JP2012151387A - 太陽電池向け透明導電膜用組成物および透明導電膜 - Google Patents

太陽電池向け透明導電膜用組成物および透明導電膜 Download PDF

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Abstract

【課題】 薄膜太陽電池向けの湿式塗工法で用いられる透明導電膜用組成物、およびこの組成物により作製される透明導電膜に関する。透明導電膜の屈折率と、光電変換層の屈折率の差を大きくすることにより、透明導電膜−光電変換層界面での反射光が増加し、この増加した光電変換層への戻り光により、薄膜太陽電池の発電効率を向上させる透明導電膜、およびこの透明導電膜を形成可能な透明導電膜組成物を提供する。
【解決手段】 導電性酸化物粒子と、平均粒径:1〜50nmの球状フッ化マグネシウム粒子と、バインダーと、を含み、導電性酸化物粒子と球状フッ化マグネシウム粒子の合計100質量部に対して、球状フッ化マグネシウム粒子を2〜35質量部含むことを特徴とする、薄膜太陽電池向け透明導電膜用組成物である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、透明導電膜用組成物、および透明導電膜に関する。より詳しくは、薄膜太陽電池向け透明導電膜用組成物、および透明導電膜に関する。
現在、環境保護の立場から、クリーンエネルギーの研究開発、実用化が進められており、太陽電池は、エネルギー源である太陽光が無尽蔵であり、無公害である等ことから注目されている。従来、太陽電池には、単結晶シリコンや多結晶シリコンのバルク太陽電池が用いられてきたが、バルク太陽電池は、製造コストが高く、生産性も低いことから、なるべくシリコン量を節約した太陽電池の開発が急がれている。
そこで、厚さが、例えば、0.3〜2μmのアモルファスシリコン等の半導体を用いた薄膜太陽電池の開発が、精力的に行われている。この薄膜太陽電池は、ガラス基板や耐熱性プラスチック基板上に、光電変換に必要な量の半導体層を形成する構造のため、薄型で軽量、低コスト、大面積化が容易である等の利点がある。
薄膜太陽電池には、スーパーストレート構造とサブストレート構造があり、スーパーストレート型構造は、透光性基板側から太陽光を入射させるため、通常、基板−透明電極−光電変換層−裏面電極の順で形成される構造をとる。一方、サブストレート型構造は、通常、基板−裏面電極−光電変換層−透明電極の順で形成される構造をとる。
これらの薄膜太陽電池では、従来、電極や反射膜はスパッタ等の真空成膜法で形成されていたが、一般に、大型の真空成膜装置の導入、維持、運転には多大なコストが必要である。この点を改良するため、透明導電膜と導電性反射膜を、透明導電膜用組成物と導電性反射膜用組成物を用いて、より安価な製造方法である湿式塗工法で形成する技術が、開示されている(特許文献1)。
特開2009−88489号公報
本発明は、上記の湿式塗工法により製造される透明導電膜を改良することを課題とする。本発明者らは、透明導電膜用組成物を改良し、湿式塗工法で用いられる透明導電膜の屈折率と、光電変換層の屈折率の差を大きくすることにより、透明導電膜−光電変換層界面での反射光が増加し、この増加した光電変換層への戻り光により、薄膜太陽電池の発電効率を向上させることができることを見出した。この手法は、スーパーストレート型太陽電池、サブストレート型太陽電池やバルクシリコン太陽電池のいずれにも適用可能であり、特にスーパーストレート型に適している。
本発明は、以下に示す構成によって上記課題を解決した薄膜太陽電池向け透明導電膜用組成物、および透明導電膜に関する。
(1)導電性酸化物粒子と、平均粒径:1〜50nmの球状フッ化マグネシウム粒子と、バインダーと、を含み、導電性酸化物粒子と球状フッ化マグネシウム粒子の合計100質量部に対して、球状フッ化マグネシウム粒子を2〜35質量部含むことを特徴とする、薄膜太陽電池向け透明導電膜用組成物。
(2)バインダーが、加熱により硬化するポリマー型バインダーおよび/またはノンポリマー型バインダーである、上記(1)記載の薄膜太陽電池向け透明導電膜用組成物。
(3)ノンポリマー型バインダーが、金属石けん、金属錯体、金属アルコキシド、ハロシラン類、2−アルコキシエタノール、β−ジケトン、およびアルキルアセテートからなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記(2)記載の薄膜太陽電池向け透明導電膜用組成物。
(4)導電性酸化物粒子と、平均粒径:1〜50nmの球状フッ化マグネシウム粒子と、硬化したバインダーと、を含み、導電性酸化物粒子と球状フッ化マグネシウム粒子の合計100質量部に対して、球状フッ化マグネシウム粒子を2〜35質量部含むことを特徴とする、薄膜太陽電池向け透明導電膜。
(5)バインダーが、ポリマー型バインダーおよび/またはノンポリマー型バインダーである、上記(4)記載の薄膜太陽電池向け透明導電膜。
(6)ノンポリマー型バインダーが、金属石けん、金属錯体、金属アルコキシド、ハロシラン類、2−アルコキシエタノール、β−ジケトン、およびアルキルアセテートからなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記(5)記載の薄膜太陽電池向け透明導電膜。
(7)上記(4)〜(6)のいずれか記載の薄膜太陽電池向け透明導電膜を含む、薄膜太陽電池。
(8)基材、透明電極層、光電変換層、および透明導電膜を備える薄膜太陽電池の透明導電膜の製造方法であって、光電変換層上に、請求項1〜3のいずれか1項記載の透明導電膜用組成物を、湿式塗工法により塗布して透明導電塗膜を形成した後、透明導電塗膜を有する基材を、130〜400℃で焼成して、厚さ:0.03〜0.5μmの透明導電膜を形成する、透明導電膜の製造方法。
(9)湿式塗工法が、スプレーコーティング法、ディスペンサーコーティング法、スピンコーティング法、ナイフコーティング法、スリットコーティング法、インクジェットコーティング法、ダイコーティング法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、またはグラビア印刷法である、上記(8)記載の透明導電膜の製造方法。
本発明(1)の透明導電膜用組成物は、湿式塗工法で光電変換層上に塗布、焼成することができ、球状フッ化マグネシウム粒子の含有量によって、得られた透明導電膜の屈折率を低下させることができる。すなわち、透明導電膜の屈折率と、光電変換層の屈折率の差が大きくなり、透明導電膜−光電変換層界面での反射光が増加し、この増加した光電変換層への戻り光で、薄膜太陽電池の発電効率を向上させることが可能な透明導電膜を簡便に得ることができる。
