JP2012140990A - ベルト式無段変速機 - Google Patents
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Abstract
【課題】ベルト式無段変速機における変速速度の向上と耐久性の向上との両立を図る。
【解決手段】固定および可動の各シーブ3a,3bの対向面が、ベルト1を巻き掛けるベルト溝を形成するテーパ面とされ、さらに可動シーブ3bの背面側に可動シーブ3bを固定シーブ3a側に押圧する押圧機構9が設けられたベルト式無段変速機において、駆動プーリと従動プーリ3との間で伝達するべきトルクが大きいことにより可動シーブ3bを固定シーブ3a側に押圧する荷重が大きい場合に、駆動プーリと従動プーリ3とのいずれか一方のプーリにおける可動シーブ3bを固定シーブ3a側に押圧し、かつ駆動プーリと従動プーリとの間で伝達するべきトルクが小さいことにより可動シーブ3bを固定シーブ3a側に押圧する荷重が小さい場合に一方のプーリにおける可動シーブ3bを固定シーブ3a側に押圧しない副押圧部21を備えている。
【選択図】図3
【解決手段】固定および可動の各シーブ3a,3bの対向面が、ベルト1を巻き掛けるベルト溝を形成するテーパ面とされ、さらに可動シーブ3bの背面側に可動シーブ3bを固定シーブ3a側に押圧する押圧機構9が設けられたベルト式無段変速機において、駆動プーリと従動プーリ3との間で伝達するべきトルクが大きいことにより可動シーブ3bを固定シーブ3a側に押圧する荷重が大きい場合に、駆動プーリと従動プーリ3とのいずれか一方のプーリにおける可動シーブ3bを固定シーブ3a側に押圧し、かつ駆動プーリと従動プーリとの間で伝達するべきトルクが小さいことにより可動シーブ3bを固定シーブ3a側に押圧する荷重が小さい場合に一方のプーリにおける可動シーブ3bを固定シーブ3a側に押圧しない副押圧部21を備えている。
【選択図】図3
Description
この発明は、駆動側のプーリと従動側のプーリとにベルトを巻き掛けて動力を伝達し、かつそのベルトの巻き掛け半径を連続的に変化させることにより変速比を無段階に変化させる無段変速機に関するものである。
この種のベルト式無段変速機として、ベルトが巻き掛けられるプーリにおける溝幅を変化させることにより、ベルト巻き掛け半径を変化させるように構成された変速機が広く知られている。その変速機における駆動側(入力側)のプーリおよび従動側(出力側)のプーリは、溝幅を変化させるために、固定シーブ(もしくは固定ディスク)と軸線方向に前後動可能な可動シーブ(もしくは可動ディスク)とによって構成され、その可動ディスクをベルト張力に抗して固定シーブ側に押圧する油圧アクチュエータを備えているのが一般的である。したがって、可動シーブは軸線方向への移動を可能にするために、これを支持している軸に対して僅かな隙間をもって嵌合しており、またいわゆる背面側に油圧を作用させるために、ボス部から半径方向に延び出ている円盤状の部分を備えている。そして、油圧は、その円盤状の部分を押圧し、またベルトを挟み付けることによる反力がその円盤状の部分に作用し、しかも油圧は円盤状の部分の全面に作用するのに対してベルトを挟み付けることによる反力は局部的に作用する。そのため、可動シーブにこれを傾けるモーメントが作用して、回転中心軸線に垂直な平面に対して傾いたり、あるいは上記の円盤状の部分に撓みが生じる。
プーリにおけるベルト溝を形成している面は、ベルトを形成している金属片であるブロック(エレメントと称されることもある)の左右の傾斜面(フランク面)と等しい角度のテーパ面となっているが、可動シーブが上記のように傾斜したり、撓みが生じると、そのテーパ面の角度が変化するから、エレメントのフランク面がいわゆる片当たり状態になってテーパ面の偏摩耗が生じたり、トルクの伝達効率が低下したりする。これとは反対に、傾きや撓みなどが生じた場合には、ベルトの巻き掛け位置がプーリの半径方向に変化しやすくなり、一般的には傾き角度が大きくなるほど変速速度が向上する。
