JP2012105614A - 鼻粘膜検体内部標準遺伝子 - Google Patents

鼻粘膜検体内部標準遺伝子 Download PDF

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Abstract

【課題】鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子の発現量を正確に測定するための適切な内部標準遺伝子と、当該内部標準遺伝子を用いる測定方法を提供する。
【解決手段】PUM1遺伝子を内部標準遺伝子とすることで、鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子の発現量を正確に測定する方法。鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子が、ヒスタミンH1受容体遺伝子の場合には、PUM1遺伝子増幅用プライマーとヒスタミンH1受容体遺伝子増幅用プライマーの配合比を工夫することで、正確なヒスタミンH1受容体遺伝子発現量を測定することができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子の発現量を測定する際に用いる内部標準遺伝子に関する。さらには、当該内部標準遺伝子を用いる鼻粘膜検体中の目的遺伝子発現量の測定方法に関する。より詳しくは、当該内部標準遺伝子を用いることによる鼻粘膜検体中に存在するヒスタミンH1受容体(H1R)遺伝子の発現量の測定方法に関する。また、鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子発現量の測定用キットに関する。
特定の検体中に存在する目的遺伝子又はその発現量の定量には、サザンブロット法又はノーザンブロット法が用いられてきた時代もあったが、PCR法の出現により、微量なDNA(RNA)が増幅・解析可能になった。近年まで、内部標準遺伝子としては、遺伝子の発現量の変動を解析した論文の多くではノーザンブロッティングに用いられたGAPDHやβアクチンなどのハウスキーピング遺伝子が一般的に用いられてきた。
PCR法により増幅された目的遺伝子又はその発現量を定量する場合、異なる組織間や発生の様々な過程で、あるいは特定の実験処理により発現量が変動しないような遺伝子を内部標準遺伝子として用いることができればよい。しかし、PCR法の手法を用いて特定の検体中に存在する目的遺伝子又はその発現量を定量する場合は、精度が高いため、例えばGAPDHやβアクチンなどのように、一般的にハウスキーピング遺伝子として公知の遺伝子であっても、測定検体によっては、内部標準遺伝子としての機能を十分に発揮し得ない場合がある。測定手段によっては、測定対象となる検体により最適な内部標準遺伝子を選択する必要がある。
例えば、ヒト卵巣腫瘍における標的遺伝子の発現量を定量するのに適切な内部標準遺伝子を明らかにするため、各種研究で使用されている10種類のハウスキーピング遺伝子(ACTB, ALAS1, GAPDH, GUSB, HPRT1, PBGD, PPIA, PUM1, RPL29, TBP, 18S rRNA)を分析したことが報告されている(非特許文献1)。また、乳癌における適切な内部標準遺伝子を明らかにするため、8種類の遺伝子(RPLP0, TBP, PUM1, ACTB, GUS-B, ABL1, GAPDH , B2M)を分析したことが報告されている(非特許文献2)。さらに、癌を診断するための内部標準遺伝子の一つとしてPUM1を選択することが開示されている(特許文献1)。
ヒスタミンは、アレルギー疾患の主要メディエーターであり、標的細胞のヒスタミンH1受容体(以下、単に「H1R」という場合もある。)を解して主要な症状が発現される。アレルギー疾患は代表的な多因子疾患である。アレルギー疾患において発現異常が引き起こされている疾患関連遺伝子として、H1R遺伝子などが見出されている。アレルギー疾患では、例えばアレルギー性鼻炎が代表的なものとして挙げられる。患者の鼻粘膜検体中に認められる疾患関連遺伝子の発現状態が、アレルギー症状の重篤性に大きく影響することが考えられる。しかしながら、鼻粘膜検体中の内部標準遺伝子については、今まで報告されておらず、適切に鼻粘膜検体中の遺伝子発現量を測定しているとはいえなかった。
米国出願US2008/0032293号公報
Anal Biochem Vol.394 No.1 Page.110-116 (2009) BMC Cancer 2008 Vol.8; doi:10.1186/1471-2407/8/20
本発明は、鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子の発現量を正確に測定しうる方法を提供することを課題とする。即ち、鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子の発現量を測定する際に用いる適切な内部標準遺伝子を提供することを課題とし、さらには、当該内部標準遺伝子を用いる鼻粘膜検体中の目的遺伝子発現量の測定方法を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、PUM1 (Pumilio homolog 1)遺伝子を内部標準遺伝子とすることで、鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子の発現量を正確に測定しうることを見出し、本発明を完成した。
即ち本発明は、以下よりなる。
1.鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子の発現量を測定する際に、PUM1遺伝子を内部標準遺伝子とすることを特徴とする、鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子発現量の測定方法。
2.以下の工程を含む、前項1に記載の鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子発現量の測定方法:
1)被検者から採取した鼻粘膜検体からRNAを抽出する工程;
2)抽出されたRNAを基にして、PUM1遺伝子を増幅する工程;
3)抽出されたRNAを基にして、目的遺伝子を増幅する工程;
4)目的遺伝子の増幅産物を、PUM1遺伝子の増幅産物に基づき補正し、目的遺伝子発現量を算出する工程。
3.目的遺伝子の増幅及びPUM1遺伝子の増幅が同時に行なわれる、前項2に記載の鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子発現量の測定方法。
4.鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子が、疾患感受性遺伝子である、前項1〜3のいずれか1に記載の鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子発現量の測定方法。
5.疾患感受性遺伝子が、ヒスタミンH1受容体遺伝子である、前項4に記載の鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子発現量の測定方法。
6.PUM1遺伝子を増幅しうるプライマーが、配列表の配列番号1及び2に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである、前項2〜5のいずれか1に記載の鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子発現量の測定方法。
Sense primer: 5'-ACACATGCAACGCTCATTCC-3'(配列番号1)
Anti sense primer: 5'-GAGAGCGCCAGAGAGAGAAGA-3' (配列番号2)
7.ヒスタミンH1受容体遺伝子を増幅しうるプライマーが、配列表の配列番号4及び5示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである、前項5又は6に記載の鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子発現量の測定方法。
Sense primer:5'-CAGAGGATCAGATGTTAGGTGATAGC-3'(配列番号4)
Anti sense primer:5'-AGCGGAGCCTCTTCCAAGTAA-3'(配列番号5)
8.被検者から採取した鼻粘膜検体から抽出されたRNAに基づきヒスタミンH1受容体遺伝子及びPUM1遺伝子を増幅する工程において、PUM1遺伝子の増幅に用いるプライマー量が、ヒスタミンH1受容体遺伝子の増幅に用いるプライマー量の1/4で各々増幅することを特徴とする、前項5〜7のいずれか1に記載の鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子発現量の測定方法。
9.前項5〜8のいずれか1に記載の鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子発現量の測定方法により算出したヒスタミンH1受容体遺伝子の発現量が、健常人の鼻粘膜検体中のヒスタミンH1受容体遺伝子の発現量に較べて高い場合にアレルギー性鼻炎であると判断する、アレルギー性鼻炎の検査方法。
10.PUM1遺伝子を増幅しうる1組のプライマーセットを少なくとも含み、さらに目的遺伝子を増幅しうる1組のプライマーセットを含む、鼻粘膜検体に存在する目的遺伝子発現量測定用キット。
11.鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子が、疾患感受性遺伝子である、前項10に記載の目的遺伝子発現量測定用キット。
12.疾患感受性遺伝子が、ヒスタミンH1受容体遺伝子である、前項11に記載の目的遺伝子発現量測定用キット。
13.PUM1遺伝子を増幅しうる1組のプライマーセットが、配列表の配列番号1及び2に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである、前項10〜12のいずれか1に記載の目的遺伝子発現量測定用キット。
Sense primer: 5'-ACACATGCAACGCTCATTCC-3'(配列番号1)
Anti sense primer: 5'-GAGAGCGCCAGAGAGAGAAGA-3' (配列番号2)
14.目的遺伝子を増幅しうる1組のプライマーセットが、配列表の配列番号4及び5に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである、前項12又は13に記載の目的遺伝子発現量測定用キット。
Sense primer:5'-CAGAGGATCAGATGTTAGGTGATAGC-3'(配列番号4)
Anti sense primer:5'-AGCGGAGCCTCTTCCAAGTAA-3'(配列番号5)
本発明のPUM1遺伝子を内部標準遺伝子とすることで、鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子の発現量を正確に測定しうる。例えば、アレルギー性鼻炎に関連するH1R遺伝子の発現量や、その他ヒスチジン脱炭素酵素(L-Histidine decarboxylase:HDC)遺伝子、インターロイキン5(IL-5)遺伝子などを正確に測定することができる。
花粉症患者の鼻粘膜検体における各種内部標準候補遺伝子について測定した結果を示す図である。各候補遺伝子について、Ct値を(a)に示し、Ct値のばらつき(SEM)を(b)に示した。(a)における各横プロットは、各内部標準候補遺伝子の発現量の最大値、最小値及び±SEMを示す。(参考例) PUM1遺伝子及びH1R遺伝子の、増幅用プライマー/プローブの濃度比を変えて、PUM1遺伝子を内部標準遺伝子としたリアルタイムPCRの測定条件を精査した結果を示す図である。(実施例1) 初期治療群及び対照について、PUM1遺伝子を内部標準遺伝子としたときのH1R遺伝子、HDC遺伝子及びIL-5遺伝子の発現量を確認した結果を示す図である。(実施例2) PUM1遺伝子を内部標準遺伝子としてH1R遺伝子発現量を測定したときの、H1R遺伝子発現量とアレルギー症状の相関を示す図である。(a)はH1R遺伝子発現量を示し、(b)はくしゃみ回数(くしゃみスコア)を示し、(c)は鼻汁スコアを示し、(d)は鼻閉スコアを示す。(実施例3) PUM1遺伝子を内部標準遺伝子としてH1R遺伝子発現量を測定したときの、H1R遺伝子発現レベルと、くしゃみ及び鼻汁スコアの和の相関を示す図である。(実施例3)
