以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
最初に燃料電池の基本構成について概説する。図1は、本実施形態に係る燃料電池システムの構成を示すブロック図である。図1に示されるように、燃料電池システム1は、脱硫部2と、水気化部3と、水素発生部4と、セルスタック5と、オフガス燃焼部6と、水素含有燃料供給部7と、水供給部8と、酸化剤供給部9と、パワーコンディショナー10と、制御部11と、を備えている。燃料電池システム1は、水素含有燃料及び酸化剤を用いて、セルスタック5にて発電を行う。燃料電池システム1におけるセルスタック5の種類は特に限定されず、例えば、固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)、固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)、リン酸形燃料電池(PAFC:Phosphoric Acid Fuel Cell)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC:Molten Carbonate Fuel Cell)、及び、その他の種類を採用することができる。なお、セルスタック5の種類、水素含有燃料の種類、及び改質方式等に応じて、図1に示す構成要素を適宜省略してもよい。
水素含有燃料として、例えば、炭化水素系燃料が用いられる。炭化水素系燃料として、分子中に炭素と水素とを含む化合物(酸素等、他の元素を含んでいてもよい)若しくはそれらの混合物が用いられる。炭化水素系燃料として、例えば、炭化水素類、アルコール類、エーテル類、バイオ燃料が挙げられ、これらの炭化水素系燃料は従来の石油・石炭等の化石燃料由来のもの、合成ガス等の合成系燃料由来のもの、バイオマス由来のものを適宜用いることができる。具体的には、炭化水素類として、メタン、エタン、プロパン、ブタン、天然ガス、LPG(液化石油ガス)、都市ガス、タウンガス、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油が挙げられる。アルコール類として、メタノール、エタノールが挙げられる。エーテル類として、ジメチルエーテルが挙げられる。バイオ燃料として、バイオガス、バイオエタノール、バイオディーゼル、バイオジェットが挙げられる。
酸化剤として、例えば、空気、純酸素ガス(通常の除去手法で除去が困難な不純物を含んでもよい)、酸素富化空気が用いられる。
脱硫部2は、水素発生部4に供給される水素含有燃料の脱硫を行う。脱硫部2は、水素含有燃料に含有される硫黄化合物を除去するための脱硫触媒を有している。脱硫部2の脱硫方式として、例えば、硫黄化合物を吸着して除去する吸着脱硫方式や、硫黄化合物を水素と反応させて除去する水素化脱硫方式が採用される。脱硫部2は、脱硫した水素含有燃料を水素発生部4へ供給する。
水気化部3は、水を加熱し気化させることによって、水素発生部4に供給される水蒸気を生成する。水気化部3における水の加熱は、例えば、水素発生部4の熱、オフガス燃焼部6の熱、あるいは排ガスの熱を回収する等、燃料電池システム1内で発生した熱を用いてもよい。また、別途ヒータ、バーナ等の他熱源を用いて水を加熱してもよい。なお、図1では、一例としてオフガス燃焼部6から水素発生部4へ供給される熱のみ記載されているが、これに限定されない。水気化部3は、生成した水蒸気を水素発生部4へ供給する。
水素発生部4は、脱硫部2からの水素含有燃料を用いて水素リッチガス(水素含有ガス)を発生させる。水素発生部4は、水素含有燃料を改質触媒によって改質する改質器を有している。水素発生部4での改質方式は、特に限定されず、例えば、水蒸気改質、部分酸化改質、自己熱改質、その他の改質方式を採用できる。なお、水素発生部4は、セルスタック5に要求される水素リッチガスの性状によって、改質触媒により改質する改質器の他に性状を調整するための構成を有する場合もある。例えば、セルスタック5のタイプが固体高分子形燃料電池(PEFC)やリン酸形燃料電池(PAFC)であった場合、水素発生部4は、水素リッチガス中の一酸化炭素を除去するための構成(例えば、シフト反応部、選択酸化反応部)を有する。水素発生部4は、水素リッチガスをセルスタック5のアノード12へ供給する。
セルスタック5は、水素発生部4からの水素リッチガス及び酸化剤供給部9からの酸化剤を用いて発電を行う。セルスタック5は、水素リッチガスが供給されるアノード12と、酸化剤が供給されるカソード13と、アノード12とカソード13との間に配置される電解質14と、を備えている。セルスタック5は、パワーコンディショナー10を介して、電力を外部へ供給する。セルスタック5は、発電に用いられなかった水素リッチガス及び酸化剤をオフガスとして、オフガス燃焼部6へ供給する。なお、水素発生部4が備えている燃焼部(例えば、改質器を加熱する燃焼器など)をオフガス燃焼部6と共用してもよい。
オフガス燃焼部6は、セルスタック5から供給されるオフガスを燃焼させる。オフガス燃焼部6によって発生する熱は、水素発生部4へ供給され、水素発生部4での水素リッチガスの発生に用いられる。
