以下で説明の実施の形態は、上述の発明が解決しようとする課題の欄や発明の効果の欄に記載した内容に止まること無くその他にもいろいろな課題を解決し、効果を呈している。以下の実施の形態が解決する課題の主なものを、上述の欄に記載した内容をも含め、次に列挙する。
〔特性改善〕
振動状態に応じて減衰力特性(ピストン速度に対する減衰力)を変更する際に、より滑らかに変更する等の特性設定が求められている。これは、小さな減衰力が発生する特性と、大きな減衰力が発生する特性の切り替わりが唐突に起こると、実際に発生する減衰力も唐突に切り替わるので、車両の乗り心地が悪化し、さらには減衰力の切り替わりが車両の操舵中に発生すると、車両の挙動が不安定となり、運転者が操舵に対して違和感を招く恐れがあるためである。そのため、先に示した特許文献1に示すようにより滑らかに変更する特性設定が検討されているが、さらなる特性改善が望まれている。
〔大型化の抑制〕
先に示した特許文献1に示されるように、シリンダ内の2室を仕切り、減衰力を発生する機構を有するピストンに加え、ピストンの一端側に設けられ、ハウジング内を上下動するフリーピストンを備えることにより、振動周波数の広い領域に対応した減衰力特性が得られるように改善が図られたシリンダ装置は種々開発されている。これらのシリンダ装置に共通する課題として、フリーピストンが上下動する領域が必要であるため、軸方向に長くなるということがあげられる。シリンダ装置が大型化すると、車体への取付け自由度が低下するため、シリンダ装置の軸方向長の増加は、大きな課題である。外部から減衰力を調整する機構を付けるとその分の大型化がさせられないため、周波数感応部の小型化は、強い要求がある。
〔部品数の低減〕
先に示した特許文献1に示されるように、ピストンに加え、ハウジングやフリーピストンなどの構成部品が備えられるため、部品数は増えることになる。部品数が増えると、生産性、耐久性、信頼性などに影響がでるため、所望の特性、つまり振動周波数の広い領域に対応した減衰力特性が得られるような特性を出しつつ、部品数の低減が望まれている。
以下、本発明に係る各実施形態について図面を参照して説明する。
「第1実施形態」
本発明に係る第1実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。以下の説明では理解を助けるために、図の下側を一方側とし、逆に図の上側を他方側として定義する。
第1実施形態の緩衝器は、図1に示すように、いわゆるモノチューブ式の油圧緩衝器で作動流体としての油液が封入される有底円筒状のシリンダ10を有している。シリンダ10内には、ピストン11が摺動可能に嵌装され、このピストン11により、シリンダ10内が上室12および下室13の2室に区画されている。ピストン11は、ピストン本体14と、その外周面に装着される円環状の摺動部材15と、ピストン本体14に連結されるピストンロッド16のピストン本体14への挿通部分とによって構成されている。
ピストン本体14は、ピストンロッド16の一端部に連結されており、ピストンロッド16の他端側は、シリンダ10の開口側に装着されたロッドガイド17およびオイルシール18等に挿通されてシリンダ10の外部へ延出されている。
ピストンロッド16は、一端にオネジ301を有するロッド本体302と、ロッド本体302のオネジ301に一端側のメネジ303で螺合されるピストン保持部材304とからなっている。ピストン保持部材304には、軸方向のメネジ303とは反対側から順に、ピストン本体14が取り付けられる取付軸部21と、取付軸部21よりも大径の主軸部20と、主軸部20よりも径方向に広がるストッパ部305とが形成されている。ストッパ部305のピストン11とは反対にはバネ受306が配置されており、バネ受306のストッパ部305とは反対にはコイルスプリング307が配置されている。コイルスプリング307のバネ受306とは反対にはバネ受308が配置されており、このバネ受308のコイルスプリング307とは反対側には緩衝体309が設けられている。ピストンロッド16がシリンダ10から所定量突出すると、緩衝体309がロッドガイド17に当接することになり、さらにピストンロッド16が突出すると、緩衝体309およびバネ受308がピストンロッド16上を摺動しつつコイルスプリング307をバネ受306との間で縮長させることになる。これにより、コイルスプリング307がピストンロッド16の突出に抵抗する力を発生させる。
ピストン11よりもシリンダ10の底部側には、ピストン11側に下室13を画成するための区画体26がシリンダ10内を摺動可能に設けられている。シリンダ10内の上室12および下室13内には、油液が封入されており、区画体26により下室13と画成された室27には高圧(20〜30気圧程度)ガスが封入されている。
上述の緩衝器の例えば一方側は車体により支持され、上記緩衝器の他方側に車輪側が固定される。この逆に緩衝器の他方側が車体により支持され緩衝器の一方側に車輪側が固定されるようにしても良い。車輪が走行に伴って振動すると該振動に伴ってシリンダ10とピストンロッド16との位置が相対的に変化するが、上記変化はピストン11に形成された流路の流体抵抗により抑制される。以下で詳述するごとくピストン11に形成された流路の流体抵抗は振動の速度や振幅により異なるように作られており、振動を抑制することにより、乗り心地が改善される。上記シリンダ10とピストンロッド16との間には、車輪が発生する振動の他に、車両の走行に伴って車体に発生する慣性力や遠心力も作用する。例えばハンドル操作により走行方向が変化することにより車体に遠心力が発生し、この遠心力に基づく力が上記シリンダ10とピストンロッド16との間に作用する。以下で説明するとおり、本実施の形態の緩衝器は車両の走行に伴って車体に発生する力に基づく振動に対して良好な特性を有しており、車両走行における高い安定性が得られる。
図2(a)に示すように、ピストン本体14には、上室12と下室13とを連通させ、ピストン11の上室12側への移動、つまり伸び行程において上室12から下室13に向けて油液が流れ出す複数(図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路(第1通路)30aと、ピストン11の下室13側への移動、つまり縮み工程において下室13から上室12に向けて油液が流れ出す複数(図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路(第1通路)30bが設けられている。これらのうち半数を構成する通路30aは、円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路30bを挟んで等ピッチで形成されており、ピストン11の軸方向一側(図1の上側)が径方向外側に軸方向他側(図1の下側)が径方向内側に開口している。
そして、これら半数の通路30aに、減衰力を発生する減衰力発生機構32aが設けられている。減衰力発生機構32aは、ピストン11の軸線方向の下室13側に配置されてピストンロッド16の取付軸部21に取り付けられている。通路30aは、ピストンロッド16がシリンダ10外に伸び出る伸び側にピストン11が移動するときに油液が通過する伸び側の通路を構成しており、これらに対して設けられた減衰力発生機構32aは、伸び側の通路30aの油液の流動を規制して減衰力を発生させる伸び側の減衰力発生機構を構成している。
また、残りの半数を構成する通路30bは、円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路30aを挟んで等ピッチで形成されており、ピストン11の軸線方向他側(図1の下側)が径方向外側に軸線方向一側(図1の上側)が径方向内側に開口している。
そして、これら残り半数の通路30bに、減衰力を発生する減衰力発生機構32bが設けられている。減衰力発生機構32bは、ピストン11の軸線方向の上室12側に配置されてピストンロッド16の取付軸部21に取り付けられている。通路30bは、ピストンロッド16がシリンダ10内に入る縮み側にピストン11が移動するときに油液が通過する縮み側の通路を構成しており、これらに対して設けられた減衰力発生機構32bは、縮み側の通路30bの油液の流動を規制して減衰力を発生させる縮み側の減衰力発生機構を構成している。
ピストンロッド16には、取付軸部21のピストン11よりもさらに端側に減衰力可変機構35が取り付けられている。
ピストン本体14は、略円板形状をなしており、その中央には、軸方向に貫通して、上記したピストンロッド16の取付軸部21を挿通させるための挿通穴38が形成されている。
ピストン本体14の下室13側の端部には、伸び側の通路30aの一端開口位置に、減衰力発生機構32aを構成するシート部41aが、円環状に形成されている。ピストン本体14の上室12側の端部には、縮み側の通路30bの一端の開口位置に、減衰力発生機構32bを構成するシート部41bが、円環状に形成されている。
ピストン本体14において、シート部41aの挿通穴38とは反対側は、シート部41aよりも軸線方向高さが低い環状の段差部42bとなっており、この段差部42bの位置に縮み側の通路30bの他端が開口している。また、シート部41aには、軸方向に凹む通路溝(オリフィス)43aが、それぞれ通路30aからピストン11の径方向外側に延在して段差部42bに抜けるように形成されている。同様に、ピストン本体14において、シート部41bの挿通穴38とは反対側は、シート部41bよりも軸線方向高さが低い環状の段差部42aとなっており、この段差部42aの位置に伸び側の通路30aの他端が開口している。また、シート部41bにも、図示は略すが、軸方向に凹む通路溝(オリフィス)が、それぞれ通路30bからピストン11の径方向に外側に延在して段差部42aに抜けるように形成されている。
減衰力発生機構32aは、シート部41aの全体に同時に着座可能な環状のディスクバルブ45aと、ディスクバルブ45aよりも小径であってディスクバルブ45aのピストン本体14とは反対側に配置される環状のスペーサ46aと、スペーサ46aよりも大径であってスペーサ46aのピストン本体14とは反対側に配置される環状のバルブ規制部材47aとを有している。ディスクバルブ45aは複数枚の環状のディスクが重ね合わせられることで構成されており、シート部41aから離座することで通路30aを開放する。また、バルブ規制部材47aはディスクバルブ45aの開方向への規定以上の変形を規制する。ディスクバルブ45aは、通路30aに設けられ、ピストン11の摺動によって生じる油液の流れを規制して減衰力を発生させる減衰バルブとなっている。
同様に、減衰力発生機構32bは、シート部41bの全体に同時に着座可能な環状のディスクバルブ45bと、ディスクバルブ45bよりも小径であってディスクバルブ45bのピストン本体14とは反対側に配置される環状のスペーサ46bと、スペーサ46bよりも大径であってスペーサ46bのピストン本体14とは反対側に配置される環状のバルブ規制部材47bとを有している。このバルブ規制部材47bは、ピストンロッド16の主軸部20の取付軸部21側の端部の軸段部48に当接している。ディスクバルブ45bも複数枚の環状のディスクが重ね合わせられることで構成されており、シート部41bから離座することで通路30bを開放する。また、バルブ規制部材47bはディスクバルブ45bの開方向への規定以上の変形を規制する。ディスクバルブ45bは、通路30bに設けられ、ピストン11の摺動によって生じる油液の流れを規制して減衰力を発生させる減衰バルブとなっている。
本実施の形態では、減衰力発生機構32a、32bを内周クランプのディスクバルブの例を示したが、これに限らず、減衰力を発生する機構であればよく、例えば、ディスクバルブをコイルバネで付勢するリフトタイプのバルブとしてもよく、また、ポペット弁であってもよい。
