JP2012094434A - 多孔質層含有積層体の製造方法及び色素増感太陽電池 - Google Patents

多孔質層含有積層体の製造方法及び色素増感太陽電池 Download PDF

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Abstract

【課題】電荷移動を容易にし、高い発電性能が安定に得られる多孔質層含有積層体を製造する方法、及び色素増感太陽電池を提供すること。
【解決手段】半導体粒子、加熱消滅性粒子、バインダ、及び溶媒を含有する第一のペーストを、基材10上に部分的に塗布して第一のペースト層21を形成する第一のペースト層形成工程と、半導体粒子、バインダ、及び溶媒を含有し、かつ、前記加熱消滅性粒子の含有量が前記第一のペーストより少ないか、又は前記加熱消滅性粒子を含まない第二のペーストを、基材10上の前記第一のペーストが塗布されない部分10aに塗布して第二のペースト層22を形成する第二のペースト層形成工程と、第一のペースト層21と第二のペースト層22を加熱処理して多孔質層20fを形成する焼成工程とを有することを特徴とする多孔質層含有積層体の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、多孔質層含有積層体の製造方法及び色素増感太陽電池に関し、より詳細には、電気化学素子全般に使用できる電極、特に色素増感太陽電池用の電極の製造方法、及び色素増感太陽電池に関する。
色素増感太陽電池は、色素が担持された酸化金属を含む電極と、酸化還元反応可能な化学種を含む電解質と、対極とを備え、比較的簡易な製造方法、安価な原材料、高い変換効率が得られることから、次世代太陽電池の有力候補と考えられている。
色素増感太陽電池の原理は次の通りである。電極における酸化金属に担持された色素が光を受けて光励起し、該色素から酸化金属へ電子注入が起こり、該色素はカチオンラジカルの状態となる。このカチオンラジカルに対し、電解質中のイオン、たとえばヨウ化物イオン(I)が電子を放出し、三ヨウ化物イオン(I )を形成する(ヨウ化物イオンは酸化される)。ここで生じた三ヨウ化物イオン(I )は、電解質中を拡散し、対極に近づいた際に電子を受け取り、ヨウ化物イオン(I)となる(三ヨウ化物イオンは還元される)。このような酸化還元反応の繰返しによって色素増感太陽電池は動作する。
色素増感太陽電池の電極は、従来、導電性を有する基材上に、酸化チタン等の酸化金属からなる半導体粒子とバインダを溶媒に分散させたペーストを塗布し、溶媒を除去してペースト層を形成した後、高温で加熱処理(焼成)することによりバインダを除去して多孔質層を形成する方法により製造されている。
電極においては、吸収した光を電極内に閉じ込めて有効活用するため、異なる孔径の多孔質層、又は異なる孔径が混在した多孔質層が、緻密層、発電層、拡散層及び反射層などとして積層されている。
また、積層される各多孔質層の空孔の大きさ、多孔度、形状等を制御することで、電解質からの電荷移動を円滑にできる電気化学界面の形成が可能となり、光電変換特性の向上を図ることができるとされている。
かかる多孔質層の空孔の大きさ等を制御する方法としては、これまでに、多孔質構造体を形成するための半導体粒子と、増粘剤と、非増粘性粒子と、溶媒とを含有する混合物を調製する工程と、基体の対象面全体に前記混合物を付着させる工程と、前記増粘剤と共に前記非増粘性粒子を除去することにより空孔を形成する工程とを有する光電変換素子の製造方法などが提案されている(特許文献1参照)。
特開2006−324011号公報
色素増感太陽電池の電極を形成する多孔質層における細孔は、電極の表面積を増加させ、光を散乱させる作用を有すると共に、電解質が存在する空間でもある。
しかしながら、半導体粒子とバインダを溶媒に分散させたペーストにおいては、形成される多孔質層の細孔が小さいため、特に電解質の粘度が高くなるほど、多孔質層中に電解質が行き渡りにくくなり、空孔間での電荷移動が困難になる。また、焼成の際、半導体粒子が互いに融着して発生する内部応力により、多孔質層−基材界面で剥離、又は電極表面に割れが生じて、発電性能が安定に得られにくい問題がある。さらに、この問題は、多孔質層が積層されて電極が厚くなるほど起こりやすくなる。
