JP7098568B2 - 孔版印刷用油中水型エマルションインキ - Google Patents

孔版印刷用油中水型エマルションインキ Download PDF

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Description

本発明は、孔版印刷装置に用いる油中水型エマルションインキに関する。
孔版印刷方式は、オフセット印刷、グラビア印刷、凸版印刷のような印刷方式に比べて、使用後に洗浄等の煩雑な作業を行う必要がない、専門のオペレーターを必要としない等の操作性の良さ、簡便性を備えている。サーマルヘッドをデバイスとして用いる感熱製版方式を用いて以来、孔版印刷方式において画像処理のデジタル化が図られるようになり、高品位の印刷物を短時間で簡便に得られるようになったため、情報処理端末としてその利便性が認められている。とりわけ、孔版原紙(マスター)の製版・着版・排版動作、インキの供給動作や印刷動作等が自動制御された輪転式孔版印刷装置は、デジタル孔版印刷機等の名称でオフィスや学校などで広く利用されている。
孔版印刷用インキとしては、一般に油中水(W/O)型エマルションインキが使用されている。油中水型エマルションインキは、孔版印刷装置を非使用状態で放置したときに印刷装置内部のインキが大気と接触していても、インキの成分構成や物性の変化を抑制する機能を有している。すなわち、エマルションインキの内相成分である水は、外相成分である油によって覆われているため、その蒸発速度が抑制されている。
しかしながら、孔版印刷装置を長期間使用せずに放置しておくと、印刷装置の版胴内部に残されたインキは、エマルション内の水分が徐々に蒸発することにより、油相に対する水相の比率が下がり、インキ粘度が低下してしまう。このようにインキが軟化する結果、印刷装置の版胴からインキが漏れ出して、清掃などのメンテナンス作業を行う必要が生じることがあった。
このような問題に対して、例えば、着色剤として染料を含む油中水型エマルションインキにおいて、さらに、体質顔料を含む孔版印刷用エマルションインキが提案されている(特許文献1)。また、油相及び水相よりなる油中水型エマルションインキにおいて、油相中に常温における吸油量が50ml/100g以下の着色顔料を含有するとともに、さらに、油相中に常温における吸油量が60ml/100g以上の体質顔料を含有する孔版印刷用油中水型エマルションインキが提案されている(特許文献2)。
特開2000-191970号公報 特開2001-311027号公報
しかし、特許文献1のインキでは、体質顔料を多量に含む必要があり、そのぶんインキ中の粒子濃度が高くなるため、着色剤として顔料を用いることが難しかった。体質顔料や顔料などの粒子を多く含むインキは、孔版印刷装置を非使用状態で放置して、インキ中の水分量が減少すると、粒子濃度がさらに高くなってしまう。その結果、非使用状態で放置されたインキを用いて印刷すると、版胴に巻装されているスクリーン等における目詰まりを発生しやすく、印刷画像がかすれる懸念があった。特許文献2のインキでは、やはり同様の懸念があるため、特定の特性をもった顔料を含み、体質顔料の含有量も少量である必要があった。また、体質顔料をインキに配合するためには、体質顔料の分散工程を設ける必要があるなど、インキの生産上の課題もあった。
本発明は、上記の従来技術の問題を解決し、孔版印刷装置を非使用状態で放置しても、印刷装置の版胴からのインキの漏出を防止することができる孔版印刷用油中水型エマルションインキを提供することを目的とするものである。
本発明の実施形態は、カルボキシ基を有する油溶性樹脂を含む油相と、下記式(1)で表される化合物及び水溶性二価金属塩を含む水相と、を含む孔版印刷用油中水型エマルションインキである。
R-C(CHOH)-NH ・・・(1)
式(1)中、Rは水素原子、又は水酸基で置換されていてもよい炭素数が1~2のアルキル基である。
カルボキシ基を有する油溶性樹脂は、アルキド樹脂又はロジン変性フェノール樹脂を含むことが好ましい。
式(1)で表される化合物と水溶性二価金属塩の含有量の比率は、質量比で、2:8~7:3であることが好ましい。
本発明によれば、孔版印刷装置を非使用状態で放置しても、印刷装置の版胴からのインキの漏出が防止された孔版印刷用油中水型エマルションインキを提供することができる。
本発明の実施形態の孔版印刷用油中水型エマルションインキ(以下、単にインキともいう)は、カルボキシ基を有する油溶性樹脂を含む油相と、下記式(1)で表される化合物及び水溶性二価金属塩を含む水相と、を含む。
R-C(CHOH)-NH ・・・(1)
式(1)中、Rは水素原子、又は水酸基で置換されていてもよい炭素数が1~2のアルキル基である。
孔版印刷装置を非使用状態で放置しておくと、印刷装置の版胴内部に残されたインキは、エマルション内の水分が徐々に蒸発することにより、エマルションの水相に含まれている式(1)で表される化合物の水相における濃度が、徐々に高まる。そのため、エマルションの油相と水相の界面の近傍に存在する式(1)で表される化合物の量が増加する。一方で、油相に含まれているカルボキシ基を有する油溶性樹脂は、その極性基により、油相と水相の界面に配向しやすい性質をもっている。このように、油相と水相の界面の近傍において、カルボキシ基を有する油溶性樹脂と式(1)で表される化合物の量が増加することで、カルボキシ基を有する油溶性樹脂の酸性官能基であるカルボキシ基と、式(1)で表される化合物の塩基性官能基であるアミノ基とが、中和反応を起こしやすくなる。中和反応が進むと、カルボキシ基を有する油溶性樹脂の親水性が高まり、カルボキシ基を有する油溶性樹脂が、より油相と水相の界面に配向しやすくなる。