ピストンロッド16の先端部にはオネジ50が形成されており、このオネジ50に周波数(振動状態)により外部から制御されることなく減衰力を可変とする減衰力可変機構35(周波数感応部)が螺合されている。減衰力可変機構35は、ピストンロッド16のオネジ50に螺合されるメネジ52が形成された蓋部材53と、この蓋部材53にその開口側が閉塞されるように取り付けられる有底円筒状のハウジング本体54とからなるハウジング55と、このハウジング55内に摺動可能に嵌挿されるフリーピストン57と、フリーピストン57とハウジング55の蓋部材53との間に介装されてフリーピストン57が一方向へ移動したときに圧縮変形する縮み側のOリング(弾性体,一の弾性体)58と、フリーピストン57とハウジング55のハウジング本体54との間に介装されてフリーピストン57が他方向へ移動したときに圧縮変形する伸び側のOリング(弾性体,他の弾性体)59とで構成されている。なお、図2(a)においては便宜上自然状態のOリング58,59を図示している。特にOリング59は、シールとしても機能するので、取り付けられた状態で常時、変形(断面非円形)しているように配置されることが望ましい。上記したOリング58はフリーピストン57が一方向へ移動したときに圧縮変形してフリーピストン57の変位に対し抵抗力を発生する抵抗要素となっており、Oリング59はフリーピストン57が他方向へ移動したときに圧縮変形してフリーピストン57の変位に対し抵抗力を発生する抵抗要素となっている。
蓋部材53は、切削加工を主体として形成されるもので、略円筒状の蓋筒部(延出部)62と、この蓋筒部62の軸方向の端部から径方向外側に延出する円板状の蓋フランジ部63とを有している。
蓋筒部62の内周部には、軸方向の中間位置から蓋フランジ部63とは反対側の端部位置まで内側に突出して上記したメネジ52が形成されている。また、蓋筒部62の外周部には蓋フランジ部63とは反対側に段差部66が形成されており、蓋筒部62の段差部66より蓋フランジ部63側の外周面には円筒面部67および曲面部68が形成されている。円筒面部67は、一定径となっており、円筒面部67に繋がる曲面部68は、円筒面部68から軸方向に離れるほど大径の円環状となっていて、蓋フランジ部63の蓋筒部62側のフランジ面部69に繋がっている。曲面部68は蓋部材53の中心軸線を含む断面が円弧状をなしている。
ハウジング本体54は、切削加工を主体として形成されるもので、略円筒状のハウジング筒部75と、このハウジング筒部75の軸方向の端部を閉塞するハウジング底部76とを有している。
ハウジング筒部75の内周部には、ハウジング底部76側の端部に径方向内方に突出する円環状の内側環状突起(ハウジング側環状突起)80が形成されている。ハウジング筒部75の内周面には、ハウジング底部76側から順に、小径円筒面部81、テーパ面部(傾斜する面)82、曲面部(傾斜する面)83、大径円筒面部84、および大径の嵌合円筒面部85が形成されている。小径円筒面部81は一定径をなしており、小径円筒面部81に繋がるテーパ面部82は、小径円筒面部81から離れるほど大径となっている。テーパ面部82に繋がる曲面部83は、テーパ面部82から離れるほど大径の円環状となっており、曲面部83に繋がる大径円筒面部84は、小径円筒面部81より大径の一定径をなしている。大径円筒面部84に軸方向で隣り合う嵌合円筒面部85は、大径円筒面部84より大径となっている。曲面部83はハウジング本体54の中心軸線を含む断面が円弧状をなしており、小径円筒面部81とテーパ面部82と曲面部83とが、内側環状突起80に形成されている。
なお、ハウジングを円筒と記述しているが、内周面は断面円形となることが望ましいが、外周面は、多角形等断面非円円形であってもよい。
ここで、ハウジング本体54には、蓋部材53が蓋筒部62を先側にして開口側から挿入されることになり、その際に、蓋部材53は、嵌合円筒面部85に蓋フランジ部63を嵌合させることになる。この状態でハウジング筒部75の開口側の端部が内側に加締められることで、ハウジング本体54に蓋部材53が固定され一体化されてハウジング55を構成する。ハウジング底部76にはその中央に軸線方向に貫通する連通穴(オリフィス)87が形成されている。
フリーピストン57は、切削加工を主体として形成されるもので、略円筒状のピストン筒部(筒部)91と、このピストン筒部91の軸方向の一端部を閉塞するピストン底部92と、ピストン筒部91の軸方向の他端部から径方向外方に突出する円環状の外側環状突起(ピストン側環状突起)93を有するピストンフランジ部(フランジ部)94を有している。
ピストン筒部91およびピストンフランジ部94の外周面には、ピストン底部92側から順に、小径円筒面部97、曲面部(傾斜する面)98、テーパ面部(傾斜する面)99および大径円筒面部100が形成されている。小径円筒面部97はピストン筒部91に、曲面部98、テーパ面部99および大径円筒面部100はピストンフランジ部94に形成されている。小径円筒面部94は一定径となっており、この小径円筒面部97に繋がる曲面部98は小径円筒面部97から離れるほど大径の円環状となっている。曲面部98に繋がるテーパ面部99は、曲面部98から離れるほど大径となっており、テーパ面部99に繋がる大径円筒面部100は、小径円筒面部97より大径の一定径をなしている。曲面部98はフリーピストン57の中心軸線を含む断面が円弧状をなしている。
ピストン筒部91の内周面には、ピストン底部92側から順に円筒面部102およびテーパ面部(傾斜する面)103が形成されている。円筒面部102のピストン底部92側はピストン筒部91に、円筒面部102のピストン底部92とは反対側およびテーパ面部103はピストンフランジ部94に形成されている。円筒面部102は一定径となっており、円筒面部102に繋がるテーパ面部103は、円筒面部102から離れるほど大径となっている。
ピストン底部92のピストン筒部91とは反対側には、中央に、軸方向に凹む凹部104が形成されている。
フリーピストン57は、大径円筒面部100においてハウジング本体54の大径円筒面部84に、小径円筒面部97においてハウジング本体54の小径円筒面部81に、それぞれ摺動可能に嵌挿されることになる。この状態で、ハウジング本体54のテーパ面部82とフリーピストン57の曲面部98とがこれらの径方向において位置を重ね合わせることになり、ハウジング本体54の曲面部83とフリーピストン57のテーパ面部99とがこれらの径方向において位置を重ね合わせることになる。よって、ハウジング本体54のテーパ面部82および曲面部83の全体と、フリーピストン57の曲面部98およびテーパ面部99の全体とがフリーピストン57の移動方向で対向する。加えて、蓋部材53の蓋フランジ面部69とフリーピストン57のテーパ面部103とがフリーピストン57の移動方向で対向する。ハウジング本体54のテーパ面部82とフリーピストン57のテーパ面部99とは、これらの軸線に対する傾斜角度が同等となっている。フリーピストン57の曲面部98はその上記断面の曲率がハウジング本体54の曲面部83の上記断面の曲率と同等にされている。しかも、曲面部83,98の曲率半径が、断面円形のOリング59の断面半径より大きな曲率半径となっている。
そして、フリーピストン57の小径円筒面部97、曲面部98およびテーパ面部99と、ハウジング本体54のテーパ面部82、曲面部83および大径円筒面部84との間に、言い換えれば、フリーピストン57の外側環状突起93とハウジング本体54の内側環状突起80との間に、Oリング59が配置されている。このOリング59は、自然状態にあるとき、中心軸線を含む断面が円形状をなし、内径がフリーピストン57の小径円筒面部97よりも小径で、外径がハウジング本体54の大径円筒面部84よりも大径となっている。つまり、Oリング59は、フリーピストン57およびハウジング本体54の両方に対してこれらの径方向に締め代をもって嵌合される。
また、蓋部材53の円筒面部67、曲面部68およびフランジ面部69と、フリーピストン57のテーパ面部103との間に、Oリング58が配置されている。このOリング58も、自然状態にあるとき、中心軸線を含む断面が円形状をなしており、内径が蓋部材53の円筒面部67と同等になっている。両Oリング58,59はフリーピストン57をハウジング55に対して中立位置に保持するとともにフリーピストン57のハウジング55に対する軸方向の上室12側および下室13側の両側への軸方向移動を許容する。中立位置にあるフリーピストン57は、その軸方向移動のため、ハウジング本体54のハウジング底部76および蓋部材53の蓋フランジ部63と軸方向に離間しており、蓋筒部62との間に径方向に隙間を有している。
フリーピストン57においては、Oリング59が小径円筒面部97、曲面部98およびテーパ面部99に接触することになり、これらのうち曲面部98およびテーパ面部99は、フリーピストン57の移動方向に対し傾斜している。また、フリーピストン57においては、Oリング58がフリーピストン57の移動方向に対し傾斜するテーパ面部103に接触することになる。
ハウジング55においては、Oリング59がテーパ面部82、曲面部83および大径円筒面部84に接触することになり、これらのうちテーパ面部82および曲面部83は、フリーピストン57の移動方向に対し傾斜している。また、ハウジング55においては、Oリング58が円筒面部67、曲面部68およびフランジ面部69に接触することになる。
そして、フリーピストン57の小径円筒面部97、曲面部98およびテーパ面部99において、Oリング59に接触している部分であるフリーピストン接触面と、ハウジング55の大径円筒面部84、曲面部83およびテーパ面部82において、Oリング59に接触している部分であるハウジング接触面とが、フリーピストン57の移動によってOリング59に接触している部分の最短距離が変化し、最短距離となる部分を結ぶ線分の向きが変化する。言い換えれば、フリーピストン57のフリーピストン接触面と、ハウジング55のハウジング接触面と、それぞれのうちOリング59が接触している部分の最短距離を結ぶ線分の向きが変化するように小径円筒面部97、曲面部98およびテーパ面部99と大径円筒面部84、曲面部83およびテーパ面部82との形状が設定されている。具体的に、フリーピストン57がハウジング55に対して軸方向の上室12側に位置するとき、フリーピストン接触面とハウジング接触面と、それぞれのうちOリング59が接触している部分の最短距離は大径円筒面部84と小径円筒面部97との半径差である(大径円筒面部84と小径円筒面部97との半径差よりもOリング59の外径と内径の半径差の方が大であるため、Oリング59がその差分潰れ、その部分、つまり最短距離の線分は傾斜角0となる)。一方フリーピストン57がハウジング55に対して軸方向の下室13側に移動すると、Oリング59との接触部分は曲面部98と曲面部83となり、最もOリング59が潰される位置、つまり最短距離の線分の傾斜角が斜めになる。
フリーピストン57には、一端側に、内周に傾斜するテーパ面部103を有し外周に傾斜する曲面部98およびテーパ面部99を有するピストンフランジ部94が設けられており、ハウジング55には、蓋部材53の一部にフリーピストン57のピストン筒部91内に延出する蓋筒部62が設けられていて、一方のOリング58をピストンフランジ部94の内周面であるテーパ面部103と蓋筒部62とに当接するように配置し、他方のOリング59をピストンフランジ部94の外周面である小径円筒面部97、曲面部98およびテーパ面部99と、ハウジング55の内周面であるテーパ面部82、曲面部83および大径円筒面部84に当接するように配置している。
なお、減衰力可変機構35は、ハウジング本体54内に曲面部83の位置までOリング59を挿入し、これらハウジング本体54およびOリング59の内側にフリーピストン57を嵌合し、フリーピストン57のテーパ面部103にOリング58を配置して、このOリング58の内側に蓋筒部62を挿入しつつ蓋部材53をハウジング本体54に嵌合させてハウジング本体54を加締めることにより、組み立てられることになる。そして、このように予め組み立てられた減衰力可変機構35がピストンロッド16の取付軸部21のオネジ50にハウジング55のメネジ52を螺合させて取り付けられることになり、その際に、ハウジング55の蓋フランジ部63が減衰力発生機構32aのバルブ規制部材47aに当接して、減衰力発生機構32a、ピストン本体14および減衰力発生機構32bをピストンロッド16の軸段部48との間に挟持することになる。つまり、減衰力可変機構35は、減衰力発生機構32a、ピストン本体14および減衰力発生機構32bをピストンロッド16に締結する締結部材を兼ねている。減衰力可変機構35の外径つまりハウジング本体54の外径は、シリンダ10の内径よりも流路抵抗とならない程度小さく設定されている。
