JP2012121873A - シート状製剤及びシート状製剤の製造方法 - Google Patents

シート状製剤及びシート状製剤の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】口腔内で容易に溶解することができ、また、その溶解時間を容易に制御することができ、スギ花粉アレルゲンタンパク質を除く薬物を安定に含有させることができるシート状製剤及び該シート状製剤の製造方法の提供。
【解決手段】水と、ゼラチンと、スギ花粉アレルゲンタンパク質を除く薬物とを含むシート状製剤。好ましくは、糖、糖アルコール、及び糖脂肪酸からなる群より選ばれる少なくとも1種、ポリエチレングリコール又はその誘導体、結晶セルロース等を更に含むことができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、スギ花粉アレルゲンタンパク質を除く薬物を含有する口腔内で溶解するゼリー型のシート状製剤、及び、シート状製剤の製造方法に関する。
現在、経口的に投与される薬剤としては、例えば、裸錠剤、被覆錠剤、カプセル、散剤、顆粒剤、液剤等が市場に出されている。また、口腔内で崩壊し、消化管で吸収される製剤としては、口腔内崩壊錠、速溶解型口腔内フィルムがすでに市場に出されている。
ところで、口腔内で噛まずに唾液のみで崩壊又は溶解させて服用するような患者及び介護者のベネフィットを向上させるような剤形が注目を浴びている。高齢者人口の増加に伴い、飲食物の摂取に障害を有する、いわゆる咀嚼・嚥下困難な患者が増加しているという背景と、「高齢者に投与最適な新規製剤および新規包装容器の作成研究」という1988年杉原正泰らが報告した旧厚生省(現厚生労働省)シルバーサイエンス研究報告によると、将来希望する医薬品の剤形として半固形製剤(ゼリー、ヨーグルト、プリン)が挙げられている。
当該背景もあり、近年、医薬品を含有するゼリー状製剤の開発が進められており、既に本邦においても数種類の製品が販売されている。
しかし、これらのゼリー状製剤は全て、スプーン等で服用するポーションタイプであったり、袋から押し出して服用するピロー包装タイプのものであったりする。また、当該ゼリー自体が口腔内で溶解するタイプのものはなく、嚥下時の物理的力により容易に拡散するというタイプのものであった。
例えば、水を含むゼリー型の剤形としては、カラギーナン、ローカストビーンガム、ポリアクリル酸又はその部分中和物若しくは塩とを含有するゼリー製剤(特許文献1参照)、ゼリー基剤とアルカリ塩類から成る医薬用ゼリー組成物(特許文献2参照)が開示されている。
しかし、これらゼリー製剤は、高温(60〜100℃程度)の熱可逆性ゲル化剤を用いたもの、又は、ゲル化剤を架橋することにより不可逆性ゲル化剤を用いたものであり、ゼリー自体が口腔内で溶解するタイプものではなく、嚥下時の物理的力により容易に拡散するというタイプのものである。
このため、これら従来のゼリー製剤は、調製時に高温を必要とするか、又は、架橋剤として金属塩を用いるために、特に熱安定性が悪い薬剤や、金属塩との相互作用が高いタンパク質やペプチドを含有させる場合には、その安定性が問題となる恐れがあった。
また、例えば、特許文献3や、特許文献4等に開示されているように、水溶性ポリマー中に薬物を分散又は溶解させたフィルム形状の製剤も知られている。
ところが、このような従来のフィルム形状の製剤は、水溶性ポリマーを用いて、口腔内にて溶解又は膨潤させるためには、ある程度の唾液量を必要とし、嚥下困難な患者によっては、溶解に長期間を要する可能性があった。また、水分を吸収しやすいため、口腔粘膜に付着し易く違和感を覚えやすいという欠点もあった。特に口腔内溶解型のフィルム形状の製剤の場合には、その溶解性とフィルムの厚み、サイズには相関関係があり、結果として100mgを超えるような薬物量を含有させることは難しかった。
更に、製造方法に関しても、このようなフィルム形状の製剤は、水溶性ポリマーを溶媒として水を用いて溶解させ、この中に薬物を溶解させ、加熱乾燥することにより調製することが開示されているが、特に熱に弱い薬物の場合には、加熱により薬物含量の低下が懸念されるものであった。更にまた、薬物が液状である場合には、シート状の製剤が溶解することが懸念されるので、一定の形状を維持することが困難となる恐れがあった。
特開平09−187233公報 特開2004−99558公報 特表2005−511522号公報 特表2009−507854号公報
本発明は、上記現状に鑑み、口腔内で容易に溶解することができ、また、その溶解時間を容易に制御することができ、スギ花粉アレルゲンタンパク質を除く薬物を安定に含有させることができるシート状製剤、及び、該シート状製剤の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、常温ではゲル化し個体状態を維持し、体温程度の温度で容易に溶解し、更に熱に弱い薬物の安定化に寄与するゼラチンを基材として用い、更に必要に応じて、糖や糖アルコール、ポリエチレングリコール、結晶セルロース等を添加させることにより、使用上問題ない物性のシート状製剤を調製することができ、舌下投与も含む口腔内経由での薬物の投与に適した製剤特性となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、水と、ゼラチンと、スギ花粉アレルゲンタンパク質を除く薬物とを含むことを特徴とするシート状製剤である。
