JP2012110898A - 13Cr継目無鋼管製管用丸鋳片の連続鋳造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】前記軸心部割れ、特に凝固末期に発生する収縮孔とそれに起因するAタイプ割れを、Cタイプ割れとともに実用レベルで抑制できる13Cr継目無鋼管製管用丸鋳片の連続鋳造方法を提供する。
【解決手段】連続鋳造の過程における内部に未凝固溶鋼を含む断面円形のストランドに対し、該ストランドの軸心部の固相率fsが0.5となる位置から前記軸心部の温度が(Ts−145)℃となる位置までの間を下記(1)式による水量密度Q1により第1次圧縮応力付加強制冷却する。なお、前記第1次圧縮応力付加強制冷却の完了後、ストランドの軸心部の温度が(Ts−255)℃となるまで下記(2)式により与えられるQ2により第2次圧縮応力付加強制冷却を行うのが一層望ましい。
10≦Q1≦100・・・(1)、0<Q2≦60,但しQ1>Q2・・・(2)
【選択図】図5
【解決手段】連続鋳造の過程における内部に未凝固溶鋼を含む断面円形のストランドに対し、該ストランドの軸心部の固相率fsが0.5となる位置から前記軸心部の温度が(Ts−145)℃となる位置までの間を下記(1)式による水量密度Q1により第1次圧縮応力付加強制冷却する。なお、前記第1次圧縮応力付加強制冷却の完了後、ストランドの軸心部の温度が(Ts−255)℃となるまで下記(2)式により与えられるQ2により第2次圧縮応力付加強制冷却を行うのが一層望ましい。
10≦Q1≦100・・・(1)、0<Q2≦60,但しQ1>Q2・・・(2)
【選択図】図5
Description
本発明は、丸鋳片の連続鋳造方法、特に、油井の掘削用に利用されるマルテンサイト系の13Cr継目無鋼管(API−13Cr鋼管)の製管用に用いられる丸鋳片の連続鋳造方法に関する。ここに13Cr継目無鋼管製管用丸鋳片とは、特に、Cr含有量が12.7〜13.3mass%である高クロム鋼の継目無鋼管製管用丸鋳片をいう。
継目無鋼管は、一般に、出発素材として丸ビレット(丸鋳片)を準備し、マンネスマン穿孔法によって穿孔した後、エロンゲータ、プラグミル又はマンドレルミル等の圧延機により延伸し、さらに、サイザーやストレッチレジューサにより定径化する一連の工程によって製造される。
このような丸ビレットを準備する方法として、丸ビレットを直接連続鋳造する方法が知られており、低炭素鋼の場合には、鋳造された状態で良好な内質をもった丸ビレットが得られる。しかしながら、高クロム鋼、特に13Cr鋼の場合には、鋳造された状態では、丸ビレットの内部にポロシティや偏析に起因した内部割れが発生しやすく、マンネスマン穿孔時に疵が発生しやすいという問題がある。そのため、例えば、特許文献1に開示されているように、連続鋳造によって、丸ビレットの断面積に対して3倍以上に当たる長方形断面を有する鋳片に大圧下を伴う分塊圧延を施してポロシティを機械的に圧着させて内部品質を向上させることが行われてきた。
かかる方法は内質が優れた丸ビレット(丸鋳片)が得られるものの、コスト高であるという問題がある。この問題を解決するために、例えば、特許文献2〜4には、連続鋳造により丸ビレット(丸鋳片)を製造するに当たり、未凝固圧下を加える一連の手段が開示されており、これらの手段により、内部割れ、中心部ポロシティ、中心部偏析、軸心部割れの生成の防止が可能とされている。
しかしながら、特許文献2〜4に記載の手段は、いずれも丸ビレット(丸鋳片)の連続鋳造過程で未凝固部に機械的圧下を加え、未凝固溶鋼を上流側へ排出する過程を伴うため、製品歩留り率の低下が避けられないという本質的な問題を包含している。また、機械的圧下のための装置が大がかりになり設備費が嵩むという問題もある。
これに対し、特許文献5には、連続鋳造鋳片のセンターポロシティ及び中心偏析の軽減方法として、鋳片冷却の際の熱収縮を利用する二次冷却方法が提案されており、具体的には、鋼のブルームまたはビレット連続鋳造において、残溶湯プールの鋳込み方向最先端より手前0.1〜2.0mの位置から鋳片中心部の固相率が0.99以上となるまで、凝固末期強制冷却帯で鋳片表面を水量密度100〜300リットル/(min.・m2)で水冷却する方法が示されている(特許文献5:請求項1参照)。