ピストンロッド16には、主軸部20の取付軸部21側の端部位置に径方向に沿う通路穴105が形成されており、取付軸部21には、この通路穴105に連通する通路穴106が軸方向に沿って形成されている。よって、これらの通路穴105,106によって、上室12が、減衰力可変機構35のハウジング55内に連通しており、具体的にはハウジング55とOリング58とフリーピストン57とで画成される上室連通室107内に連通している。また、下室13が、ハウジング55のハウジング底部76に形成された連通穴87を介してハウジング55内に連通しており、具体的にはハウジング55とOリング59とフリーピストン57とで画成される下室連通室108内に連通している。なお、ハウジング本体54とフリーピストン57との間に配置されたOリング59は、ハウジング55とフリーピストン57との間を常にシールするように配置され、上室連通室107と下室連通室108との連通を常に遮断する。
通路穴105,106および上室連通室107が、ピストン11の上室12側への移動によりシリンダ10内の一方の上室12から油液が流れ出す通路(第2通路)110を構成しており、連通穴87および下室連通室108が、ピストン11の下室13側への移動によりシリンダ10内の一方の下室13から油液が流れ出す通路(第2通路)111を構成している。よって、ハウジング55には、内部に通路110の一部の流路が形成されており、内部に通路111の全体の流路が形成されている。また、フリーピストン57は、ハウジング55内に移動可能に設けられて通路110,111を上流と下流に画成する。ここで、第2通路は、フリーピストン57により画成されており、上室12と下室13間で油液が置換する流れは生じないが、フリーピストン57がハウジング55に対して移動している間は、上室12の油液が上室連通室107に流入し、同量の油液が下室13側に押し出されるので、実質的に流れを生じている。通路30a,30bと、通路110とが、ピストンロッド16の一部を含むピストン11に設けられている。
ここで、ピストンロッド16が伸び側に移動する伸び行程では、上室12から通路30aを介して下室13に油液が流れることになるが、ピストン速度が微低速域の場合は、上室12から通路30aに導入された油液が、基本的に、ピストン11に形成された通路溝43aとシート部41aに当接するディスクバルブ45aとで画成されるコンスタントオリフィスを介して下室13に流れ、その際オリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。また、ピストン速度が上昇して低速域に達すると、上室12から通路30aに導入された油液が、基本的にディスクバルブ45aを開きながらディスクバルブ45aとシート部41aとの間を通って下室13に流れることになる。このため、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。
ピストンロッド16が縮み側に移動する縮み工程では、下室13から通路30bを介して上室12に油液が流れることになるが、ピストン速度が微低速域の場合は、下室13から通路30bに導入された油液が、基本的に、ピストン11に形成された図示略の通路溝とシート部41bに当接するディスクバルブ45とで画成されるコンスタントオリフィスを介して上室12に流れ、その際オリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。また、ピストン速度が上昇して低速域に達すると、下室13から通路30bに導入された油液が、基本的にディスクバルブ45bを開きながらディスクバルブ45bとシート部41bとの間を通って上室12に流れることになる。このため、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。
ここで、ピストン速度が遅いとき、つまり微低速域(例えば0.05m/s)の周波数が比較的高い領域(例えば7Hz以上)は、例えば路面の細かな表面の凹凸から生じる振動であり、このような状況では減衰力を下げるのが好ましい。また、同じくピストン速度が遅いときであっても、上記とは逆に周波数が比較的低い領域(例えば2Hz以下)は、いわゆる車体のロールによるぐらつき等の振動であり、このような状況では減衰力を上げるのが好ましい。
これに対応して、上記した減衰力可変機構35が、ピストン速度が同じように遅い場合でも、周波数に応じて減衰力を可変とする。つまり、ピストン速度が遅い時、ピストン11の往復動の周波数が高くなると、その伸び行程では、上室12の圧力が高くなって、ピストンロッド16の通路穴105,106を介して減衰力可変機構35の上室連通室107に上室12から油液を導入させるとともに減衰力可変機構35の下室連通室108から通路111内の下流側のオリフィスを構成する連通穴87を介して下室13に油液を排出させながら、フリーピストン57が軸方向の下室13側にあるOリング59の付勢力に抗して軸方向の下室13側に移動する。このようにフリーピストン57が軸方向の下室13側に移動することにより、上室連通室107に上室12から油液を導入することになり、上室12から通路30aに導入され減衰力発生機構32aを通過して下室13に流れる油液の流量が減ることになる。これにより、減衰力が下がる。
続く縮み行程では、下室13の圧力が高くなるため、通路内上流側のオリフィスを構成する連通穴87を介して減衰力可変機構35の下室連通室108に下室13から油液を導入させるとともにピストンロッド16の通路穴105,106を介して上室連通室107から上室12に油液を排出させながら、それまで軸方向の下室13側に移動していたフリーピストン57が軸方向の上室12側にあるOリング58の付勢力に抗して軸方向の上室12側に移動する。このようにフリーピストン57が軸方向の上室12側に移動することにより、下室連通室108に下室13から油液を導入することになり、下室13から通路30bに導入され減衰力発生機構32bを通過して上室12に流れる油液の流量が減ることになる。これにより、減衰力が下がる。
そして、ピストン11の周波数が高い領域では、フリーピストン57の移動の周波数も追従して高くなり、その結果、上記した伸び行程の都度、上室12から上室連通室107に油液が流れ、縮み行程の都度、下室13から下室連通室108に油液が流れることになって、上記のように、減衰力が下がった状態に維持されることになる。
他方で、ピストン速度が遅い時、ピストン11の周波数が低くなると、フリーピストン57の移動の周波数も追従して低くなるため、伸び行程の初期に、上室12から上室連通室107に油液が流れるものの、その後はフリーピストン57がOリング59を圧縮して軸方向の下室13側で停止し、上室12から上室連通室107に油液が流れなくなるため、上室12から通路30aに導入され減衰力発生機構32aを通過して下室13に流れる油液の流量が減らない状態となり、減衰力が高くなる。
続く縮み行程でも、その初期に、下室13から下室連通室108に油液が流れるものの、その後はフリーピストン57がOリング58を圧縮して軸方向の上室12側で停止し、下室13から下室連通室108に油液が流れなくなるため、下室13から通路30bに導入され減衰力発生機構32bを通過して上室12に流れる油液の流量が減らない状態となり、減衰力が高くなる。
そして、本実施形態においては、上記したように、フリーピストン57に中立位置へ戻すように付勢力を与える部品としてゴム材料からなるOリング58,59を用いており、フリーピストン57の中立位置では、フリーピストン57とハウジング本体54との間にあるOリング59が、ハウジング55の大径円筒面部84とフリーピストン57の小径円筒面部97との間に位置する。
この中立位置から例えば伸び行程でフリーピストン57がハウジング55に対して軸方向の下室13側に移動すると、ハウジング55の大径円筒面部84とフリーピストン57の小径円筒面部97とがOリング59を、相互間で転動つまり内径側と外径側とが逆方向に移動するように回転させてハウジング55に対して軸方向の下室13側に移動させることになり、その後、ハウジング55の曲面部83およびテーパ面部82の軸方向の上室12側と、フリーピストン57の曲面部98およびテーパ面部99の軸方向の下室13側とが、Oリング59を転動させながらフリーピストン57の軸方向および径方向に圧縮し、続いてハウジング55の曲面部83およびテーパ面部82の軸方向の下室13側と、フリーピストン57の曲面部98およびテーパ面部99の軸方向の上室12とが、Oリング59をフリーピストン57の軸方向および径方向に圧縮する。
このとき、ハウジング55の大径円筒面部84とフリーピストン57の小径円筒面部97との間でOリング59を転動させる領域と、ハウジング55の曲面部83およびテーパ面部82とフリーピストン57の曲面部98およびテーパ面部99との間でOリング59を転動させる領域とが、フリーピストン57の移動領域のうち下流側端部から離間した位置において、Oリング59が転動する転動領域であり、下流側端部から離間した位置において、Oリング59がフリーピストン57の移動方向にハウジング55とフリーピストン57と双方に接触した状態で移動する移動領域となっている。この移動とは、Oリング59の少なくともフリーピストン移動方向下流端位置(図2(a)における下端位置)が移動することを言う。
また、ハウジング55の曲面部83およびテーパ面部82とフリーピストン57の曲面部98およびテーパ面部99との間でOリング59を圧縮する領域が、フリーピストン57の移動領域のうち下流側端部側において、Oリング59をフリーピストン57の移動方向に弾性変形させる移動方向変形領域となっている。この移動方向変形領域における弾性変形とは、Oリング59のフリーピストン移動方向上流端位置(図2(a)における上端位置)が移動し、下流端位置が移動しない変形のことである。ここでは、転動領域および移動領域が、移動方向変形領域の一部とラップしている。
続く縮み行程でフリーピストン57がハウジング55に対して軸方向の上室12側に移動すると、ハウジング55の曲面部83およびテーパ面部82の軸方向の下室13側と、フリーピストン57の曲面部98およびテーパ面部99の軸方向の上室12とが、Oリング59の圧縮を解除し、続いて、ハウジング55の曲面部83およびテーパ面部82の軸方向の上室12側と、フリーピストン57の曲面部98およびテーパ面部99の軸方向の下室13側とが、Oリング59を転動させながら圧縮をさらに解除することになり、続いて、ハウジング55の大径円筒面部84とフリーピストン57の小径円筒面部97とがOリング59を、相互間で転動させながらハウジング55に対して軸方向の上室12側に移動させることになる。そして、フリーピストン57が中立位置の近辺で、蓋部材53とフリーピストン57との間のOリング58を、ハウジング55の円筒面部67、曲面部68およびフランジ面部69に保持した状態で、これら円筒面部67、曲面部68およびフランジ面部69とフリーピストン57のテーパ面部103とでフリーピストン57の軸方向および径方向に圧縮する。
続く伸び行程では、ハウジング55の円筒面部67、曲面部68およびフランジ面部69とフリーピストン57のテーパ面部103とが離間方向の相対移動でOリング58の圧縮を解除し、ハウジング55の大径円筒面部84とフリーピストン57の小径円筒面部97とがOリング59を、相互間で転動させながらハウジング55に対して軸方向の下室13側に移動させることになる。フリーピストン57が中立位置を通過すると、Oリング59を上記と同様に動作させることになる。
以上により、一方のOリング58は、移動方向変形領域において移動方向につぶされ、他のOリング59は、移動領域においてフリーピストン57の移動方向に移動する。
ここで、ゴム材料からなるOリング58,59によるフリーピストン57の変位に対する荷重の特性は、図3に示すような非線形の特性となる。つまり、フリーピストン57の中立位置の前後の所定範囲では線形に近い特性となり、この範囲を超えると、変位に対して滑らかに荷重の増加率が増大するようになる。上記のように、ピストン11の作動周波数が高い領域では、ピストン11の振幅も小さいため、フリーピストン57の変位も小さくなり、中立位置前後の線形の特性範囲で動作することになる。これにより、フリーピストン57は動きやすくなり、ピストン11の振動に追従して振動して減衰力発生機構32a,32bの発生する減衰力の低減に寄与する。
他方で、ピストン11の作動周波数が低い領域では、ピストン11の振幅が大きくなるため、フリーピストン57の変位が大きくなり、図3に示す非線形の特性範囲で動作することになる。これにより、フリーピストン57は徐々に滑らかに、動き難くなり、減衰力発生機構32a,32bの発生する減衰力を低減し難くなる。