本発明のシート状製剤は、糖、糖アルコール、及び、糖脂肪酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を更に含むことが好ましい。
本発明のシート状製剤は、ポリエチレングリコール又はその誘導体を更に含むことが好ましく、また、結晶セルロースを更に含むことが好ましい。
また、上記スギ花粉アレルゲンタンパク質を除く薬物は、それらを含む液状又は固体であるであることが好ましい。
また、上記ゼラチンの含有量が、全重量基準で2〜40重量%であることが好ましい。
また、本発明のシート状製剤は、厚さが30〜5000μmの範囲内にあることが好ましく、平面面積が0.5〜6.0cmの範囲内にあることが好ましい。
また、本発明は、本発明のシート状製剤の製造方法であって、水と、ゼラチンと、スギ花粉アレルゲンタンパク質を除く薬物とを混合して混合溶液を調製する工程と、上記混合溶液を用いて薄膜を形成する工程とを有し、上記混合溶液を調製する工程において添加水分量を調節するか、又は、上記薄膜を形成する工程の後、上記薄膜を乾燥させて、得られるシート状製剤に含有される水の量を調節することを特徴とするシート状製剤の製造方法である。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のシート状製剤は、水と、ゼラチンと、スギ花粉アレルゲンタンパク質を除く薬物とを含むものである。
このような組成からなる本発明のシート状製剤は、感作時間の制御が必要な口腔内減感作療法用に好適に用いられ、特に舌下減感作療法に適したものである。また、本発明のシート状製剤は、ゼラチンと、特定の安定化剤とを含有するため、スギ花粉アレルゲンタンパク質を除く薬物、特にタンパク質やペプチドを安定に維持することができる。
本発明のシート状製剤の厚みとしては特に限定されないが、30〜5000μmであることが好ましい。30μm未満であると、シート強度及び製品の取り扱い性の観点から問題となる可能性があり、5000μmを超えると、口腔内、特に舌下へ投与した場合、違和感を覚える恐れがある。
また、本発明のシート状製剤のサイズとしては特に限定されないが、平面面積が0.5〜6.0cmの範囲内にあることが好ましい。0.5cm未満であると、シート状製剤を摘まんで投与する際に取り扱いが難しくなる恐れがあり、6.0cmを超えると口腔内、特に舌下へ完全に入れることができない恐れがある。
また、本発明のシート形状の製剤の平面形状は特に限定されず、例えば、長方形、正方形等の矩形、5角形等の多角形、円形、楕円形等、任意の形状が挙げられる。ここにいう多角形は、完全な多角形のほか、若干、角部にRを有する形状も含む。
なお、本明細書において、「シート状」とは「フィルム状」も含む概念である。
本発明のシート状製剤は、ゼラチンを含有するものである。
上記ゼラチンは、本発明のシート状製剤の基材を構成する材料であり、フィルム形状形成能及び可食性を有するものである。
このようなゼラチンを含むことで、本発明のシート状製剤は、常温ではゲル化し、口腔内の体温程度の温度で容易に溶解させることができる。また、ゼラチンは、熱可逆性ゲル化剤の中では最も低温でゲル化を起こすことが可能であり、常温〜40℃付近の温度で製剤を製造することができるため、熱安定性が低い薬物の製造時の安定性を確保することができる。
なお、本明細書において、「可食性」とは、経口的に投与可能であり、製剤学的に許容されるものであることを意味する。
上記ゼラチンとしては、常温の水に溶解可能な水溶性ゼラチンと呼ばれるグレードのものが好ましい。上記水溶性ゼラチンを用いることで、常温付近での本発明のシート状製剤の製造を可能とし、後述する薬物の製造時の安定性を確保することができる。
なお、本明細書にいう「水溶性ゼラチン」とは、1gのゼラチンが20mLの常温(30℃)の水に溶解するゼラチンを指す。
また、上記ゼラチンは、10重量%濃度の水溶液としたときに32℃でゲル化せず、5℃付近ではゲル化する特性を持つことが好ましい。このような特性を持つゼラチンである場合、上記水溶性ゼラチンでなくとも、分子量及びゼラチン中のヒドロキシプロリン含有量によっては、本発明の効果を充分に奏するグレードも存在するからである。
本発明のシート状製剤において用いられるゼラチンとしては、動物の皮や骨に含まれるタンパク質を酵素によって分解抽出したものが挙げられ、例えば、豚、牛及び魚由来のものを酸処理又はアルカリ処理した、いずれのものでも使用できる。
なかでも、上記ゼラチンとしては、製造時に常温で調製可能であり、熱に弱い薬物の製造時における安定性の観点から、魚又は豚由来のゼラチンが好ましい。
かかる観点から、上記ゼラチンは、平均分子量が9万を超えるものであれば、アミノ酸組成中のヒドロキシプロリン量が5.2〜9.2モル%のものであればよい。このようなゼラチンとしては、例えば、サケ由来ゼラチン(アミノ酸組成中のヒドロキシプロリン量:5.4モル%)、コイ由来ゼラチン(アミノ酸組成中のヒドロキシプロリン量:7.6モル%)、ティラピア由来ゼラチン(アミノ酸組成中のヒドロキシプロリン量:8.0モル%)等の魚由来のゼラチンが挙げられ、なかでも、ティラピア由来ゼラチンが特に好ましい。
