JP2012127695A - エンドトキシンの濃度検出方法及びエンドトキシン検出用電極チップ - Google Patents

エンドトキシンの濃度検出方法及びエンドトキシン検出用電極チップ Download PDF

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Abstract

【課題】 用いる試薬量は少量で、かつ、極微量のエンドトキシンしか含まれない被検体に対してもエンドトキシンの定量が可能なエンドトキシンの濃度検出方法、及びこのために用いることのできる電極チップを提供すること。
【解決手段】 エンドトキシンを含む被検体と、C因子、B因子、凝固酵素前駆体、及び色素が結合したペプチドを含む試薬を接触させて、C因子から活性型C因子を、B因子から活性型B因子を、凝固酵素前駆体から活性型凝固酵素を次々に発生させるカスケード反応と、当該活性型凝固酵素による、ペプチドからの色素の遊離反応と、を生じさせて、遊離反応後の、被検体及び試薬の混合物に対して、ディファレンシャルパルスボルタンメトリを適用し、測定される電流値に基づいてエンドトキシンを定量する、エンドトキシンの濃度検出方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、エンドトキシンの濃度検出方法及びエンドトキシン検出用電極チップに関する。
エンドトキシンとは、血中に入るとショック症状を起こして死に至るおそれのある発熱性物質であり、注射液など血液投与する医薬品では厳重な管理が求められている。しかし、エンドトキシンは、グラム陰性菌の外膜成分のリポ多糖であるために環境中に普遍的に存在し、さらに耐熱性であるために加熱除去が困難であり、混入防止管理は大変に難しい。
エンドトキシンの検出では、その活性を測定することが重要である。エンドトキシンの活性は、Endotoxin Unit(EU)という単位で表され、米国食品医薬品局はエンドトキシン標準品のEC−2を5EU/ngと定義した。
エンドトキシンの検出法としては、現在のところ、ウサギを用いる発熱試験による方法と、カブトガニの血球成分(Limulus Amebosyte Lysate; LAL)を用いる方法(LAL法)が知られており、実験の簡便性、精度、感度、再現性の点からはLAL法が有利であると言われる。LAL法は、検出をどのように行うかで、ゲル化法、比濁法、比色法に分かれる。
LAL法で利用されている反応のひとつは、LALのカスケード反応である。特許文献1には、このカスケード反応が記載されている。すなわち、カブトガニの血球細胞の抽出物(ライセート)にエンドドキシンが加わると、ライセート中に存在するC因子が活性化され、生成した活性型C因子がB因子の特定箇所を限定水解して活性型B因子を生成し、活性型B因子はプロクロッティングエンザイムを活性化してクロッティングエンザイムに変換し、クロッティングエンザイムはコアギュローゲンのジスルフィド結合で架橋されたループ内の特定箇所を限定水解してペプチドCを遊離しつつ残余の部分がコアギュリンゲルに変換される。
特開平6−130064号公報
上述のように、血液投与の際には、エンドトキシンの厳重な混入防止管理が求められるが、既存の検出法や検出装置では、迅速性かつ高感度が求められる医療現場に適用できるものではなかった。
例えば、エンドトキシンの検出限界は、ゲル化法では30EU/L程度、比濁法では15EU/L程度であり、検出の精度が高いとされる比色法であっても、1EU/Lに到達するのは困難であった。さらに、カブトガニ血球由来の試薬が高価なため、1回当たりの分析にコストがかかり、効果的な混入防止管理に必要な回数の測定を行うことができなかった。また、比色法は、光により検出する方法であるため、透明性の低い被検体や、多成分系の被検体(組織液等)を測定対象にできないという問題があった。
そこで、本発明の目的は、用いる試薬量は少量で、かつ、極微量のエンドトキシンしか含まれない被検体に対してもエンドトキシンの定量が可能なエンドトキシンの濃度検出方法、及びこのために用いることのできる電極チップを提供することにある。
本発明は、エンドトキシンを含む被検体と、C因子、B因子、凝固酵素前駆体、及び色素が結合したペプチドを含む試薬を接触させて、C因子から活性型C因子を、B因子から活性型B因子を、凝固酵素前駆体から活性型凝固酵素を次々に発生させるカスケード反応と、当該活性型凝固酵素による、ペプチドからの色素の遊離反応と、を生じさせて、遊離反応後の、被検体及び試薬の混合物に対して、ディファレンシャルパルスボルタンメトリを適用し、測定される電流値に基づいてエンドトキシンを定量する、エンドトキシンの濃度検出方法を提供する。
遊離反応後の被検体及び試薬の混合物に対して、ディファレンシャルパルスボルタンメトリを適用することによって、ペプチドから遊離した色素を高感度に定量することができる。当該測定法によると、ペプチドから遊離して生じる極微量の色素の濃度を、ペプチドと結合した色素をはじめ、被検体が含まれる混合物に存在するその他の物質の影響を受けることなく定量することが可能となる。
