JP2012139981A - 液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、及び印刷装置 - Google Patents

液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、及び印刷装置 Download PDF

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清 山口
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Abstract

【課題】加圧液室間における吐出特性のばらつきを抑制しつつ、且つ、簡易な構成で、加圧液室間における相互干渉を抑制する。
【解決手段】液滴吐出ヘッド10は、ノズル基板12、流路基板15、振動板16、補強膜26、及び保護基板28を含んで構成され、流路基板15は、ノズル孔12Aの各々に連通する複数の加圧液室18を形成する複数の流路隔壁14を備えている。流路隔壁14は、補強膜幅WS>流路隔壁の振動板側幅WCの関係を満たす構成であると共に、振動板16との接合面14Aに連続し且つ該接合面14Aに向かって、加圧液室18の配列方向の幅が小さい第1の部位14Bを備えている。
【選択図】図1

Description

本発明は、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、及び印刷装置に関する。
インクジェット記録装置等の液滴吐出装置は、記録時の騒音が極めて小さいこと、高速印字が可能であること、インクの自由度が高く安価な普通紙を使用できることなど多くの利点を有する。この中でも、必要な時にのみインク液滴を吐出する、いわゆるインク・オン・デマンド方式を用いた液滴吐出装置が、記録に不要なインク液滴の回収を必要としないため、現在主流となってきている。
液滴吐出装置において使用する液滴吐出ヘッドとしては、インク滴等の液滴を吐出するノズル孔と、このノズル孔に連通する加圧液室(吐出室、圧力室、インク流路等とも称される)と、加圧液室内のインクを加圧するための圧力を発生する圧力発生手段とを備えた構成が知られている。このような構成の液滴吐出ヘッドでは、圧力発生手段により発生した圧力で加圧液室内のインクを加圧することによって、ノズル孔からインク滴を吐出させる。
液滴吐出ヘッドとしては、圧電素子などの電気機械変換素子を圧力発生手段として用いて、加圧液室の壁面を形成している振動板を変形変位させることでインク滴を吐出させるピエゾ型の液滴吐出ヘッドが知られている。ピエゾ型の液滴吐出ヘッドには、D33方向の変位(電極面に対して垂直な方向(厚み方向)への変位)を利用した縦振動型や、D31方向の変位(電極面に対して平行な方向への変位)を利用した横振動型(所謂、ベンドモード型)や、剪断変形を利用したシェアモード型等がある。
これらの中でも、近年、半導体プロセスやマイクロマシニング技術の進歩によるパターニング加工技術の確立や、低コストであることから、Si基板に、加圧液室や圧電素子を直接形成するアクチュエータ構成が提案されている。この技術を用いることで、リソグラフィ法といった精密で、且つ簡便な手法で圧電素子を設けることができるばかりでなく、圧電素子の厚みを薄くすることができ、高速駆動が可能になるという利点がある。
しかし、振動板上に、下電極、圧電素子、上電極を順次積層することで形成される、上記ベンドモード型のアクチュエータにおいては、振動板の剛性が、加圧液室を構成する部材の中で最も機械的コンプライアンス(伸縮性及び変形のしやすさ)に影響を与える。このため、この振動板における電極面に対して平行な方向の長さ(振動板幅)に、各加圧液室間でばらつきが生じると、各加圧液室に連通するインク孔から吐出されるインク滴の吐出特性が、加圧液室間でばらつくことになる。
そこで、このようなインク滴の吐出特性のばらつきを抑制する構成が提案されている(例えば、特許文献1、及び特許文献2参照)。
特許文献1には、振動板に接する加圧液室としての圧力室の開口寸法を、高精度に形成可能な液滴吐出ヘッドの製造方法が開示されている。具体的には、特許文献1では、流路基板に犠牲層を形成し、犠牲層の反対側から犠牲層の内側領域にエッチングにより圧力室を形成している。そして、犠牲層を除去することにより、圧力室の壁部と振動板とが接する領域に、犠牲層の外形に沿った凹状部を形成している。このように、特許文献1には、この犠牲層を用いた凹状部の形成によって、圧力室の振動板側の開口寸法を調整することが開示されている。
特許文献2には、液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室が設けられた流路形成基板と、該流路形成基板上に振動板を介して設けられた下電極、圧電体層、及び上電極からなる圧電素子と、を具備した構成が示されている。そして、特許文献2では、流路形成基板の圧電素子側の面に振動規制層を設け、この振動規制層を圧力発生室の内側に突出した構成とすることが提案されている。
一方、特許文献3には、静電型の液滴吐出ヘッドにおいて、振動板の、基板に形成した圧力発生室の壁面を構成する側の面における振動板短手方向の幅よりも、該振動板の変形可能領域の短辺長を短くすることによって、振動板の変形可能領域の短辺長のばらつきによる、噴射特性のばらつきを抑制することが提案されている。
しかしながら、特許文献1の構成では、加圧液室間の距離を狭めて高密度化するほど、振動板と隔壁との接合幅が狭くなり、隔壁を介して伝播した圧力で隣接した加圧液室への相互干渉を生じる。また、振動板の振動も伝播し易くなる。また、特許文献2の構成では、流路基板側に規制層が設けられているため、流路基板側に予め規制層を設ける必要があり、製造工程が複雑となる。また、特許文献2の構成では、規制層は、加圧液室内の液体に接して配置されるため、材料選択の幅が制限される。また、特許文献3の構成は、電極を兼ねた振動板、または電極設けられた振動板と、該振動板に対向して配置された液室外の個別電極と、に電圧を印加することで発生する静電力により振動板を変形させることでインク滴を吐出させる静電型の液滴吐出装置に特有の構成である。
このため、圧電素子を用いた液滴吐出ヘッドにおいて、加圧液室間における吐出特性のばらつきを抑制しつつ、且つ、簡易な構成で、加圧液室間における相互干渉を抑制することは困難であった。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、加圧液室間における吐出特性のばらつきを抑制しつつ、且つ、簡易な構成で、加圧液室間における相互干渉を抑制することができる、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、及び印刷装置を提供することを課題とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、液滴を吐出する複数のノズル孔を有するノズル基板と、前記ノズル孔の各々に連通する複数の加圧液室間を仕切り且つ該加圧液室の配列方向に沿って配列された複数の流路隔壁を有する流路基板と、前記流路隔壁を介して前記ノズル基板に対向して配置された振動板と、前記振動板を介して前記加圧液室の各々に対向して配置され、該振動板の面に対して平行な方向への変位を該振動板に与える複数の圧電素子と、前記振動板を介して前記流路隔壁に対向して配置された補強膜と、を備え、前記流路隔壁の前記振動板との接合面における前記配列方向の幅が、前記補強膜の前記振動板側の端面における前記配列方向の幅より小さく、且つ前記流路隔壁は、前記振動板との接合面に連続し且つ該接合面に向かって前記配列方向の幅が小さい第1の部位を有する、液滴吐出ヘッドである。
