実施の形態1.
本実施の形態の説明に先立ち、先ず本実施の形態の概要について説明する。一般的に、電動機の固定子において、スロットの絶縁材の厚みを薄くすると静電容量が増加し、漏洩電流が増加する。密閉型圧縮機の電動機は、誘電率が大きい冷媒中に設置されるため、電動機の固定子の巻線と絶縁材との間、及び絶縁材と鉄心との間に冷媒が入ることでさらに静電容量が増加する。従って、例えば、巻線の銅量を多くして電動機の効率を上げるために、スロットの絶縁材の厚みを薄くすることができなかった。
本実施の形態は、誘電率が大きい冷媒による密閉型圧縮機の電動機の漏洩電流を抑制し、かつ高効率化を図るものである。
本実施の形態の密閉型圧縮機は、密閉容器内に冷媒を圧縮する機構を構成する圧縮要素、この圧縮要素を駆動し、固定子と回転子とを有する電動機を収納するものであり、固定子は薄肉の電磁鋼板を積層してなる固定子鉄心と、この固定子鉄心に巻回される巻線と、を有する。
巻線と固定子鉄心とを絶縁するスロット絶縁材を介して隣り合うスロット間のティースに、巻線は直巻される。巻線には、冷媒よりも誘電率が小さいワニスを含浸させる。
固定子鉄心とスロット絶縁材との隙間、巻線とスロット絶縁材との隙間、及び巻線と巻線との隙間にワニスを充填することで、スロット絶縁材の厚みを薄くしても漏洩電流を規格値以下にすることができる。
また、スロット絶縁材の厚みを薄くしたことにより、スロットに納められる巻線の断面積が増加し、電動機の効率を向上されることもできる。
図1は実施の形態1を示す図で、固定子1の上面図である。先ず、図1を参照しながら固定子1について説明する。図1に示す固定子1は、固定子鉄心2が9個の磁極歯2a(ティース)を有し、各磁極歯2aに集中巻方式の巻線4が施される。9個の独立した巻線4を接続して三相・六極の巻線を構成する。詳細は後述する。
各磁極歯2aに集中巻方式の巻線4を施す場合、各磁極歯2a夫々に絶縁部材3を装着してから巻線を行う。
各磁極歯2aの巻線4は独立しており、各磁極歯2aの巻線4の夫々が巻始め端末と巻終わり端末とを有する。
従って、9個の独立した巻線4を接続して三相・六極の巻線を構成するには、各磁極歯2aの巻線4を接続する必要がある。各磁極歯2aの巻線4を接続する線を、渡り線(リード側渡り線、中性点側渡り線)で接続する。
各磁極歯2aの絶縁部材3は、夫々が圧接端子を用いる巻線結線部を有し、その巻線結線部で各磁極歯2aの巻線4の巻始め端末と巻終わり端末、渡り線及びリード線(外部電源との接続用)の接続を行うものである。
図1に示すように、固定子1は薄板電磁鋼板(厚さ数百μmの無方向性電磁鋼板)を、所定の形状に打抜き形成されるコアシートを所定枚数積層することで磁極歯2aを有する部材(分割鉄心)を構成する。それぞれの部材(分割鉄心)がコアシートに凹凸が形成されて作られたカシメにより回転自在に連結され(ジョイントラップ方式という)、固定子鉄心2が形成される。
磁極歯2aが外側に向いた状態で、固定子鉄心2の各磁極歯2aに絶縁部材3を介して直接巻線4が巻介される。巻線4が巻介された後、磁極歯2aが内周側に向いた状態の円環状に閉じられる。そして、固定子鉄心2の両端の突き合わせ部が突き合わされ、溶接等により両端が固定される。
ジョイントラップ方式の固定子鉄心2は、磁極歯2aが外周側に向き円環状に開いた状態(逆反り)で、各磁極歯2aに絶縁部材3を介して巻線4を、フライヤーを用いて直接巻介することができる。そのため、巻線4は整列して巻介されるとともに、占積率を高くすることができる。
巻線4は各相3個ずつの合計9個のコイルu1〜u3、v1〜v3、w1〜w3が、回転方向(図1では、反時計方向)にu相、v相、w相の順で繰り返し配置される。
そして固定子鉄心2の一方の軸方向端面には、夫々の絶縁部材3にワイヤの受けの役目を果たすキャビティ51,52が形成されている。絶縁部材3の材料は、例えばLCP(液晶ポリマー)である。
図2は実施の形態1を示す図で、絶縁部材3を示す図((a)は結線側絶縁部材3aの上面図、(b)は結線側絶縁部材3aの正面図、(c)は結線側絶縁部材3aの側面図、(d)は絶縁フィルム34の正面図、(e)は絶縁フィルム34の側面図、(f)は反結線側絶縁部材3bの上面図、(g)は反結線側絶縁部材3bの正面図、(h)は反結線側絶縁部材3bの側面図)である。
図2に示す絶縁部材3は、固定子鉄心2の外側に出る一方の結線側絶縁部材3aを樹脂成型で形成する(図2(a)、図2(b)、図2(c))。結線側絶縁部材3aに、キャビティ51,52が形成されている。また、結線側絶縁部材3aは、胴体部31、回転子側巻線保持部32を備える。
図2(b)に示すように、キャビティ51,52には、それぞれ2本ずつのワイヤ拘束溝51a,51b、ワイヤ拘束溝52a,52bが設けられている。
