常使用時のみならず長期放置時においても浸透乾燥性がよく、印刷物の滲みや目詰り、油の吐出しが少ないものとする。
【解決手段】油相および水相からなる孔版印刷用エマルションインクにおいて、油相に沸点が240℃未満の溶剤を含まず、平均分子量が5,000未満のアルキド樹脂と、脂肪酸アミドまたはシリカとを含むものとする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、孔版印刷用エマルションインクに関するものである。
孔版印刷は版の作製が容易なため幅広い分野で利用されており、孔版印刷用インクとしては、一般にW/O型エマルションインクが使用されている。このエマルションインクは、紙などの印刷物に浸透して乾燥する浸透乾燥方式のインクである。孔版印刷機においては、孔版印刷の原理上ある程度の粘性を有するエマルションインクが使用されるため、印刷用紙転写後の浸透乾燥に長時間を要する。このため、短時間で両面印刷を行う場合は、裏面印刷時に表面に印刷されたインクがプレスロールや搬送ロール等に転写し、ロールに付着したインクが用紙に転写し汚れが発生するという問題がある。
特に、孔版印刷機を放置した場合、水分の蒸発により相対的に水相の割合が減少し、インクの粘度が低下する。その結果、放置後の印刷開始後にインクが過剰に印刷用紙に転移し、乾燥性、裏移りが悪化してしまうという問題が生ずる。このような乾燥性や裏移りの問題を解決するために、本発明者らはインクに平均分子量5,000未満のアルキド樹脂を含有させたインクを提案している(特願2010−133689号)。しかし、長期放置時を含めた乾燥性に関してはさらなる改善の余地がある。
放置時のインクの粘度低下に起因するインクの過剰転移、印刷滲みを抑制する手法として、インクの油相中に低沸点の溶剤を添加することによって、水相の水分の蒸発とともに、油相の溶剤も揮発しやすくさせることで油相粘度を高くしてインク全体の粘度を保持する方法がある(特許文献1)。しかし、低沸点溶剤は揮発性有機化合物(VOC(volatile organic compounds))であり、近年の環境配慮の観点からすればその使用は削減することが好ましい。VOCを含まないインクとしては例えば特許文献2がある。
特許2880682号公報 特開2008−106142号公報
特許文献2に記載されているインクはVOCを含まない点において環境に優しいと言えるものの、油相に増粘剤を含んでいないため長期放置後の性能(インクの出すぎ、油はき)は悪いことが予測される。
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、通常使用時のみならず長期放置時においても浸透乾燥性がよく、印刷物の滲みや目詰りさらには油の吐出しが少なく、環境適正にも優れた孔版印刷用エマルションインクを提供することを目的とするものである。
本発明の孔版印刷用エマルションインクは、油相および水相からなる孔版印刷用エマルションインクにおいて、前記油相に沸点が240℃未満の溶剤を含まず、平均分子量が5,000未満のアルキド樹脂と、脂肪酸アミドまたはシリカとを含むことを特徴とするものである。
さらに、平均分子量が10,000以上のアルキド樹脂を含むことが好ましい。
本発明の孔版印刷用エマルションインクは、油相に平均分子量が5,000未満のアルキド樹脂を含むことによって通常使用時の浸透乾燥性が向上するとともに、長期放置時の目詰まりが抑制されると考えられる。また、脂肪酸アミドまたはシリカの少なくともいずれかを含有することによって、長期放置時においても良好な浸透乾燥性を得ることができるとともに、長期放置時の油の吐出しを改善することが可能になる。また、沸点が240℃未満の溶剤を含まないので、使用時のみならず放置時においても環境適正に優れたインクとすることができる。
なお、平均分子量が10,000以上のアルキド樹脂を含むことによって、油の吐出しをさらに改善することが可能となる。
以下、本発明の孔版印刷用エマルションインクを詳細に説明する。本発明の孔版印刷用エマルションインクは、油相および水相からなる孔版印刷用エマルションインク(以下、単にインクともいう)において、油相に沸点が240℃未満の溶剤を含まず、平均分子量が5,000未満のアルキド樹脂と、脂肪酸アミドまたはシリカを含むことを特徴とする。
本発明のインクは、油相に平均分子量が5,000未満のアルキド樹脂(以下、低分子量アルキド樹脂ともいう)を含む。ここで、平均分子量は質量平均分子量であり、ゲル浸透クロマトグラフィー法(標準ポリスチレン換算)により測定されたものを意味する。低分子量アルキド樹脂の平均分子量は500以上5,000未満が好ましく、1,000以上5,000未満がより好ましく、さらには1,500以上3,000未満がより好ましい。平均分子量が5,000より大きい場合は浸透乾燥性が改善されにくく転写汚れが発生しやすくなる。
