JP2012127038A - 運動用衣服 - Google Patents

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Abstract

【課題】快適なランニングのフォームを導くことができる運動用衣服を提供する。
【解決手段】本発明の運動用衣服10は、身体にほぼ密着した状態で着用される運動用衣服であり、運動用衣服10は、少なくとも足首から膝下までを被覆する部分を有し、伸縮性を有する生地で構成されており、運動用衣服10は、緊締力の強い緊締部を有し、前記緊締部が、膝内側部から脹脛内側を通り、内果にかけて、膝蓋骨を含まず、膝の内側、脛骨の遠位1/2〜2/3及び足根骨内側を含む領域に配置された緊締部Zを含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、少なくとも足首から膝下までを被覆する部分を有する運動用衣服に関する。
従来から、スポーツウェアについて、適切な素材を用いることで、運動をサポートする機能を持たせる研究が進められてきている。また、近年では、緊締力が強い部分を形成し、運動をサポートする機能を向上させたスポーツウェアが提案されている。例えば、特許文献1には、足の甲、土踏まず、足関節、足首を覆い、下肢上部に向かってその上段部は傾斜状になるよう形成した締圧部を具備する下肢用衣料が開示されている。また、特許文献2には、仙骨を固定するとともに股関節に外旋をかけてヒップを寄せるための第1サポート領域と、ヒップを上方に持ち上げるための第2サポート領域と、少なくとも大腿に圧力を加えるための第3サポート領域と、少なくとも内股に圧力を加えるための第4サポート領域とを含む着圧領域が設けられたトレンカが開示されている。
特開2008−50705号公報 実用新案登録第3161697号公報
しかし、特許文献1〜2に記載のスポーツウェアは、締圧部や着圧領域により、関節を安定に保っているが、ランニング時の快適なフォームのためにさらに改善することが望まれる。また、特許文献1に記載の下肢用衣料は、足全体に圧迫を加えており、着用感が損なわれるという問題がある。また、特許文献2に記載のトレンカは、股関節や膝関節を安定に保っているが、足関節を保護するためには更なる改善が必要となる。
本発明は、上記従来の問題を解決するため、快適なランニングのフォームを導くことができる運動用衣服を提供する。
本発明の運動用衣服は、身体にほぼ密着した状態で着用される運動用衣服であり、上記運動用衣服は、少なくとも足首から膝下までを被覆する部分を有し、伸縮性を有する生地で構成されており、トレンカタイプの下半身部上記運動用衣服は、緊締力の強い緊締部を有し、上記緊締部が、膝内側部から脹脛内側を通り、内果にかけて、膝蓋骨を含まず、膝の内側、脛骨の遠位1/2〜2/3及び足根骨内側を含む領域に配置された緊締部Zを含むことを特徴とする。
本発明の運動用衣服は、膝内側部から脹脛内側を通り、内果にかけて、膝蓋骨を含まず、膝の内側、脛骨の遠位1/2〜2/3及び足根骨内側を含む領域に緊締部を配置することにより、着用感を低下させずに、足首を固定し、ランニング時に足の屈曲を防ぐとともに、脹脛の使用を軽減させ、足がをスムーズに前に進むめることができる。
図1Aは本発明の運動用衣服の一実施態様の正面図であり、図1Bは同背面図であり、図1Cは同外側面図である。 図2Aは本発明の運動用衣服の他の一実施態様の正面図であり、図2Bは同背面図であり、図2Cは同外側面図である。 図3Aは本発明の運動用衣服の他の一実施態様の正面図であり、図3Bは同背面図であり、図3Cは同外側面図である。 図4Aは本発明の運動用衣服の他の一実施態様の正面図であり、図4Bは同背面図であり、図4Cは同外側面図である。 図5は本発明の運動用衣服の一実施態様における前身頃のパターンを説明する図である。 図6は本発明の運動用衣服の一実施態様における前身頃の他の一つのパターンを説明する図である。 図7は本発明の実施例1〜2及び比較例2における積分値筋電図のTukeyの方法による多重比較の結果を示すグラフである。
