JP2012098074A - マイクロチップの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】表面に流路用溝を有する樹脂製の基板と、流路用溝をカバーする樹脂製のカバー部材と、が熱接合されたマイクロチップの製造方法において、基板の表面から所定の深さより深い内部領域の密度、又は基板の表面から前記所定の深さ以内の表面領域の密度を均一にする処理工程を有する。
【選択図】図9
Description
PCR法では、マイクロチップに溜池状に形成された反応部において、増幅したい遺伝子を含む検体を、複数の温度条件(例えば、約95℃の熱変性温度、約55℃のアニーリング温度、約70℃の重合温度の3つの温度条件)サイクルで増幅反応させ、このサイクルを何度も繰り返すことで遺伝子を大量に増幅させる。なお、PCR法により得た産物は、この後、電気泳動法(アガロース電気泳動法、キャピラリ電気泳動法)にかけられて標的物質の検出が行われる。
なかでも、熱融着は低コストで実施できるため、大量生産を前提とした接合方法として適している。
このため、基板及びカバー部材の材質に、例えば、ポリカーボネート樹脂やポリプロピレン等の耐熱性樹脂を用い、基板及びカバー部材の荷重たわみ温度や、基材とカバー部材との接合温度を使用温度より高くなるように設定が行われる必要がある。
表面に流路用溝を有する樹脂製の基板と、前記流路用溝をカバーする樹脂製のカバー部材と、が熱接合されたマイクロチップの製造方法において、
前記基板の表面から所定の深さより深い内部領域の密度、又は前記基板の表面から前記所定の深さ以内の表面領域の密度を均一にする処理工程を有する。
最初に、本実施の形態における検査装置について、図1および図2を用いて説明する。
図1は検査装置1の外観構成の一例を示す斜視図であり、図2は検査装置1の内部構成の一例を示す模式図である。
送液部14は、マイクロチップ2内の送液を行うためのユニットであり、搬送口11から検査装置1内に搬入されるマイクロチップ2と接続されるようになっている。この送液部14は、マイクロポンプ140、チップ接続部141、駆動液タンク142および駆動液供給部143等を有している。
チップ接続部141は、マイクロポンプ140とマイクロチップ2とを接続して連通させる。
駆動液供給部143は、駆動液タンク142からマイクロポンプ140に駆動液146を供給する。
加熱部15は、マイクロチップ2を特定の複数の温度に加熱するために発熱する。例えば、約95℃の熱変性温度、約55℃のアニーリング温度、約70℃の重合温度の3つの温度にマイクロチップ2を加熱する。これにより、PCR法による遺伝子増幅を行う。加熱部15は、ヒータやペルチエ素子等の通電によって温度を上昇できる素子、通水によって温度を低下させられる素子等で構成される。
PCR法では、2本鎖DNAを含む溶液を高温(例えば95℃程度)で加熱することにより1本鎖DNAに変性させ、その後、この1本鎖DNAとなった溶液を例えば55℃程度まで冷却していく。これにより、長い1本鎖DNAの一部にプライマーが結合する(アニーリング)。この状態で、プライマーの分離が起きずかつDNAポリメラーゼの活性に適した温度(例えば70℃程度)まで加熱すると、プライマーが結合した部分を起点として1本鎖部分と相補的なDNAが合成される。
PCR法では、このような加熱/冷却工程を短周期で繰り返すヒートサイクル操作を行うことにより、DNA合成を繰り返し、標的DNAを増幅・培養することができる。
電圧印加部18は、複数の電極を有している。これらの電極は、マイクロチップ2内の液体試料に挿入されて当該液体試料に直接電圧を印加するか、あるいは後述の通電部40に接触して当該通電部40を介して液体試料に電圧を印加することにより、マイクロチップ2内の液体試料に電気泳動を行わせるようになっている。
検出部16は、発光ダイオード(LED)やレーザ等の光源と、フォトダイオード(PD)やフォトマル等の受光部等とで構成され、マイクロチップ2内の反応によって得られる生成液に含まれる標的物質を、マイクロチップ2上の所定位置(後述の検出領域200)で光学的に検出する。光源と受光部との配置は透過型と反射型とがあり、必要に応じて決定されればよい。