本発明によれば、加圧液室間における吐出特性のばらつきを抑制しつつ、且つ、簡易な構成で、加圧液室間における相互干渉を抑制することができる、という効果を奏する。
図1は、第1の実施の形態の液滴吐出ヘッドの一の形態を模式的に示した断面図であり、図2のA−A’断面図である。 図2は、第1の実施の形態の液滴吐出ヘッドの一の形態を模式的に示した平面図であり、液滴吐出ヘッドの保護基板を外した状態で圧電素子側から見た態様を模式的に示した平面図である。 図3は、第1の実施の形態における液滴吐出ヘッドの、ノズル基板及びノズル基板上に設けられた流路基板を模式的に示した平面図である。 図4は、第1の実施の形態における液滴吐出ヘッドの一部を拡大して示した模式図であり、図1に示す液滴吐出ヘッドの領域Aを拡大して示した模式図である。 図5(A)〜図5(C)は、第1の実施の形態の液滴吐出ヘッドの製造工程を示す模式図である。 図6(A)〜図6(B)は、第1の実施の形態の液滴吐出ヘッドの製造工程を示す模式図である。 図7(A)〜図7(C)は、第1の実施の形態の液滴吐出ヘッドの製造工程を示す模式図である。 図8は、第1の実施の形態における液滴吐出ヘッドを搭載した液滴吐出装置の一の形態を模式的に示した斜視図である。 図9は、第1の実施の形態における液滴吐出ヘッドを搭載した液滴吐出装置の一の形態を模式的に示した断面図である。 図10は、第2の実施の形態における液滴吐出ヘッドの一の形態を模式的に示した断面図である。 図11は、第2の実施の形態における液滴吐出ヘッドの一の形態を模式的に示した断面図である。 図12は、第3の実施の形態における液滴吐出ヘッドの一の形態を模式的に示した断面図である。 図13は、第4の実施の形態における液滴吐出ヘッドの一の形態を模式的に示した断面図である。 図14は、第5の実施の形態における液滴吐出ヘッドの一の形態を模式的に示した断面図である。
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、及び印刷装置の一の実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1〜図4に示すように、本実施の形態の液滴吐出ヘッド10は、ノズル基板12、流路基板15、振動板16、補強膜26、及び保護基板28を含んで構成されている。
ノズル基板12は、液滴を吐出する複数のノズル孔12Aを有している。ノズル孔12Aは、ノズル基板12の厚み方向に貫通した貫通孔であり、ノズル基板12の面方向に沿って複数配列されている。ノズル基板12の構成材料としては、例えば、樹脂、金属、ステンレス等が挙げられる。
ノズル基板12上には、流路基板15が設けられている。流路基板15は、ノズル基板12と、該ノズル基板12に対向して配置された振動板16と、の間に設けられ、該ノズル基板12と振動板16との対向方向の一端側がノズル基板12に接合され、他端側が振動板16に接合されている。
流路基板15は、複数の流路隔壁14、流路壁部15A、及び共通壁部15Bを含んで構成されている(図2及び図3参照)。
流路隔壁14は、ノズル孔12Aの配列方向に沿って配列されている。該配列方向に配列された複数の流路隔壁14によって、流路基板15には、ノズル孔12Aの各々に連通する複数の加圧液室18が設けられる。すなわち、流路隔壁14は、ノズル孔12Aの各々に連通する複数の加圧液室18間を仕切り、且つ該複数の加圧液室18の配列方向に沿って配列されている。
共通壁部15Bは、複数の加圧液室18の全てに連通する共通液室18Bの壁面を構成する。流路壁部15Aは、流体抵抗部18Cを構成する。
すなわち、これらの複数の流路隔壁14、流路壁部15A、及び共通壁部15Bによって、流路基板15には、ノズル孔12Aの各々に連通し且つノズル孔12Aの配列方向に沿って配列された複数の加圧液室18、共通液室18B、及び流体抵抗部18Cが設けられる。なお、以下では、「加圧液室18の配列方向」(すなわち、流路隔壁14やノズル孔12Aの配列方向)を、単に「上記配列方向」や「該配列方向」と称して説明する場合がある。
流路基板15には、シリコン単結晶基板、ガラス基板、金属合金、またはこれらの積層体等が用いられる。これらの中でも、流路基板15としては、品質安定性に優れ、低コストであるシリコン単結晶基板を用いることが好ましい。シリコン単結晶基板の面方位としては、<100>、<110>、<111>と3種あり、流路基板15として何れの面方位のシリコン単結晶基板を用いてもよいが、<100>、<111>を用いることが好ましく、<100>を用いることがより好ましい。
振動板16は、流路基板15を介してノズル基板12に対向して配置されている。また、振動板16は、流路基板15の振動板16側の端面に接合されている。このため、各流路隔壁14は、振動板16とノズル基板12との対向方向の一端面がノズル基板12に接合され、他端面が振動板16に接合されている。
振動板16は、本実施の形態では、SiO層16A上に、Si層16B、及びSiO層16Cを順に積層した積層体として構成されている(図4参照)。このように、振動板16の流路基板15(流路隔壁14)に接する側の面をSiO層で構成すると、エッチングにより流路基板15に加圧液室18を形成するときに、該SiO層16Aがエッチングストッパ層として機能することから好ましい。
振動板16の厚みとしては、インク滴等の液滴を吐出するための振動や強度が実現される厚みであればよく、液滴吐出ヘッド10の構成や構成材料によって選択される。具体的には、振動板16の膜厚としては0.1μm以上10μm以下が好ましく、0.5μm以上3μm以下がより好ましい。
なお、本実施の形態では、振動板16は、SiO層16A上に、Si層16B、及びSiO層16Cを順に積層した積層体として構成されている場合を説明するが、振動板16は、このような3層構成に限られず、1層、2層、または3層以上の構成であってもよい。また、本実施の形態では、振動板16は、SiO層16A上に、Si層16B、及びSiO層16Cを順に積層した積層体として構成されている場合を説明するが、この振動板16に用いられる材料としては、液滴の吐出のための振動に耐えうる程度の強度を有する材料を用いればよく、SiやSiOに限られない。例えば、振動板16には、Siによる層を用いてもよい。
圧電素子30は、振動板16を介して各加圧液室18の各々に対向して配置されている。圧電素子30は、下部電極層20上に、圧電層22及び上部電極層24を順に積層することによって構成され、振動板16の面に対して平行な方向(D31方向)への変位を該振動板16に与える、横振動型(所謂、ベンドモード型)とされている。