低分子量アルキド樹脂の含有量は、インク全量に対して0.5質量%〜20質量%であることが好ましく、1質量%〜15質量%であることがより好ましい。なお、後述する平均分子量が10,000以上のアルキド樹脂を併用する場合には、平均分子量が10,000以上のアルキド樹脂が高粘度であるため、低分子量アルキド樹脂を単独で用いる場合よりもその含有量は少なくてもよい。
アルキド樹脂は他の樹脂に比べて極性が高いため、顔料との濡れ性に優れる。とりわけ、低分子量アルキド樹脂は高分子量樹脂と比較して顔料分散性が高い。これは、低分子量であるほど顔料への吸着速度が速く、かつ樹脂自体の粘度が低いために顔料分散体の流動性が高くなることによるものであるが、これによって浸透乾燥性が向上すると考える。また、顔料分散性に優れるために、長期放置時のドラム外周のスクリーン/マスター部に残存しているインクの増粘が発生し難く、長期放置時の目詰まりが抑制されると考えられる。
一方で、低分子量アルキド樹脂は溶剤を保持し難くなるために、長期放置時に、油を吐出しやすくなる。このため、油相に脂肪酸アミドまたはシリカの少なくともいずれか一方を含有させることによって、浸透乾燥性を悪化させることなく、また目詰まりを起こさせることなく、油の吐出しを改善することが可能となり、長期放置時においても良好な浸透乾燥性を有するものとすることができる。
脂肪酸アミドとしては、炭素数10以上の飽和または不飽和の脂肪酸をアミド化したものが好ましい。このような高級脂肪酸アミドを用いることにより、油の吐出しをより改善することができるとともに、長期放置後においても良好な浸透乾燥性を有するものとすることができる。具体的には、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸をアミド化したもので、脂肪酸モノアミドに限らず、置換アミド、ビスアミド、置換尿素化合物、脂肪酸とポリアミンからなる脂肪酸ポリアミド、脂肪酸イミド等を好ましく挙げることができる。脂肪酸アミドが微粉末状の場合、溶剤中に膨潤させてから用いることが好ましい。なお、あらかじめ膨潤したペースト状脂肪酸アミドを用いることもできる。
シリカとしては、表面に−OH基を有する親水性シリカ、−OH基をメチル基、トリメチルシリル基等の疎水性基で置換した疎水性シリカどちらも好ましく用いることができるが、インクの安定性の観点からすれば、疎水処理を施した疎水性シリカがより好ましい。シリカの比表面積は油の吐き出しの抑制効果に関連し、比表面積が小さい場合は、油の吐き出しの改善効果が低い。従って、長期放置時の安定性の観点からすれば、100m2/g以上であることが好ましい。
上記脂肪酸アミドまたはシリカはそれぞれ単独で用いてもよいし、両方を用いてもよい。また、2種類以上の脂肪酸アミドまたはシリカを適宜組み合わせて用いてもよい。脂肪酸アミドまたはシリカの含有量は、単独の場合、インク全量に対して0.05質量%〜5質量%であることが好ましく、0.3質量%〜3質量%であることがより好ましい。両者を併合して用いる場合には、インク全量に対して0.05質量%〜5質量%であることが好ましく、0.3質量%〜3質量%であることがより好ましい。
さらに油相に平均分子量が10,000以上のアルキド樹脂(以下、高分子量アルキド樹脂ともいう)を含有させてもよい。高分子量アルキド樹脂を併用することによって、油の吐出しをさらに改善することが可能となる。高分子量アルキド樹脂の平均分子量は10,000以上100,000未満がより好ましく、さらには10,000以上50,000未満がより好ましく、10,000以上25,000未満がさらに好ましい。平均分子量が10,000よりも小さい場合、油の吐き出し改善効果が得られにくく、平均分子量が100,000より大きい場合、浸透乾燥性を悪くさせ転写汚れが発生しやすくなる。
高分子量アルキド樹脂はゲル化されていてもよい。ゲル化されることで、エマルションの貯蔵安定性をより良好に保つことができる。ゲル化方法は、特に限定されないが、高分子量アルキド樹脂を、アルミニウムキレート化合物又はアルミニウムアルコラートとともに溶剤に混合し、この混合物を加熱等の方法で反応させることでゲル化することができる。