ランニングなどの運動において、足離地時には、脹脛を使って地面を蹴ることで前に進むようになり、特に女性はハムストリングスの筋力が弱いため、脹脛で走る傾向が強く、脹脛が大きくなることが懸念されている。また、足離地時には、特に女性は、関節が柔らいため足首の屈曲が見受けられる。本発明者らは、上記の問題を解決するため鋭意検討した結果、膝内側部から脹脛内側を通り、内果にかけて、膝蓋骨を含まず、膝の内側、脛骨の遠位1/2〜2/3及び足根骨内側を含む領域に緊締部を配置することで、着用感を低下させずに、足首を固定し、ランニング時に足の屈曲を防げるとともに、脹脛の使用を軽減できることを見出し、本発明に至った。
本発明において、「伸縮性を有する」とは、運動用衣服を構成する生地の身体の短軸方向における伸長率及び/又は身体の長軸方向における伸長率が0%を超えることを意味する。なお、本発明において、伸長率とは、JIS L 1096に準じて測定したものをいい、具体的には、荷重をかけていない状態の生地片の長さをAとし、15Nの荷重をかけた状態の生地片の長さをBとした場合、(B−A)/A×100で算出したものである。
また、本発明において、「ほぼ密着」の状態を作るには、人体の裸のサイズに対して、周囲方向は50〜110%、より好ましくは70〜95%、丈は75〜100%、より好ましくは85〜100%として運動用衣服を形成する。もちろん人体のサイズは個人差があるので、前記の比率は目安である。より具体的には、JASPO規格に従ってサイズを決める。
本発明の運動用衣服は、少なくとも足首から膝下までを被覆する部分を有すればよく、特に限定されない。より効果的に足関節周辺をサポートし、接地前後の過回内を抑制し、腓腹筋の筋活動量を低減するという観点から、足甲を覆うように形成されているトレンカタイプや靴下タイプであることが好ましい。また、下半身全体にサポート感を与えるという観点から、足首から腰部までを覆うように形成された下半身部を有することが好ましく、足甲から腰部までを覆うように形成されたトレンカタイプ又は靴下タイプの下半身部を有することがより好ましい。
本発明の運動用衣服は、緊締力の強い緊締部を有する。通常、生地の伸長率が低いほど緊締力が強くなり、緊締力の強いとは、伸長率が低いことを意味する。上記緊締部を構成する生地の身体の長軸方向における伸長率(以下、単に長軸伸長率と記す。)が、緊締部を除くその他の部位(以下において、単に他の部位とも記す。)を構成する生地の長軸伸長率より、30%以上低いことが好ましく、50%以上低いことがより好ましく、75〜100%低いことがさらに好ましい。上記緊締部を構成する生地の長軸伸長率と他の部位を構成する生地の長軸伸長率の差が30%以上であることにより、緊締部によるサポート感(緊締差感)を感じることができ、50%以上であると、緊締部によるサポート感に優れる。
また、上記緊締部を構成する生地の長軸伸長率は、10〜120%であることが好ましく、20〜100%であることがより好ましい。緊締部によるサポート感に優れるうえ、圧迫感がなく着用感にも優れるからである。
以下、図面に基づいて、本発明の運動用衣服を説明する。図1Aは本発明の運動用衣服の一実施態様の正面図であり、図1Bは同背面図であり、図1Cは同外側面図である。図2Aは本発明の運動用衣服の他の一実施態様の正面図であり、図2Bは同背面図であり、図2Cは同外側面図である。図3Aは本発明の運動用衣服の他の一実施態様の正面図であり、図3Bは同背面図であり、図3Cは同外側面図である。図4Aは本発明の運動用衣服の他の一実施態様の正面図であり、図4Bは同背面図であり、図4Cは同外側面図である。
