JP2012125208A - 二枚貝外套膜を用いた食品素材ならびにその製造方法、およびそれを用いた食品 - Google Patents

二枚貝外套膜を用いた食品素材ならびにその製造方法、およびそれを用いた食品 Download PDF

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Abstract

【課題】廃棄処分されるボイルホタテガイ外套膜を、食品素材として利用するための軟化加工方法を提供すること。
【解決手段】加熱処理された二枚貝外套膜1をアルカリ性溶液2により煮沸する煮沸過程P1に供して、物性の変化した食品素材7を得る。なお煮沸過程P1の後に、処理物3を酵素4により分解処理する酵素処理過程P2を備えてもよい。この場合は、アルカリ性溶液2による煮沸処理と酵素4による酵素処理を経て、軟化した食品素材8が得られる。
【選択図】図1

Description

本発明は二枚貝外套膜を用いた食品素材、その製造方法、およびそれを用いた食品に係り、特に、ボイル加工した際に硬くなり、約90%が廃棄処分されているボイルホタテガイ外套膜(耳)の有効利用を可能とする、二枚貝外套膜を用いた食品素材等に関するものである。
加工利用に供されるホタテガイは、ほとんどの場合、脱殻を容易に行うために高温の水蒸気で蒸煮(通常、90℃で5分間程度)される。この時に、貝殻だけでなく他の軟体部も、当然ながらボイルされることとなる。このようにして貝殻が除かれた軟体部のうち、主にボイル貝柱とボイル生殖巣が食品として利用されている。
一方、ホタテガイ外套膜(耳)は、ボイル処理されることによって硬く強固な物性となるため、乾物形態を主とする珍味加工品などの食品としてそのごく一部が利用されるに留まり、90%以上は廃棄されている現状である。かかる廃棄処分のための経費は、加工業者の大きな負担となっている。なお、加熱処理は複数回を要することがあるが、ホタテガイ外套膜はそのたびに硬さが増すため、利用価値はますます低くなり、コストのかかる廃棄処分の回避はますます困難となる。
しかし、ホタテガイ外套膜はコラーゲン等の有用物質が含まれるなど良質なタンパク質源であるため、より付加価値の高い食品としての利用が従来から期待されていることもまた、事実である。
さて、ホタテガイの低利用度部位の有効利用については、従来さまざまな技術的取り組みがなされている。このうち後掲特許文献1に開示されている技術は、ボイル外套膜を良質な加工原料として利用するためのボイル外套膜の黒膜除去方法として、プロテアーゼ処理および塩水等への浸漬・撹拌を用いるというものである。
また特許文献2に開示されている技術は、従来廃棄処分されていた濃縮海洋深層水を有効利用し、まろやかな塩味と旨味を呈しかつ解凍時のドリップ抑制可能なホタテガイ加工食品製造方法の提供を目的として、ホタテガイを0.05MPa以下の減圧下で処理し、その後20〜70℃の海洋深層水中に1〜25分程度浸漬するというものである。これは、外套膜その他の部位にも適用可能であるとしている。
また特許文献3に開示されている技術は、外套膜と同様に廃棄処分されているホタテガイのヒモの有効利用を目的として、これを短時間煮沸した後、150℃〜185℃に加熱した食物油に通して脱水処理するというものであり、これによよってヒモ特有の臭みが軽減され、サクサクとした軽い食感の食品を得ることができるとしている。
特開2006−042707号公報「ホタテガイのボイル外套膜の黒幕の除去方法」 特開2003−116489号公報「ホタテ加工食品、及びその製造方法」 特開平07−155142号公報「ホタテ貝ヒモの加工方法」
さて上述のとおり、ホタテガイ加工過程において排出されるボイルホタテガイ外套膜は、加熱加工によりさらに硬くなることを避けられない。したがって、含有されるコラーゲン等の有用物質を十分に活かし、良質なタンパク質源であることを十分に活かすことのできる付加価値の高い実用的な食品の提供を実現するためには、ボイルホタテガイ外套膜の加工方法の確立が求められる。