ここで、本発明に係るエンドトキシンの濃度検出方法においては、色素が結合したペプチドは、一端に色素が結合し、他端にペプチド保護基が結合したオリゴペプチドであることが好ましい。
一端に色素が結合し、他端にペプチド保護基が結合したオリゴペプチドは、活性型凝固酵素の作用を受け、容易に色素を放出するために、エンドトキシンの検出精度を向上でき、測定も効率化させることができる。
本発明においては、ディファレンシャルパルスボルタンメトリにより測定される、遊離した色素の還元反応に由来するピーク電流値と、エンドトキシン濃度との相関に基づいて、エンドトキシンを定量することができる。
カスケード反応により生じる活性型凝固酵素によって、ペプチドから遊離して生じる極微量の色素と、ペプチドと結合した色素とは、酸化還元電位が非常に近接したものであると考えられる。しかし、本発明者らは、ディファレンシャルパルスボルタンメトリを適用することによって、遊離した色素が極微量であっても、遊離した色素の還元反応に由来する電流ピークと、ペプチドと結合した色素の還元反応に由来する電流ピークとを明確に分離することが可能になることを見出した。これにより、例えば、遊離した色素の還元反応に由来するピーク電流値と、遊離した色素の濃度との相関、すなわち、遊離した色素の還元反応に由来するピーク電流値と、エンドトキシンの濃度との相関に基づいて、極微量のエンドトキシンを定量することができる。
また、測定をディファレンシャルパルスボルタンメトリで行なうため、電極表面での反応の検出が可能となり、非常に少量の被検体でも濃度測定ができるようになる。よって、僅かな量の被検体でもエンドトキシンの濃度検出が可能になるのみならず、検出の迅速性を高めることができ、非常に有用である。さらに、カブトガニ血球由来の高価な試薬の使用を大幅に節減することができ、安価な測定法の提供が可能になる。
本発明はまた、上記濃度検出方法に適用する、エンドトキシン検出用電極チップであって、基板に形成された、被検体及び試薬を収容する複数のウェルと、複数のウェル内にそれぞれ配置され、カスケード反応後の混合物に対して電圧を印加するための電極と、を備える、電極チップを提供する。この場合において、ウェルの容量は1〜200mmであると好適である。ウェルの容量は1〜100mmが好ましく、1〜50mmがより好ましい。
上記電極チップは、一度に複数の被検体のエンドトキシン濃度を検出でき、また非常に少量の試薬及び被検体でも濃度測定が可能になる。よって、僅かな量の被検体でも安価にエンドトキシンの濃度検出が可能になるのみならず、検出の迅速性を高めることができ、非常に有用である。また、医療現場で、手軽に、迅速に、かつ高精度なエンドトキシンの定量が可能となり、血液投与を行う医薬品や医療器具に対して、エンドトキシンの厳重な混入防止管理ができるようになる。
本発明によれば、用いる試薬量は少量で、かつ、極微量のエンドトキシンしか含まれない被検体に対してもエンドトキシンの定量が可能なエンドトキシンの濃度検出方法、及びこのために用いることのできる電極チップを提供することができる。
LAL分析における、エンドトキシンがpNAを生成するプロセスの模式図である。 本発明に係る電極チップの一例を模式的に示した斜視図である。 電極チップのサイクリックボルタモグラムである。 LGR−pNA及びpNAを含む混合物の(A)ライナースイープボルタモグラム、並びに、(B)ディファレンシャルパルスボルタモグラムである。 LAL分析における、(A)反応時間1時間後、及び(B)2時間後のディファレンシャルパルスボルタモグラムである。 LAL分析における、反応時間1時間後、及び2時間後に測定された電流値から求められたエンドトキシンの検量線である。 LAL分析における、(A)反応時間1時間後のディファレンシャルパルスボルタモグラム、及び(B)反応時間1時間後に測定された電流値から求められたエンドトキシンの検量線である。 rFC分析における、(A)反応時間1時間後、及び(B)3時間後のディファレンシャルパルスボルタモグラムである。 rFC分析における、反応時間1時間後、及び3時間後に測定された電流値から求められたエンドトキシンの検量線である。
以下、場合により図面を参照しながら、本発明のエンドトキシンの濃度検出方法及び電極チップについて説明する。なお、図面の寸法比率は実際の寸法比率と異なっていてもよい。
[エンドトキシンの検出方法]
実施形態に係るエンドトキシンの検出方法について説明する。当該エンドトキシンの検出方法は、下記(i)、(ii)のステップを含んで構成され得る。
(i)エンドトキシンを含む被検体と、C因子、B因子、凝固酵素前駆体、及び色素が結合したペプチドを含む試薬を接触させ、カスケード反応とペプチドからの色素の遊離反応とを生じさせるステップ。
(ii)遊離反応後の、被検体及び試薬の混合物に対して、ディファレンシャルパルスボルタンメトリを適用し、測定される電流値に基づいてエンドトキシンを定量するステップ。
以下、(i)、(ii)について詳述する。
まず、(i)について説明する。
カスケード反応は、図1に示すように、エンドトキシンを含む被検体をC因子に作用させることにより、C因子から活性型C因子を、B因子から活性型B因子を、凝固酵素前駆体から活性型凝固酵素を次々に発生させ、当該活性型凝固酵素により、色素が結合したペプチドから色素を遊離させる反応である。