図1〜4に示しているように、運動用衣服10は、膝内側部から脹脛内側を通り、内果にかけて、膝蓋骨を含まず、膝の内側、脛骨の遠位1/2〜2/3及び足根骨内側を含む領域に配置された緊締部Zを有する。これにより、着用感を低下させずに、足首を固定し、ランニング時の足首の屈曲を防いで脹脛の使用を低減させ、スムーズなフォームで足を前に進めることができる。また、ランニング時の余分なニ−インを防ぐことができ、膝への負担を軽減できる。本発明において、「脛骨の遠位1/2〜2/3」とは、身体前面から見た脛骨の体長方向における足首部から始まって膝関節までの距離のおよそ半分から3分の2までの範囲をいう。なお、図1〜4に示している運動用衣服10は、足首から腰部までを覆うように形成された下半身部を有しており、さらに図2及び図4に示している運動用衣服10は、足甲から腰部までを覆うように形成されたトレンカタイプの下半身部を有する。
また、運動用衣服10は、図3〜4に示すように、さらに臀部下辺部に沿って大腿外側部と大腿前面部の近位1/3を含む領域に配置された緊締部Aと、腰椎からウエストラインに沿って上前腸骨稜を通り臍下腹部に至る領域に配置された緊締部Bとを有することが好ましい。本発明において、「大腿前面部の近位1/3」とは、身体前面から見た大腿部の体長方向における大腿部の付け根から始まって膝関節までの距離のおよそ3分の1までの範囲をいう。なお、運動用衣服10において、緊締部Aと緊締部Bは繋がっていてもよい。これにより、骨盤を前傾させることができ、ランニング時に足が前に進みやすくなる。また、ランニング時に、足接地位置が身体の重心より前にあるとブレーキになる可能性があるが、上記のように骨盤を前傾させることで、足接地位置と身体の重心位置を近接させ、力をより効果的に地面に伝え、足がスムーズに前に進むことができる。
運動用衣服10において、緊締部Aの身体の長軸方向における幅は3cm以上であることが好ましく、5.5〜12cmであることがより好ましい。サポート感に優れるうえ、圧迫感がなく着用感にも優れるからである。なお、本発明において、緊締部Aの身体の長軸方向における幅とは、大腿外側部において測定するものであり、図3〜4に示しているように、臀部下辺部から下方に向けて形成された緊締部Aの身体の長軸方向における縫製ライン上の幅Yをいう。
また、図3〜4に示しているように、緊締部Bにおいて、腰部の緊締部B2が、腹部の緊締部B1より高い位置に形成されている。これにより、ランニング時に、骨盤を前傾させることができ、それゆえ足接地位置と身体の重心位置を近接させることもできる。また、運動用衣服10は、股ぐり線上において、前身頃のウエストの上部ラインから内股までの縫製線XIの長さが、後身頃のウエストの上部ラインから内股までの縫製線XIIの長さより、3〜8cm短いことが好ましく、3〜7.5cm短いことがより好ましい。腰部及び腹部に対するサポート感に優れるうえ、圧迫感がなく着用感にも優れるからである。
また、運動用衣服10において、股ぐり線から体の外側に向けて平行6cm幅まで且つウエストの上部ラインから下25cmまでの領域内で、腹部の緊締部B1に対する腰部の緊締部B2の面積割合B2/B1(以下において、単に腹部の緊締部に対する腰部の緊締部の面積割合と記す。)が、50〜75%であることが好ましく、55〜70%であることがより好ましい。腰部及び腹部に対するサポート感に優れるうえ、圧迫感がなく着用感にも優れるからである。
また、運動用衣服10において、着用感の観点から、股部には緊締部が配置されていないことが好ましい。
