以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。なお、%は特に示さない限り、また数値固有の場合を除いて質量%である。
本発明の薄膜太陽電池用裏面電極テープは、透明電極フィルムと反射電極フィルムとが積層され、透明電極フィルムが接着性を有することを特徴とする。本発明の薄膜太陽電池用裏面電極テープは、各種薄膜太陽電池に使用することができるが、特に、スーパーストレート型薄膜太陽電池に適している。
〔透明導電フィルム〕
透明電極フィルムは、接着性を有し、(1)透明電極フィルム自体が接着性を有する場合、(2)透明電極フィルムの表面に接着層が形成されている場合がある。
透明電極フィルム自体または接着層を形成する接着剤は、透明電極フィルムまたは接着層を形成する時の状態(以下、初期状態という)が、液体状またはそれに近い流体状である必要があり、その様式には主に以下の4つが挙げられる。
<1>反応系
初期状態は、化学反応を起こす前の成分を主体とする液体状であり、モノマーと効果促進剤との混合や、熱や空気中の水分などの外的要因により反応を始め、重合反応・吸湿・縮合反応などを起こす化学反応型と、加熱させることで硬化・接着する熱硬化型に分類される。アクリル樹脂系、ポリウレタン系、セルロース系、オレフィン系、エポキシ樹脂系、シアノアクリレート系、シリコーン系、ポリイミド系、ポリベンズイミダソール系、ポリビニルブチラール樹脂系が挙げられる。
<2>溶液系
初期状態は、合成樹脂やゴムなどの高分子固形分が水・アルコール・有機溶剤などの溶媒に溶け込んだ液体状で、溶媒が気化した後に残留する溶質が硬化することで接着する。溶媒の種類によって溶剤系・水系などに分類される。ポリエステル系、ポリスチレン系、セルロース系、オレフィン系、塩化ビニル系、ゴム系、ポリメタクリレート樹脂系が挙げられる。
<3>水分散系
初期状態は高分子の固形分を水中で重合させた懸濁水溶液である。コロイド状態の高分子がエマルジョン化されて水に溶けることができる状態となっており、水が気化し溶質が硬化することで接着する。アクリル樹脂系、ポリウレタン系、ポリビニルアルコール系、ポリ酢酸ビニル系、エポキシ樹脂系、ゴム系が挙げられる。
<4>固形
初期状態は、粉体・ペレット・フィルム・網状などの固体であり、熱可塑性樹脂成分の固形接着剤を加熱し融解した状態にして流動性を付与(ホットメルト)した上で塗布し、冷却されることにより硬化・接着する。ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリ酢酸ビニル系、オレフィン系が挙げられる。
ここで、接着性を有する透明導電フィルムには、(A)透明導電フィルム自体の粘着性により基板上に接着するもの(上記<1>、<2>、<3>。以下、(A)タイプという)と、(B)透明導電フィルム自体に粘着性はないが、非接着体と貼り合わせた後、加熱等により接着性を発現するもの(上記<4>。以下、(B)タイプという)とがある。
《(1)透明電極フィルム自体が接着性を有する場合》
透明電極フィルム用組成物から透明電極フィルムを形成することができ、透明電極フィルム用組成物としては、導電性酸化物粒子とバインダーとを含むものを挙げることができる。
導電性酸化物粒子としては、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)、ATO(Antimony doped Tin Oxide:アンチモンドープ酸化錫)の酸化錫粉末やB、Al、Co、Fe、In、Ga、及びTiからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含有する酸化亜鉛粉末等が好ましく、このうち、ITO、ATO、AZO(Aluminum doped Zinc Oxide:アルミドープ酸化亜鉛)、IZO(Indium doped Zinc Oxide:インジウムドープ酸化亜鉛)、GZO(Garium doped Zinc Oxide:ガリウムドープ酸化亜鉛)が、より好ましい。また、導電性酸化物微粒子の平均粒径は、分散媒中で安定性を保つため、10〜100nmの範囲内であることが好ましく、このうち、20〜60nmの範囲内であると、より好ましい。ここで、平均粒径は、QUANTACHROME AUTOSORB−1による比表面測定によるBET法または堀場製作所製LB−550による動的光散乱法で測定する。特に記載がない場合にはQUANTACHROME AUTOSORB−1による比表面測定によるBET法を用いて測定する。
バインダーは、加熱により硬化するポリマー型バインダー又はノンポリマー型バインダーのいずれか一方又は双方を含む組成物であると好ましい。光電変換層に悪影響を与えるとされる水分や酸、上記導電性酸化物粒子の特性を低下させるアルカリ金属やアルカリ土類金属、およびそのイオンを含まないバインダーが、より好ましい。
ポリマー型バインダーとしては、アクリル樹脂系、ポリメチルメタクリレート(PMMA)系、ポリカーボネート系、ポリエステル系、アルキッド樹脂系、ポリウレタン系、アクリルウレタン系、ポリスチレン系、ポリアセタール系、ポリアミド系、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル系、セルロース系、オレフィン系、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)系及びシロキサン系ポリマー等が挙げられる。このうち、固形接着剤の代表例とされるポリウレタン系、ポリアミド系、ポリ酢酸ビニル系、オレフィン系や、比較的低温で射出整形可能な熱可塑性樹脂であるポリビニルアルコール、ポリスチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリレートなどは、接着層を一度完全に硬化させた後でも加熱により接着可能であるため、ハンドリング面から好ましい。
またポリマー型バインダーには、アルミニウム、シリコン、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銀、銅、亜鉛、モリブデンもしくは錫の金属石鹸、金属錯体、または金属アルコキシドの加水分解体が含まれることが好ましい。ノンポリマー型バインダーとしては、金属石鹸、金属錯体、金属アルコキシド、ハロシラン類、2−アルコキシエタノール、β−ジケトン、及びアルキルアセテートなどが挙げられる。また、金属石鹸、金属錯体、または金属アルコキシドに含まれる金属は、アルミニウム、シリコン、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銀、銅、亜鉛、モリブデン、錫、インジウムまたはアンチモンであると好ましく、シリコン、アルミニウムのアルコキシド(例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド)が、より好ましい。これらポリマー型バインダー、ノンポリマー型バインダーが、加熱により硬化することで、低温での低いヘイズ率及び体積抵抗率の透明電極の形成を可能とする。なお、金属アルコキシドは、加水分解物、またはこの脱水物でもよい。
透明電極フィルム用組成物は、透明電極フィルム用組成物中の固形分(導電性酸化物粒子、およびバインダー等):100質量部に対して、導電性酸化物粒子を98〜50質量部含み、好ましくは、90〜70質量部含む。上限値を越えると密着性が低下し、下限値未満では導電性が低下するからである。
これらバインダーの含有割合は、透明電極フィルム用組成物中の固形分(導電性酸化物粒子、およびバインダー等):100質量部に対して、2〜50質量部であると好ましく、10〜30質量部であると、より好ましい。また、バインダーとして、金属アルコキシドを、触媒として硝酸を用いる場合には、金属アルコキシド:100質量部に対して、硝酸を0.03〜3質量部であると、バインダーの硬化速度、硝酸の残存量の観点から好ましい。なお、触媒である硝酸の量が少ないと、バインダーである金属アルコキシドの加水分解体の重合速度が遅くなり、加水分解に必要な水の量が足りない場合には、強固な透明導電膜が得られなくなるおそれがある。また、焼成による硬化時に重合度が高い網目構造をとった加水分解溶液であると、収縮する際にかかる応力が導電性粒子同士のコンタクトを補助する形となっていると考えられるが、過剰量加えることで光電変換層の劣化要因となりえることから、金属アルコキシド:100質量部に対して、水が0.1〜1.0質量部であると好ましい。
透明電極フィルム用組成物は、使用する他の成分に応じてカップリング剤を加えるのが好ましい。それは導電性微粒子、バインダーとの結合性、およびこの透明電極フィルム用組成物により形成される透明電極フィルムと、基材に積層された光電変換層または反射電極フィルムとの密着性向上のためである。カップリング剤としては、シランカップリング剤、アルミカップリング剤及びチタンカップリング剤などが挙げられる。カップリング剤の含有量は、透明電極フィルム用組成物に占める固形分(導電性酸化物粒子、バインダー、およびシランカップリング剤等):100質量部に対して、0.2〜5質量部が好ましく、0.5〜2質量部がより好ましい。
透明電極フィルム用組成物は、成膜を良好にするために、分散媒を含むと好ましい。分散媒としては、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類;トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類やエチレングリコール等のグリコール類;エチルセロソルブ等のグリコールエーテル類等が挙げられる。分散媒の含有量は、良好な成膜性を得るために、透明電極フィルム用組成物:100質量部に対して、80〜99質量部であると好ましい。
また、使用する成分に応じて、低抵抗化剤や水溶性セルロース誘導体等を加えることが好ましい。低抵抗化剤としては、コバルト、鉄、インジウム、ニッケル、鉛、錫、チタン及び亜鉛の鉱酸塩及び有機酸塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上が好ましい。例えば、酢酸ニッケルと塩化第二鉄の混合物、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸錫と塩化アンチモンの混合物、硝酸インジウムと酢酸鉛の混合物、アセチル酢酸チタンとオクチル酸コバルトの混合物等が挙げられる。これら低抵抗化剤の含有量は、導電性酸化物粉末:100質量部に対して、0.2〜15質量部が好ましい。水溶性セルロース誘導体は、非イオン化界面活性剤であるが、他の界面活性剤に比べて少量の添加でも導電性酸化物粉末を分散させる能力が極めて高く、また、水溶性セルロース誘導体の添加により、形成される透明導電膜の透明性も向上する。水溶性セルロース誘導体としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。水溶性セルロース誘導体の添加量は、導電性酸化物粒子:100質量部に対して、0.2〜5質量部が好ましい。
透明電極フィルム用組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに必要に応じ、フィラー、応力緩和剤その他の添加剤等を配合することができる。
透明電極フィルム用組成物は、所望の成分を、常法により、ペイントシェーカー、ボールミル、サンドミル、セントリミル、三本ロール等によって混合し、導電性酸化物粒子、球状コロイダルシリカ粒子等を分散させ、製造することができる。無論、通常の攪拌操作によって製造することもできる。なお、透明電極フィルム用組成物として、透明導電性バインダーを用いることもできる。
次に、透明電極フィルム用組成物を、基板上に湿式塗工法で塗布し、乾燥・硬化等させることにより、接着性を有する透明導電フィルムを製造することができる。
上記基板は、ガラス、セラミックス、金属もしくは高分子材料からなる基板のいずれか、または、これらの群より選ばれる2種類以上の積層体を使用することができる。これらの基材により薄膜太陽電池の特性に影響を与えることはないが、被接着体へ接着の際の作業性等により、フレキシブルであり、耐候性、耐湿性、耐熱性等の高い素材であることが、より好ましい。
さらに、上記湿式塗工法は、スプレーコーティング法、ディスペンサーコーティング法、スピンコーティング法、ナイフコーティング法、スリットコーティング法、インクジェットコーティング法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、またはダイコーティング法のいずれかであることが好ましいが、これに限られるものではなく、あらゆる方法を利用できる。
スプレーコーティング法は、透明電極フィルム用組成物を圧縮エアにより霧状にして基板に塗布する、または分散体自体を加圧し霧状にして基板に塗布する方法であり、ディスペンサーコーティング法は、例えば、透明電極フィルム用組成物を注射器に入れ、この注射器のピストンを押すことにより注射器先端の微細ノズルから分散体を吐出させて、基板に塗布する方法である。スピンコーティング法は、透明電極フィルム用組成物を回転している基板上に滴下し、この滴下した透明電極フィルム用組成物を、その遠心力により基板周縁に拡げる方法であり、ナイフコーティング法は、ナイフの先端と所定の隙間をあけた基板を水平方向に移動可能に設け、このナイフより上流側の基板上に透明電極フィルム用組成物を供給して、基板を下流側に向って水平移動させる方法である。スリットコーティング法は、透明電極フィルム用組成物を狭いスリットから流出させて基板上に塗布する方法であり、インクジェットコーティング法は、市販のインクジェットプリンタのインクカートリッジに透明電極フィルム用組成物を充填し、基板上にインクジェット印刷する方法である。スクリーン印刷法は、パターン指示材として紗を用い、その上に作られた版画像を通して透明電極フィルム用組成物を基板に転移させる方法である。オフセット印刷法は、版に付けた透明電極フィルム用組成物を、直接基板に付着させず、版から一度ゴムシートに転写させ、ゴムシートから改めて基板に転移させる、透明電極フィルム用組成物の撥水性を利用した印刷方法である。ダイコーティング法は、ダイ内に供給された透明電極フィルム用組成物を、マニホールドで分配させてスリットより薄膜上に押し出し、走行する基板の表面を塗工する方法である。ダイコーティング法には、スロットコート方式やスライドコート方式、カーテンコート方式がある。
最後に、透明電極フィルム用組成物の塗膜を有する基板を、大気中または窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で、乾燥・焼成する。(A)タイプの場合には、この乾燥・焼成は、透明電極フィルムをハンドリング可能な強度にし、かつ透明電極フィルム用組成物に粘着性が残留する条件で行えばよく、例えば、透明電極フィルム用組成物中の溶媒を乾燥させる程度でよい。また、(B)タイプの場合には、乾燥を十分に行ってもよい。ここで、乾燥・焼成後の透明電極フィルム用組成物の厚さが0.03〜0.5μmの範囲であると、好ましく、0.05〜0.1がより好ましい。乾燥・焼成後の透明電極フィルム用組成物の厚さが0.03μm未満では、膜の均一性が低下するとともに、密着性が低下し、0.5μmを越えると、透明性および、導電性が低下するためである。ここで、上記乾燥・硬化後の透明電極フィルムが、フレキシブルであると、光電変換層へ薄膜太陽電池用裏面電極テープを貼り付けるときに作業性がよく、好ましい。
《(2)透明電極フィルムの表面に接着層が形成されている場合》
透明導電フィルムには、上記の透明電極フィルム用組成物を乾燥・硬化したものに加えて、スパッタ、MBE、PLD、蒸着等の真空成膜法やスプレーパイロリシス法で形成されたITO、AZO、GZO、ATO等の薄膜を使用することができる。この場合の透明導電フィルムの厚さは、0.001〜10μmが好ましく、透明性、省資源、工程の観点から0.01〜0.1μmがより好ましい。
接着層としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、シリカゾルゲル等が挙げられ、これらのエマルジョンタイプも好ましい。接着層の厚さは、0.005〜1μmが好ましく、0.01〜0.1μmがより好ましい。これは、接着性を有しつつ、光電変換層とのコンタクトを維持するためである。
〔反射電極フィルム〕
反射電極層は高い拡散反射率が要求されるため、反射電極フィルムが、金属箔である場合には、反射率の高い金属、(銀、鉄、クロム、タンタル、モリブデン、ニッケル、アルミニウム、コバルトもしくはチタン等の金属、またはこれらの金属の合金、あるいはニクロムまたはステンレス等の合金が挙げられ、特に、銀、アルミニウムが好ましい。スパッタ、蒸着、イオンプレーティング、MBE等の真空成膜法・めっき法で形成された薄膜等の場合には、反射率の高い金属(銀、鉄、クロム、タンタル、モリブデン、ニッケル、アルミニウム、コバルトもしくはチタン等の金属、またはこれらの金属の合金、あるいはニクロム又はステンレス等の合金が挙げられ、特に、銀、アルミニウムが好ましい。反射電極フィルムは、これらの金属箔や真空成膜法やめっき法で成膜した薄膜等を使用する場合に加えて、反射電極フィルム用組成物を湿式塗工することにより製造することができる。
湿式塗工法により製造するための反射電極フィルム用組成物は、金属ナノ粒子を含むと好ましく、金属ナノ粒子としては、銀、金、白金、パラジウム、ルテニウム、ニッケル、銅、錫、インジウム、亜鉛、鉄、クロム、及びマンガンからなる群より選ばれる1種、または2種以上の混合組成又は合金組成が挙げられ、銀、金が、反射性、導電性の観点から好ましい。金属ナノ粒子の平均粒径は、10〜50nmであると好ましい。ここで、平均粒径は、QUANTACHROME AUTOSORB−1による比表面測定によるBET法を用いて測定する。金属ナノ粒子の形状は、球状、板状であると、分散性、反射性の観点から好ましい。なお、金属ナノ粒子は、凝集を予防するために、ポリビニルピロリドン(PVP)や、ポリビニルアルコール(PVA)、クエン酸等の保護剤で被覆されていると好ましい。