このような特性を生かす技術が特許文献1や特許文献2に記載されている。特許文献1に記載された無段変速機は、変速速度を速くすることを目的としたものであって、駆動プーリおよび従動プーリにおける可動シーブの傾き角度(倒れ角)を変速比に応じて変化させるように構成されている。具体的には、プーリ軸の外周面に段付のテーパ部を形成するとともに、段部で区分されているそれらのテーパ部のテーパ角を異ならせ、また可動シーブの内周面を、プーリ軸のテーパ部と対応する段付のテーパ形状に形成し、大きい変速比を設定する場合には、その可動シーブの傾き角度を大きくし、これとは反対に小さい変速比を設定する場合には、可動シーブの傾き角度が小さくなるように構成されている。また、特許文献2には、出力プーリにおける固定シーブが出力軸に対して傾くことができるように取り付けられ、またその固定シーブの背面の外周側の部分に対向する箇所には、固定シーブの背面を押圧するピストンを備えた傾動アクチュエータが設けられた変速機が記載されている。
なお、シーブが傾いた場合、耐久性が低下したり、動力伝達効率が低下するなどの不都合があることは上述したとおりであり、そのため例えば特許文献3に記載されたベルト式無段変速機は、可動シーブの背面における外周側の部分を押圧するピストンを設け、ベルトを挟み付けることによる反力に対抗する推力をそのピストンによって発生させ、可動シーブの傾きを防止するように構成されている。
特許文献1に記載された装置は、可動プーリを積極的に傾けるように構成されているので、変速速度を向上させることができるが、可動プーリの傾斜角を変速比に応じて大小に変化させるように構成されている。そのため、可動プーリが傾いてベルトがいわゆる片当たりした状態で、エンジン負荷の増大に伴ってベルト挟圧力が増大すると、プーリのテーパ面に偏摩耗が生じて耐久性が低下したり、あるいはプーリとベルトとの接触面積が小さくなって動力の伝達効率が低下したりする可能性がある。このような状況は、特許文献2に記載された発明においても同様であり、傾動アクチュエータを動作させて固定シーブを傾けることにより変速速度を向上させることができるが、その場合に大きい負荷が生じてベルト挟圧力が増大していると、ベルトのプーリに対するいわゆる片当たりなどが原因となって耐久性が低下したり、動力の伝達効率が低下したりする可能性がある。
なお、引用文献3に記載された発明は、シーブの外周側に配置されているピストンによってシーブの傾きを生じさせないように構成されている。したがって、プーリにおけるテーパ面の偏摩耗や動力伝達効率の低下などを回避できるが、変速速度を向上させることができない可能性がある。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、変速速度の向上と耐久性あるいは動力伝達効率などの向上とを両立させることのできるベルト式無段変速機を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、駆動プーリと従動プーリとのそれぞれが、固定シーブとその固定シーブに対して接近・離隔するように軸線方向に移動可能な可動シーブとによって構成されるとともに、それらのシーブの対向面が、ベルトを巻き掛けるベルトを溝を形成するテーパ面とされ、さらに可動シーブの前記テーパ面とは反対の背面側に可動シーブを固定シーブ側に押圧する押圧機構が設けられたベルト式無段変速機において、前記駆動プーリと従動プーリとの間で伝達するべきトルクが大きいことにより前記可動シーブを前記固定シーブ側に押圧する荷重が大きい場合に前記可動シーブを前記固定シーブ側に押圧し、かつ前記駆動プーリと従動プーリとの間で伝達するべきトルクが小さいことにより前記可動シーブを前記固定シーブ側に押圧する荷重が小さい場合に前記可動シーブを前記固定シーブ側に押圧しない副押圧部を備えていることを特徴とするものである。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記押圧機構は、前記一方のプーリにおける可動シーブの背面側に配置されかつ前記一方のプーリにおける可動シーブの背面に向けて前後動するピストンを含む油圧アクチュエータと、そのピストンから前記一方のプーリにおける可動シーブに向けて延びかつ該背面を押圧する突出部とを備え、かつ前記副押圧部は、前記油圧アクチュエータの油圧が相対的に高い場合に前記一方のプーリの背面に向けて移動して該背面を押圧するプッシャーを備えていることを特徴とするベルト式無段変速機である。
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記プッシャーは、前記ピストンから前記一方のプーリにおける可動シーブの背面に向けて延びた複数本の軸部を備え、その軸部は、前記一方のプーリにおける可動シーブと共に回転することにより可動シーブの半径方向に向けた空気流を生じさせるように構成されていることを特徴とするベルト式無段変速機である。