ここで、C因子とは、エンドトキシン感応性の細胞内セリンプロテアーゼ前駆体をいい、グラム陰性菌に対するカブトガニの生体防御機構カスケードの最初の反応を担当しているものである。C因子は、分子量123000の糖タンパク質であり、分子量80000の重鎖と分子量43000の軽鎖で構成されている。
エンドトキシンによりC因子は活性型C因子へと変化するが、生成した活性型C因子はB因子(分子量64,000)の特定箇所を限定水解して活性型B因子を生成し、活性型B因子は凝固酵素前駆体(分子量54,000)を活性化して活性型凝固酵素に変換する。
なお、C因子、B因子、及び凝固酵素前駆体を含む物質として、カブトガニ・アメボサイト・ライセート(カブトガニ血球抽出液)が挙げられる。
色素が結合したペプチドとしては、一端に色素が結合し、他端にペプチド保護基が結合したオリゴペプチドを用いることができる。当該オリゴペプチドは、例えば、X−A−Y(式中、Xは保護基、Yは色素、Aはオリゴペプチドである)で示されるものを挙げることができる。保護基Xは、ペプチドの保護基、例えば、t−ブトキシカルボニル基(BoC)、ベンゾイル基等を挙げることが可能であり、色素Yとしては、例えば、pNA(p−ニトロアニリン)、MCA(7−メトキシクマリン−4−酢酸)、DNP(2、4−ジニトロアニリン)、Dansyl色素等が挙げられる。オリゴペプチドとしては、アミノ酸数が2〜10、好ましくは2〜5、さらには3〜4のものがよく、トリペプチドとしては、Leu−Gly−Arg(LGR;一文字表記)、及び、Thr−Gly−Arg(TGR;一文字表記)等を例示することができる。
エンドトキシンを含む被検体と、C因子、B因子、凝固酵素前駆体及び色素が結合したペプチドを含む試薬とを接触させる際、好ましくはpH6.0〜9.0、より好ましくはpH7.0〜8.5の緩衝液を併用することが好ましい。これにより、上記色素の遊離量を増加させることができる。緩衝液としては、例えば、Tris−Ac緩衝液、Tris-HCl緩衝液、リン酸緩衝液、HEPES緩衝液、PIPES緩衝液が挙げられる。
カスケード反応により生じた活性型凝固酵素によって、上記被検体及び上記試薬の混合物中には、色素が結合したペプチドから色素が遊離する。具体的には、当該色素は、例えば、色素が結合したペプチドが、Boc−Leu−Gly−Arg−pNAである場合、pNAである。
カスケード反応及び遊離反応の反応温度は、好ましくは20℃〜50℃、より好ましくは25〜45℃である。また、反応時間は好ましくは30分以上、より好ましくは1時間以上、さらに好ましくは2時間以上である。これにより、充分な量の遊離色素を得ることができる。なお、被検体と試薬の合計容量が1〜200mm(特には1〜100mm、さらには1〜50mm)のように少ない場合は、反応温度を30〜40℃とし、反応時間を15分〜1時間とすることができる。
続いて、(ii)について説明する。
(ii)遊離反応後、上記被検体及び上記試薬の混合物に対して、ディファレンシャルパルスボルタンメトリを適用し、測定される電流値に基づいてエンドトキシンを定量する。すなわち、反応後の上記被検体及び上記試薬の混合物には、ペプチドから遊離した色素が存在しており、特定の電位において、当該色素が酸化及び還元反応する。この酸化又は還元反応に由来する電流ピークのピーク電流値と、色素の濃度、すなわち、エンドトキシンの濃度との間には相関が成り立ち、当該相関を利用して、色素の濃度を定量する。
具体的には、色素がpNAである場合、電極電位が還元電位以下になると、pNAは下記式(1)のスキームに従って電極から電子を受取り、還元される。このときの電子の受け渡しが電流として観察される。ディファレンシャルパルスボルンメトリ法で測定されるピーク電流値は、pNAの濃度に比例する。エンドトキシン濃度とカスケード反応の進行には相関があるため、エンドトキシン濃度と生じたpNAの濃度、すなわちピーク電流値にも相関が生じる。したがって、エンドトキシン濃度とピーク電流値の相関を示した検量線を予め作成することにより、ピーク電流値から、エンドトキシンの濃度を測定することができる。
上記被検体及び上記試薬の混合物には、ペプチドから遊離した色素のほかに、ペプチドに結合した色素も存在する。ペプチドから遊離した色素と、ペプチドに結合した色素とは、酸化還元電位が非常に近接しており、一般に、分離が非常に困難であると考えられている。また、これらの濃度が微量であるほど、酸化還元電流を得ることは難しい。本発明によれば、ディファレンシャルパルスボルタンメトリを適用することにより、極微量のペプチドから遊離した色素の還元に由来する電流ピークと、極微量のペプチドに結合した色素の還元に由来する電流ピークとを分離して得ることができ、エンドトキシンの濃度を高い精度で検出することができる。
上述のように、極微量のペプチドから遊離した色素の還元に由来する電流ピークと、極微量のペプチドに結合した色素の還元に由来する電流ピーク両者の電流値のピークを明確に分離できたことは驚くべき効果である。また、比色法のように、光により検出する方法ではないため、透明性の低い被検体や、多成分系の被検体(組織液等)も測定対象にできると考えられ、実用性が極めて高い。