特許文献1に記載された技術においては、多孔質層全体に非増粘性粒子の除去に伴う空孔があらたに形成されて、多孔質層中に電解質が行き渡りやすいものの、従来よりも強度が劣り、発電性能との両立が図れない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、電荷移動を容易にし、高い発電性能が安定に得られる多孔質層含有積層体を製造する方法、及び色素増感太陽電池を提供することを課題とする。
電気化学素子のなかで、たとえば色素増感太陽電池では、電極−対極間の電荷移動が容易であれば高い発電性能が発揮されやすくなる。
特許文献1に記載された発明のように、電極を構成する多孔質層にあらたに空孔を形成することにより、多孔質層中に電解質が行き渡り、従来よりも電荷が移動しやすくなる。しかしながら、電極を構成する多孔質層に、粒子の除去に伴う空孔をあらたに形成しようとすると、通常、焼成の際に半導体粒子が互いに融着して発生する内部応力の影響により、電極面方向に扁平した形状の空孔が得られやすい。このような形状の空孔では、電極−対極方向の電荷移動の効率が悪い。
そこで、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、加熱消滅性粒子の含有量の異なるペーストを用い、該空孔を密に電極−対極方向に並ぶように形成することで、電荷移動の効率化及び強度向上が図れることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の多孔質層含有積層体の製造方法は、半導体粒子、加熱消滅性粒子、バインダ、及び溶媒を含有する第一のペーストを、基材上に部分的に塗布して第一のペースト層を形成する第一のペースト層形成工程と、半導体粒子、バインダ、及び溶媒を含有し、かつ、前記加熱消滅性粒子の含有量が前記第一のペーストより少ないか、又は前記加熱消滅性粒子を含まない第二のペーストを、前記基材上の前記第一のペーストが塗布されない部分に塗布して第二のペースト層を形成する第二のペースト層形成工程と、前記第一のペースト層と前記第二のペースト層を加熱処理して多孔質層を形成する焼成工程とを有することを特徴とする。
本発明の多孔質層含有積層体の製造方法においては、前記第二のペーストを、前記基材上の前記第一のペーストが塗布されない部分と共に前記第一のペースト層を覆うように塗布して第二のペースト層を形成することが好ましい。
本発明の多孔質層含有積層体の製造方法においては、前記第一のペースト層形成工程及び前記第二のペースト層形成工程の後、形成された第一のペースト層及び第二のペースト層からなるペースト層上に、さらに、第一のペースト層形成工程及び第二のペースト層形成工程を繰り返してペースト層を複数積層することが好ましい。
本発明の多孔質層含有積層体の製造方法においては、前記第一のペースト層形成工程において、前記第一のペーストを、スクリーン印刷によって基材上に部分的に塗布して第一のペースト層を形成することが好ましい。
本発明の多孔質層含有積層体の製造方法においては、前記加熱消滅性粒子が、オキシプロピレンユニットとオキシテトラメチレンユニットとから選ばれる少なくとも一種のユニット並びに2つ以上の重合性不飽和基を有する架橋剤と、重合性不飽和基を有する単量体とが反応したものであることが好ましい。
また、本発明の色素増感太陽電池は、色素が担持された酸化金属を含む電極と、酸化還元反応可能な化学種を含む電解質と、対極とを備えた色素増感太陽電池において、前記電極が、前記本発明の多孔質層含有積層体の製造方法により得られた多孔質層含有積層体に色素が担持されたものであることを特徴とする。
本発明の多孔質層含有積層体の製造方法によれば、電荷移動を容易にし、高い発電性能が安定に得られる多孔質層含有積層体を製造することができる。
本発明の色素増感太陽電池によれば、高い発電性能が安定に得られる。
本発明の多孔質層含有積層体の製造方法における各工程の一例を示す概略断面図である。 スクリーン印刷板の各種実施形態例を示す平面図である。 第一のペースト層及び第二のペースト層からなるペースト層を積層する工程の一例を示す概略断面図である。 色素増感太陽電池の一実施形態例を示す概略断面図である。 本発明に係る実施例により得られた多孔質層含有積層体における多孔質層の断面像を示す写真である。 本実施例における発電特性の評価結果を示すグラフである。