反射電極フィルム用組成物は、密着性、反射性、の観点から、好ましくは添加物を含む。添加物としては、有機高分子、金属酸化物、金属水酸化物、有機金属化合物、及びシリコーンオイルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むと、反射性、密着性の観点から、より好ましい。
添加物として使用する有機高分子としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンの共重合体、及び水溶性セルロースからなる群より選ばれる少なくとも1種であると、反射性の観点から好ましい。ポリビニルピロリドンの共重合体としては、PVP−メタクリレート共重合体、PVP−スチレン共重合体、PVP−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。また水溶性セルロースとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース等のセルロースエーテルが挙げられる。
添加物として使用する金属酸化物としては、アルミニウム、シリコン、チタン、ジルコニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銀、銅、亜鉛、モリブデン、錫、インジウム、及びアンチモンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む酸化物または複合酸化物が好適である。複合酸化物とは具体的には、上述したITO、ATO、IZO、AZO等が挙げられる。
添加物として使用する金属水酸化物としては、アルミニウム、シリコン、チタン、ジルコニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銀、銅、亜鉛、モリブデン、錫、インジウム、及びアンチモンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む水酸化物が好適である。
添加物として使用する有機金属化合物としては、シリコン、チタン、ジルコニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銀、銅、亜鉛、モリブデン、及び錫からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む金属石鹸、金属錯体、金属アルコキシドまたは金属アルコキシドの加水分解物が好適である。例えば、金属石鹸は、酢酸クロム、ギ酸マンガン、クエン酸鉄、ギ酸コバルト、酢酸ニッケル、クエン酸銀、酢酸銅、クエン酸銅、酢酸錫、酢酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、酢酸モリブデン等が挙げられる。また金属錯体はアセチルアセトン亜鉛錯体、アセチルアセトンクロム錯体、アセチルアセトンニッケル錯体等が挙げられる。また金属アルコキシドはチタニウムイソプロポキシド、メチルシリケート、イソアナトプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
添加物として使用するシリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイルと変性シリコーンオイルの双方を用いることができる。変性シリコーンオイルは、さらにポリシロキサンの側鎖の一部に有機基を導入したもの(側鎖型)、ポリシロキサンの両末端に有機基を導入したもの(両末端型)、ポリシロキサンの両末端のうちのどちらか一方に有機基を導入したもの(片末端型)、及びポリシロキサンの側鎖の一部と両末端に有機基を導入したもの(側鎖両末端型)を用いることができる。変性シリコーンオイルには反応性シリコーンオイルと非反応性シリコーンオイルとがあるが、その双方の種類ともに本発明の添加物として使用することができる。なお、反応性シリコーンオイルとは、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシ変性、カルビノール変性、メルカプト変性、及び異種官能基変性(エポキシ基、アミノ基、ポリエーテル基)を示し、非反応性シリコーンオイルとは、ポリエーテル変性、メチルスチリル基変性、アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、フッ素変性、及び親水特殊変性を示す。
添加物の含有割合は、分散媒を除いた反射電極フィルム用組成物:100質量部に対して、0.1〜25質量部であると好ましく、0.2〜10質量部であると、より好ましい。0.1質量部以上であれば、透明導電膜と接着力が良好であり、25質量部以下であると成膜時の膜ムラが生じにくい。
金属ナノ粒子が、反射電極フィルム用組成物:100質量部に対して、75質量部以上であると、反射性、導電性の観点から好ましく、80質量部以上であると、より好ましい。また、95質量部以下であると、反射電極フィルム組成物の密着性の観点から好ましく、80質量部以上であると、より好ましい。
また、反射電極フィルム用組成物は、成膜を良好にするために、分散媒を含むと好ましい。反射電極フィルム用組成物での分散媒については、透明電極フィルム用組成物の場合と同様である。
反射電極フィルム用組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに必要に応じ、フィラー、応力緩和剤その他の添加剤等を配合することができる。
次に、反射電極フィルム用組成物を、湿式塗工法による塗布後、乾燥・焼成して、反射電極を製造することができる。湿式塗工法によって塗布し、加熱して焼成後の厚さが0.05〜2.0μm、好ましくは0.1〜1.5μmの厚さとなるように反射電極フィルム用塗布層を形成する。これは、0.05μm未満では太陽電池に必要な電極の表面抵抗値が不十分となるからである。反射電極フィルム用組成物を、湿式塗工法により塗布、乾燥・焼成する方法は、透明電極フィルム用組成物の場合と同様であるが、反射電極は、接着性が不要であるので、乾燥・焼成を、大気中または窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気中で130〜400℃、好ましくは150〜350℃の温度に、5分間〜1時間、好ましくは15〜40分間保持して焼成する。反射電極フィルム用塗布層の加熱温度を130〜400℃の範囲としたのは、130℃未満では金属ナノ粒子同士の焼結が不十分になるとともに、金属ナノ粒子の保護剤が、加熱により脱離あるいは分解(分離・燃焼)し難いためである。上記乾燥・硬化後の反射電極フィルムが、フレキシブルであると、光電変換層へ薄膜太陽電池用裏面電極テープを貼り付けるときに作業性がよく、好ましい。なお、透明電極フィルム用組成物の場合と同様に乾燥・焼成を行い、反射電極に接着性を保持させてもよい。
〔薄膜太陽電池用裏面電極テープ〕
透明電極フィルムと反射電極フィルムとを積層する方法は、当業者の公知の方法を用いることができ、透明電極フィルム用組成物、または反射電極フィルム用組成物のいずれか一方を、他方の反射電極フィルムまたは透明電極フィルム上に湿式塗工法により塗布後、乾燥・硬化する方法等が挙げられ、透明電極フィルムが接着性を有する状態で積層すればよい。
薄膜太陽電池用裏面電極テープは、反射電極フィルム側に、さらに、バリア膜フィルムを積層すると好ましい。また、透明電極フィルムの反対面に、さらに、キャリアテープを積層すると好ましい。以下、バリア膜フィルム、キャリアテープの順に説明する。
〔バリア膜フィルム〕
バリア膜フィルムは、反射電極フィルム上に、バリア膜フィルム用組成物を湿式塗工法で塗布されると、簡便な工程で、製造設備のランニングコストを低減することができるので、好ましい。
バリア膜フィルム用組成物は、紫外線照射するか、もしくは加熱するか、または紫外線照射した後に加熱することにより、硬化するポリマー型バインダーの有機系もしくは無機系ベース材料またはノンポリマー型バインダーの無機系ベース材料のいずれか一方または双方を含む。これらポリマー型バインダー、ノンポリマー型バインダーが、紫外線照射するか、もしくは加熱するか、または紫外線照射した後に加熱することにより、硬化することで、耐候性、耐水性、耐湿性、耐熱性等を示す緻密なバリア膜フィルムを形成することができる。
ポリマー型バインダーの有機系ベース材料は、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシアクリル系、セルロース系、及びシロキサン系のポリマーからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含むことが好ましい。アクリル系バインダーとしては、アクリル系モノマーに光重合開始剤を添加し、この混合物に紫外線(UV)を照射し光重合させて得られるアクリル系ポリマーが用いられる。アクリル系モノマーとしては、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、及びテトラメチロールメタンテトラアクリレートからなる群より選ばれる1種又は2種以上の単一モノマーまたは混合モノマーが挙げられる。これらのモノマーには、MIBK(メチルイソブチルケトン)、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル:1−メトキシ−2−プロパノール)、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:1−メトキシ−2−プロパノールアセタート)等の溶剤を添加することが好ましい。但し、上記モノマーを溶解できる一般有機溶剤であれば、エタノール、メタノール、ベンゼン、トルエン、キシレン、NMP(N−メチルピロリドン)、アクリロニトリル、アセトニトリル、THF(テトラヒドロフラン)、酢酸エチル、MEK(メチルエチルケトン)、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、エチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、IPA(イソプロピルアルコール)、アセトン、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、ピペリジン、フェノール等を使用できる。また光重合開始剤としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等が挙げられる。アクリル系モノマーは、上記の任意の溶剤に対して希釈し、塗工し易い粘度に調整して、使用することができる。光重合開始剤は、アクリル系モノマー:100質量部に対して、0.1〜30質量部添加される。これは、光重合開始剤の添加量が、アクリル系モノマー:100質量部に対して、0.1質量部未満では硬化が不十分となり、30質量部を越えると硬化膜(裏面電極補強膜)が変色したり、応力が残留して密着不良を起こすからである。このようにアクリル系モノマーに、溶剤及び光重合開始剤を添加し撹拌して得られた混合液を、バリア膜フィルム用組成物のベース液とする。なお、アクリル系モノマーに、溶剤及び光重合開始剤を、添加し撹拌して得られた混合液が均一にならない場合には、40℃程度まで加温してもよい。
エポキシ系バインダーとしては、エポキシ系樹脂に溶剤を添加して撹拌し、この混合液に熱硬化剤を添加し撹拌して得られた混合液を、加熱して得られるエポキシ系ポリマーが用いられる。エポキシ系樹脂としては、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。また溶剤としては、BCA(ブチルカルビトールアセテート)、ECA(エチルカルビトールアセテート)、BC(ブチルカルビトール)等が挙げられる。但し、上記エポキシ系樹脂を溶解できる一般有機溶剤であれば、エタノール、メタノール、ベンゼン、トルエン、キシレン、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、NMP(N−メチルピロリドン)、MIBK(メチルイソブチルケトン)、アクリロニトリル、アセトニトリル、THF(テトラヒドロフラン)、酢酸エチル、MEK(メチルエチルケトン)、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、エチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、IPA(イソプロピルアルコール)、アセトン、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、ピペリジン、フェノール等を使用できる。熱硬化剤としては、2−エチル−4−メチルイミダゾール、フッ化ホウ素・モノエタノールアミン、DICY(ジシアンジアミド)、ジエチルアミノプロピルアミン、イソホロンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ピペリジン、2,4,6−トリス−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2−メチルイミダゾール、ヘキサヒドロ無水フタル酸、7,11−オクタデカンジエン−1,18−ジカルボヒドラジド等が挙げられる。エポキシ系樹脂は、上記の任意の溶剤で希釈し、塗工し易い粘度に調整し、使用することができる。熱硬化剤は、エポキシ系樹脂:100質量部に対して、0.5〜20質量部添加される。これは、熱硬化剤の添加量が、エポキシ系樹脂:100質量部に対して、0.5質量部未満では硬化が不十分となり、20質量部を越えると硬化時に大きな内部応力が発生して密着性不良を起こすからである。このようにエポキシ系樹脂に、溶剤及び熱硬化剤を添加し撹拌して得られた混合液を、バリア膜フィルム用組成物のベース液とする。なお、エポキシ系樹脂に、溶剤を添加し撹拌して得られた混合液が均一にならない場合には、40℃程度まで加温してもよい。
セルロース系バインダーは、セルロース系ポリマーに溶剤を添加して撹拌し、この混合液に、ゼラチンを添加し撹拌して得られた混合液を加熱して得られる。セルロース系ポリマーとしては、水溶性セルロース誘導体であるヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロール、ヒドロキシエチルメチルセルロース等が挙げられる。また溶剤としては、IPA(イソプロピルアルコール)、エタノール、メタノール、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、MIBK(メチルイソブチルケトン)、アセトン等が挙げられる。セルロース系ポリマーは、上記の任意の溶剤にて希釈し、塗工し易い粘度に調整し、使用することができる。ゼラチンは、セルロール系ポリマー:100質量部に対して、0.1〜20質量部添加される。これは、ゼラチンの添加量が、セルロールス系ポリマー:100質量部に対して、0.1質量部未満又は20質量部を越えると塗布に適した粘度が得られないからである。このように、セルロース系樹脂に、溶剤及びゼラチンを添加し撹拌して得られた混合液を、補強膜用組成物のベース液とする。なお、セルロース系ポリマーに、溶剤及びゼラチンを添加し、30℃程度に加温して撹拌することにより混合液が均一になる。
熱硬化性ウレタン樹脂を用いたウレタン系バインダーは、次のよう調製される。まず、トリメチロールプロパンまたはネオペンチルグリコール等の多価アルコール化合物に代表されるポリオール成分に、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンイソシアネート(MDI)等に代表される過剰量のポリイソシアネート化合物を、反応させて末端活性イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを得る。次に、この末端活性イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに、メチルフェノールに代表されるようなフェノール系、β−ブチロラクタムに代表されるようなラクタム系、またはメチルエチルケトンオキシムに代表されるようなオキシム系等のブロック化剤を反応させる。溶剤としては、ケトン類、アルキルベンゼン類、セロソルブ類、エステル類、アルコール類等が用いられる。ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられ、アルキルベンゼン類の具体例としては、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。またセロソルブ類の具体例としては、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等が挙げられ、エステル類の具体例としては、ブチルセロソルブアセテート、酢酸ブチル等が挙げられ、アルコール類の具体例としては、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。一方、熱硬化剤(反応剤)としては、ポリアミンが用いられる。ポリアミンの具体例としては、N−オクチル−N−アミノプロピル−N’−アミノプロピルプロピレンジアミン、N−ラウリル−N−アミノプロピル−N’−アミノプロピルプロピレンジアミン、N−ミリスチル−N−アミノプロピル−N’−アミノプロピルプロピレンジアミン、N−オクチル−N−アミノプロピル−N’,N’−ジ(アミノプロピル)プロピレンジアミン等が挙げられる。上記ポリオール成分とイソシアネート化合物とを反応させて得られた末端活性イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに、ブロック剤によるブロック化を実施して、ブロックポリイソシアネートを作製した。このブロックポリイソシアネートの有するイソシアネート基に対するポリアミンの有するアミノ基の当量比は、1前後(0.7〜1.1の範囲)となることが好ましい。これは、ブロックポリイソシアネートの有するイソシアネート基に対するポリアミンの有するアミノ基の当量比が、0.7未満、または1.1を越えるとブロックポリイソシアネートとポリアミンのどちらかが多くなって反応不十分となるため硬化不足となるからである。ウレタンポリマーは、上記の任意の溶剤にて希釈し、塗工し易い粘度に調整し、使用することができる。