殊に、その硬い強固な物性を変化させること、すなわちボイル外套膜を軟化する実用的な技術の確立が重要である。かかる技術については従来、何ら開発されていない。上述の各文献開示の技術においても同様である。なお、ボイルホタテガイ外套膜における問題は、他の二枚貝についても共通し、一般化できるものである。
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の問題点を踏まえ、ボイル加工等の加熱処理によって硬くなってしまったボイルホタテガイ外套膜、その他の二枚貝外套膜を実用的な方法にて軟化することができ、それに基づいて外套膜の有効利用を可能とする、二枚貝外套膜を用いた食品素材とその製造方法、およびそれを用いた食品を提供することである。
取り分け本発明の課題は、従来利用されずに廃棄処分されてきたボイルホタテガイ外套膜を、食品素材として利用するための軟化加工方法を確立することである。
本願発明者は当該課題に対して検討した結果、ボイルホタテガイ外套膜をpH10〜13のアルカリ性に調整した水溶液にて、105℃以下の温度範囲でボイルすることにより肉質が軟化されること、また食品添加物酵素製剤の水溶液への浸漬によりさらに軟化されることを見出し、本発明に想到した。すなわち、上述の課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
(1) 加熱処理された二枚貝外套膜をアルカリ性溶液により煮沸する煮沸過程に供することにより、物性の変化した食品素材を得る、食品素材の製造方法。
(2) 前記煮沸過程後の処理物を酵素により分解処理する酵素処理過程を備えることを特徴とする、(1)に記載の食品素材の製造方法。
(3) 前記煮沸過程は、前記外套膜をpH10以上13以下に調整した水溶液にて煮沸する過程であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の食品素材の製造方法。
(4) 前記煮沸過程は、前記外套膜を105℃以下にて煮沸する過程であることを特徴とする、(1)ないし(3)のいずれかに記載の食品素材の製造方法。
(5) 前記酵素処理過程は、前記煮沸過程後の処理物を酵素含有液に浸漬する過程であることを特徴とする、(2)に記載の食品素材の製造方法。
(6) 得られる前記食品素材の破断強度が、未処理のものの30%以下であることを特徴とする(1)ないし(5)のいずれかに記載の食品素材の製造方法。
(7) 前記加熱処理された二枚貝外套膜は、煮沸処理済みのホタテガイ外套膜であることを特徴とする、(1)ないし(6)のいずれかに記載の食品素材の製造方法。
(8) 加熱処理された二枚貝外套膜がさらに煮沸処理されることにより軟化していることを特徴とする、二枚貝外套膜製食品素材。
(9) 加熱処理された二枚貝外套膜がさらに煮沸処理および酵素処理されることにより軟化、流動体状化または液状化していることを特徴とする、二枚貝外套膜製食品素材。
(10) (8)または(9)に記載の二枚貝外套膜製食品素材を用いた、下記〔A〕ないし〔E〕の加工食品。
〔A〕油ちょう処理または煮熟処理を経る食品
〔B〕調味液、またはその他の液状のもしくは流動状の食品
〔C〕〔A〕および〔B〕記載の処理以外の処理を経る食品
〔D〕佃煮その他の惣菜
〔E〕珍味加工品
(11) 加熱処理された二枚貝外套膜をアルカリ性溶液により煮沸する煮沸過程と、該煮沸過程後の処理物を酵素により分解処理する酵素処理過程とにより、20日以内での製造が可能であることを特徴とする、液状調味料の製造方法。
(12) 煮沸処理されたホタテガイ外套膜のアルカリ性溶液による煮沸処理および酵素処理により得られる、液状調味料。
本発明の二枚貝外套膜を用いた食品素材とその製造方法、およびそれを用いた食品は上述のように構成されるため、ボイル加工等の加熱処理によって硬くなってしまったボイルホタテガイ外套膜、その他の二枚貝外套膜を、実用的な処理によって、簡易に軟化することができる。そしてそれに基づいて、外套膜を有効利用した付加価値の高い食品を得ることができる。