ここで、上記アミノ酸組成は、ゼラチンを加水分解した後にイオン交換クロマトグラフ法により分離し、ニンヒドリンにより検出する分析により得られる。
なお、上記方法により得られるアミノ酸組成中のヒドロキシプロリン量(モル%)の具体例としては、例えば、以下のとおりである。
ニワトリ:10.8モル%
ダチョウ:10.4モル%
マウス:8.7モル%
ブタ:9.4モル%
ウシ:9.5モル%
また、上記ゼラチンとしては、平均分子量が5万〜9万のものであれば、アミノ酸組成中のヒドロキシプロリン量に関わらず好ましいものである。
ここで、本明細書において「平均分子量」とは、重量平均分子量を意味し、ゲル濾過クロマトグラフ分析により測定される。
更に、ここにいう平均分子量は、ゼラチンのポリペプチド鎖3量体の分子量ではなく、それぞれのポリペプチド鎖単量体の分子量を意味する。
本発明のシート状製剤において、上記ゼラチンの含有量は、本発明のシート状製剤の全重量に基づいて、好ましくは2〜40重量%、より好ましくは3〜30重量%である。2重量%未満であると、常温ではゲル化しない可能性があり、一方、40重量%を超えると、本発明のシート状製剤の口腔内での溶解性が極めて遅くなり、使用上問題となる恐れがある。
本発明のシート状製剤は、上記可食性高分子であるゼラチンに加えて、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、水にのみ可溶である可食性高分子又は水にも有機溶媒にも溶解しない可食性高分子(以下、これらをまとめて、その他の可食性高分子ともいう)を適量組み合わせて用いることもできる。
上記その他の可食性高分子としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム等の合成高分子化合物、デキストラン、カゼイン、グァーガム、キサンタンガム、トラガカントガム、アカシアガム、アラビアガム、ジェランガム、澱粉等の天然物より得られる高分子化合物等が挙げられる。これらのその他の可食性高分子は、1種で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
上記その他の可食性高分子の配合量は、本発明のシート状製剤の全重量基準で、好ましくは0.1〜10重量%である。
本発明のシート状製剤は、スギ花粉アレルゲンタンパク質を除く薬物を含有する。
上記スギ花粉アレルゲンタンパク質を除く薬物としては特に限定されないが、例えば、ヒト等の哺乳動物にその舌下、口腔内、腸管を通して投与し得る、すなわち、経口投与可能な薬物が好ましい。そのような薬物としては、具体的には、例えば、全身性麻酔薬、催眠・鎮静薬、抗癲癇薬、解熱鎮痛消炎薬、鎮暈薬、精神神経用薬、中枢神経薬、抗痴呆薬、局所麻酔薬、骨格筋弛緩薬、自律神経用薬、鎮痙薬、抗パーキンソン薬、抗ヒスタミン薬、強心薬、不整脈用薬、利尿薬、血圧降下薬、血管収縮薬、冠血管拡張薬、末梢血管拡張薬、動脈硬化用薬、循環器用薬、呼吸促進薬、鎮咳去痰薬、ホルモン薬、化膿性疾患用外用薬、鎮痛・鎮痒・収斂・消炎用薬、寄生性皮膚疾患用薬、止血用薬、痛風治療用薬、糖尿病用薬、抗悪性腫瘍用薬、抗生物質、化学療法薬、麻薬、禁煙補助薬、ワクチン等が挙げられる。
なお、上記薬物は、疾患、状態又は障害の治療において所望の結果、例えば、所望の治療結果をもたらすのに充分な、本明細書中で有効量とも呼ばれる量で存在することができる。上記有効量の薬物とは、例えば、非毒性ではあるが、しかし特定の時間にわたって選択された効果をもたらすのに充分な量の薬物を意味する。このような量は、本発明の属する技術分野における従来技術に基づく当業者によって容易に決定することができる。
また、スギ花粉アレルゲンタンパク質は、典型的には、スギ花粉抽出エキスに含まれるものである。本発明の一実施態様では、薬物は、スギ花粉抽出エキスを除くことができる。
また、上記スギ花粉アレルゲンタンパク質を除く薬物は固体薬物であっても液状薬物であってもよい。ここにいう固体薬物は、室温(25℃)で固体である薬物、すなわち、融点が25℃より高い薬物を意味する。ここにいう融点は、DSC、型番DSC6220(セイコーインスツルーメンツ(SII)製)で測定された値を意味する。
また、上記スギ花粉アレルゲンタンパク質を除く液状の薬物とは、室温、すなわち25℃で流動性を有する、すなわち薬物の粘度が0.05〜10万mPa・sである薬物をいう。なお、上記薬物の粘度は、当該薬物を25℃に保温しながらE型粘度計を用いて測定する。
上記スギ花粉アレルゲンタンパク質を除く薬物の配合量としては、その性質などによっても異なるが、本発明のシート状製剤の全重量に対して、通常1×10−10〜80重量%であることが好ましい。1×10−10重量%未満であると、臨床効果の観点から多くの薬物において薬効を示さない場合があり、80重量%を超えると、本発明のシート状製剤の強度を著しく低下させ、保型性に問題が生じる可能性がある。上記スギ花粉アレルゲンタンパク質を除く薬物の配合量のより好ましい範囲は、1×10−6〜50重量%である。当該範囲にあることで、製造上及び実用上問題ない製剤の調製が可能である。