本発明(4)によれば、透明導電膜−光電変換層界面での反射光が増加し、この増加した光電変換層への戻り光により、発電効率が向上した薄膜太陽電池を簡便に得ることができる。
本発明(7)によれば、高額な真空設備を用いずに、透明導電膜の形成が可能であり、発電効率の高い薄膜太陽電池を簡便に、低コストで製造することができる。
本発明の透明導電膜を用いる薄膜太陽電池の断面の模式図である。
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。なお、%は特に示さない限り、また数値固有の場合を除いて質量%である。
〔薄膜太陽電池向け透明導電膜用組成物〕
本発明の薄膜太陽電池向け透明導電膜用組成物(以下、「導電膜組成物」という)は、導電性酸化物粒子と、平均粒径:1〜50nmの球状フッ化マグネシウム粒子と、バインダーと、を含み、導電性酸化物粒子と球状フッ化マグネシウム粒子の合計100質量部に対して、球状フッ化マグネシウム粒子を2〜35質量部含むことを特徴とする。
導電性酸化物粒子としては、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)、ATO(Antimony Tin Oxide:アンチモンドープ酸化錫)の酸化錫粉末やAl、Co、Fe、In、Sn、およびTiからなる群より選ばれる少なくとも種の金属を含有する酸化亜鉛粉末等が好ましく、このうち、ITO、ATO、AZO(Aluminum Zinc Oxide:アルミドープ酸化亜鉛)、IZO(Indium Zinc Oxide:インジウムドープ酸化亜鉛)、TZO(Tin Zinc Oxide:スズドープ酸化亜鉛)が、より好ましい。また、導電性酸化物微粒子の平均粒径は、分散媒中で安定性を保つため、10〜100nmの範囲内であることが好ましく、このうち、20〜60nmの範囲内であると、より好ましい。ここで、平均粒径は、QUANTACHROME AUTOSORB−1による比表面測定によるBET法または堀場製作所製LB−550による動的光散乱法で測定する。特に記載がない場合にはQUANTACHROME AUTOSORB−1による比表面測定によるBET法を用いて測定する。
球状フッ化マグネシウム粒子は、平均粒径:1〜50nmであり、1nmより小さいと粒子の安定性に欠けるため二次凝集を引き起こしやすく試料作製が困難であり、50nmより大きいと導電性粒子のコンタクトを阻害するため適さないためである。ここで、平均粒径は、QUANTACHROME社製 AUTOSORB−1を用いた比表面積測定から、球状フッ化マグネシウム粒子が真球であると仮定して換算する。また、球状とは、ほぼ球状の形状であってもよく、例えば、立方体や多面体形は、ほぼ球状である。好ましくは真球である。球状フッ化マグネシウム粒子のアスペクト比(長径/短径)は、1〜1.4が好ましく、1〜1.25がより好ましい。フッ化マグネシウムは、ナノ〜ミクロンオーダーで粒子の製造が可能であり、粒子の表面は親水性であるため、アルコール等の溶媒に分散させることができる。
ここで、フッ化マグネシウムの屈折率は、一般的に1.37とされており、フッ化カルシウム(屈折率:1.43)よりも低く、硬化後の透明導電膜の屈折率を低下させる。なお、他のフッ化物では、フッ化ナトリウム(屈折率:1.34)があるが、水への溶解性が高いため本発明の利用に適さない。
また、球状フッ化マグネシウム粒子は、光電変換層との濡れ性がよく、膜の厚さムラを低減することができる。図1に、本発明の透明導電膜を用いる薄膜太陽電池の断面の模式図を示す。なお、図1は、スーパーストレート型の例である。図1では、薄膜太陽電池は、基材10、透明電極層3、光電変換層2、透明導電膜1、導電性反射膜4の順に備えており、基板10側から太陽光が入射する。入射した太陽光の多くは、導電性反射膜4で反射され、光電変換層2に戻り、変換効率を向上させている。ここで、透明導電膜1と光電変換層2の界面でも太陽光の反射は起きており、本発明の透明導電膜用組成物を用いた透明導電膜1は、屈折率が低いため、透明導電膜1と光電変換層2の界面での反射光を増加させ、薄膜太陽電池の発電効率を向上させることができる。
バインダーは、加熱により硬化するポリマー型バインダー又はノンポリマー型バインダーのいずれか一方又は双方を含む組成物であると好ましい。ポリマー型バインダーとしては、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、アルキッド樹脂、ポリウレタン、アクリルウレタン、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、セルロース、およびシロキサンポリマ等が挙げられる。またポリマー型バインダーには、アルミニウム、シリコン、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銀、銅、亜鉛、モリブデンもしくは錫の金属石鹸、金属錯体、または金属アルコキシドの加水分解体が含まれることが好ましい。ノンポリマー型バインダーとしては、金属石鹸、金属錯体、金属アルコキシド、ハロシラン類、2−アルコキシエタノール、β−ジケトン、およびアルキルアセテートなどが挙げられる。また、金属石鹸、金属錯体、または金属アルコキシドに含まれる金属は、アルミニウム、シリコン、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銀、銅、亜鉛、モリブデン、錫、インジウムまたはアンチモンであると好ましく、シリコン、アルミニウムのアルコキシド(例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド)が、より好ましい。これらポリマー型バインダー、ノンポリマー型バインダーが、加熱により硬化することで、低温での低いヘイズ率及び体積抵抗率の透明導電膜の形成を可能とする。なお、金属アルコキシドは、加水分解物、またはこの脱水物でもよい。
金属アルコキシドを硬化させるときには、加水分解反応を開始させるための水分とともに、触媒として塩酸、硝酸、リン酸(HPO)、フッ酸等の酸、または、アンモニア水、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリを含有させると好ましく、加熱硬化後に、触媒が揮発し易く、残存しにくい、ハロゲンが残留しない、耐水性に弱いP等が残存しない、Na等アルカリ金属塩が残存しない等の観点から、硝酸がより好ましい。また、硝酸の場合には、仮にNが残存して、下地の光電変換層(n型)に拡散してもドナーとして働くため、光電変換層の変換効率が低くならず、むしろ変換効率が高くなり得る。