高分子量アルキド樹脂を併用する場合の、低分子量アルキド樹脂と高分子量アルキド樹脂の割合は、用いる低分子量アルキド樹脂と高分子量アルキド樹脂の平均分子量や、他に樹脂を含むか否か、含む場合の樹脂の種類、さらに脂肪酸アミドやシリカの種類や含有量によっても異なるため一概には言えないが、例えば、低分子量アルキド樹脂と高分子量アルキド樹脂以外に樹脂を含まない場合、その比は9:1〜1:9(低分子量アルキド樹脂の質量:高分子量アルキド樹脂の質量)の範囲であることがより好ましい。
本発明のインクの油相は、必須成分以外に、通常時および長期放置時における浸透乾燥性の向上と目詰まりの抑制、油の吐出し改善の効果を損なわない範囲において、着色剤、界面活性剤(乳化剤)、低分子量、高分子量アルキド樹脂以外の樹脂成分、溶剤(油)成分、顔料分散剤等から構成される。油相の割合はインク全質量に対して20質量%〜80質量%であることが好ましく、25質量%〜75質量%であることがより好ましい。
溶剤は沸点が240℃未満の溶剤を含まなければ、その種類は特に限定されず、非極性溶剤及び極性溶剤のいずれも使用することができる。例えば、非極性溶剤として炭化水素溶剤等、極性溶剤として植物油、エステル溶剤、アルコール溶剤、高級脂肪酸溶剤、エーテル溶剤等を使用することができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を適宜混合して用いてもよい。2種以上を混合して使用する場合には、混合液は単一の連続する相を形成する必要がある。
炭化水素溶剤としては、脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられる。脂肪族炭化水素溶剤及び脂環式炭化水素系溶剤としては、JX日鉱日石エネルギー社製「0号ソルベントH、AF−5、AF−6、AF−7」(いずれも商品名)、エクソンモービル社製「ExxolD100、ExxolD130、ExxolD140」(いずれも商品名)等が挙げられる。
植物油としては、大豆油、コーン油、なたね油、サフラワー油、ごま油、ひまし油、オリーブ油、やし油、米ぬか油、綿実油、パーム油、パーム核油、あまに油等が挙げられる。
エステル溶剤としては、パルミチン酸イソステアリル、パルミチン酸イソオクチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、トリ2エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン等が挙げられる。
アルコール溶剤としては、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられる。
高級脂肪酸溶剤としては、イソノナン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、オレイン酸、イソステアリン酸等が挙げられる。
エーテル溶剤としては、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
溶剤の含有量は、インク油相質量に対して10質量%〜80質量%であることが好ましく、40質量%〜75質量%であることがより好ましい。
着色剤としては、不溶性アゾ顔料、溶性アゾ顔料、フタロシアニンブルー、染色レーキ、イソインドリノン、キナクリドン、ジオキサジンバイオレット、ペリノン・ペリレンのような有機顔料;カーボンブラック、二酸化チタン等の無機顔料;アゾ系、アントラキノン系、アジン系等の油溶性染料;各種水溶性染料、分散染料等が挙げられる。これらの着色剤は、目的とする色相を実現するため、単独で、または2種以上を混合して用いることができ、顔料と染料とを組み合わせてもよい。その配合量も、適宜設定すればよいが、一般に、インクの全質量に対して20質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは3質量%〜10質量%の範囲で用いられる。
また、印刷物の画質を向上させるために、インク中に体質顔料を含有させることができる。体質顔料としては、たとえば、白土、タルク、クレー、珪藻土、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、アルミナホワイト、カオリン、マイカ、水酸化アルミニウムを用いることができ、これらの2種以上を併用してもよい。体質顔料は、多量に含有させると被印刷体への着色剤の定着を阻害したり、印刷機の非使用後の印刷性能に支障をきたす恐れがあるため、10質量%以下の範囲で含有させることが好ましく、より好ましくは5質量%以下である。
界面活性剤は油中水型エマルションを構成するために用いられ、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤のいずれを用いてもよい。このうち、油中水型エマルションの乳化性や保存安定性の観点から、非イオン界面活性剤を用いることが好ましい。