水溶性二価金属塩もまた、エマルション内の水分が徐々に蒸発することにより、水相における濃度が徐々に高まる。水溶性二価金属塩は電解質であり、中和反応によって親水性が高まったカルボキシ基を有する油溶性樹脂のカルボキシ基と、二価金属原子とは、錯体を形成しやすい。カルボキシ基を有する油溶性樹脂のカルボキシ基が二価金属原子と錯体を形成し、さらに、二価金属原子が複数のカルボキシ基と錯体を形成すると、カルボキシ基を有する油溶性樹脂が見かけ上、凝集した高分子化合物になる。このように、カルボキシ基を有する油溶性樹脂が高分子化合物の凝集体となるため、エマルション内の水分が蒸発するにしたがって、インキは高い弾性を帯び始める。そのため、孔版印刷装置を長期間使用せずに放置しておいても、印刷装置の版胴内部に残されたインキは垂れ難く、版胴からのインキの漏出が防止されるものと考えられる。
本発明の実施形態のインキにおいて、油相は15~55質量%であることが好ましく、水相は85~45質量%であることが好ましい。油相は、カルボキシ基を有する油溶性樹脂、油成分、乳化剤等を含むことが好ましく、水相は、下記式(1)で表される化合物、水溶性二価金属塩、水等を含むことが好ましい。着色剤は、油相または水相に含ませることができる。以下に、本発明の実施形態のインキの各成分について、順次説明する。
R-C(CHOH)-NH ・・・(1)
式(1)中、Rは水素原子、又は水酸基で置換されていてもよい炭素数が1~2のアルキル基である。
<油相>
[カルボキシ基を有する油溶性樹脂]
本実施形態において、油相には、カルボキシ基を有する油溶性樹脂を含む。カルボキシ基を有する油溶性樹脂は、固体樹脂であっても液体樹脂であってもよい。カルボキシ基を有する油溶性樹脂としては、例えば、ロジンを原料とする油溶性樹脂、多塩基酸(例えば二塩基酸)を原料とする油溶性樹脂、ロジン及び多塩基酸(例えば二塩基酸)を原料とする油溶性樹脂、等を好ましく挙げることができる。ロジンを原料とする油溶性樹脂としては、例えば、ロジン、ロジンエステル、ロジン変性フェノール樹脂等が好ましい。多塩基酸を原料とする油溶性樹脂としては、例えば、アルキド樹脂、マレイン酸樹脂、フタル酸樹脂等が好ましい。ロジン及び多塩基酸を原料とする油溶性樹脂としては、例えば、ロジン変性マレイン酸樹脂等が好ましい。これらの中でも、版胴からのインキの漏出をより効果的に防止できるため、ロジン変性フェノール樹脂とアルキド樹脂が好ましい。
ロジン変性フェノール樹脂は、フェノール樹脂を天然物のロジンで変性したものであり、ロジン、アルキルフェノール、ホルムアルデヒド、ポリオールから構成される樹脂である。アルキルフェノールとしては、p-t-ブチルフェノール、p-t-オクチルフェノール、p-ノニルフェノール、p-ドデシルフェノールなどを、ポリオールとしては、ペンタエリトリトール、グリセリンなどを用いることができる。アルキド樹脂は、多塩基酸及び脂肪酸(又は脂肪油)と多価アルコール類との縮重合によって作られる合成樹脂であり、多価アルコールとしては、グリセリン、ペンタエリトリトールなどを、多塩基酸としては、無水フタル酸、無水マレイン酸などを、脂肪油としては、あまに油、大豆油、ひまし油などに含まれる不飽和脂肪酸を用いることができる。また、本実施形態において、アルキド樹脂またはロジン変性樹脂とアルミニウムキレート化合物またはアルミニウムアルコラートとの反応生成物も、好ましく用いることができる。
カルボキシ基を有する油溶性樹脂は、単独で用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いることもできる。油溶性樹脂の含有量は、版胴からのインキの漏出をより効果的に防止できるため、インキ全量に対して1~20質量%であることが好ましく、3~15質量%であることがより好ましく、7~15質量%であることがさらに好ましい。
[油成分]
本実施形態において、油成分としては、各種工業用溶剤、モーター油、ギヤー油、軽油、灯油、スピンドル油、マシン油、流動パラフィン等の鉱物油、オリーブ油、なたね油、あまに油、ひまし油、サラダ油、大豆油、米ぬか油等の植物油のほか、合成油等を用いることもできる。
工業用溶剤としては、非水溶性有機溶剤であれば、いずれも用いることができる。例えば、脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素溶剤、芳香族炭化水素溶剤等の石油系炭化水素溶剤を好ましく挙げることができる。