固定子鉄心2の磁極歯2aで囲まれたスロット(後述する)内の部分については、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPPS(ポリフェニレンサルファイド)等のオリゴマ抽出量が少ない低オリゴマフィルムで構成される絶縁フィルム34(例えば、厚さ0.125mm)を用いている(図2(d)、(e))。オリゴマとは、有限個(一般的には10個から100個)のモノマーが結合した比較的分子量が低い重合体を指す。絶縁フィルム34の20時間のクロロホルム抽出量によるオリゴマ抽出量は、1.5%以下が好ましい。尚、絶縁フィルム34の厚さは、0.2mm以下であればよい。
また、図2に示す絶縁部材3は、固定子鉄心2の外側に出る他方の反結線側絶縁部材3bを樹脂成型で形成する(図2(f)、図2(g)、図2(h))。
結線側絶縁部材3aと絶縁フィルム34とは、所定の方法で接合される。また、反結線側絶縁部材3bと絶縁フィルム34とは、所定の方法で接合される。
絶縁部材3は、結線側絶縁部材3a、絶縁フィルム34及び反結線側絶縁部材3bにより構成される。
磁極歯2aで囲まれたスロット28内における絶縁部材3が占める割合が多いほど、スロット28に巻回出来る電線の量が少なくなる。そのため、スロット28内部において磁極歯2aと電線を絶縁する部材に、PETやPPS等の低オリゴマフィルムで構成される絶縁フィルム34を用いることで、LCP(液晶ポリマー)でスロット28内部の絶縁部を構成する場合に比べて、絶縁部材3の薄肉部を1/10〜1/20程度まで低減でき、電線が巻回出来る面積を大きく取ることが出来る。
固定子鉄心2の軸方向両端部には樹脂(LCP(液晶ポリマー))で成形された結線側絶縁部材3a、反結線側絶縁部材3bが配置され、スロット(後述する)に絶縁フィルム34を固定した状態で、キャビティ51,52と結線側絶縁部材3a、反結線側絶縁部材3bの胴体部31と、結線側絶縁部材3a、反結線側絶縁部材3bの回転子側巻線保持部32との空間の間に巻線4を巻回することになる。
巻回された巻線4には、密閉型圧縮機で使用する冷媒より誘電率(比誘電率)の小さいワニス29を含浸することで、巻線4間はもとより、巻線4と絶縁部材(絶縁フィルム34)の隙間、固定子鉄心2と絶縁フィルム34との隙間がワニス29で充填されている。
ところで、冷媒を使用して冷凍サイクルを作動する空気調和機における地球環境への課題としては、オゾン層保護、地球温暖化対応(CO2等排出抑制)、省エネルギー化、資源の再利用(リサイクル)などがある。
これらの地球環境に関する課題のうち、オゾン層保護については、使用する冷媒をオゾン破壊係数が高いR22(HFC22)から、オゾン破壊係数がゼロであるR410A(HFC32:HFC125=50:50(重量比))に切り替えた空気調和機が既に製品化され、現在の主流になっている。尚、HFC125は、化学式CHF2−CF3(化学名ペンタフルオロエタン)である。
一方、地球温暖化防止対策への要求が益々高くなってきている。空気調和機においては、総等価温暖化影響TEWI(Total Equivalent Warming Impact)と呼ばれる地球温暖化の指標を用いて評価される。このTEWIは、冷媒の大気放出による影響(直接影響)と装置のエネルギー消費(間接影響)、並びに空気調和機を構成する素材を製造する際に消費されるエネルギーを作るために排出されるCO2などの総和で表される。
TEWIの算出には、冷媒の地球温暖化係数GWP(Global Warming Potential)、冷媒量、並びに空気調和機の効率を表す通年エネルギー消費効率APF(Annual Performance Factor)が用いられる。地球温暖化を防止するには、TEWIの値を小さくするべく、小さなGWP値と大きなAPF値とを持つ冷媒を選定する必要がある。
現在用いられているR410AのGWPは2090で、従来用いられていたR22の1810よりも大きな値となっている。そこで、地球温暖化防止のために、GWP値がゼロの冷媒として、炭化水素系のR290、GWPが50以下の低GWP冷媒としてHFO1234yfなどが開発されているが、可燃性や省エネ性の課題があるため、比較的GWPが低い冷媒としてR32(HFC32)が候補として挙げられている。
このR32のGWP値は675であり、R22,R410AのGWP値と比較すると約1/3になり、地球温暖化への影響を軽減することが出来る。
冷媒の比誘電率は、例えば、40℃で以下に示すような値である。
(1)従来のR22(HFC22):5.560。