そして、第1実施形態においては、上記のフリーピストン57によって上流側と下流側とに画成された通路110,111のうちの通路110の途中に、外部よりアクチュエータや手動で減衰特性を調整するその通路面積を調整可能な通路面積可変機構311が設けられている。この通路面積可変機構311は、外部よりアクチュエータや手動で減衰特性を調整する機構である。以下、この通路面積可変機構311について説明する。
通路110を構成する上記した通路穴105,106は、ピストンロッド16のピストン保持部材304内に形成されている。つまり、ピストン保持部材304には、ロッド本体302のオネジ301を螺合させる上記したメネジ303が形成されており、このメネジ303の軸方向の下室13側は下穴312となっている。そして、この下穴312の軸方向の下室13側に、下穴312より小径の収容穴315が形成されている。この収容穴315の底部から軸方向の下室13側に貫通して、上記した通路穴106が形成されている。また、収容穴315の壁部から径方向に貫通して、上記した通路穴105が形成されている。よって、通路穴105,106の間に収容穴315が形成されている。
そして、ピストン保持部材304の上記した収容穴315内に、開口面積可変部材本体318が収容される。この開口面積可変部材本体318は、円筒部319と円筒部319の一端側を閉塞するように径方向内方に設けられる蓋部320とを有する有蓋円筒状をなしている。円筒部319には、図2(b)に示すように、径方向に沿って複数箇所、具体的には4箇所の直線状の孔からなるオリフィス321〜324が、円筒部319の円周方向にこの順番で形成されている。これらオリフィス321〜324は、すべて孔径が異なっており、具体的には、オリフィス321の孔径が最も大きく、オリフィス322の孔径がその次に大きく、オリフィス323の孔径がその次に大きく、オリフィス324の孔径が最も小さい。これらオリフィス321〜324は、互いに円筒部319の軸方向における位置を合わせ、円筒部319の周方向における位置を異ならせて形成されている。ここでは、4箇所の径の異なるオリフィス321〜324が等間隔で形成されており、よって90度ピッチでオリフィス321〜324が形成されている。最大径のオリフィス321は、通路穴105よりも小径になっている。
図2(a)に示すように、円筒部319の外周側には、オリフィス321〜324よりも蓋部320とは反対側に位置して、円環状のシール溝329が円筒部319の円周方向に沿って形成されている。加えて、蓋部320には、径方向の中央に、軸方向に貫通する取付穴330が形成されている。
このような開口面積可変部材本体318が、シール溝329にOリング331を保持した状態で、蓋部320を通路穴106とは反対側に配置した姿勢で、ピストン保持部材304の収容穴315内に収容される。この状態でオリフィス321〜324は、ピストン保持部材304の軸方向における位置を通路穴105と合わせる。シール溝329のOリング331は開口面積可変部材本体318と収容穴315との隙間をシールする。
ピストンロッド16のロッド本体302には、径方向の中央に軸方向に貫通する貫通穴335が形成されており、この貫通穴335には作動ロッド336が挿通されている。この作動ロッド336は、ロッド本体302内に配置される挿通軸部337と、挿通軸部337よりも小径の先端軸部338とを有しており、この先端軸部338が開口面積可変部材本体318の蓋部320の取付穴330に、円筒部319とは反対側から嵌合されて加締められる。加締めによって先端軸部338に形成された大径の加締部339と、挿通軸部337とで、作動ロッド336は開口面積可変部材本体318の蓋部320を挟持することになり、これにより、作動ロッド336に開口面積可変部材本体318が回転不可に固定される。
一体化されたこれら作動ロッド336および開口面積可変部材本体318は、回転することで、オリフィス321〜324を選択的に通路穴105に連通させる。つまり、これら作動ロッド336および開口面積可変部材本体318が、通路穴105に対する開口面積を可変とする開口面積可変部材340を構成している。開口面積可変部材340はピストンロッド16内に配されている。
開口面積可変部材340は、その作動ロッド336の開口面積可変部材本体318とは反対側に連結される回動型のアクチュエータ342によって回転角が制御されながら回転させられる。アクチュエータ342は、図示略のコントローラで制御されて、開口面積可変部材340を適宜の角度回転させることになり、これにより、上記したように径の異なる複数のオリフィス321〜324の中の一つを選択的に通路穴105に連通させることになる。オリフィス321〜324の中の通路穴105に連通する一つと開口面積可変部材本体318内の空間部343とが、通路穴105と通路穴106とを連通させることになって、通路110を構成する。図1に示すように、ピストンロッド本体302の貫通穴335の途中には作動ロッド336との隙間をシールするOリング344が設けられている。
図2に示す上記した開口面積可変部材340およびアクチュエータ424が、ピストンロッド16内に形成された通路110の通路面積を、この通路110を構成するオリフィス321〜324を選択することにより調整可能となる通路面積可変機構311を構成している。この通路面積可変機構311は4つの径の異なるオリフィス321〜324を有しているため、通路110の通路面積を4段階に可変となっている。
なお、上記した通路面積可変機構311をピストンロッド16へ組み込む際には、例えば、開口面積可変部材340の作動ロッド336を、ロッド本体302の貫通穴335内に挿入する。そして、開口面積可変部材340のOリング331が装着された状態の開口面積可変部材本体318を収容穴315に嵌合させながら、ピストン保持部材304をロッド本体302に螺合させる。
上記の通路面積可変機構311が、オリフィス321を通路穴105に連通させると、通路110の通路面積つまり最小部分の通路面積を最も大きくすることになり、オリフィス322を通路穴105に連通させると、通路110の通路面積を、オリフィス321を通路穴105に連通させる場合よりも小さくすることになる。また、オリフィス323を通路穴105に連通させると、通路110の通路面積を、オリフィス322を通路穴105に連通させる場合よりも小さくすることになり、オリフィス324を通路穴105に連通させると、通路110の通路面積を、オリフィス323を通路穴105に連通させる場合よりも小さくすることになる。
ピストン速度が微低速域(例えば0.05m/s)で一定の条件下において、低周波数領域では、最大の減衰力が得られることになり、周波数が高くなると、減衰力がこれよりも減少することになるが、通路110の通路面積を小さくすれば、減衰力が減少を開始するカットオフ周波数を下げることができる。また、ピストン速度が微低速域(例えば0.05m/s)で一定の条件下において、通路110の通路面積を小さくすればするほど、周波数が高い領域で高い減衰力を得ることができることになる。そして、ピストン速度が0.05m/s付近を中心に減衰力可変特性をチューニングすることで、乗り心地の向上と、操縦安定性の向上の両立が図れることになる。
上記した特許文献1に記載のものでは、ピストンの移動によりシリンダ内の一方の室から作動流体がピストンロッド内を通って流れ出す通路を形成し、この通路を上流側と下流側とに画成するフリーピストンを設けて、減衰力を可変としている。
これに対し、以上に述べた第1実施形態によれば、ピストン11の移動によりシリンダ11内の上室12から作動流体がピストンロッド16内を通って流れ出す通路110,111を形成し、この通路110,111を上流側と下流側とに画成するフリーピストン57を設けて、減衰力を可変とし、その上で、通路110の途中に、通路110の通路面積を調整可能な通路面積可変機構311を設けた。このため、減衰力特性を一層詳細に制御可能となる。
また、通路110がピストンロッド16内に形成され、通路面積可変機構311が、ピストンロッド16内に配される開口面積可変部材340と、この開口面積可変部材340を回転させるアクチュエータ342とを有するため、簡素かつコンパクトな構造で、通路110の通路面積を調整可能となる。
また、上記した特許文献1に記載のものでは、ハウジング内を二室に区画するスプールの移動を弾性体で規制するものであるため(上記第1実施形態の移動方向変形領域のみに相当する)、減衰力を円滑に変化させるものであるが、スプールの移動に対して急激に抵抗力が増加するため、この特性の改善の要望がある。
(軸方向にゴムを圧縮する場合、ばね定数が急激に増加する。)
これに対して、以上に述べた第1実施形態によれば、フリーピストン57のOリング59が接触する小径円筒面部97、曲面部98およびテーパ面部99が、フリーピストン57の移動方向に対し傾斜する曲面部98およびテーパ面部99を有しており、ハウジング55のOリング59が接触するテーパ面部82、曲面部83および大径円筒面部84が、フリーピストン57の移動方向に対し傾斜するテーパ面部82および曲面部83を有していて、フリーピストン57の移動によって、小径円筒面部97、曲面部98およびテーパ面部99のうちのOリング59に接触しているフリーピストン接触面と、大径円筒面部84、曲面部83およびテーパ面部82のうちのOリング59に接触しているハウジング接触面との最短距離が変化するため、周波数に感応して減衰力を変化させる場合に円滑に変化させることができる。例えば、図4は、第1実施形態の緩衝器において、ピストン11の速度が0.05m/sである場合の、外側から順にピストンの作動周波数が0.50Hz、0.80Hz、1.59Hz、1.99Hz、3.18Hz、3.98Hz、4.97Hz、6.12Hz、7.96Hz、9.95Hz、15.92Hz、19.89Hzの場合のピストンストロークと減衰力との関係を示したものであるが、各周波数において、減衰力の変化が非常に滑らかであることがわかる。また、ピストン11のストロークが小さい0近辺において、例えば0.50Hz等の低周波数の時の減衰力を高く、例えば4.97Hz以上の比較的高周波の時の減衰力を低くできていることがわかる。なお、小径円筒面部97、曲面部98およびテーパ面部99と、大径円筒面部84、曲面部83およびテーパ面部82とのうちの、少なくともいずれか一方が、フリーピストン接触面のうち前記弾性体と接触している部分とハウジング接触面のうち前記弾性体と接触している部分の最短距離を変化させる形状になっていれば良い。
フリーピストン57の傾斜するテーパ面部99および曲面部98が、曲面部98を有しており、ハウジング55の傾斜するテーパ面部82および曲面部83が、曲面部83を有しているため、減衰力をさらに円滑に変化させることができる。なお、この場合も、曲面部83,98のうちの少なくともいずれか一方が設けられていれば良い。
曲面部83,98の曲率半径が、Oリング59の断面半径より大きな曲率半径であるため、減衰力をさらに円滑に変化させることができる。
フリーピストン57のテーパ面部99および曲面部98と、ハウジング55のテーパ面部82および曲面部83とが、フリーピストン57の移動方向で対向しているため、Oリング59を良好に圧縮することができる。
フリーピストン57が一方向へ移動したときに圧縮変形するOリング58と、フリーピストン57が他方向へ移動したときに圧縮変形するOリング59とを有するため、伸び行程および縮み行程の両方で減衰力を円滑に変化させることができる。
これにより、減衰力が周波数の変化、ピストン速度の変化等においても円滑に変化するので、減衰力の変化による乗り心地の違和感がなく、さらには、姿勢変化についても徐々に減衰力が大きくなり、運転者に違和感なく姿勢変化を抑えることが出来き、乗り心地、操縦安定性共に、特許文献1にあるようなものと比較し、より高いレベルの車両を提供することが可能となる。
フリーピストン57の一端側に内周が傾斜するテーパ面103となり、外周が傾斜する曲面部98およびテーパ面部99となるピストンフランジ部94を設け、ハウジング55の一部にフリーピストン57のピストン筒部91内に延出する蓋筒部62を設け、Oリング58をピストンフランジ部94の内周のテーパ面103と蓋筒部62とに当接するように配置し、Oリング59をピストンフランジ部94の外周の曲面部98およびテーパ面部99とハウジング55の内周面とに当接するように配置した。このため、ハウジング本体54内にOリング59を配置し、ハウジング本体54およびOリング59の内側にフリーピストン57を配置し、フリーピストン57にOリング58を配置して、このOリング58の内側に蓋筒部62を挿入しつつ蓋部材53をハウジング本体54に固定することにより、組み立てられることになる。したがって、各部品の組み付け性が良好となる。