<多孔質層含有積層体の製造方法>
本発明の多孔質層含有積層体の製造方法は、半導体粒子、加熱消滅性粒子、バインダ、及び溶媒を含有する第一のペーストを、基材上に部分的に塗布して第一のペースト層を形成する第一のペースト層形成工程と、半導体粒子、バインダ、及び溶媒を含有し、かつ、前記加熱消滅性粒子の含有量が前記第一のペーストより少ないか、又は前記加熱消滅性粒子を含まない第二のペーストを、前記基材上の前記第一のペーストが塗布されない部分に塗布して第二のペースト層を形成する第二のペースト層形成工程と、前記第一のペースト層と前記第二のペースト層を加熱処理して多孔質層を形成する焼成工程とを有する。
本発明の製造方法により製造される多孔質層含有積層体は、電気化学素子の電極に利用でき、なかでも有用な用途の一つとして、色素増感太陽電池の電極が挙げられる。ただし、該多孔質層含有積層体は、色素増感太陽電池の電極用に限定されず、電気化学素子の材料として広く用いることができる。
図1に、本発明の多孔質層含有積層体の製造方法における各工程の一例を示す。
まず、基材本体11表面に導電膜12とペースト層13とがこの順序で積層した、導電性を有する基材10を用意する(図1(a))。
次に、半導体粒子、加熱消滅性粒子、バインダ、及び溶媒を含有する第一のペーストを、基材10上に、所定のパターンが形成されるように部分的に塗布して第一のペースト層21を形成する(図1(b);第一のペースト層形成工程)。
次に、半導体粒子、バインダ、及び溶媒を含有し、かつ、加熱消滅性粒子の含有量が前記第一のペーストより少ないか、又は前記加熱消滅性粒子を含まない第二のペーストを、基材10上の前記第一のペーストが塗布されない部分10aに塗布して第二のペースト層22を形成する(図1(c);第二のペースト層形成工程)。
次いで、ペースト層13と、第一のペースト層21及び第二のペースト層22からなるペースト層20とを加熱処理して多孔質層13f、多孔質層20fを形成する(図1(d);焼成工程)。
以上により、基材本体11表面に設けられた導電膜12上に多孔質層13f、多孔質層20fが積み重なった多孔質層含有積層体1が製造される。
以下、図1に示す実施形態における各工程について、より詳細に説明する。ただし、本発明の多孔質層含有積層体の製造方法は本実施形態に限定されるものではない。
(基材)
本実施形態において、基材10は、導電性を有し、基材本体11表面に導電膜12とペースト層13とがこの順序で積層したものであり、従来公知の方法により作製することができる。
・基材本体11について
多孔質層含有積層体1を色素増感太陽電池の電極として用いる場合、可視光が多孔質層13f、多孔質層20fに入射する必要がある。特に、色素増感太陽電池の光電変換効率を高めるためには、基材本体11の可視光透過率が高いほど好ましく、その可視光透過率としては、70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、85%以上であることが特に好ましい。
ここでいう「可視光」とは、波長400〜780nmの光を意味する。可視光透過率は、積分球付きの透過率光度計にて測定できる。また、紫外−可視分光光度計の透過光強度の平均値から、該可視光透過率の概略値を求めることも可能である。
基材本体11の材料としては、可視光を透過する材料からなるものが好ましく、ガラス、プラスチック等が挙げられる。なかでも、耐熱性の点ではガラスが好ましい。低温焼成可能な酸化チタン含有ペースト等を用いる場合には、プラスチックを用いてもよい。
基材本体11の材料であるガラスとしては、ソーダライムガラス、硼珪酸ガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、バイコールガラス、無アルカリガラス、青板ガラス、白板ガラス等の一般的なガラスが挙げられる。
基材本体11の材料であるプラスチックとしては、ポリアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。なかでもポリエステル樹脂が好ましく、そのなかでも、透明耐熱フィルムとして大量に生産されているポリエチレンテレフタレート(PET)が特に好ましい。薄く、軽く、かつ、フレキシブルな色素増感太陽電池を製造する観点からは、基材本体11はPETフィルムからなるものが好ましい。