特許文献5に記載の手段により、特許文献2〜4に記載の手段の内包する問題点、すなわち、製品歩留り率の低下や高い設備費などの問題の解決がある程度可能と推定される。しかしながら、特許文献5において実施例として挙げられている低炭素鋼及び1%Cr鋼は、凝固区間(液相線−固相線の温度間隔)が比較的短く、かつ、凝固時に偏析し易いCrの含有量が少ない。そのため、本発明で問題にする軸心部割れが発生しがたい。これに対して、油井の掘削用に利用される13Cr鋼は、凝固区間が長く、かつ、凝固時にCrが偏析し易いという特徴がある。そのため、特許文献5に記載の手段をそのまま適用しても13Cr鋼においては、後述するAタイプ及びCタイプの軸心部割れが多発し、十分な効果を挙げることができない。
本発明は、上記特許文献5の有する問題点を解決し、前記軸心部割れ、特に後述する凝固末期に発生する収縮孔とそれに起因するAタイプ割れの発生を、Cタイプ割れとともに実用レベルで十分抑制できる13Cr継目無鋼管製管用丸鋳片の連続鋳造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、上記目的を達成しながら、さらに、13Cr継目無鋼管製管用丸鋳片の連続鋳造時に発生するV偏析に起因するBタイプ割れを効率的に低減可能な13Cr継目無鋼管製管用丸鋳片の連続鋳造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、13Cr継目無鋼管製管用丸鋳片の連続鋳造過程に生ずる欠陥の発生原因について詳細な調査を行い、その結果、連続鋳造の過程において、内部に未凝固溶鋼を含む段階からストランドの軸心部がマクロ偏析を含まないと仮定して完全凝固してもなお、所定の水量密度による第1次圧縮応力付加強制冷却、更には、第2次圧縮応力付加強制冷却を施すことにより凝固末期及びその後の冷却過程において発生する収縮孔に起因する割れを効果的に低減できることを発見し、本発明を完成した。
具体的には、本発明に係る13Cr継目無鋼管製管用丸鋳片の連続鋳造方法は、質量比でCrを12.7〜13.2%含有する13Cr継目無鋼管製管用丸鋳片を連続鋳造するに当たり、
連続鋳造の過程における内部に未凝固溶鋼を含む断面円形のストランドに対し、該ストランドの軸心部の固相率fsが0.5となる位置から前記軸心部の温度が(Ts−145)℃となる位置までの間を下記(1)式による水量密度Q1により第1次圧縮応力付加強制冷却を行うことを特徴とする。
10≦Q1≦100・・・(1)
ここに、Q1はストランド表面に与える冷却水量密度(単位:L/m2/min)をいい、固相率fsとは、ストランドの軸心部における[固相/(固相+液相)]の質量比をいう。また、Tsとは、連続鋳造に供されるバルク溶鋼の固相線温度をいう。
連続鋳造の過程における内部に未凝固溶鋼を含む断面円形のストランドに対し、該ストランドの軸心部の固相率fsが0.5となる位置から前記軸心部の温度が(Ts−145)℃となる位置までの間を下記(1)式による水量密度Q1により第1次圧縮応力付加強制冷却を行うことを特徴とする。
10≦Q1≦100・・・(1)
ここに、Q1はストランド表面に与える冷却水量密度(単位:L/m2/min)をいい、固相率fsとは、ストランドの軸心部における[固相/(固相+液相)]の質量比をいう。また、Tsとは、連続鋳造に供されるバルク溶鋼の固相線温度をいう。
上記発明において、前記第1次圧縮応力付加強制冷却に続いて、ストランドの軸心部の温度が(Ts−255)℃となるまで下記(2)式により与えられるQ2により第2次圧縮応力付加強制冷却を行うことが望ましい。
0<Q2≦60,但しQ1>Q2・・・(2)
ここに、Q2はストランド表面に与える冷却水量密度(単位:L/m2/min)をいう。
0<Q2≦60,但しQ1>Q2・・・(2)
ここに、Q2はストランド表面に与える冷却水量密度(単位:L/m2/min)をいう。