次に、ディファレンシャルパルスボルタンメトリを行う際の具体的な操作を説明する。上記被検体及び上記試薬の混合物に、電極を入れ、ディファレンシャルパルスボルタンメトリー(DPV)に基づく測定を行う。すなわち、作用極に、時間変化に伴って電位を一定方向に走査しながら複数のパルス電位を印加する。電位は参照極に対して制御し、電流は作用極と対極の間に流す。複数のパルス電位は、パルス幅ΔEが互いに等しく、かつ、第1のパルス電位の電位ステップ(ΔE)が終了した直後の電位E1,eと、当該第1のパルスのすぐ後の第2のパルス電位の電位ステップ(ΔE)が開始する直前の電位E2,sとが等しい。第1の電位ステップが開始する直前の電流値I(t1,s)と、当該第1の電位ステップが終了する直前の電流値I(t1,e)との差ΔIをDPVの電流値として測定する。印加電位を横軸に、DPVの電流値を縦軸にプロットしたグラフを用いることで、ピーク電流値を求める。エンドトキシン濃度とピーク電流値の相関を示した検量線を予め作成することにより、ピーク電流値からエンドトキシンの濃度を算出すことができる。
使用する電極に特に制限はないが、作用極には、例えばグラッシーカーボン(GC)、カーボンペースト電極、グラファイト電極を、対極にはAu、Pt等の電気化学的に安定で挙動がよく知られている電極を、参照極にはAg/AgCl電極等を用いることができる。測定装置としては、通常電気化学測定に使用されるポテンショスタットや同等の機能をもつ装置を使用することができる。
電位の印加は、例えば、通常のDPVの電位パルスの印加モードであればよい。例えば、パルス幅ΔE(ΔE、ΔE)は、1〜250mVとすることができる。また、パルス電解時間(t1,e−t1,s)は、5〜200msとすることができる。また、電位走査速度は、1〜200mV/sとすることができ、検出感度を向上させる観点から、1〜10mV/sとすることがより好ましい。
次に、エンドトキシン検出用電極チップについて説明する。図2は、実施形態に係る電極チップの斜視図である。図2に示す電極チップ1は、表面に絶縁層を有する矩形状のガラス基板2の主面上に、複数の貫通孔が形成された矩形状プレート5が設けられたものである。ガラス基板2の表面には、複数の炭素電極3及び端子7がガラス基板2の長手方向にそれぞれ一列に形成されている。また、ガラス基板2と絶縁層との間には、上記炭素電極3と端子7とを一対にして、両者を電気的に接続させる導線4が複数形成されている。複数の貫通孔が形成された矩形状プレート5が、炭素電極3がウェル6内に配置されるようにガラス基板2の主面上に配置されることにより、電極チップ1は、ウェル6内に1つの炭素電極3が設けられたウェルを複数備えることとなる。
ガラス基板2としては、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)フィルムが表面に形成されたガラス基板を使用できる。これにより、炭素電極3や、場合により導線4や端子7をエッチングにより形成することができる。炭素電極3がウェル6内に設けられることにより、電極チップ1をエンドトキシンの検出装置に好適に用いることができる。なお、ウェル内部に設けられた炭素電極3に接続する導線4及び、導線4に炭素電極3と一対となるように接続される端子7は、導電性の観点から、金または白金電極であることが好ましい。
貫通孔が形成されたプレート5としては、耐薬品性、耐衝撃性に優れる等の観点から、ポリジメチルシロキサン、アクリル樹脂等が挙げられる。
DLCが表面に形成された基板、及び貫通孔が形成されたプレートの形状は特に制限されず、正方形、矩形、円形、楕円形等いずれの形状であってもよい。また、ウェル6の形状も特に制限されないが、プレートへの貫通孔の形成させやすさの観点から、ウェル6の断面形状は、円形、楕円形が好ましい。電極チップは、検出対象物を含む液を数μL〜数十μL程度用いて測定することから、ウェルの大きさは、ウェルの断面が円形の場合は、φ=1〜5mmであればよく、深さは1〜10mmであればよい。
[エンドトキシン検出用電極チップの製造方法]
以下、エンドトキシン検出用電極チップの製造方法について説明する。エンドトキシン検出用電極チップは、下記(a)〜(e)のステップを含む方法により製造し得る。
(a)基板の洗浄
導電性DLC基板の表面を、アセトン、2−プロパノール、超純水等を用いて洗浄する。さらに、Oプラズマアッシング処理を行ってもよい。
(b)フォトレジストパターニング
炭素電極を形成するエッチング工程に先立ち、ウェル6内部に配置される電極になる部分をフォトレジストで覆う。フォトレジストは、スピンコータ等でフォトレジスト前駆体を塗布し、75〜110℃、60〜120秒間のプレベークの後、水銀ランプ等で露光し現像する。フォトレジストとしては、ナフトキノンアジド系アルカリ可溶性シリコーンポリマー等を使用できる。
(c)エッチング
例えば、Oプラズマアッシング装置により、DLCのエッチングを行う。さらに、Oエッチングの終了した基板を、ガラスとDLCの間に介在する金属等から構成される中間層をエッチングする。