また、ハウジング本体54とフリーピストン57との間に配置されたOリング59は、フリーピストン57の変位時に逆方向の付勢力を発生させるバネとしての機能を有するが、ハウジング本体54とフリーピストン57との間をシールするため、上室連通室107と下室連通室108との連通を常に遮断するシールとしても機能することになり、部品点数を低減することができる。
また、Oリング59がフリーピストン57とハウジング55との間で転動するため、減衰力をさらに円滑に変化させることができる。また、断面の径が小さなOリングを用いても、Oリングが転動するためフリーピストンのOリングによる抵抗力を与えられるストローク距離を大きくとることが可能(Oリングの直径以上とすることも可能)となる。
よって、ゴムを圧縮するのみの特許文献1のような技術(ゴムのつぶす方向の厚さ以上にストローク距離をとることが出来ない)と、本実施の形態の技術は、ゴムを使う点は同じであるが、上述の通りその使い方が異なり、技術思想として全く異なるものである。
また、フリーピストン57は、フリーピストン57の移動領域のうち下流側端部側において、Oリング59をフリーピストン57の移動方向に弾性変形させる移動方向変形領域と、下流側端部から離間した位置において、Oリング59が転動する転動領域とを有するため、減衰力をさらに円滑に変化させることができる。
また、転動領域が移動方向変形領域の一部とラップするため、転動による抵抗から移動方向につぶすことによる抵抗と徐々に変化するので、減衰力をさらに円滑に変化させることができる。さらには、ばね定数が急激に大きくなることを防止することが可能であり、線形に近い特性をも得ることもできる。
また、小径円筒面部97、曲面部98およびテーパ面部99のうちのOリング59に接触しているフリーピストン接触面と、大径円筒面部84、曲面部83およびテーパ面部82のうちのOリング59に接触しているハウジング接触面との最短距離を結ぶ線分の向きが変化するように、これらの形状を設定したため、Oリングが発生する力の向きが変化することでも、フリーピストンの移動方向に対する抵抗力が変化するので、減衰力をさらに円滑に変化させることができる。
また、フリーピストン57は、フリーピストン57の移動領域のうち下流側端部側において、Oリング59をフリーピストン57の移動方向に弾性変形させる移動方向変形領域と、下流側端部から離間した位置において、Oリング59がフリーピストン57の移動方向にハウジング55とフリーピストン57と双方に接触した状態で移動する移動領域とを有するため、フリーピストンのOリングによる抵抗力を与えられるストローク距離を例えばOリングの直径以上とする等、大きくとることが可能となり減衰力をさらに円滑に変化させることができる。
また、移動領域が移動方向変形領域の一部とラップするため、減衰力をさらに円滑に変化させることができる。
Oリングは複数設けられ、一方のOリング58は、移動方向変形領域において移動方向につぶされ、他方のOリング59は、移動領域においてフリーピストン57の移動方向に移動するため、フリーピストン57の移動方向に応じて減衰力を円滑に変化させることができる。
通路110が、ピストン11に設けられているため、構成を簡素化できる。
通路111の上流および下流にオリフィスとしての連通穴87を設けたため、フリーピストンの移動に対する抵抗力としてOリングに加えオリフィスも作用するので、減衰力をさらに円滑に変化させることができる。
なお、上記実施の形態において、フリーピストン57に小さなオリフィスを設けることで、特性を変化させることが可能となる。
また、上記実施の形態ではハウジング55を蓋部材53とハウジング本体54から構成したものを示したが、蓋筒部62を短くして、ピストンロッド20の図中下端側の外周部にOリング58が接触するようにした場合は、ピストンロッド20の下端側の分部もハウジング55を構成する。
「第2実施形態」
次に、第2実施形態を主に図5に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第2実施形態においては、第1実施形態に対して通路面積可変機構311が一部相違している。具体的には、ピストン保持部材304の下穴312と収容穴315との間に、下穴312より小径かつ収容穴315よりも大径の通路穴351が形成されている。そして、この通路穴351の壁部から径方向に沿って通路穴105が複数形成されている。
ピストン保持部材304の上記した通路穴351および収容穴315内に、円筒状の通路形成部材352が配される。通路形成部材352には、径方向に沿って複数箇所、具体的には2箇所のオリフィス353,354が形成されている。これらオリフィス353,354は、互いに通路面積が異なっており、具体的には、オリフィス353の通路面積が大きく、オリフィス354の通路面積が小さい。これらオリフィス353,354は、互いに通路形成部材352の軸方向および周方向における位置を異ならせて形成されている。通路形成部材352の外周側には、通路形成部材352の軸線方向におけるオリフィス354よりもオリフィス353とは反対側に、円環状のシール溝359が円周方向に沿って形成されている。
このような通路形成部材352が、シール溝359にOリング360を保持した状態で、通路面積の小さいオリフィス354が通路面積の大きいオリフィス353よりも収容穴315側に位置する姿勢で、ピストン保持部材304の収容穴315に嵌合される。この状態でオリフィス353,354は、通路穴351内に配され、ピストン保持部材304の軸方向における位置を通路穴105と合わせる。また、この状態で、Oリング360が、通路形成部材352と収容穴315との隙間をシールする。
第2実施形態の作動ロッド336は、ロッド本体302の挿通軸部337の先端部に、先細のテーパ軸部362が形成されている。この作動ロッド336は、テーパ軸部362が通路形成部材352の内側に挿入され、挿通軸部337のテーパ軸部362側が通路形成部材352の内周面に摺動可能に嵌合されている。
この作動ロッド336は、そのテーパ軸部362とは反対側に連結される直動型のアクチュエータ364によって軸方向位置が制御されながら軸方向に移動つまり直動する。アクチュエータ364は、図示略のコントローラで制御されて、作動ロッド336を適宜の位置で停止させることになり、これにより、通路面積の異なる複数のオリフィス353,354の通路穴106への連通量を制御することになる。通路穴351と通路形成部材352との隙間365と、オリフィス353,354と、通路形成部材352内の作動ロッド336よりも通路穴106側の空間部366とが、通路穴105と通路穴106とを連通させることになって、通路110を構成する。
上記した通路形成部材352および作動ロッド336が、ピストンロッド16内に形成された通路110の通路面積を調整可能となる第2実施形態の通路面積可変機構311を構成している。この通路面積可変機構311は、通路110を構成するオリフィス353,354の空間部366への開口量を変化させる。この通路面積可変機構311は、オリフィス354の一部のみを空間部366に連通させる状態、オリフィス354の一部とオリフィス353の一部とを空間部366に連通させる状態、オリフィス354の全部とオリフィス354の一部とを空間部366に連通させる状態、およびオリフィス354の全部とオリフィス353の全部とを空間部366に連通させる状態とに作動ロッド336を制御可能であり、しかも、これらの各状態のそれぞれにおいても、オリフィス353,354の空間部366への連通量を作動ロッド336の位置により調整可能となっている。つまり、作動ロッド336がピストンロッド16内に配され直動して通路110内の開口面積を可変とする。
なお、第2実施形態の通路面積可変機構311をピストンロッド16へ組み込む際には、例えば、通路形成部材352にOリング360を装着して、この通路形成部材352を収容穴315に嵌合させた後、ピストン保持部材304をロッド本体302に螺合させる。その後、作動ロッド336をロッド本体302内にピストン保持部材304とは反対側から挿入する。
第2実施形態の通路面積可変機構311が、作動ロッド336を最も前進させてテーパ軸部362をオリフィス354よりも通路穴106側に位置させると、オリフィス353,354は、空間部366および通路穴106に連通しない状態となり、この状態では、通路110の通路面積が最も小さい0となる。逆に、作動ロッド336を最も後退させてテーパ軸部362をオリフィス353よりも通路穴106とは反対側に位置させると、オリフィス353,354の全体が空間部366および通路穴106に連通する状態となり、この状態では、通路110の通路面積が最も大きくなる。
「第3実施形態」
次に、第3実施形態を主に図6に基づいて第2実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第2実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第3実施形態においては、第2実施形態に対して通路面積可変機構311が一部相違している。具体的には、ピストン保持部材304の下穴312の奥側に、これより小径の通路穴371が形成されており、通路穴371の奥側に、通路穴371よりも全体として小径であって奥側ほど小径となるテーパ穴372が形成されている。さらに、テーパ穴372の奥側にテーパ穴372の小径側と同径の孔からなるオリフィス373が形成されており、オリフィス373の奥側に奥側ほど大径となるテーパ穴374が形成されている。そして、このテーパ穴374の奥側に通路穴106が形成されている。また、通路穴371の壁部から径方向に沿って通路穴105が形成されている。
第3実施形態の作動ロッド336は、第2実施形態と同様、挿通軸部337と、挿通軸部337の端部に形成された先細のテーパ軸部362とを有しており、挿通軸部337が通路穴371内に挿入され、テーパ軸部362がテーパ穴372に当接および離間可能とされている。
この作動ロッド336は、そのテーパ軸部362とは反対側に連結される直動型のアクチュエータ364によって軸方向位置が制御されながら軸方向に移動する。アクチュエータ364は、図示略のコントローラで制御されて、作動ロッド336を適宜の位置で停止させることになり、これにより、テーパ軸部362がテーパ穴372との隙間の通路穴105への連通量を制御することになる。通路穴371およびテーパ穴372と作動ロッド336との隙間375と、オリフィス373と、テーパ穴374とが、通路穴105と通路穴106とを連通させることになって、通路110を構成する。
上記したピストン保持部材304および作動ロッド336が、ピストンロッド16内に形成された通路110の通路面積を調整可能となる通路面積可変機構311を構成している。この通路面積可変機構311は、通路110の通路面積を、この通路110を構成するテーパ軸部362とテーパ穴372との隙間を変化させることにより調整可能となっている。
上記の通路面積可変機構311が、作動ロッド336を最も前進させてテーパ軸部362をテーパ穴372に当接させると、オリフィス373が、通路穴105に連通しない状態となり、この状態では、通路110の通路面積が最も小さい0となる。逆に、作動ロッド336を最も後退させてテーパ軸部362をテーパ穴372から最大に離間させると、オリフィス373の全体が通路穴105に連通する状態となり、この状態では、通路110の通路面積がオリフィス373の通路面積となり最も大きくなる。そして、これらの間で、テーパ軸部362とテーパ穴372との隙間量を調整することで、通路面積を調整する。つまり、この場合も、作動ロッド336がピストンロッド16内に配され直動して通路110内の開口面積を可変とする。第3実施の形態とすることにより、第1実施の形態の4段階で通路面積を可変にする機構と比して、リニアに隙間を調整するので、減衰力の変化をより滑らかにすることができる。
「第4実施形態」