前記各発明において、前記第1次圧縮応力付加強制冷却に先立って、ストランドの軸心部における固相率fsが0.3以上0.5未満の区間に亘って下記(3)式により与えられる水量密度Q3により偏析抑制強制冷却を行うことが望ましい。
10<Q3≦50・・・(3)
10<Q3≦50・・・(3)
上記各発明において継目無鋼管製管用丸鋳片の直径を170〜330mmの間に取るのが望ましい。
本発明により、従来提案されている機械的圧下によらず、水冷手段のみによって、軸心部割れを実用レベルで抑制して13Cr継目無鋼管製管用丸鋳片を連続鋳造することが可能となる。また、本発明により、上記目的を達成しながら、さらに、13Cr継目無鋼管製管用丸鋳片の連続鋳造時に発生するV偏析割れを効率的に低減することができる。
図1は、本発明を実施するための連続鋳造設備における冷却帯とその配置を示す概念図である。図1に示すように、タンディッシュ(図示しない)から断面円形の連続鋳造鋳型1に溶鋼に注入された溶鋼はスプレーノズルを備えた二次冷却帯2を通過する間に凝固シェルが成長し、内部に未凝固溶鋼を有するストランドSが形成され、完全凝固後、矯正帯6によって矯正された後、切断手段(図示しない)によって所定長の継目無鋼管製管用丸鋳片とされる。本発明においては、上記連続鋳造過程、特に二次冷却帯に続いて第1次圧縮応力付加強制冷却帯3、第2次圧縮応力付加強制帯4及び、必要に応じて、これらに先立つ偏析抑制強制冷却5を設け、これら各冷却帯により適正な水量密度の冷却を行い、13Cr継目無鋼管製管用丸鋳片内部に発生する欠陥の低減を図っている。
連続鋳造設備を用いて13Cr鋼を連続鋳造すると、二次冷却帯の水量密度等連続鋳造条件に依存して製品丸鋳片に種々の内部欠陥が発生する。典型的には、これらの内部欠陥は、(1)Aタイプ割れ、(2)Bタイプ割れ、(3)Cタイプ割れの3種に分類される。ここに、Aタイプ割れは、図2(a)に示すように、ストランドの鋳造方向に垂直な断面の中心部に生ずる比較的小さい割れ欠陥であって、ストランドの凝固末期ないし凝固直後に生ずる収縮孔を起点として発生する星形の割れである。Bタイプ割れは、図2(b)に示すように、ストランドの鋳造方向断面に生ずるV字形の割れであって、凝固中期ないし末期にかけて生ずるV字状偏析に由来する。Cタイプ割れは、図2(c)に示すように、ストランドの鋳造方向に垂直な断面に現れる比較的大きな開口部を有する割れであって、ストランドがほぼ凝固した後、その軸心部に掛かる復熱時の引張応力によって収縮孔が拡大することによって生ずるものである。
図3は、前記連続鋳造設備の強制冷却帯を含む要部の拡大図である。ここに示すように、ストランドSは、外側の凝固シェル10と軸心部側の未凝固溶鋼11とからなっており、これが偏析抑制強制冷却帯5、第1次圧縮応力付加強制冷却帯3及び第2次圧縮応力付加強制冷却帯4により強制冷却されるようになっている。上記各強制冷却帯3,4,5はいずれも水冷のためのスプレーノズル31,41,51を備え、いずれもヘッダー32,42,52から供給される冷却水をストランドSに噴射できるようになっている。
本発明者の知見によれば、Aタイプ割れは、第1に、連続鋳造過程においてストランド軸心部の凝固がある程度進行した後、軸心部の温度が、熱間延性が発現する温度に低下するまでの間、すなわち、軸心部における延性が十分でないときに、軸心部に引張応力が作用することによって生ずるものである。したがって、少なくとも軸心部の凝固物が熱間延性発現温度となるまでの間、軸心部を圧縮応力下に維持しておく必要があり、かかる条件は下記第1次圧縮応力付加強制冷却条件を満たすことによって達成できる。
具体的には、この第1次圧縮応力付加強制冷却条件は、連続鋳造の過程における内部に未凝固溶鋼11を含む断面円形のストランドSに対し、該ストランドSの軸心部の固相率fsが0.5となる位置から軸心部の温度が(Ts−145)℃となる位置までの間に亘って下記(1)式による水量密度Q1により行うことにある。
記
10≦Q1≦100・・・(1)