透明導電膜用組成物は、導電性酸化物粒子と球状フッ化マグネシウム粒子の合計100質量部に対して、導電性酸化物粒子を98〜65質量部含み、好ましくは、95〜70質量部含む。上限値を越えると密着性が低下し、下限値未満では導電性が低下するからである。
導電性酸化物粒子と球状フッ化マグネシウム粒子の合計100質量部に対して、球状フッ化マグネシウム粒子を2〜35質量部含み、好ましくは5〜30質量部含む。下限値以下では、硬化後の透明導電膜の屈折率を十分低くすることができず、上限値以上では、導電性が低下するからである。
これらバインダーの含有割合は、透明導電膜用組成物中の固形分(導電性酸化物粒子、球状フッ化マグネシウム粒子、およびバインダー):100質量部に対して、5〜50質量部であると好ましく、10〜30質量部であると、より好ましい。また、バインダーとして、金属アルコキシドを、触媒として硝酸を用いる場合には、金属アルコキシド:100質量部に対して、硝酸を0.03〜3質量部であると、バインダーの硬化速度、硝酸の残存量の観点から好ましい。なお、触媒である硝酸の量が少ないと、バインダーである金属アルコキシドの加水分解体の重合速度が遅くなり、加水分解に必要な水の量が足りない場合には、強固な透明導電膜が得られなくなるおそれがある。また、焼成による硬化時に重合度が高い網目構造をとった加水分解溶液であると、収縮する際にかかる応力が導電性粒子同士のコンタクトを補助する形となっていると考えられるため、金属アルコキシド:100質量部に対して、水が10〜120質量部であると好ましい。
透明導電膜用組成物は、使用する他の成分に応じてカップリング剤を加えるのが好ましい。それは導電性微粒子、球状フッ化マグネシウム粒子と、バインダーとの結合性、およびこの透明導電膜用組成物により形成される透明導電膜と、基材に積層された光電変換層または導電性反射膜との密着性向上のためである。カップリング剤としては、シランカップリング剤、アルミカップリング剤及びチタンカップリング剤などが挙げられる。カップリング剤の含有量は、透明導電膜用組成物に占める固形分(導電性酸化物粒子、球状フッ化マグネシウム粒子、バインダー、およびシランカップリング剤等):100質量部に対して、0.2〜5質量部が好ましく、0.5〜2質量部がより好ましい。
透明導電膜用組成物は、成膜を良好にするために、分散媒を含むと好ましい。分散媒としては、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類;トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類やエチレングリコール等のグリコール類;エチルセロソルブ等のグリコールエーテル類等が挙げられる。分散媒の含有量は、良好な成膜性を得るために、透明導電膜用組成物:100質量部に対して、65〜99質量部であると好ましい。
また、使用する成分に応じて、低抵抗化剤や水溶性セルロース誘導体等を加えることが好ましい。低抵抗化剤としては、コバルト、鉄、インジウム、ニッケル、鉛、錫、チタンおよび亜鉛の鉱酸塩および有機酸塩からなる群より選ばれた1種又は2種以上が好ましい。例えば、酢酸ニッケルと塩化第二鉄の混合物、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸錫と塩化アンチモンの混合物、硝酸インジウムと酢酸鉛の混合物、アセチル酢酸チタンとオクチル酸コバルトの混合物等が挙げられる。これら低抵抗化剤の含有量は、導電性酸化物粉末:100質量部に対して、0.2〜15質量部が好ましい。水溶性セルロース誘導体は、非イオン化界面活性剤であるが、他の界面活性剤に比べて少量の添加でも導電性酸化物粉末を分散させる能力が極めて高く、また、水溶性セルロース誘導体の添加により、形成される透明導電膜の透明性も向上する。水溶性セルロース誘導体としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。水溶性セルロース誘導体の添加量は、導電性酸化物粉末:100質量部に対して、0.2〜5質量部が好ましい。
透明導電膜用組成物は、所望の成分を、常法により、ペイントシェーカー、ボールミル、サンドミル、セントリミル、三本ロール等によって混合し、導電性酸化物粒子、球状フッ化マグネシウム粒子等を分散させ、製造することができる。無論、通常の攪拌操作によって製造こともできる。
〔薄膜太陽電池向け透明導電膜〕
本発明の薄膜太陽電池向け透明導電膜は、導電性酸化物粒子と、平均粒径:1〜50nmの球状フッ化マグネシウム粒子と、硬化したバインダーと、を含み、導電性酸化物粒子と球状フッ化マグネシウム粒子の合計100質量部に対して、球状フッ化マグネシウム粒子を2〜35質量部含むことを特徴とする。
導電性酸化物粒子、球状フッ化マグネシウム粒子については、上述のとおりであり、硬化したバインダーは、上述のバインダーを硬化させたもの、すなわち、上述の薄膜太陽電池向け透明導電膜用組成物を硬化させたものである。ここで、球状フッ化マグネシウム粉末は、例えば、塩化マグネシウム水溶液または酢酸マグネシウム水溶液中に、フッ化アンモニウム水溶液またはフッ化カリウム水溶液を滴下させることより、球状フッ化マグネシウム粒子を生成することができる。生成した球状フッ化マグネシウム粒子は、遠心分離等による洗浄ろ過により、水溶液から分離することができる。なお、洗浄ろ過は、未反応物および副生成物のイオン種を除去するため、複数回繰り返すことが好ましい。
本発明の透明導電膜の製造方法は、基材、透明電極層、光電変換層、および透明導電膜を備える薄膜太陽電池の透明導電膜の製造方法であって、光電変換層上に、上記の透明導電膜用組成物を、湿式塗工法により塗布して透明導電塗膜を形成した後、透明導電塗膜を有する基材を、130〜400℃で焼成して、厚さ:0.03〜0.5μmの透明導電膜を形成する。
まず、基材、透明電極層、光電変換層、および透明導電膜を備える薄膜太陽電池の光電変換層上に、上記透明導電膜用組成物を、湿式塗工法により塗布する。ここでの塗布は、焼成後の厚さが、0.03〜0.5μm、好ましくは0.05〜0.2μmの厚さとなるようにする。続いて、この塗膜を、温度20〜120℃、好ましくは25〜60℃で、1〜30分間、好ましくは2〜10分間乾燥する。このようにして透明導電塗膜を形成する。