(2)R410A(HFC32:HFC125=50:50(重量比)):混合冷媒であり、R32(HFC32)の比誘電率は11.268、R125(HFC125)の比誘電率は4.141である。
(3)R32(HFC32):11.268。
このように、従来のR22(HFC22)に比べ、現在主流のR410A(HFC32:HFC125=50:50(重量比))、比較的GWPが低い冷媒として候補に挙げられているR32(HFC32)は、比誘電率が上がる傾向があるので、これらの冷媒よりも比誘電率が小さいワニス29を使用して密閉型圧縮機130の漏洩電流を抑制するのが有効である。例えば、ワニス29には、エポキシアクリル系無溶剤のワニス(比誘電率は4.5)を使用する。
固定子鉄心2と絶縁フィルム34との隙間、巻線4と絶縁フィルム34との隙間、及び巻線4と巻線4との隙間にワニス29を充填することで、絶縁フィルム34を用いてスロット絶縁材の厚みを薄くしても、電動機の漏洩電流を規格値以下(電気用品取締法で1mA以下に規制されている)にすることができる。
また、絶縁フィルム34を用いてスロット絶縁材の厚みを薄くしたことにより、スロット(後述する)に納められる巻線の断面積が増加し、電動機の効率を向上されることもできる。
図3乃至図5は実施の形態1を示す図で、図3は固定子1の巻線4の結線図、図4は固定子1の巻線4の回路図、図5はキャビティ51,52に圧接端子8が挿入されて巻線4と渡り線とが電気的に接続される態様を示す斜視図である。図3、図4に示すように、各相毎に巻始め端末4a同士がリード側渡り線61〜66により接続される。
詳しくは、u相のコイルu1の巻始め端末4aと、コイルu2の巻始め端末4aとがリード側渡り線61により接続され、コイルu2の巻始め端末4aと、コイルu3の巻始め端末4aとがリード側渡り線62により接続される。
また、v相のコイルv1の巻始め端末4aと、コイルv2の巻始め端末4aとがリード側渡り線63により接続され、コイルv2の巻始め端末4aと、コイルv3の巻始め端末4aとがリード側渡り線64により接続される。
さらに、w相のコイルw1の巻始め端末4aと、コイルw2の巻始め端末4aとがリード側渡り線65により接続され、コイルw2の巻始め端末4aと、コイルw3の巻始め端末4aとがリード側渡り線66により接続される。
巻終わり端末4bは、隣り合うu相、v相、w相のコイル同士が中性点側渡り線71〜76により接続されている。
詳しくは、コイルu1の巻終わり端末4bと、コイルv1の巻終わり端末4bとが中性点側渡り線71で接続され、コイルv1の巻終わり端末4bと、コイルw1の巻終わり端末4bとが中性点側渡り線72で接続される。
また、コイルu2の巻終わり端末4bと、コイルv2の巻終わり端末4bとが中性点側渡り線73で接続され、コイルv2の巻終わり端末4bと、コイルw2の巻終わり端末4bとが中性点側渡り線74で接続される。
さらに、コイルu3の巻終わり端末4bと、コイルv3の巻終わり端末4bとが中性点側渡り線75で接続され、コイルv3の巻終わり端末4bと、コイルw3の巻終わり端末4bとが中性点側渡り線76で接続される。
固定子1の巻線4は、以上のように結線されるので、コイルu1,v1,w1で一つのY結線を形成し、コイルu2,v2,w2で他の一つのY結線を形成し、コイルu3,v3,w3でさらに他の一つのY結線を形成する。そして、それらの三つのY結線が並列に接続される。
尚、コイルu1,u2,u3を直列に接続し、またコイルv1,v2,v3を直列に接続し、さらにコイルw1,w2w3を直列に接続したもので一つのY結線を形成する等他の結線方法でもよい。
再び図1に戻る。各コイルu1〜w3の絶縁部材3において、巻線4から引き出される巻始め端末4aが、キャビティ51のワイヤ拘束溝51aに装着され、巻終わり端末4bが、キャビティ52のワイヤ拘束溝52bに装着される(図5も参照)。
また、リード側渡り線61がコイルu1〜u2、リード側渡り線62がコイルu2〜u3、リード側渡り線63がコイルv1〜v2、リード側渡り線64がコイルv2〜v3、リード側渡り線65がコイルw1〜w2、リード側渡り線66がコイルw2〜w3を結ぶようにキャビティ51のワイヤ拘束溝51bに装着される。
このとき、コイルu2,v2,w2については、ワイヤ拘束溝51bに2本のリード側渡り線が装着されていることになる。
即ち、コイルu2には、ワイヤ拘束溝51bにリード側渡り線61及びリード側渡り線62が装着される。
また、コイルv2には、ワイヤ拘束溝51bにリード側渡り線63及びリード側渡り線64が装着される。
さらに、コイルw2には、ワイヤ拘束溝51bにリード側渡り線65及びリード側渡り線66が装着される。