(d)導線部の作製
炭素電極の対になる端子7及び導線4を形成するために、スパッタリング装置で、所望の金属のスパッタリングを行う。金スパッタの場合、ガラスとの密着性を向上させる観点から、金スパッタの前に、TiあるいはCrスパッタ及びPdスパッタを行うことが好ましい。
(e)絶縁膜パターニング
導線4を被覆する目的で、絶縁膜のパターニングを行う。絶縁膜の前駆体を塗布した後、75〜110℃で1〜30分間べークした後、フォトマスクを用い、水銀ランプを露光し、露光部の架橋反応を行うために80〜120℃で3〜120分間ポストべークする。現像し、リンスを行った後、150〜200℃で30〜120分間ハードべークを行うことによって、絶縁膜を得ることができる。絶縁膜の材料としては、エポキシ系フォトレジスト、ポリイミドレジスト等を使用できる。
上述のようにして、本実施形態に係る電極チップを製造することができる。本電極チップは、ウェルを複数有するため、連続的に測定が可能であり、かつ、小型化が可能であるため、医療用現場で実用的に使用することができる。
次に、上記電極チップを用いたエンドトキシンの検出について説明する。
[エンドトキシンの検出]
上記電極チップを用いたエンドトキシンの検出法においては、上記ウェル6中に、エンドトキシンを含む被検体溶液と、C因子、B因子、凝固酵素前駆体及び色素が結合したペプチド(合成基質)を含む試薬とを混合した液を収容し、一定時間反応させる。次に電極を配置し、時間変化に伴って電位を一定方向に走査しながら複数のパルス電位を印加する。複数のパルス電位は、パルス幅ΔEが互いに等しく、かつ、第1のパルス電位の電位ステップΔEが終了した直後の電位E1,eと、当該第1のパルスのすぐ後の第2のパルス電位の電位ステップΔEが開始する直前の電位E2,sとが等しく、第1の電位ステップが開始する直前の電流値I(t1,s)と、当該第1の電位ステップが終了する直前の電流値I(t1,e)との差を測定することにより、エンドトキシンの濃度を算出すことができる。
色素としてpNAを用いる態様においては、pNAが結合したペプチド(合成基質)から分離して生じるpNAに由来する電流値のピークと、合成基質に結合したpNAに由来する電流値のピークとを、精度よく分離して検出することができる。したがって、合成基質から分離して生じるpNAと合成基質に結合したpNAとを直接分離せずとも、合成基質から分離して生じるpNAのみを、選択的かつ高精度に検出できる。また、上記電極チップは、ウェルを複数有するため、連続的に測定が可能であり、かつ、小型化が可能であるため、医療用現場で実用的に使用することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。
本実施例で使用した試薬は以下の通りである。
[試薬]
1)標準エンドトキシン溶液:エンドトキシン標準品はPyroGene(登録商標)キット添付のE.coli055:B5由来Control standardを用いた。PyroGene(登録商標)キットはCambrex社又はLonza社より購入した。標準エンドトキシン溶液は、PyroGene(登録商標)キット添付のエンドトキシンフリー水を用いて調製し、使用の直前に15分間以上ボルテックスミキサーで激しく攪拌した。なお、エンドトキシン濃度は測定溶液中の最終濃度で示した。
2)50mM NaClを含む100mM Tris−Ac緩衝液(pH 7.5):混入エンドトキシンを除去するためにMustang(登録商標)membren付きAcrodisc(登録商標)units(Pall Corporation USA)でフィルタリングした。
3)LAL酵素溶液としては、C因子、B因子および凝固酵素前駆体を含むライセート試薬と、合成基質のBoc−Leu−Gly−Arg−pNA(LGR−pNA)が凍結乾燥状態で1テスト分ずつ専用の試験管に封入されている、エンドスペシー(登録商標)ES−24Sセットの試薬を用いた。
4)rFC(組み換えC因子)酵素溶液としてはPyroGene(登録商標)キットの試薬を用いた。合成基質のBoc−Val−Pro−Arg−pNA(VPR−pNA;渡辺化学工業社製)をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、10mMのストック溶液として−20℃で保管した。VPR−pNAの希釈には上記Tris−Ac緩衝液を用いた。試薬の調製はエンドトキシンのコンタミネーションを防ぐためにクリンベンチ内で行った。
5)LGR−pNA(BACHEM社製)及びpNA(和光純薬工業社製):ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、10mMのストック溶液として−20℃で保管した。LGR−pNA及びpNAの希釈にはエンドスペシー(登録商標)に添付されている緩衝液を用いた。
本実施例における電気化学測定法で用いた装置及び測定法は以下の通りである。
[装置及び測定法]
1) 測定装置:ポテンショスタット(Ivium Technologies社製、CompactStat)