基材本体11の厚さは、たとえば色素増感太陽電池が曲げられたり巻かれたりした際に機能性膜にかかる応力が低く抑えられるため、1〜1000μmが好ましく、5〜500μmがより好ましい。
・導電膜12について
多孔質層含有積層体1を色素増感太陽電池の電極として用いる場合、多孔質層13f、多孔質層20fにおいて光反応により生じた電子を外部に取り出すためには、多孔質層13fが導電膜12と接していること、加えて、導電膜12を通じて電子が外部に取り出されることが必要である。
基材本体11表面の全体が導電性を有すると、内部抵抗が減少することにより、トータルとしての光電変換効率が向上する。
導電膜12の材料としては、白金などの金属、金属酸化物、導電性高分子等が挙げられる。多孔質層含有積層体1を色素増感太陽電池の電極として用いる場合には、導電膜12は透明であることが好ましく、金属酸化物又は導電性高分子の透明導電材料であることがより好ましい。また、多孔質層含有積層体1を作製する際、ペースト層を高温で加熱処理(焼成)することから、耐熱性がより高い金属酸化物が好ましい。
金属酸化物である透明導電材料として具体的には、酸化インジウム/酸化スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化亜鉛、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、酸化インジウム/酸化亜鉛(IZO)、酸化ガリウム/酸化亜鉛(GZO)、酸化チタン等が挙げられる。なかでも、伝導度が高いITO、耐熱性及び耐候性に優れたFTOが好ましい。導電膜12の材料としては、ITO及びFTOから選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
導電膜12は、単層であってもよく、複数層から形成されていてもよい。
導電膜12の厚さは、厚さによってヘイズ率が変化することから、50〜2000nmが好ましく、400〜800nmがより好ましい。
・ペースト層13について
ペースト層13を形成するペースト(以下「ペースト層13形成用ペースト」という。)は、半導体粒子、バインダ、及び溶媒を含有する従来公知のものを用いることができ、後述する第二のペーストと同様のものでもよい。
本発明における「ペースト層」は、ペーストを単に塗布してなる層、及びペーストを塗布し、焼成温度よりも低い温度で加熱して溶媒を除去してなる層を包含する。
図1(a)において、ペースト層13は、導電膜12上にほぼ均一な厚さで形成されている。本実施形態では、ペースト層13形成用ペーストを導電膜12上に塗布し、焼成温度よりも低い温度で加熱して溶媒を除去することによりペースト層13が形成されている。溶媒の除去により、ペースト層13の過度な流動を抑制できる(ペースト層13の形状が維持される)と共に、ペースト層13上に、第一又は第二のペーストを塗布しやすくすることができる。
溶媒を除去する際の加熱温度は、焼成温度よりも250℃以上低い温度が好ましく、焼成温度よりも350℃以上低い温度がより好ましい。
ペースト層13の厚さは、厚くなると吸着色素量が増加して電流値が増加するが、厚すぎると内部応力が大きくなり割れが発生することから、1〜50μmが好ましく、3〜20μmがより好ましい。
[第一のペースト層形成工程]
第一のペースト層形成工程では、半導体粒子、加熱消滅性粒子、バインダ、及び溶媒を含有する第一のペーストを、基材上に部分的に塗布して第一のペースト層を形成する。
第一のペーストの詳細については後述する。
図1(b)において、基材10上には、第一のペースト層21が所定のパターンを描いて形成されている。
本実施形態では、第一のペーストを基材10上に部分的に塗布し、焼成温度よりも低い温度で加熱して溶媒を除去することにより、基材10上に第一のペースト層21がほぼ均一な厚さで不連続に形成されている。
基材10上に形成される第一のペースト層21と第二のペースト層22のうち、第一のペースト層21が占める基材10上の割合(面積%)は、50面積%以下であることが好ましく、35面積%以下であることがより好ましく、5〜30面積%であることがさらに好ましい。