本発明は、鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子の発現量を測定する際に、PUM1 (Pumilio homolog 1)遺伝子を内部標準遺伝子とすることを特徴とする、鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子発現量の測定方法に関する。
具体的には、以下の工程を含む、PUM1遺伝子を内部標準遺伝子とする鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子発現量の測定方法に関する。
1)被検者から採取した鼻粘膜検体からRNAを抽出する工程;
2)抽出されたRNAを基にして、目的遺伝子を増幅する工程;
3)抽出されたRNAを基にして、PUM1遺伝子を増幅する工程;
4)目的遺伝子の増幅産物を、PUM1遺伝子の増幅産物に基づき補正し、目的遺伝子発現量を算出する工程。
上記において、工程2)の目的遺伝子、又は3)のPUM1遺伝子は、いずれを先に増幅しても良いが、好ましくは同時に増幅するのが好適である。同時に増幅することで、より正確に目的遺伝子の発現量を測定することができる。
本明細書において、鼻粘膜検体とは、いわゆる医療の現場で採取されている鼻粘膜検体であって特別の意味を有さないが、例えば鼻咽頭より得られる検体をいう。鼻咽頭より得られる検体としては、例えば吸引ポンプを用いて採取することによる鼻腔吸引液、鼻粘膜液をスワブを用いて拭いとるようにし、採取することによる鼻腔拭い液等が挙げられる。鼻腔から検体を採取するのが困難な場合は、スワブを口腔から挿入し、咽頭部より採取することもできる。
本発明において、鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子とは、鼻粘膜検体中に存在するのであればよく、特に限定されないが、例えば被検者由来の遺伝子であって、鼻粘膜に存在しうる内在遺伝子であってもよいし、又は外部から鼻腔内に進入し、鼻粘膜に存在しうる外来遺伝子であってもよい。疾患の発症にかかわる遺伝子、例えば多因子性疾患の発症にかかわる複数の遺伝子などの疾患感受性遺伝子であって、鼻粘膜検体中に存在しうる遺伝子を本発明の目的遺伝子とすることができる。疾患感受性遺伝子の例としては、アレルギー疾患発症に影響する遺伝子が挙げられ、例えばインターロイキン4(IL-4)受容体遺伝子、ADAM33遺伝子、H1R遺伝子、ヒスタミン合成酵素であるヒスチジン脱炭素酵素(L-Histidine decarboxylase:HDC)遺伝子及びインターロイキン5(IL-5)遺伝子などが挙げられる。本発明の目的遺伝子として、H1R遺伝子、HDC遺伝子、IL-5遺伝子などが好適であり、H1R遺伝子が特に好適である。鼻過敏症モデル動物において、抗ヒスタミン薬の早期投与により症状が改善し、H1R遺伝子の発現を抑制したことが本発明者らのグループより報告されている。H1R遺伝子はアレルギー性鼻炎の症状に応じて発現が増強し、治療薬を施すことで発現が抑制されることから、H1R遺伝子はアレルギー性鼻炎における疾患感受性遺伝子ということができる。また、外来遺伝子としては、ウイルスや細菌感染などに鼻腔内に侵入し、鼻粘膜に存在しうる遺伝子が挙げられ、例えば各種型のインフルエンザウイルス関連遺伝子などが挙げられる。鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子を正確に測定することで、特定の疾患や感染症について検査することができ、また治療方針を選択する際に有意な情報を提供することができる。
本発明のPUM1遺伝子は、脳、心臓、筋肉、腸及び胃において発現が認められると報告されている。また、胎児期の組織で発現が認められるとも報告されている。また、背景技術の欄で示したように、非特許文献1において、ヒト卵巣腫瘍における標的遺伝子の発現量を定量するのに適切な内部標準遺伝子を明らかにするため、各種研究で使用されている10種類のハウスキーピング遺伝子(ACTB, ALAS1, GAPDH, GUSB, HPRT1, PBGD, PPIA, PUM1, RPL29, TBP, 18S rRNA)を分析しており、ここではヒト卵巣腫瘍における10種類の遺伝子の発現安定性について報告がなされている(Table 3)。非特許文献1では最も安定であるPPIA、GUSB及びTBPが、ヒト卵巣腫瘍における内部標準遺伝子として適用可能であることが示唆されている。しかしながら、PPIA、GUSB及び/又はTBPを内部標準遺伝子として用いてヒト卵巣腫瘍内に存在する特定の遺伝子発現量を測定した結果については示されておらず、PUM1のみならず、PPIA、GUSB及び/又はTBPについても、内部標準遺伝子として実際に適用可能か否かは不明であった。
本発明の鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子発現量の測定方法に関し、各工程ごとに詳細に説明する。
1)被検者から採取した鼻粘膜検体からRNAを抽出する工程
本発明において、被検者から採取した鼻粘膜検体からRNAを抽出する工程は特に限定されず、自体公知の方法、又は今後開発されるあらゆる方法を適用することができる。例えば、鼻粘膜組織をリン酸緩衝液 (PBS)等の緩衝液を用いて遠心処理等により洗浄し、洗浄した鼻粘膜組織をすりつぶし、さらに遠心処理等により洗浄し、洗浄した組織からエタノール溶液等によりRNAを抽出することができる。本明細書において、被検者から採取した鼻粘膜を検体といい、前処理を行なった検体を試料ということとする。