次に、第4実施形態を主に図7に基づいて第1〜第3実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1〜第3実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第4実施形態は、第1〜第3実施形態に対して、減衰力可変機構の変更例となっており、第4実施形態の減衰力可変機構250は、第1〜第3実施形態のいずれに対しても適用可能となっている。
第4実施形態の減衰力可変機構250は、略筒状のハウジング本体251と、ハウジング本体251の軸方向の一端側に取り付けられる底蓋部材252とを有するハウジング253を備えている。ハウジング本体251は、中央に、底蓋部材252の取付側から順に、底蓋部材252が螺合されるメネジ255と、メネジ255よりも小径の収納穴部256と、収納穴部256よりも小径のテーパ穴257と、ピストンロッド16のオネジ50に螺合されるメネジ258と、メネジ258より大径の取付穴部259とが軸方向に形成されて筒状をなしている。底蓋部材252は、外周面にメネジ255に螺合するオネジ261が形成されており、中央には軸方向に沿って貫通する連通穴262が形成されている。
また、ハウジング253は、ハウジング本体251の収納穴部256内に配置されて収納穴部256の底面および底蓋部材252の内面に当接するように配置される有底円筒状の一対のリテーナ265,266と、これらリテーナ265,266のそれぞれの内側に配置される一対のスペーサ267,268と、これらスペーサ267,268の軸方向におけるリテーナ265,266とは反対側に配置される円板状の一対のベース板269,270と、これらベース板269,270の軸方向におけるスペーサ267,268とは反対側に配置される一対のシート状のゴムからなる弾性部材271,272と、これら弾性部材271,272との軸方向の間に設けられて弾性部材271,272をベース板269,270とで挟持する略円筒状のガイド部材273とを有している。
リテーナ265,266には、底部中央に軸方向に沿って貫通孔275,276が形成されている。また、リテーナ265,266の底部からガイド部材273とハウジング本体251との径方向の隙間内に延びる側部には、径方向に延在した後に軸方向に延在して底部とは反対側に抜けるスリット265A,266Aが形成されている。また、ベース板269,270の中央にも軸方向に沿って貫通孔(オリフィス)277,278が形成されている。スペーサ267,268は、リテーナ265,266の貫通孔275,276とベース板269,270の貫通孔277,278とを常時連通可能な状態でこれらの間に挟持される。貫通孔277,278は貫通孔275,276よりも小径となっている。
ガイド部材273には、軸方向中間所定位置に外側に突出する円環状の突出部280が形成されており、この突出部280の外周部には、ハウジング本体251との隙間をシールするシールリング281を保持する円環状の保持溝282が形成されている。また、ガイド部材273には、突出部280の軸方向両外側に、径方向に貫通する複数の貫通孔283および複数の貫通孔284が形成されている。
加えて、減衰力可変機構35は、ガイド部材269内にその軸方向に沿って摺動可能に嵌合されるフリーピストン287と、フリーピストン287と各ベース板269,270との間に配置されてフリーピストン287を中立位置に保持するとともにその変位に対して抵抗力を発生する一対のコイルバネ(抵抗要素)288,289とを有している。フリーピストン287には、軸方向両側に、コイルバネ288,289を保持するための一対のスプリング保持穴291,292が軸方向に形成されており、外周面の軸方向の中間所定範囲に径方向に凹む円環状の溝部293が形成されている。溝部293はフリーピストン287のガイド部材273に対する位置に応じて貫通孔283,284への連通・遮断が切り換えられる。
コイルバネ288,289は、ハウジング253内でフリーピストン287を中立位置に保持するように軸方向両側から付勢するとともにフリーピストン287の変位に対し抵抗力を発生する。中立位置からフリーピストン287がコイルバネ288を縮める方向に移動した場合に、弾性部材271がフリーピストン287の軸方向の一端面を当接させることで、コイルバネ288の最小長さへの縮長およびフリーピストン287のベース板269への当接を規制する。また、中立位置からフリーピストン287がコイルバネ289を縮める方向に移動した場合に、弾性部材272がフリーピストン287の軸方向の他端面を当接させることで、コイルバネ289の最小長さへの縮長およびフリーピストン287のベース板270への当接を規制する。
第4実施形態の減衰力可変機構250は、ガイド部材273と、フリーピストン287と、ピストンロッド16側のベース板269との間に、ピストンロッド16の通路穴106、ピストンロッド16側のリテーナ265の貫通孔275およびピストンロッド16側のベース板269の貫通孔277等を介して上室12(図7においては図示略)に連通する上室連通室295が形成されている。また、ガイド部材273と、フリーピストン287と、ピストンロッド16とは反対側のベース板270との間に、ベース板270の貫通孔278、ピストンロッド16とは反対側のリテーナ266の貫通孔276および底蓋部材252の連通穴262を介して下室13に連通する下室連通室296が形成されている。上室連通室295および貫通孔277は通路110を構成し、下室連通室296および貫通孔278は通路111を構成している。
第4実施形態の減衰力可変機構250においては、フリーピストン287が中立位置にあるとき、フリーピストン287の溝部293が、ガイド部材273のすべての貫通孔283,284およびリテーナ265,266のスリット265A,266Aに連通している。この状態から、例えば伸び行程で中立位置からフリーピストン287がハウジング253に対して軸方向の下室13側に移動すると、軸方向の下室13とは反対側のコイルバネ288を伸ばしながら軸方向の下室13側のコイルバネ289を縮めることになり、上室連通室295に上室12(図7においては図示略)側の油液を導入する。このとき、フリーピストン287は、溝部293が軸方向の下室13とは反対側の貫通孔283を閉じ、軸方向の下室13側の貫通孔284のみと連通する状態となる。
続く縮み行程でフリーピストン287が軸方向の下室13とは反対側に移動すると、軸方向の下室13側のコイルバネ289を伸ばしながら軸方向の下室13とは反対側のコイルバネ288を縮めることになり、下室連通室296に下室13側の油液を導入する。このとき、フリーピストン287は、溝部293が、軸方向両側の貫通孔283,284と連通する状態を経て、軸方向の下室13側の貫通孔284を閉じ、軸方向の下室13とは反対側の貫通孔283のみと連通する状態となる。
続く伸び行程で、フリーピストン287がハウジング253に対して軸方向の下室13側に移動すると、軸方向の下室13とは反対側のコイルバネ288を伸ばしながら軸方向の下室13側のコイルバネ289を縮めることになり、フリーピストン287が溝部293を軸方向両側の貫通孔283,284に連通させる中立位置を通過した後、上記と同様に、動作する。
以上に述べた第4実施形態によれば、コイルバネ288,289によってフリーピストン287の変位に対し抵抗力を発生するため、耐久性を向上できる。
なお、第4実施形態において、弾性部材271,272は、コイルバネや板バネ以外の、材質自体に弾性を有する材料からなるものであれば、ゴムの他にも、袋に入れられたゲル等で形成しても良い。
「第5実施形態」
次に、第5実施形態を主に図8に基づいて第1〜第3実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1〜第3実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第5実施形態は、第1〜第3実施形態に対して、減衰力可変機構の変更例となっており、第5実施形態の減衰力可変機構400は、第1〜第3実施形態のいずれに対しても適用可能となっている。
第5実施形態の減衰力可変機構400は、ピストンロッド16を構成するピストン保持部材304のオネジ50に螺合されるメネジ401が形成された蓋部材402と、この蓋部材402にその一端開口側が閉塞されるように取り付けられる略円筒状のハウジング本体403とからなるハウジング405と、このハウジング405内に摺動可能に嵌挿されるフリーピストン407と、フリーピストン407とハウジング405の蓋部材402との間に介装されてフリーピストン407がハウジング405に対し軸方向の蓋部材402側へ移動したときに圧縮変形する縮み側の弾性体であるOリング(抵抗要素,弾性体,一の弾性体)408と、フリーピストン407とハウジング405のハウジング本体403との間に介装されてフリーピストン407がハウジング405に対し上記とは反対側へ移動したときに圧縮変形する伸び側の弾性体であるOリング(抵抗要素,弾性体,他の弾性体)409とで構成されている。なお、図8においても便宜上自然状態のOリング408,409を図示している。特にOリング409は、シールとしても機能するので、取り付けられた状態で常時、変形(断面非円形)しているように配置されることが望ましい。
蓋部材402は、切削加工を主体として形成されるもので、略円筒状の蓋内筒部412と、この蓋内筒部412の軸方向の端部から径方向外側に延出する円板状の蓋基板部413と、蓋基板部413の外周側から蓋内筒部412と同方向に延出する蓋外筒部414とを有している。
蓋内筒部412の内周部には、軸方向の中間位置に径方向内側に突出して上記したメネジ401が形成されている。また、蓋外筒部414の内周面は、蓋基板部413側から順に、小径円筒面部416、曲面部417および大径円筒面部418を有している。小径円筒面部416は一定径をなしており、小径円筒面部416に繋がる曲面部417は、小径円筒面部416から離れるほど大径の円環状となっている。曲面部417に繋がる大径円筒面部418は小径円筒面部416よりも小径の一定径となっている。曲面部417は蓋部材402の中心軸線を含む断面が円弧状をなしている。
ハウジング本体403は、切削加工を主体として形成されるもので、軸方向一側に径方向内方に突出する内側環状突起420が形成された略円筒状をなしている。ハウジング本体403の内周面には、軸方向一側から順に、小径円筒面部421、曲面部422、大径円筒面部423、これより大径の大径側嵌合円筒面部424が形成されている。小径円筒面部421は一定径をなしており、小径円筒面部421に繋がる曲面部422は、小径円筒面部421から離れるほど大径の円環状となっており、曲面部422に繋がる大径円筒面部423は、小径円筒面部421より大径の一定径をなしている。大径円筒面部423に軸方向で隣り合う大径側嵌合円筒面部424は、大径円筒面部423より大径となっている。曲面部422はハウジング本体403の中心軸線を含む断面が円弧状をなしており、小径円筒面部421と曲面部422とが、内側環状突起420に形成されている。
このようなハウジング本体403の大径側嵌合円筒面部424に、蓋部材402の蓋外筒部414が全長にわたって嵌合している。この大径側嵌合円筒面部424に嵌合することで、蓋外筒部414は、その大径円筒面部418が、ハウジング本体403の大径円筒面部423と段差なく連続するようになっている。曲面部417は、大径円筒面部418および大径円筒面部423よりも径方向内方に突出する、蓋部材402の内側環状突起425に形成されている。なお、ハウジング本体403を略円筒と記述しているが、内周面は断面円形となることが望ましいが、外周面は、多角形等断面非円形であってもよい。
ハウジング本体403には、蓋部材402が、蓋外筒部414を先側にして、蓋外筒部414にて大径側嵌合円筒面部424に嵌合することになる。この状態でハウジング本体403の大径側嵌合円筒面部424の一部を形成し蓋部材402から突出する端部が内側に加締められることで、ハウジング本体403に蓋部材402が固定され一体化される。このように、一体化されたハウジング本体403および蓋部材402が、ハウジング405を構成する。
フリーピストン407は、切削加工を主体として形成されるもので、略円筒状のピストン筒部428と、このピストン筒部428の軸方向の端部側を閉塞するピストン閉板部429とを有しており、ピストン筒部428には径方向外方に突出する円環状の外側環状突起430が軸方向の中央に形成されている。