駆動制御部17は、図示しないマイクロコンピュータやメモリ等で構成され、検査装置1内の各部の駆動、制御、検出等を行う。
続いて、本実施の形態におけるマイクロチップ2について、図3を用いて説明する。
図3は、マイクロチップ2を示す図であり、図3(a)は平面図、図3(b),(c)は側方から見た内部形状を示す透視図である。
基板3は、樹脂製の板状部材である。
基板3は、カバー部材4に対する接合面(以下、内側面3Aとする)に流路用溝30を有している。この流路用溝30は、基板3とカバー部材4とが貼り合わされた場合に、カバー部材4と協働して微細流路20を形成する。この微細流路20には、検査装置1の検出部16による標的物質の検出対象領域として、検出領域200が設けられている。なお、微細流路20(流路用溝30)の形状は、分析試料、試薬の使用量を少なくできること、成形金型の作製精度、転写性、離型性などを考慮して、幅、深さともに、10μm〜200μmの範囲内の値であることが好ましいが、特に限定されるものではない。また、微細流路20の幅と深さは、マイクロチップの用途によって決めれば良い。なお、微細流路20の断面の形状は矩形状でも良いし、曲面状でも良い。
カバー部材4は、例えば、樹脂製のフィルムである。なお、カバー部材4は、フィルムに限定されず、シート状(板状)の部材でもよい。
カバー部材4にも微細流路や孔を設けてもよいが、基板3との接合を確実に行うため、カバー部材4は厚くなり過ぎないことが好ましい。検体や試薬、あるいは検査の種類によって必要な時は、電圧印加部18の電極を開口部21(貫通孔31)に挿入して電圧を印加することにより、微細流路20内の試料に電気泳動を行わせる。
基板3及びカバー部材4は、樹脂によって形成される。基板3及びカバー部材4に用いられる樹脂に関しては、耐熱性が高いこと、成形性(転写性、離型性)が良いこと、透明性が高いこと、紫外線、可視光、近赤外光に対する自家蛍光の発生効率が低いことなどが条件として挙げられる。
具体的に、基板3とカバー部材4には、例えば、2種類の単量体を重合させて得られるポリカーボネート樹脂や、3種類以上の単量体を重合させて得られるポリカーボネート樹脂などが用いられる。また、硬度等の物性を制御する目的で、所定の官能基を側鎖に持つ単量体を用いて重合することにより、分子主鎖に対して前記所定の官能基を導入したポリカーボネート樹脂であってもよいし、ポリカーボネート基とエステル結合(例えば、ジカルボン酸とジオールとのエステル等)とを分子主鎖に含む重合体であってもよい。
これにより、荷重たわみ温度などの物性値が所定の値となるように制御されている。市販のポリカーボネート樹脂としては、三菱エンジニアリングプラスチックス製ユーピロンシリーズ(例えば、ユーピロンH−4000、ユーピロンH−3000)、帝人化成製パンライトAD5503などを用いることができる。
また、基板3とカバー部材4とを同じ材料にしたり、同じ種類に分類される樹脂を(例えば、分子主鎖が同じで側鎖のみが異なる複数の樹脂、用いる単量体の一部が異なる複数の重合体など)を用いた材料としたり、あるいは、同じ樹脂や同じ種類に分類される樹脂を母材として添加剤の種類や量を異ならせた材料を用いたりすることで、互いの相溶性がよくなり、溶融した後に結合し易くすることができる。
HDTf>HDTm>増幅反応温度・・・(A)
但し、HDTf:カバー部材の荷重たわみ温度(℃)
HDTm:基板の荷重たわみ温度(℃)
増幅反応温度:PCR法における増幅反応時の加熱温度(℃)
なお、荷重たわみ温度(HDT)とは、ISO規格75−1、75−2(ASTE D648、JIS7191)に規定された、樹脂の熱的特性(耐熱性など)を表わす指標の一つであり、試験法規格に決められた荷重を与えた状態で試料の温度を上げていった場合、撓みの大きさが一定の値になる温度を示すものである。本件明細書においては、ISO規格75−2(0.45MPa)での荷重たわみ温度を示すものとする。
しかしながら、前記式(A)の関係を満たすことによって、熱接合時にカバー部材4が流路用溝30に撓みこむのを確実に防止することができるようになっている。