脂肪族炭化水素溶剤及び脂環式炭化水素溶剤としては、パラフィン系、イソパラフィン系、ナフテン系等の非水溶性有機溶剤を挙げることができ、市販品としては、0号ソルベントL、0号ソルベントM、0号ソルベントH、カクタスノルマルパラフィンN-10、カクタスノルマルパラフィンN-11、カクタスノルマルパラフィンN-12、カクタスノルマルパラフィンN-13、カクタスノルマルパラフィンN-14、カクタスノルマルパラフィンN-15H、カクタスノルマルパラフィンYHNP、カクタスノルマルパラフィンSHNP、アイソゾール300、アイソゾール400、テクリーンN-16、テクリーンN-20、テクリーンN-22、AFソルベント4号、AFソルベント5号、AFソルベント6号、AFソルベント7号、ナフテゾール160、ナフテゾール200、ナフテゾール220(いずれもJXTGエネルギー株式会社製の商品名);アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM、エクソールD40、エクソールD60、エクソールD80、エクソールD95、エクソールD110、エクソールD130(いずれもエクソンモービル社製の商品名);コスモオルパス32、コスモオルパス46、コスモオルパス56、コスモオルパス68、コスモオルパス100、コスモオルパス150、コスモオルパス220、コスモオルパス320、コスモオルパス460(いずれもコスモ石油ルブリカンツ株式会社製の商品名)等を好ましく挙げることができる。芳香族炭化水素溶剤としては、グレードアルケンL、グレードアルケン200P(いずれもJXTGエネルギー株式会社製の商品名);ソルベッソ100、ソルベッソ150、ソルベッソ200、ソルベッソ200ND(いずれもエクソンモービル社製の商品名)等を好ましく挙げることができる。石油系炭化水素溶剤の蒸留初留点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがいっそう好ましい。蒸留初留点はJIS K0066「化学製品の蒸留試験方法」に従って測定することができる。
また、油成分として、脂肪酸エステル系溶剤、高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤等の有機溶剤も好ましく挙げることができる。例えば、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ヘキシル、パルミチン酸イソオクチル、パルミチン酸イソステアリル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、オレイン酸ヘキシル、リノール酸メチル、リノール酸エチル、リノール酸イソブチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソオクチル、イソステアリン酸イソプロピル、ピバリン酸2-オクチルデシル、大豆油メチル、大豆油イソブチル、トール油メチル、トール油イソブチル等の1分子中の炭素数が13以上、好ましくは16~30の脂肪酸エステル系溶剤;イソミリスチルアルコール、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、イソエイコシルアルコール、デシルテトラデカノール等の1分子中の炭素数が6以上、好ましくは12~20の高級アルコール系溶剤;ラウリン酸、イソミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、α-リノレン酸、リノール酸、オレイン酸、イソステアリン酸等の1分子中の炭素数が12以上、好ましくは14~20の高級脂肪酸系溶剤等が挙げられる。脂肪酸エステル系溶剤、高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤等の有機溶剤の沸点は、150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、250℃以上であることがさらに好ましい。なお、沸点が250℃以上の有機溶剤には、沸点を示さない有機溶剤も含まれる。
これらの油成分は、単独で用いてもよく、単一の相を形成する限り2種以上を組み合わせて用いることもできる。
[乳化剤]
本実施形態において、乳化剤は、油中水型エマルションを構成するために用いられ、HLB値が好ましくは3~8、より好ましくは3.5~6.5の親油性乳化剤を用いることができる。乳化剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤のいずれを用いてもよい。このうち、油中水型エマルションの乳化性や保存安定性の観点から、非イオン界面活性剤を用いることが好ましい。具体的には、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンモノイソステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル、グリセリルモノステアレート、ヘキサグリセリルテトラオレエート、ヘキサグリセリルペンタオレエート、デカグリセリルペンタオレエート、デカグリセリルデカオレエート、デカグリセリルペンタヒドロキシステアレート、デカグリセリルペンタイソステアレート、デカグリセリル縮合リシノレエート等の(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、(ポリ)エチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(硬化)ヒマシ油等を好ましく挙げることができる。乳化剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いることもできる。乳化剤の含有量は、インキ全量に対して0.1~10質量%であることが好ましく、1~5質量%であることがより好ましい。
[着色剤]