さらに、中性点側渡り線71がコイルu1〜v1、中性点側渡り線72がコイルv1〜w1、中性点側渡り線73がコイルu2〜v2、中性点側渡り線74がコイルv2〜w2、中性点側渡り線75がコイルu3〜v3、中性点側渡り線76がv3〜w3を結ぶようにキャビティ52のワイヤ拘束溝52aに装着される。
このとき、コイルv1,v2,v3については、ワイヤ拘束溝52aに2本の中性点側渡り線が装着されていることになる。
即ち、コイルv1には、ワイヤ拘束溝52aに中性点側渡り線71及び中性点側渡り線72が装着される。
また、コイルv2には、ワイヤ拘束溝52aに中性点側渡り線73及び中性点側渡り線74が装着される。
さらに、コイルv3には、ワイヤ拘束溝52aに中性点側渡り線75及び中性点側渡り線76が装着される。
コイルv2に関しては、以下に示す計6本のワイヤが集まることになる。
(1)コイルv2の巻始め端末4a;
(2)コイルv2の巻終わり端末4b;
(3)中性点側渡り線73;
(4)中性点側渡り線74;
(5)リード側渡り線63;
(6)リード側渡り線64。
参考までに他の箇所についても説明する。リード線9は、u相リード線9a、v相リード線9b及びw相リード線9cを備える。
u1に関しては、以下に示す計5本のワイヤが集まることになる。
(1)u相リード線9a;
(2)コイルu1の巻始め端末4a;
(3)コイルu1の巻終わり端末4b;
(4)リード側渡り線61;
(5)中性点側渡り線71。
u2に関しては、以下に示す計5本のワイヤが集まることになる。
(1)コイルu2の巻始め端末4a;
(2)コイルu2の巻終わり端末4b;
(3)リード側渡り線61;
(4)リード側渡り線62;
(5)中性点側渡り線73。
u3に関しては、以下に示す計4本のワイヤが集まることになる。
(1)コイルu3の巻始め端末4a;
(2)コイルu3の巻終わり端末4b;
(3)リード側渡り線62;
(4)中性点側渡り線75。
v1に関しては、以下に示す計6本のワイヤが集まることになる。
(1)v相リード線9b;
(2)コイルv1の巻始め端末4a;
(3)コイルv1の巻終わり端末4b;
(4)リード側渡り線63;
(5)中性点側渡り線71;
(6)中性点側渡り線72。
v3に関しては、以下に示す計6本のワイヤが集まることになる。
(1)コイルv3の巻始め端末4a;
(2)コイルv3の巻終わり端末4b;
(4)リード側渡り線64;
(5)中性点側渡り線75;
(6)中性点側渡り線76。
w1に関しては、以下に示す計5本のワイヤが集まることになる。
(1)w相リード線9c;
(2)コイルw1の巻始め端末4a;
(3)コイルw1の巻終わり端末4b;
(4)リード側渡り線65;
(5)中性点側渡り線72。
w2に関しては、以下に示す計5本のワイヤが集まることになる。
(1)コイルw2の巻始め端末4a;
(2)コイルw2の巻終わり端末4b;
(3)リード側渡り線65;
(4)リード側渡り線66;
(5)中性点側渡り線74。
w3に関しては、以下に示す計4本のワイヤが集まることになる。
(1)コイルw3の巻始め端末4a;
(2)コイルw3の巻終わり端末4b;
(3)リード側渡り線66;
(4)中性点側渡り線76。
そして、図5に示すように、キャビティ51,52に導通用溝8a,8bを有する圧接端子8が夫々挿入され、巻線4と渡り線或いはリード線9とが電気的に接続される。但し、図5ではリード線9については図示していない。
図5に示すように、絶縁部材3のキャビティ51上に、巻線4の巻始め端末4aとリード側渡り線61〜66を配置し、この上からこれらワイヤ径よりも小さい幅の導通用溝8a,8bを一端に有した圧接端子8をキャビティ51内に押し込む。
圧接端子8の材料は、例えば銅又はリン青銅にニッケル等のめっきを施したものである。
巻線4の巻始め端末4aとリード側渡り線61〜66は、キャビティ51に設けられたワイヤ拘束溝51a、51bにより拘束されるから、巻始め端末4aとリード側渡り線61〜66の絶縁層は圧接端子8の導通用溝8a,8bにより除去される。
これにより巻線4及び圧接端子8並びにリード側渡り線61〜66及び圧接端子8とが導通するため、巻線4とリード側渡り線61〜66とが接続状態になる。
同様に、絶縁部材3のキャビティ52上に、巻線4の巻終わり端末4bと中性点側渡り線71〜76を配置し、別の圧接端子8をキャビティ52に挿入することにより、巻線4と中性点側渡り線71〜76とが接続状態になる。
上述したように、
(1)巻線の巻始め端末4aとリード側渡り線61〜66の中の1本とリード線9の中の1本;
(2)巻線の巻始め端末4aとリード側渡り線61〜66の中の1本又は2本;
(3)巻終わり端末4bと中性点側渡り線71〜76の中の1本又は2本。
の結線を圧接端子8を用いて溶接することなく結線出来るため、巻線4にアルムニウム線を用いても容易に結線出来る。