具体的には、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンモノイソステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル、グリセリルモノステアレート、ヘキサグリセリルテトラオレエート、デカグリセリルデカオレエート、ヘキサグリセリルペンタオレエート等の(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、(ポリ)エチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(硬化)ヒマシ油等を好ましく挙げることができる。上記界面活性剤は、単独で用いてもよいし、二種類以上を適宜組み合わせて用いることもできる。
樹脂としては、たとえば、ロジン、ギルソナイト、ロジンエステル、マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、石油樹脂、アクリル樹脂、アミノ樹脂、ウレタン樹脂、セルロース樹脂、天然ゴム誘導体樹脂等を好ましく用いることができ、アルキド樹脂、フェノール樹脂をより好ましく用いることができる。また、アルキド樹脂またはロジン変性樹脂とアルミニウムキレート化合物またはアルミニウムアルコラートとの反応生成物も、好ましく用いることができる。樹脂の含有量は、インク全質量に対して1〜20質量%であることが好ましく、3〜15質量%であることがより好ましい。
顔料分散剤としては、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエステルポリアミン、ステアリルアミンアセテート等を用いることができ、中でも主鎖にポリアミド構造を有し、側鎖にポリエステル構造を有した櫛型のポリマーが好ましい。顔料分散剤の含有量は、インク全質量に対して0質量%〜10質量%であることが好ましく、0.1質量%〜5質量%であることがより好ましい。
その他、油相にはエマルションの形成及び安定性を阻害しない範囲で、酸化防止剤、流動性を調整する補助剤としてワックス等を主成分としたコンパウンド等を添加することができる。
水相中には、水の他、必要に応じて水蒸発抑制剤(または凍結防止剤)、電解質、pH調整剤、酸化防止剤等を含ませることができる。
水蒸発抑制剤(または凍結防止剤)としては、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類等の、水溶性有機溶剤等を好ましく挙げることができ、その含有量は、水相全量に対して1〜20質量%であることが好ましく、3〜15質量%であることがより好ましい。
電解質としては、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素カリウム、クエン酸ナトリウム、酒石酸カリウム、ホウ酸ナトリウム等が挙げられ、その含有量は、水相全量に対して0.1〜5.0質量%であることが好ましく、0.5〜2.0質量%であることがより好ましい。
本発明のインクは、公知の方法で調製することができる。例えば油相は、公知の分散機で顔料を溶剤に分散した後、さらに溶剤で希釈し、その際その他の油相成分を添加して調製することができる。希釈には、それ自体公知の撹拌機を使用することができる。水相は、水相の成分を、撹拌機により水に混合・溶解することにより調製することができる。そして、公知の乳化機を使用し、攪拌下の油相中に水相を滴下することにより、油中水型のエマルションインクを得ることができる。これらの分散、稀釈、乳化等を行うにあたって採用される条件等は、適宜選択することができる。
以下に本発明のインクの実施例を示す。
(インクの調製)
下記表1に示す配合(表に示す数値は質量部である)により、以下の手順に従い、各実施例、比較例のインクを調製した。なお、脂肪酸アミドを含む場合には、あらかじめAFソルベント6号4重量部と大豆油6重量部に脂肪酸アミド1.0重量部を添加し、70℃で攪拌し脂肪酸アミド膨潤液を調製した。油相の色材、体質顔料、樹脂、溶剤、脂肪酸アミド膨潤液等を混合し、ロッキングミルで充分に分散した。この油相中に、添加剤を混合した水相混合溶液を徐々に滴下し、ホモジナイザーを用いて乳化を行い、孔版印刷用エマルションインク(油中水型エマルションインク)を得た。
(評価)
(通常時の浸透乾燥性)