また、運動用衣服10は、図5に示しているように、前身頃のパターンにおいて、ウエストからソケイ部中央付近にかけて前切り替え線11があり、臀部から大腿部にかけて後ろ切り替え線21があり、前裾線22と前切り替え線11との交点をNとし、またぐリ線と内股切り替え線の交点Hから地の目に直行する線Iと前切り替え線11との交点をJとし、交点Jから下に引いた垂直線23と交点Nから水平に引かれた直線24の交点をMとし、交点Jと交点M間の直線23上において交点Jからの距離が交点Jと交点M間の距離の2/5に該当する位置から水平に引かれた直線25と前切り替え線11の交点をLとし、後ろ切り替え線21と後ろ裾線26の交点をOとし、交点Oからの垂直距離が5.5cmの水平な直線Pと前切り替え線11との交点をKとした場合、交点L、K及びNでなす角度Qが85〜105°の範囲であることが好ましく、90〜100°であることがより好ましい。足首部に対するサポート感に優れるうえ、圧迫感がなく着用感に優れるからである。
また、運動用衣服10は、図6に示しているように、前身頃のパターンにおいて、ウエストからソケイ部中央付近にかけて前切り替え線11があり、前切り替え線11とウエスト上端部の交点をDとし、股ぐリ線と内股切り替え線の交点Aから地の目に直行する線Bと前切り替え線11との交点をCとし、交点Cから下に引いた垂直線12と前裾から水平に引かれた直線13の交点をFとし、交点Cと交点F間の直線12上において交点Cからの距離が交点Cと交点F間の距離の2/5に該当する位置から水平に引かれた直線14と前切り替え線11の交点をEとした場合、交点D、C及びEでなす角度Gが160〜175°の範囲であることが好ましく、165〜170°であることがより好ましい。腰に対するサポート感に優れるうえ、圧迫感がなく着用感に優れるからである。
本発明において、生地としては、伸縮性を有するものであればよく、特に限定されず、例えば織物、編物などの通常の衣服用生地を用いることができる。織物としては、例えば平織、斜文織、朱子織、変化平織、変化斜文織、変化朱子織、変わり織、紋織、片重ね織、二重組織、多重組織、経パイル織、緯パイル織、絡み織などが挙げられる。編物としては、例えば丸編、緯編、経編(トリコット編、ラッセル編を含む)、パイル編、平編、天竺編、リブ編、スムース編(両面編)、ゴム編、パール編、デンビー組織、コード組織、アトラス組織、鎖組織、挿入組織などが挙げられる。上記生地は、目付けが120〜280g/m2の範囲が好ましく、より好ましくは140〜250g/m2の範囲、さらに好ましくは160〜230g/m2の範囲である。上記の範囲であれば、運動機能を損なわず、耐久性も良く、軽くて動きやすい利点がある。また、上記生地は、エラストマー樹脂又はゴムにより含浸或いはプレス処理されたものでもよい。エラストマー樹脂としては、ウレタン系エラストマー、軟質塩化ビニル系エラストマー、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマー、塩素化ポリエチレン系エラストマー、Syn−1,2−ポリブタジエン系エラストマー、Trans−1,4−ポリイソプレン系エラストマー、フッ素系エラストマー等が挙げられる。ゴムとしては、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、合成ゴム、天然ゴム等が挙げられる。また、上記生地は一枚であってもよく、異なる伸長率の二枚の生地を重ねたものであってもよい。
上記生地を構成する繊維としては、特に限定されず、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、ポリアミド繊維、アセテート繊維、コットン繊維、レーヨン繊維、エチレンビニルアルコール繊維、ナイロン繊維などを用いることができる。
運動用衣服10は、伸長率が異なる生地をそれぞれ用いて緊締部と他の部位を構成してもよく、所定の伸長率の一種類の生地で衣服を作製した後、上記所定の伸長率と伸長率が異なる生地を裏打ちして緊締部を形成してもよい。また、“セーレンビスコマジック”(セーレン株式会社製)などのナイロン繊維糸とポリエステル繊維糸を引き揃えた特殊な生地を用いて、ポリエステル繊維のみを所定の位置で特殊溶剤にて溶かすことにより緊締部を形成してもよい。また、島精機製作所の“ホールガーメント”専用機を用いて、緊締部と他の部位を異なる繊維組成で編むことにより作製してもよい。中でも、着用感がより良好になるという観点から、運動用衣服10は、“セーレンビスコマジック”(セーレン株式会社製)などの特殊な生地や島精機製作所の“ホールガーメント”専用機を用いて形成することが好ましい。