圧電層22の構成材料としては、圧電特性を示す層を構成しうる材料であればいかなる材料であってもよい。例えば、圧電層22としては、PZTや、チタン酸バリウム等が挙げられる。PZTとは、ジルコン酸鉛(PbZrO)とチタン酸鉛(PbTiO)の固溶体であり、その比率により特性が異なる。一般的に優れた圧電特性を示す組成は、PbZrOとPbTiOの比率が53:47の割合で、化学式で示すとPb(Zr0.53,Ti0.47)O、一般にPZT(53/47)と示される。
なお、本実施の形態の液滴吐出ヘッド10では、振動板16上に、共通の下部電極層20、圧電層22、及び上部電極層24が積層され、この下部電極層20、圧電層22、及び上部電極層24の積層領域が、圧電素子30を構成するものとして説明する。
しかし、本実施の形態の液滴吐出ヘッド10は、このような形態に限られず、下部電極層20は各圧電層22に対応するように、圧電層22の下では個別に分離されていてもよい。
下部電極層20、及び上部電極層24は、導電性を有する層であり、電極として機能する。これらの下部電極層20及び上部電極層24の構成材料としては、例えば、Au、Ag、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt等の金属材料や、これらの合金が挙げられる。
上記圧電素子30の側面には、図4に示すように、上部電極層24の端部から、圧電層22の側面を介して下部電極層20に至る領域までを覆うように、絶縁膜25が設けられている。
補強膜26は、振動板16及び下部電極層20を介して流路隔壁14に対向して配置されている。この補強膜26の振動板16側の端面26Aは、振動板16側に隣接する層(本実施の形態では下部電極層20)に接合して配置されている。なお、本実施の形態では、補強膜26の厚みは、圧電層22と上部電極層24との厚みの合計より薄くされている場合を説明する。
補強膜26は、吐出特性のばらつきを抑制するために振動板16の可動範囲の幅を高精度に決める機能を有する膜である。該機能を実現するために、補強膜26は、振動板16よりヤング率の高い膜とされている。本実施の形態では、補強膜26は、絶縁膜26上に保護膜26を積層した積層体として構成されている(図4参照)。
絶縁膜26としては、補強膜26としての上記特性を満たし且つ絶縁性を有する絶縁膜が挙げられる。保護膜26としては、補強膜26としての上記特性を満たす膜であれば絶縁性であっても導電性であってもよい。この保護膜26としては、例えば、剛性の観点から、アルミナ、SiC、Ir、及びTaのうちの少なくとも1種を含む材料が用いられる。
なお、本実施の形態では、補強膜26は、絶縁膜26上に保護膜26を積層した2層の積層体として構成されている場合を説明するが、補強膜26は、1層で構成してもよく、また、3層以上の積層体としてもよい。なお、補強膜26を1層で構成する場合には、該補強膜26は、補強膜26としての上記特性に加えて更に、絶縁性を有する層とすればよい。また、補強膜26を3層以上の複数層の積層体とする場合には、少なくとも下部電極層20に接する層を、補強膜26としての上記特性に加えて更に絶縁性を有する層とすればよい。
なお、補強膜26を、2層以上の積層体とする場合には、下部電極層20に接しない層のうちの少なくとも1層(本実施の形態では保護膜26)に、上記アルミナ、SiC、Ir、及びTaのうちの少なくとも1種を含む材料の層を用いれば、より剛性の高い(すなわち、ヤング率の高い)補強膜26が得られることから好ましい。
保護基板28は、圧電素子30の各々を保護する基板であり、振動板16の加圧液室18とは反対側に設けられている。保護基板28は、板状の本体部28Aと、本体部28Aから振動板16に近づく方向に突出した突出部としての柱部28Bとから構成されている。なお、これらの本体部28Aと柱部28Bとは一体成型されている。この柱部28は、本実施の形態では、加圧液室18の配列方向の断面形状を矩形状とされている。この柱部28Bの振動板16側の端面は、補強膜26に接合されている。
保護基板28としては、例えば、シリコン単結晶基板、ガラス基板、金属合金等、作製する液滴吐出ヘッド10に応じた基板が挙げられる。
上述のように構成された液滴吐出ヘッド10では、共通液室18B及び流体抵抗部18Cを介して、複数の加圧液室18の各々に液体が供給されて各液室が液体によって満たされた状態で、下部電極層20と上部電極層24に電圧を印可する。これにより、電圧を印可された圧電素子30の圧電層22が、振動板16の面方向に沿って縮む。なお、この下部電極層20及び上部電極層24への電圧印可による圧電層22の変形を、以下では、圧電素子30の駆動、と称して説明する場合がある。
この圧電素子30の駆動による圧電層22の変形によって、振動板16における、該圧電素子30に対応する領域が、加圧液室18側に向かって突出した凸状に変形する。この振動板16の変形によって、加圧液室18内の体積が減少して圧力が上昇し、該加圧液室18に連通するノズル孔12Aから液滴が吐出される。
また、複数の加圧液室18の各々に対応する圧電素子30に、加圧液室18内の圧力変動周期に合わせたパルス電圧を連続的に印可することで、対応するノズル孔12Aから液滴が連続的に吐出される。また、複数の加圧液室18の各々に対応する圧電素子30に、選択的に電圧を印可することによって、特定の圧電素子30に対応する加圧液室18に連通したノズル12Aから、選択的に液滴が吐出される。
ここで、補強膜26を備えない構成の従来の液滴吐出ヘッドにおいては、各加圧液室18の壁面を構成する振動板16の上記配列方向の幅が、各加圧液室18間でばらつくと、各加圧液室18に連通するノズル孔12Aから吐出される液滴の吐出特性にばらつきが生じていた。
しかし、流路隔壁14によって仕切られた複数の加圧液室18を有する流路基板15を作製するためには、各加圧液室18に対応する50μmから100μmの深さの凹部を、板状の基板にエッチングする必要があり、高いエッチング精度の実現は難しく、加圧液室18における上記配列方向の幅のばらつきを抑制することは難しかった。
このため、上記補強膜26を備えない構成の従来の液滴吐出ヘッドでは、各加圧液室18において、各加圧液室18の壁面を構成する振動板16の上記配列方向の長さで、振動板16の液滴吐出のために有効な振動幅が規定されることとなり、各加圧液室18の壁面を構成する振動板16の上記配列方向の長さのばらつきによって、各加圧液室18における振動板16の剛性にばらつきが生じていた。
そこで、本実施の形態の液滴吐出ヘッド10では、上述のように補強膜26を備えると共に、該補強膜26の振動板16側の端面26Aにおける、加圧液室18の配列方向(図1〜図4中、矢印B方向)の幅WSが、流路隔壁14の振動板16との接合面14Aにおける該配列方向の幅WCより大きい構成とされている。すなわち、本実施の形態の液滴吐出ヘッドでは、幅WS>幅WCの関係とされている(図1等参照)。
なお、以下では、補強膜26の振動板16側の端面26Aにおける、加圧液室18の配列方向の幅WSを、「補強膜幅WS」と称して説明する。また、流路隔壁14の振動板16との接合面14Aにおける該配列方向の幅WCを、「流路隔壁の振動板側幅WC」と称して説明する。