上記基材は、ガラス、セラミックスもしくは高分子材料からなる透光性基板のいずれか、またはガラス、セラミックス、高分子材料、およびシリコンからなる群より選ばれた2種類以上の透光性積層体を使用することができる。高分子基板としては、ポリイミドやPET(ポリエチレンテレフタレート)等の有機ポリマーにより形成された基板が挙げられる。
更に上記湿式塗工法は、スプレーコーティング法、ディスペンサーコーティング法、スピンコーティング法、ナイフコーティング法、スリットコーティング法、インクジェットコーティング法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、またはダイコーティング法のいずれかであることが好ましいが、これに限られるものではなく、あらゆる方法を利用できる。
スプレーコーティング法は、透明導電膜用組成物を圧縮エアにより霧状にして基材に塗布する、または分散体自体を加圧し霧状にして基材に塗布する方法であり、ディスペンサーコーティング法は、例えば、透明導電膜用組成物を注射器に入れ、この注射器のピストンを押すことにより注射器先端の微細ノズルから分散体を吐出させて、基材に塗布する方法である。スピンコーティング法は、透明導電膜用組成物を回転している基材上に滴下し、この滴下した透明導電膜用組成物を、その遠心力により基材周縁に拡げる方法であり、ナイフコーティング法は、ナイフの先端と所定の隙間をあけた基材を水平方向に移動可能に設け、このナイフより上流側の基材上に透明導電膜用組成物を供給して、基材を下流側に向って水平移動させる方法である。スリットコーティング法は、透明導電膜用組成物を狭いスリットから流出させて基材上に塗布する方法であり、インクジェットコーティング法は、市販のインクジェットプリンタのインクカートリッジに透明導電膜用組成物を充填し、基材上にインクジェット印刷する方法である。スクリーン印刷法は、パターン指示材として紗を用い、その上に作られた版画像を通して透明導電膜用組成物を基材に転移させる方法である。オフセット印刷法は、版に付けた透明導電膜用組成物を、直接基材に付着させず、版から一度ゴムシートに転写させ、ゴムシートから改めて基材に転移させる、透明導電膜用組成物の撥水性を利用した印刷方法である。ダイコーティング法は、ダイ内に供給された透明導電膜用組成物を、マニホールドで分配させてスリットより薄膜上に押し出し、走行する基材の表面を塗工する方法である。ダイコーティング法には、スロットコート方式やスライドコート方式、カーテンコート方式がある。
最後に、透明導電塗膜を有する基材を、大気中または窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で、130〜400℃、好ましくは150〜350℃の温度で、5〜60分間、好ましくは15〜40分間保持して焼成する。ここで、焼成後の透明導電膜の厚さが0.03〜0.5μmの範囲となるように透明導電膜用組成物を塗布する理由は、焼成後の厚さが0.03μm未満、又は0.5μmを越えると、増反射効果が十分に得られないからである。
塗膜を有する基材の焼成温度を130〜400℃の範囲としたのは、130℃未満では、複合膜における透明導電膜において表面抵抗値が高くなりすぎる不具合が生じるからである。また、400℃を越えると、低温プロセスという生産上のメリットを生かせない、すなわち、製造コストが増大し、生産性が低下してしまう。また、特にアモルファスシリコン、微結晶シリコン、またはこれらを用いたハイブリッド型シリコン太陽電池は比較的熱に弱く、焼成工程によって変換効率が低下するからである。
塗膜を有する基材の焼成時間を5〜60分間の範囲としたのは、焼成時間が下限値未満では、複合膜における透明導電膜において表面抵抗値が高くなりすぎる不具合が生じるからである。焼成時間が上限値を越えると、必要以上に製造コストが増大して生産性が低下してしまい、また、太陽電池セルの変換効率が低下する不具合を生じるためである。
以上により、本発明の透明導電膜を形成することができる。このように、本発明の製造方法は、湿式塗工法を使用することにより、真空蒸着法やスパッタ法などの真空プロセスを可能な限り排除できるため、より安価に透明導電膜を製造できる。
以下に、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
表1〜3で示す組成(数値は、質量部を示す)になるように、合計が60gで、100cmのガラス瓶中に入れ、直径:0.3mmのジルコニアビーズ(ミクロハイカ、昭和シェル石油製):100gを用いて、ペイントシェーカーで6時間分散することにより、実施例1〜19、比較例1〜5の透明導電膜組成物を作製した。なお、表1の比率の欄ではでは、導電性酸化物粒子を導と、球状フッ化マグネシウム粒子をMgFと、カップリング剤をカップと省略した。球状MgF粒子の種類の行では、球状フッ化マグネシウム粒子1を球状1と省略した。また、表4に、用いた球状フッ化マグネシウム(MgF)粒子の平均粒径を示す。ここで、球状フッ化マグネシウム粒子1〜4と、バインダーとして用いたSiO結合剤1〜7は、以下のようにして、作製した。
〔球状フッ化マグネシウム粒子1〕
45℃に加温し、攪拌している250cmの塩化マグネシウム水溶液中に、250cmのフッ化アンモニウム水溶液を、チューブポンプ用いて1時間かけて滴下させた。生成されたコロイド粒子に、遠心分離による洗浄ろ過を8回繰り返して、平均粒径が10nmの球状フッ化マグネシウム粒子:20gを得た。
〔球状フッ化マグネシウム粒子2〕
45℃に加温し、攪拌している300cmの酢酸マグネシウム水溶液中に、200cmのフッ化アンモニウム水溶液を、チューブポンプ用いて1時間かけて滴下させた。生成されたコロイド粒子に、遠心分離による洗浄ろ過を8回繰り返して、平均粒径が15nmの球状フッ化マグネシウム粒子:15gを得た。
〔球状フッ化マグネシウム粒子3〕
55℃に加温し、攪拌している300cmの塩化マグネシウム溶液中に、200cmのフッ化カリウム水溶液を、チューブポンプを用いて1時間かけて滴下させた。生成されたコロイド粒子に、遠心分離による洗浄ろ過を5回繰り返して、平均粒径が25nmの球状フッ化マグネシウム粒子:25gを得た。
〔球状フッ化マグネシウム粒子4〕
45℃に加温し、攪拌している250cmの塩化マグネシウム水溶液中に、250cmのフッ化アンモニウム水溶液を、チューブポンプ用いて1時間かけて滴下させた。生成されたコロイド粒子に、遠心分離による洗浄ろ過を8回繰り返した。その後、球状フッ化マグネシウム粒子の粒径を粗大化するため、マッフル炉中500℃で焼成し、平均粒径が70nmの球状フッ化マグネシウム粒子:10gを得た。