本発明のシート状製剤は、水を含有するものである。
上記水は、本発明のシート状製剤の溶解を補助する作用を有する材料である。
また、本発明のシート状製剤内の水分含有量を制御することで、シート状製剤の溶解時間を容易に制御することができる。したがって、本発明のシート状製剤は、口腔内で溶解し服用する場合にも、口腔内、特に舌下においてゆっくりと溶解させ薬物を除放させる場合の双方において適したものである。
本発明では、シート状製剤の全重量に基づいて、水の含有量は、好ましくは1〜60重量%、より好ましくは5〜50重量%である。1重量%未満であると、口腔内での溶解性が極めて悪くなり使用上問題となる可能性があり、一方、60重量%を超えると、常温での物性面の保管安定性が悪くなる恐れがある。
また、本発明のシート状製剤は、物性及び溶解性を向上させる添加剤、例えば、糖、糖アルコール、及び、糖脂肪酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を更に含むことが好ましい。
上記糖としては、例えば、以下に示すような単糖、二糖、三〜六糖が挙げられる。
単糖類としては、例えば、エリスロース、スレオース等のアルドテトロース、リボース、リキソース、キシロース、アラビノース等のアルドペントース、アロース、タロース、グロース、グルコース、アルトロース、マンノース、ガラクトース、イドース等のアルドヘキソース、エリスルロース等のケトテトロース、キシルロース、リブロース等のケトペントース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース等のケトヘキソース等が挙げられる。二糖類としては、例えば、トレハロース、コージビオース、ニゲロース、マルトース、イソマルトース等のα−ジグルコシド、イソトレハロース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオース糖のβ−ジグルコシド、ネオトレハロース等のα,β−ジグルコシドの他、ラクトース、スクロース、イソマルツロース(パラチノース)等が挙げられる。三糖類としては、例えば、ラフィノース等が挙げられる。三糖〜六糖のオリゴ糖としては、例えば、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、キチンオリゴ糖、キトサンオリゴ糖、オリゴグルコサミン、デキストリン、シクロデキストリン等の環状オリゴ糖等が挙げられる。
また、単糖のアルコールとしては、例えば、エリスリトール、D−スレイトール、L−スレイトール等のテトリトール、D−アラビニトール、キシリトール等のペンチトール、D−イジトール、ガラクチトール(ダルシトール)、D−グルシトール(ソルビトール)、マンニトール等のヘキシトール、イノシトール等のシクリトール等が挙げられる。また、二糖のアルコールとしては、例えば、マルチトール、ラクチトール、還元パラチノース(イソマルト)等が挙げられ、オリゴ糖としては、ペンタエリスリトール、還元麦芽糖水飴等が挙げられる。
本発明のシート状製剤において、上記糖又は糖アルコールは、置換されていてもよく、また、1種で又は2種以上混合して用いることもできる。
上記糖又は糖アルコールは、本発明のシート状製剤が口腔内で容易に溶解する観点、また製造工程において大きく溶液の粘性を変化させないという観点から、単糖類〜三糖類又はこれらの糖アルコールであることが好ましい。
また、上記糖脂肪酸としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
上記ソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、ヤシ油脂肪酸ソルビタン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
また、上記ショ糖脂肪酸エステルとしては、例えば、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖ベヘニン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル、ショ糖混合脂肪酸エステル等が挙げられる。
これらの糖脂肪酸は、タンパク質やペプチドの安定化剤としての効果以外に、消泡剤としても役立つため、大変都合がよい。
また、本発明のシート状製剤の物性を向上させる添加剤として、ポリエチレングリコール又はその誘導体、セルロースを更に含有することが好ましい。
上記ポリエチレングリコールとしては、その平均分子量が200〜2万のものが好ましく、平均分子量が400〜8000のものがより好ましい。平均分子量が200以下の場合には、可塑性が高く、使用上必要な充分な物性を得られない可能性があり、平均分子量が2万を超えると、溶解時の粘性が高くなり、口腔内において違和感を覚えさせる可能性がある。なお、ここにいう平均分子量は第十五改正日本薬局方 各条 マクロゴール400に記載されている平均分子量試験により求められる。