ここに、Q1はストランド表面に与える冷却水の水量密度(単位:L/m2/min)をいい、固相率fsとは、その温度におけるストランドの軸心部における[固相/(固相+液相)]の比をいう。また、Tsとは、連続鋳造に供されるバルク溶鋼の固相線温度をいう。なお、上記条件におけるfsは、例えば、大中 逸雄 著 コンピュータ伝熱・凝固解析入門 1985年 丸善発行」の第196〜208頁に記載の「4.3.2 合金の凝固解析」等の伝熱凝固計算によって求めることができる。また、Tsは、市販の状態図計算ソフト「Thermocalc」(Thermocalc software Inc.)を利用して算出することができる。
記
10≦Q1≦100・・・(1)
ここに、Q1はストランド表面に与える冷却水の水量密度(単位:L/m2/min)をいい、固相率fsとは、その温度におけるストランドの軸心部における[固相/(固相+液相)]の比をいう。また、Tsとは、連続鋳造に供されるバルク溶鋼の固相線温度をいう。なお、上記条件におけるfsは、例えば、大中 逸雄 著 コンピュータ伝熱・凝固解析入門 1985年 丸善発行」の第196〜208頁に記載の「4.3.2 合金の凝固解析」等の伝熱凝固計算によって求めることができる。また、Tsは、市販の状態図計算ソフト「Thermocalc」(Thermocalc software Inc.)を利用して算出することができる。
本発明では、上記のように、fsが0.5となる位置から軸心部の温度が(Ts−145)℃となる位置までの間に亘って第1次圧縮応力付加強制冷却を行うこととするが、この領域は、前記Aタイプ割れが発生する領域に対応している。fsが0.5を超える上流側の領域では、軸心部の溶鋼の流動性が高く、Aタイプ割れが発生しないのであり、一方、軸心部の温度が(Ts−145)℃より低下すれば、軸心部の部材にそこに生ずる引張応力(ほぼ8MPa程度と推定される)に耐え得る熱間強度が生じる。上記区間では、軸心部に残るフィルム状の残溶鋼のため、軸心部の熱間強度が低く、わずかな引張応力が掛かってもAタイプ割れに進展するのである。
なお、上記軸心部の熱間強度は、本発明の適用鋼種である13Cr鋼の凝固過程における1×10−3/sの低速の高温熱間引張試験を行って測定可能であり、その結果、13Cr鋼の凝固過程において有意な断面減少率を獲得する温度が1300℃であると決定された。その前記Tsとの差は145℃であり、これに基づき上記第1次圧縮応力付加強制冷却の適用範が(Ts−145)℃となるまでと決定された。
上記第1次圧縮応力付加強制冷却は、13Cr鋼の連続鋳造過程において、上記ストランドの軸心部の固相率fsが0.5となる位置から前記軸心部の温度が(Ts−145)℃となる位置までの間においてストランド外周面に適用される冷却水の水量密度を10〜100L/m2/minとすることが必要である。水量密度を10L/m2/min以上とするのは、10L/m2/min未満ではストランド表面と軸心部との間の温度勾配が小さく、ストランド軸心部に十分な圧縮応力を掛けることができないためである。一方、水量密度が100L/m2/min以下とするのは、100L/m2/minを超えると、軸心部に掛る引張応力が大きくなりすぎ、Cタイプ割れが発生するためである。さらに、ストランドを切断して得た製品丸鋳片に反りが残存するためである(実施例参照)。なお、上記水量密度は、冷却帯に与えられる単位時間当たりの水量(L/min)をその冷却帯内にあるストランドの表面積で除して得られる。
上記第1次圧縮応力付加強制冷却を行うことによって、Aタイプ割れの発生を顕著に抑制することができる。しかしながら、第1次圧縮応力付加強制冷却後、例えば、ストランドを空冷状態に放置するときには、ストランド外周部が復熱することにより、再び軸心部に引張応力が掛ることになり、これによりAタイプ割れが発生することになる。
この復熱時のAタイプ割れの発生を防止は、前記第1次圧縮応力付加強制冷却の完了後、さらに、ストランドの軸心部の温度が(Ts−255)℃となるまで下記(2)式により与えられるQ2により第2次圧縮応力付加強制冷却を行うことにより可能となる。
記