また、基板3とカバー部材4の荷重たわみ温度は、PCR法における増幅反応時の加熱温度より高いため、マイクロチップにおいてPCR法を実行する際に、流路用溝30にカバー部材4が撓みこむのを抑制することができる。
即ち、基板3とカバー部材4の荷重たわみ温度が、かかる式(A)の関係を満たすことで、熱接合時に熱がかかった場合にもPCR法においてマイクロチップ2が加熱された場合にも、流路用溝30にカバー部材4が撓みこんで、流路形状が崩れるのを防止することができるようになっている。
なお、メルトマスフローレートとは、ISO規格1133(JIS K7210、JIS K7390、ASTM D1238)に規定された、熱可塑性樹脂の溶融時の流動性を表わす数値の一つである。メルトマスフローレートは、シリンダ内で溶融した樹脂を一定の温度のもと定荷重をかけ、シリンダ底部に設置された規定口径のダイスから10分間あたり押し出される樹脂量が測定されたものである。
メルトマスフローレートが50g/10minより大きい基板3では、流動性が高いため成形は容易となるが、熱接合時に内側面3Aが変形し、流路用溝30が潰れ易くなる。
一方、メルトマスフローレートが5g/10minより小さい基板3では、流動性が低すぎて接合が難しくなる。
即ち、基板3のメルトマスフローレートを5〜50g/10minとすることで、成形し易さと接合し易さを両立することができる。
なお、鉛筆硬度とは、JIS−K5600−5−4に従い測定されるものであり、既知の硬さの鉛筆を一定の条件で押し付けて引っかき、どの硬度の鉛筆で引っかいた時に傷がつかなかったかを表わしたものである。
硬度が小さくなりすぎると、熱接合時の荷重で内側面3Aが変形し、流路用溝30が潰れ易くなるが、硬度をある程度高くすることで、好適には鉛筆硬度がH以上の基板3を用いることで、外力による変形を抑えやすくなる。
一方、鉛筆硬度が4Hより大きい基板3では、素材が硬すぎるため接合自体が困難となる恐れがある。鉛筆硬度を4Hよりも大きくしようとすれば、一般的には、成形材料中にポリカーボネート重合体とは異なる材料(添加剤、モノマー)を添加することになる。そのため、ポリカーボネートの割合や構造が大きく変化することになり、流路用溝30はつぶれにくくなるものの、基板3とカバー部材4の相溶性が悪化して接合強度が低下してしまう恐れがある。
基板3の表面の鉛筆硬度をH〜4Hとすることで、樹脂が柔らかくなりやすい高温(後述の接合温度(Lt))で接合する場合でも、流路用溝30を潰れにくいものとすることができる。
続いて、マイクロチップ2の製造装置について説明する。
固定側プラテン51は、ベース50に立設された平板状の部材である。この固定側プラテン51の4隅には柱状のタイバー53が設けられており、固定側プラテン51に対して垂直に延在している。
図7は、成形型6の概略構成を示す断面図であり、成形空間に樹脂が充填された状態を示している。
この可動型61は、環状の外周型610と、外周型610の内部に嵌め込まれた中央型611とを有している。
続いて、マイクロチップの製造方法について説明する。
マイクロチップの製造方法は、図8に示すように、基板の製造工程(ステップS1)と、接合工程(ステップS2)と、を有している。このうち基板の製造工程(ステップS1)は、図9に示すように、注入工程(ステップS11)と、保圧工程(ステップS12)と、離型工程(ステップS13)と、アニール工程(ステップS14)と、を有している。
まず、上記した成形型6を用い、基板3の製造を行う(基板の製造工程:図8のステップS1)。
このとき、溶融樹脂Jに対して、下記式(1)の関係を満たす保圧力を印加する。
限界圧力+10≦保圧力(MPa)≦200・・・(1)
但し、限界圧力とは、予め設定された成形ひけ(成形収縮によって生じるへこみや窪み)が発生しない圧力(MPa)である。
例えば、限界圧力(MPa)が50MPaであれば、60MPa〜200MPaの範囲内の圧力にて保圧を行う。