上記セルロースとしては、結晶セルロース、粉末セルロースが好ましく、結晶セルロースがより好ましい。
このようなセルロースは、平均粒子径が0.01〜100μmのものが好ましい。平均粒子径が0.01〜50μmのものがより好ましい。平均粒子径が0.01μm未満では、調製中の溶液中で凝集しやすくなり、かえって物性を損なう恐れがある。平均粒子径が100μmを超えると、調製中の溶液中で沈降しやすくなる恐れがあり、また、口腔内投与時に残査感が残り違和感を覚えさせる可能性がある。ここにいう平均粒子径は、レーザー散乱式粒度分布測定装置で求めた50%平均粒子径を意味する。
本発明のシート状製剤において、上述した添加剤の量は、本発明のシート状製剤の全重量に基づき、好ましくは1〜80重量%、より好ましくは5〜70重量%である。1重量%未満であると、使用上充分な物性を担保できない可能性があり、一方、80重量%を超えると、添加した添加剤によりシート状製剤の物性の制御が困難になる恐れがある。
更に、本発明のシート状製剤は、基材を構成する成分として、上述した材料以外に、所望により香料、嬌味剤、甘味剤、着色剤、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤、界面活性剤等を適宜使用してもよい。これらの材料としては特に限定されず、従来公知のものが使用できる。
本発明のシート状製剤は、上述のように、ゼラチンを含むものであるため、常温ではゲル化し、口腔内の体温程度の温度で容易に溶解させることができ、また、ゼラチンと特定の添加剤とを含有することで、有意に使用上の物性を向上させることが可能である。また、スギ花粉アレルゲンタンパク質を除く薬物、特にタンパク質やペプチドを安定に維持することができる。
また、本発明のシート状製剤は、その水分含有量を制御することで、その溶解時間を容易に制御することができるため、感作時間の制御が必要な口腔内、特に舌下減感作療法に適している。
本発明のシート状製剤は、もちろんそのままの状態で嚥下してもよいし、口腔内で即座に溶解させて嚥下してもよい。更に、口腔内での溶解時間を制御し、口腔粘膜や舌下粘膜からの吸収を期待することも可能である。体温程度の温度で全て溶解させることができるため、残渣感がないという観点、また、その形がシート状であり、その表面積が錠剤等と比較して大きく、患者及び介護者も指で持ちやすいという観点から、患者及び介護者のQOLを大幅に向上させることがでる。
上述した本発明のシート状製剤は、例えば、水と、ゼラチンと、スギ花粉アレルゲンタンパク質を除く薬物とを混合して混合溶液を調製する工程と、上記混合溶液を用いて薄膜を形成する工程とを有し、上記混合溶液を調製する工程において添加水分量を調節するか、又は、上記薄膜を形成する工程の後、上記薄膜を乾燥させて、得られるシート状製剤に含有される水の量を調節する方法により製造することができる。このような本発明のシート状製剤を製造する方法もまた、本発明の1つである。
上記混合溶液を調製する工程では、例えば、まず、所定量の水にゼラチン及びその他添加剤を常温又は加熱により溶解させ、また、溶解しない添加剤に関しては均一に分散させてゼラチン溶液を調製する。熱に安定な薬物の場合にはこの際に該薬物を添加してもよい。一方、熱に不安定な薬物の場合には、当該ゼラチン溶液を常温〜35℃付近まで冷やした後に添加し、攪拌混合する。
なお、上記混合溶液の調製時に泡が発生した場合は、一夜放置や真空又は減圧脱泡を行うとよい。
また、上記薄膜を形成する工程では、例えば、上記混合溶液の所定量を28℃〜32℃の温度下で希望するサイズのプラスチック製ブリスターケース内に分注し、分注後即座に冷却固化させて薄膜を形成する。当該分注方式の代わりに、上記混合溶液を剥離フィルム上に適当量展延し、冷却固化することにより薄膜を形成し、希望するサイズに裁断してもよい。
本工程で形成する薄膜は、上述した本発明のシート状製剤と同等のサイズを有することが好ましい。
本発明のシート状製剤の製造方法では、上記混合溶液を調製する工程において添加水分量を調節するか、又は、上記薄膜を形成する工程の後、上記薄膜を乾燥させて、得られるシート状製剤に含有される水の量を調節する。
すなわち、上記水の量の調節を、混合溶液を調製する工程において添加水分量を調節することで行う場合、上記薄膜を形成することで本発明のシート状製剤を製造できる。
一方、上記水の量の調節を、上記薄膜を形成する工程の後、上記薄膜を乾燥させて行う場合、上記薄膜を乾燥させることで本発明のシート状製剤を製造することができる。
上記薄膜を乾燥させる方法としては、例えば、冷風乾燥工程又は冷却減圧乾燥工程を行う方法が挙げられる。
本発明のシート状製剤の製造方法は、特に熱安定性の低い薬物に対して、35℃以下、好ましくは30℃以下の低温で調製可能という点が非常に有用である。
また、得られたシート状製剤は、必要により密封包装し、製品とすることが好ましい。