2)抽出されたRNAを基にして、PUM1遺伝子を増幅する工程
抽出されたRNAを基にしてPUM1遺伝子のcDNAを作製し、当該cDNAを鋳型としてRT-PCR法や、その一手法であるリアルタイムRT-PCR法によりPUM1遺伝子を増幅することができる。PUM1遺伝子は、EMBL-EB Accession No.Q14671, A8K6W4, Q5VXYZ又はQ9HAN1などに示される塩基配列より特定することができる。ここで、抽出されたRNAからcDNAを作製するためのプライマーや逆転写酵素は、自体公知のものを使用することができる。RNAからcDNAを作製し、PUM1遺伝子を増幅するのは、PUM1遺伝子の発現量を測定するためである。リアルタイムRT-PCR法では、例えば、5'端を蛍光色素(レポーター)で、3'端を蛍光色素(クエンチャー)で標識した、PUM1遺伝子の特定領域にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブが使用される。該プローブは、通常の状態ではクエンチャーによってレポーターの蛍光が抑制されている。この蛍光プローブをPUM1遺伝子に完全にハイブリダイズさせた状態で、その外側からTaq DNAポリメラーゼを用いてRT-PCRを行う。Taq DNAポリメラーゼによる伸長反応が進むと、そのエキソヌクレアーゼ活性により蛍光プローブが5'端から加水分解され、レポーター色素が遊離し、蛍光を発する。この蛍光強度をリアルタイムでモニタリングすることにより、cDNAの初期量を正確に定量することができる。
PUM1遺伝子を特異的に増幅するプライマーや当該遺伝子を特異的に検出するためのプローブは、PUM1遺伝子の塩基配列情報に基づいて、自体公知の方法で設計することができ、又は市販のプライマーやプローブを用いることもできる。PUM1遺伝子を特異的に増幅するプライマーや、PUM1遺伝子を特異的に検出するためのプローブとして、以下に示す配列からなるオリゴヌクレオチドを使用することができる。
Sense primer: 5'-ACACATGCAACGCTCATTCC-3'(配列番号1)
Anti sense primer: 5'-GAGAGCGCCAGAGAGAGAAGA-3' (配列番号2)
Probe: 5'-CGGTAGGATGAAGATGGATTTCAG-3'(配列番号3)
3)抽出されたRNAを基にして、目的遺伝子を増幅する工程
目的遺伝子を増幅するプライマー、及び当該目的遺伝子を特異的に検出するためのプローブは、目的遺伝子の塩基配列情報に基づいて、自体公知の方法で設計することができ、又は市販のプライマーやプローブを用いることもできる。目的遺伝子のプライマーやプローブを用いて、上述により作製したcDNAを基に目的遺伝子を増幅し、検出することができる。目的遺伝子の増幅、又は内部標準遺伝子としてのPUM1遺伝子の増幅は、いずれを先に行なっても良いし、同時に行なってもよい。
目的遺伝子の例として、例えば、H1R遺伝子、ヒスタミン合成酵素であるHDC遺伝子及びIL-5遺伝子が挙げられる。これらの遺伝子を特異的に増幅するプライマー、及びこれらの遺伝子を特異的に検出するためのプローブとして、以下に示す配列からなるオリゴヌクレオチド又は市販の試薬等に含まれるプライマーやプローブを使用することができる。
(ヒトH1R遺伝子)
Sense primer: 5'-CAGAGGATCAGATGTTAGGTGATAGC-3'(配列番号4)
Anti sense primer: 5'-AGCGGAGCCTCTTCCAAGTAA-3'(配列番号5)
Probe: VIC-CTTCTCTCGAACGGACTCAGATACCACC-NON(配列番号6)
(ヒトHDC遺伝子)
Sense primer: 5'-CCTGAATGCAGCTCTCAATGTG-3'(配列番号7)
Anti sense primer: 5'-CAGAGTCCCTGAAGTATATCCTCAGAC-3'(配列番号8)
Probe: FAM-TTGCCCTCTGCAGGCCATGGTTTA-TAMRA(配列番号9)
(ヒトIL-5遺伝子)
Sense primer: 5'-CACTGAAGAAATCTTTCAGGGAAT-3'(配列番号10)
Anti sense primer: 5'-CAGTACCCCCTTGCACAGTT-3'(配列番号11)
Probe: Universal Probe Library, probe #47 (Roche (04688074001))
4)目的遺伝子の増幅産物を、PUM1遺伝子の増幅産物に基づき補正し、目的遺伝子発現量を算出する工程
リアルタイムRT-PCRにて定量を行う場合、目的遺伝子及び内部標準遺伝子としてのPUM1遺伝子の発現量はPCRの立ち上がりサイクル数(Cycle Threshold:Ct値)を基に算出することができる。目的遺伝子の発現量を測定する場合、リアルタイムRT-PCRによって目的遺伝子の増幅を行い、このCt値を求めることができる。目的遺伝子の発現量は、PUM1遺伝子の発現量を基にして、発現量を補正することができる。
目的遺伝子の増幅と、内部標準遺伝子としてのPUM1遺伝子の増幅を、同時に行なう場合は、増幅の際に使用する複数種のプライマーセットによる増幅反応の干渉を防ぐために、各々のプライマー及びプローブの濃度を、適宜調整するのが好適である。例えば、PUM1遺伝子とH1R遺伝子を同時に増幅する場合は、PUM1遺伝子の増幅に用いるプライマー量が、H1R遺伝子の増幅に用いるプライマー量の約1/4量のときに、最も安定的に目的遺伝子としてのH1R遺伝子発現量を測定することができる。プライマーの配合比は、各遺伝子の組み合わせに応じて適宜決定することが必要である。