アクリルウレタン系バインダーとしては、ウレタンアクリレート系オリゴマーを含み紫外線(UV)の照射により硬化する、紫光UV−3310Bまたは紫光UV−6100B(日本合成社製)や、EBECRYL4820又はEBECRYL284(ダイセル・サイテック社製)、U−4HAまたはUA−32P(新中村化学工業社製)等のアクリルウレタン系ポリマーが挙げられる。そして必要に応じて、アクリレート系で用いる光重合開始剤(例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等)を添加することにより、硬化性を向上できる。また、溶剤としては、ケトン類、アルキルベンゼン類、セロソルブ類、エステル類、アルコール類等が使用される。ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられ、アルキルベンゼン類の具体例としては、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。またセロソルブ類の具体例としては、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等が挙げられ、エステル類の具体例としては、ブチルセロソルブアセテート、酢酸ブチル等が挙げられ、アルコール類の具体例としては、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。光重合開始剤は、必要に応じて、アクリルウレタン系ポリマー:100質量部に対して、0.1〜30質量部の範囲内で添加される。これは、光重合開始剤の添加量が、0.1質量部未満では硬化が不十分となり、30質量部を越えると内部応力が大きくなり密着性不良となるからである。また、アクリルウレタン系モノマーは上記の任意の溶剤で希釈し、塗工し易い粘度に調整し、使用することができる。
エポキシアクリル系バインダーとしては、エポキシアクリル系ポリマーが用いられる。エポキシアクリル系ポリマーとしては、ビスフェノールA型エポキシアクリレート(例えば、新中村化学工業社製のNKオリゴEA−1020)や1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジアクリレート(例えば、新中村化学工業社製のNKオリゴEA−5521)等が挙げられる。また日本ユピカ社製のネオポール8318やネオポール8355等を用いてもよい。溶剤としては、ケトン類、アルキルベンゼン類、セロソルブ類、エステル類、アルコール類等が用いられる。ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられ、アルキルベンゼン類の具体例としては、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。またセロソルブ類の具体例としては、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等が挙げられる。エステル類の具体例としては、ブチルセロソルブアセテート、酢酸ブチル等が挙げられる。アルコール類の具体例としては、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。エポキシアクリル系ポリマーには、必要に応じて、熱硬化剤や光重合開始剤が添加される。そして、熱硬化剤や光重合開始剤により加熱硬化、もしくはUV硬化するか、またはUV硬化後に加熱硬化する。また、エポキシアクリル系ポリマーは、上記の任意の溶剤で希釈し、塗工し易い粘度に調整し、使用することができる。
シロキサン系バインダーとしては、シロキサン系ポリマーが用いられる。シロキサン系ポリマーとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルハイドロジェンシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等が挙げられる。また、ここで示すシロキサン系ポリマーとしては、ストレートシリコーンオイル及び変性シリコーンオイルの双方を用いることができる。変性シリコーンオイルとしては、さらに、ポリシロキサンの側鎖の一部に有機基を導入したもの(側鎖型)、ポリシロキサンの両末端に有機基を導入したもの(両末端型)、ポリシロキサンの両末端のうちのどちらか一方に有機基を導入したもの(片末端型)、ポリシロキサンの側鎖の一部と両末端に有機基を導入したもの(側鎖両末端型)等を用いることができる。変性シリコーンオイルには、反応性シリコーンオイルと非反応性シリコーンオイルとがあるが、その双方を使用することができる。なお、反応性シリコーンオイルとは、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシ変性、カルビノール変性、メルカプト変性、又は異種官能基変性(エポキシ基、アミノ基、ポリエーテル基)を示し、非反応性シリコーンオイルとは、ポリエーテル変性、メチルスチリル基変性、アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、フッ素変性、又は親水特殊変性を示す。また、溶剤としては、ケトン類、アルキルベンゼン類、セロソルブ類、エステル類、アルコール類等が用いられる。ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。アルキルベンゼン類の具体例としては、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。またセロソルブ類の具体例としては、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等が挙げられる。エステル類の具体例としては、ブチルセロソルブアセテート、酢酸ブチル等が挙げられる。アルコール類の具体例としては、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。シロキサン系ポリマーには、必要に応じて、熱硬化剤や光重合開始剤を添加することが可能であるが、熱硬化剤を加えなくても膜が硬化する場合には、熱硬化剤は不要である。またシロキサン系ポリマーは、上記の任意の溶剤で希釈し、塗工し易い粘度に調整し、使用することができる。
ポリマー型バインダーの無機系ベース材料は、金属石鹸、金属錯体、及び金属アルコキシドの加水分解体からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含むことが好ましい。これらのポリマー型ポリマー型バインダーの無機系ベース材料は、加熱により有機系から無機系のベース材料に変わるものである。すなわち、焼成により無機系ベース材料の性質を有する膜が形成できる。そして上記金属石鹸、金属錯体または金属アルコキシドの加水分解体に含まれる金属はアルミニウム、シリコン、チタン、ジルコニウム、及び錫からなる群より選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。上記金属石鹸としては、酢酸クロム、ギ酸マンガン、クエン酸鉄、ギ酸コバルト、酢酸ニッケル、クエン酸銀、酢酸銅、クエン酸銅、酢酸錫、酢酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、酢酸モリブデン等が挙げられる。また金属錯体としては、アセチルアセトン亜鉛錯体、アセチルアセトンクロム錯体、アセチルアセトンニッケル錯体等が挙げられる。さらに、金属アルコキシドとしては、チタニウムイソプロポキシド、メチルシリケート、イソアナトプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
一方、ノンポリマー型バインダーの無機系ベース材料としては、SiO2結合剤が挙げられる。このSiO2結合剤は、次に示す一例のように作製される。まず、攪拌しながらHClを純水に溶解して、HCl水溶液を調製する。次に、テトラエトキシシランとエチルアルコールとを混合して、この混合液に上記HCl水溶液を加えた後に、加熱して反応させる。これによりSiO2結合剤が作製される。またノンポリマー型バインダーは、金属石鹸、金属錯体、金属アルコキシドの加水分解体、ハロシラン類、2−アルコキシエタノール、β−ジケトン及びアルキルアセテートからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含むことが好ましい。この金属アルコキシドの加水分解体にはゾルゲルを含む。そして上記金属石鹸、金属錯体又は金属アルコキシドの加水分解体に含まれる金属は、アルミニウム、シリコン、チタン、ジルコニウム及び錫からなる群より選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。上記金属石鹸としては、酢酸クロム、ギ酸マンガン、クエン酸鉄、ギ酸コバルト、酢酸ニッケル、クエン酸銀、酢酸銅、クエン酸銅、酢酸錫、酢酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、酢酸モリブデン等が挙げられ、金属錯体としては、アセチルアセトン亜鉛錯体、アセチルアセトンクロム錯体、アセチルアセトンニッケル錯体等が挙げられ、金属アルコキシドとしては、チタニウムイソプロポキシド、メチルシリケート、イソアナトプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。また、ハロシラン類としては、クロロシラン、ブロモシラン、フルオロシラン等が挙げられる。2−アルコキシエタノールとしては、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等が挙げられる。β−ジケトンとしては、2,4−ペンタンジオン、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン等が挙げられる。さらに、アルキルアセテートとしては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
バリア膜フィルム用組成物には、使用する他の成分に応じてカップリング剤を加えるのが好ましい。それは、下層である反射電極フィルムとの密着性の向上のためである。カップリング剤としては、シランカップリング剤、アルミカップリング剤、及びチタンカップリング剤等が挙げられる。
また、バリア膜フィルム用組成物は、コロイダルシリカ、フュームドシリカ粒子、シリカ粒子、マイカ粒子、及びスメクタイト粒子からなる群より選ばれる1種又は2種以上の金属酸化物微粒子又は扁平粒子を含むことが好ましい。これらの金属酸化物微粒子又は扁平粒子をバリア膜フィルム用組成物に添加することで、水分の浸入を防止する邪魔板効果が得られるため、特に、有機系ベース材料のバインダーを用いる場合において、耐水性、防水性を向上させるのに効果的である。
コロイダルシリカは、SiO2又はその水和物のコロイドであり、平均粒径が1〜100nm、好ましくは5〜50nmであって一定の構造を持たないものである。フュームドシリカ粒子は、ケイ素塩化物を気化し、高温の炎中において気相状態で酸化されて生成され、平均粒径は1〜50nm、好ましくは5〜30nmである。シリカ粒子は、平均粒径1〜100nm、好ましくは5〜50nmの粒子である。マイカ粒子は、合成法で製造される平均粒径:10〜50000nmの粒子、好ましくは平均直径:1〜20μmかつ平均厚さ:10〜100nmの扁平粒子である。スメクタイト粒子は、イオン結合等によって構成される、面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとるイオン交換性層状ケイ酸塩化合物の一種であり、平均粒径:10〜100000nmの粒子、好ましくは平均直径:1〜20μmかつ平均厚さ:10〜100nmの扁平粒子である。バリア膜フィルム用組成物が、コロイダルシリカ、フュームドシリカ粒子等を含むことにより、バリア膜フィルムの硬さを更に増大できる。ここで、平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製 LA−950)で測定し、粒子径基準を個数として演算した50%平均粒子径(D50)をいう。このレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置による個数基準平均粒径の値は、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製 S−4300SE及びS−900)により観察した画像において、任意の50個の粒子について粒径を実測したときのその平均粒径とほぼ一致する。また上述の扁平粒子の平均直径及び平均厚さや、後述する各扁平微粒子の平均直径及び平均厚さも上記と同様にして測定した値である。
なお、上記コロイダルシリカの平均粒径を1〜100nmの範囲に限定したのは、1nm未満ではコロイダルが不安定で凝集し易く、100nmを越えると粒径が大きく分散液とならないからである。また、上記フュームドシリカ粒子、シリカ粒子、マイカ粒子、スメクタイト粒子のサイズを上記範囲に限定したのは、入手可能な粒子サイズであるか、または下層の膜の厚さに比べて大きくならないサイズ範囲とするためである。
また、バリア膜フィルム用組成物は、金、白金、パラジウム、ルテニウム、ニッケル、銅、錫、インジウム、亜鉛、鉄、クロム、マンガン及びアルミニウムからなる群より選ばれる1種又は2種以上の金属又はこれらの金属酸化物を含有する微粒子又は扁平微粒子を含むことが好ましい。これらの微粒子又は扁平微粒子を添加することにより、金属酸化物微粒子又は扁平粒子と同様、水分の浸入を防止する邪魔板効果が得られる。これらの微粒子のサイズ及び添加量は、前述した補強膜用組成物で記載した微粒子のサイズ及び添加量と同様とすることができる。
なお、バリア膜フィルム用組成物のベース液に上記必要な粒子、微粒子、扁平微粒子などの添加剤を添加して、これらの添加剤をベース液に分散させる方法は、上述の透明電極フィルム用組成物での成分を混合する方法と同様の方法を用いることができる。
バリア膜フィルムは、ポリマー型バインダーの無機系ベース材料又はノンポリマー型バインダーの無機系ベース材料を含有するバリア膜フィルム用組成物を用いた1又は2以上の無機系バリア膜と、ポリマー型の有機系ベース材料を含有するバリア膜フィルム用組成物を用いた1又は2以上の有機系バリア膜を交互に重ねて形成されるのが好ましい。さらに、無機系バリア膜と有機系バリア膜とを交互に重ねて、3〜5層の複数の積層を形成されるのが、より好ましい。これにより、バリア膜フィルムを、異なる性質の複数の積層により形成することができる。無機系ベース材料を含有するバリア膜フィルム用組成物により形成された無機系バリア膜は、耐湿性及び耐熱性が高く、硬質膜を得るという点においては優れた効果が期待できるが、膜中に欠陥となる空孔が発生する不具合が起こりやすい。一方、有機系ベース材料を含有するバリア膜フィルム用組成物により形成された有機系バリア膜は、耐水性及び耐衝撃性において優れるが、水蒸気透過性が高いため耐湿性の面で劣る。そのため、バリア膜フィルムを、異なる性質の複数の積層により形成することで互いの欠点を補い、緻密で耐水性、耐湿性、耐候性、耐衝撃性、耐熱性等の諸特性に優れたバリア膜フィルムとして機能する効果が得られる。6層以上になると、特性上の不具合はないが、材料が無駄になり、工程数も増えるため製造コストが高くなるため好ましくない。
次に、バリア膜フィルム用組成物を湿式塗工法により、塗布する。湿式塗工法は、上述の述の透明電極フィルム用組成物で記載した方法と同様の方法を用いることができる。
バリア膜フィルム用組成物を塗布して得られた単一又は複数の層に、紫外線照射するかもしくは好ましくは120〜400℃、より好ましくは120〜200℃に加熱するか、または紫外線照射した後に好ましくは120〜400℃、より好ましくは120〜200℃に加熱して、バリア膜フィルムが形成される。ここで、上記乾燥・硬化後のバリア膜フィルムが、フレキシブルであると、光電変換層へ薄膜太陽電池用裏面電極テープを貼り付けるときに作業性がよく、好ましい。加熱温度が120℃未満では、溶剤等の残分が裏面電極補強膜内の硬化を妨げて硬化が不十分となり、400℃を越えると低温プロセスという生産上のメリットを生かせない。すわなち、製造コストが増大し生産性が低下してしまう。特に、光電変換層に貼り合わせた後、硬化させる場合には、非晶質シリコン、微結晶シリコン、またはこれらを用いたハイブリッド型(多接合型)シリコン太陽電池モジュールにおける光電変換の光波長域に影響を及ぼしてしまうおそれがある。また、形成されるバリア膜フィルムの厚さは、0.2〜20μmとするのが好ましい。バリア膜フィルムの厚さが0.2μm未満では欠陥が発生した場合等に十分な耐候性、耐水性、耐湿性等を保持しにくく、20μmを越えると特に不具合はないが材料が無駄になる。このうち、バリア膜フィルムの厚さは、0.2μm〜10μmとするのが、より好ましい。
〔キャリアテープ〕
キャリアテープは、透明電極フィルム、及び反射電極フィルム、場合によりバリア膜フィルムを保持する。特に、基材、透明電極層、光電変換層、透明電極フィルム、及び反射電極フィルムを含む太陽電池用裏面電極テープであって、前記光電変換層に対向する領域に、透明電極フィルムと反射電極フィルム、場合によりバリア膜フィルムを形成するとき、透明電極フィルムと反射電極フィルム等が分離することを防止する。
キャリアテープとしては、ポリイミドやPET(ポリエチレンテレフタレート)等の有機ポリマーにより形成された基板等が挙げられる。光電変換層に、薄膜太陽電池用裏面電極テープの透明導電フィルムを貼り合わせる場合には、キャリアテープは、フレキシブルであると作業性が良好となり、好ましい。
このキャリアテープ上に、反射膜用バインダー用組成物、透明電極フィルム用組成物を順に、または、バリア膜フィルム用組成物、反射膜用バインダー用組成物、透明電極フィルム用組成物を順に、湿式塗工法により塗布して、薄膜太陽電池用裏面電極テープを形成すると、製造工程が簡略化され、好ましい。