ピストン筒部428の外周面には、軸方向のピストン閉板部429側から順に、小径円筒面部433、曲面部434、大径円筒面部435、曲面部436および小径円筒面部437が形成されている。曲面部434、大径円筒面部435および曲面部436は、外側環状突起430に形成されている。
小径円筒面部433は一定径となっており、この小径円筒面部433に繋がる曲面部434は小径円筒面部433から離れるほど大径の円環状となっている。曲面部434に繋がる大径円筒面部435は、小径円筒面部433より大径の一定径をなしている。曲面部434はフリーピストン407の中心軸線を含む断面が円弧状をなしている。
大径円筒面部435に繋がる曲面部436は、大径円筒面部435から離れるほど小径の円環状をなしている。曲面部436に小径円筒面部437が繋がっており、この小径円筒面部437は、小径円筒面部433と同径の一定径となっている。曲面部436はフリーピストン407の中心軸線を含む断面が円弧状をなしている。外側環状突起430はその軸線方向の中央位置を通る平面に対して対称形状をなしている。フリーピストン407は、外側環状突起430の軸方向の中央位置に、外側環状突起430を径方向に貫通する通路穴438がフリーピストン407の周方向に間隔をあけて複数箇所形成されている。
フリーピストン407は、ハウジング405内に配置された状態で、大径円筒面部435においてハウジング本体403の大径円筒面部423および蓋部材402の大径円筒面部418に摺動可能に嵌挿されることになる。また、フリーピストン407は、一方の小径円筒面部433がハウジング本体403の小径円筒面部421に、他方の小径円筒面部437が蓋部材402の蓋外筒部414の小径円筒面部416に、それぞれ摺動可能となっている。ハウジング405内に配置された状態で、ハウジング本体403の曲面部422とフリーピストン407の曲面部434とがこれらの径方向において位置を重ね合わせることになる。よって、ハウジング本体403の曲面部422と、フリーピストン407の曲面部434とがフリーピストン407の移動方向で対向する。加えて、蓋部材402の蓋外筒部414の曲面部417とフリーピストン407の曲面部436とがこれらの径方向において位置を重ね合わせることになる。よって、蓋部材402の曲面部417と、フリーピストン407の曲面部436とがフリーピストン407の移動方向で対向する。
そして、フリーピストン407の小径円筒面部433および曲面部434と、ハウジング本体403の曲面部422および大径円筒面部423との間に、言い換えれば、フリーピストン407の外側環状突起430とハウジング405の一方の内側環状突起420との間に、Oリング409(図8において自然状態を図示)が配置されている。このOリング409は、自然状態にあるとき、中心軸線を含む断面が円形状をなし、内径がフリーピストン407の小径円筒面部433よりも小径で、外径がハウジング本体403の大径円筒面部423よりも大径となっている。つまり、Oリング409は、フリーピストン407およびハウジング本体403の両方に対してこれらの径方向に締め代をもって嵌合される。
また、蓋部材402の大径円筒面部418および曲面部417と、フリーピストン407の曲面部436および小径円筒面部437との間に、言い換えれば、フリーピストン407の外側環状突起430とハウジングの他方の内側環状突起425との間に、Oリング408(図8において自然状態を図示)が配置されている。このOリング408も、自然状態にあるとき、中心軸線を含む断面が円形状をなしており、内径がフリーピストン407の小径円筒面部437よりも小径で、外径が蓋部材402の大径円筒面部418よりも大径となっている。つまり、Oリング408も、フリーピストン407およびハウジング405の両方に対してこれらの径方向に締め代をもって嵌合される。
両Oリング408,409は、同じ大きさのものであり、フリーピストン407をハウジング405に対して所定の中立位置に保持するとともにフリーピストン407のハウジング405に対する軸方向の上室12側および下室13側の両側への軸方向移動を許容する。
フリーピストン407においては、Oリング408が小径円筒面部437、曲面部436に接触することになり、これらのうち曲面部436は、フリーピストン407の移動方向に対し傾斜している。また、ハウジング405においては、Oリング408が大径円筒面部418および曲面部417に接触することになり、これらのうち曲面部417は、フリーピストン407の移動方向に対し傾斜している。
言い換えれば、フリーピストン407の外周部に外側環状突起430を設け、この外側環状突起430の軸方向両面は、曲面部434とおよび曲面部436とを構成し、ハウジング405の内周における、外側環状突起430の両側の位置に、曲面部422を構成する内側環状突起420と、曲面部417を構成する内側環状突起425とを設け、外側環状突起430と、内側環状突起420および内側環状突起425との間にそれぞれOリング409およびOリング408を設けている。
そして、フリーピストン407の小径円筒面部433、曲面部434において、Oリング409に接触している部分であるフリーピストン接触面と、ハウジング405の大径円筒面部423および曲面部422において、Oリング409に接触している部分であるハウジング接触面とが、フリーピストン407の移動によってOリング409に接触している部分の最短距離が変化し、最短距離となる部分を結ぶ線分の向きが変化する。言い換えれば、フリーピストン407のフリーピストン接触面と、ハウジング405のハウジング接触面と、それぞれのうちOリング409が接触している部分の最短距離を結ぶ線分の向きが変化するように小径円筒面部433および曲面部434と大径円筒面部423および曲面部422との形状が設定されている。具体的に、フリーピストン407がハウジング405に対して軸方向の上室12側(図8の上側)に位置するとき、フリーピストン接触面とハウジング接触面と、それぞれのうちOリング409が接触している部分の最短距離は大径円筒面部423と小径円筒面部433との半径差である(大径円筒面部423と小径円筒面部433との半径差よりもOリング409の外径と内径の半径差の方が大であるため、Oリング409がその差分潰れ、その部分、つまり最短距離の線分は傾斜角0となる)。一方フリーピストン407がハウジング405に対して軸方向の下室13側(図8の下側)に移動すると、Oリング409との接触部分は曲面部434と曲面部422となり、最もOリング409が潰される位置、つまり最短距離の線分の傾斜角が斜めになる。
同様に、フリーピストン407の小径円筒面部437および曲面部436において、Oリング408に接触している部分であるフリーピストン接触面と、ハウジング405の大径円筒面部418および曲面部417において、Oリング408に接触している部分であるハウジング接触面とが、フリーピストン407の移動によってOリング408に接触している部分の最短距離が変化し、最短距離となる部分を結ぶ線分の向きが変化する。言い換えれば、フリーピストン407のフリーピストン接触面と、ハウジング405のハウジング接触面と、それぞれのうちOリング408が接触している部分の最短距離を結ぶ線分の向きが変化するように小径円筒面部437および曲面部436と、大径円筒面部418および曲面部417との形状が設定されている。具体的に、フリーピストン407がハウジング405に対して軸方向の下室13側(図8の下側)に位置するとき、フリーピストン接触面とハウジング接触面と、それぞれのうちOリング408が接触している部分の最短距離は大径円筒面部418と小径円筒面部437との半径差である(大径円筒面部418と小径円筒面部437との半径差よりもOリング408の外径と内径の半径差の方が大であるため、Oリング408がその差分潰れ、その部分、つまり最短距離の線分は傾斜角0となる)。一方フリーピストン407がハウジング405に対して軸方向の上室12側(図8の上側)に移動すると、Oリング408との接触部分は曲面部417と曲面部436となり、最もOリング408が潰される位置、つまり最短距離の線分の傾斜角が斜めになる。
なお、減衰力可変機構400は、例えばハウジング本体403内に曲面部422の位置までOリング409を挿入し、これらハウジング本体403およびOリング409の内側にフリーピストン407を嵌合し、ハウジング本体403とフリーピストン407との間に曲面部436の位置までOリング408を挿入して、蓋部材402をハウジング本体403に加締めることにより、組み立てられることになる。そして、このように予め組み立てられた減衰力可変機構400がピストンロッド16の取付軸部21のオネジ50にメネジ401を螺合させて取り付けられることになり、その際に、ハウジング405の蓋基板部413がバルブ規制部材47aに当接することになる。減衰力可変機構400の外径つまりハウジング本体403の外径は、シリンダ10の内径よりも流路抵抗とならない程度に小さく設定されている。
ピストンロッド16のピストン保持部材304の通路穴105,106によって、上室12が、減衰力可変機構400のハウジング405内に形成された圧力室440に連通しており、具体的には、圧力室440のうちハウジング405とOリング408とフリーピストン407とで画成される上室連通室441内に連通している。また、下室13が、ハウジング405から突出するフリーピストン407のピストン筒部428とハウジング405の内側環状突起420との隙間を介してハウジング405内に連通可能となっており、具体的には、ハウジング405内の圧力室440のうちハウジング405とOリング409とフリーピストン407とで画成される下室連通室442内に連通可能となっている。
第5実施形態においては、上記したようにフリーピストン407の外側環状突起430の軸方向の中央位置に、外側環状突起430を径方向に貫通する通路穴438が複数形成されている。これにより、上室連通室441が、通路穴438を介して、ハウジング405とOリング408とOリング409とフリーピストン407とで囲まれた室444に常時連通する。言い換えれば、通路穴438は、一方のOリング408と他方のOリング409との間の室444に上室連通室441から油液を導く。なお、通路穴438は、フリーピストン407の外側環状突起430の位置に形成されていることから、フリーピストン407のハウジング405に対する移動範囲の全域において、一方のOリング408および他方のOリング409のいずれにも接触することはない。
ハウジング本体403とフリーピストン407との間に配置されたOリング409は、ハウジング405とフリーピストン407との間を常にシールするように配置され、上室連通室441および室444と、下室連通室442との連通を常に遮断する。
通路穴105,106および上室連通室441が、ピストン11の上室12側への移動によりシリンダ10内の一方の上室12から油液が流れ出す通路110を構成しており、下室連通室442が、ピストン11の下室13側への移動によりシリンダ10内の一方の下室13から油液が流れ出す通路111を構成している。よって、ハウジング405には、内部に通路110の一部の流路が形成されており、内部に通路111の全部の流路が形成されている。フリーピストン407は、これら通路110,111の途中に設けられたハウジング405内の圧力室440内に移動可能に挿入されており、上流と下流の2つの領域である通路110,111を画成する。フリーピストン407とハウジング405との間に設けられ、フリーピストン407の摺動方向両側に配置されたOリング408,409は、このフリーピストン407の変位に対し抵抗力を発生する。つまり、Oリング408は、フリーピストン407がハウジング405に対し一方の上室12側へ移動すると弾性力を発生することになり、Oリング409は、フリーピストン407がハウジング405に対し他方の下室13側へ移動すると弾性力を発生する。
第5実施形態においても、上記したように、フリーピストン407に中立位置へ戻すように付勢力を与える部品としてゴム材料からなるOリング408,409を用いており、フリーピストン407の中立位置では、フリーピストン407とハウジング405との間にあるOリング408,409が、蓋部材402の大径円筒面部418およびハウジング本体403の大径円筒面部423と、フリーピストン407の小径円筒面部433,437との間に位置する。