請求項4の発明は、請求項2または3の発明において、前記プッシャーは、前記ピストンから前記一方のプーリにおける可動シーブの背面に向けて突出して形成され、かつ前記ピストンは、前記油圧が相対的に高い場合に前記プッシャーが突出している部分が前記一方のプーリにおける可動シーブの背面側に撓むように構成されていることを特徴とするベルト式無段変速機である。
請求項5の発明は、請求項2ないし4のいずれかの発明において、前記プッシャーは、その先端部が前記一方のプーリにおける可動シーブの背面に接触し、また離隔するように構成されるとともに、そのプッシャーの先端部に緩衝材が取り付けられていることを特徴とするベルト式無段変速機である。
この発明によれば、ベルト式無段変速機に掛かる負荷が大きい場合、すなわち可動シーブを固定シーブ側に押圧する荷重が大きい場合、副押圧部が前記可動シーブの背面を固定シーブ側に押圧するので、ベルトを介して伝達するべきトルクが大きい場合に可動シーブが傾いたり、撓んだりすることを防止もしくは抑制することができ、その結果、ベルトのいわゆる片当たりを抑制して耐久性や動力伝達効率の低下を低減もしくは防止することができる。これに対して、ベルト式無段変速機に対する負荷が急激に低下して変速する場合、副押圧部が前記一方のプーリにおける可動シーブの背面を支えないので、その可動シーブの傾きや撓みが生じ、その結果、ベルトがその巻き掛け半径を変化させるように迅速に移動し、変速速度を向上させることができる。
また、本願請求項3の発明によれば、副押圧部を構成しているプッシャーがファンとして機能し、前記一方のプーリにおける可動シーブの背面側に空気流を生じさせることができるので、そのプーリの過熱を防止もしくは抑制することができる。
さらに、請求項5の発明によれば、前記一方のプーリとプッシャーとが接触する際の異音を、緩衝材によって防止することができ、またその緩衝材を交換することにより、ベルト式無段変速機の全体としてのメインテナンス性あるいは耐久性を向上させることができる。
つぎにこの発明を具体例に基づいて説明する。この発明に係るベルト式無段変速機は、駆動プーリと従動プーリとにベルトを巻き掛けるとともに、その巻き掛け半径を連続的に変化させて変速比を変化させるように構成された変速機である。その巻き掛け半径の変更は、各プーリに形成されたいわゆるV字状の溝(以下、ベルト溝と記す)の幅を変化させて行うように構成されており、したがって各プーリは、互いに対向する面をテーパ面とした一対のシーブ(ディスクと称されることもある)によって構成されている。それら一対のシーブのうち一方のシーブは固定され(これを固定シーブと記す)、他方のシーブは固定シーブに対して接近・離隔するように前後動可能に構成されている(これを可動シーブと記す)。その可動シーブが固定シーブとの間にベルトを挟み付けるように、可動シーブの背面側(ベルトを接触させているテーパ面とは反対側の面側)に押圧機構が設けられている。その押圧機構は、油圧によって推力を発生する構成が一般的であるが、これに限らず、弾性体やカム機構などであってもよい。
図1にこの発明に係るベルト式無段変速機の一例を模式的に示してあり、ここに示す無段変速機は、ベルト1が巻き掛けられている駆動プーリ2と従動プーリ3とは、共に、固定シーブ2a,3aと可動シーブ2b,3bとを備えている。これら固定シーブ2a,3aと可動シーブ2b,3bとの互いに対向する面は、テーパ面となっており、それらの対向面の間隔が大小に変化することにより、所定の間隔の位置すなわちベルト1の幅と一致する位置が、半径方向に変化するようになっている。換言すれば、これらのテーパ面によってベルト溝4,5が形成されている。
駆動プーリ2と従動プーリ3とは、図1に示す例では、固定シーブ2a,3aと可動シーブ2b,3bとの相対位置が左右反対になっているが、基本的な構成は同じである。その構成について説明すると、固定シーブ2a,3aはプーリ軸6,7と一体化されており、そのプーリ軸6,7は固定シーブ2a,3aのテーパ面側に延びている。そのプーリ軸6,7に可動シーブ2b,3bが軸線方向に前後動できるように取り付けられており、両者のシーブ2a,3a,2b,3bのテーパ面が互いに対向している。