なお、上述したように、補強膜26は、本実施の形態では、下部電極層20に接合されていることから、上記「補強膜26の振動板16側の端面26A」は、具体的には、補強膜26の振動板16への接合面に相当する。
このため、各加圧液室18における、振動板16の液滴吐出のために有効な振動幅は、各加圧液室18の壁を構成する振動板16の上記配列方向の長さではなく、各加圧液室18の壁を構成する流路隔壁14に対向して配置された一対の補強膜26間の距離によって規定されることとなる。これは、上記補強膜幅WS>流路隔壁の振動板側幅WCの関係を満たす構成とすることで、上記配列方向に隣接する流路隔壁14の接合面14A間の距離に比べて、上記配列方向に隣接する補強膜26の上記端面26A間の距離の方が、短くなるためである。
また、補強膜26は、上述したように、振動板16の振動の伝播を防ぐ機能を有する。
そして、補強膜26は、詳細な製法は後述するが、成膜された膜をパターニングすることによって形成される。圧電層22側からのパターニングで加工深さが浅いので、基板のエッチングによって形成される流路隔壁14に比べて、補強膜26は、高精度に形成することができる。
従って、この補強膜26によって、各加圧液室18における振動板16の液滴吐出のために有効な振動幅が規定されることで、各ノズル孔12Aの吐出特性のばらつきが容易に抑制される。
上記補強膜幅WSは、流路隔壁14の振動板側幅WCのバラツキや、補強膜26と流路隔壁14のアライメントズレのバラツキを吸収するだけのマージンが必要である。逆に言えば、振動板側幅WCの加工精度によって、隔壁幅を広げることができ、相互干渉を更に低減することができる。
ここで、上述のように、補強膜26を、振動板16を介して流路隔壁14に対向する領域に設け、上記補強膜幅WS>流路隔壁の振動板側幅WCの関係を満たす構成とすることで、各加圧液室18における振動板16の剛性のばらつきが低減される。
しかしながら、各加圧液室18間の距離を短くし、複数の加圧液室18を、より高密度に配列した構成とするほど、液滴吐出時に加圧液室18内に加わる圧力によって流路隔壁14が変形し、隣接する加圧液室18への圧力干渉が生じやすくなる場合がある。
そこで、本実施の形態の液滴吐出ヘッド10では、流路隔壁14は、上記構成(補強膜幅WS>流路隔壁の振動板側幅WCの関係を満たす構成)に加えてさらに、流路隔壁14が、振動板16との接合面14Aに連続し且つ該接合面14Aに向かって上記配列方向の幅が連続的に小さい第1の部位14Bを備えている。
そして、この第1の部位14Bは、本実施の形態では、流路隔壁14の、ノズル基板12と振動板16との対向方向の一端側から他端側に至る部位とされている。
具体的には、流路隔壁14は、図1及び図4に示すように、上記配列方向の断面形状が、上底側(平行な一対の辺の内の短辺側)を振動板16側とし、下底側(平行な一対の辺の内の長辺側)をノズル基板12側とした台形状とされている。
上記構成とすることで、流路隔壁14における、上記振動板16とノズル基板12との対向方向の一端から他端に渡る領域の、上記配列方向の幅の積算値が、該流路隔壁14を上記補強膜幅WS>流路隔壁の振動板側幅WCの関係を満たすのみの構成とした場合に比べて大きくなる。このため、各加圧液室18から液滴が吐出されたときの、流路隔壁14の撓みが抑制される。
従って、本実施の形態の液滴吐出ヘッド10では、加圧液室18間における吐出特性のばらつきを抑制しつつ、且つ、加圧液室18を高密度化に配置した場合であっても、簡易な構成で、加圧液室18間における相互干渉を抑制することができる。
また、流路隔壁14が上記第1の部位14Bを有することから、流路隔壁14の強度を保ちつつ、且つ上記流路隔壁14の振動板側幅WCを、補強膜幅WSに比べてより小さい幅とすることができる。
このため、流路隔壁14が第1の部位14Bを有さない構成である場合に比べて、各加圧液室18に対向して設けられた圧電層22の上記配列方向の長さを長くすることができる。このため、圧電素子30の駆動効率の向上も図れる。
なお、本実施の形態では、図1、図4に示すように、流路隔壁14の第1の部位14Bは、流路隔壁14の、ノズル基板12と振動板16との対向方向の一端側から他端側に至る部位であり、振動板16との接合面14Aに連続し且つ該接合面14Aに向かって上記配列方向の幅が連続的に小さい部位であるものとして説明した。しかし、この第1の部位14Bは、振動板16との接合面14Aに連続し且つ該接合面14Aに向かって上記配列方向の幅が段階的に小さい部位であってもよい。
しかし、流路隔壁14の第1の部位14Bは、ノズル基板12との接合面14Cから振動板16との接合面14Aに向かって、連続的に上記配列方向の幅が小さい形状である方が、段階的である場合に比べて、加圧液室18内に生じた気泡が加圧液室18内に留まりにくいことから好ましい。
なお、上述のように、本実施の形態の液滴吐出ヘッド10では、保護基板28の柱部28Bの端面が、補強膜26に接合されている。補強膜26は、上述のように、振動板16の振動を加圧液室18ごとに独立させる機能を有する。このため、柱部28Bの端面が補強膜26に接合されていることで、相互干渉がさらに抑制される。
次に、本実施の形態の液滴吐出ヘッド10の製造方法の一例を説明する。
まず、図5(A)に示すように、シリコン基板17上に、SiO層16A、及びSi層16Bが順に積層されたSIO基板を用意する。このSIO基板としては、例えば、厚み400μm、面方位<100>のシリコン単結晶基板であるシリコン基板17上に、厚み0.2μmのSiO層16A、及び厚み2.0μmのSi層16Bを順に張り合わせた基板が挙げられる。
そして、このSIO基板のSi層16B上に、パイロ酸化法によってシリコン酸化膜であるSiO層16Cを形成する。これによって、シリコン基板17上に、SiO層16A、Si層16B、及びSiO層16Cの積層体としての振動板16を形成する。
次に、図5(B)に示すように、SiO層16C上に、公知の成膜方法により下部電極層20を成膜する。例えば、この下部電極層20として、白金(Pt)層をスパッタ法により0.2μmの厚みに成膜する。
さらに、この下部電極層20上に、圧電層22の構成材料からなる圧電体膜22A、及び上部電極層24の構成材料からなる上部電極膜24Aを、この順に、公知の成膜方法により成膜する(図5(B)参照)。例えば、下部電極層20上に、圧電体膜22Aとして、PZT膜をスパッタ法により2μmの厚みに成膜する。そして、さらに、上部電極膜24Aとしての白金(Pt)層をスパッタ法により0.1μmの厚みに成膜する。
そして、上記に成膜した上部電極膜24A及び圧電体膜22Aを、公知の方法を用いてパターニングすることによって、後工程でシリコン基板17に形成する加圧液室18の各々に対応する位置に、圧電素子30を形成する(図5(C)参照)。例えば、リソエッチ法を用いて、上部電極膜24A及び圧電体膜22Aをパターニングする。これによって、振動板16上に、下部電極層20、加圧液室18に対応する領域に設けられた複数の圧電層22、該圧電層22上に積層された上部電極層24からなる、複数の圧電素子30が形成される。