水素含有燃料供給部7は、脱硫部2へ水素含有燃料を供給する。水供給部8は、水気化部3へ水を供給する。酸化剤供給部9は、セルスタック5のカソード13へ酸化剤を供給する。水素含有燃料供給部7、水供給部8、及び酸化剤供給部9は、例えばポンプによって構成されており、制御部11からの制御信号に基づいて駆動する。
パワーコンディショナー10は、セルスタック5からの電力を、外部での電力使用状態に合わせて調整する。パワーコンディショナー10は、例えば、電圧を変換する処理や、直流電力を交流電力へ変換する処理を行う。
制御部11は、燃料電池システム1全体の制御処理を行う。制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び入出力インターフェイスを含んで構成されたデバイスによって構成される。制御部11は、水素含有燃料供給部7、水供給部8、酸化剤供給部9、パワーコンディショナー10、その他、図示されないセンサや補機と電気的に接続されている。制御部11は、燃料電池システム1内で発生する各種信号を取得すると共に、燃料電池システム1内の各機器へ制御信号を出力する。
ここで、燃料電池システム1は、セルスタック5が発生する熱を用いて水を温水に変え、その温水を貯湯槽に貯えて利用する熱回収系を備えている。すなわち、燃料電池システム1は、いわゆるコジェネレーションシステムを備えている。以下、燃料電池システム1における熱回収系を概説する。図2は、本実施形態に係る燃料電池システムの構成を示すブロック図である。図2では、熱回収系に関係のない部分は一部省略している。図2に示されるように、燃料電池システム1の熱回収系は、セルスタック5の排熱を回収するものであって、貯湯槽81、熱交換器80、脱硫系熱交換部82及び循環流路83を備えている。貯湯槽81、熱交換器80及び脱硫系熱交換部82は、循環流路83によって順に接続されている。また、脱硫部2及び脱硫系熱交換部82を備えて脱硫装置が構成されている。
貯湯槽81は、水又は温水を貯留するユニットである。なお、「水」とは、その温度に関係なく液体状態である水のことであって、温水とは「水」に熱を加えたものである。貯湯槽81の貯留水は、熱媒体として熱交換器80へ供給される。なお、熱交換器80への供給前にラジエータ等によって熱媒体が冷やされてもよい。
熱交換器80は、循環流路83を介して貯湯槽81に接続されるとともに、セルスタック5の出力側に接続されている。熱交換器80は、セルスタック5のオフガス(排ガス)と熱媒体とを熱交換させる。すなわち、熱交換器80によってオフガスを加熱源として熱媒体が加熱される。熱媒体は、60℃〜80℃程度に加熱される。熱交換後の熱媒体は、循環流路83を巡って脱硫部2の脱硫系熱交換部82へ供給される。
脱硫系熱交換部82は、循環流路83を介して熱交換器80に接続されるとともに、脱硫部2と熱的に接触されている。脱硫系熱交換部82は、熱媒体と脱硫部2とを熱交換させる。すなわち、脱硫系熱交換部82によって熱媒体を加熱源として脱硫部2が加熱される。熱交換後の熱媒体は、循環流路83を巡って貯湯槽81へ戻される。
以上、燃料電池システム1の熱回収系では、貯湯槽81から低温の熱媒体が熱交換器80へ供給されて加熱され、加熱された熱媒体が脱硫装置の脱硫系熱交換部82へ供給されて脱硫部2を加熱する。
ところで、燃料電池システム1の改質ガスは、水素発生部4で生成されるものであり、600℃〜700℃程度の温度を有しているとされている。改質触媒に供給される改質水もまたスーパーヒートされ、水蒸気の状態であるため、かなり高温となっている。さらに、通常の燃焼触媒の触媒燃焼温度は600℃程度である。このため、改質ガス、改質水又は燃焼触媒は、極めて高温であるため、比較的低温に保温すべき脱硫部2を保温しようとしてもエネルギーロスが大きいこととなる。このような低温の脱硫部2の一例としては、ゼオライト系の吸着脱硫部(保温温度60℃〜80℃)がある。
これに対して、本実施形態に係る燃料電池システム1又は脱硫装置によれば、熱媒体が、セルスタック5の排熱によって加熱されるため、改質ガスの温度、改質触媒に供給されて受熱された水の温度、及び燃焼触媒の反応温度に比べて、低い温度となる。このため、比較的低い温度で保温されるべき脱硫部2をエネルギー効率良く保温することができる。また、脱硫器2を加熱するためのヒータ等が不要となるので、コストも優れている。
また、本実施形態に係る燃料電池システム1又は脱硫装置によれば、既存のコジェネレーションシステムの循環流路83を利用して、簡易な構成で脱硫部2を保温することができる。
なお、上述した実施形態は本発明に係る燃料電池システム及び脱硫装置の一例を示すものである。本発明に係る燃料電池システム及び脱硫装置は、実施形態に係る燃料電池システム1及び脱硫装置に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、実施形態に係る燃料電池システム1及び脱硫装置を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
例えば、上述した実施形態では、セルスタック5のオフガスから排熱を回収する例を説明したが、セルスタック5から発生する熱を直接回収してもよい。