以下実施例を用いてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
緊締部には長軸伸長率が25%、身体の短軸方向における伸長率(以下、単に短軸伸長率と記す。)が60%、目付けが270g/m2であるトリコット経編地(ポリエステル繊維38質量%、ナイロン繊維30質量%、ポリウレタン繊維32質量%)を用い、他の部位には、長軸伸長率が130%、短軸伸長率が90%、目付けが180g/m2であるトリコット経編地(ポリエステル繊維54質量%、ポリウレタン繊維46質量%)を用い、図4に示したようなトレンカタイプのランニングタイツを作製した。
(実施例2)
ランニングタイツのタイプを図3に示したようなトレンカなしにした以外は、実施例1と同様にしてランニングタイツを作製した。
(比較例1)
長軸伸長率が220%、短軸伸長率が100%、目付けが180g/m2であるトリコット経編地(ポリエステル繊維85質量%、ポリウレタン繊維15質量%)を用いて、緊締部を有しない図4に示したようなランニングタイツを作製した。
実施例1及び比較例1のランニングタイツを、それぞれ5名の被験者に着用させ、ランニング時の各関節角度、進行方向成分における身体の重心と踵間の距離を下記のように測定し、その結果を下記表1に示した。また、実施例1〜2及び比較例1のランニングタイツを、それぞれ5名の被験者に着用させ、ランニング時の筋活動量を下記のように測定し、その結果を下記表1に示した。
(関節角度)
速度10km/hでランニング中の骨盤角度、膝角度及び足首角度を、右足を基準として測定した。具体的には、骨盤角度は、ソールが全面接地した状態における矢状面での仙骨と上前腸骨稜を結ぶ角度と定義しており、角度が大きい程骨盤が前傾していることになる。膝角度は、ソールが全面接地した状態における前額面での大転子と膝と足首を結ぶ角度と定義しており、膝を角度中心とした。なお、静止立位の角度を基準にした場合、プラスがニ−アウト、マイナスがニ−インとなる。足首角度は、遊脚期における前額面でのトゥとヒールを結ぶ角度と定義しており、遊脚期中の最大角度と最小角度を測定し、床面に対して垂直な時を0°として、プラスを外旋、マイナスを内旋とした。
(身体の重心と踵間の距離)
速度10km/hでランニング中の右足踵接地直後における重心と踵との進行方向成分の距離を測定した。
(筋活動量)
速度10km/hでのランニング中、下腿後部の腓腹筋外側頭のEMG(筋電図)を導出し、筋活動量を測定した。具体的には、まず得られた筋電図波形を全波整流し、三次のスプライン補間によって一の接地から次の接地までの1歩を100%として規格化された時間で表して全歩数分のデータを平均した。最後に接地前20%及び接地後の20%の区間における積分値(積分値筋電図、iEMG)を求めて筋活動量の指標とした。これらの処理は被験者5名それぞれの3種類の異なるタイツ着用条件について行った。また、タイツ着用条件間の差の検定を一元配置分散分析にて行い、分散分析が有意であった為、Tukeyの方法による多重比較を行い、その結果を図7に示した。この際、危険率が5%未満を有意とした。
Figure 2012127038
上記表1の結果から分かるように、実施例のランニングタイツを着用したほうが、ランニング時のトゥ−ヒール角度が0に近く、トゥ−ヒールが一直線上になりやすく、足首が屈曲せず、スムーズな足の運びができる。そして、図7から分かるように、実施例1における腓腹筋の筋活動量は、比較例1及び実施例2に比べて有意に低かった。実施例1におけるトレンカ構造により、足関節周辺がサポートされ、特に接地前後の過回内が抑制された結果、腓腹筋の筋活動量が低減されたと思われる。