この中立位置から例えば伸び行程でフリーピストン407がハウジング405に対して軸方向の下室13側に移動すると、ハウジング405の大径円筒面部423とフリーピストン407の小径円筒面部433とがOリング409を、相互間で転動つまり内径側と外径側とが逆方向に移動するように回転させてハウジング405に対して軸方向の下室13側に移動させることになり、その後、ハウジング405の曲面部422の軸方向の上室12側と、フリーピストン407の曲面部434の軸方向の下室13側とが、Oリング409を転動させながらフリーピストン407の軸方向および径方向に圧縮し、続いてハウジング405の曲面部422の軸方向の下室13側と、フリーピストン407の曲面部434の軸方向の上室12とが、Oリング409をフリーピストン407の軸方向および径方向に圧縮する。なお、この中立位置から伸び行程でフリーピストン407がハウジング405に対して軸方向の下室13側に移動すると、ハウジング405の大径円筒面部418とフリーピストン407の小径円筒面部437とがOリング408を、相互間で転動させてハウジング405に対して軸方向の下室13側に移動させることになる。
このとき、ハウジング405の大径円筒面部423とフリーピストン407の小径円筒面部433との間でOリング409を転動させる領域と、ハウジング405の曲面部422とフリーピストン407の曲面部434との間でOリング409を転動させる領域とが、フリーピストン407の移動領域のうち下流側端部から離間した位置において、Oリング409が転動する転動領域であり、下流側端部から離間した位置において、Oリング409がフリーピストン407の移動方向にハウジング405とフリーピストン407と双方に接触した状態で移動する移動領域となっている。この移動とは、Oリング409の少なくともフリーピストン移動方向下流端位置(図8における下端位置)が移動することを言う。
また、ハウジング405の曲面部422とフリーピストン407の曲面部434との間でOリング409を圧縮する領域が、フリーピストン407の移動領域のうち下流側端部側において、Oリング409をフリーピストン407の移動方向に弾性変形させる移動方向変形領域となっている。この移動方向変形領域における弾性変形とは、Oリング409のフリーピストン移動方向上流端位置(図8における上端位置)が移動し、下流端位置が移動しない変形のことである。ここでは、転動領域および移動領域が、移動方向変形領域の一部とラップしている。
続く縮み行程でフリーピストン407がハウジング405に対して軸方向の上室12側に移動すると、ハウジング405の曲面部422の軸方向の下室13側と、フリーピストン407の曲面部434の軸方向の上室12とが、Oリング409の圧縮を解除し、続いて、ハウジング405の曲面部422の軸方向の上室12側と、フリーピストン407の曲面部434の軸方向の下室13側とが、Oリング409を転動させながら圧縮をさらに解除することになり、続いて、ハウジング405の大径円筒面部423とフリーピストン407の小径円筒面部433とがOリング409を、相互間で転動させながらハウジング405に対して軸方向の上室12側に移動させることになる。なお、このとき、Oリング408についても、ハウジング405の大径円筒面部418とフリーピストン407の小径円筒面部437とが、相互間で転動させてハウジング405に対して軸方向の上室12側に移動させることになる。そして、その後、ハウジング405の曲面部417の軸方向の下室13側と、フリーピストン407の曲面部436の軸方向の上室12側とが、Oリング408を転動させながらフリーピストン407の軸方向および径方向に圧縮し、続いてハウジング405の曲面部417の軸方向の上室12側と、フリーピストン407の曲面部436の軸方向の下室13側とが、Oリング408をフリーピストン407の軸方向および径方向に圧縮する。
このとき、ハウジング405の大径円筒面部418とフリーピストン407の小径円筒面部437との間でOリング408を転動させる領域と、ハウジング405の曲面部417とフリーピストン407の曲面部436との間でOリング408を転動させる領域とが、フリーピストン407の移動領域のうち上流側端部から離間した位置において、Oリング408が転動する転動領域であり、上流側端部から離間した位置において、Oリング408がフリーピストン407の移動方向にハウジング405とフリーピストン407と双方に接触した状態で移動する移動領域となっている。この移動とは、Oリング408の少なくともフリーピストン移動方向上流端位置(図8における上端位置)が移動することを言う。
また、ハウジング405の曲面部417とフリーピストン407の曲面部436との間でOリング408を圧縮する領域が、フリーピストン407の移動領域のうち下流側端部側において、Oリング408をフリーピストン407の移動方向に弾性変形させる移動方向変形領域となっている。この移動方向変形領域における弾性変形とは、Oリング408のフリーピストン移動方向下流端位置(図8における下端位置)が移動し、上流端位置が移動しない変形のことである。ここでは、転動領域および移動領域が、移動方向変形領域の一部とラップしている。
上記に続く伸び行程では、ハウジング405の曲面部417の上室12側とフリーピストン407の曲面部436の下室13側とがOリング408の圧縮を解除し、続いて、ハウジング405の曲面部417の下室13側とフリーピストン407の曲面部436の上室12側とがOリング408を転動させながら圧縮をさらに解除することになり、続いて、ハウジング405の大径円筒面部418とフリーピストン407の小径円筒面部437とがOリング408を、相互間で転動させてハウジング405に対して軸方向の下室13側に移動させることになる。このとき、Oリング409についても、ハウジング405の大径円筒面部423とフリーピストン407の小径円筒面部433とが、相互間で転動させてハウジング405に対して軸方向の下室13側に移動させることになる。そして、フリーピストン407が中立位置を通過すると、Oリング408,409を上記と同様に、動作させる。
以上により、Oリング408,409は、移動方向変形領域において移動方向につぶされる。
ここで、ゴム材料からなるOリング408,409によるフリーピストン407の変位に対する荷重の特性は、非線形の特性となる。つまり、フリーピストン407の中立位置の前後の所定範囲では線形に近い特性となり、この範囲を超えると、変位に対して滑らかに荷重の増加率が増大するようになる。上記のように、ピストン11の作動周波数が高い領域では、ピストン11の振幅も小さいため、フリーピストン407の変位も小さくなり、中立位置前後の線形の特性範囲で動作することになる。これにより、フリーピストン407は動きやすくなり、ピストン11の振動に追従して振動して減衰力発生機構32a,32bの発生する減衰力の低減に寄与する。
他方で、ピストン11の作動周波数が低い領域では、ピストン11の振幅が大きくなるため、フリーピストン407の変位が大きくなり、非線形の特性範囲で動作することになる。これにより、フリーピストン407は徐々に滑らかに、動き難くなり、減衰力発生機構32a,32bの発生する減衰力を低減し難くなる。
以上に述べた第5実施形態によれば、一方のOリング408と他方のOリング409との間の室444に作動流体を導く通路穴438を設けたため、緩衝器の組み立て工程にて、室444からエアを抜いて、室444を作動流体で満たすことができる。これにより、上記のように周波数に感応して減衰力を変化させることが、良好にできる。つまり、室444のエアが抜けないと、フリーピストン407の作動時にエアが圧縮されこの室444の内圧が上昇してOリング408,409の緊迫力が増し、フリーピストン407の作動を阻害してしまう可能性があったが、通路穴438を設けたことにより、このようなフリーピストン407の作動の阻害を防止できる。
また、通路穴438は、フリーピストン407における、一方のOリング408および他方のOリング409のいずれにも接触しない位置に形成されているため、通路穴438がOリング408,409に接触することによりOリング408,409の寿命が低下してしまうことを防止できる。したがって、Oリング408,409の長寿命化が図れる。
以上に述べた実施形態によれば、作動流体が封入されたシリンダと、前記シリンダ内に摺動可能に嵌装され、該シリンダ内を2室に区画するピストンと、前記ピストンに連結されると共に前記シリンダの外部に延出されたピストンロッドと、前記ピストンの移動により前記シリンダ内の一方の室から作動流体が流れ出す第1通路および第2通路と、前記第1通路に設けられ前記ピストンの摺動によって生じる前記作動流体の流れを制御して減衰力を発生させる減衰バルブと、前記第2通路に設けられ該第2通路を上流側と下流側とに画成するフリーピストンと、を備え、前記第2通路の途中には、該第2通路の通路面積を調整可能な通路面積可変機構を有する構成とした。これにより、減衰力特性を一層詳細に制御可能となる。
また、前記第2通路は前記ピストンロッド内に形成され、前記通路面積可変機構は、前記ピストンロッド内に配される開口面積可変部材と、該開口面積可変部材を回転または直動させるアクチュエータとからなる構成とした。これにより、簡素かつコンパクトな構造で、第2通路の通路面積を調整可能となる。
また、前記フリーピストンの変位に対し抵抗力を発生する抵抗要素を備える構成とした。このため、ピストンの作動周波数に感応して減衰力を変化させる場合に円滑に変化させることができる。
また、前記抵抗要素がバネであるため、耐久性を向上できる。
また、前記抵抗要素は、前記フリーピストンと該フリーピストンを移動可能に保持するハウジングとの間に設けられた1つまたは複数の弾性体からなり、前記フリーピストンの前記弾性体が接触するフリーピストン接触面、および、前記ハウジングの前記弾性体が接触する前記ハウジング接触面のうち少なくともいずれか一方の面が、前記フリーピストンの移動方向に対し傾斜する面を有しており、前記フリーピストンの移動によって前記フリーピストン接触面のうち前記弾性体と接触している部分と前記ハウジング接触面のうち前記弾性体と接触している部分との最短距離が変化するように構成した。このため、ピストンの作動周波数に感応して減衰力を変化させる場合に円滑に変化させることができる。
また、前記フリーピストン接触面および前記ハウジング接触面のうち少なくともいずれか一方の前記傾斜する面が曲面を有するため、減衰力をさらに円滑に変化させることができる。
前記フリーピストン接触面と前記ハウジング接触面とは、前記フリーピストンの移動方向で対向する部分を有するため、弾性体を良好に圧縮することができる。
前記弾性体は、前記フリーピストンが一方向へ移動したときに圧縮変形する一の弾性体と、前記フリーピストンが他方向へ移動したときに圧縮変形する他の弾性体とを有するため、伸び行程および縮み行程の両方で減衰力を円滑に変化させることができる。
上記各実施の形態は、モノチューブ式の油圧緩衝器に本発明を用いた例を示したが、これに限らず、シリンダの外周に外筒を設け、外筒とシリンダの間にリザーバを設けた複筒式油圧緩衝器に用いてもよく、あらゆる緩衝器に用いることができる。また、複筒式油圧緩衝器の場合、シリンダのボトムに下室とリザーバとを連通するボトムバルブを設け、このボトムバルブに上記ハウジングを設けることで、ボトムバルブに本発明を適用することも可能である。また、シリンダの外部にシリンダ内と連通する油通路を設け、この油通路に減衰力発生機構を設ける場合は、上記ハウジングをシリンダ外部に設けることになる。
なお、上記実施の形態では、油圧緩衝器を例に示したが、流体として水や空気を用いることもできる。
さらに、上記各実施形態では、Oリングを1個または2個の例を示したが、必要に応じて同様の技術思想で、3個以上としてもよい。
また、上記各実施形態では、弾性体としてゴム(樹脂)製のリングを用いた例を示したが、ゴム製の球を周方向に間隔をもって複数も設けてもよく、また、本発明に用いることのできる弾性体は、一の軸方向に弾性を有するもではなく、複数の軸方向に対して弾性を有するものであれば、ゴムでなくともよい。
また、第1の実施の形態では通路面積可変機構は4つの径の異なるオリフィスとし、通路面積を4段階に可変とする構成としたが、例えば特開平7−77233に示されるように、一側にいくにつれて拡径される略くさび型のオリフィスとすることもできる。この構成にすることにより、通路面積が除々に変化するので、減衰力の変化をより滑らかにすることができる。