可動シーブ2b,3bの背面側、言い換えれば、プーリ軸6,7の先端部に、可動シーブ2b,3bを固定シーブ2a,3aに向けて押圧する押圧機構が設けられている。図1に示す例では、その押圧機構は、油圧アクチュエータ8,9によって構成されている。具体的に説明すると、それぞれの油圧アクチュエータ8,9は、可動シーブ2b,3bの背面に向けて開口しているシリンダ部材10,11を有しており、そのシリンダ部材10,11はプーリ軸6,7の外周部に嵌合させた中空円筒状(すなわち断面環状)の部材であり、そのシリンダ部材10,11の内部にピストン12,13が液密状態を維持して前後動するように嵌め込まれている。したがってそのピストン12,13の背面とシリンダ部材10,11の内面とによって区画された中空部が油圧室14,15となっている。その油圧室14,15に対して油圧を供給し、また排出するための油路16,17が、各プーリ軸6a,6bの先端部に形成されている。これらの油路16,17には、特には図示しないが、油圧の供給用の制御弁を備えた供給油路、およびドレイン箇所に排圧する排出用の制御弁を備えた排出油路が接続されている。
また、ピストン12,13の内周側の部分と可動シーブ2b,3bの背面における内周側の部分との間にこれらを連結する円筒状の連結部18,19が設けられており、ピストン12,13の推力をこの連結部18,19によって可動シーブ2b,3bに伝達して可動シーブ2b,3bを固定シーブ2a,3a側に押圧するように構成されている。したがってこの連結部18,19がいわゆる主押圧部となっている。これに対して、ピストン12,13の外周側の部分には、可動シーブ2b,3bの背面に向けて突出したプッシャー20,21が設けられている。このプッシャー20,21は上記の無段変速機に対する負荷が小さい場合、すなわち油圧室14,15の油圧が相対的に低い場合には、可動シーブ2b,3bの傾きを許容し、これとは反対に負荷が大きい場合には、可動シーブ2b,3bの背面に当接して可動シーブ2b,3bを支えることにより可動シーブ2b,3bの傾きを抑制もしくは防止するためものであって,この発明における副押圧部に相当している。
したがって、このプッシャー20,21は、ピストン12,13から可動シーブ2b,3bの背面に向けて突出するものの、負荷が小さい場合には、その先端が可動シーブ2b,3bの背面から離れる長さに設定されている。また、負荷が大きい場合には、ピストン12,13の外周側の部分が可動シーブ2b,3b側に撓むことにより、可動シーブ2b,3bの背面に向けて前進し、その先端を可動シーブ2b,3bの背面に突き当てて可動シーブ2b,3bを支えるように構成されている。図2には、ピストン12,13に一体化したプッシャー20,21の一例を模式的に示してあり、ここに示すプッシャー20,21は円筒状に形成され、円盤状のピストン12,13の正面外周部に、軸線方向に突出した状態に形成されている。
上述した構成のベルト式無段変速機の作用について説明すると、駆動プーリ2および従動プーリ3における各油圧室14,15に油圧を供給することにより、それぞれのピストン12,13が可動シーブ2b,3bに向けて押圧される。そのピストン12,13と可動シーブ2b,3bの背面との間に前述した主押圧部としての連結部18,19が設けられているので、結局、油圧がピストン12,13を介して可動シーブ2b,3bに作用して可動シーブ2b,3bが固定シーブ2a,3a側に押圧され、これらのシーブ2a,3a,2b,3bの間にベルト1が挟み込まれる。そして、いずれか一方のプーリ(例えば駆動プーリ2)における油圧室14に圧油を供給してその可動シーブ2bをこれに対向する固定シーブ2aに更に接近させれば、駆動プーリ2におけるベルト溝4の幅が狭くなってベルト1が半径方向で外側に押され、その巻き掛け半径が増大する。これと併せて従動プーリ3では、ベルト1が固定シーブ3aと可動シーブ3bとの間隔すなわちベルト溝5の幅を押し広げて巻き掛け半径を減少させる。すなわち、変速比が小さくなるアップシフトが生じる。これとは反対にいずれか一方のプーリ(例えば駆動プーリ2)における油圧室14から排圧してその可動シーブ2bをこれに対向する固定シーブ2aから離隔させれば、駆動プーリ2におけるベルト溝4の幅が拡がってベルト1が半径方向で内側に移動し、その巻き掛け半径が減少する。これと併せて従動プーリ3では、固定シーブ3aと可動シーブ3bとの間隔すなわちベルト溝5の幅が狭くなってベルト1の巻き掛け半径を増大させる。すなわち、変速比が大きくなるダウンシフトが生じる。
また、トルクの伝達はベルト1と各プーリ2,3との間に摩擦力によって行われるので、必要とする伝達トルク容量を設定するために、他方のプーリ(例えば従動プーリ3)における油圧室15に負荷に応じた油圧が供給される。その結果、従動プーリ3を構成している各シーブ3a,3bが負荷に応じた荷重でベルト1を挟み付け、また駆動プーリ2では従動プーリ3における挟圧力およびそれに伴うベルト張力で巻き掛け半径が変化しないようにベルト1を挟み付けるので、結局、ベルト1と各プーリ2,3との間の摩擦力あるいはそれに基づく伝達トルク容量が、負荷に応じた容量に設定される。