上述のように、絶縁部材3のキャビティ51,52に、巻線4、渡り線(リード側渡り線61〜66、中性点側渡り線71〜76)又はリード線9(u相リード線9a、v相リード線9b及びw相リード線9c)の所定の組み合わせのものを配置し、圧接端子8をキャビティ51,52に挿入することにより、それらを接続状態にする部分を、「巻線結線部」と定義する。
ここでは、固定子鉄心2が回転自在に連結される、ジョイントラップ方式の固定子1について述べたが、連結機能を有しない分割型の鉄心の場合、もしくは全ての磁極歯が分割されること無く打ち抜かれた一体型の鉄心の場合でも同様の効果が得られる。
また、ここでは磁極歯2aに直接巻回する集中巻方式について実施例を述べたが、数個の磁極歯2aを跨って巻回される分布巻方式についても同様の効果が得られる。
図6、図7は実施の形態1を示す図で、図6は密閉型圧縮機130の縦断面図、図7は図6のA−A断面図である。次に密閉型圧縮機130について説明する。先ず、図6より密閉型圧縮機130の全体構成を説明する。図6に示す密閉型圧縮機130の一例は、1シリンダ型ロータリ圧縮機である。
密閉型圧縮機130は、上部容器101aと下部容器101bとで構成される密閉容器101内に、冷媒を圧縮する圧縮要素102と、この圧縮要素102を駆動する電動要素103とを収納している。また、密閉容器101内の底部に、圧縮要素102の摺動部を潤滑するための冷凍機油(図示せず)が貯留されている。
圧縮要素102は、シリンダ105、上軸受106、下軸受107、回転軸104、ローリングピストン109、吐出マフラ108、ベーン(図示せず)等で構成される。
内部に圧縮室が形成されるシリンダ105は、外周が平面視略円形で、内部に平面視略円形の空間であるシリンダ室を備える。シリンダ室は、軸方向両端が開口している。シリンダ105は、側面視で所定の軸方向の高さを持つ。
シリンダ105の略円形の空間であるシリンダ室に連通し、半径方向に延びる平行なベーン溝(図示せず)が軸方向に貫通して設けられる。
また、ベーン溝の背面(外側)に、ベーン溝に連通する平面視略円形の空間である背圧室(図示せず)が設けられる。
シリンダ105には、冷凍サイクルからの吸入ガスが通る吸入連結管128が、シリンダ105の外周面からシリンダ室に連結している。
シリンダ105には、略円形の空間であるシリンダ室を形成する円の縁部付近(電動要素103側の端面)を切り欠いた吐出ポート(図示せず)が設けられる。
ローリングピストン109が、シリンダ室内を偏心回転する。ローリングピストン109はリング状で、ローリングピストン109の内周が回転軸104の偏心軸部104cに摺動自在に嵌合する。
ベーンがシリンダ105のベーン溝内に収納され、背圧室に設けられるベーンスプリング(図示せず)でベーンが常にローリングピストン109に押し付けられている。ロータリ圧縮機は、密閉容器101内が高圧であるから、運転を開始するとベーンの背面(背圧室側)に密閉容器101内の高圧とシリンダ室の圧力との差圧による力が作用するので、ベーンスプリングは主にロータリ圧縮機の起動時(密閉容器101内とシリンダ室の圧力に差がない状態)に、ベーンをローリングピストン109に押し付ける目的で使用される。
ベーンの形状は、平たい(周方向の厚さが、径方向及び軸方向の長さよりも小さい)略直方体である。
上軸受106は、回転軸104の主軸部104a(偏心軸部104cより上の部分)に摺動自在に嵌合するとともに、シリンダ105のシリンダ室(ベーン溝も含む)の一方の端面(電動要素103側)を閉塞する。
上軸受106に、吐出弁(図示せず)が取り付けられる。上軸受106は、側面視略逆T字状である。
下軸受107が、回転軸104の副軸部104b(偏心軸部104cより下の部分)に摺動自在に嵌合するとともに、シリンダ105のシリンダ室(ベーン溝も含む)の他方の端面(冷凍機油側)を閉塞する。下軸受107は、側面視略T字状である。
上軸受106には、その外側(電動要素103側)に吐出マフラ108が取り付けられる。上軸受106の吐出弁から吐出される高温・高圧の吐出ガスは、一端吐出マフラ108に入り、その後吐出マフラ108の吐出穴108aから密閉容器101内に放出される。
密閉容器101の横に、冷凍サイクルからの低圧の冷媒ガスを吸入し、液冷媒が戻る場合に液冷媒が直接シリンダ105のシリンダ室に吸入されるのを抑制する吸入マフラ127が設けられる。吸入マフラ127は、シリンダ105の吸入ポートに吸入連結管128を介して接続する。吸入マフラ127は、溶接等により密閉容器101の側面に固定される。
圧縮要素102で圧縮された高温・高圧のガス冷媒は、吐出マフラ108の吐出穴108aから電動要素103を通過して、吐出管129から外部の冷媒回路(図示せず)へ吐出される。