上述の方法に基づき、例えばアレルギー疾患に罹患している可能性を有する被検者(患者)から採取した検体及び健常人であると確認されている被検者群(健常人群)について、各々の鼻粘膜検体中に含まれるH1R遺伝子の発現量及びPUM1遺伝子の発現量を測定し、H1R遺伝子の発現量をPUM1遺伝子の発現量を基にして補正した結果、患者のH1R遺伝子の発現量が健常人群のH1R遺伝子の発現量に較べて高い場合にアレルギー性鼻炎であると判断することができる。本発明は、かかる手法により検査を行なう、アレルギー性鼻炎の検査方法にも及ぶ。
本発明のアレルギー性鼻炎の検査方法により、例えば、鼻づまりや鼻水などのアレルギー性鼻炎の症状が現れる前にも、アレルギー鼻炎に罹患しているか否かを検査することができる。また、アレルギー性鼻炎とよく似た鼻水、鼻づまりなどの症状で、慢性鼻炎や血管運動性鼻炎がある。慢性鼻炎は、鼻腔粘膜に慢性的に炎症がある状態で、鼻かぜ(急性鼻炎)が長引いたり、繰り返したりすることで慢性鼻炎に移行するケースが多い。また、血管運動性鼻炎は、発作的なくしゃみや鼻水、鼻づまりなど症状の起こり方はアレルギー性鼻炎と同様であるが、急激な温度差が原因で起こる鼻炎であり、自律神経がうまく働かないために、鼻の粘膜が過敏な反応を起こして症状が出るものをいう。これらのような場合にもH1R遺伝子の発現量を確認することで、アレルギー性鼻炎であるか否かを検査することができ、適切な治療方針を提供することができる。
本発明は、鼻粘膜検体に存在する目的遺伝子の発現量測定用キットにも及ぶ。当該測定用キットには、内部標準遺伝子としてのPUM1遺伝子を増幅しうる1組のプライマーセットを少なくとも含み、さらに目的遺伝子を増幅しうる1組のプライマーセットを含めることができる。目的遺伝子の種類が2種類以上の場合には、目的遺伝子ごとに1組のプライマーセットを当該測定用キットに含めることができる。リアルタイムRT-PCR法により各遺伝子の発現量を決定する場合には、当該測定用キットには、PUM1遺伝子及び目的遺伝子の各々について、プローブを含めることができる。
以下、PUM1を内部標準遺伝子として選択した経緯を参考例に示し、PUM1遺伝子を内部標準遺伝子として実際に測定した結果を実施例に示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例の範囲に限定されるものではないことはいうまでもない。
(参考例)
花粉症はスギ花粉などにより引き起こされる季節性のアレルギー鼻炎であり、日本国民の約16%が罹患する国民病である。花粉症の治療法として、花粉飛散ピークの2〜4週間前から抗ヒスタミン薬を服用する初期療法が、花粉症に関するガイドラインにより推奨されている。ヒスタミンはアレルギー反応における主要化学メディエーターであり、その作用はヒスタミンH1受容体(H1R)を介する。
鼻過敏症アレルギーモデルラットを用いた研究において、従来、遺伝子発現レベルを標準化するため用いられてきたGAPDHやGUSB等の内部標準遺伝子は発現状態が、花粉症患者間で非常に異なり、用いることができないことが明らかとなった。そこで、内部標準となり得る遺伝子の探索を行なった。9名の花粉症患者について、32種類の内部標準候補遺伝子の発現量について、リアルタイムRT-PCR法にて検討した。各候補遺伝子について、Ct値(PCRの立ち上がりサイクル数)を図1(a)に示し、Ct値のばらつき(SEM)を図1(b)に示した。図1(a)における各横プロットは、各内部標準候補遺伝子の発現量の最大値、最小値及び±SEMを示す。
上記の結果、PUM1遺伝子が患者間においてばらつきが最も少ないことが確認された(図1)。また、PUM1遺伝子に対するH1R遺伝子の発現量は0.5〜3の間で認められることからも(図4)、PUM1遺伝子の発現量はH1R遺伝子の発現量と同程度であり、H1R mRNA量を定量するための内部標準遺伝子としてPUM1遺伝子を用いることが適していると考えられた。
(実施例1)PUM1遺伝子を内部標準遺伝子としたリアルタイムRT-PCRの測定条件の検討
本実施例では、鼻粘膜検体についてPUM1遺伝子を内部標準遺伝子としたリアルタイムRT-PCRの測定条件の検討を行った。鼻粘膜検体についての具体的な検体処理方法及び測定方法は、以下の方法に従った。
(1) 鼻粘膜検体の採取
患者の下鼻甲介の表面を4%リドカインで局所麻酔し、スパーテルで鼻粘膜組織を擦過採取し、鼻粘膜検体とした。採取した鼻粘膜検体は、RNAの分解を防ぐため、直ちにRNAlater(R) (Applied Biosystems社)溶液中に浸漬し、-80℃で保存した。RNAlater(R) は、非凍結細胞内のRNAをin situで安定に保存するための毒性のない溶液状の組織保存用試薬である。組織サンプルを採取してすぐにRNAlater(R) 中に浸漬することで、RNAの品質や量を損なう事なく保存することができる。37℃では1日、25℃では1週間、4℃では約1ヶ月、組織中のRNAを安定に保存することができる。また、-20℃や-80℃では、さらに長期間保存することができる。
(2) 鼻粘膜検体からのtotal RNAの抽出
鼻粘膜検体からのtotal RNA抽出には、RNAqueous(R)-Micro Kit (Applied Biosystems社)を使用した。-80 ℃で保存していた鼻粘膜検体にリン酸緩衝液 (PBS)を200μl加え、遠心(10,600 rpm x 5 分, 4 ℃)することにより鼻粘膜組織を沈殿させた。上清を取り除いた後、沈殿した鼻粘膜組織に上記キット中のLysis solution 100μlを加え、ペッスルで沈殿をすり潰した。そこへ100 % エタノール 125μlを加え、ピペッティングし、上記キット中のマイクロフィルターカートリッジ (Micro Filter Cartridges) を設置したチューブに加えて遠心 (10,600 rpm x 1 分 , 4 ℃) した。上記キット中の洗浄液 (Wash Solution #1 、ついで、Wash Solution #2/#3) をそれぞれ180μl加え、遠心 (12,700 rpm x1 分, 4 ℃)することにより洗浄し、この操作をもう一度繰り返した後、空の状態で遠心(12,700 rpm x 2 分, 4 ℃)することにより、残存している洗浄液を完全に取り除いた。 マイクロフィルターカートリッジを溶出用チューブ (Micro Elution Tubes) に移し、95 ℃に温めた溶出液 (Elution Solution) 10μlを当該マイクロフィルターカートリッジの中心に加え、5 分放置後、遠心(12,700 rpm x 2 分, 4 ℃)し、この操作をもう一度繰り返し、total RNAを溶出した。total RNA濃度は260 nmの吸光度により算出した。