特に本発明をボイルホタテガイに適用した場合は、ボイルホタテガイ外套膜の肉質を良好に軟化することができ、さらにこれを原料として製品化の加工をする場合であっても、従来のボイルホタテガイ外套膜を使用するよりも柔らかく、食べ易い食品を得ることができる。したがって、食品素材としての利用範囲を大いに拡大することができる。
また、食品添加物酵素製剤による酵素処理を加える本発明によれば、軟化効果をさらに高めることができる。また同時に、二枚貝外套膜の表面に付着していた汚れも、効果的に除去ないし軽減することができる。
また、食品添加物酵素製剤による酵素処理を加える本発明によれば、条件によって、二枚貝外套膜を原料とする調味液またはその他の液状・流動状の食品を得ることもでき、食品素材としての利用範囲を一層拡大することができる。
さらに本発明によれば、以上述べた各効果によって付加価値の高い食品素材として利用度を高めることができるため、ホタテガイ等二枚貝の利用拡大に貢献できる。さらに加工過程における廃棄物産出を抑制することができるため、加工業者の負担軽減効果も得ることができる。
本発明の食品素材の製造方法の基本構成を示すフロー図である。 実施例に係るボイルホタテガイ外套膜(耳)の軟化加工処理工程の一例を示すフロー図である。
本発明について、図も用いてさらに詳細に説明する。
図1は、本発明の食品素材の製造方法の基本構成を示すフロー図である。図示するように本製造方法は、加熱処理された二枚貝外套膜1をアルカリ性溶液2により煮沸する煮沸過程P1に供することにより、物性の変化した食品素材7を得ることを、主たる構成とする。かかる構成により本製造方法によれば、加熱処理された二枚貝外套膜1は、煮沸過程P1においてアルカリ性溶液2によって煮沸処理されて、最終的には物性の変化した食品素材7となる。
ここで、食品素材7における物性の変化には、原料である二枚貝外套膜1よりも硬度が小さくなる変化の他、流動性が高くなる変化も含む。また本発明では、ホタテガイ等の二枚貝の加工過程において排出されるボイル等加熱処理済みの二枚貝外套膜(以下、「耳」ともいう。)を原料として使用するが、これについては特別な前処理は必要であり、かつその全体を使用することが可能である。
なお図において煮沸過程P1は、外套膜1を105℃以下にて煮沸する過程とすることができる。また、外套膜1をpH10以上13以下に調整した水溶液にて煮沸する過程とすることができる。かかる温度範囲やpH範囲での処理により、特に良好な軟化効果を実用的な条件によって得ることができるからである。なお煮沸温度は、80℃以上100℃以下に設定することとしても、もちろんよい。なおまた、軟化処理に用いるpH10〜13のアルカリ性の水溶液の液量は、処理するボイルホタテガイ耳等の同量以上の液量になるよう調整すれば、特に良好な効果を得ることができる。またアルカリ性の水溶液は、炭酸ナトリウムなど適宜のアルカリを用いて調製可能であり、本発明はその具体的方法に限定されない。
図示するように本製造方法は、煮沸過程P1の後に、当該過程による処理物3を酵素4により分解処理する酵素処理過程P2を備えた構成とすることができる。かかる構成の製造方法によれば、加熱処理された二枚貝外套膜1が煮沸過程P1においてアルカリ性溶液2によって煮沸処理されて処理物3が得られ、処理物3は酵素処理過程P2において酵素4によって酵素処理されて、最終的には物性の変化した食品素材8が得られる。
ここで、食品素材8における物性の変化には、原料である二枚貝外套膜1よりも硬度が小さくなる変化の他、流動性が高くなる変化も含む。また、酵素処理過程P2が設けられることによって、食品素材8の物性を一層軟化したものとすることができ、条件によっては液状など、流動性を相当程度増したものとすることもできる。
このように本発明においては、酵素処理過程P2を設けて最終的に食品素材8を得ることも、また敢えて酵素処理過程P2を経ることなく、煮沸過程P1における処理を主として、最終的に食品素材7を得ることも可能である。しかしながら、食品素材製造過程を短縮したり、あるいは軟化効果を高めたりするには、酵素処理P2を備えたフローとすることが、より望ましい。