0<Q2≦60,但しQ1>Q2・・・(2)
ここに、Q2はストランド表面に与える冷却水量密度(単位:L/m2/min)をいい、Tsとは、連続鋳造に供されるバルク溶鋼の固相線温度をいう。
記
0<Q2≦60,但しQ1>Q2・・・(2)
ここに、Q2はストランド表面に与える冷却水量密度(単位:L/m2/min)をいい、Tsとは、連続鋳造に供されるバルク溶鋼の固相線温度をいう。
上記復熱時のAタイプ割れは、連続鋳造過程においてストランド軸心部温度が前記(Ts−145)℃以下となってもなお残存する濃化溶鋼が凝固時に収縮するために生ずる直径数mm程度の収縮孔又は第1次圧縮応力付加強制冷却の際に生じた収縮孔の周辺に過大な引張応力が掛ることによって生ずるものと推定される。したがって、その低減のためには、その発生温度区間において継続的に軸心部を圧縮応力下に維持しておく必要となり、そのため上記(2)式の条件を満たすことが必要となるのである。
第2次圧縮応力付加強制冷却を行う区間は、前記復熱時のAタイプ割れの発生区間に対応させる必要がある。具体的には、13Cr鋼を連続鋳造して得たストランド(丸鋳片)の軸心部のCrの偏析状態をEPMAによって観察し、軸心部のCr偏析部の95%(EPMAの観察画素数比)をカバーするCr濃度を測定し、少なくともこのCr濃度の凝固温度までの区間に亘って第2次圧縮応力付加強制冷却を行う必要がある。かかるCr濃度は、14.5mass%であり、このCr濃度の凝固温度に対応する凝固温度は、1190℃、すなわち、(Ts−255)℃である。上記理由により、第2次圧縮応力付加強制冷却は、前記第1次圧縮応力付加強制冷却に引続いてストランド軸心部の温度が(Ts−255)℃以下に低下するまで行われる。
上記第2次圧縮応力付加強制冷却の水量密度は、下記(2)式の条件を満たすように行わなければならない。
0<Q2≦60,但しQ1>Q2・・・(2)
0<Q2≦60,但しQ1>Q2・・・(2)
図4(a)は、第2次圧縮応力付加強制冷却帯の水量密度と軸心部における圧縮応力−引張応力転換点との関係図である。図4から明らかなように、第2次圧縮応力付加強制冷却を行うことにより、圧縮応力−引張応力転換点(連続鋳造鋳型中の溶鋼メニスカスから下流側への距離)が大きくなること及び、その距離が水量密度60L/min/m2において極大値をとることが分かる。また、図4(b)から、第2次圧縮応力付加強制冷却帯の水量密度を増加していくと、製品丸鋳片に現れる鋳片反りが、水量密度60L/min/m2を超えると大幅に増大することが分かる。
なお、Q1≦Q2とすると、上記圧縮応力−引張応力転換点を下流側に引下げる効果は認められるものの、ストランドの温度の低下が過大になるため、矯正帯(図1参照)での矯正力(曲げ応力)が過大となり、矯正スタンドが破損し、あるいは、製品丸鋳片に鋳片反りが残る原因となるためである。上記の理由により、第2次圧縮応力付加強制冷却水量は
0<Q2≦60,但しQ1>Q2・・・(2)
の範囲に限定される。
0<Q2≦60,但しQ1>Q2・・・(2)
の範囲に限定される。
上記により本発明の基本的課題である13Cr継目無鋼管製管用丸鋳片の連続鋳造過程における軸心部割れ(Aタイプ割れ、Cタイプ割れ)の発生を実用レベルで十分抑制できるようになる。しかしながら、13Cr継目無鋼管製管用丸鋳片にはBタイプ割れ、すなわち、図2(b)に示すストランドの鋳造方向断面に沿って生ずるV字形の割れが現出することが知られており、これを前記Aタイプ割れ及びCタイプ割れとともに低減する必要がある。この目的を達成するためには、下記の偏析抑制強制冷却を行うことが望ましい。
図3に示すように連続鋳造過程においては、鋳型から次第に離れるに従い、ストランドSの凝固シェルが成長して厚くなるとともに、その内部溶鋼の凝固が進み、半凝固相が形成される。この半凝固相はシェルの側の固相率が高く、ストランド中心部の固相率は低い。凝固が進展し、半凝固部がストランドの軸心部からほぼ30mmまで到達する段階になると、ストランド内部にV字状偏析が形成され始める。このV字状偏析は、凝固の進展に伴い、ストランド中心部に残留したいわゆる濃化溶鋼が、周囲のシェルの収縮との体積バランスを保つため、濃化溶鋼が下方に引き込まれる現象によって生ずるものと推定されており、本発明においては、その発生を、偏析抑制強制冷却を行うことによりを抑制する。なお、このV字状偏析の生成開始時期が、ストランドの軸心部からほぼ30mmの位置にあり、ほぼ一定であることは、直径:170〜330mmの13Cr鋼の丸鋳片の切断試験により確認されている。