上記の光電変換層に対向する領域のキャリアテープ上に、透明電極フィルムと反射電極フィルム、場合によりバリア膜フィルム(以下、透明電極フィルム等という)を形成する方法の例を、図3に示す。ここで、光電変換層に対向する領域とは、図1のP3の左部のように個々の薄膜太陽電池を構成する部分をいい、図1では光電変換層が形成されていない部分(レーザースクライブP2の部分)も含むが、基体上に複数のセルを電気的に直列に接続するための透明導電膜のみが形成されている溝部P3は含まない。なお、図3の破線は、図1のP3の位置に対応する。まず、パターニングされた裏面電極テープを被接着体に接着する方法が挙げられる。パターニングの方法としては、図3(A)に示すように、まず、キャリアフィルム110上に、光電変換層の幅で透明電極フィルム等100を1列塗布し、この塗布を繰り返し、複数列の透明電極フィルム等100を形成する方法が挙げられる。また、図3(B)に示すように、キャリアフィルム111上に、複数列分の透明電極フィルム等101を形成した後、一点鎖線で示す部分で分割して、複数列の透明電極フィルム等102を形成する方法が挙げられる。ここで、透明電極フィルム等101を分割する方法は、金型等でプレスする、または、機械的にスクライブするなどして溝部120を除去する方法、キャリアフィルム111上に、複数列分の透明電極フィルム等を硬化させずに形成し、複数列の透明電極フィルム等102の部分のみを硬化させた後、エッチング等により溝部120を除去する方法、フレキソ印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷などの印刷法によりパターニングする方法、キャリアテープごと光電変換層に対向する領域の幅にカットする方法等が挙げられる。また、裏面電極テープを被接着体に接着した後に、レーザースクライブや機械的に削り取ることもできるが、工程が煩雑になることから、裏面電極テープ自体にパターニングすることが望ましい。
薄膜太陽電池用裏面電極テープの構成の例を、以下の(1)〜(8)に示すが、本発明の薄膜太陽電池用裏面電極テープの構成は、以下に限定されない。なお、以下の例では、バリア膜フィルムが含まれていないが、当然、それぞれの構成にバリア膜フィルムを含ませることができる。
(1)接着層を備える薄膜の透明電極フィルム、気相法による金属薄膜の反射電極フィルム、キャリアテープの組合せ、
(2)湿式塗工法で形成された接着性を有する透明電極フィルム、気相法による金属薄膜の反射電極フィルム、キャリアテープの組合せ、
(3)接着層を備える薄膜の透明電極フィルム、金属箔の反射電極フィルムの組合せ、
(4)湿式塗工法で形成された接着性を有する透明電極フィルム、金属箔の反射電極フィルムの組合せ、
(5)湿式塗工法で形成された接着性を有する透明電極フィルム、湿式塗工法で形成された金属薄膜の反射電極フィルム、キャリアテープの組合せ、
(6)接着層を備える薄膜の透明電極フィルム、湿式塗工法で形成された金属薄膜の反射電極フィルム、キャリアテープの組合せ、
(7)接着層を備える薄膜の透明電極フィルム、めっき法による金属薄膜の反射電極フィルム、キャリアテープの組合せ、
(8)湿式塗工法で形成された接着性を有する透明電極フィルム、めっき法による金属薄膜の反射電極フィルム、キャリアテープの組合せ。
〔薄膜太陽電池の製造方法〕
本発明の薄膜太陽電池の製造方法は、(A)基材、透明電極層、及び光電変換層が形成された被接着体を準備する工程、(B)前記被接着体の光電変換層に、上記薄膜太陽電池用裏面電極テープの透明導電フィルムを貼り合わせる工程、をこの順に含むことを特徴とする。(B)工程後に、さらに、透明電極フィルムと反射電極フィルムを硬化させると、好ましい。以下、薄膜太陽電池の製造方法の一例を示すが、本発明は、以下の製造方法に限定されない。
図4に、薄膜太陽電池の製造方法の一例を示す。なお、図4(B)の符号9は、薄膜太陽電池用裏面電極テープ(以下、裏面電極テープという)が、キャリアテープから、バリア層フィルム、反射電極フィルム、透明電極フィルムの順に積層されている例である。図4(A)に示すように、まず、基材4、透明電極層5及び光電変換層6の順に形成された被接着体7を準備する。基材4上に、透明電極層5及び光電変換層6の順に形成する方法は、図2の(A)〜(E)のとおりである。
図4(B)に示すように、次に、被接着体7の光電変換層6に、裏面電極テープ9の透明導電フィルム1を、図4(C)に示すように貼り合わせる。この裏面電極テープ9は、透明電極フィルム1、反射電極フィルム2、バリア層フィルム3、キャリアテープ8が、この順に積層されている。
図4(D)に示すように、キャリアテープ9を剥離した後、図4(E)に示すように、溝部P3を形成する。この溝部3を形成する方法は、金型等でプレスして溝部P3を除去する方法、硬化していない裏面電極テープ9を、光電変換層6に貼り合わせた後、光電変換層6に対応する部分の裏面電極テープ9のみを硬化させた後、エッチング等で溝部P3を除去する方法、機械的に削り取り除去する方法、レーザースクライブする方法等が挙げられる。
図5に、薄膜太陽電池の製造方法の別の一例を示す。なお、図5も、裏面電極テープが、キャリアテープから、バリア層フィルム、反射電極フィルム、透明電極フィルムの順に積層されている例である。この例は、光電変換層6に対応する領域(溝部P3を除く領域)に、従構造でのP3スクライブラインに対応する絶縁溝がパターニングされた透明電極フィルム1a、反射電極フィルム2a、バリア膜フィルム3aが形成されている。図5(A)に示すように、まず、基材4、透明電極層5及び光電変換層6の順に形成された被接着体7を準備する。
図5(B)に示すように、次に、被接着体7の光電変換層6に、裏面電極テープ9の透明導電フィルム1を、溝部P3の位置合わせをして、図5(C)に示すように貼り合わせる。図5(D)では、キャリアテープを除去しているが、このキャリアテープ自体に、耐候性、耐熱性、耐湿性、耐水性等の高い素材を使うことで、このキャリアテープを取り除く必要がなく、さらに信頼性が増すため、より好ましい。
図4、図5で説明したいずれの薄膜太陽電池の製造方法の場合でも、透明電極フィルムと反射電極フィルム、場合によりバリア層フィルムを、裏面電極フィルムを貼り付けた後に、硬化させる工程を含むと、好ましい。
これらの薄膜太陽電池の製造方法で製造された薄膜太陽電池は、従来の薄膜太陽電池を示す図1と同様の構造である。しかしながら、本発明の薄膜太陽電池は、裏面電極テープを用いるため、裏面電極の製造工程の簡略化、効率化を図ることができ、一般的な薄膜太陽電池の製造に用いられるレーザースクライブ工程の一部を省略することが可能な点で優れている。また、熱処理過程の短縮および、低温化により光電変換層への熱的ダメージが軽減されることにより、変換効率が向上する点においても優れている。
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明の評価には多接合薄膜シリコン太陽電池を用いたが、本発明が適用されうる太陽電池はこれに限定されるものではない。変換効率は、以下により測定した。電極作製後の評価用多接合型薄膜シリコン太陽電池について、太陽電池セルのライン加工後の基板にリード線を配線し、ソーラシミュレータとデジタルソースメータを用いて、AM:1.5、100mW/cm2の光を照射した時のI−V(電流−電圧)曲線を得た。さらに、得られたI−V(電流−電圧)曲線における電流値(I)を太陽電池セルの表面積で除することによりJ−V曲線(電流密度−電圧)を求めた。このJ−V曲線において、電圧の軸と電流密度の軸を2辺とし、原点とJ−V曲線上の点を結んで描かれた長方形の面積が最大となったときの面積での出力を最高出力密度(mW/cm2)とし、〔最高出力密度(mW/cm2)〕/〔100(mW/cm2)〕×100を変換効率(%)とする。表1、2に、それらの結果を示す。
<実施例1>
被接着体を製造する方法は、図2(A)〜(E)を用いて説明し、その後の工程は、図5を用いて説明する。まず、図2(B)に示すような、透明基板40には縦横10cm角、厚さ4mmのガラス板を用意し、表面側電極層50としてSnO2を用いた。この際の表面側電極層50の膜厚は800nm、シート抵抗は10Ω/□、ヘイズ率は15〜20%であった。
次いで、図2(C)に示すように、レーザースクライブP1加工まで行った表面側電極層50の上から、プラズマCVD法を用いてアモルファスシリコン層61を300nmの厚さで成膜し、続いて、アモルファスシリコン層61の上に、プラズマCVD法を用いて微結晶シリコン層62を1.7μmの厚さで成膜することで、図2(D)に示すようなシリコン系の光電変換層60を形成した。図2(E)に示すように、この光電変換層60に対し、レーザースクライブP2加工を行い、これを被接着体70とした。被接着体は、図5(A)では、符号7で示される。
一方、図5に示すような裏面電極テープ9aを作製するために、ポリエチレンテレフタレート(PET)製のキャリアテープ8a上に、バリア膜フィルム3aとしてメチルセルロースを、熱処理後の膜厚で1μmとなるようにダイコーティング装置で塗工し、120℃で10分間熱処理を行った。この上に、スパッタリングにより反射電極フィルム2aとしてAg膜を100nm成膜した。
次に、原子比でSn/(Sn+In)=0.05のITOターゲットを用い、スパッタリングにより厚さ:10nmの透明電極フィルム1aを成膜した。この上に、アクリル樹脂を熱処理後の膜厚で10nmになるように調整して、ダイコーティング装置で塗工を行い、接着層を形成した。これに対し、図5(B)に示すようなレーザースクライブP3加工を施して、裏面テープ電極9aを作製した。
次に、図5(C)に示すように、裏面テープ電極9aと被接着体7を、タッチパネル貼り合わせ工程装置を用いて、正確に位置合わせして、裏面テープ電極9aと被接着体7を貼り合わせた後、120℃で10分間の硬化処理を行った。
<実施例2〜23>
表1に示された条件にした以外は、実施例1と同様の方法で試験を行った。ここで、実施例2等で使用したシリカゾルゲルは三菱マテリアル社製のSB−10Aを用いた。また、実施例12等の湿式塗工法で使用した反射電極フィルム用組成物は、以下のように、作製した。
まず、硝酸銀を脱イオン水に溶解して、金属イオン水溶液を調製した。また、クエン酸ナトリウムを脱イオン水に溶解して、濃度が26質量%のクエン酸ナトリウム水溶液を調製した。このクエン酸ナトリウム水溶液に、35℃に保持された窒素ガス気流中に粒状の硫酸第一鉄を直接加えて溶解させ、クエン酸イオンと第一鉄イオンを3:2のモル比で含有する還元剤水溶液を調製した。次いで、上記窒素ガス気流を35℃に保持した状態で、マグネチックスターラーの攪拌子を還元剤水溶液中に入れ、攪拌子を100rpmの回転速度で回転させて、上記還元剤水溶液を攪拌しながら、この還元剤水溶液に上記金属塩水溶液を滴下して合成した。ここで、還元剤水溶液への金属塩水溶液の添加量は、還元剤水溶液の量の1/10以下になるように、各溶液の濃度を調整することで、室温の金属塩水溶液を滴下しても反応温度が40℃に保持されるようにした。また、上記還元剤水溶液と金属塩水溶液との混合比は、還元剤として加えられる第一鉄イオンの当量が、金属イオンの当量の3倍となるように調整した。還元剤水溶液への金属塩水溶液の滴下が終了した後、混合液の攪拌をさらに15分間続けることにより、混合液内部に金属粒子を生じさせ、金属粒子が分散した金属粒子分散液を得た。金属粒子分散液のpHは5.5であり、分散液中の金属粒子の化学量論的生成量は、5g/dm3であった。得られた分散液を、室温で放置することにより、分散液中の金属粒子を沈殿させ、沈殿した金属粒子の凝集物をデンカンテーションにより分離した。分離した金属凝集物に脱イオン水を加えて分散体とし、限外濾過により脱塩処理した後、さらにメタノールで置換洗浄することにより、金属(銀)の含有量を50質量%とした。その後、遠心分離機を用い、この遠心分離機の遠心力を調整して、粒径が100nmを超える比較的大きな銀粒子を分離することにより、一次粒子径:10〜50nmの範囲内の銀ナノ粒子を数平均で、71%含有するように調整した。すなわち、数平均ですべての銀ナノ粒子100%に対する一次粒子径:10〜50nmの範囲内を占める銀ナノ粒子の割合が、71%になるように調整した。得られた銀ナノ粒子は、炭素骨格が炭素数3の有機主鎖の保護剤が化学修飾されていた。
次に、得られた金属ナノ粒子:10質量部を、水、エタノールおよびメタノールを含む混合溶液:90質量部に添加混合することにより分散させた。さらに、この分散液に、添加物としてポリビニルピロリドンを4質量部と、クエン酸銀を1質量部と、金属ナノ粒子の比率が95質量部となるように加えることで、反射電極フィルム用組成物を得た。得られた反射電極フィルム用組成物を、ポリエチレンテレフタレート(PET)製のキャリアテープに実施例1と同様にして形成したバリア膜フィルム上に、焼成後の厚さが表1に示す膜厚となるように湿式塗工法で塗布した後、塗膜を180℃(PET製キャリアテープの耐熱温度が200℃であることに由来する温度)で60分以下の条件で焼き付けることにより、反射電極フィルムを形成した。
実施例13では、形成した反射電極フィルム上に、スパッタリングにより厚さ:1nmの透明電極フィルムを成膜した。この上に、アクリル樹脂を熱処理後の膜厚で100nmになるように調整して、ダイコーティング装置で塗工を行い、接着層を形成した。これに対し、機械的に、図5(B)に示すようなスクライブP3を施して、裏面テープ電極を作製した。
次に、図5(C)に示すように、裏面テープ電極9aと被接着体7を、タッチパネル貼り合わせ工程装置を用いて、正確に位置合わせして、裏面テープ電極9aと被接着体7を貼り合わせた後、120℃で10分間の硬化処理を行った。
<実施例24>
図5を用いて、説明する。図5(a)に示す被接着体7は、実施例1で作製したものを使用した。次に、ポリエチレンテレフタレート(PET)製のキャリアテープ8a上に、バリア膜フィルム3aとして、シリカゾルゲルを熱処理後の膜厚で1μmとなるようにダイコーティング装置で塗工し、120℃で10分間熱処理を行った。この上に、反射電極フィルム2aとして、スパッタリングによりAg膜を800nm成膜した。
次に、透明電極フィルム1aの形成に用いる透明導電フィルム用組成物を、以下のように調製した。導電性微粒子として、原子比でAl/(Al+Zn)=0.02、粒子径:0.03μmのAZO粉末を50質量部、分散媒としてIPAを加えることで、全体を100質量部とした。この混合物をダイノーミル(横型ビーズミル)により、0.3mm径のジルコニアビーズを使用して、2時間稼働させて、混合物中の微粒子を分散させた。この分散液に、バインダーとしてシリカゾルゲルを、質量比でAZO:シリカゾルゲル=7:3になるように混合し、更にエタノールで、AZO換算で2質量部になるように希釈し、透明導電フィルム用組成物を得た。この透明導電フィルム用組成物を、熱処理後の膜厚が50nmになるように調整して、ダイコーティング装置で塗工を行った。これに対し、機械的に、図5(B)に示すP3スクラブ加工を施して、裏面テープ電極9aを作製した。
次に、図5(C)に示すように、裏面テープ電極9aと被接着体7を、タッチパネル貼り合わせ工程装置を用いて、正確に位置合わせして、裏面テープ電極9aと被接着体7を貼り合わせた後、120℃で10分間の硬化処理を行った。
なお、上記導電性微粒子の平均粒子径の測定方法については、以下のとおり、個数平均より算出した。堀場製作所製LB−550による動的光散乱法で測定し、さらに電子顕微鏡写真からも粒径を確認した。使用する電子顕微鏡については、粒子径の大きさ、粉末の種類によって、適宜SEMやTEMを使い分けた。
<実施例25〜45>
表2に示す条件にした以外は、実施例24と同様の方法で試験を行った。
<比較例1>
図2を用いて、説明する。図2(E)に示すレーザースクライブP2された被接着体70には、実施例1で作製したものを用いた。裏面側の透明電極層10の形成に用いる透明導電膜用組成物を以下のように調製した。導電性微粒子として原子比でSn/(Sn+In)=0.1、粒子径:0.03μmのITO粉末を1.0質量部、バインダーとしてシリカゾルゲルを0.05質量部、更に分散媒としてエタノールを98.95質量部加えることで、全体を100質量部とした。なお、上記導電性微粒子の平均粒子径の測定方法については、実施例24に記載したとおりである。
この混合物をダイノーミル(横型ビーズミル)により、0.3mm径のジルコニアビーズを使用して、2時間稼働させて、混合物中の微粒子を分散させることにより、透明導電膜用組成物を得た。
次に、光電変換層60上に、スピンコーティング法により焼成後の膜厚が80nmとなるように上記調製した透明導電膜用組成物を塗工し、塗膜を200℃で30分焼き付けることにより、透明電極層10を形成した。焼成後の膜厚は、断面をSEMにより撮影した写真により測定した。焼成して得られた透明電極層10における微粒子とバインダーの割合は、微粒子/バインダー比が2/1であった。なお、焼付け時の温度については、10cm角のガラス板の角の4点の温度を測定し、平均値が設定温度の±5℃に入る条件とした。
更に、形成した裏面側透明電極層10上に、スピンコーティング法により、焼成後の膜厚が200nmとなるように、平均粒子径0.03μmのAgコロイドが、エタノール溶媒に分散されたAgナノインクを塗工し、塗膜を200℃で30分間焼き付けることにより、反射電極層20を形成することで、図2(F)の補強膜がないものを作製し、次いで、図2(G)に示すように、レーザースクライブP3を行い、評価用多接合型薄膜シリコン太陽電池を得た。なお、使用したAgナノインクの組成は、Agコロイドが10質量部及びエタノールが90質量部である。
表1、2から明らかなように、実施例1〜45のすべてで、裏面電極テープ用テープを用いて薄膜太陽電池を作製することができ、変換効率が7.23〜7.87%と高かった。これに対して、比較例1では、実施例1〜45より複雑な工程で作製されたにもかかわらず、変換効率が実施例1〜45より低かった。実施例1〜45では、製造工程中での熱処理過程が短縮され、かつ低温化されたため、変換効率が高くなった、と考えられる。
以上のように、本発明の裏面電極テープを用いることにより、裏面電極の製造工程の簡略化、効率化を図ることができる。また、一般的な薄膜太陽電池の製造に用いられるレーザースクライブ工程の一部を省略することが可能である。また、熱処理過程の短縮および、低温化により光電変換層への熱的ダメージが軽減されることにより、変換効率を向上することができる。