本発明のシート状製剤は、ゼラチンを含むことで、常温ではゲル化し、口腔内の体温程度の温度で容易に溶解させることができる。また、その水分含有量を制御することで、その溶解時間を容易に制御することができるため、本発明のシート状製剤は、感作時間の制御が必要な口腔内、特に舌下減感作療法に適している。また、本発明のシート状製剤は、ゼラチンと特定の添加剤とを含有することで、有意に使用上の物性を向上させることが可能である。また、スギ花粉アレルゲンタンパク質を除く薬物、特にタンパク質やペプチドを安定に維持することができる。
また、本発明のシート状製剤は、もちろんそのままの状態で嚥下してもよいし、口腔内で即座に溶解させて嚥下してもよい。更に、口腔内での溶解時間を制御し、口腔粘膜や舌下粘膜からの吸収を期待することも可能である。体温程度の温度で全て溶解させることができるため、残渣感がないという観点、またその形がシート形状であり、その表面積が錠剤等と比較して大きく、患者及び介護者も指で持ちやすいという観点から患者及び介護者のQOLを大幅に向上させることができる。
加えて、本発明のシート状製剤の製造方法では、従来の熱可逆性ゲル化剤と比較して、低温での調製が可能なゼラチンを用いることにより、熱安定性が低い薬物の調製時における含量ロスを低減しつつ、シート状製剤を製造することができる。
以下の実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
精製水74重量部に、結晶セルロースA(平均粒子径:20μm)3重量部を加えて超音波溶解及び分散を行った。ここに魚(ティラピア)由来の水溶性ゼラチン(平均分子量約10万、ヒドロキシプロリン量約8.6モル%)10重量部を加え、常温〜40℃の温度で溶解させ、ここにD−ソルビトールを10重量部、PEG4000を3重量部更に加えて溶解させ、5cmプラスチック製ブリスターケース(クリオモルド(角型)3号、サクラファインテック社製)に1gずつ分注し、2〜8℃下で1昼夜冷却固化し、シート状製剤を得た。
(実施例2)
精製水74重量部に、結晶セルロースA(平均粒子径:20μm)3重量部を加えて超音波溶解及び分散を行った。ここにゼラチン(魚由来)(平均分子量10万、ヒドロキシプロリン量約8.6モル%)10重量部を加え、50〜70℃の温度で溶解させ、40℃の恒温下でシェーカーにかけた。この溶液にD−ソルビトールを10重量部、PEG4000を3重量部加えて溶解させ、5cmプラスチック製ブリスターケース(クリオモルド(角型)3号、サクラファインテック社製)に1gずつ分注し、2〜8℃下で1昼夜冷却固化し、シート状製剤を得た。
(実施例3〜7)
表1に示した組成とした以外は、実施例2と同様の手順でシート状製剤を得た。
実施例3ではゼラチン(豚由来)A(平均分子量約8.5万、ヒドロキシプロリン量約9.2モル%)、実施例4ではアルカリ処理ゼラチン(豚由来)(平均分子量18万、ヒドロキシプロリン量約9.2モル%)、実施例5では酸処理ゼラチン(豚由来)(平均分子量10万、ヒドロキシプロリン量約9.2モル%)、実施例6ではゼラチン(豚由来)B(平均分子量約10万、ヒドロキシプロリン量約9.4モル%)、実施例7ではゼラチン(牛由来)(平均分子量約20万、ヒドロキシプロリン量約9.5モル%)を用いた。
(比較例1)
精製水74重量部に、結晶セルロースA(平均粒子径:20μm)3重量部を加えて超音波溶解及び分散を行った。ここに寒天を10重量部加え、80〜90℃の温度で溶解させ、ここにD−ソルビトールを10重量部、PEG4000を3重量部添加して混合溶解させ、5cmプラスチック製ブリスターケース(クリオモルド(角型)3号、サクラファインテック社製)に1gずつ分注し、2〜8℃下で1昼夜冷却固化し、シート状製剤を得た。
(比較例2〜4)
表1に示した組成とした以外は、比較例1と同様の手順でシート状製剤を得た。
Figure 2012121873
(実施例8)
精製水80重量部に、魚(ティラピア)由来の水溶性ゼラチン(平均分子量約10万、ヒドロキシプロリン量約8.6モル%)10重量部を加え、常温〜40℃の温度で溶解させ、ここにD−ソルビトール10重量部を更に加えて溶解させ、5cmプラスチック製ブリスターケース(クリオモルド(角型)3号、サクラファインテック社製)に1gずつ分注し、2〜8℃下で1昼夜冷却固化し、シート状製剤を得た。
(実施例9〜14、比較例5)
表2に示した組成とした以外は、実施例8と同様の手順でシート状製剤を得た。
Figure 2012121873
(実施例15)
精製水77重量部に、魚(ティラピア)由来の水溶性ゼラチン(平均分子量約10万、ヒドロキシプロリン量約8.6モル%)10重量部を加え、常温〜40℃の温度で溶解させ、ここにD−ソルビトールを10重量部、PEG400を3重量部更に加えて溶解させ、5cmプラスチック製ブリスターケース(クリオモルド(角型)3号、サクラファインテック社製)に1gずつ分注し、2〜8℃下で1昼夜冷却固化し、シート状製剤を得た。
(実施例16〜20)
表3に示した組成とした以外は、実施例15と同様の手順でシート状製剤を得た。
(比較例6)
精製水80重量部に、魚(ティラピア)由来の水溶性ゼラチン(平均分子量約10万、ヒドロキシプロリン量約8.6モル%)10重量部を加え、常温〜40℃の温度で溶解させ、ここにD−ソルビトール10重量部を更に加えて溶解させ、5cmプラスチック製ブリスターケース(クリオモルド(角型)3号、サクラファインテック社製)に1gずつ分注し、2〜8℃下で1昼夜冷却固化し、シート状製剤を得た。