次に、図示は省略するが、上記圧電層22及び上部電極層24の設けられた下部電極層20上に、プラズマCVD法(化学的気相成長法)を用いて絶縁膜(例えば、0.3μm)(図示省略)を形成する。そしてさらに、該絶縁膜に、配線コンタクトをとるためのビアホール(図示省略)をリソエッチ法により形成する。そして、該ビアホールを介して、アルミ材料によるアルミ配線(図示省略)を形成して、下部電極層20と上部電極層24とを電気的に接続する。そしてさらに、保護膜26Bの形成材料による膜をプラズマCVD法により成膜する。この保護膜26Bの形成材料による膜として、例えば、シリコン窒化膜を0.8μmの厚みに成膜する。
さらに、パッド開口と同時に、振動板16上の、圧電素子30に相当する領域と、流路隔壁14に対向する領域と、の間に成膜されている、該絶縁膜及び保護膜26Bの形成材料による膜をリソエッチ法によりパターニングして除去する。これによって、下部電極層20上の、後工程でシリコン基板17に形成する流路隔壁14の各々に対向する領域に、該絶縁膜26及び該保護膜26の形成材料による膜のパターニングにより形成された、補強膜26が形成される(図6(A)参照)。
次に、ガラス基板等にブラスト加工を行うことによって、本体部28Aと柱部28Bとを有する保護基板28を、柱部28Bの先端が補強膜26に接するように、接合する(図6(B)参照)。
なお、保護基板28としては、シリコン基板にリソエッチ法を用いて凹部を加工することで、本体部28Aと柱部28Bとを一体成型したものを用いてもよい。また、シリコン基板として、面方位<110>のシリコン基板を用い、TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)や、KOH(水酸化カリウム)等のアルカリエッチング液を用いたウェットエッチングによる加工によって、本体部28Aと柱部28Bとを形成したものをもちいてもよい。また、保護基板28としては、樹脂モールドやメタルインジェクションモールドなどの成型品を用いてもよい。
次に、シリコン基板17の厚みが、形成対象の流路隔壁14の厚みとなるまで、該シリコン基板17の圧電素子30とは反対側の面を研磨する(図7(A)参照)。
次に、研磨されたシリコン基板17について、圧電素子30とは反対側の面からICP(Inductively Coupled Plasma)ドライエッチング装置を用いて加工し、加圧液室18、流体抵抗部18C、及び共通液室18Bとなる凹部を形成する。これによって、流路隔壁14、流路壁部15A、及び共通壁部15Bを有する流路基板15が作製される(図7(B)、図3参照)。
なお、上記に説明したように、本実施の形態の液滴吐出ヘッド10では、補強膜26を流路隔壁14に対向する領域に設け、流路隔壁14は、補強膜幅WS>流路隔壁の振動板側幅WCの関係を満たす。また、流路隔壁14は、振動板16との接合面14Aに連続し且つ該接合面14Aに向かって上記配列方向の幅が連続的に小さい第1の部位14Bを備えた構成である。
このため、研磨されたシリコン基板17の加工によって加圧液室18、すなわち流路隔壁14を形成するときには、上記形状とするために、流路隔壁14の振動板16とノズル基板12との対向方向における位置に応じて、シリコン基板17のエッチング条件を変更する。
例えば、流路隔壁14の形成領域においては、流路隔壁14に近づくほど、流路隔壁14の上記配列方向の幅が小さくなるように、エッチング条件を徐々に変更すればよい。
次に、別途、複数のノズル孔12Aの形成されたノズル基板12を用意し、該ノズル基板12を、上記工程で形成された複数の加圧液室18の各々に連通して各ノズル孔12Aが配置されるように、流路隔壁14(流路基板15)の端面に接着させて接合する。このノズル基板12としては、例えば、厚み30μm以上50μm以下のSUS基板を用意し、このSUS基板にブレス加工と研磨加工を施すことにより、ノズル孔12Aを形成したものが用いられる。
そして、さらに、下部電極層20と上部電極層24とを電気的に接続した上記アルミ配線(図示省略)を、液滴吐出ヘッド10の各圧電素子30を駆動する駆動回路(図示省略)に電気的に接続することによって、液滴吐出ヘッド10が作製される(図7(C)参照)。
次に、本実施の形態の液滴吐出ヘッド10を搭載した液滴吐出装置の一例について、図8及び図9を参照して説明する。
図8、及び図9に示すように、液滴吐出装置50は、記録装置本体81の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ93、キャリッジ93に搭載し、上述した液滴吐出ヘッド10からなる記録ヘッド94、記録ヘッド94へインクを供給するインクカートリッジ95等で構成される印字機構部82等を収納する。記録装置本体81の下方部には前方側から多数枚の用紙83を積載可能な給紙カセット84(或いは給紙トレイでもよい)を抜き差し自在に装着することができ、また、用紙83を手差しで給紙するための手差しトレイ85を開倒することができ、給紙カセット84或いは手差しトレイ85から給送される用紙83を取り込み、印字機構部82によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ86に排紙する。
印字機構部82は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド91と従ガイドロッド92とでキャリッジ93を主走査方向に摺動自在に保持し、このキャリッジ93にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する、上述した薄膜形成で形成された液滴吐出ヘッドからなる記録ヘッド94を複数のインク吐出口(ノズル)を主走査方向と交差する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。また、キャリッジ93には記録ヘッド94に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ95を交換可能に装着している。
インクカートリッジ95は上方に大気と連通する大気口、下方にはインクジェットヘッドへインクを供給する供給口を、内部にはインクが充填された多孔質体を有しており、多孔質体の毛管力により記録ヘッド94へ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。また、記録ヘッド94としてここでは各色のヘッドを用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個のヘッドでもよい。
ここで、キャリッジ93は後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド91に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド92に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ93を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ97で回転駆動される駆動プーリ98と従動プーリ99との間にタイミングベルト100を張装し、このタイミングベルト100をキャリッジ93に固定しており、主走査モータ97の正逆回転によりキャリッジ93が往復駆動される。