(3) cDNAの作製
cDNAは、High-Capacity cDNA Reverse Transcription Kits (Applied Biosystems社)を用いて作製した。サンプルチューブ内で、total RNA 500 ng 相当のRNA 溶液を用いて、以下の表1に示す組成の反応液を調製し、表2に示す条件により逆転写反応を行い、cDNAを作製した。
Figure 2012105614
Figure 2012105614
(4) リアルタイム RT-PCR
ヒトH1R遺伝子について、リアルタイムRT-PCRを行なった。ヒトH1R遺伝子増幅用プライマーとして、配列表の配列番号4及び5に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを使用し、及び検出用プローブは配列表の配列番号6に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを使用した。本実施例における内部標準遺伝子であるPUM1遺伝子についてリアルタイムRT-PCRを行なうためのプライマー及びプローブは、TaqMan(R) Primer Probe キット (Applied Gene Expression Assay, Hs00206469_m1)中のものを用いた。
(ヒトH1R遺伝子)
Sense primer: 5'-CAGAGGATCAGATGTTAGGTGATAGC-3'(配列番号4)
Anti sense primer: 5'-AGCGGAGCCTCTTCCAAGTAA-3'(配列番号5)
Probe: VIC-CTTCTCTCGAACGGACTCAGATACCACC-NON(配列番号6)
リアルタイムRT-PCRを行なうために、Fast Start Universal Probe Master (ROX) (Roche社)を含む以下の試薬を混合し、96ウェル反応プレート (Micro Amp(R) Optical 96-well Reaction Plate: Applied Biosystems社)の1ウェル当たり20μlの反応液を調製した。
ヒトH1R遺伝子及びPUM1遺伝子の増幅用として、以下の表3に示す溶液を用いた。
Figure 2012105614
PCR反応を、シーケンス検出器(Sequence Detector, GeneAmp(R) 7300 Sequence Detection System: Applied Biosystems社)にて以下の表4の条件で行い、PCR産物の増幅曲線をリアルタイムで検出し、Sequence Detectionソフトウェアを用いて解析し、定量化した。
Figure 2012105614
PUM1遺伝子及びH1R遺伝子の増幅用プライマーの濃度比を変えて、PUM1遺伝子を内部標準遺伝子としたリアルタイムRT-PCRの測定条件を精査した。その結果、H1R遺伝子増幅用プライマー量/PUM1遺伝子増幅用プライマー量 =4/1としたときに、H1R遺伝子発現量(H1R mRNA量)が正確に定量できることがわかった(図2)。
(実施例2)ヒトH1R遺伝子、ヒトHDC遺伝子及びヒトIL-5遺伝子の発現量
本実施例では、PUM1遺伝子を内部標準遺伝子とし、ヒトH1R遺伝子、ヒトHDC遺伝子及びヒトIL-5遺伝子の各遺伝子の発現を、リアルタイムRT-PCR法にて測定した。
平成22年2月20日から3月26日までの花粉飛散ピーク時に受診したスギ花粉患者25人(男性11名、女性14名、平均年齢46.6歳)のうち、ピーク時以前よりH1受容体拮抗薬(抗ヒスタミン薬)を服用させた症例を初期療法群(8名)、無治療(非処理群)でピーク時に来院した症例を対照(17名)として比較検討した。本研究は、徳島大学病院倫理委員会により承認されている。
本実施例における鼻粘膜検体の採取、処理、及び鼻粘膜検体からのtotal RNAの抽出は、実施例1と同手法により行った。本発明の内部標準遺伝子であるPUM1遺伝子の増幅用プライマー及び検出用プローブは、実施例1と同様に、TaqMan(R) Primer Probe キット (Applied Gene Expression Assay, Hs00206469_m1)のものを用いた。ヒトH1R遺伝子の増幅用プライマー及び検出用プローブについても、実施例1と同様に、配列表の配列番号4〜6に示す各塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いた。ヒトHDC遺伝子及びヒトIL-5遺伝子の各遺伝子増幅用プライマー及び検出用プローブは、以下に示す各塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いた。
(ヒトHDC遺伝子)
Sense primer: 5'-CCTGAATGCAGCTCTCAATGTG-3'(配列番号7)
Anti sense primer: 5'-CAGAGTCCCTGAAGTATATCCTCAGAC-3'(配列番号8)
Probe: FAM-TTGCCCTCTGCAGGCCATGGTTTA-TAMRA(配列番号9)
(ヒトIL-5遺伝子)
Sense primer: 5'-CACTGAAGAAATCTTTCAGGGAAT-3'(配列番号10)
Anti sense primer: 5'-CAGTACCCCCTTGCACAGTT-3'(配列番号11)
Probe: Universal Probe Library, probe #47 (Roche (04688074001))