Figure 2012121873
(実施例21)
精製水74重量部に、結晶セルロースB(平均粒子径:50μm)3重量部を加えて超音波溶解及び分散を行った。ここに魚(ティラピア)由来の水溶性ゼラチン(平均分子量10万、ヒドロキシプロリン量約8.6モル%)10重量部を加え、常温〜40℃の温度で溶解させ、ここにD−ソルビトールを10重量部、PEG4000を3重量部加えて溶解させ、5cmプラスチック製ブリスターケース(クリオモルド(角型)3号、サクラファインテック社製)に1gずつ分注し、2〜8℃下で1昼夜冷却固化し、シート状製剤を得た。
(実施例22〜25)
表4に示した組成とした以外は、実施例21と同様の手順でシート状製剤を得た。
実施例22では結晶セルロースC(平均粒子径:90μm)、実施例23では粉末セルロースA(平均粒子径:6μm)、実施例24では粉末セルロースB(平均粒子径:10μm)、実施例25では粉末セルロースC(平均粒子径:50μm)を用いた。
(比較例7)
精製水77重量部に、魚(ティラピア)由来の水溶性ゼラチン(平均分子量約10万、ヒドロキシプロリン量約8.6モル%)10重量部を加え、常温〜40℃の温度で溶解させ、ここにD−ソルビトールを10重量部、PEG4000を3重量部更に加えて溶解させ、5cmプラスチック製ブリスターケース(クリオモルド(角型)3号、サクラファインテック社製)に1gずつ分注し、2〜8℃下で1昼夜冷却固化し、シート状製剤を得た。
Figure 2012121873
(実施例26〜29)
表5に示した組成とした以外は、実施例1と同様の手順でシート状製剤を得た。
実施例1〜29のシート状製剤における精製水の一部を、同重量のスギ花粉アレルゲンタンパク質を除く薬物と置換して、該薬物含有のシート状製剤を得る。
Figure 2012121873
(実施例30)
精製水66.5重量部に、結晶セルロースA(平均粒子径:20μm)3重量部を加えて超音波溶解及び分散を行った。ここに魚(ティラピア)由来の水溶性ゼラチン10重量部を加え、30〜50℃の温度で溶解させ、28〜32℃の恒温下でシェーカーにかけた。ここにゾルミトリプタン0.5重量部、D−ソルビトール15重量部、PEG4000を5重量部加えて溶解させた後、1cmプラスチック製ブリスターケース(クリオモルド(角型)3号、サクラファインテック社製)に0.5gずつ分注し、2〜8℃下で1昼夜冷却固化し、シート状製剤を得た。
(実施例31)
精製水27重量部に、結晶セルロースA(平均粒子径:20μm)3重量部を加えて超音波溶解及び分散を行った。ここに魚(ティラピア)由来の水溶性ゼラチン10重量部を加え、30〜50℃の温度で溶解させ、28〜32℃の恒温下でシェーカーにかけゼラチン溶液とした。別途ヒトインスリン100単位溶液を50重量部取り、D−ソルビトール7重量部、PEG4000を3重量部2〜8℃下で溶解させ、25〜30℃の温度になるよう加温した後、前もって用意しておいたゼラチン溶液に全量加え、28〜32℃下℃下で速やかに混合し、5cmプラスチック製ブリスターケース(クリオモルド(角型)3号、サクラファインテック社製)に2gずつ分注し、2〜8℃下で1昼夜冷却固化し、シート状製剤を得た。
(実施例32)
精製水59.8重量部に、結晶セルロースA(平均粒子径:20μm)5重量部を加えて超音波溶解及び分散を行った。ここに魚(ティラピア)由来の水溶性ゼラチン20重量部を加え、30〜50℃の温度で溶解させ、30〜35℃の恒温下でシェーカーにかけゼラチン溶液とした。ここにダニ抗原DerfI0.2重量部及びD−ソルビトール10重量部、PEG4000を5重量部添加し、28〜32℃下で速やかに混合溶解させ、1cmプラスチック製ブリスターケース(クリオモルド(角型)1号、サクラファインテック社製)に0.5gずつ分注し、2〜8℃下で1昼夜冷却固化し、シート状製剤を得た。
(実施例33)
表6に示した組成とした以外は、実施例32と同様の手順でシート状製剤を得た。
Figure 2012121873
[試験方法]
実施例及び比較例で調製したシート状製剤の口腔内における溶解性、また調製時におけるゲル化温度、官能試験(触感)、及び25℃保管時における保管安定性(官能試験(触感))に関して評価を行った。またサンプルによっては、口腔内における溶解時間の測定、口腔内における官能試験(ザラツキ)、及び、融点に関して測定を行った。それぞれの試験方法を以下に示し、結果を表7〜9に示した。
(口腔内溶解時間測定)
第15改正日本薬局方に記載の崩壊試験法に準じて試験を行った。1000mLの低形ビーカーに蒸留水を入れ、37±2℃の温度下で、1分間に29〜32往復、振幅53〜57mmで試験器を上下させる条件下により試験を行った。試験器の中にシート状製剤を入れ、前述の条件下で試験を開始し、試験開始からシート状製剤が完全に溶解し、試験器から消失した時間を口腔内溶解時間とした。
(口腔内溶解性評価)