本実施形態において、油相には、着色剤を含むことが好ましい。着色剤としては、顔料および染料を挙げることができ、顔料を含むことが好ましい。顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、多環式顔料および染付レーキ顔料等の有機顔料、ならびに無機顔料を用いることができる。アゾ顔料としては、溶性アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料及び縮合アゾ顔料等が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、銅フタロシアニンブルーおよび銅フタロシアニングリーン等の金属フタロシアニン顔料、ならびに無金属フタロシアニン顔料等が挙げられる。多環式顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料およびジケトピロロピロール(DPP)等が挙げられる。無機顔料としては、代表的にはカーボンブラック、酸化チタン、および真鍮粉等の金属顔料等が挙げられる。染料としては、アゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノンイミン染料、キサンテン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、フタロシアニン染料、金属フタロシアニン染料等の油溶性染料を挙げることができる。
これらの顔料および染料は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。着色剤の含有量は、インキ全量に対して0.1~20質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましい。
[その他の油相成分]
本実施形態において、油相には、さらに、カルボキシ基を有する油溶性樹脂以外の油溶性樹脂、体質顔料、顔料分散剤、酸化防止剤、ゲル化剤等を適宜含むことができる。カルボキシ基を有する油溶性樹脂以外の油溶性樹脂としては、例えば、ギルソナイト、フェノール樹脂、石油樹脂、アクリル樹脂、アミノ樹脂、ウレタン樹脂、セルロース樹脂、天然ゴム誘導体樹脂等を用いることができる。体質顔料としては、例えば、タルク、珪藻土、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、アルミナホワイト、シリカ、カオリン、マイカ、酸性白土、活性白土、ベントナイト等を用いることができる。顔料分散剤としては、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリエステルポリアミン、ビニルピロリドンと長鎖アルケンとの共重合体、ポリエステル側鎖を有する含窒素グラフト共重合体等を挙げることができる。酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソール、ノルジヒドログアヤレチック酸、フェノチアジン等を挙げることができる。
<水相>
[式(1)で表される化合物]
本実施形態において、水相には、下記式(1)で表される化合物を含む。
R-C(CHOH)-NH ・・・(1)
式(1)中、Rは水素原子、又は水酸基で置換されていてもよい炭素数が1~2のアルキル基である。
式(1)で表される化合物は、塩基性の化合物である。式(1)で表される化合物のRの炭素数は0~2であり、式(1)で表される化合物の炭素数は3~5であることで、水溶性二価金属塩の二価金属原子との不溶性塩を形成しがたくなり、カルボキシ基を有する油溶性樹脂のカルボキシ基との中和反応が起きやすくなるため、版胴からのインキの漏出を防止することができる。
式(1)で表される化合物としては、例えば、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシエチル-1,3-プロパンジオール等を好ましく挙げることができる。
式(1)で表される化合物は、単独で用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いることもできる。式(1)で表される化合物の含有量は、版胴からのインキの漏出をより効果的に防止できるため、インキ全量に対して0.05~5質量%であることが好ましく、0.1~2質量%であることがより好ましい。
[水溶性二価金属塩]
本実施形態において、水相には、水溶性二価金属塩を含む。水溶性二価金属塩は、電解質である。水溶性であり、かつ二価金属の塩である化合物を水相に含むことにより、カルボキシ基を有する油溶性樹脂と錯体を形成しやすく、版胴からのインキの漏出を防止することができる。
水溶性二価金属塩としては、例えば、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸鉄、硫酸ニッケル、硫酸銅、チオ硫酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸亜鉛、硝酸鉄、硝酸ニッケル、硝酸鉛、硝酸銅、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化バリウム、塩化亜鉛、塩化鉄、塩化ニッケル、塩化銅等を用いることができ、これらの水和物を用いてもよい。水溶性二価金属塩の二価金属原子は、版胴からのインキの漏出をより効果的に防止できるため、マグネシウム、カルシウム等が好ましい。