作製したエマルションインクを用いて、孔版印刷機としてリソグラフ(理想科学工業株式会社登録商標)RZ570(同社製)により30枚印刷を行い、印刷物を得た。この印刷物の印刷3分後に裏面印刷を行い、転写汚れが発生するか状態を調べ、次のように評価した。
◎:転写汚れが認められない
○:転写汚れがわずかに認められる
△:転写汚れが認められる
×:転写汚れがはっきりと認められる
(1週間放置後の印刷滲み)
1週間放置後の印刷ドラムを印刷機RZ570にセットして製版印刷し、印刷を行って、10枚目の印刷物の細字について以下のように評価した。
◎:滲んでいない
○:ほとんど滲んでいない
△:やや滲んでいる
×:滲んでいる
(1週間放置後の浸透乾燥性)
1週間放置後の印刷ドラムを印刷機RZ570にセットして製版印刷し、30枚印刷を行い、印刷物を得た。この印刷物の印刷3分後に裏面印刷を行い、転写汚れが発生するか状態を調べ、次のように評価した。
◎:転写汚れが見えない
○:転写汚れがわずかに見える
△:転写汚れが見える
×:転写汚れがはっきりと見える
(1ヶ月放置後の油吐き)
1ヶ月放置後の印刷ドラムの油吐きを下記の基準により目視評価した。
◎:油吐きなし
○:少量の油吐きが認められる
△:油吐きしているがドラムからはみ出していない
×:油吐きが顕著でドラムからはみ出している
(1ヶ月放置後の目詰まり)
1ヶ月放置後の印刷ドラムを印刷機RZ570にセットして製版印刷し、印刷を行い、以下のように評価した。
◎:20枚以内で所望の印刷画像が得られた
○:50枚以内で所望の印刷画像が得られた
△:80枚以内で所望の印刷画像が得られた
×:81枚以上で所望の印刷画像が得られた
実施例および比較例のインクの処方とともに、上記の評価項目により評価した結果を表1に示す。
実施例1、2および比較例1はいずれも低分子量アルキド樹脂を含むインクであり、通常時の浸透乾燥性には差が見られないが、1週間放置後の印刷滲み、浸透乾燥性および1ヶ月放置後の油吐きは顕著な差が見られた。実施例1は脂肪酸アミドを含むインクであり、実施例2はシリカを含むインクであるが、比較例1はいずれも含まないインクである。このことから、脂肪酸アミドあるいはシリカを含有させることにより長期放置時において過剰のインクが印刷用紙に転移して細字つぶれが生じることや、浸透乾燥性を大きく改善できるとともに、油吐きを抑制できることがわかる。
増粘剤であっても、比較例3の炭酸カルシウム、比較例4のオレフィンワックス、比較例5の水添ひまし油、比較例6の有機ベントナイトでは1ヶ月放置後の油吐きは改善が認められるものの、比較例2と比較すると、1週間放置後の印刷滲み、浸透乾燥性については十分な改善が認められず、1ヶ月放置後の目詰まりについては悪化した。実際の孔版印刷機の使用において、2〜4日程度放置後に再び印刷するということが非常に多いケースであるため、1週間放置後において印刷滲み、浸透乾燥性が大きく改善することは極めて重要なことである。また、脂肪酸アミドを含んでいても低分子量アルキド樹脂を含まない比較例8や、いずれも含まない比較例7のインクでは通常時および1週間放置後の浸透乾燥性が悪化した。
実施例3〜8は低分子量アルキド樹脂と、脂肪酸アミドまたはシリカとを含むインクに、さらに高分子量アルキド樹脂を含有させたものであるが、これらのインクでは高分子量アルキド樹脂を含有しない実施例1および2のインクに比べて、全体的に1ヶ月放置後の油吐きがより改善された。これによって、印刷機からインクが漏れ出してメンテナンス作業の煩雑さを解消することが可能となる。
以上のように、本発明の孔版印刷用エマルションインクは、油相に平均分子量が5,000未満のアルキド樹脂と、脂肪酸アミドまたはシリカとを含むので、通常時の浸透乾燥性のみならず、長期放置時の浸透乾燥性や油の吐出しを効果的に抑制することができる。加えて、油相に沸点が240℃未満の溶剤を含まないので、使用時においても放置時においても環境適正に優れたインクとすることができる。
なお、本実施例では顔料としてカーボンブラックを用いた例を示したが、アルキド樹脂と、脂肪酸アミドまたはシリカの作用効果からすれば、その他の顔料でも同様の結果が得られるものと推測される。

Claims (2)

  1. 油相および水相からなる孔版印刷用エマルションインクにおいて、前記油相に沸点が240℃未満の溶剤を含まず、平均分子量が5,000未満のアルキド樹脂と、脂肪酸アミドまたはシリカとを含むことを特徴とする孔版印刷用エマルションインク。
  2. さらに、平均分子量が10,000以上のアルキド樹脂を含むことを特徴とする請求項1記載の孔版印刷用エマルションインク。
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