また、全ての被験者において、実施例のランニングタイツを着用したほうが、ランニング時の膝角度が0に近く、静止立位時の角度との差が少なく、余分なニーインを防ぐことができ、膝の故障を抑制し得る。また、全ての被験者において、実施例のランニングタイツを着用したほうが、ランニング時の骨盤角度が大きく、骨盤が前傾している。また、骨盤が前傾することにより、身体の重心と踵間の距離が小さくなっており、すなわち足接地位置が身体の重心により近接しており、地面への力が伝わりやすく、スムーズな走りができる。また、地面への力が伝わりやすいことで、促進力が増し速く走ることもできると思われる。
(実施例3〜6)
下記表2に示した長軸伸長率を有する生地を、それぞれ緊締部及び他の部位に用い、実施例1と同様にして、実施例3〜6のランニングタイツを作製した。なお、実施例3〜6において、緊締部に用いた生地の短軸伸長率はいずれも60%であり、他の部位に用いた生地の短軸伸長率はいずれも90%であった。
実施例1〜6のランニングタイツを、それぞれ10名の被験者に着用させ、ランニング時に緊締部による緊締差を感じるかを、以下のような5段階の基準で官能評価し、その結果を下記表2に示した。なお、表2には、各実施例における10名の被験者の平均を示した。
<緊締差感の官能評価>
1 悪い
2 やや悪い
3 普通
4 良い
5 非常に良い
Figure 2012127038
表2から分かるように、緊締部に用いた生地と他の部位に用いた生地の長軸伸長率の差が30%以上であると緊締差を感じることができ、50%以上であると緊締差感が良好になる。
(実施例7〜12)
下記表3に示した長軸伸長率を有する生地を緊締部に用い、長軸伸長率が130%の生地を他の部位を用い、実施例1と同様にして、実施例7〜12のランニングタイツを作製した。なお、実施例7〜12において、緊締部に用いた生地の短軸伸長率はいずれも60%であり、他の部位に用いた生地の短軸伸長率はいずれも90%であった。
実施例1〜2、7〜12のランニングタイツを、それぞれ10名の被験者に着用させ、緊締部によるサポート感及び着脱と動き安さなどの着用感を、以下のような5段階の基準で官能評価し、その結果を下記表3に示した。なお、表3には、各実施例における10名の被験者の平均を示した。
<サポート感の官能評価>
1 悪い
2 やや悪い
3 普通
4 良い
5 非常に良い
<着用感の官能評価>
1 悪い
2 やや悪い
3 普通
4 良い
5 非常に良い
Figure 2012127038
表3から分かるように、緊締部に用いる生地の長軸伸長率が10〜120%であるとサポート感と着用感のいずれも良好であり、20〜100%であるとサポート感及び着用感が非常に良好になる。
(実施例13〜19)
股ぐり線上において、前身頃のウエストの上部ラインから内股までの縫製線XIの長さと、後身頃のウエストの上部ラインから内股までの縫製線XIIの長さの差(以下において、「骨盤部における前後差」とも記す。)を、下記表4に示した値にした以外は、実施例1と同様にして、実施例13〜19のランニングタイツを作製した。なお、実施例1において、骨盤部における前後差は4.3cmであった。
実施例1〜2、13〜19のランニングタイツを、それぞれ10名の被験者に着用させ、腰部及び腹部の着用感及びサポート感を、上記のように官能評価し、その結果を下記表4に示した。なお、表4には、各実施例における10名の被験者の平均を示した。
Figure 2012127038
上記表4から分かるように、骨盤部における前後差が3〜8cmであると、腰部及び腹部のサポート感に優れ、3〜7.5cmであると腰部及び腹部のサポート感に優れるうえ着用感も良好である。
(実施例20〜31)
緊締部Aの身体の長軸方向における幅を、下記表5に示した値にした以外は、実施例1と同様にして、実施例20〜31のランニングタイツを作製した。なお、実施例1において、緊締部Aの身体の長軸方向における幅は5.9cmであった。