図3の(a)および(b)は、高負荷時と減速時とにおける従動プーリ3の挙動を模式的に示しており、先ず、高負荷時について説明すると、ベルト式無段変速機で伝達するべきトルクが大きい高負荷時には、要求に応じて伝達トルク容量となるように油圧室14,15の油圧が高くなる。そのため、従動プーリ3では、前述したピストン13の外周側の部分における油圧に起因する曲げモーメントが大きくなり、その結果、ピストン13が可動シーブ3b側に撓み、その撓み分、副押圧部である前記プッシャー21が可動シーブ3b側に移動してその先端が可動シーブ3bの背面に押し付けられる。
一方、ベルト1には大きい張力が作用していて可動シーブ3bに対してこれをピストン13側に押し戻そうとする荷重が作用している。その荷重に対して、可動シーブ3bの内部応力が反力として作用するが、これに加えてプッシャー21による押圧力が、上記の荷重に対する反力として作用しているので、可動シーブ3bの剛性が特には大きくなくても、可動シーブ3bの傾きや撓みもしくは変形が防止あるいは抑制される。すなわち、ベルト1を挟み付けているテーパ面の角度が特には変化しないので、ベルト1がテーパ面に対していわゆる片当たりするなどのことがなく、その結果、偏摩耗やそれに起因する耐久性の低下、あるいは動力の伝達効率の低下などの事態が防止もしくは抑制される。
これに対して図3の(b)に示すように、上記のベルト式無段変速機が搭載されている車両が、アクセルペダル(図示せず)が戻され、あるいは急な制動操作が行われるなど、負荷の小さい状態で変速比を増大させる減速状態にある時には、油圧室15における油圧が上記の場合と比較して低圧になる。そのため、ピストン13の撓みやプッシャー21の可動シーブ3b側への移動(突き出し)などは生じない。そのため、プッシャー21の先端部は可動シーブ3bの背面から離れている。その状態で、ベルト1は、その従動プーリ3に対する巻き掛かり半径を増大させるように従動プーリ3の半径方向で外側に移動するので、可動シーブ3bはベルト1の移動に追従して固定シーブ3a側に移動しようとするが、可動シーブ3bの背面における中心側の部分が前述した連結部19によって押圧されているのに対して外周側の部分が、プッシャー21の先端部から離れていて軸線方向に対するいわゆる支えがなく、しかもプーリ軸6bとの間に不可避的なガタ(隙間)が存在しているので、可動シーブ3bに傾きが生じる。その結果、ベルト1の巻き掛かり半径の増大を助長する作用が生じ、減速方向の変速速度が速くなる。なお、高負荷状態で変速が生じれば、プッシャー21が上述したように可動シーブ3bの背面に当接してその撓みや傾きを防止もしくは抑制するので、変速速度が速くならないものの、偏摩耗や動力伝達効率の低下が防止もしくは低減される。結局、この発明に係る上記のベルト式無段変速機によれば、変速速度の向上と耐久性あるいは動力伝達効率などの向上とを両立させることができる。
なお、従動プーリ3においてその可動シーブ3bを撓ませ、あるいは傾かせる荷重は、ベルト1の巻き掛け半径が最大となる最大変速比の状態で最も大きくなる。したがって、上述した円筒状のプッシャー21の半径は、従動プーリ3については、図4に示すように、最大変速比(最も低車速側の変速比)でのベルト巻き掛け半径と同じであることが好ましい。このように構成すれば、可動シーブ3bの傾きを効果的に防止もしくは抑制できるだけでなく、可動シーブ3bの剛性を下げて低コスト化を図ることができる。また、プッシャー21の位置が可及的に外周側になることによってピストン13が大径化してその受圧面積が増大するから、油圧を相対的に低下させることが可能になり、それに伴って油圧の漏れ量の減少、オイルポンプの損失の低減などにより燃費を向上させることができ、さらに油圧回路や油圧機器の低剛性化により低コスト化が可能になる。
ところで、上述したプッシャー20,21は可動シーブ2b,3bの背面に当接することになるので、両者の接触による異音や摩耗に対する対策を施すことが好ましく、その一例を示せば、図5のとおりである。ここに示す例は、ピストン13から可動シーブ3bの背面に向けて突出しているプッシャー21の先端部に緩衝材22を取り付けた例である。その緩衝材22は、プッシャー21による押圧力を可動シーブ3bに確実に伝達するために弾性率の小さい材料によって構成されていることが好ましく、また耐摩耗性に優れていることが好ましく、したがって例えば合成樹脂を素材として構成されたリング状の部材である。なお、この緩衝材22は、プッシャー21の先端部に替えて、可動シーブ3bの背面に取り付けてもよく、いずれの場合であっても、着脱できるように取り付けてあることが好ましい。