水溶性二価金属塩は、単独で用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いることもできる。水溶性二価金属塩の含有量は、版胴からのインキの漏出をより効果的に防止できるため、インキ全量に対して0.01~5質量%であることが好ましく、0.05~2質量%であることがより好ましい。ここで、水溶性二価金属塩が水和物である場合は、水和している水分子を除いた量としての含有量を意味する。
また、式(1)で表される化合物と水溶性二価金属塩の含有量(水和物である場合は、水和している水分子を除いた量)の比率は、版胴からのインキの漏出をより効果的に防止できるため、質量比で、1:9~9:1であることが好ましく、2:8~7:3であることがより好ましい。
[水]
本実施形態において、水は水相の主成分であることが好ましい。水としては、清浄であれば特に限定されず、イオン交換水、蒸留水、精製水、水道水、地下水等を用いることができる。水の含有量は、インキ全量に対して40~80質量%であることが好ましく、50~70質量%であることがより好ましい。
[水溶性有機溶剤]
本実施形態において、水相には、さらに、水溶性有機溶剤を含むことができる。水溶性有機溶剤としては、室温で液体であり、水に溶解可能な有機化合物を用いることができる。例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、2-メチル-2-プロパノール等の炭素数1~4の低級アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類;グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン類;モノアセチン、ジアセチン等のアセチン類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;トリエタノールアミン、1-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、β-チオジグリコール、スルホラン等を用いることができる。これらの水溶性有機溶剤は、単独で用いてもよく、単一の相を形成する限り2種以上を組み合わせて用いることもできる。水溶性有機溶剤としては、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合する水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。また、水溶性有機溶剤の沸点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。なお、沸点が150℃以上の水溶性有機溶剤には、沸点を示さない水溶性有機溶剤も含まれる。
[着色剤]
本実施形態において、水相には、着色剤を含んでもよい。着色剤としては、顔料および染料を挙げることができる。顔料としては、上述した油相に含まれる顔料と同様の顔料を用いることができる。染料としては、例えば、塩基性染料、酸性染料、直接染料、可溶性バット染料、酸性媒染染料、媒染染料、反応染料、バット染料、硫化染料等のうち、水溶性の染料および還元等により水溶性になった水溶性染料を好ましく用いることができる。また、アゾ系、アントラキノン系、アゾメチン系、ニトロ系等の分散染料も好ましく用いることができる。
[その他の水相成分]
本実施形態において、水相には、さらに、防腐剤、酸化防止剤、pH調整剤、水溶性二価金属塩以外の電解質、水溶性樹脂、水分散性樹脂、体質顔料、界面活性剤、顔料分散剤等を適宜含むことができる。防腐剤は、インキの腐敗を防止して保存安定性を向上させることができる。防腐剤としては、例えば、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン等のイソチアゾロン系防腐剤、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)-s-トリアジン等のトリアジン系防腐剤、2-ピリジンチオールナトリウム-1-オキシド、8-オキシキノリン等のピリジン・キノリン系防腐剤、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム等のジチオカルバメート系防腐剤、2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミド、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノール、1,2-ジブロモ-2,4-ジシアノブタン等の有機臭素系防腐剤、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸エチル、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、サリチル酸等を用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸ナトリウム、イソアスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸、亜硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム等を挙げることができる。
<物性など>