1000mLのガラスシャーレにpH6.8リン酸塩緩衝液900mLを入れ、この中にステンレス製篩い(Φ4mm)を上下反転させて沈め、スターラーで撹拌(300rpm)する。この溶液の温度は、恒温水循環装置を用いて37±2℃で管理し、この中に試験片(5cm)を沈めた。試験片を沈めた時間から10分間放置し、試験片がステンレス製篩上に残っているかどうかを評価した。評価基準は以下の通りである。
4:残存物なし
1:残存物あり
(保管安定性試験)
25℃に設定した恒温槽に調製したシート状製剤を保管し、保管開始から1カ月後にシート状製剤を取出し、官能試験(触感)を評価した。評価方法は官能試験(触感)の評価方法に従った。
(官能試験(触感))
実施例及び比較例により断裁したシート状製剤を、実際に指で5秒間円を描くように触り、ネバネバするか、指が濡れないかの観点から違和感を評価した。評価基準は次の通りである。
4:ネバネバしないし、指が濡れない
3:若干ネバネバするまたは指が濡れる
2:ネバネバ感及び指の濡れに関して違和感を覚える
1:かなりネバネバし、指に残る
(調製時ゲル化温度)
低温での調製が可能かどうかを評価するために、調製時にゲル化が起こり、粘性が急激に増加する温度に関して評価を行った。評価基準は以下の通りである。
4:30℃未満
3:30〜40℃未満
2:40℃〜50℃未満
1:50℃以上
(融点測定)
シート状製剤が室温での保管が可能かどうかを評価するために、各シート状製剤が融解する温度を測定した。シート状製剤が融解し始める温度を目視で確認し評価を行った。評価基準は以下の通りである。
4:30℃以上
1:30℃未満
(口腔内におけるザラツキ度)
パネラー2名により、実際に服用、舌上で溶解させ、その際のザラツキ感を評価した。評価基準は以下の通りである。
4:全くザラツキを感じない
3:若干ザラツキを感じるが、違和感がないレベルである
2:ザラツキを感じるが、残渣感は
1:かなりザラツキを感じ、残渣感が残る
Figure 2012121873
Figure 2012121873
Figure 2012121873
*:ヒトインスリン100単位溶液に水が含まれるため、その量も加味し算出した。
表7〜9に示したように、実施例に係るシート状製剤は、いずれの評価項目においても良好な結果であったのに対し、比較例に係るシート状製剤は、いずれの評価項目も良好なものはなかった。
本発明のシート状製剤は、ゼラチンを含むことで、常温ではゲル化し、口腔内の体温程度の温度で容易に溶解させることができる。また、その水分含有量を制御することで、その溶解時間を容易に制御することができるため、本発明のシート状製剤は、感作時間の制御が必要な口腔内、特に舌下減感作療法に適している。また、本発明のシート状製剤は、ゼラチンと特定の添加剤とを含有することで、有意に使用上の物性を向上させることが可能である。また、スギ花粉アレルゲンタンパク質を除く薬物、特にタンパク質やペプチドを安定に維持することができる。
また、本発明のシート状製剤は、もちろんそのままの状態で嚥下してもよいし、口腔内で即座に溶解させて嚥下してもよい。更に、口腔内での溶解時間を制御し、口腔粘膜や舌下粘膜からの吸収を期待することも可能である。体温程度の温度で全て溶解させることができるため、残渣感がないという観点、またその形がシート形状であり、その表面積が錠剤等と比較して大きく、患者及び介護者も指で持ちやすいという観点から患者及び介護者のQOLを大幅に向上させることがでる。
加えて、本発明のシート状製剤の製造方法では、従来の熱可逆性ゲル化剤と比較して、低温での調製が可能なゼラチンを用いることにより、熱安定性が低い薬物の調製時における含量ロスを低減しつつ、シート状製剤を製造することができる。

Claims (9)

  1. 水と、ゼラチンと、スギ花粉アレルゲンタンパク質を除く薬物とを含むことを特徴とするシート状製剤。
  2. 糖、糖アルコール、及び、糖脂肪酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を更に含む請求項1記載のシート状製剤。
  3. ポリエチレングリコール又はその誘導体を更に含む請求項1又は2記載のシート状製剤。
  4. 結晶セルロースを更に含む請求項1、2又は3記載のシート状製剤。
  5. スギ花粉アレルゲンタンパク質を除く薬物は、それらを含む液状又は固体である請求項1、2、3又は4記載のシート状製剤。
  6. ゼラチンの含有量が、全重量基準で2〜40重量%である請求項1、2、3、4又は5記載のシート状製剤。
  7. 厚さが30〜5000μmの範囲内にある請求項1、2、3、4、5又は6記載のシート状製剤。
  8. 平面面積が0.5〜6.0cmの範囲内にある請求項1、2、3、4、5、6又は7記載のシート状製剤。
  9. 請求項1記載のシート状製剤の製造方法であって、
    水と、ゼラチンと、スギ花粉アレルゲンタンパク質を除く薬物とを混合して混合溶液を調製する工程と、前記混合溶液を用いて薄膜を形成する工程とを有し、
    前記混合溶液を調製する工程において添加水分量を調節するか、又は、前記薄膜を形成する工程の後、前記薄膜を乾燥させて、得られるシート状製剤に含有される水の量を調節する
    ことを特徴とするシート状製剤の製造方法。
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