これにより、基板の表面から所定の深さ(ここでは、成形物の表面から100μmとする)より深い内部領域(成形物の表面から100μmより深い部分)の密度を高く、均一にすることができる。このため、成形物の内部領域の局所歪みの発生を抑えることができ、基板3とカバー部材4との熱接合の際に基板3(成形物)に圧力と熱を均一に加えることが可能となるため、マイクロチップ2内の接合力と流路深さの均一性を確保することができる。また、マイクロチップ2内の接合力と流路深さの安定性、再現性の確保が可能となる。
このとき、下記式(2)の関係を満たすアニール温度(AT)でアニールが行われる。
HDTm−20≦AT(℃)≦HDTm+10・・・(2)
但し、HDTmは、基材の荷重撓み温度(℃)である。
例えば、荷重たわみ温度が138℃であれば、118℃〜148℃の範囲内の温度にてアニールを行う。
これにより、基板の表面から所定の深さ(ここでは、成形物の表面から100μmとする)以内の成形物の表面領域(成形物の表面から100μm以内の部分)の密度を高く、均一にすることができる。このため、成形物の表面領域の局所歪みの発生を抑えることができ、基板3とカバー部材4との熱接合の際に基板3(成形物)に圧力と熱を加えたときに、微細流路30の形状を維持しやすくすることが可能となる。よって、マイクロチップ2内の接合力と流路深さの均一性を確保することができる。また、マイクロチップ2内の接合力と流路深さの安定性、再現性の確保が可能となる。
次に、上記のように製造した基板3と、カバー部材4とを接合する(接合工程:図8のステップS2)。
具体的に、基板3とカバー部材4とを、熱融着によって接合する。
例えば、熱板、熱風、熱ロール、超音波、振動、又はレーザなどを用いて、基板3とカバー部材4とを所定の接合温度(Lt)℃にて加熱することで接合する。一例として、熱プレス機を用いて、加熱された熱板によって基板3とカバー部材4とを挟み、熱板によって圧力を加えて所定時間保持することで、基板3とカバー部材4とを接合する。これにより、カバー部材4が流路用溝30の蓋として機能し、流路用溝30とカバー部材4とによって微細流路20が形成されて、マイクロチップ2が製造される。なお、基板3とカバー部材4とを熱融着するためには、基板3とカバー部材4の界面さえ加熱できればよく、超音波、振動、レーザを用いれば界面のみを加熱できる可能性がある。
Lt>HDTf>HDTm ・・・(3)
但し、Lt :基板とカバー部材との接合温度(℃)
HDTf:カバー部材の荷重たわみ温度(℃)
HDTm:基板の荷重たわみ温度(℃)
かかる式(3)の条件を満たすことによって、基板3とカバー部材4とを熱接合する際に、流路用溝30へカバー部材4が撓みこむのを抑制することができるようになっている。
このため、基板3とカバー部材4とを熱接合する際に、圧力と熱を均一に加えることが可能となり、基板3とカバー部材4との接合力と、マイクロチップ2の流路形状の維持とを両立するマイクロチップ2を製造することができる。
限界圧力+10≦保圧力(MPa)≦200・・・(1)
但し、限界圧力:予め設定された成形ひけが発生しない圧力
このため、射出成形時に、成形空間64内の溶融樹脂Jに対して、所定の範囲内の圧力にて保圧を行うことで、基板3の表面から深さが100μmより深い内部領域の密度を高めることができる。このため、他の部位に比べて充填がされにくいような部位に局所的な歪みを生じたままで成形されることが防止されるものと推測される。
よって、基板3とカバー部材4とを熱接合する際に、局所的な歪みが開放される現象の発生が回避され、圧力と熱を均一に加えることが可能となり、基板3とカバー部材4との接合力と、マイクロチップ2の流路形状の維持とを両立するマイクロチップ2を製造することができる。
HDTm−20≦AT(℃)≦HDTm+10・・・(2)
但し、HDTm:基材の荷重撓み温度(℃)
このため、基板3の成形後であってカバー部材4との接合前に、所定の範囲内の温度にてアニールを行うことで、基板3の表面から深さが100μm以内の表面領域の密度を高めることができる。よって、基板の表面に近い部位に局所的な歪みを生じたままになることが防止されるものと推測される。