2) 電極:96ウェルを用いる測定;作用極には直径1mmのグラッシーカーボン(GC)ディスク電極(BAS株式会社製)を、対極にはAuシートを、参照極にはAg/AgClをそれぞれ用いた。作用極表面の状態を一定に保つため、1回の測定ごとにGC電極表面を0.05μmのアルミナスラリー(Buehler)で1分以上研磨した。電極チップを用いる測定;チップ上の直径1.0mmの炭素電極を作用極として使用し、Ag/AgCl参照極とPt対極(φ=200μmのPt線)をウェルへ挿入して測定を行った。
3)測定法:ライナースィープボルタンメトリ(LSV);走査速度20mV/sで行った。ディファレンシャルパルスボルタンメトリ(DPV);パルス時間70ms、パルス幅50mV、電位ステップ5mV、走査速度5mV/sで行った。電位はすべてAg/AgCl参照電極を基準にした。
本実施例におけるエンドトキシンの検出法は以下の通りである。
<LALカスケード反応を用いるエンドトキシンの検出>
ライセート試薬、LGR−pNAおよび緩衝液は、エンドスペシー(登録商標)添付の試薬を用いた。ライセート試薬および基質の凍結乾燥試薬の入った試験管へ、緩衝液200μLおよびエンドトキシン標準溶液200μLを添加して撹拌し、200μLを96ウェルプレートへ移した。エンドトキシンがC因子への結合する反応がトリガーとなり、B因子、凝固酵素を次々に活性化してLALカスケード反応が進む。室温で1時間または2時間後、凝固酵素によりLGR−pNAから遊離したpNAを直径1mmのGC電極でDPVにより検出した。
<電極チップを用いるエンドトキシンの検出>
[電極チップの作製]
炭素電極チップは、下記に示した方法で電極が形成される導電性DLC基板と、貫通孔が形成されたポリジメチルシロキサンプレートとから構成される。
(導電性DLC基板への電極の形成)
(a)基板の切り落としと洗浄
基板には、ナノテック株式会社製のDLCがガラス基板の表面に製膜された、導電性DLC基板を用いた。基板をガラスカッターで2.0cm×3.0cmに切り出し、表面をアセトン、2−プロパノール、超純水の順に用いて洗浄した。さらに30秒間Oプラズマアッシング処理を行って、表面を清浄化した。
(b)フォトレジストパターニング
ナフトキノンアジド系フォトレジストでアルカリ可溶性シリコーンポリマーを含有するポジ型フォトレジストのFH−SP(富士ハントエレクトロニクステクノロジー社製)を5000rpmでDLC表面に30秒間スピンコートした。90℃、90秒間プレべークの後、水銀ランプで30秒間露光した。主成分がTMAHである専用現像液FHD−5(富士フィルムエレクトロニクス)で現像し、蒸留水中でリンスした。
(c)エッチング
プラズマアッシング装置(ヤナコ社製、LTA−101)を用いて導電性DLC基板のエッチングを行った。100Wで約60分間アッシングを行うと、導電性DLCのパターンが作製された。さらに、ガラスと導電性DLCの中間層であるバインダー金属をエッチングするために、所定のエッチング液へ、Oエッチングの終了した基板を浸漬し、溶液をパドルしながら約1時間反応させた。
(d)導線4及び端子7の作製
高周波マグネトロンスパッタリング装置(キヤノンアネルバ社製、L−332S−FH)を用いた。バインダーとしてTiとPdを用いた。スパッタリング条件は下記の通りである。
Ar流量:10cm/min
チャンバー内圧:10Pa
チャンバー内温度:100℃
RF出力:200W
Ti析出時間:7分間、Pd析出時間:4分間、Au析出時間:7分間
(e)絶縁膜パターニング
導線4を被覆する目的で、ガラス基板表面に下記の方法でSU−8絶縁膜のパターニングを行った。
疎水化剤としてMICROPOSITPRIMERを3000rpmで10秒間スピンコートした後、エポキシ系のネガ型フォトレジストSU−8 3010(マイクロケム社製)を3000rpmで30秒間スピンコートした。次に、レジストの溶媒を蒸発させるため、95℃で5分間べークした後、フォトマスクを用い、水銀ランプ(ミカサ社製、MA−20)を30秒間露光した。露光部の架橋反応を行うために、95℃で5分間ポストべークした。室温まで冷却後、SU−8developer(有効成分:1−メトキシ−2−プロピルアセトン;ミクロケム社製)で現像した。リンスは2−プロパノールで行った。さらに、180℃で30分間ハードべークを行うことによって、架橋反応を進めた。
(ウェルが形成されたポリジメチルシロキサンプレート)
内径3.0mm、深さ5.0mmの貫通孔が6個形成されたポリジメチルシロキサンプレートを準備した。
ポリジメチルシロキサンプレートのウェルの内部に、炭素電極が配置されるように、ガラス基板上にポリジメチルシロキサンプレートを取り付けた。図2に、作製された電極チップの斜視図を示す。得られた電極チップは、コンタミネーションを防ぐために、使用直前に30秒のプラズマアッシング処理を行った。
[電極の評価]