第一のペースト層21が占める基材10上の割合が上限値以下であれば、色素吸着面積が充分に確保される。上限値を超えて、加熱消滅性粒子の除去に伴う空孔が多すぎると、色素が吸着可能な表面積が小さくなり、色素吸着量が減少する。下限値以上であれば、空孔間での電荷移動がより容易となり、発電性能向上の効果が得られやすくなる。
ここでいう「第一のペースト層21が占める基材10上の割合(面積%)」とは、第一のペースト層21と第二のペースト層22とが形成されている基材10の面積全体に対する、第一のペースト層21が形成されている基材10の面積の比率を意味する。
第一のペーストを基材10上に部分的に塗布する方法としては、スクリーン印刷、押し出し方式などの方法が挙げられる。なかでも、所定のパターンを高精度に形成できることから、スクリーン印刷が特に好ましい。
図2に、スクリーン印刷板の各種実施形態例を示す。なお、図2に示すスクリーン印刷板(a)〜(g)においては、特徴を分かりやすくするために便宜上、貫通孔を拡大して示しており、貫通孔の形状、数、分布状態、寸法比率などは実際と同じではない。貫通孔の形状、数、分布状態などは図2に示すものに限定されない。
スクリーン印刷板としては、ステンレススクリーン、ポリエステルスクリーン等を用いることができる。
スクリーン印刷板は基材10上の所定の高さに配置され、第一のペーストは、スクリーン印刷板を介し、スクリーン印刷板の貫通孔211〜217を通過した場所に塗布される。これにより、第一のペーストが基材10上に部分的に塗布される。
スクリーン印刷板における貫通孔の分布パターンは、第一のペーストの粘度、所望とする発電性能などによって適宜決定される。なかでも、貫通孔が局所的に集中すると強度、発電性能にバラツキが出やすいことから、スクリーン印刷板の一端から該一端と対向する他端方向へ直線的に一定の間隔をとって貫通孔が形成されたドット状のパターンが好ましく、図2のなかでは図2(d)が特に好ましい。
貫通孔211〜217の開口部はなるべく小さいほど好ましく、該分布パターンとしては、微小な開口部を有するドット状のパターンであることが好ましい。
第一のペースト層21の厚さは、多孔質層の多孔度、第一のペーストの組成などにより適宜決定され、1〜10000nmが好ましく、10〜1000nmがより好ましい。
第一のペースト層21の厚さが下限値未満であると、電解質による電荷移動のパス効果が減少するという不具合が生じやすくなり、上限値を超えると、光が抜けやすくなって発電効率が低下するという不具合が生じやすくなる。
ここでいう「第一のペースト層21の厚さ」とは、溶媒を除去した後の厚さを意味する。したがって、第一のペーストは、第一のペースト層21の好適な厚さの範囲よりも基材10上に厚く塗布することが好ましい。
[第二のペースト層形成工程]
第二のペースト層形成工程では、半導体粒子、バインダ、及び溶媒を含有し、かつ、前記加熱消滅性粒子の含有量が前記第一のペーストより少ないか、又は前記加熱消滅性粒子を含まない第二のペーストを、前記基材上の前記第一のペーストが塗布されない部分に塗布して第二のペースト層を形成する。
第二のペーストの詳細については後述する。
図1(c)において、第二のペースト層22は、基材10上の第一のペースト層21が形成されていない部分に形成され、かつ、第一のペースト層21を覆っている。また、第二のペースト層22の基材10側とは反対側の面22aは略平滑になっている。
本実施形態では、第二のペーストを、基材10上の前記第一のペーストが塗布されない部分10aと共に第一のペースト層21を覆うように塗布し、焼成温度よりも低い温度で加熱して溶媒を除去することにより第二のペースト層22が形成されている。
このように、第二のペースト層22を、第一のペースト層21を覆うように形成することにより、発電性能と強度との両方に優れる。すなわち、多孔質層20f内に、加熱消滅性粒子の除去に伴う空孔が多数存在する領域が形成され、該領域では空孔間で電荷移動が容易となることにより、高い発電性能が得られやすい。また、加熱消滅性粒子の除去に伴う空孔が多孔質層20f内に部分的に存在するため、空孔が多孔質層の全体に存在する場合に比べて強度が高くなる。