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。なお、%は特に示さない限り、また数値固有の場合を除いて質量%である。
本発明の薄膜太陽電池用裏面電極テープは、透明電極フィルムと反射電極フィルムとが積層され、透明電極フィルムが接着性を有することを特徴とする。本発明の薄膜太陽電池用裏面電極テープは、各種薄膜太陽電池に使用することができるが、特に、スーパーストレート型薄膜太陽電池に適している。
〔透明電極フィルム〕
透明電極フィルムは、接着性を有し、(1)透明電極フィルム自体が接着性を有する場合、(2)透明電極フィルムの表面に接着層が形成されている場合がある。
透明電極フィルム自体または接着層を形成する接着剤は、透明電極フィルムまたは接着層を形成する時の状態(以下、初期状態という)が、液体状またはそれに近い流体状である必要があり、その様式には主に以下の4つが挙げられる。
<1>反応系
初期状態は、化学反応を起こす前の成分を主体とする液体状であり、モノマーと硬化促進剤との混合や、熱や空気中の水分などの外的要因により反応を始め、重合反応・吸湿・縮合反応などを起こす化学反応型と、加熱させることで硬化・接着する熱硬化型に分類される。アクリル樹脂系、ポリウレタン系、セルロース系、オレフィン系、エポキシ樹脂系、シアノアクリレート系、シリコーン系、ポリイミド系、ポリベンズイミダソール系、ポリビニルブチラール樹脂系が挙げられる。
<2>溶液系
初期状態は、合成樹脂やゴムなどの高分子固形分が水・アルコール・有機溶剤などの溶媒に溶け込んだ液体状で、溶媒が気化した後に残留する溶質が硬化することで接着する。溶媒の種類によって溶剤系・水系などに分類される。ポリエステル系、ポリスチレン系、セルロース系、オレフィン系、塩化ビニル系、ゴム系、ポリメタクリレート樹脂系が挙げられる。
<3>水分散系
初期状態は高分子の固形分を水中で重合させた懸濁水溶液である。コロイド状態の高分子がエマルジョン化されて水に溶けることができる状態となっており、水が気化し溶質が硬化することで接着する。アクリル樹脂系、ポリウレタン系、ポリビニルアルコール系、ポリ酢酸ビニル系、エポキシ樹脂系、ゴム系が挙げられる。
<4>固形
初期状態は、粉体・ペレット・フィルム・網状などの固体であり、熱可塑性樹脂成分の固形接着剤を加熱し融解した状態にして流動性を付与(ホットメルト)した上で塗布し、冷却されることにより硬化・接着する。ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリ酢酸ビニル系、オレフィン系が挙げられる。
ここで、接着性を有する透明電極フィルムには、(A)透明電極フィルム自体の粘着性により基板上に接着するもの(上記<1>、<2>、<3>。以下、(A)タイプという)と、(B)透明電極フィルム自体に粘着性はないが、非接着体と貼り合わせた後、加熱等により接着性を発現するもの(上記<4>。以下、(B)タイプという)とがある。
《(1)透明電極フィルム自体が接着性を有する場合》
透明電極フィルム用組成物から透明電極フィルムを形成することができ、透明電極フィルム用組成物としては、導電性酸化物粒子とバインダーとを含むものを挙げることができる。
導電性酸化物粒子としては、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)、ATO(Antimony doped Tin Oxide:アンチモンドープ酸化錫)の酸化錫粉末やB、Al、Co、Fe、In、Ga、及びTiからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含有する酸化亜鉛粉末等が好ましく、このうち、ITO、ATO、AZO(Aluminum doped Zinc Oxide:アルミドープ酸化亜鉛)、IZO(Indium doped Zinc Oxide:インジウムドープ酸化亜鉛)、GZO(Garium doped Zinc Oxide:ガリウムドープ酸化亜鉛)が、より好ましい。また、導電性酸化物粒子の平均粒径は、分散媒中で安定性を保つため、10〜100nmの範囲内であることが好ましく、このうち、20〜60nmの範囲内であると、より好ましい。ここで、平均粒径は、QUANTACHROME AUTOSORB−1による比表面積測定によるBET法または堀場製作所製LB−550による動的光散乱法で測定する。特に記載がない場合にはQUANTACHROME AUTOSORB−1による比表面積測定によるBET法を用いて測定する。
バインダーは、加熱により硬化するポリマー型バインダー又はノンポリマー型バインダーのいずれか一方又は双方を含む組成物であると好ましい。光電変換層に悪影響を与えるとされる水分や酸、上記導電性酸化物粒子の特性を低下させるアルカリ金属やアルカリ土類金属、およびそのイオンを含まないバインダーが、より好ましい。
ポリマー型バインダーとしては、アクリル樹脂系、ポリメチルメタクリレート(PMMA)系、ポリカーボネート系、ポリエステル系、アルキッド樹脂系、ポリウレタン系、アクリルウレタン系、ポリスチレン系、ポリアセタール系、ポリアミド系、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル系、セルロース系、オレフィン系、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)系及びシロキサン系ポリマー等が挙げられる。このうち、固形接着剤の代表例とされるポリウレタン系、ポリアミド系、ポリ酢酸ビニル系、オレフィン系や、比較的低温で射出成形可能な熱可塑性樹脂であるポリビニルアルコール、ポリスチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリレートなどは、接着層を一度完全に硬化させた後でも加熱により接着可能であるため、ハンドリング面から好ましい。
またポリマー型バインダーには、アルミニウム、シリコン、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銀、銅、亜鉛、モリブデンもしくは錫の金属石鹸、金属錯体、または金属アルコキシドの加水分解体が含まれることが好ましい。ノンポリマー型バインダーとしては、金属石鹸、金属錯体、金属アルコキシド、ハロシラン類、2−アルコキシエタノール、β−ジケトン、及びアルキルアセテートなどが挙げられる。また、金属石鹸、金属錯体、または金属アルコキシドに含まれる金属は、アルミニウム、シリコン、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銀、銅、亜鉛、モリブデン、錫、インジウムまたはアンチモンであると好ましく、シリコン、アルミニウムのアルコキシド(例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド)が、より好ましい。これらポリマー型バインダー、ノンポリマー型バインダーが、加熱により硬化することで、低温での低いヘイズ率及び体積抵抗率の透明電極の形成を可能とする。なお、金属アルコキシドは、加水分解物、またはこの脱水物でもよい。
透明電極フィルム用組成物は、透明電極フィルム用組成物中の固形分(導電性酸化物粒子、およびバインダー等):100質量部に対して、導電性酸化物粒子を98〜50質量部含み、好ましくは、90〜70質量部含む。上限値を越えると密着性が低下し、下限値未満では導電性が低下するからである。
これらバインダーの含有割合は、透明電極フィルム用組成物中の固形分(導電性酸化物粒子、およびバインダー等):100質量部に対して、2〜50質量部であると好ましく、10〜30質量部であると、より好ましい。また、バインダーとして、金属アルコキシドを、触媒として硝酸を用いる場合には、金属アルコキシド:100質量部に対して、硝酸を0.03〜3質量部であると、バインダーの硬化速度、硝酸の残存量の観点から好ましい。なお、触媒である硝酸の量が少ないと、バインダーである金属アルコキシドの加水分解体の重合速度が遅くなり、加水分解に必要な水の量が足りない場合には、強固な透明導電膜が得られなくなるおそれがある。また、焼成による硬化時に重合度が高い網目構造をとった加水分解溶液であると、収縮する際にかかる応力が導電性粒子同士のコンタクトを補助する形となっていると考えられるが、過剰量加えることで光電変換層の劣化要因となりえることから、金属アルコキシド:100質量部に対して、水が0.1〜1.0質量部であると好ましい。
透明電極フィルム用組成物は、使用する他の成分に応じてカップリング剤を加えるのが好ましい。それは導電性微粒子、バインダーとの結合性、およびこの透明電極フィルム用組成物により形成される透明電極フィルムと、基材に積層された光電変換層または反射電極フィルムとの密着性向上のためである。カップリング剤としては、シランカップリング剤、アルミカップリング剤及びチタンカップリング剤などが挙げられる。カップリング剤の含有量は、透明電極フィルム用組成物に占める固形分(導電性酸化物粒子、バインダー、およびシランカップリング剤等):100質量部に対して、0.2〜5質量部が好ましく、0.5〜2質量部がより好ましい。
透明電極フィルム用組成物は、成膜を良好にするために、分散媒を含むと好ましい。分散媒としては、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類;トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類やエチレングリコール等のグリコール類;エチルセロソルブ等のグリコールエーテル類等が挙げられる。分散媒の含有量は、良好な成膜性を得るために、透明電極フィルム用組成物:100質量部に対して、80〜99質量部であると好ましい。
また、使用する成分に応じて、低抵抗化剤や水溶性セルロース誘導体等を加えることが好ましい。低抵抗化剤としては、コバルト、鉄、インジウム、ニッケル、鉛、錫、チタン及び亜鉛の鉱酸塩及び有機酸塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上が好ましい。例えば、酢酸ニッケルと塩化第二鉄の混合物、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸錫と塩化アンチモンの混合物、硝酸インジウムと酢酸鉛の混合物、アセチル酢酸チタンとオクチル酸コバルトの混合物等が挙げられる。これら低抵抗化剤の含有量は、導電性酸化物粒子:100質量部に対して、0.2〜15質量部が好ましい。水溶性セルロース誘導体は、非イオン化界面活性剤であるが、他の界面活性剤に比べて少量の添加でも導電性酸化物粒子を分散させる能力が極めて高く、また、水溶性セルロース誘導体の添加により、形成される透明導電膜の透明性も向上する。水溶性セルロース誘導体としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。水溶性セルロース誘導体の添加量は、導電性酸化物粒子:100質量部に対して、0.2〜5質量部が好ましい。
透明電極フィルム用組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに必要に応じ、フィラー、応力緩和剤、その他の添加剤等を配合することができる。
透明電極フィルム用組成物は、所望の成分を、常法により、ペイントシェーカー、ボールミル、サンドミル、セントリミル、三本ロール等によって混合し、導電性酸化物粒子、球状コロイダルシリカ粒子等を分散させ、製造することができる。無論、通常の攪拌操作によって製造することもできる。なお、透明電極フィルム用組成物として、透明導電性バインダーを用いることもできる。
次に、透明電極フィルム用組成物を、基板上に湿式塗工法で塗布し、乾燥・硬化等させることにより、接着性を有する透明電極フィルムを製造することができる。
上記基板は、ガラス、セラミックス、金属もしくは高分子材料からなる基板のいずれか、または、これらの群より選ばれる2種類以上の積層体を使用することができる。これらの基材により薄膜太陽電池の特性に影響を与えることはないが、被接着体へ接着の際の作業性等により、フレキシブルであり、耐候性、耐湿性、耐熱性等の高い素材であることが、より好ましい。
さらに、上記湿式塗工法は、スプレーコーティング法、ディスペンサーコーティング法、スピンコーティング法、ナイフコーティング法、スリットコーティング法、インクジェットコーティング法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、またはダイコーティング法のいずれかであることが好ましいが、これに限られるものではなく、あらゆる方法を利用できる。
スプレーコーティング法は、透明電極フィルム用組成物を圧縮エアにより霧状にして基板に塗布する、または分散体自体を加圧し霧状にして基板に塗布する方法であり、ディスペンサーコーティング法は、例えば、透明電極フィルム用組成物を注射器に入れ、この注射器のピストンを押すことにより注射器先端の微細ノズルから分散体を吐出させて、基板に塗布する方法である。スピンコーティング法は、透明電極フィルム用組成物を回転している基板上に滴下し、この滴下した透明電極フィルム用組成物を、その遠心力により基板周縁に拡げる方法であり、ナイフコーティング法は、ナイフの先端と所定の隙間をあけた基板を水平方向に移動可能に設け、このナイフより上流側の基板上に透明電極フィルム用組成物を供給して、基板を下流側に向って水平移動させる方法である。スリットコーティング法は、透明電極フィルム用組成物を狭いスリットから流出させて基板上に塗布する方法であり、インクジェットコーティング法は、市販のインクジェットプリンタのインクカートリッジに透明電極フィルム用組成物を充填し、基板上にインクジェット印刷する方法である。スクリーン印刷法は、パターン指示材として紗を用い、その上に作られた版画像を通して透明電極フィルム用組成物を基板に転移させる方法である。オフセット印刷法は、版に付けた透明電極フィルム用組成物を、直接基板に付着させず、版から一度ゴムシートに転写させ、ゴムシートから改めて基板に転移させる、透明電極フィルム用組成物の撥水性を利用した印刷方法である。ダイコーティング法は、ダイ内に供給された透明電極フィルム用組成物を、マニホールドで分配させてスリットより薄膜上に押し出し、走行する基板の表面を塗工する方法である。ダイコーティング法には、スロットコート方式やスライドコート方式、カーテンコート方式がある。
最後に、透明電極フィルム用組成物の塗膜を有する基板を、大気中または窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で、乾燥・焼成する。(A)タイプの場合には、この乾燥・焼成は、透明電極フィルムをハンドリング可能な強度にし、かつ透明電極フィルム用組成物に粘着性が残留する条件で行えばよく、例えば、透明電極フィルム用組成物中の溶媒を乾燥させる程度でよい。また、(B)タイプの場合には、乾燥を十分に行ってもよい。ここで、乾燥・焼成後の透明電極フィルム用組成物の厚さが0.03〜0.5μmの範囲であると、好ましく、0.05〜0.1μmがより好ましい。乾燥・焼成後の透明電極フィルム用組成物の厚さが0.03μm未満では、膜の均一性が低下するとともに、密着性が低下し、0.5μmを越えると、透明性および、導電性が低下するためである。ここで、上記乾燥・硬化後の透明電極フィルムが、フレキシブルであると、光電変換層へ薄膜太陽電池用裏面電極テープを貼り付けるときに作業性がよく、好ましい。
《(2)透明電極フィルムの表面に接着層が形成されている場合》
透明電極フィルムには、上記の透明電極フィルム用組成物を乾燥・硬化したものに加えて、スパッタ、MBE、PLD、蒸着等の真空成膜法やスプレーパイロリシス法で形成されたITO、AZO、GZO、ATO等の薄膜を使用することができる。この場合の透明電極フィルムの厚さは、0.001〜10μmが好ましく、透明性、省資源、工程の観点から0.01〜0.1μmがより好ましい。
接着層としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、シリカゾルゲル等が挙げられ、これらのエマルジョンタイプも好ましい。接着層の厚さは、0.005〜1μmが好ましく、0.01〜0.1μmがより好ましい。これは、接着性を有しつつ、光電変換層とのコンタクトを維持するためである。
〔反射電極フィルム〕
反射電極層は高い拡散反射率が要求されるため、反射電極フィルムが、金属箔である場合には、反射率の高い金属(銀、鉄、クロム、タンタル、モリブデン、ニッケル、アルミニウム、コバルトもしくはチタン等の金属)、またはこれらの金属の合金、あるいはニクロムまたはステンレス等の合金が挙げられ、特に、銀、アルミニウムが好ましい。スパッタ、蒸着、イオンプレーティング、MBE等の真空成膜法・めっき法で形成された薄膜等の場合には、反射率の高い金属(銀、鉄、クロム、タンタル、モリブデン、ニッケル、アルミニウム、コバルトもしくはチタン等の金属)、またはこれらの金属の合金、あるいはニクロム又はステンレス等の合金が挙げられ、特に、銀、アルミニウムが好ましい。反射電極フィルムは、これらの金属箔や真空成膜法やめっき法で成膜した薄膜等を使用する場合に加えて、反射電極フィルム用組成物を湿式塗工することにより製造することができる。
湿式塗工法により製造するための反射電極フィルム用組成物は、金属ナノ粒子を含むと好ましく、金属ナノ粒子としては、銀、金、白金、パラジウム、ルテニウム、ニッケル、銅、錫、インジウム、亜鉛、鉄、クロム、及びマンガンからなる群より選ばれる1種、または2種以上の混合組成又は合金組成が挙げられ、銀、金が、反射性、導電性の観点から好ましい。金属ナノ粒子の平均粒径は、10〜50nmであると好ましい。ここで、平均粒径は、QUANTACHROME AUTOSORB−1による比表面積測定によるBET法を用いて測定する。金属ナノ粒子の形状は、球状、板状であると、分散性、反射性の観点から好ましい。なお、金属ナノ粒子は、凝集を予防するために、ポリビニルピロリドン(PVP)や、ポリビニルアルコール(PVA)、クエン酸等の保護剤で被覆されていると好ましい。