一方、給紙カセット84にセットした用紙83を記録ヘッド94の下方側に搬送するために、給紙カセット84から用紙83を分離給装する給紙ローラ101及びフリクションパッド102と、用紙83を案内するガイド部材103と、給紙された用紙83を反転させて搬送する搬送ローラ104と、この搬送ローラ104の周面に押し付けられる搬送コロ105及び搬送ローラ104からの用紙83の送り出し角度を規定する先端コロ106とを設けている。搬送ローラ104は副走査モータ107によってギヤ列を介して回転駆動される。
そして、キャリッジ93の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ104から送り出された用紙83を記録ヘッド94の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材109を設けている。この印写受け部材109の用紙搬送方向下流側には、用紙83を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ111、拍車112を設け、さらに用紙83を排紙トレイ86に送り出す排紙ローラ113及び114と、排紙経路を形成するガイド部材115とを配設している。
記録時には、キャリッジ93を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド94を駆動することにより、停止している用紙83にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙83を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号または、用紙83の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙83を排紙する。
また、キャリッジ93の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、記録ヘッド94の吐出不良を回復するための回復装置117を配置している。回復装置117はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有している。キャリッジ93は印字待機中にはこの回復装置117側に移動されてキャッピング手段で記録ヘッド94をキャッピングされ、吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段で記録ヘッド94の吐出口(ノズル)を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出し、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜(図示しない)に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
上述した液滴吐出装置50においては、前述した液滴吐出ヘッド10を用いた記録ヘッド94を搭載しているので、加圧液室18間における吐出特性のばらつきを抑制しつつ、且つ、簡易な構成で、加圧液室18間における相互干渉を抑制することができる。このため、液滴吐出装置50では、各ノズル孔12Aから吐出される液滴の用紙83への着弾位置のずれによる画質劣化が抑制される。
また、液滴吐出装置50を、各種印刷装置に搭載することができる。この液滴吐出装置50を、各種印刷装置に搭載することによって、画像品質の向上した印刷装置を提供することができる。
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態の液滴吐出ヘッド10では、流路隔壁14の第1の部位14Bは、流路隔壁14の、ノズル基板12と振動板16との対向方向の一端側から他端側に至る部位とされている場合を説明した。
すなわち、第1の実施の形態の液滴吐出ヘッド10では、流路隔壁14の、上記配列方向の断面形状が、上底側(平行な一対の辺のうちの短辺側)を振動板16側とし下底側(平行な一対の辺の内の長辺側)をノズル基板12側とした台形状である場合を説明した。
一方、本実施の形態では、第1の実施の形態における流路隔壁14に変えて、該流路隔壁14とは異なる形状の流路隔壁19を用いた場合を説明する。
図10に示すように、本実施の形態の液滴吐出ヘッド10Aは、ノズル基板12、流路基板17A、振動板16、補強膜26、及び保護基板28を含んで構成されている。流路基板17Aは、複数の流路隔壁19、共通壁部15B、及び流路壁部15Aを含んで構成されている(図3参照)。これらの複数の流路隔壁19、共通壁部15B、及び流路壁部15Aによって、流路基板17Aには、流路隔壁19の配列方向に配列された複数の加圧液室18、共通液室18B、及び流体抵抗部18Cが形成されている(図3参照)。
なお、本実施の形態の液滴吐出ヘッド10Aは、流路隔壁14を備えた流路基板15に変えて、流路隔壁14とは異なる形状の流路隔壁19を備えた流路基板17Aを用いた以外は、第1の実施の形態で説明した液滴吐出ヘッド10と同じ構成である。このため、液滴吐出ヘッド10と同じ機能及び構成である部分には、同じ符号を付与して詳細な説明を省略する。
図10に示すように、流路隔壁19は、第1の実施の形態の流路隔壁14と同様に、補強膜幅WS>流路隔壁の振動板側幅WCの関係を満たす。また、流路隔壁19は、振動板16との接合面14Aに連続し且つ該接合面14Aに向かって上記配列方向の幅が連続的に小さい第1の部位19Aを備えている。
この第1の部位19Aは、本実施の形態では、流路隔壁19の、ノズル基板12と振動板16との対向方向の振動板16側端部とされている。
すなわち、本実施の形態においては、流路隔壁19は、ノズル基板12と振動板16との対向方向の振動板16側の端部のみに、振動板16との接合面14Aに連続し且つ該接合面14Aに向かって上記配列方向の幅が連続的に小さい部位としての第1の部位19Aが設けられている。
そして、流路隔壁19における、ノズル基板12と振動板16との対向方向の、該第1の部位19Aよりノズル基板12側の部位19Bは、該対向方向の一端側から他端側にわたって、上記配列方向の幅が一定とされている。
なお、流路隔壁14における、上記第1の部位19Aの設けられている、「ノズル基板12と振動板16との対向方向の端部」とは、少なくとも振動板16との接合面14Aに連続し、且つノズル基板12との接合面には非連続な部位であればよい。
具体的には、第1の部位19Aとしては、流路隔壁19における、ノズル基板12と振動板16との対向方向の長さの1/2の位置(中央部)より振動板16側の部位や、振動板16から該中央部の位置までの長さの1/2の位置より振動板16側の部位が挙げられる。
なお、流路隔壁19における、該第1の部位19Aよりノズル基板12側の部位19Bの、上記配列方向の幅WAは、図10に示すように、補強膜26の補強膜幅WSより小さくてもよいし(補強膜幅WS>幅WA)、同じであってもよいし(補強膜幅WS=幅WA)(図示省略)、補強膜26の補強膜幅WSより大きくてもよい(図11参照)。