このV字状偏析部は、C,S,Pなどが濃化されているほか、Crが濃化して硬質のCr炭化物として析出(晶出)している領域であり、Bタイプ割れの発生個所となる。その基本的な発生抑制条件は、前記第1次圧縮応力付加強制冷却に先立って、ストランドの軸心部の固相率fsが0.3以上0.5未満の区間に亘って下記(3)式により与えられる水量密度Q3により偏析抑制強制冷却を行うことにある。
記
10<Q3≦50・・・(3)
記
10<Q3≦50・・・(3)
本発明において、上記偏析抑制強制冷却は、図3に示すように、ストランドの軸心部の固相率fsが0.3以上0.5未満の区間、すなわち、V字状偏析が現出する区間に亘って行う必要がある。fsが0.3未満の箇所から水冷を強化すると、内面疵低減効果が得られないばかりか、シェルに割れが入るなど不都合が生ずるためであり、一方、fsが0.5を超えると、すでに生成したV字状偏析を解消することはできず、もはやBタイプ割れの低減効果が得られないためである。
上記偏析抑制強制冷却は、ストランドSの外表面への水量密度Q3(単位:L/m2/min)が10超50以下の範囲で行うのが望ましい。水量密度が10以上でBタイプ割れの発生頻度(個数)が低下し、15以上で顕著となるが、50を超えると、ストランドに曲がりが生じ、連続鋳造操業を円滑に行うことができなくなるという問題を生ずる。したがって、偏析抑制強制冷却の水量密度Q3(単位:L/m2/min)は、これを行う場合には、
10<Q3≦50・・・(3)
により制限される。
10<Q3≦50・・・(3)
により制限される。
以上説明したとおり、第1次圧縮応力付加強制冷却、第2次圧縮応力付加強制冷却に加えてさらに偏析抑制強制冷却を適正に行うことにより、内部割れの極めて少ない13Cr継目無鋼管製管用丸鋳片を得ることができる。特に、本発明の適用範囲を継目無鋼管製管用丸鋳片の直径が170〜330mmであるときには、前記各冷却の効果が顕著に現れる。
図5は、連続鋳造のストランド内各帯域におけるストランド軸心部の温度、固相率及び適用水量密度Q(Q1,Q2,Q3)の関係を模式的に図示したものである。ここに示すように、まず、偏析抑制冷却帯で比較的少ない水量密度による冷却が行われ、Bタイプ割れの発生が阻止され、次いで、第1次圧縮応力付加冷却帯で高水量密度の冷却が行われ、凝固末期のAタイプ割れ、Cタイプ割れの発生が阻止され、最後に、第2次圧縮応力付加冷却帯で第1次圧縮応力付加冷却帯より少ない水量密度の冷却が行われ、復熱時のAタイプ割れの発生が阻止される。
(実施例1)
表1に示す組成(質量%)を有する13Cr鋼(Ts:1445℃)を内径各170mm、210mm及び230mmの円筒形鋳型を用いて連続鋳造し、得られた丸鋳片をマンネスマンプラグミルによって穿孔圧延しついで、マンドレル圧延機により延伸圧延を行い、継目無鋼管とした。
表1に示す組成(質量%)を有する13Cr鋼(Ts:1445℃)を内径各170mm、210mm及び230mmの円筒形鋳型を用いて連続鋳造し、得られた丸鋳片をマンネスマンプラグミルによって穿孔圧延しついで、マンドレル圧延機により延伸圧延を行い、継目無鋼管とした。
連続鋳造に当たり、第1次圧縮応力付加強制冷却を行った。その際、第1次圧縮応力付加強制冷却の条件を表2に示すように変動させ、得られた製品丸鋳片のAタイプ割れ及びCタイプ割れの平均長さを評価した。評価結果は表2に併せて示す。なお、Aタイプ割れの長さとは、図6に示すように、収縮孔から延びる割れの長さ(mm)をいい、評価は、多数の丸鋳片の試験片断面に観察されるAタイプ割れの長さの平均値によって行った。