次に電動要素103について説明するが、図6以外に図7も参照しながら説明する。電動要素103は、固定子1と回転子5とを備える。回転子5は永久磁石が鉄心内部に配置され、永久磁石にNd−Fe−B系の希土類磁石を用いた、ブラシレスDCモータである。
固定子1のリード線9は、密閉容器101の外部から電力を供給する為に上部容器101aに設けられたガラス端子119に接続される。
また、固定子鉄心2は外径が下部容器101bの内径より大きく、下部容器101bに焼嵌めされて固定される。
回転子5は、固定子1と同様に薄板電磁鋼板を打抜き形成される回転子コアシートを積層して回転子鉄心21が構成される。
回転子鉄心21は、回転子鉄心21の外周縁部に沿って形成される磁石挿入孔22(6個)と、風穴23(9個)を有する。磁石挿入孔22には、夫々永久磁石24(6個)が挿入される。
回転子鉄心21の軸方向両端部に、上バランスウェイト25a及び下バランスウェイト25bが夫々配置さる。
上バランスウェイト25aは、回転子鉄心21の軸方向上端部(ガラス端子119側)に配置される。
下バランスウェイト25bは、回転子鉄心21の軸方向下端部(圧縮要素102側)に配置される。
上バランスウェイト25a及び下バランスウェイト25bは、永久磁石24の飛散を防止する役割を兼ねている。
上バランスウェイト25a、下バランスウェイト25b及び回転子鉄心21は、リベット26(3本)で固定される。リベット26は、回転子鉄心21に設けられるリベット孔27に挿入される。
回転子鉄心21に形成された風穴23は、圧縮要素102から吐出された冷媒ガスを密閉容器101の上部へ導くと共に、冷媒ガスと共に密閉容器101の上部に導かれた冷凍機油を密閉容器101の下部に落とすための役割を持つ。
回転子鉄心21の軸方向上端部(ガラス端子119側)に、略円板状の油分離器40が設けられる。油分離器40は、遠心力により回転子鉄心21の風穴23を通過した冷凍機油を含む冷媒ガスから冷凍機油を分離する。
回転子鉄心21の内径は回転軸104の主軸部104aの外径より小さく、回転子鉄心21は回転軸104の主軸部104aに焼嵌め固定される。
ここでは密閉型圧縮機130の一例として、ロータリ型圧縮機を用いて説明したが、他のスクロール型、レシプロ型等電動要素103が密閉容器101内に配置されるものであればその構造は問わない。
ここで、密閉型圧縮機130の漏洩電流は、主に固定子1のスロット28内の巻線4から固定子鉄心2への経路と、巻線4のコイルエンド(巻線4の固定子鉄心2の軸方向両端部から外側に突出している部分)から冷媒や冷凍機油を通じて固定子鉄心や密閉容器に漏れていく経路とがある。巻線4と固定子鉄心2間の静電容量をCとすると、その間のインピーダンスは1/jωC(ωは圧縮機運転電圧の角速度)で表されるので、静電容量Cが大きいほど漏洩電流は大きくなる。
巻線4とスロット28内の絶縁フィルム34との距離をLr、絶縁フィルム34の厚さをLi、スロット28内部の表面積をS、冷媒の誘電率をεr、絶縁フィルム34の誘電率をεiとすると、固定子1のスロット28内の巻線4と固定子鉄心2間の静電容量Cは、C∝(εr・S/Lr+εi・S/Li)の関係がある。
密閉型圧縮機130の内部には、運転時は冷媒が気体の状態で存在するが、運転を停止していると、外気の状態によっては密閉容器101内に液体の冷媒が溜まる寝込みと呼ばれる状態になる場合がある。この状態で起動すると、起動時の漏洩電流が大幅に増加する。これは、液冷媒が固定子1のスロット28内に入り込み、巻線4と絶縁フィルム34の間の誘電率が増加する為、巻線4と固定子鉄心2間の静電容量Cが増加するために起こる。
本実施の形態では、上記現象により液冷媒が電動要素103(電動機)の固定子1に達しても、スロット28内の空間にワニス29を充填している為、巻線4と固定子鉄心2間の静電容量Cの増加を抑制する事が出来る。
従来の密閉型圧縮機の電動機のワニスは、運転時に巻線に流れる電流により異相間の巻線が反発し、コイルエンドが変形する事を防止する為に施される為、コイルエンドが小さく、コイルエンドで巻線が他相と重なる事の無い集中巻ではワニスを施さない。また、スロット内の絶縁材の厚さを十分に確保している場合は、本発明を適用しなくても寝込み時の漏洩電流の悪化も許容範囲内に収まる。
一方、電動機の効率の改善には、スロット内の絶縁材の厚さを薄くする事で、スロット内に巻線する電線の量を増加させる事が有効である。スロット内の絶縁材を薄くすると、前述の静電容量の式からも分かる通り、静電容量が増加し漏洩電流は増加する。
本実施の形態では、スロット28内の空間にワニス29を充填しているので、漏洩電流の上昇を招く事なくスロット28内の絶縁フィルム34を薄くすることが可能であり、従来に比べ電動機の高効率化が図れる。