図5に示すように緩衝材22を設けた構成では、金属製のプッシャー21と可動シーブ3bとが直接接触することがないので、異音が発生することを防止もしくは抑制でき、また摩耗やそれに伴う耐久性の低下を回避することができる。さらに、ベルト1がプーリに対して巻き掛かり、またベルト1を構成しているエレメントがプーリから抜け出る際に荷重の変動による振動が不可避的に生じるが、上記の可動シーブ3bとプッシャー21との間では緩衝材22によって振動の伝播が防止もしくは制限されるので、騒音を低減することができる。なお、緩衝材22は可動シーブ3bやプッシャー21に対して硬度が低いために摩耗が進行し易いが、緩衝材22が摩耗した場合には、緩衝材22のみを交換すればよいため、ベルト式無段変速機の全体としてのメインテナンスコストを低廉化することが可能になる。
ところで、この発明におけるプッシャーは、可動シーブの背面に突き当てられて可動シーブを軸線方向で支えることのできるものであればよく、したがって前述した図2に示す円筒状に形成されている必要はなく、例えば図6に示すように、複数本の軸状に形成されていてもよい。プッシャーを複数本の軸状に分割した構成とする場合、各軸状の部分を、断面がタービン翼もしくはファンに類似した形状となるように構成することができる。図7は例を示しており、ピストン13から軸線方向に突出させられた複数本の軸状部21Aによってプッシャー21が構成されており、それらの軸状部21Aは、断面形状がプーリの回転方向での前方に向けて凸となる形状であって、プーリと共に回転することにより、半径方向に向けた空気流を生じさせるように構成されている。
プッシャー21を図7に示す形状とした場合、可動シーブ3bの背面側で半径方向に向けた空気流を円滑に生じさせるために、図8に示す構成とすることが好ましい。すなわち図8に示す構成では、前述した主押圧部となっている円筒状の連結部19に、半径方向に貫通した通気孔23が形成されている。また、プーリ軸6bには、その通気孔23に連通するように、半径方向に向けた通気孔24が形成されるとともに、その通気孔24をプーリ軸6bの固定シーブ3a側の端面に連通させる吸気路25が、その端面から通気路24までの間に軸線方向に沿って形成されている。すなわち、断面形状がタービン翼の形状となっているプッシャー21の内周側の部分が、プーリ軸6bに形成された吸気路25を介して大気開放部に連通している。したがって、図8に示すように構成した場合には、従動プーリ3と共にプッシャー21が回転すると、プッシャー21がタービン翼として機能することにより、その内周側の空気を外周側に押し出す作用が生じ、その結果、上記の吸気路25および通気孔24,23を通って可動シーブ3bの背面側に空気が供給され、図8に矢印で示す冷却風が生じ、これによって可動シーブ3bが冷却され、ひいてはプーリの過熱が防止される。
なお、この発明は上述した具体例に限定されないのであって、上述した具体例と同様の作用が生じる構成であれば、適宜の構成を採用し、また構成を変更することができる。例えば、プッシャー20,21を前述したように前進動作させるための機構は、強い弾性力でプッシャー20,21を後退位置に保持し、かつ油圧室14,15の油圧が所定値以上に高くなってその弾性力に打ち勝つ圧力によった場合にプッシャー20,21がその油圧によって可動シーブ2b,3bに向けて前進動作するように構成することもできる。また、上記の具体例では、従動プーリ3について主として説明したが、この発明では、駆動プーリを上述した具体例で示した従動プーリ3と同様の構成とすることもできる。駆動プーリをそのように構成した場合には、変速比を減速側から増速側に変化させる際の変速速度を向上させることができ、また高負荷時のプーリの傾きや軸線方向への撓みを防止もしくは抑制することができる。
1…ベルト、 2…駆動プーリ、 3…従動プーリ、 2a,3a…固定シーブ、 2b,3b…可動シーブ、 4,5…ベルト溝、 6,7…プーリ軸、 8,9…油圧アクチュエータ、 10,11…シリンダ部材、 12,13…ピストン、 14,15…油圧室、 18,19…連結部、 20,21…プッシャー、 22…緩衝材、 21A…軸状部、 23…通気孔、 24…通気孔、 25…吸気路。