なお、各過程後における洗浄処理など付随的な処理は、適宜行うものとすることができる。つまり、たとえば本発明をホタテガイに適用する場合のより望ましい本発明製造フローとしては、原料たるボイルホタテガイ耳をpH10〜13のアルカリ性の水溶液でボイル(105℃以下、あるいは80℃〜100℃)し(煮沸過程)、その後これを洗浄し、さらに酵素水溶液に浸漬させ(酵素処理過程)、その後洗浄し、最終的な食品素材としての軟化ホタテガイ耳を得る、という手順を踏むことができる。
これらの洗浄処理は、たとえば次のようにして行うことができる。つまり、煮沸過程P1での処理や酵素処理過程P2での処理がなされた後、加熱処理済み外套膜を、水に浸漬し、これに撹拌操作を加えながら洗浄を行う。なお洗浄処理によって、外套膜の表面に付着していた汚れを除去、ないしは軽減することもできる。酵素処理過程を設けた場合はタンパク質を成分とする汚れの分解効果もあるため、汚れの除去等の効果はより大きくなる。
酵素処理過程P2における具体的な酵素処理条件(酵素の使用量、pH、温度、時間)としては、使用する酵素の種類に適した条件を、適宜選択することができる。酵素の種類としては、パパインを初めとして食品製造において使用可能な酵素である限り、特に限定なく用いることができる。酵素使用量を多くすることや、酵素処理時間を長くすることで、軟化の効果を上げることが可能である。
もっとも、必要以上の酵素処理を加えることは、ボイルホタテガイ耳等加熱処理済み二枚貝外套膜(以下、「ボイルホタテガイ耳等」ともいう。)のタンパク質の溶解を促し、固形物の歩留まりを減少させる要因ともなる。したがって、目的とする製品に合わせて、品質や歩留まりを向上させるための適切な条件を選択して、ボイルホタテガイ耳等の具体的な軟化加工処理フローを設計すればよい。
酵素処理過程P2は、煮沸過程P1後の処理物3を酵素4を含有した液に浸漬する過程とすることができる。かかる方法によれば、簡便かつ効率的に所定の酵素処理を行うことができる。酵素4の含有液に用いる分散媒は必ずしも水である必要はなく、たとえば水溶液でも、あるいはまた食用油を主とするものなどであっても本発明からは除外されない。また含有液も必ずしも溶液である必要はなく、たとえば分散液であってもよい。
もっとも、分散媒として水または水溶液を用いることが、酵素処理効果や製造工程の管理上はより望ましい。なお酵素含有液は、煮沸過程P1においてアルカリ性の水溶液でボイル、洗浄した後のホタテガイ耳等の重量の同量以上の液量になるよう、酵素を溶解させて調整することが望ましい。かかる条件により、特に良好な軟化効果を得ることができるからである。
このように本発明製造方法における軟化処理は、煮沸過程P1においてpH10〜13のアルカリ性の水溶液でボイルホタテガイ耳等をボイルしたり、またこれに加えて酵素処理過程P2において酵素4水溶液にボイルホタテガイ耳等を浸漬処理したりするが、これらの過程中において、特別な撹拌操作や振動等の強い物理的衝撃を与える必要はない。したがって、原料たるボイルホタテガイ耳等の当初の形状をそのまま保持することが可能である。
このように本発明製造フローによって処理されて得られた食品素材7等は、軟化しているため、その破断強度が低下したものとなる。得られる食品素材7等の軟化程度ないしは物性変化の程度は、煮沸過程P1や酵素処理過程P2の条件を適宜設定することによって、自在に設計することが可能である。たとえば、原料の外套膜1と比較して、破断強度30%以下にまで軟化した食品素材7等を得ることも可能である。
本発明製造フローによって処理されて得られた食品素材7等は、要するに、加熱処理された二枚貝外套膜が、さらに所定条件によって煮沸処理されることによって軟化している状態の二枚貝外套膜製食品素材、あるいは流動性が高くなるよう変化して、流動体状化または液状化している状態の二枚貝外套膜製食品素材である、ということができる。