次に、ブラシレスDCモータを使用する密閉型圧縮機130の駆動回路300について説明する。図8は実施の形態1を示す図で、密閉型圧縮機130の駆動回路300の回路図である。外部に設けられた商用交流電源302から交流の電力が駆動回路300に供給される。商用交流電源302から供給される交流電圧は、整流回路303で直流電圧に変換される。整流回路303で変換された直流電圧は、インバータ主回路304で可変電圧及び可変周波数の交流電圧に変換されて密閉型圧縮機130に印加される。密閉型圧縮機130はインバータ主回路304から供給される可変周波数の交流電力により駆動される。尚、整流回路303には商用交流電源302の電圧を整流するダイオードブリッジ、商用交流電源302から印加される電圧を昇圧するチョッパー回路や整流した直流電圧を平滑にする平滑コンデンサなどを有する。
インバータ主回路304は3相ブリッジのインバータ回路であり、インバータ主回路304のスイッチング部はインバータ主素子となる6つのIGBT6a〜6f(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)と6つのフライホイルダイオード(FRD)としてシリコンカーバイド(SiC)を用いたSiC−SBD7a〜7f(ショットキーバリアダイオード)を備えている。FRDであるSiC−SBD7a〜7fはIGBT6a〜6fが電流をONからOFFする時に生じる逆起電力を抑制する逆電流防止手段である。
尚、ここでは、IGBT6a〜6fとSiC−SBD7a〜7fは同一リードフレーム上に各チップが実装されエポキシ樹脂でモールドされてパッケージされたICモジュールとする。IGBT6a〜6fはシリコンを用いたIGBT(Si−IGBT)に代えてSiC、GaN(窒化ガリウム)を用いたIGBTとしてもよく、またIGBTに代えてSiもしくはSiC、GaNを用いたMOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)などの他のスイッチング素子を使用してもよい。
整流回路303とインバータ主回路304の間には直列に接続された2つの分圧抵抗308a,308bが設けられており、この分圧抵抗308a,308bによる分圧回路にて高圧直流電圧を低圧化した電気信号をサンプリングし保持する直流電圧検出部308が設けられている。
固定子1のU相巻線及びW相巻線に流れる電流を検出する電流検出素子330a,330cが設けられている。電流検出素子330a,330cは直流電流トランス(DCCT)や交流電流トランス(ACCT)などが用いられ、U相巻線、W相巻線に流れる電流の瞬時値を検出する。
回転子位置検出部310は、電流検出素子330a,330cの出力信号から回転子5の位置を演算し、回転子5の位置情報を出力電圧演算部309に出力する。なおここでは、固定子1のU相巻線及びW相巻線の二相分の電流を検出したが、V相巻線の電流も加えた三相分の電流を検出しても良い。
尚、回転子位置検出部310は、密閉型圧縮機130の端子電圧を検出して、回転子5の位置を検出するようにしてもよい。
回転子位置検出部310が検出する回転子5の位置情報は出力電圧演算部309に出力される。この出力電圧演算部309は、駆動回路300の外部から与えられる目標回転数Nの指令もしくは装置の運転条件の情報と回転子5の位置情報に基づいて、密閉型圧縮機130に加えられるべき最適なインバータ主回路304の出力電圧を演算する。出力電圧演算部309はその演算した出力電圧をPWM信号生成部331に出力する。PWMは、Pulse Width Modulationの略語である。
PWM信号生成部331は、出力電圧演算部309から与えられた出力電圧となるようなPWM信号をインバータ主回路304のそれぞれのIGBT6a〜6fを駆動する主素子駆動回路304aに出力し、インバータ主回路304のIGBT6a〜6fはそれぞれ主素子駆動回路304aによってスイッチングされる。
ここでワイドバンドギャップ半導体について説明する。ワイドバンドギャップ半導体はSiよりもバンドギャップが大きい半導体の総称であって、SiC−SBD7a〜7fに使用しているSiCはワイドバンドギャップ半導体の一つであり、その他には窒化ガリウム(GaN)、ダイヤモンドなどがある。さらにワイドバンドギャップ半導体、特にSiCはSiに比べて耐熱温度や絶縁破壊強度や熱伝導率が大きい。尚、ここでは、SiCをインバータ回路のFRDに用いる構成としているが、SiCに代えてその他のワイドバンドギャップ半導体を用いてもよい。