〔SiO結合剤1〕
50cmのガラス製の4つ口フラスコを用い、140gのテトラエトキシシランと、140gのエチルアルコールを加え、攪拌しながら、1.7gの60%硝酸を120gの純水に溶解した溶液を一度に加え、その後50℃で3時間反応させることにより製造した。
〔SiO結合剤2〕
500cmのガラス製の4つ口フラスコを用い、85gのテトラエトキシシランと、100gのエチルアルコールを加え、攪拌しながら室温で、0.09gの60%硝酸を110gの純水に溶解した溶液を、チューブポンプを用いて10〜15分の時間をかけて投入した。その後、得られた混合溶液に、あらかじめ混合しておいた45gのアルミニウムトリ−sec−ブトキシドと、60gのエチルアルコールの混合溶液を、チューブポンプを用いて10〜15分の時間をかけて投入した。室温にて30分程度攪拌した後、50℃で3時間反応させることにより製造した。
〔SiO結合剤3〕
50cmのガラス製の4つ口フラスコを用い、115gのテトラエトキシシランと、175gのエチルアルコールを加え、攪拌しながら、1.4gの35%塩酸を110gの純水に溶解した溶液を一度に加え、その後45℃で3時間反応させることにより製造した。
〔SiO結合剤4〕
500cmのガラス製の4つ口フラスコを用い、130gのテトラエトキシシランと、145gのエチルアルコールを加え、攪拌しながら、1.25gの30%アンモニア水を124gの純水に溶解した溶液を一度に加え、その後45℃で3時間反応させることにより製造した。
〔SiO結合剤5〕
500cmのガラス製の4つ口フラスコを用い、90gのテトラエトキシシランと、100gのエチルアルコールを加え、攪拌しながら室温の状態で、0.9gの60%硝酸を110gの純水に溶解した溶液を、10〜15分の時間をかけて投入した、その後、得られた混合溶液に、あらかじめ混合しておいた40gのアルミニウムトリ−sec−ブトキシドと、60gのエチルアルコールの混合溶液を、10〜15分の時間をかけて投入した。室温にて30分程度攪拌した後、50℃で3時間反応させることにより製造した。
〔SiO結合剤6〕
500cmのガラス製の4つ口フラスコを用い、125gのテトラエトキシシランと、160gのエチルアルコールを加え、攪拌しながら、0.6gの60%硝酸を115gの純水に溶解した溶液を一度に加え、その後50℃で3時間反応させることにより製造した。
〔SiO結合剤7〕
500cmのガラス製の4つ口フラスコを用い、145gのテトラエトキシシランと、140gのエチルアルコールを加え、攪拌しながら、0.015gの60%硝酸を115gの純水に溶解した溶液を一度に加え、その後50℃で3時間反応させることにより製造した。
〔カップリング剤〕
シランカップリング剤にはビニルトリエトキシシランを用いた。チタンカップリング剤には、式(1):
で表されるジアルキルパイロホスファイト基を有するチタンカップリング剤を用いた。
〔混合溶媒〕
混合溶媒1には、イソプロパノール、エタノール及びN,N−ジメチルホルムアミドの混合液(質量比4:2:1)を、混合溶媒2には、エタノール、ブタノールの混合液(質量比98:2)を用いた。
〔ノンポリマー型バインダー〕
ノンポリマー型バインダー1には、2−n−ブトキシエタノールと3−イソプロピル−2,4−ペンタンジオンの混合液を、ノンポリマー型バインダー2には、2,2−ジメチル−3,5−ヘキサンジオンとイソプロピルアセテートの混合液(質量比1:1)を、ノンポリマー型バインダー3には、2−イソブトキシエタノールと2−ヘキシルオキシエタノールとn−プロピルアセテートの混合物(質量比4:1:1)を用いた。
〔実施例1〜19〕
実施例1では、まず、以下の表1に示すように、分散媒となるIPA中に、導電性酸化物粉末として平均粒径25nmのITO粉末と、平均粒径:10nmの球状フッ化マグネシウム粒子1を、98対2の割合で、またバインダーとしてSiO結合剤1を、導電性酸化物粒子と球状フッ化マグネシウム粒子を合わせた固形物粒子に対して30質量%の比率で混合した。
実施例2では、分散媒となるエタノール中に、導電性酸化物粉末として平均粒径40nmのATO粉末と、平均粒径:15nmの球状フッ化マグネシウム粒子2を、95対5の割合で、またバインダーとしてノンポリマー型バインダー1を、導電性酸化物粒子と球状フッ化マグネシウム粒子を合わせた固形物粒子に対して10質量%の比率で混合した。
実施例3では、分散媒となるIPA中に、導電性酸化物粉末として平均粒径30nmのTZO粉末と、平均粒径:15nmの球状フッ化マグネシウム粒子2を、92対8の割合で、またバインダーとしてSiO結合剤2を、導電性酸化物粒子と球状フッ化マグネシウム粒子を合わせた固形物粒子に対して30質量%の比率で混合した。
実施例4では、分散媒となるエタノール中に、導電性酸化物粉末として平均粒径30nmのITO粉末と、平均粒径:10nmの球状フッ化マグネシウム粒子1を、92対8の割合で、またバインダーとしてSiO結合剤7を、導電性酸化物粒子と球状フッ化マグネシウム粒子を合わせた固形物粒子に対して25質量%の比率で混合した。
実施例5では、分散媒となる混合溶媒1中に、導電性酸化物粉末として平均粒径35nmのITO粉末と、平均粒径:10nmの球状フッ化マグネシウム粒子1を、90対10の割合で、またバインダーとしてSiO結合剤6を、導電性酸化物粒子と球状フッ化マグネシウム粒子を合わせた固形物粒子に対して20質量%の比率で混合した。
実施例6では、分散媒となるエタノール中に、導電性酸化物粉末として平均粒径40nmのITO粉末と、平均粒径:25nmの球状フッ化マグネシウム粒子3を、90対10の割合で、またバインダーとしてSiO結合剤2を、導電性酸化物粒子と球状フッ化マグネシウム粒子を合わせた固形物粒子に対して20質量%の比率で混合した。
実施例7では、分散媒となるエタノール中に、導電性酸化物粉末として平均粒径25nmのITO粉末と、平均粒径:10nmの球状フッ化マグネシウム粒子1を85対15の割合で、またバインダーとしてノンポリマー型バインダー1を導電性酸化物粒子と球状フッ化マグネシウム粒子を合わせた固形物粒子に対して30質量%、さらに化学式(1)で表されるジアルキルパイロホスファイト基を有するチタンカップリング剤を、塗膜形成後の固形物分となる導電性酸化物粒子と球状フッ化マグネシウム粒子及びバインダー成分を合わせた組成物質量に対して0.5質量%の比率で混合した。