よって、基板3とカバー部材4とを熱接合する際に、局所的な歪みが開放される現象の発生が回避され、圧力と熱を均一に加えることが可能となり、基板3とカバー部材4との接合力と、マイクロチップ2の流路形状の維持とを両立するマイクロチップ2を製造することができる。
Lt>HDTf>HDTm・・・(3)
但し、Lt:基板とカバー部材との接合温度(℃)
HDTf:カバー部材の荷重撓み温度(℃)
HDTm:基材の荷重撓み温度(℃)
このため、カバー部材4の荷重たわみ温度が、基板3の荷重たわみ温度より高温であり、基板3とカバー部材4との接合温度が、基板3とカバー部材4の荷重たわみ温度より高温であるため、基板3とカバー部材4とを熱接合する際に、流路用溝30にカバー部材3が撓みこむのを抑制することができる。
保圧工程とアニール工程の基板3とカバー部材4が、ポリカーボネート樹脂製であることとして説明したが、基板3の荷重たわみ温度(HDTm)℃と、カバー部材4の荷重たわみ温度(HDTf)℃が、上記(A)式を満たすものであれば、その材質は限定されない。
実施例及び比較例の基板として、下記の基板を成形した。
ユーピロンH−3000(三菱エンジニアリングブラスチックス製、ポリカーボネート:商品名)を用いて、樹脂温度300℃、金型温度135℃の成形条件にて、基板の成形を行った。基板のサイズは、縦40mm、横30mm、厚さ2mmであり、深さ20μm、幅50μmの流路と、流路に接続する、深さ20μm、体積40mm3の反応室用凹部とが表面に形成されている。
上記のように成形した基板を、限界圧力より10MPa高い60MPaの保圧力で保圧した(実施例1)。
上記のように成形した基板を、限界圧力より50MPa高い100MPaの保圧力で保圧した(実施例2)。
上記のように成形した基板を、限界圧力より100MPa高い150MPaの保圧力で保圧した(実施例3)。
上記のように成形した基板を、限界圧力より150MPa高い200MPaの保圧力で保圧した(実施例4)。
上記のように成形した基板を、限界圧力より5MPa高い55MPaの保圧力で保圧し、更に、基板の荷重撓み温度より−20℃低い118℃でアニールした(実施例5)。
上記のように成形した基板を、限界圧力より5MPa高い55MPaの保圧力で保圧し、更に、基板の荷重撓み温度より−10℃低い128℃でアニールした(実施例6)。
上記のように成形した基板を、限界圧力より5MPa高い55MPaの保圧力で保圧し、更に、基板の荷重撓み温度と等温の138℃でアニールした(実施例7)。
上記のように成形した基板を、限界圧力より5MPa高い55MPaの保圧力で保圧し、更に、基板の荷重撓み温度より10℃高い148℃でアニールした(実施例8)。
上記のように成形した基板を、限界圧力より5MPa高い55MPaの保圧力で保圧した(比較例1)。
上記のように成形した基板を、限界圧力より200MPa高い250MPaの保圧力で保圧した(比較例2)。
上記のように成形した基板を、限界圧力より5MPa高い55MPaの保圧力で保圧し、更に、基板の荷重撓み温度より25℃低い113℃でアニールした(比較例3)。
上記のように成形した基板を、限界圧力より5MPa高い55MPaの保圧力で保圧し、更に、基板の荷重撓み温度より15℃高い1153℃でアニールした(比較例4)。
上記の実施例1〜8及び比較例1〜4の基板に対して、流路の変形距離を測定し、下記3段階基準により、流路変形を評価した。評価結果は表1に示す。
○:流路変形が2μm未満である
△:流路変形が2μm〜5μmである
×:流路変形が5μmより多い
次に、上記の実施例1〜8及び比較例1〜4の基板に対して、パンライトD−92(帝人化成製、ポリカーボネート:商品名)のフィルム状のカバー部材を、接合温度165℃、接合圧力2MPaの接合条件にて、接合を行った。
接合されたマイクロチップに対して、流路深さを測定し、下記3段階基準により評価した。評価結果は表1に示す。
○:流路潰れ量が5μm未満である
△:流路潰れ量が5μm〜10μmである
×:流路潰れ量が10μmより多い
接合されたマイクロチップに対して、接合力を測定し、下記3段階基準により評価した。評価結果は表1に示す。
○:3N/cmより大きい
△:1N/cm〜3N/cmである