リアルタイムRT-PCRを行なうために、実施例1と同様に、Fast Start Universal Probe Master (ROX) (Roche社)を含む以下の試薬を混合し、96ウェル反応プレート (Micro Amp(R) Optical 96-well Reaction Plate: Applied Biosystems社)の1ウェル当たり20μlの反応液を調製した。PCR反応を実施例1と同様に表4の条件で行い、PCR産物の増幅曲線をリアルタイムで検出し、Sequence Detectionソフトウェアを用いて解析し、定量化した。
ヒトH1R遺伝子及びPUM1遺伝子の増幅用として、実施例1の表3に示す溶液を用いた。また、ヒトHDC遺伝子増幅用として、表5に示す溶液を、ヒトIL-5遺伝子増幅用として、表6に示す溶液を用いた。
Figure 2012105614
Figure 2012105614
上記により、内部標準遺伝子としてPUM1遺伝子を用い、ヒトH1R遺伝子、ヒトHDC遺伝子及びヒトIL-5遺伝子の各遺伝子の発現量をリアルタイムRT-PCR法にて測定した結果、初期治療群及び非処理群(対照)との間に、明確な差異が認められた(図3)。このことより、PUM1遺伝子は内部標準遺伝子として有用であることが確認された。
(実施例3)H1R遺伝子発現量とアレルギー症状の相関
本実施例では、スギ花粉症患者から得た鼻粘膜検体について、PUM1遺伝子を内部標準遺伝子とし、測定したH1R遺伝子発現量とアレルギー症状の相関関係を確認した。
平成22年2月20日から3月26日までの花粉飛散ピーク時に受診したスギ花粉患者25人(男性11名、女性14名、平均年齢46.6歳)のうち、ピーク時以前よりH1受容体拮抗薬(抗ヒスタミン薬)を服用させた症例を初期療法群(8名)、無治療でピーク時に来院した症例を対照群(17名)として比較検討した。鼻症状(くしゃみ回数、鼻汁、及び鼻閉)の程度は鼻アレルギー診療ガイドライン2009におけるアレルギー性鼻炎症状の重症度分類、局所所見の程度分類を用いスコア化した。本研究は、徳島大学病院倫理委員会により承認されている。
本実施例における鼻粘膜検体の採取、処理、及び鼻粘膜検体からのtotal RNAの抽出は、実施例1と同手法により行った。本発明の内部標準遺伝子であるPUM1遺伝子の増幅用プライマー及び検出用プローブは、実施例1と同様に、TaqMan(R) Primer Probe キット (Applied Gene Expression Assay, Hs00206469_m1)のものを用いた。ヒトH1R遺伝子の増幅用プライマー及び検出用プローブについても、実施例1と同様に、配列表の配列番号4〜6に示す各塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いた。
花粉飛散ピーク時において、初期療法群のH1R遺伝子発現量は対照群よりも有意に低かった(p<0.05, unpaired Student's t-test, 図4a)。また、初期療法群におけるくしゃみ回数及び、鼻汁スコアはそれぞれ 1.25 ± 0.89 (mean ± S.D.) and 3.18 ± 0.81であり、対照群と比較して(1.63 ± 0.74 及び 3.00 ± 1.06)有意に低かった(p<0.01, Mann-Whitney's U test, 図3b及びc)。しかし、初期療法群の鼻閉のスコアは0.75 ± 0.71であり、対照群のそれ(1.71 ± 1.26)と比較して有意差はなかった(図4d)。ヒスタミンは、くしゃみや鼻汁を引き起こす主要メディエーターであるが、鼻閉においてはロイコトリエンやプロスタグランジンが主要な役割を果たしているためであり、ヒスタミンの寄与はくしゃみや鼻汁の場合よりも低いためであると考えられた。また、これらの結果は、H1R遺伝子の発現抑制によりくしゃみや鼻汁という鼻症状が軽減したことを示唆した。
また、図5に示すように、H1R遺伝子発現レベルとくしゃみ及び鼻汁スコアの和の間に、正の相関があることがわかり(r = 0.51, p<0.01)、H1R遺伝子発現レベルの減少が鼻症状の軽減に関連していることがわかった。また、初期療法群は図の左下に、非処理群(対照)は上部に分布が集中していた。
以前、本発明者らは、鼻過敏症アレルギーモデルラットにおいて、トルエンジイソシアネート(TDI)によりアレルギー発作を誘発するとH1R遺伝子発現が上昇し、受容体タンパク量も上昇することを明らかにした(Acta Otolarygol 1993; 501 (Suppl): 21-4)。また、HeLa細胞において、ヒスタミンがH1R遺伝子発現亢進を通してH1Rのアップレギュレーションを引き起こすことを見いだした(J Pharmacol Sci 2007; 103: 374-82)。以上のことから、抗ヒスタミン薬の初期療法により、花粉飛散ピーク時におけるH1R遺伝子発現亢進が抑制され、このことにより鼻症状が軽減したものと考えられた。すなわち、初期療法の分子基盤が、抗ヒスタミン薬の長期投与によるH1R遺伝子発現レベルの減少にあることが明らかとなった。このことより、PUM1遺伝子は、鼻粘膜検体における内部標準遺伝子として有用であることが確認された。
以上詳述したように、本発明のPUM1遺伝子を内部標準遺伝子とすることで、鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子の発現量を正確に測定しうる。鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子のうち、疾患感受性遺伝子の例としては、アレルギー疾患発症に影響する遺伝子が挙げられ、例えばIL-4受容体遺伝子、ADAM33遺伝子、H1R遺伝子、HDC遺伝子及びIL-5遺伝子などが挙げられる。本発明の目的遺伝子として、H1R遺伝子、HDC遺伝子、IL-5遺伝子などが好適であり、H1R遺伝子が特に好適である。例えば、アレルギー性鼻炎に関連するH1R遺伝子の発現量を正確に測定することができる。また、外来遺伝子としては、ウイルスや細菌感染などに鼻腔内に侵入し、鼻粘膜中に存在しうる遺伝子が挙げられ、例えば各種型のインフルエンザウイルスに係る遺伝子などが挙げられる。鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子を正確に測定することで、特定の疾患や感染症について検査することができ、また治療方針を選択する際に有意な情報を提供することができる。