実施例8では、分散媒となる混合溶媒2中に、導電性酸化物粉末として平均粒径50nmのATO粉末と、平均粒径:15nmの球状フッ化マグネシウム粒子2を、85対15の割合で、またバインダーとしてノンポリマー型バインダー2を、導電性酸化物粒子と球状フッ化マグネシウム粒子を合わせた固形物粒子に対して30質量%の比率で混合した。
実施例9では、分散媒となる混合溶媒1中に、導電性酸化物粉末として平均粒径30nmのATO粉末と、平均粒径:10nmの球状フッ化マグネシウム粒子1を、85対15の割合で、またバインダーとしてSiO結合剤3を、導電性酸化物粒子と球状フッ化マグネシウム粒子を合わせた固形物粒子に対して15質量%の比率で混合した。
実施例10では、分散媒となる混合溶媒2中に、導電性酸化物粉末として平均粒径40nmのITO粉末と、平均粒径:10nmの球状フッ化マグネシウム粒子1を、82対18の割合で、またバインダーとしてSiO結合剤4を、導電性酸化物粒子と球状フッ化マグネシウム粒子を合わせた固形物粒子に対して30質量%の比率で混合した。
実施例11では、分散媒となる混合溶媒2中に、導電性酸化物粉末として平均粒径35nmのITO粉末と、平均粒径:25nmの球状フッ化マグネシウム粒子3を、82対18の割合で、またバインダーとしてSiO結合剤5を、導電性酸化物粒子と球状フッ化マグネシウム粒子を合わせた固形物粒子に対して25質量%の比率で混合した。
実施例12では、分散媒となるエタノール中に、導電性酸化物粉末として平均粒径30nmのITO粉末と、平均粒径:10nmの球状フッ化マグネシウム粒子1を、80対20の割合で、またバインダーとしてSiO結合剤6を、導電性酸化物粒子と球状フッ化マグネシウム粒子を合わせた固形物粒子に対して25質量%、さらにシランカップリング剤(信越シリコーン(株)製KBE−1003)を、塗膜形成後の固形物分となる導電性酸化物粒子と球状フッ化マグネシウム粒子及びバインダー成分を合わせた組成物質量に対して0.7質量%の比率で混合した。
実施例13では、分散媒となるIPA中に、導電性酸化物粉末として平均粒径25nmのIZO粉末と、平均粒径:15nmの球状フッ化マグネシウム粒子2を、80対20の割合で、またバインダーとしてSiO結合剤1を、導電性酸化物粒子と球状フッ化マグネシウム粒子を合わせた固形物粒子に対して25質量%の比率で混合した。
実施例14では、分散媒となるブタノール中に、導電性酸化物粉末として平均粒径25nmのITO粉末と、平均粒径:25nmの球状フッ化マグネシウム粒子3を、80対20の割合で、またバインダーとしてノンポリマー型バインダー3を、導電性酸化物粒子と球状フッ化マグネシウム粒子を合わせた固形物粒子に対して10質量%の比率で混合した。
実施例15では、分散媒となるIPA中に、導電性酸化物粉末として平均粒径25nmのIZO粉末と、平均粒径:10nmの球状フッ化マグネシウム粒子1を、80対20の割合で、またバインダーとしてSiO結合剤3を、導電性酸化物粒子と球状フッ化マグネシウム粒子を合わせた固形物粒子に対して25質量%の比率で混合した。
実施例16では、分散媒となる混合溶媒1中に、導電性酸化物粉末として平均粒径25nmのIZO粉末と、平均粒径:15nmの球状フッ化マグネシウム粒子2を、78対22の割合で、またバインダーとしてSiO結合剤5を、導電性酸化物粒子と球状フッ化マグネシウム粒子を合わせた固形物粒子に対して30質量%の比率で混合した。
実施例17では、分散媒となる混合溶媒1中に、導電性酸化物粉末として平均粒径30nmのTZO粉末と、平均粒径:10nmの球状フッ化マグネシウム粒子1を、77対23の割合で、またバインダーとしてノンポリマー型バインダー2を、導電性酸化物粒子と球状フッ化マグネシウム粒子を合わせた固形物粒子に対して15質量%の比率で混合した。
実施例18では、分散媒となる混合溶媒1中に、導電性酸化物粉末として平均粒径50nmのITO粉末と、平均粒径:10nmの球状フッ化マグネシウム粒子1を、70対30の割合で、またバインダーとしてSiO結合剤2を、導電性酸化物粒子と球状フッ化マグネシウム粒子を合わせた固形物粒子に対して15質量%の比率で混合した。
実施例19では、分散媒となるIPA中に、導電性酸化物粉末として平均粒径40nmのATO粉末と、平均粒径:15nmの球状フッ化マグネシウム粒子2を、65対35の割合で、またバインダーとしてSiO結合剤7を、導電性酸化物粒子と球状フッ化マグネシウム粒子を合わせた固形物粒子に対して30質量%の比率で混合した。
〔比較例1〜5〕
比較例1では、分散媒となるIPA中に、導電性酸化物粉末として平均粒径25nmのITO粉末を、またバインダーとしてSiO結合剤1を、導電性酸化物粒子に対して30質量%の比率で混合した。
比較例2では、分散媒となるIPA中に、導電性酸化物粉末として平均粒径25nmのITO粉末と、平均粒径:10nmの球状フッ化マグネシウム粒子1を、99対1の割合で、またバインダーとしてSiO結合剤1を、導電性酸化物粒子と球状フッ化マグネシウム粒子を合わせた固形物粒子に対して25質量%の比率で混合した。
比較例3では、分散媒となるIPA中に、導電性酸化物粉末として平均粒径25nmのITO粉末と、平均粒径:10nmの球状フッ化マグネシウム粒子1を、63対37の割合で、またバインダーとしてSiO結合剤1を、導電性酸化物粒子と球状フッ化マグネシウム粒子を合わせた固形物粒子に対して30質量%の比率で混合した。
比較例4では、分散媒となるエタノール中に、導電性酸化物粉末として平均粒径25nmのITO粉末と、平均粒径:10nmの球状フッ化マグネシウム粒子1を、50対50の割合で、またバインダーとしてSiO結合剤1を、導電性酸化物粒子と球状フッ化マグネシウム粒子を合わせた固形物粒子に対して25質量%の比率で混合した。
比較例5では、分散媒となる混合溶媒1中に、導電性酸化物粉末として平均粒径25nmのITO粉末と、平均粒径:70nmの球状フッ化マグネシウム粒子4を、80対20の割合で、またバインダーとしてSiO結合剤1を、導電性酸化物粒子と球状フッ化マグネシウム粒子を合わせた固形物粒子に対して30質量%の比率で混合した。
〔透明導電膜用組成物評価〕
屈折率評価については、実施例1〜19、比較例1〜5に示す透明導電膜用組成物について、光学定数が既知のガラス基板に対して、湿式塗工法(スピンコーティング法、ダイコーティング法、スプレーコーティング法、オフセット印刷法)により透明電極膜を成膜後、160〜220℃で20〜60分焼成することにより、厚さ0.05〜0.2μmの透明導電膜を形成した。その膜に対して、分光エリプソメトリー装置(J.A.Woollam Japan(株)製 M−2000)を用いて測定し、透明電極膜部分についてデータを解析し、光学定数を求めた。解析した光学定数から、633nmの値を屈折率とした。表1〜3に、これらの結果を示す。