反射電極フィルム用組成物は、密着性、反射性の観点から、好ましくは添加物を含む。添加物としては、有機高分子、金属酸化物、金属水酸化物、有機金属化合物、及びシリコーンオイルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むと、反射性、密着性の観点から、より好ましい。
添加物として使用する有機高分子としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンの共重合体、及び水溶性セルロースからなる群より選ばれる少なくとも1種であると、反射性の観点から好ましい。ポリビニルピロリドンの共重合体としては、PVP−メタクリレート共重合体、PVP−スチレン共重合体、PVP−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。また水溶性セルロースとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース等のセルロースエーテルが挙げられる。
添加物として使用する金属酸化物としては、アルミニウム、シリコン、チタン、ジルコニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銀、銅、亜鉛、モリブデン、錫、インジウム、及びアンチモンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む酸化物または複合酸化物が好適である。複合酸化物とは具体的には、上述したITO、ATO、IZO、AZO等が挙げられる。
添加物として使用する金属水酸化物としては、アルミニウム、シリコン、チタン、ジルコニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銀、銅、亜鉛、モリブデン、錫、インジウム、及びアンチモンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む水酸化物が好適である。
添加物として使用する有機金属化合物としては、シリコン、チタン、ジルコニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銀、銅、亜鉛、モリブデン、及び錫からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む金属石鹸、金属錯体、金属アルコキシドまたは金属アルコキシドの加水分解物が好適である。例えば、金属石鹸は、酢酸クロム、ギ酸マンガン、クエン酸鉄、ギ酸コバルト、酢酸ニッケル、クエン酸銀、酢酸銅、クエン酸銅、酢酸錫、酢酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、酢酸モリブデン等が挙げられる。また金属錯体はアセチルアセトン亜鉛錯体、アセチルアセトンクロム錯体、アセチルアセトンニッケル錯体等が挙げられる。また金属アルコキシドはチタニウムイソプロポキシド、メチルシリケート、イソアナトプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
添加物として使用するシリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイルと変性シリコーンオイルの双方を用いることができる。変性シリコーンオイルは、さらにポリシロキサンの側鎖の一部に有機基を導入したもの(側鎖型)、ポリシロキサンの両末端に有機基を導入したもの(両末端型)、ポリシロキサンの両末端のうちのどちらか一方に有機基を導入したもの(片末端型)、及びポリシロキサンの側鎖の一部と両末端に有機基を導入したもの(側鎖両末端型)を用いることができる。変性シリコーンオイルには反応性シリコーンオイルと非反応性シリコーンオイルとがあるが、その双方の種類ともに本発明の添加物として使用することができる。なお、反応性シリコーンオイルとは、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシ変性、カルビノール変性、メルカプト変性、及び異種官能基変性(エポキシ基、アミノ基、ポリエーテル基)を示し、非反応性シリコーンオイルとは、ポリエーテル変性、メチルスチリル基変性、アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、フッ素変性、及び親水特殊変性を示す。
添加物の含有割合は、分散媒を除いた反射電極フィルム用組成物:100質量部に対して、0.1〜25質量部であると好ましく、0.2〜10質量部であると、より好ましい。0.1質量部以上であれば、透明導電膜と接着力が良好であり、25質量部以下であると成膜時の膜ムラが生じにくい。
金属ナノ粒子が、反射電極フィルム用組成物:100質量部に対して、75質量部以上であると、反射性、導電性の観点から好ましく、80質量部以上であると、より好ましい。また、95質量部以下であると、反射電極フィルム用組成物の密着性の観点から好ましい。
また、反射電極フィルム用組成物は、成膜を良好にするために、分散媒を含むと好ましい。反射電極フィルム用組成物での分散媒については、透明電極フィルム用組成物の場合と同様である。
反射電極フィルム用組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに必要に応じ、フィラー、応力緩和剤その他の添加剤等を配合することができる。
次に、反射電極フィルム用組成物を、湿式塗工法による塗布後、乾燥・焼成して、反射電極フィルムを製造することができる。湿式塗工法によって塗布し、加熱して焼成後の厚さが0.05〜2.0μm、好ましくは0.1〜1.5μmの厚さとなるように反射電極フィルム用塗布層を形成する。これは、0.05μm未満では太陽電池に必要な電極の表面抵抗値が不十分となるからである。反射電極フィルム用組成物を、湿式塗工法により塗布、乾燥・焼成する方法は、透明電極フィルム用組成物の場合と同様であるが、反射電極フィルムは、接着性が不要であるので、乾燥・焼成を、大気中または窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気中で130〜400℃、好ましくは150〜350℃の温度に、5分間〜1時間、好ましくは15〜40分間保持して焼成する。反射電極フィルム用塗布層の加熱温度を130〜400℃の範囲としたのは、130℃未満では金属ナノ粒子同士の焼結が不十分になるとともに、金属ナノ粒子の保護剤が、加熱により脱離あるいは分解(分離・燃焼)し難いためである。上記乾燥・硬化後の反射電極フィルムが、フレキシブルであると、光電変換層へ薄膜太陽電池用裏面電極テープを貼り付けるときに作業性がよく、好ましい。なお、透明電極フィルム用組成物の場合と同様に乾燥・焼成を行い、反射電極フィルムに接着性を保持させてもよい。
〔薄膜太陽電池用裏面電極テープ〕
透明電極フィルムと反射電極フィルムとを積層する方法は、当業者の公知の方法を用いることができ、透明電極フィルム用組成物、または反射電極フィルム用組成物のいずれか一方を、他方の反射電極フィルムまたは透明電極フィルム上に湿式塗工法により塗布後、乾燥・硬化する方法等が挙げられ、透明電極フィルムが接着性を有する状態で積層すればよい。
薄膜太陽電池用裏面電極テープは、反射電極フィルム側に、さらに、バリア膜フィルムを積層すると好ましい。また、透明電極フィルムの反対面に、さらに、キャリアテープを積層すると好ましい。以下、バリア膜フィルム、キャリアテープの順に説明する。
〔バリア膜フィルム〕
バリア膜フィルムは、反射電極フィルム上に、バリア膜フィルム用組成物を湿式塗工法で塗布されると、簡便な工程で、製造設備のランニングコストを低減することができるので、好ましい。
バリア膜フィルム用組成物は、紫外線照射するか、もしくは加熱するか、または紫外線照射した後に加熱することにより、硬化するポリマー型バインダーの有機系もしくは無機系ベース材料またはノンポリマー型バインダーの無機系ベース材料のいずれか一方または双方を含む。これらポリマー型バインダー、ノンポリマー型バインダーが、紫外線照射するか、もしくは加熱するか、または紫外線照射した後に加熱することにより、硬化することで、耐候性、耐水性、耐湿性、耐熱性等を示す緻密なバリア膜フィルムを形成することができる。
ポリマー型バインダーの有機系ベース材料は、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシアクリル系、セルロース系、及びシロキサン系のポリマーからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含むことが好ましい。アクリル系バインダーとしては、アクリル系モノマーに光重合開始剤を添加し、この混合物に紫外線(UV)を照射し光重合させて得られるアクリル系ポリマーが用いられる。アクリル系モノマーとしては、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、及びテトラメチロールメタンテトラアクリレートからなる群より選ばれる1種又は2種以上の単一モノマーまたは混合モノマーが挙げられる。これらのモノマーには、MIBK(メチルイソブチルケトン)、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル:1−メトキシ−2−プロパノール)、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:1−メトキシ−2−プロパノールアセタート)等の溶剤を添加することが好ましい。但し、上記モノマーを溶解できる一般有機溶剤であれば、エタノール、メタノール、ベンゼン、トルエン、キシレン、NMP(N−メチルピロリドン)、アクリロニトリル、アセトニトリル、THF(テトラヒドロフラン)、酢酸エチル、MEK(メチルエチルケトン)、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、エチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、IPA(イソプロピルアルコール)、アセトン、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、ピペリジン、フェノール等を使用できる。また光重合開始剤としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等が挙げられる。アクリル系モノマーは、上記の任意の溶剤に対して希釈し、塗工し易い粘度に調整して、使用することができる。光重合開始剤は、アクリル系モノマー:100質量部に対して、0.1〜30質量部添加される。これは、光重合開始剤の添加量が、アクリル系モノマー:100質量部に対して、0.1質量部未満では硬化が不十分となり、30質量部を越えると硬化膜(裏面電極補強膜)が変色したり、応力が残留して密着不良を起こすからである。このようにアクリル系モノマーに、溶剤及び光重合開始剤を添加し撹拌して得られた混合液を、バリア膜フィルム用組成物のベース液とする。なお、アクリル系モノマーに、溶剤及び光重合開始剤を、添加し撹拌して得られた混合液が均一にならない場合には、40℃程度まで加温してもよい。
エポキシ系バインダーとしては、エポキシ系樹脂に溶剤を添加して撹拌し、この混合液に熱硬化剤を添加し撹拌して得られた混合液を、加熱して得られるエポキシ系ポリマーが用いられる。エポキシ系樹脂としては、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。また溶剤としては、BCA(ブチルカルビトールアセテート)、ECA(エチルカルビトールアセテート)、BC(ブチルカルビトール)等が挙げられる。但し、上記エポキシ系樹脂を溶解できる一般有機溶剤であれば、エタノール、メタノール、ベンゼン、トルエン、キシレン、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、NMP(N−メチルピロリドン)、MIBK(メチルイソブチルケトン)、アクリロニトリル、アセトニトリル、THF(テトラヒドロフラン)、酢酸エチル、MEK(メチルエチルケトン)、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、エチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、IPA(イソプロピルアルコール)、アセトン、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、ピペリジン、フェノール等を使用できる。熱硬化剤としては、2−エチル−4−メチルイミダゾール、フッ化ホウ素・モノエタノールアミン、DICY(ジシアンジアミド)、ジエチルアミノプロピルアミン、イソホロンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ピペリジン、2,4,6−トリス−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2−メチルイミダゾール、ヘキサヒドロ無水フタル酸、7,11−オクタデカンジエン−1,18−ジカルボヒドラジド等が挙げられる。エポキシ系樹脂は、上記の任意の溶剤で希釈し、塗工し易い粘度に調整し、使用することができる。熱硬化剤は、エポキシ系樹脂:100質量部に対して、0.5〜20質量部添加される。これは、熱硬化剤の添加量が、エポキシ系樹脂:100質量部に対して、0.5質量部未満では硬化が不十分となり、20質量部を越えると硬化時に大きな内部応力が発生して密着性不良を起こすからである。このようにエポキシ系樹脂に、溶剤及び熱硬化剤を添加し撹拌して得られた混合液を、バリア膜フィルム用組成物のベース液とする。なお、エポキシ系樹脂に、溶剤を添加し撹拌して得られた混合液が均一にならない場合には、40℃程度まで加温してもよい。
セルロース系バインダーは、セルロース系ポリマーに溶剤を添加して撹拌し、この混合液に、ゼラチンを添加し撹拌して得られた混合液を加熱して得られる。セルロース系ポリマーとしては、水溶性セルロース誘導体であるヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロール、ヒドロキシエチルメチルセルロース等が挙げられる。また溶剤としては、IPA(イソプロピルアルコール)、エタノール、メタノール、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、MIBK(メチルイソブチルケトン)、アセトン等が挙げられる。セルロース系ポリマーは、上記の任意の溶剤にて希釈し、塗工し易い粘度に調整し、使用することができる。ゼラチンは、セルロール系ポリマー:100質量部に対して、0.1〜20質量部添加される。これは、ゼラチンの添加量が、セルロールス系ポリマー:100質量部に対して、0.1質量部未満又は20質量部を越えると塗布に適した粘度が得られないからである。このように、セルロース系樹脂に、溶剤及びゼラチンを添加し撹拌して得られた混合液を、補強膜用組成物のベース液とする。なお、セルロース系ポリマーに、溶剤及びゼラチンを添加し、30℃程度に加温して撹拌することにより混合液が均一になる。
熱硬化性ウレタン樹脂を用いたウレタン系バインダーは、次のよう調製される。まず、トリメチロールプロパンまたはネオペンチルグリコール等の多価アルコール化合物に代表されるポリオール成分に、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンイソシアネート(MDI)等に代表される過剰量のポリイソシアネート化合物を、反応させて末端活性イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを得る。次に、この末端活性イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに、メチルフェノールに代表されるようなフェノール系、β−ブチロラクタムに代表されるようなラクタム系、またはメチルエチルケトンオキシムに代表されるようなオキシム系等のブロック化剤を反応させる。溶剤としては、ケトン類、アルキルベンゼン類、セロソルブ類、エステル類、アルコール類等が用いられる。ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられ、アルキルベンゼン類の具体例としては、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。またセロソルブ類の具体例としては、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等が挙げられ、エステル類の具体例としては、ブチルセロソルブアセテート、酢酸ブチル等が挙げられ、アルコール類の具体例としては、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。一方、熱硬化剤(反応剤)としては、ポリアミンが用いられる。ポリアミンの具体例としては、N−オクチル−N−アミノプロピル−N'−アミノプロピルプロピレンジアミン、N−ラウリル−N−アミノプロピル−N'−アミノプロピルプロピレンジアミン、N−ミリスチル−N−アミノプロピル−N'−アミノプロピルプロピレンジアミン、N−オクチル−N−アミノプロピル−N',N'−ジ(アミノプロピル)プロピレンジアミン等が挙げられる。上記ポリオール成分とイソシアネート化合物とを反応させて得られた末端活性イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに、ブロック剤によるブロック化を実施して、ブロックポリイソシアネートを作製した。このブロックポリイソシアネートの有するイソシアネート基に対するポリアミンの有するアミノ基の当量比は、1前後(0.7〜1.1の範囲)となることが好ましい。これは、ブロックポリイソシアネートの有するイソシアネート基に対するポリアミンの有するアミノ基の当量比が、0.7未満、または1.1を越えるとブロックポリイソシアネートとポリアミンのどちらかが多くなって反応不十分となるため硬化不足となるからである。ウレタンポリマーは、上記の任意の溶剤にて希釈し、塗工し易い粘度に調整し、使用することができる。