実施例1〜2、20〜31のランニングタイツを、それぞれ10名の被験者に着用させ、臀部下辺部及び大腿部の着用感及びサポート感を、上記のように官能評価し、その結果を下記表5に示した。なお、表5には、各実施例における10名の被験者の平均を示した。
Figure 2012127038
上記表5から分かるように、緊締部Aの身体の長軸方向における幅が3cm以上であると、臀部下辺部及び大腿部のサポート感に優れるうえ着用感も良好であり、5.5〜12cmであると臀部下辺部及び大腿部の着用感とサポート感が非常に良好になる。
(実施例32〜36)
腹部の緊締部B1に対する腰部の緊締部B2の面積割合B2/B1を、下記表6に示した値にした以外は、実施例1と同様にして、実施例32〜36のランニングタイツを作製した。なお、実施例1において、腹部の緊締部に対する腰部の緊締部の面積割合は55.6%であった。
実施例1〜2、32〜36のランニングタイツを、それぞれ10名の被験者に着用させ、腰部及び腹部における着用感及びサポート感を、上記のように官能評価し、その結果を下記表6に示した。なお、表6には、各実施例における10名の被験者の平均を示した。
Figure 2012127038
上記表6から分かるように、腹部の緊締部に対する腰部の緊締部の面積割合が50〜75%であると、腰部及び腹部のサポート感に優れるうえ着用感も良好であり、55〜70%であると腰部及び腹部の着用感とサポート感が非常に良好になる。
(実施例37〜42)
角度Qを、下記表7に示した値にした以外は、実施例1と同様にして、実施例37〜42のランニングタイツを作製した。なお、実施例1において、角度Qは96.7°であった。
実施例1、37〜42のランニングタイツを、それぞれ10名の被験者に着用させ、足首部の着用感及びサポート感を、上記のように官能評価し、その結果を下記表7に示した。なお、表7には、各実施例における10名の被験者の平均を示した。
Figure 2012127038
上記表7から分かるように、角度Qが85〜105°であると、足首部の着用感及びサポート感のいずれも良好であり、90〜100°であると足首部の着用感及びサポート感が非常に良好になる。
(実施例43〜47)
角度Gを、下記表8に示した値にした以外は、実施例1と同様にして、実施例43〜47のランニングタイツを作製した。なお、実施例1において、角度Gは169.7°であった。
実施例1〜2、43〜47のランニングタイツを、それぞれ男女10名の被験者に着用させ、腰部の着用感及びサポート感を、上記のように官能評価し、その結果を下記表8に示した。なお、表8には、各実施例における10名の被験者の平均を示した。
Figure 2012127038
上記表8から分かるように、角度Gが160〜175°であると、腰部の着用感及びサポート感のいずれも良好であり、165〜170°であると腰部の着用感及びサポート感が非常に良好になる。
10 運動用衣服
Z、A、B、B1、B2 緊締部
XI、XII 縫製線

Claims (11)

  1. 身体にほぼ密着した状態で着用される運動用衣服であり、
    前記運動用衣服は、少なくとも足首から膝下までを被覆する部分を有し、伸縮性を有する生地で構成されており、
    前記運動用衣服は、緊締力の強い緊締部を有し、
    前記緊締部が、膝内側部から脹脛内側を通り、内果にかけて、膝蓋骨を含まず、膝の内側、脛骨の遠位1/2〜2/3及び足根骨内側を含む領域に配置された緊締部Zを含むことを特徴とする運動用衣服。
  2. 前記緊締部を構成する生地の身体の長軸方向における伸長率が、前記緊締部を除くその他の部位を構成する生地の身体の長軸方向における伸長率より50%以上低い請求項1に記載の運動用衣服。
  3. 前記緊締部を構成する生地の身体の長軸方向における伸長率が10〜120%である請求項1又は2に記載の運動用衣服。