図1に示すように、まず一方の主面に厚さ50nmのSiO2層(図示せず)が形成されたガラス基板を基板10として準備し、このSiO2層上に表面に凹凸テクスチャを有しかつF(フッ素)ドープされた厚さ800nmの表面電極層(SnO膜)3を、透明電極層3として形成した。この透明電極層3にはレーザー加工法を用いてパターニングすることによりアレイ状とするとともに、それらを電気的に相互接続する配線を形成した。次に透明電極層3上にプラズマCVD法を用いて、光電変換層2を形成した。この光電変換層2は、この実施例では、基板10側から順に、p型a−Si:H(非晶質単価シリコン)、i型a−Si(非晶質シリコン)及びn型μc−Si(微結晶炭化シリコン)、からなる膜を積層して得た。上記光電変換層2を、レーザー加工法を用いてパターニングした。こちらを既に成膜が進んでいる太陽電池セルとして実施例にて示した透明導電膜用組成物評価に利用した。
実施例1〜19、比較例1〜5に示す透明導電膜用組成物について、既に成膜が進んでいる太陽電池セルに対して、焼成後の厚さが0.01〜0.5μmとなるように湿式塗工法(スピンコーティング法、ダイコーティング法、スプレーコーティング法、オフセット印刷法)で、塗布した後、温度25〜60℃の低温で5分間乾燥して、透明導電膜1を形成した。表1〜3に、塗装方法を示す。
次いで、この透明導電膜1上に次の方法で調製した導電性反射膜用組成物を、焼成後の厚さが0.05〜2.0μmとなるように湿式塗工法で塗布した後、温度25〜60℃の低温で5分間乾燥して導電性反射膜を形成した。次いで、160〜220℃で20〜60分焼成することにより、太陽電池セル上に複合膜を形成した。表1〜3に、透明導電膜1の焼成後膜厚を示す。ここで、膜厚は、日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡(SEM、装置名:S−4300、SU−8000)による断面観察により測定した。なお、導電性反射膜用組成物の調製方法は以下のようにした。
まず、硝酸銀を脱イオン水に溶解して、金属イオン水溶液を調製した。また、クエン酸ナトリウムを脱イオン水に溶解して、濃度が26重量%のクエン酸ナトリウム水溶液を調製した。このクエン酸ナトリウム水溶液に、35℃に保持された窒素ガス気流中に粒状の硫酸第1鉄を直接加えて溶解させ、クエン酸イオンと第1鉄イオンを3:2のモル比で含有する還元剤水溶液を調製した。次いで、上記窒素ガス気流を35℃に保持した状態で、マグネチックスターラーの攪拌子を還元剤水溶液中に入れ、攪拌子を100rpmの回転速度で回転させて、上記還元剤水溶液を攪拌しながら、この還元剤水溶液に上記金属塩水溶液を滴下して合成した。ここで、還元剤水溶液への金属塩水溶液の添加量は、還元剤水溶液の量の1/10以下になるように、各溶液の濃度を調整することで、室温の金属塩水溶液を滴下しても反応温度が40℃に保持されるようにした。また、上記還元剤水溶液と金属塩水溶液との混合比は、還元剤として加えられる第1鉄イオンの当量が、金属イオンの当量の3倍となるように調整した。還元剤水溶液への金属塩水溶液の滴下が終了した後、混合液の攪拌をさらに15分間続けることにより、混合液内部に金属粒子を生じさせ、金属粒子が分散した金属粒子分散液を得た。金属粒子分散液のpHは5.5であり、分散液中の金属粒子の化学量論的生成量は、5g/リットルであった。得られた分散液は、室温で放置することにより、分散液中の金属粒子を沈殿させ、沈殿した金属粒子の凝集物をデンカンテーションにより分離した。分離した金属凝集物に脱イオン水を加えて分散体とし、限外濾過により脱塩処理した後、さらにメタノールで置換洗浄することにより、金属(銀)の含有量を50質量%とした。その後、遠心分離機を用い、この遠心分離機の遠心力を調整して、粒径が100nmを超える比較的大きな銀粒子を分離することにより、一次粒子径10〜50nmの範囲内の銀ナノ粒子を数平均で、71%含有するように調整した。即ち、数平均ですべての銀ナノ粒子100%に対する一次粒子径10〜50nmの範囲内を占める銀ナノ粒子の割合が、71%になるように調整した。得られた銀ナノ粒子は、炭素骨格が炭素数3の有機主鎖の保護剤が化学修飾されていた。
次に、得られた金属ナノ粒子10質量部を、水、エタノールおよびメタノールを含む混合溶液90質量部に添加混合することにより分散させた。さらに、この分散液に添加物としてポリビニルピロリドンを4質量%と、クエン酸銀を1質量%と、金属ナノ粒子の比率が95質量%となるように加えることで、導電性反射膜用組成物を得た。得られた導電性反射膜用組成物を、透明導電膜1上に焼成後の厚さが0.05〜2.0μmとなるように湿式塗工法で塗布した後、160〜220℃で20〜60分間の熱処理条件で焼成することにより、透明導電膜1上に導電性裏面反射膜4を形成した。
次いで、太陽電池セルとして発電効率を評価するにあたり、導電性反射膜上に補強膜として、補強膜用組成物をダイコーティング装置により、既に導電性反射膜まで成膜が進んでいる太陽電池セル上に塗布して、補強膜用組成物を焼成後の厚さが350nmになるように、真空乾燥により補強膜用塗布膜から溶媒を離脱させた後に、太陽電池セルを熱風乾燥炉内で180℃に20分間保持して、補強膜用塗布膜を熱硬化させ、導電性反射膜用補強膜を得た。なお、補強膜用組成物の調製方法は以下のようにした。
まず、導電性酸化物微粒子として平均粒径25nmのITO粒子を8質量%と、カップリング剤としてジアルキルパイロホスファイト基を有するチタンカップリング剤を2質量%と、分散媒としてエタノール及びブタノールの混合液(質量比98:2)を90質量%とを混合し、室温にて800rpmの回転速度で1時間攪拌した。次にこの混合物60gを100ccのガラス瓶中に入れ、直径0.3mmのジルコニアビーズ(昭和シェル石油製:ミクロハイカ)100gを用いてペイントシェーカーで6時間分散することにより、ITO粒子の分散液を調製した。ここで、ジアルキルパイロホスファイト基を有するチタンカップリング剤は上記実施の形態に挙げた化学式(1)で示される。また、SiO結合剤は、上記SiO結合剤1と同様にして調整した。次に、ITO粒子の分散液4質量%を、分散媒であるエタノール86質量%と混合した後、SiO結合剤1を10質量%でさらに混合し、補強膜用組成物のベース液を得た後、このベース液95質量%と、添加剤としてフュームドシリカ分散液5質量%とを混合し、超音波振動器により室温にて10分間分散混合して混合物を全体になじませ、補強膜用組成物である塗液を調製した。