アクリルウレタン系バインダーとしては、ウレタンアクリレート系オリゴマーを含み紫外線(UV)の照射により硬化する、紫光UV−3310Bまたは紫光UV−6100B(日本合成社製)や、EBECRYL4820又はEBECRYL284(ダイセル・サイテック社製)、U−4HAまたはUA−32P(新中村化学工業社製)等のアクリルウレタン系ポリマーが挙げられる。そして必要に応じて、アクリレート系で用いる光重合開始剤(例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等)を添加することにより、硬化性を向上できる。また、溶剤としては、ケトン類、アルキルベンゼン類、セロソルブ類、エステル類、アルコール類等が使用される。ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられ、アルキルベンゼン類の具体例としては、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。またセロソルブ類の具体例としては、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等が挙げられ、エステル類の具体例としては、ブチルセロソルブアセテート、酢酸ブチル等が挙げられ、アルコール類の具体例としては、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。光重合開始剤は、必要に応じて、アクリルウレタン系ポリマー:100質量部に対して、0.1〜30質量部の範囲内で添加される。これは、光重合開始剤の添加量が、0.1質量部未満では硬化が不十分となり、30質量部を越えると内部応力が大きくなり密着性不良となるからである。また、アクリルウレタン系ポリマーは上記の任意の溶剤で希釈し、塗工し易い粘度に調整し、使用することができる。
エポキシアクリル系バインダーとしては、エポキシアクリル系ポリマーが用いられる。エポキシアクリル系ポリマーとしては、ビスフェノールA型エポキシアクリレート(例えば、新中村化学工業社製のNKオリゴEA−1020)や1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジアクリレート(例えば、新中村化学工業社製のNKオリゴEA−5521)等が挙げられる。また日本ユピカ社製のネオポール8318やネオポール8355等を用いてもよい。溶剤としては、ケトン類、アルキルベンゼン類、セロソルブ類、エステル類、アルコール類等が用いられる。ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられ、アルキルベンゼン類の具体例としては、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。またセロソルブ類の具体例としては、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等が挙げられる。エステル類の具体例としては、ブチルセロソルブアセテート、酢酸ブチル等が挙げられる。アルコール類の具体例としては、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。エポキシアクリル系ポリマーには、必要に応じて、熱硬化剤や光重合開始剤が添加される。そして、熱硬化剤や光重合開始剤により加熱硬化、もしくはUV硬化するか、またはUV硬化後に加熱硬化する。また、エポキシアクリル系ポリマーは、上記の任意の溶剤で希釈し、塗工し易い粘度に調整し、使用することができる。
シロキサン系バインダーとしては、シロキサン系ポリマーが用いられる。シロキサン系ポリマーとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルハイドロジェンシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等が挙げられる。また、ここで示すシロキサン系ポリマーとしては、ストレートシリコーンオイル及び変性シリコーンオイルの双方を用いることができる。変性シリコーンオイルとしては、さらに、ポリシロキサンの側鎖の一部に有機基を導入したもの(側鎖型)、ポリシロキサンの両末端に有機基を導入したもの(両末端型)、ポリシロキサンの両末端のうちのどちらか一方に有機基を導入したもの(片末端型)、ポリシロキサンの側鎖の一部と両末端に有機基を導入したもの(側鎖両末端型)等を用いることができる。変性シリコーンオイルには、反応性シリコーンオイルと非反応性シリコーンオイルとがあるが、その双方を使用することができる。なお、反応性シリコーンオイルとは、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシ変性、カルビノール変性、メルカプト変性、又は異種官能基変性(エポキシ基、アミノ基、ポリエーテル基)を示し、非反応性シリコーンオイルとは、ポリエーテル変性、メチルスチリル基変性、アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、フッ素変性、又は親水特殊変性を示す。また、溶剤としては、ケトン類、アルキルベンゼン類、セロソルブ類、エステル類、アルコール類等が用いられる。ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。アルキルベンゼン類の具体例としては、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。またセロソルブ類の具体例としては、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等が挙げられる。エステル類の具体例としては、ブチルセロソルブアセテート、酢酸ブチル等が挙げられる。アルコール類の具体例としては、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。シロキサン系ポリマーには、必要に応じて、熱硬化剤や光重合開始剤を添加することが可能であるが、熱硬化剤を加えなくても膜が硬化する場合には、熱硬化剤は不要である。またシロキサン系ポリマーは、上記の任意の溶剤で希釈し、塗工し易い粘度に調整し、使用することができる。
ポリマー型バインダーの無機系ベース材料は、金属石鹸、金属錯体、及び金属アルコキシドの加水分解体からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含むことが好ましい。これらのポリマー型バインダーの無機系ベース材料は、加熱により有機系から無機系のベース材料に変わるものである。すなわち、焼成により無機系ベース材料の性質を有する膜が形成できる。そして上記金属石鹸、金属錯体または金属アルコキシドの加水分解体に含まれる金属はアルミニウム、シリコン、チタン、ジルコニウム、及び錫からなる群より選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。上記金属石鹸としては、酢酸クロム、ギ酸マンガン、クエン酸鉄、ギ酸コバルト、酢酸ニッケル、クエン酸銀、酢酸銅、クエン酸銅、酢酸錫、酢酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、酢酸モリブデン等が挙げられる。また金属錯体としては、アセチルアセトン亜鉛錯体、アセチルアセトンクロム錯体、アセチルアセトンニッケル錯体等が挙げられる。さらに、金属アルコキシドとしては、チタニウムイソプロポキシド、メチルシリケート、イソアナトプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
一方、ノンポリマー型バインダーの無機系ベース材料としては、SiO2結合剤が挙げられる。このSiO2結合剤は、次に示す一例のように作製される。まず、攪拌しながらHClを純水に溶解して、HCl水溶液を調製する。次に、テトラエトキシシランとエチルアルコールとを混合して、この混合液に上記HCl水溶液を加えた後に、加熱して反応させる。これによりSiO2結合剤が作製される。またノンポリマー型バインダーは、金属石鹸、金属錯体、金属アルコキシドの加水分解体、ハロシラン類、2−アルコキシエタノール、β−ジケトン及びアルキルアセテートからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含むことが好ましい。この金属アルコキシドの加水分解体にはゾルゲルを含む。そして上記金属石鹸、金属錯体又は金属アルコキシドの加水分解体に含まれる金属は、アルミニウム、シリコン、チタン、ジルコニウム及び錫からなる群より選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。上記金属石鹸としては、酢酸クロム、ギ酸マンガン、クエン酸鉄、ギ酸コバルト、酢酸ニッケル、クエン酸銀、酢酸銅、クエン酸銅、酢酸錫、酢酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、酢酸モリブデン等が挙げられ、金属錯体としては、アセチルアセトン亜鉛錯体、アセチルアセトンクロム錯体、アセチルアセトンニッケル錯体等が挙げられ、金属アルコキシドとしては、チタニウムイソプロポキシド、メチルシリケート、イソアナトプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。また、ハロシラン類としては、クロロシラン、ブロモシラン、フルオロシラン等が挙げられる。2−アルコキシエタノールとしては、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等が挙げられる。β−ジケトンとしては、2,4−ペンタンジオン、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン等が挙げられる。さらに、アルキルアセテートとしては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
バリア膜フィルム用組成物には、使用する他の成分に応じてカップリング剤を加えるのが好ましい。それは、下層である反射電極フィルムとの密着性の向上のためである。カップリング剤としては、シランカップリング剤、アルミカップリング剤、及びチタンカップリング剤等が挙げられる。
また、バリア膜フィルム用組成物は、コロイダルシリカ、フュームドシリカ粒子、シリカ粒子、マイカ粒子、及びスメクタイト粒子からなる群より選ばれる1種又は2種以上の金属酸化物微粒子又は扁平粒子を含むことが好ましい。これらの金属酸化物微粒子又は扁平粒子をバリア膜フィルム用組成物に添加することで、水分の浸入を防止する邪魔板効果が得られるため、特に、有機系ベース材料のバインダーを用いる場合において、耐水性、防水性を向上させるのに効果的である。
コロイダルシリカは、SiO2又はその水和物のコロイドであり、平均粒径が1〜100nm、好ましくは5〜50nmであって一定の構造を持たないものである。フュームドシリカ粒子は、ケイ素塩化物を気化し、高温の炎中において気相状態で酸化されて生成され、平均粒径は1〜50nm、好ましくは5〜30nmである。シリカ粒子は、平均粒径1〜100nm、好ましくは5〜50nmの粒子である。マイカ粒子は、合成法で製造される平均粒径:10〜50000nmの粒子、好ましくは平均直径:1〜20μmかつ平均厚さ:10〜100nmの扁平粒子である。スメクタイト粒子は、イオン結合等によって構成される、面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとるイオン交換性層状ケイ酸塩化合物の一種であり、平均粒径:10〜100000nmの粒子、好ましくは平均直径:1〜20μmかつ平均厚さ:10〜100nmの扁平粒子である。バリア膜フィルム用組成物が、コロイダルシリカ、フュームドシリカ粒子等を含むことにより、バリア膜フィルムの硬さを更に増大できる。ここで、平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製 LA−950)で測定し、粒子径基準を個数として演算した50%平均粒子径(D50)をいう。このレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置による個数基準平均粒径の値は、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製 S−4300SE及びS−900)により観察した画像において、任意の50個の粒子について粒径を実測したときのその平均粒径とほぼ一致する。また上述の扁平粒子の平均直径及び平均厚さや、後述する各扁平微粒子の平均直径及び平均厚さも上記と同様にして測定した値である。
なお、上記コロイダルシリカの平均粒径を1〜100nmの範囲に限定したのは、1nm未満ではコロイダルが不安定で凝集し易く、100nmを越えると粒径が大きく分散液とならないからである。また、上記フュームドシリカ粒子、シリカ粒子、マイカ粒子、スメクタイト粒子のサイズを上記範囲に限定したのは、入手可能な粒子サイズであるか、または下層の膜の厚さに比べて大きくならないサイズ範囲とするためである。
また、バリア膜フィルム用組成物は、金、白金、パラジウム、ルテニウム、ニッケル、銅、錫、インジウム、亜鉛、鉄、クロム、マンガン及びアルミニウムからなる群より選ばれる1種又は2種以上の金属又はこれらの金属酸化物を含有する微粒子又は扁平微粒子を含むことが好ましい。これらの微粒子又は扁平微粒子を添加することにより、金属酸化物微粒子又は扁平粒子と同様、水分の浸入を防止する邪魔板効果が得られる。これらの微粒子のサイズ及び添加量は、前述した補強膜用組成物で記載した微粒子のサイズ及び添加量と同様とすることができる。
なお、バリア膜フィルム用組成物のベース液に上記必要な粒子、微粒子、扁平微粒子などの添加剤を添加して、これらの添加剤をベース液に分散させる方法は、上述の透明電極フィルム用組成物での成分を混合する方法と同様の方法を用いることができる。
バリア膜フィルムは、ポリマー型バインダーの無機系ベース材料又はノンポリマー型バインダーの無機系ベース材料を含有するバリア膜フィルム用組成物を用いた1又は2以上の無機系バリア膜と、ポリマー型バインダーの有機系ベース材料を含有するバリア膜フィルム用組成物を用いた1又は2以上の有機系バリア膜を交互に重ねて形成されるのが好ましい。さらに、無機系バリア膜と有機系バリア膜とを交互に重ねて、3〜5層の複数の積層を形成されるのが、より好ましい。これにより、バリア膜フィルムを、異なる性質の複数の積層により形成することができる。無機系ベース材料を含有するバリア膜フィルム用組成物により形成された無機系バリア膜は、耐湿性及び耐熱性が高く、硬質膜を得るという点においては優れた効果が期待できるが、膜中に欠陥となる空孔が発生する不具合が起こりやすい。一方、有機系ベース材料を含有するバリア膜フィルム用組成物により形成された有機系バリア膜は、耐水性及び耐衝撃性において優れるが、水蒸気透過性が高いため耐湿性の面で劣る。そのため、バリア膜フィルムを、異なる性質の複数の積層により形成することで互いの欠点を補い、緻密で耐水性、耐湿性、耐候性、耐衝撃性、耐熱性等の諸特性に優れたバリア膜フィルムとして機能する効果が得られる。6層以上になると、特性上の不具合はないが、材料が無駄になり、工程数も増えるため製造コストが高くなるため好ましくない。
次に、バリア膜フィルム用組成物を湿式塗工法により、塗布する。湿式塗工法は、上述の透明電極フィルム用組成物で記載した方法と同様の方法を用いることができる。
バリア膜フィルム用組成物を塗布して得られた単一又は複数の層に、紫外線照射するかもしくは好ましくは120〜400℃、より好ましくは120〜200℃に加熱するか、または紫外線照射した後に好ましくは120〜400℃、より好ましくは120〜200℃に加熱して、バリア膜フィルムが形成される。ここで、上記乾燥・硬化後のバリア膜フィルムが、フレキシブルであると、光電変換層へ薄膜太陽電池用裏面電極テープを貼り付けるときに作業性がよく、好ましい。加熱温度が120℃未満では、溶剤等の残分が裏面電極補強膜内の硬化を妨げて硬化が不十分となり、400℃を越えると低温プロセスという生産上のメリットを生かせない。すわなち、製造コストが増大し生産性が低下してしまう。特に、光電変換層に貼り合わせた後、硬化させる場合には、非晶質シリコン、微結晶シリコン、またはこれらを用いたハイブリッド型(多接合型)シリコン太陽電池モジュールにおける光電変換の光波長域に影響を及ぼしてしまうおそれがある。また、形成されるバリア膜フィルムの厚さは、0.2〜20μmとするのが好ましい。バリア膜フィルムの厚さが0.2μm未満では欠陥が発生した場合等に十分な耐候性、耐水性、耐湿性等を保持しにくく、20μmを越えると特に不具合はないが材料が無駄になる。このうち、バリア膜フィルムの厚さは、0.2μm〜10μmとするのが、より好ましい。
〔キャリアテープ〕
キャリアテープは、透明電極フィルム、及び反射電極フィルム、場合によりバリア膜フィルムを保持する。特に、基材、透明電極層、光電変換層、透明電極フィルム、及び反射電極フィルムを含む太陽電池用裏面電極テープであって、前記光電変換層に対向する領域に、透明電極フィルムと反射電極フィルム、場合によりバリア膜フィルムを形成するとき、透明電極フィルムと反射電極フィルム等が分離することを防止する。
キャリアテープとしては、ポリイミドやPET(ポリエチレンテレフタレート)等の有機ポリマーにより形成された基板等が挙げられる。光電変換層に、薄膜太陽電池用裏面電極テープの透明電極フィルムを貼り合わせる場合には、キャリアテープは、フレキシブルであると作業性が良好となり、好ましい。
このキャリアテープ上に、反射電極フィルム用バインダー用組成物、透明電極フィルム用組成物を順に、または、バリア膜フィルム用組成物、反射電極フィルム用バインダー用組成物、透明電極フィルム用組成物を順に、湿式塗工法により塗布して、薄膜太陽電池用裏面電極テープを形成すると、製造工程が簡略化され、好ましい。