本実施形態の孔版印刷用油中水型エマルションインキの粘度は、孔版印刷装置の印圧等によってその適性範囲は異なるが、一般に、0.5~20Pa・s(20℃、せん断速度100/sにおける粘度)であることが好ましく、また、(擬)塑性流動性であることが孔版印刷用として適している。
本実施形態の孔版印刷用油中水型エマルションインキは、通常、公知の乳化装置を用いて、油相組成物に水相組成物を徐々に添加して乳化することにより製造される。水相組成物液と油相組成物は、あらかじめ別々に調製したのち、油相組成物中に水相組成物を添加して乳化することが好ましい。着色剤として顔料を含む場合、油相組成物または水相組成物を調製する際に、ボールミル、アトライター、サンドミル、ロールミル、ビーズミル等の公知の分散装置で顔料分散することが好ましい。油相組成物の調製および水相組成物の調製は、それぞれ、全量を一括して混合してもよく、一部の成分を混合した後に残りの成分を混合してもよい。インキの製造には、ディスパーミキサー、ホモミキサー、コロイドミル等の公知の乳化装置を用いることができる。
本実施形態の孔版印刷用油中水型エマルションインキは、普通紙、コート紙、特殊紙等の印刷用紙に対して、好適に用いることができる。印刷用紙の中でも、普通紙が好適である。ここで、普通紙とは、通常の紙の上にインキの受容層やフィルム層等が形成されていない紙である。普通紙の一例としては、上質紙、中質紙、PPC用紙、更紙、再生紙等を挙げることができる。
以下に、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明の技術思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。特に説明のない成分については、富士フイルム和光純薬株式会社等から入手可能である。
<孔版印刷用油中水型エマルションインキの作製>
[実施例1]
まず、フタロシアニン顔料(東洋インキ株式会社製「リオノールブルーFG-7330」)5.0質量%、アルキド樹脂(荒川化学工業株式会社製「アラキード251」)13.0質量%、鉱物油A(JXTGエネルギー株式会社製「ナフテゾール200」)5.0質量%、鉱物油B(コスモ石油ルブリカンツ株式会社製「コスモオルパス460」)10.0質量%、デカグリセリルペンタオレエート(日光ケミカルズ株式会社製「ニッコールデカグリン5-OV」)1.0質量%を混合し、三本ロールミルを用いて顔料分散し、油相を調製した。次に、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール0.5質量%、硫酸マグネシウム七水和物1.0質量%、イオン交換水64.5質量%を混合し、水相を調製した。調製した油相を乳化装置に投入し、撹拌翼を回転させながら、調製した水相を徐々に滴下し、さらに撹拌翼を回転させつづけて乳化を行い、実施例1の孔版印刷用油中水型エマルションインキを作製した。
[実施例2]
2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールを2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオールに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の孔版印刷用油中水型エマルションインキを作製した。
[実施例3]
2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールを2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の孔版印刷用油中水型エマルションインキを作製した。
[実施例4]
2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールを2-アミノ-1,3-プロパンジオールに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の孔版印刷用油中水型エマルションインキを作製した。
[実施例5~8]
ロジン変性フェノール樹脂(ハリマ化成株式会社製「ハリフェノール512」)8.0質量%、鉱物油A(JXTGエネルギー株式会社製「ナフテゾール200」)5.0質量%、鉱物油B(コスモ石油ルブリカンツ株式会社製「コスモオルパス460」)5.0質量%を混合し、180℃に加温して溶解した後、室温に冷却した。これに、フタロシアニン顔料(東洋インキ株式会社製「リオノールブルーFG-7330」)5.0質量%、鉱物油B(コスモ石油ルブリカンツ株式会社製「コスモオルパス460」)10.0質量%、デカグリセリルペンタオレエート(日光ケミカルズ株式会社製「ニッコールデカグリン5-OV」)1.0質量%を混合し、油相を調製した。それ以外は、それぞれ実施例1~4と同様にして、実施例5~8の孔版印刷用油中水型エマルションインキを作製した。
[実施例9~12]
硫酸マグネシウム七水和物を硝酸カルシウム四水和物に変更した以外は、それぞれ実施例1~4と同様にして、実施例9~12の孔版印刷用油中水型エマルションインキを作製した。
[実施例13]
アルキド樹脂の13.0質量%を10.0質量%に、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールの0.5質量%を0.1質量%に、硫酸マグネシウム七水和物の1.0質量%を0.7質量%に、イオン交換水の64.5質量%を68.2質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例13の孔版印刷用油中水型エマルションインキを作製した。