電極チップの評価を下記のとおり行った。ウェルが形成されたポリジメチルシロキサンプレートを取り付けた電極チップを30秒間プラズマアッシング処理し、ウェルへ4mMフェロシアン化カリウム水溶液(0.1M KCl含む)を40μL添加した。Ag/AgCl参照極とPt対極(φ=200μm Pt線)をウェルへ挿入し、サイクリックボルタンメトリーによる測定を行った。電位は100mV/sで−0.5V→1.0V→−0.5Vと走査した。6チャネルの測定結果を図3に示す。チャネル1が他のピークと比較して少しピークセパレーションが広く、ボルタモグラム全体が還元方向にシフトした形状となったが、その他のピークはほぼ同じ形状になった。下記式(2)に示す可逆系のボルタモグラムのピーク電流の式から電極直径を計算した。
ここで、Ipaは酸化電流ピーク(A)、nは反応電子数、Fはファラデー定数(9.65×10C・mol−1)、Aは電極面積(cm)、Dは還元種の拡散係数(cm・s−1)、vは走査速度(V・s−1)、C は還元種のバルク濃度(mol・cm−3)、Rは気体定数(8.31J・mol−1・K−1),Tは温度(K)である。Fe(CN) 4−の拡散係数は6.5×10−6cm・s−1とした。その結果、チャネル1は電極直径が0.956mm、その他の電極は0.994から1.001mmと計算された。算出された電極面積の統計値を表1に示す。
炭素電極は直径が1.0mmになるように設計して作製しており、ほぼ設計どおりの大きさの電極が出来上がった。また、標準偏差および変動係数も非常に小さく、大きさの揃った電極が作製できた。また,サイクリックボルタモグラムのピークは、チャネル1は酸化ピークが0.31V、還元ピークが0.15V、その他のチャネルは酸化ピークが0.28V(チャネル5のみ0.27V)、還元ピークが0.18Vに現れた。この結果より、ピークセパレーションは0.09Vから0.16Vでフェロシアン化イオンの電極反応は十分に速く,どの電極も同様の反応性をもつことが分かった。
エンドスペシー(登録商標)のライセート試薬および基質の凍結乾燥試薬の入った試験管へ、エンドスペシー(登録商標)に添付されている緩衝液200μLを添加して試薬を溶解し、反応試薬とした。反応試薬20μLおよびエンドトキシンサンプル溶液20μLを電極チップのウェルへ添加し、軽く撹拌して室温で1時間または2時間反応させた。反応後、Ag/AgCl参照極とPt対極(φ=200μm Pt線)をウェルへ挿入し、DPVによる測定を行った。
以下、各種評価結果について説明する。
(1)LSVに対するDPVの有用性の評価
LGR−pNAとpNAの混合溶液(エンドスペシー(登録商標)に添付されている緩衝液溶液、LGR−pNAとpNAの濃度合計:100μM)に対して、LSVとDPVを行った。測定の結果を図4に示す。LSVのボルタモグラムには−0.65V付近と−0.84V付近に(図4(A)参照)、また、DPVのボルタモグラムには−0.60V付近と−0.77V付近(図4(B)参照)にピークがみられ、それぞれLGR−pNAとpNAのピークであることがわかった。LSVのピークと比較して、DPVのピークは二つのピークが明確に分離され、ピークの大きさと対応する分子種の濃度の相関が良好であった。すなわち、グラフ(a)〜(f)に対応するLGR−pNAとpNAの濃度比(MLGR−pNA:MpNA)は、(a)100μM:0μM、(b)90μM:10μM、(c)75μM:25μM、(d)50μM:50μM、(e)25μM:75μM、(f)0μM:100μMであった。
これらの結果から、LGR−pNAとpNAの混合溶液からpNAを定量検出するには、DPVが適当であるとわかった。
(2)LALカスケード反応を用いるエンドトキシンの電気化学検出
実施例1
ライセート試薬および基質の凍結乾燥試薬の入った試験管へ、緩衝液200μLおよびエンドトキシン標準溶液200μLを添加して撹拌し、200μLを96ウェルプレートへ移した。室温で1時間または2時間反応し、直径1mmのGC電極でDPV測定を行った。結果を図5に示した(図5(A)は反応時間1時間後、図5(B)は反応時間2時間後)。LGR−pNA及びpNA由来のピークがそれぞれ−0.64Vと−0.75V付近に観察された。LGR−pNAのピークには−0.6V付近にみられる別のピークが重なっていた。エンドトキシンの濃度は、(a)0EU/L、(b)0.5EU/L、(c)5EU/L、(d)50EU/L、(e)500EU/Lであり、エンドトキシンの濃度が高くなるに従って−0.64V付近のLGR−pNA由来のピークが減少し、−0.75V付近のpNA由来のピークが増大した。
0EU/Lの電流値を基準とした−0.75V付近のピーク電流値をシグナルに採用し、エンドトキシン濃度に対してプロットしたグラフを図6に示す。それぞれの点は5回の繰り返し実験の平均値であり、エラーバーは±標準偏差を示す。DPVのシグナルはエンドトキシン濃度および反応時間に依存した.本手法によって反応時間1時間では5EU/L以上のエンドトキシンの検出が可能であり、反応時間2時間では0.5EU/L以上の検出が可能であった。カスケード反応を利用しない、後述のrFC分析(図8及び9)と比較するとLALのカスケード反応を利用することによって、約1万倍の感度上昇効果を得ることができたことが分かった。
(3)炭素電極チップによるエンドトキシンの検出
実施例2