以上説明した本発明によれば、ホタテガイ加工過程等において排出されるボイルホタテガイ耳等を容易に軟化することが可能となり、軟化したボイルホタテガイ耳等を使用することにより、食感的に良質な食品を製造することが可能となる。なお食感の変化は呈味・食味の変化をもたらすため、食感・食味を合わせ総合的に良好な食品の製造が可能となり、製品開発の幅を拡大することができる。なおまた、軟化されて食べ易くなった加工品は、現代の消費者の嗜好にも適合するものである。
本発明の食品素材は、これをさらに加工して、油ちょう製品や佃煮などの惣菜や珍味等の原料に利用することができる。かかる食品加工処理としては、油ちょう処理、煮熟処理を初め、適用可能な処理を自由に用いて、製品を得ることができる。また形態としては固形状に限定されず、調味液またはその他の液状のもしくは流動状の食品を得ることもできる。
なお、本発明を用いて液状調味料等の液状もしくは流動状食品を製造する場合、上述の煮沸過程と、それにより得られる処理物を酵素により分解処理する酵素処理過程とを経ることによって、20日以内での製造が可能である。条件によっては3〜4日程度の期間での製造も可能である。従来の酵素処理による魚醤等の液状調味料製造は、2〜3ヶ月程度もの長期間を要するものであったところ、本発明の製造期間短縮効果は劇的であり、この点においても本発明は顕著に高度な利用性を有するものである。
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
<実施例1:軟化処理>
図2は、本実施例に係るボイルホタテガイ外套膜(耳)の軟化加工処理工程の一例を示すフロー図である。原料としては、冷凍された青森県産のホタテガイの加工過程で排出されたボイルホタテガイ耳を用いた。まず、原料となるボイルホタテガイ耳を解凍した。次に、解凍したボイルホタテガイ耳原料をpH10〜13に調整したアルカリ性の水溶液でボイルした。その後、ボイルした原料を流水で洗浄し、水切りした。洗浄・水切りした原料を、酵素水溶液に浸漬した。酵素水溶液に浸漬した原料を流水で洗浄し、水切りした。そして、これを食品素材として使用した。
<実施例2:軟化処理後のボイルホタテガイ耳の物性測定>
<2.−1 試料調製>
物性は、以下の3種類の試料について測定した。
試料A:対照区として、軟化処理をしていないボイルホタテガイ耳。このボイルホタテガイ耳は、ホタテガイ加工過程において90℃/5分ボイルされたものである。
試料B:アルカリ処理区として、ボイルホタテガイ耳500gをpH12に調整したアルカリ性の水溶液2000gで90℃/10分ボイルし、流水で洗浄、水切りしたものである。なおアルカリ性水溶液は、水道水に対して2重量%の炭酸ナトリウムを溶解することで調製した。
試料C:酵素処理区として、試料Bの工程の後に、アルカリ処理後のボイルホタテガイ耳に対して同量の酵素水溶液に30℃/30分浸漬し、流水で洗浄、水切りしたものである。なお酵素水溶液は、水道水に対して0.3重量%の食品用酵素製剤(パパイン)を溶解することで調製した。
<2.−2 測定方法>
直径5mmの円形の穴を開けた木製の板2枚を用いて試料を挟んで固定し、Stable Micro Systems社製Texture Analyzer(TA−X2)を使用して押し込み試験を行い、破断強度を測定した。測定には直径3mmの棒状プランジャーを使用し、プランジャー押し込み速度は6cm/minとした。
<2.−3 測定結果>
試料Bアルカリ処理区、試料C酵素処理区ともに、試料A対照区と比較して有意に破断強度が低かった。すなわち、アルカリ処理、またはアルカリ処理+酵素処理によって、原料ボイルホタテガイ耳の肉質を軟化可能であることが示された。ただし本物性測定結果の限りでは、試料Bアルカリ処理区と試料C酵素処理区との間には有意差が認められず、いずれの処理方法によっても軟化効果を得ることができる結果であった。なお表1に物性測定結果を示す。
Figure 2012125208
<実施例3:軟化処理したボイルホタテガイ耳を用いた佃煮の試作>
<3.−1 試作に用いた試料>
佃煮試作用として、実施例2と同様に、3種類の試料を用いた。
試料A(対照区)