SiCを用いたスイッチング素子は、簡単な構成で低損失のスイッチング素子が実現され、さらに高温での動作も可能である。そのため、高温となる電動機(もしくは電動機を含む機器)近くで使用することも可能となり、さらに冷却ファンなども不要、もしくは風量の少ないものや、放熱フィン(ヒートシンクなど)の小形化・軽量化も可能となる。
このようなSiC(ワイドバンドギャップ半導体)によって形成されたスイッチング素子やダイオード素子は、耐電圧性が高く、許容電流密度も高いため、スイッチング素子やダイオード素子の小型化が可能であり、これら小型化されたスイッチング素子やダイオード素子を用いることにより、これらの素子を組み込んだ半導体モジュールの小型化が可能となる。
また耐熱性も高いため、ヒートシンクの放熱フィンの小型化や、水冷部の空冷化が可能であるので、半導体モジュールの一層の小型化が可能になる。
更に電力損失が低いため、スイッチング素子やダイオード素子の高効率化が可能であり、延いては半導体モジュールの高効率化が可能になるものである。
スイッチング周波数を高周波にすることにより、インバータ主回路304で生成される交流電圧は、より正弦波に近い、高調波成分の少ない交流電圧を出力することができる。
密閉型圧縮機130に印加される交流電力の高調波成分は、電動要素103のトルクリプルとなり、振動及び騒音が増加するだけでなく、高調波成分の電流によるモータ損失(銅損及び鉄損)も増加するため、効率が低くなる課題があった。
本実施の形態では、インバータ主回路304にSiCを用いることでスイッチング周波数を高速にすることができ、振動及び騒音が低く、かつ高効率な密閉型圧縮機130を得ることができる。
また、密閉型圧縮機130を駆動する駆動回路300のスイッチング素子やダイオードに、損失の少ないSiCからなる素子を用いた場合、キャリア周波数を高く設定してもコンバータやインバータの効率が低下しないという特徴がある。キャリア周波数を現状の4kHzから10kHz以上に上げると、キャリア音が起因する圧縮機騒音の周波数も同様に高くなり、空気調和機や冷蔵庫などのアプリケーションで遮音材による遮音が容易になるので、高効率で低騒音なアプリケーションの提供が可能となる。また16kHz以上の可聴周波数以上に上げると、アプリケーションの遮音材も不要となり、低コストで高効率、低騒音の密閉型圧縮機130の提供が可能となる。
しかしながら前述のインピーダンスの式から分かる通り、電圧の角速度が大きければインピーダンスが低下し、漏洩電流が増加する。本実施の形態は、上記構成においても漏洩電流の抑制が可能となり、高効率、低騒音の密閉型圧縮機130の提供が可能となる。
以上、密閉型圧縮機130について説明したが、次にその密閉型圧縮機130を用いた冷凍サイクル装置200について説明する。
図9は実施の形態1を示す図で、冷凍サイクル装置200の冷媒回路の概略構成図である。図9において、冷凍サイクル装置200は、密閉型圧縮機130、密閉型圧縮機130からの冷媒の流れを切換える四方切換弁131、室外側熱交換器132、電動膨張等の減圧装置133、室内側熱交換器134、密閉型圧縮機130の吸入側配管に接続され、冷媒を貯留するアキュムレータ135を配管により順次接続して構成される。
図9において、暖房運転時は、冷媒は実線矢印の方向に流れる。また、冷房運転時は、冷媒は破線矢印の方向に流れる。
次に、以上のように構成された冷凍サイクル装置200の動作について暖房運転、冷房運転の順で説明する。
暖房運転が開始されると、四方切換弁131は図9の実線側に接続されるので、密閉型圧縮機130で圧縮された高温高圧の冷媒は室内側熱交換器134に流れ、室内側熱交換器134で凝縮して液化した後、減圧装置133で絞られ、低温低圧の二相冷媒となり、室外側熱交換器132へ流れ、室外側熱交換器132で蒸発してガス化し、その後四方切換弁131、アキュムレータ135を通って再び密閉型圧縮機130に戻る。即ち、図9の実線矢印に示すように冷媒は循環する。
次に、冷房運転について説明する。冷房運転が開始されると、四方切換弁131は図9の点線側に接続されるので、密閉型圧縮機130で圧縮された高温高圧の冷媒は室外側熱交換器132に流れ、室外側熱交換器132で凝縮して液化した後、減圧装置133で絞られ、低温低圧の二相冷媒となり、室内側熱交換器134へ流れ、蒸発してガス化し、その後四方切換弁131、アキュムレータ135を通って再び密閉型圧縮機130に戻る。即ち、暖房運転から冷房運転に変わると、室内側熱交換器134が凝縮器から蒸発器に変わり、室外側熱交換器132が蒸発器から凝縮器に変わる。
このような冷凍サイクル装置200において、漏洩電流を抑制することができるとともに、高効率な密閉型圧縮機130を使用することで、冷凍サイクル装置200の安全性、省エネ化が図れる。