具体的には、図11に示すように、流路隔壁19における部位19Bの上記配列方向の幅WAが、補強膜26の補強膜幅WSより大きい以外は、流路隔壁19と同じ構成の流路隔壁19を備えた液滴吐出ヘッド10Bとしてもよい。
なお、図11に示す液滴吐出ヘッド10Bは、流路隔壁19に変えて流路隔壁19を備えた(すなわち、流路隔壁19を備えた流路基板17Aに変えて、流路隔壁19を備えた流路基板17Aを用いた)以外は、図10に示す液滴吐出ヘッド10Aと同じ構成であるため、同一構成である部分には図11に同じ符号を付与して詳細な説明を省略する。
このように、第1の実施の形態における流路隔壁14に変えて、流路隔壁14における第1の部位14Bが振動板16側の端部に設けられ流路隔壁19を用いた本実施の形態の液滴吐出ヘッド10A及び液滴吐出ヘッド10Bにおいても、液滴吐出ヘッド10と同様に、加圧液室18間における吐出特性のばらつきを抑制しつつ、且つ、簡易な構成で、加圧液室18間における相互干渉を抑制することができる。
なお、上記形状の流路隔壁19や流路隔壁19は、第1の実施の形態における液滴吐出ヘッド10の流路隔壁14と同様に、シリコン基板17のエッチング条件を調整することで形成すればよい。
具体的には、流路隔壁19の形成領域においては、上記部位19Bの領域においてはエッチング条件を一定とし、上記第1の部位19Aについては、エッチング条件を変更してオーバーエッチングするようにエッチング時間を調整することで、流路隔壁19の振動板16側の端部に掘り込みを作ることで形成すればよい。流路隔壁19についても、同様にして形成すればよい。
なお、本実施の形態では、流路隔壁19における、第1の部位19Aよりノズル基板12側の部位19Bは、該対向方向の一端側から他端側にわたって上記配列方向の幅が一定とされている場合を説明した。しかし、流路隔壁19は、補強膜幅WS>流路隔壁の振動板側幅WCの関係を満たし、且つ振動板16側の端部に第1の部位19Aを有する構成であればよく、部位19Bの配列方向の幅は、該対向方向の一端側から多端側にわたって一定である形態に限られない。例えば、該部位19Bの配列方向の幅は、ノズル基板12と振動板16との対向方向に向かって連続的または段階的に異なる幅であってもよい。
(第3の実施の形態)
第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、保護基板28は、板状の本体部28Aと、本体部28Aから振動板16に近づく方向に突出した突出部としての柱部28Bとから構成されており、この柱部28は、加圧液室18の配列方向の断面形状が矩形状とされている場合を説明した。
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した保護基板28に変えて、柱部28Bとは異なる形状の柱部29Aを備えた保護基板29を用いた場合を説明する。
図12に示すように、本実施の形態の液滴吐出ヘッド10Cは、ノズル基板12、流路基板17A、振動板16、補強膜26、及び保護基板29を含んで構成されている。
なお、本実施の形態の液滴吐出ヘッド10Cは、保護基板28に変えて、保護基板29を用いた以外は、第2の実施の形態で説明した液滴吐出ヘッド10B(図11参照)と同じ構成である。このため、液滴吐出ヘッド10Cと同じ機能及び構成である部分には、同じ符号を付与して詳細な説明を省略する。
図12に示すように、保護基板29は、圧電素子30の各々を保護する基板であり、振動板16の加圧液室18とは反対側に設けられている。保護基板29は、板状の本体部29Aと、本体部29Aから振動板16に近づく方向に向かって突出した突出部としての柱部29Bとから構成されている。なお、これらの本体部29Aと柱部29Bとは一体的に成形されている。
本実施の形態では、柱部29Bは、加圧液室18の配列方向の断面形状を、平行な一対の辺の内の短辺側を補強膜26側とし、平行な一対の辺の内の長辺側を本体部29B側とした台形状とされている。そして、この柱部29Bの、振動板16側の端面は、補強膜26に接合されている。
なお、上記形状の保護基板29としては、例えば、シリコン基板等の基板にリソエッチ法を用いて凹部を加工することで、本体部29Aと柱部29Bとを形成したものを用いればよい。
このように、保護基板29における柱部29Bの形状が、上記配列方向の断面形状を矩形状ではなく、台形状とした場合であっても、液滴吐出ヘッド10Cに補強膜26を設けた構成とし、且つ上記第2の実施の形態で説明した流路隔壁19を用いた構成であれば、保護基板28の形状によらず、液滴吐出ヘッド10Bと同様に、加圧液室18間における吐出特性のばらつきを抑制しつつ、且つ、簡易な構成で、加圧液室18間における相互干渉を抑制することができる。
なお、本実施の形態では、保護基板29における柱部29Bの形状が台形状である場合を説明したが、液滴吐出ヘッド10Cに補強膜26を設けた構成とし、且つ上記第2の実施の形態で説明した流路隔壁19を用いた構成であれば、保護基板28の形状によらず、上記効果が得られる。
また、本実施の形態では、第2の実施の形態で説明した流路隔壁19を備えた構成である場合を説明したが、該流路隔壁19に変えて、第2の実施の形態で説明した流路隔壁19及び第1の実施の形態で説明した流路隔壁14を用いた場合においても、同様に、保護基板28の形状によらず、上記効果が得られる。
(第4の実施の形態)
第1の実施の形態の液滴吐出ヘッド10では、保護基板28は、板状の本体部28Aと、本体部28Aから振動板16に近づく方向に突出した突出部としての柱部28Bとから構成されている場合を説明した。
本実施の形態では、第1の実施の形態の液滴吐出ヘッド10で用いた補強膜26の厚みを圧電素子30の厚みより厚くすることで、補強膜26に柱部28Bとしての機能を持たせた構成を説明する。
図13に示すように、本実施の形態の液滴吐出ヘッド10Dは、ノズル基板12、流路基板15、振動板16、補強膜27、及び保護基板28としての本体部28Aを含んで構成されている。
なお、本実施の形態では、第1の実施の形態で説明した補強膜26に変えて補強膜27を用い、柱部28Bを有さない本体部28Aのみを保護基板28として用いた以外は、第1の実施の形態で説明した液滴吐出ヘッド10と同じ構成であるため、同じ構成及び機能を有する部位には同じ符号を付与して詳細な説明を省略する。
第1の実施の形態では、補強膜26は、圧電層22と上部電極層24との厚みの合計より薄い膜である場合を説明した。一方、本実施の形態の補強膜27は、圧電層22と上部電極層24との厚みの合計より厚い膜とされている。そして、この補強膜27の加圧液室18とは反対側の端面は、本体部28Aに直接接合されている(図13参照)。
なお、補強膜27は、第1の実施の形態で説明した補強膜26と厚みが異なる以外は、同じ構成であるため、層構成や構成材料についての詳細な説明は省略する。