炭素電極チップによるエンドトキシンの検出を行った。エンドスペシー(登録商標)の凍結乾燥試薬を緩衝液で溶解した反応試薬とエンドトキシン水溶液をそれぞれ20μLずつ各ウェルへ入れて混合し、1時間反応させた後にDPVで測定したボルタモグラムを図7(A)に示す。エンドトキシンの濃度は、(a)0EU/L、(b)0.5EU/L、(c)5EU/L、(d)50EU/L、(e)500EU/Lであり、エンドトキシンの濃度が高くなるに従って、−0.63Vのピークが減少し、−0.85Vから−0.8Vに新たなピークが出現した。このことから、−0.63VのピークはLGR−pNA由来であり、−0.85Vから−0.8VのピークはpNA由来であると分かる。
検量線の作製には、0EU/Lのサンプルを3回測定したときの−0.85Vの平均電流値(−0.209μA)とそれぞれのサンプルについて−0.85Vから−0.8Vに現れるピーク電流値との差を用いた。作製した検量線を図7(B)に示す.ドットは3回の繰り返し実験の平均値,エラーバーは3回の測定の±標準偏差を表す.この検量線から、本手法によって5EU/L以上のエンドトキシンが1時間の反応時間で検出できることがわかった。炭素電極チップを用いた本結果は、実施例1の結果とほぼ同じであった。
比較例1
(4)rFCを用いるエンドトキシンの電気化学検出
エンドトキシンを含む被検体と、C因子(994アミノ酸残基をもつ109648Daの組み換えC因子:rCF)及び色素が結合したペプチドを含む試薬と、を接触させて、C因子から活性型C因子を発生させ、色素が結合したペプチドから色素を遊離させた。遊離反応後の、被検体及び試薬の混合物に対して、ディファレンシャルパルスボルタンメトリを適用し、エンドトキシンの検出を行った。96ウェルプレートにTris−Ac緩衝液、rFC酵素溶液、VPR−pNA溶液、エンドトキシン標準溶液を入れて37℃で1時間あるいは3時間反応させ、遊離したpNAを直径1mmのGC電極でDPVにより検出した。DPV法によるエンドトキシンの検出の(A)反応1時間後、(B)反応3時間後のボルタモグラムを図8に示す。エンドトキシンの濃度は、(a)0EU/L、(b)10EU/L、(c)100EU/L、(d)1000EU/L、(e)5000EU/L、(f)10000EU/Lであり、100EU/Lから10,000EU/Lの範囲で、エンドトキシン濃度が高くなるに従ってVPR−pNA由来の−0.60V付近のピークが減少し、pNA由来の−0.75V付近のピークが増大した。0EU/Lの電流値を基準とした−0.75V付近のピーク電流値をシグナルに採用し、エンドトキシン濃度に対してプロットしたグラフを図9に示す。それぞれの点は5回の繰り返し実験の平均値、エラーバーは±標準偏差を表す。DPVのシグナルはエンドトキシン濃度および反応時間に依存することが分かった。
本手法によって反応時間1時間では5,000EU/L以上のエンドトキシンの検出が可能であり、反応時間3時間では1,000EU/L以上の検出が可能であった。しかし、一般的なエンドトキシン検出法であるLAL法は30分で10EU/Lの検出が可能であり、また、長期透析液の管理など医療現場では30分で1EU/Lの検出法が求められていることから、実用化には大幅な感度の改善が必要である。
以上、本実施例によれば、反応時間2時間で0.5EU/Lのエンドトキシン検出が可能になり、rFCを用いるエンドトキシンの電気化学検出法と比較しても感度が顕著に向上することとが明らかである。
1…電極チップ、2…ガラス基板、3…炭素電極、4…導線、5…プレート、6…ウェル、7…端子。

Claims (5)

  1. エンドトキシンを含む被検体と、
    C因子、B因子、凝固酵素前駆体、及び色素が結合したペプチドを含む試薬を接触させて、
    前記C因子から活性型C因子を、前記B因子から活性型B因子を、前記凝固酵素前駆体から活性型凝固酵素を次々に発生させるカスケード反応と、当該活性型凝固酵素による、前記ペプチドからの前記色素の遊離反応と、を生じさせて、
    前記遊離反応後の、前記被検体及び前記試薬の混合物に対して、ディファレンシャルパルスボルタンメトリを適用し、測定される電流値に基づいてエンドトキシンを定量する、エンドトキシンの濃度検出方法。
  2. 前記ペプチドは、一端に前記色素が結合し、他端にペプチド保護基が結合したオリゴペプチドである、請求項1記載の濃度検出方法。
  3. ディファレンシャルパルスボルタンメトリにより測定される、遊離した前記色素の還元反応に由来するピーク電流値と、エンドトキシン濃度との相関に基づいて、エンドトキシンを定量する、請求項1又は2記載の濃度検出方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の濃度検出方法に適用する、エンドトキシン検出用電極チップであって、
    基板に形成された、前記被検体及び前記試薬を収容する複数のウェルと、
    前記複数のウェル内にそれぞれ配置され、前記カスケード反応後の前記混合物に対して電圧を印加するための電極と、を備える、電極チップ。
  5. 前記ウェルの容量は1〜200mmである、請求項4記載のエンドトキシン検出用電極チップ。
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