軟化処理をしていないボイルホタテガイ耳を用いた。このボイルホタテガイ耳は、ホタテガイ加工過程において90℃/5分ボイルされたものである。
試料B(アルカリ処理区)
ボイルホタテガイ耳500gをpH12に調整したアルカリ性の水溶液2000gで90℃/10分ボイルし、流水で洗浄、水切りしたものである。
試料C(酵素処理区)
試料Bの工程の後に、アルカリ処理後のボイルホタテガイ耳に対して同量の酵素水溶液に30℃/30分浸漬し、流水で洗浄、水切りしたものである。なおアルカリ性水溶液および酵素水溶液の調製方法は、実施例2と同じである。
<3.−2 副材料など>
佃煮試作には、上記3種類の試料の他、下記副材料などを用いた。
還元水あめ、砂糖、食酢、食塩、しょうが、唐辛子、辛味調味液、オリーブオイル、ゼラチン、ソルビット、調味料(アミノ酸等)。
なお、これらの配合率は3種類間で統一して、試作した。
<3.−3 製造工程>
上述の試料および副材料などのうち、しょうがとゼラチン以外の材料を鍋に入れて加熱した。十分に煮詰められた時点でしょうがを加え、加熱終了後にゼラチンを加え、冷却し、佃煮試作品の完成品とした。
<3.−4 官能検査>
完成した佃煮試作品の官能検査を実施した。検査の実施要領は次のとおりである。
(1)検査員
特許出願人・あおもり食品株式会社において官能検査に携わっているパネラー10名により行った。
(2)検査項目
硬さ、色、臭いの3項目について、それぞれ5段階評価により行った。各項目における評価基準は、後掲各官能検査結果表に示すとおりである。
(3)評価方法
硬さ、色、臭いの各項目ともA対照区を基準とし、これと同じ場合には「3:A対照区と変化なし」の評価とし、変化のある方向に各2段階の評価を設定して、計5段階評価とした。
(4)その他
なお、官能検査にあたっては、下記の点にも留意した。
硬さ:普通の人が噛み切るのに十分な柔らかさを、最も好ましい硬さとして、最高点5を与えることとした。
色:十分に明るい琥珀色を、最も好ましい色として、最高点5を与えることとした。
臭い:ホタテガイ特有の研ぎ澄まされたツンとする臭いが除かれていて、その点で十分に無臭といえるものを、最も好ましい臭いとして、最高点5を与えることとした。
官能検査の結果を、各表に示す。このうち表2は佃煮試作品の硬さ、表3は色、表4は臭いについての検査結果を示すものである。これらに示されるように、硬さにおいては、試料Bアルカリ処理区、試料C酵素処理区ともに、試料A対照区と比較して有意差が認められた。つまり、試料Bアルカリ処理区と試料C酵素処理区の処理をしたボイルホタテガイ耳は柔らかく、噛み切れるようになった。すなわち実施例2と同様に、アルカリ処理またはこれに加えて酵素処理を行った試験区は、対照と比較して有意に軟化していることが示された。
また、実施例2では試料Bアルカリ処理区と試料C酵素処理区との間には有意差がみられなかったが、試作の佃煮試作品においては表に示すとおり、有意差がみられた。すなわち官能検査においては、試料C酵素処理区は、アルカリ処理のみによる試料Bアルカリ処理区と比較して、有意に軟化していることが示された。
なお、色については、実施例2では試料Bアルカリ処理区と試料C酵素処理区との間には有意差がみられなかったが、試料A対照区と比較して黒膜や黒点が軽減されていることから、有意差が認められた。なお、原料ホタテガイの生育環境、たとえば海域、水深、栄養条件、日照条件、養殖方法等によって、厳密には微小な差異の認められる場合もあったものの、試料Bアルカリ処理区と試料C酵素処理区ともに、好ましい色であるところのほぼ明るい琥珀色に仕上がった。
また、臭いについては、色と同様で、試料Bアルカリ処理区と試料C酵素処理区との間には有意差がみられなかったが、試料A対照区と比較して黒膜や黒点が軽減されていることからホタテガイ特有の臭いも軽減されており、有意差が認められた。つまり、試料Bアルカリ処理区と試料C酵素処理区ともに、ホタテガイ特有の臭いがほとんど気にならず、良好な仕上がりを得ることができた。
Figure 2012125208