補強膜27の厚みとしては、具体的には、圧電層22及び上部電極層24の厚みの合計値に、圧電素子30の駆動による振動板16の厚み方向の振幅の最大値を加算した値より大きい厚みが挙げられる。例えば、圧電素子30の駆動による振動板16の厚み方向の振幅の最大値が0.2μm以上0.3μm以下であるとする。この場合には、補強膜27の厚みは、圧電層22及び上部電極層24の厚みの合計値に、例えば0.5μmを加算した厚みとすればよい。
このような厚みを有する補強膜27は、補強膜26と同様に、プラズマCVD法(化学的気相成長法)を用いて形成すればよい。なお、上述のような、圧電層22及び上部電極層24の厚みの合計値に、例えば0.5μmを加算した厚みの補強膜27は、プラズマCVD法等で充分に実現できる厚みである。
なお、補強膜27としては、本実施の形態では、圧電層22の設けられた層と同じ層である下部電極層20上に設けられている。しかし、このような形態に限られず、補強膜27を複数の層の積層体として構成し、この複数の層のうちの1層に、圧電素子30を構成する圧電層22と同じ構成材料からなる圧電体膜22A(図5(B)参照)を用いて構成してもよい(図示省略)。
この場合には、例えば、下部電極層20上に圧電層22の構成材料からなる圧電体膜22A(図5(B)参照)を成膜した後に、パターニングすることによって、加圧液室18の各々に対応する位置と、流路隔壁14に対向する位置と、にのみ圧電体膜22Aを残す(図示省略)。そして、この流路隔壁14に対向する位置に形成された圧電体膜22Aに、補強膜27としての機能を満たす層(例えば、第1の実施の形態で説明した絶縁膜26や保護膜26)を順に形成することで、補強膜27を形成すればよい。
なお、積層体として構成された補強膜27における、複数の層のうちの1層として、圧電体膜22Aを用いる場合には、上記補強膜幅WSは、第1の実施の形態で説明した絶縁膜26や保護膜26(図4参照)によって規定することが好ましい。そして、補強膜27を構成する圧電体膜22Aの上記配列方向の幅は、該補強膜幅WSより小さい幅となるようにパターニングすることが好ましい。
以上説明したように、本実施の形態における液滴吐出ヘッド10Dでは、補強膜27の厚みを厚くして補強膜27を柱部28Bとして機能させ、柱部28Bを含まない本体部28Aのみを保護基板28として機能させる。このため、保護基板28に微細なパターン(凹部)を設けるための加工の必要が無くなる。したがって、本体部28A(保護基板28)と補強膜27との高精度な位置合わせによる接合が不要となり、製造工程の簡略化が図れる。
また、補強膜27が板状の本体部28Aとしての保護基板28で固定されているので、第1の実施の形態で説明した液滴吐出ヘッド10の効果に加えて、相互干渉が更に抑制される。
なお、本実施の形態では、補強膜27の厚みが、圧電層22と上部電極層24との厚みの合計より厚く、補強膜27の加圧液室18とは反対側の端面が、柱部28Bを介さずに、本体部28Aに直接接合されている場合を説明した。
このように、補強膜27の厚みが、圧電層22と上部電極層24との厚みの合計より厚い構成である場合には、本体部28A(保護基板28)を補強膜27には接合しない構成であってもよい。すなわち、図14に示すように、本体部28A(保護基板28)と、補強膜27とが、接合されていない構成の液滴吐出ヘッド10Eであってもよい。なお、液滴吐出ヘッド10Eの構成は、本体部28Aを補強膜27には接合しない構成とした以外は、上記液滴吐出ヘッド10Dと同じ構成であるため、同じ構成である部分には液滴吐出ヘッド10Dと同一符号を付与して詳細な説明を省略する。
なお、このような構成の液滴吐出ヘッド10Eとした場合には、本体部28A(保護基板28)と補強膜27とが接合された構成の液滴吐出ヘッド10Dに比べて、振動板16の振動による相互干渉の抑制には劣るものの、流路隔壁14の形状が上記実施例で説明した形状であることから、従来技術に比べれば、加圧液室18間における相互干渉を抑制することができる。
10、10A、10B、10C、10D、10E 液滴吐出ヘッド
12 ノズル基板
12A ノズル孔
14、19、19 流路隔壁
16 振動板
18 加圧液室
28 保護基板
30 圧電素子
50 液滴吐出装置
特開2007−210198号公報 特開2008−143160号公報 特開2001−253073号公報

Claims (9)

  1. 液滴を吐出する複数のノズル孔を有するノズル基板と、
    前記ノズル孔の各々に連通する複数の加圧液室間を仕切り且つ該加圧液室の配列方向に沿って配列された複数の流路隔壁を有する流路基板と、
    前記流路隔壁を介して前記ノズル基板に対向して配置された振動板と、
    前記振動板を介して前記加圧液室の各々に対向して配置され、該振動板の面に対して平行な方向への変位を該振動板に与える複数の圧電素子と、
    前記振動板を介して前記流路隔壁に対向して配置された補強膜と、
    を備え、
    前記流路隔壁の前記振動板との接合面における前記配列方向の幅が、前記補強膜の前記振動板側の端面における前記配列方向の幅より小さく、且つ前記流路隔壁は、前記振動板との接合面に連続し且つ該接合面に向かって前記配列方向の幅が小さい第1の部位を有する、液滴吐出ヘッド。
  2. 前記第1の部位は、前記流路隔壁における前記ノズル基板と前記振動板との対向方向の一端部から他端部に渡る部位である請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
  3. 前記第1の部位は、前記流路隔壁における前記ノズル基板と前記振動板との対向方向の前記振動板側の端部に設けられている、請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
  4. 前記流路隔壁は、前記ノズル基板と前記振動板との対向方向の、前記第1の部位より前記ノズル基板側の第2の部位における前記配列方向の幅が、前記補強膜の前記振動板側の端面における前記配列方向の幅より小さい、請求項3に記載の液滴吐出ヘッド。
  5. 前記流路隔壁は、前記ノズル基板と前記振動板との対向方向の、前記第1の部位より前記ノズル基板側の第2の部位における前記配列方向の幅が、前記補強膜の前記振動板側の端面における前記配列方向の幅以上である、請求項3に記載の液滴吐出ヘッド。
  6. 前記振動板の前記圧電素子側に設けられ、前記圧電素子を外部から保護する保護基板を更に備え、
    前記保護基板は、前記補強膜に向かって突出した柱部を備え、該柱部の該補強膜側の端面は該補強膜に接合されてなることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッド。
  7. 前記流路隔壁は、前記圧電素子の設けられた基板を、該圧電素子の設けられた側とは反対側の面からエッチングすることによって形成される、請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッド。
  8. 請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置。
  9. 請求項8に記載の液滴吐出装置を備えた印刷装置。
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