導電性反射膜用補強膜まで形成された太陽電池セルは、光電変換層2および、その上に成膜した透明導電膜1、導電性反射膜4、および導電性反射膜用補強膜を、レーザー加工法を用いてパターニングを実施した。
太陽電池セルの評価方法としては、レーザー加工法を用いてパターンニングを実施した加工後の基板にリード線配線を実施し、I−V特性カーブを確認した際の出力特性及び短絡電流密度である(Jsc)の値を、実施例と同様の製造方法にて得た光電変換層を用い、透明導電膜、導電性反射膜、補強膜が全てスパッタ法により形成された太陽電池セルを100とした際の相対出力評価を行った。表1〜3に、これらの結果を示す。
ここで、全てスパッタ法により形成された太陽電池セルとは、図1に示すように、先ず一方の主面に厚さ50nmのSiO2層(図示せず)が形成されたガラス基板を基板10として準備し、このSiO2層上に表面に凹凸テクスチャを有しかつF(フッ素)ドープされた厚さ800nmの表面電極層(SnO膜)3を形成した。この透明電極層3にはレーザー加工法を用いてパターニングすることによりアレイ状とするとともに、それらを電気的に相互接続する配線を形成した。次に透明電極層3上にプラズマCVD法を用いて、光電変換層2を形成した。この光電変換層2は、この実施例では、基板10側から順に、p型a−Si:H(非晶質単価シリコン)、i型a−Si(非晶質シリコン)及びn型μc−Si(微結晶炭化シリコン)、からなる膜を積層して得た。上記光電変換層2を、レーザー加工法を用いてパターニングした後、マグネトロンインライン式スパッタリング装置を用いて、光電変換層2上に、厚さ80nmの透明導電膜(ZnO層)1及び厚さ200nmの導電性反射膜(銀電極層)4を順次形成したものである。
密着性評価については、テープテスト(JIS K−5600)に準ずる方法にて、実施例1〜19、比較例1〜5に示す透明導電膜用組成物について、既に成膜が進んでいる太陽電池セルに対して透明電極膜及び、導電性反射膜を成膜後、160〜220℃で20〜60分焼成することにより、太陽電池セル上に複合膜を形成した上で、その膜に対してテープを密着させ、剥がした際に、成膜した膜がはがれたり、めくれあがったりする状態の程度により、優・可・不可の3段階で評価した。テープ側に膜形成物が張り付かず、接着テープのみがはがれた場合を優とし、接着テープの剥がれと基材となる光電変換層2が露出した状態が混在した場合を可とし、接着テープの引き剥がしにより基材となる光電変換層2表面の全面が露出した場合を不可とした。表1〜3に、これらの結果を示す。
表1〜3から明らかなように、実施例1〜19の全てで、屈折率が低く、密着性が良好で、相対発電効率は107〜122%と著しく高く、相対短絡電流密度も102〜104%と高かった。これに対して、球状フッ化マグネシウム粒子を含まない比較例1、球状フッ化マグネシウム粒子を1質量部しか含まない比較例2では、屈折率が高く、相対発電効率、相対短絡電流密度ともに、略100%であった。球状フッ化マグネシウム粒子を37質量部含む比較例3、50質量部含む比較例4では、相対発電効率、相対短絡電流密度ともに低かった。球状フッ化マグネシウム粒子の平均粒径が大きい比較例5では、密着性が悪く、相対発電効率、相対短絡電流密度ともに低かった。
以上のように、本発明の透明導電膜用組成物は、湿式塗工法で光電変換層上に塗布、焼成することができ、球状フッ化マグネシウム粒子の含有量によって、得られた透明導電膜の屈折率を調整することができた。したがって、薄膜太陽電池の発電効率を向上させることが可能な透明導電膜を簡便に得ることができるがわかった。
10 基材
1 透明導電膜
2 光電変換層
3 透明電極層
4 導電性反射膜

Claims (9)

  1. 導電性酸化物粒子と、平均粒径:1〜50nmの球状フッ化マグネシウム粒子と、バインダーと、を含み、導電性酸化物粒子と球状フッ化マグネシウム粒子の合計100質量部に対して、球状フッ化マグネシウム粒子を2〜35質量部含むことを特徴とする、薄膜太陽電池向け透明導電膜用組成物。
  2. バインダーが、加熱により硬化するポリマー型バインダーおよび/またはノンポリマー型バインダーである、請求項1記載の薄膜太陽電池向け透明導電膜用組成物。
  3. ノンポリマー型バインダーが、金属石けん、金属錯体、金属アルコキシド、ハロシラン類、2−アルコキシエタノール、β−ジケトン、およびアルキルアセテートからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項2記載の薄膜太陽電池向け透明導電膜用組成物。
  4. 導電性酸化物粒子と、平均粒径:1〜50nmの球状フッ化マグネシウム粒子と、硬化したバインダーと、を含み、導電性酸化物粒子と球状フッ化マグネシウム粒子の合計100質量部に対して、球状フッ化マグネシウム粒子を2〜35質量部含むことを特徴とする、薄膜太陽電池向け透明導電膜。
  5. バインダーが、ポリマー型バインダーおよび/またはノンポリマー型バインダーである、請求項4記載の薄膜太陽電池向け透明導電膜。
  6. ノンポリマー型バインダーが、金属石けん、金属錯体、金属アルコキシド、ハロシラン類、2−アルコキシエタノール、β−ジケトン、およびアルキルアセテートからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項5記載の薄膜太陽電池向け透明導電膜。
  7. 請求項4〜6のいずれか1項記載の薄膜太陽電池向け透明導電膜を含む、薄膜太陽電池。
  8. 基材、透明電極層、光電変換層、および透明導電膜を備える薄膜太陽電池の透明導電膜の製造方法であって、光電変換層上に、請求項1〜3のいずれか1項記載の透明導電膜用組成物を、湿式塗工法により塗布して透明導電塗膜を形成した後、透明導電塗膜を有する基材を、130〜400℃で焼成して、厚さ:0.03〜0.5μmの透明導電膜を形成する、透明導電膜の製造方法。
  9. 湿式塗工法が、スプレーコーティング法、ディスペンサーコーティング法、スピンコーティング法、ナイフコーティング法、スリットコーティング法、インクジェットコーティング法、ダイコーティング法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、またはグラビア印刷法である、請求項8記載の透明導電膜の製造方法。
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