Claims (5)
- 駆動プーリと従動プーリとのそれぞれが、固定シーブとその固定シーブに対して接近・離隔するように軸線方向に移動可能な可動シーブとによって構成されるとともに、それらのシーブの対向面が、ベルトを巻き掛けるベルト溝を形成するテーパ面とされ、さらに可動シーブの前記テーパ面とは反対の背面側に可動シーブを固定シーブ側に押圧する押圧機構が設けられたベルト式無段変速機において、
前記駆動プーリと従動プーリとの間で伝達するべきトルクが大きいことにより前記可動シーブを前記固定シーブ側に押圧する荷重が大きい場合に、前記駆動プーリと従動プーリとのいずれか一方のプーリにおける前記可動シーブを前記固定シーブ側に押圧し、かつ前記駆動プーリと従動プーリとの間で伝達するべきトルクが小さいことにより前記可動シーブを前記固定シーブ側に押圧する荷重が小さい場合に前記一方のプーリにおける可動シーブを前記固定シーブ側に押圧しない副押圧部を備えていることを特徴とするベルト式無段変速機。 - 前記押圧機構は、前記一方のプーリにおける可動シーブの背面側に配置されかつ前記一方のプーリにおける可動シーブの背面に向けて前後動するピストンを含む油圧アクチュエータと、そのピストンから前記一方のプーリにおける可動シーブに向けて延びかつ該背面を押圧する突出部とを備え、かつ
前記副押圧部は、前記油圧アクチュエータの油圧が相対的に高い場合に前記一方のプーリの背面に向けて移動して該背面を押圧するプッシャーを備えている
ことを特徴とする請求項1に記載のベルト式無段変速機。 - 前記プッシャーは、前記ピストンから前記一方のプーリにおける可動シーブの背面に向けて延びた複数本の軸部を備え、その軸部は、前記一方のプーリにおける可動シーブと共に回転することにより可動シーブの半径方向に向けた空気流を生じさせるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載のベルト式無段変速機。
- 前記プッシャーは、前記ピストンから前記一方のプーリにおける可動シーブの背面に向けて突出して形成され、かつ前記ピストンは、前記油圧が相対的に高い場合に前記プッシャーが突出している部分が前記一方のプーリにおける可動シーブの背面側に撓むように構成されていることを特徴とする請求項2または3に記載のベルト式無段変速機。
- 前記プッシャーは、その先端部が前記一方のプーリにおける可動シーブの背面に接触し、また離隔するように構成されるとともに、そのプッシャーの先端部に緩衝材が取り付けられていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載のベルト式無段変速機。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010292610A JP2012140990A (ja) | 2010-12-28 | 2010-12-28 | ベルト式無段変速機 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2010292610A JP2012140990A (ja) | 2010-12-28 | 2010-12-28 | ベルト式無段変速機 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2012140990A true JP2012140990A (ja) | 2012-07-26 |
Family
ID=46677454
Family Applications (1)
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JP2010292610A Pending JP2012140990A (ja) | 2010-12-28 | 2010-12-28 | ベルト式無段変速機 |
Country Status (1)
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JP (1) | JP2012140990A (ja) |
-
2010
- 2010-12-28 JP JP2010292610A patent/JP2012140990A/ja active Pending
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