上記の光電変換層に対向する領域のキャリアテープ上に、透明電極フィルムと反射電極フィルム、場合によりバリア膜フィルム(以下、透明電極フィルム等という)を形成する方法の例を、図3に示す。ここで、光電変換層に対向する領域とは、図1のP3の左部のように個々の薄膜太陽電池を構成する部分をいい、図1では光電変換層が形成されていない部分(レーザースクライブP2の部分)も含むが、基体上に複数のセルを電気的に直列に接続するための透明導電膜のみが形成されている溝部P3は含まない。なお、図3の破線は、図1のP3の位置に対応する。まず、パターニングされた裏面電極テープを被接着体に接着する方法が挙げられる。パターニングの方法としては、図3(A)に示すように、まず、キャリアフィルム110上に、光電変換層の幅で透明電極フィルム等100を1列塗布し、この塗布を繰り返し、複数列の透明電極フィルム等100を形成する方法が挙げられる。また、図3(B)に示すように、キャリアフィルム111上に、複数列分の透明電極フィルム等101を形成した後、一点鎖線で示す部分で分割して、複数列の透明電極フィルム等102を形成する方法が挙げられる。ここで、透明電極フィルム等101を分割する方法は、金型等でプレスする、または、機械的にスクライブするなどして溝部120を除去する方法、キャリアフィルム111上に、複数列分の透明電極フィルム等を硬化させずに形成し、複数列の透明電極フィルム等102の部分のみを硬化させた後、エッチング等により溝部120を除去する方法、フレキソ印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷などの印刷法によりパターニングする方法、キャリアテープごと光電変換層に対向する領域の幅にカットする方法等が挙げられる。また、裏面電極テープを被接着体に接着した後に、レーザースクライブや機械的に削り取ることもできるが、工程が煩雑になることから、裏面電極テープ自体にパターニングすることが望ましい。
薄膜太陽電池用裏面電極テープの構成の例を、以下の(1)〜(8)に示すが、本発明の薄膜太陽電池用裏面電極テープの構成は、以下に限定されない。なお、以下の例では、バリア膜フィルムが含まれていないが、当然、それぞれの構成にバリア膜フィルムを含ませることができる。
(1)接着層を備える薄膜の透明電極フィルム、気相法による金属薄膜の反射電極フィルム、キャリアテープの組合せ、
(2)湿式塗工法で形成された接着性を有する透明電極フィルム、気相法による金属薄膜の反射電極フィルム、キャリアテープの組合せ、
(3)接着層を備える薄膜の透明電極フィルム、金属箔の反射電極フィルムの組合せ、
(4)湿式塗工法で形成された接着性を有する透明電極フィルム、金属箔の反射電極フィルムの組合せ、
(5)湿式塗工法で形成された接着性を有する透明電極フィルム、湿式塗工法で形成された金属薄膜の反射電極フィルム、キャリアテープの組合せ、
(6)接着層を備える薄膜の透明電極フィルム、湿式塗工法で形成された金属薄膜の反射電極フィルム、キャリアテープの組合せ、
(7)接着層を備える薄膜の透明電極フィルム、めっき法による金属薄膜の反射電極フィルム、キャリアテープの組合せ、
(8)湿式塗工法で形成された接着性を有する透明電極フィルム、めっき法による金属薄膜の反射電極フィルム、キャリアテープの組合せ。
〔薄膜太陽電池の製造方法〕
本発明の薄膜太陽電池の製造方法は、(A)基材、透明電極層、及び光電変換層が形成された被接着体を準備する工程、(B)前記被接着体の光電変換層に、上記薄膜太陽電池用裏面電極テープの透明電極フィルムを貼り合わせる工程、をこの順に含むことを特徴とする。(B)工程後に、さらに、透明電極フィルムと反射電極フィルムを硬化させると、好ましい。以下、薄膜太陽電池の製造方法の一例を示すが、本発明は、以下の製造方法に限定されない。
図4に、薄膜太陽電池の製造方法の一例を示す。なお、図4(B)の符号9は、薄膜太陽電池用裏面電極テープ(以下、裏面電極テープという)が、キャリアテープから、バリア膜フィルム、反射電極フィルム、透明電極フィルムの順に積層されている例である。図4(A)に示すように、まず、基材4、透明電極層5及び光電変換層6の順に形成された被接着体7を準備する。基材4上に、透明電極層5及び光電変換層6の順に形成する方法は、図2の(A)〜(E)のとおりである。
図4(B)に示すように、次に、被接着体7の光電変換層6に、裏面電極テープ9の透明電極フィルム1を、図4(C)に示すように貼り合わせる。この裏面電極テープ9は、透明電極フィルム1、反射電極フィルム2、バリア膜フィルム3、キャリアテープ8が、この順に積層されている。
図4(D)に示すように、キャリアテープ9を剥離した後、図4(E)に示すように、溝部P3を形成する。この溝部P3を形成する方法は、金型等でプレスして溝部P3を除去する方法、硬化していない裏面電極テープ9を、光電変換層6に貼り合わせた後、光電変換層6に対応する部分の裏面電極テープ9のみを硬化させた後、エッチング等で溝部P3を除去する方法、機械的に削り取り除去する方法、レーザースクライブする方法等が挙げられる。
図5に、薄膜太陽電池の製造方法の別の一例を示す。なお、図5も、裏面電極テープが、キャリアテープから、バリア膜フィルム、反射電極フィルム、透明電極フィルムの順に積層されている例である。この例は、光電変換層6に対応する領域(溝部P3を除く領域)に、従構造でのP3スクライブラインに対応する絶縁溝がパターニングされた透明電極フィルム1a、反射電極フィルム2a、バリア膜フィルム3aが形成されている。図5(A)に示すように、まず、基材4、透明電極層5及び光電変換層6の順に形成された被接着体7を準備する。
図5(B)に示すように、次に、被接着体7の光電変換層6に、裏面電極テープ9の透明電極フィルム1を、溝部P3の位置合わせをして、図5(C)に示すように貼り合わせる。図5(D)では、キャリアテープを除去しているが、このキャリアテープ自体に、耐候性、耐熱性、耐湿性、耐水性等の高い素材を使うことで、このキャリアテープを取り除く必要がなく、さらに信頼性が増すため、より好ましい。
図4、図5で説明したいずれの薄膜太陽電池の製造方法の場合でも、透明電極フィルムと反射電極フィルム、場合によりバリア膜フィルムを含む、裏面電極フィルムを貼り付けた後に、硬化させる工程を含むと、好ましい。
これらの薄膜太陽電池の製造方法で製造された薄膜太陽電池は、従来の薄膜太陽電池を示す図1と同様の構造である。しかしながら、本発明の薄膜太陽電池は、裏面電極テープを用いるため、裏面電極の製造工程の簡略化、効率化を図ることができ、一般的な薄膜太陽電池の製造に用いられるレーザースクライブ工程の一部を省略することが可能な点で優れている。また、熱処理過程の短縮および、低温化により光電変換層への熱的ダメージが軽減されることにより、変換効率が向上する点においても優れている。
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明の評価には多接合薄膜シリコン太陽電池を用いたが、本発明が適用されうる太陽電池はこれに限定されるものではない。変換効率は、以下により測定した。電極作製後の評価用多接合型薄膜シリコン太陽電池について、太陽電池セルのライン加工後の基板にリード線を配線し、ソーラシミュレータとデジタルソースメータを用いて、AM:1.5、100mW/cm2の光を照射した時のI−V(電流−電圧)曲線を得た。さらに、得られたI−V(電流−電圧)曲線における電流値(I)を太陽電池セルの表面積で除することによりJ−V曲線(電流密度−電圧)を求めた。このJ−V曲線において、電圧の軸と電流密度の軸を2辺とし、原点とJ−V曲線上の点を結んで描かれた長方形の面積が最大となったときの面積での出力を最高出力密度(mW/cm2)とし、〔最高出力密度(mW/cm2)〕/〔100(mW/cm2)〕×100を変換効率(%)とする。表1、2に、それらの結果を示す。
<実施例1>
被接着体を製造する方法は、図2(A)〜(E)を用いて説明し、その後の工程は、図5を用いて説明する。まず、図2(B)に示すような、透明基板40には縦横10cm角、厚さ4mmのガラス板を用意し、透明導電膜50としてSnO2を用いた。この際の透明導電膜50の膜厚は800nm、シート抵抗は10Ω/□、ヘイズ率は15〜20%であった。
次いで、図2(C)に示すように、レーザースクライブP1加工まで行った透明導電膜50の上から、プラズマCVD法を用いてアモルファスシリコン層61を300nmの厚さで成膜し、続いて、アモルファスシリコン層61の上に、プラズマCVD法を用いて微結晶シリコン層62を1.7μmの厚さで成膜することで、図2(D)に示すようなシリコン系の光電変換層60を形成した。図2(E)に示すように、この光電変換層60に対し、レーザースクライブP2加工を行い、これを被接着体70とした。被接着体は、図5(A)では、符号7で示される。
一方、図5に示すような裏面電極テープ9aを作製するために、ポリエチレンテレフタレート(PET)製のキャリアテープ8a上に、バリア膜フィルム3aとしてメチルセルロースを、熱処理後の膜厚で1μmとなるようにダイコーティング装置で塗工し、120℃で10分間熱処理を行った。この上に、スパッタリングにより反射電極フィルム2aとしてAg膜を100nm成膜した。
次に、原子比でSn/(Sn+In)=0.05のITOターゲットを用い、スパッタリングにより厚さ:10nmの透明電極フィルム1aを成膜した。この上に、アクリル樹脂を熱処理後の膜厚で10nmになるように調整して、ダイコーティング装置で塗工を行い、接着層を形成した。これに対し、図5(B)に示すようなレーザースクライブP3加工を施して、裏面電極テープ9aを作製した。
次に、図5(C)に示すように、裏面電極テープ9aと被接着体7を、タッチパネル貼り合わせ工程装置を用いて、正確に位置合わせして、裏面電極テープ9aと被接着体7を貼り合わせた後、120℃で10分間の硬化処理を行った。
<実施例2~23>
表1に示された条件にした以外は、実施例1と同様の方法で試験を行った。ここで、実施例2等で使用したシリカゾルゲルは三菱マテリアル社製のSB−10Aを用いた。また、実施例12等の湿式塗工法で使用した反射電極フィルム用組成物は、以下のように、作製した。
まず、硝酸銀を脱イオン水に溶解して、金属イオン水溶液を調製した。また、クエン酸ナトリウムを脱イオン水に溶解して、濃度が26質量%のクエン酸ナトリウム水溶液を調製した。このクエン酸ナトリウム水溶液に、35℃に保持された窒素ガス気流中に粒状の硫酸第一鉄を直接加えて溶解させ、クエン酸イオンと第一鉄イオンを3:2のモル比で含有する還元剤水溶液を調製した。次いで、上記窒素ガス気流を35℃に保持した状態で、マグネチックスターラーの攪拌子を還元剤水溶液中に入れ、攪拌子を100rpmの回転速度で回転させて、上記還元剤水溶液を攪拌しながら、この還元剤水溶液に上記金属塩水溶液を滴下して合成した。ここで、還元剤水溶液への金属塩水溶液の添加量は、還元剤水溶液の量の1/10以下になるように、各溶液の濃度を調整することで、室温の金属塩水溶液を滴下しても反応温度が40℃に保持されるようにした。また、上記還元剤水溶液と金属塩水溶液との混合比は、還元剤として加えられる第一鉄イオンの当量が、金属イオンの当量の3倍となるように調整した。還元剤水溶液への金属塩水溶液の滴下が終了した後、混合液の攪拌をさらに15分間続けることにより、混合液内部に金属粒子を生じさせ、金属粒子が分散した金属粒子分散液を得た。金属粒子分散液のpHは5.5であり、分散液中の金属粒子の化学量論的生成量は、5g/dm3であった。得られた分散液を、室温で放置することにより、分散液中の金属粒子を沈殿させ、沈殿した金属粒子の凝集物をデンカンテーションにより分離した。分離した金属凝集物に脱イオン水を加えて分散体とし、限外濾過により脱塩処理した後、さらにメタノールで置換洗浄することにより、金属(銀)の含有量を50質量%とした。その後、遠心分離機を用い、この遠心分離機の遠心力を調整して、粒径が100nmを超える比較的大きな銀粒子を分離することにより、一次粒子径:10〜50nmの範囲内の銀ナノ粒子を数平均で、71%含有するように調整した。すなわち、数平均ですべての銀ナノ粒子100%に対する一次粒子径:10〜50nmの範囲内を占める銀ナノ粒子の割合が、71%になるように調整した。得られた銀ナノ粒子は、炭素骨格が炭素数3の有機主鎖の保護剤が化学修飾されていた。
次に、得られた金属ナノ粒子:10質量部を、水、エタノールおよびメタノールを含む混合溶液:90質量部に添加混合することにより分散させた。さらに、この分散液に、添加物としてポリビニルピロリドンを4質量部と、クエン酸銀を1質量部と、金属ナノ粒子の比率が95質量部となるように加えることで、反射電極フィルム用組成物を得た。得られた反射電極フィルム用組成物を、ポリエチレンテレフタレート(PET)製のキャリアテープに実施例1と同様にして形成したバリア膜フィルム上に、焼成後の厚さが表1に示す膜厚となるように湿式塗工法で塗布した後、塗膜を180℃(PET製キャリアテープの耐熱温度が200℃であることに由来する温度)で60分以下の条件で焼き付けることにより、反射電極フィルムを形成した。
実施例13では、形成した反射電極フィルム上に、スパッタリングにより厚さ:1nmの透明電極フィルムを成膜した。この上に、アクリル樹脂を熱処理後の膜厚で100nmになるように調整して、ダイコーティング装置で塗工を行い、接着層を形成した。これに対し、機械的に、図5(B)に示すようなレーザースクライブP3を施して、裏面電極テープを作製した。
次に、図5(C)に示すように、裏面電極テープ9aと被接着体7を、タッチパネル貼り合わせ工程装置を用いて、正確に位置合わせして、裏面電極テープ9aと被接着体7を貼り合わせた後、120℃で10分間の硬化処理を行った。
<実施例24>
図5を用いて、説明する。図5(a)に示す被接着体7は、実施例1で作製したものを使用した。次に、ポリエチレンテレフタレート(PET)製のキャリアテープ8a上に、バリア膜フィルム3aとして、シリカゾルゲルを熱処理後の膜厚で1μmとなるようにダイコーティング装置で塗工し、120℃で10分間熱処理を行った。この上に、反射電極フィルム2aとして、スパッタリングによりAg膜を800nm成膜した。
次に、透明電極フィルム1aの形成に用いる透明電極フィルム用組成物を、以下のように調製した。導電性微粒子として、原子比でAl/(Al+Zn)=0.02、粒子径:0.03μmのAZO粉末を50質量部、分散媒としてIPAを加えることで、全体を100質量部とした。この混合物をダイノーミル(横型ビーズミル)により、0.3mm径のジルコニアビーズを使用して、2時間稼働させて、混合物中の微粒子を分散させた。この分散液に、バインダーとしてシリカゾルゲルを、質量比でAZO:シリカゾルゲル=7:3になるように混合し、更にエタノールで、AZO換算で2質量部になるように希釈し、透明電極フィルム用組成物を得た。この透明電極フィルム用組成物を、熱処理後の膜厚が50nmになるように調整して、ダイコーティング装置で塗工を行った。これに対し、機械的に、図5(B)に示すレーザースクライブP3を施して、裏面電極テープ9aを作製した。
次に、図5(C)に示すように、裏面電極テープ9aと被接着体7を、タッチパネル貼り合わせ工程装置を用いて、正確に位置合わせして、裏面電極テープ9aと被接着体7を貼り合わせた後、120℃で10分間の硬化処理を行った。
なお、上記導電性微粒子の平均粒子径の測定方法については、以下のとおり、個数平均より算出した。堀場製作所製LB−550による動的光散乱法で測定し、さらに電子顕微鏡写真からも粒径を確認した。使用する電子顕微鏡については、粒子径の大きさ、粉末の種類によって、適宜SEMやTEMを使い分けた。
<実施例25~45>
表2に示す条件にした以外は、実施例24と同様の方法で試験を行った。
<比較例1>
図2を用いて、説明する。図2(E)に示すレーザースクライブP2された被接着体70には、実施例1で作製したものを用いた。裏面側の透明導電膜10の形成に用いる透明導電膜用組成物を以下のように調製した。導電性微粒子として原子比でSn/(Sn+In)=0.1、粒子径:0.03μmのITO粉末を1.0質量部、バインダーとしてシリカゾルゲルを0.05質量部、更に分散媒としてエタノールを98.95質量部加えることで、全体を100質量部とした。なお、上記導電性微粒子の平均粒子径の測定方法については、実施例24に記載したとおりである。
この混合物をダイノーミル(横型ビーズミル)により、0.3mm径のジルコニアビーズを使用して、2時間稼働させて、混合物中の微粒子を分散させることにより、透明導電膜用組成物を得た。
次に、光電変換層60上に、スピンコーティング法により焼成後の膜厚が80nmとなるように上記調製した透明導電膜用組成物を塗工し、塗膜を200℃で30分焼き付けることにより、透明導電膜10を形成した。焼成後の膜厚は、断面をSEMにより撮影した写真により測定した。焼成して得られた透明導電膜10における微粒子とバインダーの割合は、微粒子/バインダー比が2/1であった。なお、焼付け時の温度については、10cm角のガラス板の角の4点の温度を測定し、平均値が設定温度の±5℃に入る条件とした。
更に、形成した裏面側透明導電膜10上に、スピンコーティング法により、焼成後の膜厚が200nmとなるように、平均粒子径0.03μmのAgコロイドが、エタノール溶媒に分散されたAgナノインクを塗工し、塗膜を200℃で30分間焼き付けることにより、導電性反射膜20を形成することで、図2(F)の補強膜がないものを作製し、次いで、図2(G)に示すように、レーザースクライブP3を行い、評価用多接合型薄膜シリコン太陽電池を得た。なお、使用したAgナノインクの組成は、Agコロイドが10質量部及びエタノールが90質量部である。
表1、2から明らかなように、実施例1〜45のすべてで、裏面電極テープを用いて薄膜太陽電池を作製することができ、変換効率が7.23〜7.87%と高かった。これに対して、比較例1では、実施例1〜45より複雑な工程で作製されたにもかかわらず、変換効率が実施例1〜45より低かった。実施例1〜45では、製造工程中での熱処理過程が短縮され、かつ低温化されたため、変換効率が高くなった、と考えられる。
以上のように、本発明の裏面電極テープを用いることにより、裏面電極の製造工程の簡略化、効率化を図ることができる。また、一般的な薄膜太陽電池の製造に用いられるレーザースクライブ工程の一部を省略することが可能である。また、熱処理過程の短縮および、低温化により光電変換層への熱的ダメージが軽減されることにより、変換効率を向上することができる。