×:1N/cm未満である
また、実施例1は、保圧力がやや低いため、接合時に一部流路潰れが発生したと考えられる。また、実施例4は、保圧力がやや高いため、基板の成形時の流路形状が変形したと考えられる。また、実施例5は、アニール温度がやや低いため、接合時に一部流路潰れが発生したと考えられる。また、実施例8は、アニール温度がやや高いため、基板の成形時の流路形状がやや変形したと考えられる。
なお、2枚の直交する偏光板の間に成形品を挟み、成形品を置いていない部分の色を黒になるように偏光板を微調整し(おおよそ90度になる)、成形品の色を観察した場合、黒一色であれば複屈折は存在しないか、存在してもごくわずかといえる。逆に黒以外の色が見える場合は複屈折が存在し、虹のように幾重にも重なって見える場合は複屈折が非常に大きいといえる。
図10(b)では、ほぼ黒色であり、複屈折が存在しないのがわかる。一方、図10(a)では、黒色以外の色が存在し、複屈折が非常に大きいことがわかる。
複屈折は、成形物に局所歪みが存在することを示す。よって、実施例2では、保圧により、成形物に局所歪みがほぼ存在しないことがわかる。
図11(b)では、ほぼ黒色であり、複屈折が存在しないのがわかる。一方、図11(a)では、黒色以外の色が存在し、複屈折が非常に大きいことがわかる。
複屈折は、成形物に局所歪みが存在することを示す。よって、実施例7では、アニールにより、成形物に局所歪みがほぼ存在しないことがわかる。
2 マイクロチップ
3 基板
3A 内側面
3B 外側面
4 フィルム
10 トレイ
11 搬送口
12 操作部
13 表示部
14 送液部
15 加熱部
16 検出部
17 駆動制御部
18 電圧印加部
20 微細流路
21 開口部
30 流路用溝
31 貫通孔
40 通電部
80 反応室用凹部
200 検出領域
Claims (6)
- 表面に流路用溝を有する樹脂製の基板と、前記流路用溝をカバーする樹脂製のカバー部材と、が熱接合されたマイクロチップの製造方法において、
前記基板の表面から所定の深さより深い内部領域の密度、又は前記基板の表面から前記所定の深さ以内の表面領域の密度を均一にする処理工程を有することを特徴とするマイクロチップの製造方法。 - 請求項1に記載のマイクロチップの製造方法において、
前記処理工程は、
前記基板を成形する射出成形時に、溶融樹脂に対して、下記式(1)の関係を満たす保圧力を印加する保圧工程を有することを特徴とするマイクロチップの製造方法。
限界圧力+10≦保圧力(MPa)≦200・・・(1)
但し、限界圧力:予め設定された成形ひけが発生しない圧力 - 請求項1に記載のマイクロチップの製造方法において、
前記処理工程は、
前記基板の成形後であって前記カバー部材との接合前に、下記式(2)の関係を満たすアニール温度(AT)でアニールするアニール工程を有することを特徴とするマイクロチップの製造方法。
HDTm−20≦AT(℃)≦HDTm+10・・・(2)
但し、HDTm:基材の荷重撓み温度(℃) - 請求項2又は3に記載のマイクロチップの製造方法において、
前記基板と前記カバー部材とを、下記式(3)の関係を満たす接合温度(Lt):℃にて接合する接合工程を有することを特徴とするマイクロチップの製造方法。
Lt>HDTf>HDTm・・・(3)
但し、Lt:基板とカバー部材との接合温度(℃)
HDTf:カバー部材の荷重撓み温度(℃)
HDTm:基材の荷重撓み温度(℃) - 請求項1〜4の何れか一項に記載のマイクロチップの製造方法において、
前記基板は、ポリカーボネート樹脂を含み、
前記基板に用いられるポリカーボネート樹脂は、2種類の単量体を重合させて得られるものであることを特徴とするマイクロチップの製造方法。 - 請求項1〜4の何れか一項に記載のマイクロチップの製造方法において、
前記基板は、ポリカーボネート樹脂を含み、
前記基板に用いられるポリカーボネート樹脂は、分子主鎖にカーボネート基とエステル結合とを含む重合体であることを特徴とするマイクロチップの製造方法。
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