  4. 前記運動用衣服は、足首から腰部までを覆うように形成された下半身部を有し、
    前記緊締部が、さらに臀部下辺部に沿って大腿外側部と大腿前面部の近位1/3を含む領域に配置された緊締部Aと、腰椎からウエストラインに沿って上前腸骨稜を通り臍下腹部に至る領域に配置された緊締部Bとを含み、前記緊締部Bにおいて、腰部の緊締部が、腹部の緊締部より高い位置に形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の運動用衣服。
  5. 前記運動用衣服は、足甲から腰部までを覆うように形成されたトレンカタイプの下半身部を有し、
    前記緊締部が、さらに臀部下辺部に沿って大腿外側部と大腿前面部の近位1/3を含む領域に配置された緊締部Aと、腰椎からウエストラインに沿って上前腸骨稜を通り臍下腹部に至る領域に配置された緊締部Bとを含み、前記緊締部Bにおいて、腰部の緊締部が、腹部の緊締部より高い位置に形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の運動用衣服。
  6. 前記緊締部Aの身体の長軸方向における幅が3cm以上である請求項4又は5に記載の運動用衣服。
  7. 股ぐり線上において、前身頃のウエストの上部ラインから内股までの縫製線の長さが、後身頃のウエストの上部ラインから内股までの縫製線の長さより3〜7.5cm短い請求項4〜6のいずれか1項に記載の運動用衣服。
  8. 股ぐり線から体側に向けて平行6cm幅まで且つウエストの上部ラインから下25cmまでの領域内で、前記腹部の緊締部に対する前記腰部の緊締部の面積割合が50〜75%である請求項4〜7のいずれか1項に記載の運動用衣服。
  9. 股部には、緊締部が配置されていない請求項1〜8のいずれか1項に記載の運動用衣服。
  10. 前身頃のパターンにおいて、ウエストからソケイ部中央付近にかけて前切り替え線があり、臀部から大腿部にかけて後ろ切り替え線があり、
    前裾線と前記前切り替え線との交点をNとし、
    またぐリ線と内股切り替え線の交点Hから地の目に直行する線Iと前切り替え線との交点をJとし、交点Jから下に引いた垂直線と交点Nから水平に引かれた直線の交点をMとし、交点Jと交点M間の直線上において交点Jからの距離が交点Jと交点M間の距離の2/5に該当する位置から水平に引かれた線と前記前切り替え線の交点をLとし、
    前記後ろ切り替え線と後ろ裾線の交点をOとし、交点Oからの垂直距離が5cmの水平な線Pと前記前切り替え線との交点をKとした場合、
    交点L、K及びNでなす角度が85〜105°の範囲である請求項1〜9のいずれか1項に記載の運動用衣服。
  11. 前身頃のパターンにおいて、ウエストからソケイ部中央付近にかけて前切り替え線があり、前切り替え線とウエスト上端部の交点をDとし、
    股ぐリ線と内股切り替え線の交点Aから地の目に直行する線Bと前切り替え線との交点をCとし、
    交点Cから下に引いた垂直線と前裾から水平に引かれた直線の交点をFとし、交点Cと交点F間の直線上において交点Cからの距離が交点Cと交点F間の距離の2/5に該当する位置から水平に引かれた線と前記前切り替え線の交点をEとした場合、
    交点D、C及びEでなす角度が160〜175°の範囲である請求項1〜10のいずれか1項に記載の運動用衣服。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPWO2013179440A1 (ja) * 2012-05-31 2016-01-14 株式会社アシックス タイツ
JP2017089045A (ja) * 2015-11-09 2017-05-25 美津濃株式会社 タイツ

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