[実施例14]
アルキド樹脂の13.0質量%を16.0質量%に、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールの0.5質量%を1.5質量%に、硫酸マグネシウム七水和物の1.0質量%を1.5質量%に、イオン交換水の64.5質量%を60.0質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例14の孔版印刷用油中水型エマルションインキを作製した。
[実施例15]
デカグリセリルペンタオレエート1.0質量%をソルビタンモノオレエート0.5質量%及びソルビタンセスキオレエート(東京化成工業株式会社製「スパン83」)0.5質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例15の孔版印刷用油中水型エマルションインキを作製した。
[実施例16]
鉱物油A5.0質量%及び鉱物油B10.0質量%を植物油(日清オイリオグループ株式会社製「日清こめ油」)10.0質量%に、デカグリセリルペンタオレエートの1.0質量%を3.0質量%に、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールの0.5質量%を0.2質量%に、硫酸マグネシウム七水和物の1.0質量%を0.5質量%に、イオン交換水の64.5質量%を68.3質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例16の孔版印刷用油中水型エマルションインキを作製した。
[実施例17]
デカグリセリルペンタオレエート3.0質量%をソルビタンモノオレエート1.5質量%及びソルビタンセスキオレエート(東京化成工業株式会社製「スパン83」)1.5質量%に変更した以外は、実施例16と同様にして、実施例17の孔版印刷用油中水型エマルションインキを作製した。
[比較例1]
2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール及び硫酸マグネシウム七水和物を配合せず、イオン交換水の64.5質量%を66.0質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の孔版印刷用油中水型エマルションインキを作製した。
[比較例2]
2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール及び硫酸マグネシウム七水和物を配合せず、イオン交換水の64.5質量%を66.0質量%に変更した以外は、実施例5と同様にして、比較例2の孔版印刷用油中水型エマルションインキを作製した。
[比較例3]
アルキド樹脂を配合せず、鉱物油Bの10.0質量%を23.0質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例3の孔版印刷用油中水型エマルションインキを作製した。
[比較例4]
2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールを水酸化ナトリウムに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例4の孔版印刷用油中水型エマルションインキを作製した。
[比較例5]
硫酸マグネシウム七水和物を硫酸リチウムに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例5の孔版印刷用油中水型エマルションインキを作製した。
[比較例6]
硝酸カルシウム四水和物を硝酸アルミニウム九水和物に変更した以外は、実施例9と同様にして、比較例6の孔版印刷用油中水型エマルションインキを作製した。
<評価>
作製した各インキについて、温度23℃相対湿度50%の環境下で、孔版印刷装置(理想科学工業株式会社製「リソグラフRZ670」)で印刷を行った後、1週間放置した。版胴の外周からインクが漏出しているか目視で確認したところ、実施例1~17の各インクは漏出していなかったのに対し、比較例1~6の各インクは漏出していた。
以上の結果から、実施例の各インキは、油相にカルボキシ基を有する樹脂を含み、水相に式(1)で表される化合物及び水溶性二価金属塩を含むインキであるため、印刷装置を非使用状態で放置しても、印刷装置の版胴からのインクの漏出が防止されたことが分かる。

Claims (3)

  1. カルボキシ基を有する油溶性樹脂を含む油相と、
    下記式(1)で表される化合物及び水溶性二価金属塩を含む水相と、
    を含む孔版印刷用油中水型エマルションインキ。
    R-C(CHOH)-NH ・・・(1)
    式(1)中、Rは水素原子、又は水酸基で置換されていてもよい炭素数が1~2のアルキル基である。
  2. 前記カルボキシ基を有する油溶性樹脂は、アルキド樹脂又はロジン変性フェノール樹脂を含む請求項1に記載の孔版印刷用油中水型エマルションインキ。
  3. 前記式(1)で表される化合物と前記水溶性二価金属塩の含有量の比率は、質量比で、2:8~7:3である請求項1又は2に記載の孔版印刷用油中水型エマルションインキ。
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