表2に示すように、第1次圧縮応力付加強制冷却条件において、水量密度が0L/m2/minの場合は、Aタイプ割れ長さが10mm程度と大きかった。水量密度が8L/m2/minの場合にも、Aタイプ割れ長さがやや小さくなったに過ぎない。これに対して、水量密度を適切にとった場合には、Aタイプ割れ長さが大幅に小さくなり、特に水量密度が55L/m2/minの場合に、Aタイプ割れ長さが極小となった。一方、水量密度が110L/m2/minと過大な場合には、Aタイプ割れの発生は認められなかったものの、Cタイプ割れの発生が顕著に認められた。なお、この場合のほかには、Cタイプ割れの発生は認められなかった。
(実施例2)
連続鋳造に当たり、第1次圧縮応力付加強制冷却及び第2次圧縮応力付加強制冷却を行った。第1次圧縮応力付加強制冷却の条件における強制冷却の開始位置及び終了位置はそれぞれfs値が0.5,0.3の位置とし、第2次圧縮応力付加強制冷却を表3に示すように変動させ、得られた製品丸鋳片のAタイプ割れ及び鋳片反りについて評価した。評価結果は表3に併せ示す。なお、Aタイプ割れの評価方法は、実施例1の場合と同様であり、鋳片反りについて評価は、鋳造された多数の丸鋳片について図7に示すようにして測定した反りの量(単位:mm)の平均値によって行った。
連続鋳造に当たり、第1次圧縮応力付加強制冷却及び第2次圧縮応力付加強制冷却を行った。第1次圧縮応力付加強制冷却の条件における強制冷却の開始位置及び終了位置はそれぞれfs値が0.5,0.3の位置とし、第2次圧縮応力付加強制冷却を表3に示すように変動させ、得られた製品丸鋳片のAタイプ割れ及び鋳片反りについて評価した。評価結果は表3に併せ示す。なお、Aタイプ割れの評価方法は、実施例1の場合と同様であり、鋳片反りについて評価は、鋳造された多数の丸鋳片について図7に示すようにして測定した反りの量(単位:mm)の平均値によって行った。
表3から分かるように、第1次圧縮応力付加強制冷却に加えて第2次圧縮応力付加強制冷却を行った場合には、第1次圧縮応力付加強制冷却のみを行った場合に比べてAタイプ割れの長さが低下することが分かる(表2のNo.5と表3のNo.33〜36の対比)。しかしながら、第2次圧縮応力付加強制冷却の終了温度が高すぎるときには、かえってAタイプ割れの長さが増加する(試験No.40参照)。また、第1次、第2次の圧縮応力付加強制冷却の水量密度が同じ場合或いは後者が大である場合は、Aタイプ割れの長さが低下するものの鋳片反りが大となる。
(実施例3)
上記実施例2の試験No.35の場合について、さらに表4に示す条件で偏析抑制強制冷却を行った。得られた丸鋳片についてのBタイプ割れの発生個数(鋳込み長:0.8m当たり)を測定した。評価結果は表4に併せ示す。表4から分かるように、水量密度が従来レベルと同じ程度であるNo.35の場合に比べ、ストランドの軸心部の固相率fsが0.3以上0.5未満の区間に亘って適切な水量密度の偏析抑制強制冷却を行うことにより、Bタイプ割れが低減される。しかし、水量密度が過大であるNo.54の場合には、鋳片温度が下がりすぎる結果、第1次圧縮応力付加強制冷却帯内でBタイプ割れを生ずる結果となった。また、偏析抑制強制冷却の終了点をfs:0.4とした場合には、水量密度を適切にとってもBタイプ割れの発生を抑制できない。なお、Bタイプ割れの評価は、得られた多数の丸鋳片の断面に現れたBタイプ割れの数の平均値により行った。
上記実施例2の試験No.35の場合について、さらに表4に示す条件で偏析抑制強制冷却を行った。得られた丸鋳片についてのBタイプ割れの発生個数(鋳込み長:0.8m当たり)を測定した。評価結果は表4に併せ示す。表4から分かるように、水量密度が従来レベルと同じ程度であるNo.35の場合に比べ、ストランドの軸心部の固相率fsが0.3以上0.5未満の区間に亘って適切な水量密度の偏析抑制強制冷却を行うことにより、Bタイプ割れが低減される。しかし、水量密度が過大であるNo.54の場合には、鋳片温度が下がりすぎる結果、第1次圧縮応力付加強制冷却帯内でBタイプ割れを生ずる結果となった。また、偏析抑制強制冷却の終了点をfs:0.4とした場合には、水量密度を適切にとってもBタイプ割れの発生を抑制できない。なお、Bタイプ割れの評価は、得られた多数の丸鋳片の断面に現れたBタイプ割れの数の平均値により行った。