Claims (14)

  1. 鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子の発現量を測定する際に、PUM1遺伝子を内部標準遺伝子とすることを特徴とする、鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子発現量の測定方法。
  2. 以下の工程を含む、請求項1に記載の鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子発現量の測定方法:
    1)被検者から採取した鼻粘膜検体からRNAを抽出する工程;
    2)抽出されたRNAを基にして、PUM1遺伝子を増幅する工程;
    3)抽出されたRNAを基にして、目的遺伝子を増幅する工程;
    4)目的遺伝子の増幅産物を、PUM1遺伝子の増幅産物に基づき補正し、目的遺伝子発現量を算出する工程。
  3. 目的遺伝子の増幅及びPUM1遺伝子の増幅が同時に行なわれる、請求項2に記載の鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子発現量の測定方法。
  4. 鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子が、疾患感受性遺伝子である、請求項1〜3のいずれか1に記載の鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子発現量の測定方法。
  5. 疾患感受性遺伝子が、ヒスタミンH1受容体遺伝子である、請求項4に記載の鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子発現量の測定方法。
  6. PUM1遺伝子を増幅しうるプライマーが、配列表の配列番号1及び2に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである、請求項2〜5のいずれか1に記載の鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子発現量の測定方法。
    Sense primer: 5'-ACACATGCAACGCTCATTCC-3'(配列番号1)
    Anti sense primer: 5'-GAGAGCGCCAGAGAGAGAAGA-3' (配列番号2)
  7. ヒスタミンH1受容体遺伝子を増幅しうるプライマーが、配列表の配列番号3及び4示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである、請求項5又は6に記載の鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子発現量の測定方法。
    Sense primer:5'-CAGAGGATCAGATGTTAGGTGATAGC-3'(配列番号4)
    Anti sense primer:5'-AGCGGAGCCTCTTCCAAGTAA-3'(配列番号5)
  8. 被検者から採取した鼻粘膜検体から抽出されたRNAに基づきヒスタミンH1受容体遺伝子及びPUM1遺伝子を増幅する工程において、PUM1遺伝子の増幅に用いるプライマー量が、ヒスタミンH1受容体遺伝子の増幅に用いるプライマー量の1/4で各々増幅することを特徴とする、請求項5〜7のいずれか1に記載の鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子発現量の測定方法。
  9. 請求項5〜8のいずれか1に記載の鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子発現量の測定方法により算出したヒスタミンH1受容体遺伝子の発現量が、健常人の鼻粘膜検体中のヒスタミンH1受容体遺伝子の発現量に較べて高い場合にアレルギー性鼻炎であると判断する、アレルギー性鼻炎の検査方法。
  10. PUM1遺伝子を増幅しうる1組のプライマーセットを少なくとも含み、さらに目的遺伝子を増幅しうる1組のプライマーセットを含む、鼻粘膜検体に存在する目的遺伝子発現量測定用キット。
  11. 鼻粘膜検体中に存在する目的遺伝子が、疾患感受性遺伝子である、請求項10に記載の目的遺伝子発現量測定用キット。
  12. 疾患感受性遺伝子が、ヒスタミンH1受容体遺伝子である、請求項11に記載の目的遺伝子発現量測定用キット。
  13. PUM1遺伝子を増幅しうる1組のプライマーセットが、配列表の配列番号1及び2に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである、請求項10〜12のいずれか1に記載の目的遺伝子発現量測定用キット。
    Sense primer: 5'-ACACATGCAACGCTCATTCC-3'(配列番号1)
    Anti sense primer: 5'-GAGAGCGCCAGAGAGAGAAGA-3' (配列番号2)
  14. 目的遺伝子を増幅しうる1組のプライマーセットが、配列表の配列番号3及び4に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである、請求項12又は13に記載の目的遺伝子発現量測定用キット。
    Sense primer:5'-CAGAGGATCAGATGTTAGGTGATAGC-3'(配列番号4)
    Anti sense primer:5'-AGCGGAGCCTCTTCCAAGTAA-3'(配列番号5)
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