Figure 2012125208
Figure 2012125208
<4.その他>
最後に、典型的な本発明の例を挙げる。ボイルホタテガイ耳を炭酸ナトリウム等を用いてアルカリ性(pH10〜pH13)に調製した水溶液に浸漬する。その後、80℃〜100℃にてボイル処理を行う。これらの処理によるだけで、耳の肉質を軟化させることができる。さらに、アルカリ処理した後の耳を食品用酵素製剤(例.パパイン:Caria papaya起源)の水溶液(例.0.3%濃度)に浸漬(例.30℃で30分間)することにより、耳の肉質をより良好に軟化させることができる。
本発明の二枚貝外套膜を用いた食品素材とその製造方法等によれば、ボイル加工等の加熱処理によって硬くなってしまった二枚貝外套膜を簡易に軟化でき、それを有効利用した付加価値の高い食品を得ることができる。また、二枚貝加工過程における廃棄物産出を抑制でき、加工業者の負担が軽減される。このように本発明により、たとえばホタテガイの場合であれば従来90%以上が廃棄されていた外套膜の有効利用が図られると共に、水産加工業の活性化にも貢献できるため、水産加工業分野および関連産業分野において利用性の高い発明である。
1…加熱処理された二枚貝外套膜
2…アルカリ性溶液
3…処理物
4…酵素
7、8…食品素材
P1…煮沸過程
P2…酵素処理過程














Claims (12)

  1. 加熱処理された二枚貝外套膜をアルカリ性溶液により煮沸する煮沸過程に供することにより、物性の変化した食品素材を得る、食品素材の製造方法。
  2. 前記煮沸過程後の処理物を酵素により分解処理する酵素処理過程を備えることを特徴とする、請求項1に記載の食品素材の製造方法。
  3. 前記煮沸過程は、前記外套膜をpH10以上13以下に調整した水溶液にて煮沸する過程であることを特徴とする、請求項1または2に記載の食品素材の製造方法。
  4. 前記煮沸過程は、前記外套膜を105℃以下にて煮沸する過程であることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の食品素材の製造方法。
  5. 前記酵素処理過程は、前記煮沸過程後の処理物を酵素含有液に浸漬する過程であることを特徴とする、請求項2に記載の食品素材の製造方法。
  6. 得られる前記食品素材の破断強度が、未処理のものの30%以下であることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の食品素材の製造方法。
  7. 前記加熱処理された二枚貝外套膜は、煮沸処理済みのホタテガイ外套膜であることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれかに記載の食品素材の製造方法。
  8. 加熱処理された二枚貝外套膜がさらに煮沸処理されることにより軟化していることを特徴とする、二枚貝外套膜製食品素材。
  9. 加熱処理された二枚貝外套膜がさらに煮沸処理および酵素処理されることにより軟化、流動体状化または液状化していることを特徴とする、二枚貝外套膜製食品素材。
  10. 請求項8または9に記載の二枚貝外套膜製食品素材を用いた、下記〔A〕ないし〔E〕の加工食品。
    〔A〕油ちょう処理または煮熟処理を経る食品
    〔B〕調味液、またはその他の液状のもしくは流動状の食品
    〔C〕〔A〕および〔B〕記載の処理以外の処理を経る食品
    〔D〕佃煮その他の惣菜
    〔E〕珍味加工品
  11. 加熱処理された二枚貝外套膜をアルカリ性溶液により煮沸する煮沸過程と、該煮沸過程後の処理物を酵素により分解処理する酵素処理過程とにより、20日以内での製造が可能であることを特徴とする、液状調味料の製造方法。
  12. 煮沸処理されたホタテガイ外套膜のアルカリ性溶液による煮沸処理および酵素処理により得られる、液状調味料。



















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