図5は、上記各段階において適用する水量密度Qをストランドの軸心部の固相率fsに対して模式的に示したグラフである。図5に示したように、また、上記実施例に基づき明らかにしたように、本発明に従い第1次圧縮応力付加強制冷却及び第2次圧縮応力付加強制冷却、さらに偏析抑制強制冷却を適正に行うことにより、13Cr鋼の連続鋳造に際して発生する諸欠陥を効果的に抑制し得ることが分かる。
1:連続鋳造鋳型
2:二次冷却帯
3:第1次圧縮応力付加冷却帯
4:第2次圧縮応力付加冷却帯
5:偏析抑制強制冷却帯
6:矯正帯
10:シェル
11:未凝固溶鋼
31:スプレーノズル
32:ヘッダー
41:スプレーノズル
42:ヘッダー
51:スプレーノズル
52:ヘッダー
2:二次冷却帯
3:第1次圧縮応力付加冷却帯
4:第2次圧縮応力付加冷却帯
5:偏析抑制強制冷却帯
6:矯正帯
10:シェル
11:未凝固溶鋼
31:スプレーノズル
32:ヘッダー
41:スプレーノズル
42:ヘッダー
51:スプレーノズル
52:ヘッダー
Claims (4)
- 質量比でCrを12.7〜13.2%含有する13Cr継目無鋼管製管用丸鋳片を連続鋳造するに当たり、
連続鋳造の過程における内部に未凝固溶鋼を含む断面円形のストランドに対し、該ストランドの軸心部の固相率fsが0.5となる位置から前記軸心部の温度が(Ts−145)℃となる位置までの間を下記(1)式による水量密度Q1により第1次圧縮応力付加強制冷却を行うことを特徴とする13Cr継目無鋼管製管用丸鋳片の連続鋳造方法。
10≦Q1≦100・・・(1)
ここに、Q1はストランド表面に与える冷却水の水量密度(単位:L/m2/min)をいい、固相率fsとは、ストランドの軸心部における[固相/(固相+液相)]の質量比をいう。また、Tsとは、連続鋳造に供されるバルク溶鋼の固相線温度をいう。 - 質量比でCrを12.7〜13.2%含有する13Cr継目無鋼管製管用丸鋳片を連続鋳造するに当たり、
連続鋳造の過程における内部に未凝固溶鋼を含む断面円形のストランドに対し、該ストランドの軸心部の固相率fsが0.5となる位置から前記軸心部の温度が(Ts−145)℃となる位置までの間を下記(1)式による水量密度Q1により第1次圧縮応力付加強制冷却を行うとともに、前記第1次圧縮応力付加強制冷却の完了後、さらに、ストランドの軸心部の温度が(Ts−255)℃となるまで下記(2)式により与えられるQ2により第2次圧縮応力付加強制冷却を行うことを特徴とする13Cr継目無鋼管製管用丸鋳片の連続鋳造方法。
10≦Q1≦100・・・(1)
0<Q2≦60,但しQ1>Q2・・・(2)
ここに、Q1、Q2はストランド表面に与える冷却水の水量密度(単位:L/m2/min)をいい、固相率fsとは、ストランドの軸心部における[固相/(固相+液相)]の質量比をいう。また、Tsとは、連続鋳造に供されるバルク溶鋼の固相線温度をいう。 - 第1次圧縮応力付加強制冷却に先立って、ストランドの軸心部の固相率fsが0.3以上0.5未満の区間に亘って下記(3)式により与えられる水量密度Q3により偏析抑制強制冷却を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の13Cr継目無鋼管製管用丸鋳片の連続鋳造方法。
10<Q3≦50・・・(3)
ここに、Q3はストランド表面に与える冷却水の水量密度(単位:L/m2/min)をいう。 - 継目無鋼管製管用丸鋳片の直径が170〜330mmであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の13Cr継目無鋼管製管用丸鋳片の連続鋳造方法。
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-
2010
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