第二のペーストを基材10上の前記第一のペーストが塗布されない部分10aに塗布する方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。塗布方法としては、スクリーン印刷法、スピンコート法、スキージ法、ドクターブレード法等が挙げられる。
第二のペースト層22の厚さは、第一のペースト層21の厚さにより適宜決定され、第一のペースト層21の厚さの1倍以上が好ましく、より好ましくは2〜100倍である。このように、ペースト層22の膜厚は、次のペースト層を安定に形成するため、ペースト層21の厚さと同等か、又はペースト層21の厚さ以上とすることが好ましい。
また、第二のペースト層22の厚さ(最も厚いところ)は、1〜1000000nmが好ましく、10〜1000000nmがより好ましく、100〜10000nmがさらに好ましい。
第二のペースト層22の厚さが下限値未満であると、たとえば色素増感太陽電池の電極とした際、吸収した光を充分に活用できなくなり、光電変換効率がより低くなる。一方、上限値を超えると、吸収した光を有効に利用できるが、酸化還元反応可能な化学種の拡散抵抗が大きくなり、電極自体の抵抗が大きくなる。
ここでいう第二のペースト層22の厚さとは、溶媒を除去した後の厚さを意味する。したがって、第二のペーストは、第二のペースト層22の好適な厚さの範囲よりも基材10上に厚く塗布することが好ましい。
[焼成工程]
焼成工程では、第一のペースト層と第二のペースト層を加熱処理して多孔質層を形成する。加熱処理により、加熱消滅性粒子とバインダが蒸発して除去されると共に、半導体粒子が焼結して多孔質層が形成される。
図1(d)において、導電膜12上には、ペースト層13を加熱処理してなる多孔質層13fと、第一のペースト層21及び第二のペースト層22からなるペースト層20を加熱処理してなる多孔質層20fとがこの順序で積層して一体化している。
本実施形態では、ペースト層13と、第一のペースト層21及び第二のペースト層22からなるペースト層20とを同時に加熱処理することにより、多孔質層13f、多孔質層20fが形成されている。
このように、各ペースト層を形成する毎に焼成せずに、二層以上のペースト層を同時に加熱処理(焼成)することにより、多孔質層含有積層体の製造効率を高めることができる。また、多孔質層13fと多孔質層20fとの接合力、第一のペースト層21が加熱処理された部分と第二のペースト層22が加熱処理された部分との接合力が高まり、それぞれの界面での剥離が生じにくくなる。さらに、多孔質層20f上にペーストを塗布しても、その塗布部の形状が変化しにくい。
ペースト層を加熱処理する際の温度(焼成温度)は、200〜650℃が好ましく、350〜500℃がより好ましい。
焼成温度が下限値以上であると、半導体粒子を充分に焼結させることができ、多孔質層13f、20fにバインダの残渣等の不純物が残り難くなり、電極抵抗が低くなる。焼成温度が上限値以下であると、導電膜12が劣化し難くなり、また、導電膜12と多孔質層13fとの熱線膨張係数の差が小さくなり、導電膜12−多孔質層13f界面での剥離が生じにくくなる。
ペースト層を加熱処理する時間(焼成時間)は、焼成温度、焼成に用いる装置等により適宜決定でき、5分間以上、10時間以下が好ましく、15分間以上、3時間以下がより好ましい。
焼成時間が下限値未満であると、多孔質層13f、20fにバインダ等が残りやすくなる。さらに、半導体粒子同士の溶融接合等も起こりにくくなるおそれがある。焼成時間が上限値を超えると、生産性が大きく低下し、製造コストが高くなりすぎるおそれがある。
ペースト層を加熱処理(焼成)する際に減圧することが好ましい。減圧することにより、前記の加熱消滅性粒子の分解物(解重合モノマー)及びバインダの分解物を効率的に除去でき、さらに導電膜12の酸化劣化を防止できる。
また、ペースト層を加熱処理(焼成)する際に酸素を除くことも好ましい。酸素を除き、窒素又はアルゴン等の不活性ガス中で焼成することにより、導電膜12の酸化劣化を防止できる。脱酸素プロセスは、減圧プロセスと比較して、安価に実現可能であり、かつ、多孔質層含有積層体1の連続生産にも適している。一般的に、低酸素状態では、焼成の際における有機物の分解及び除去が不完全になりやすい。前記加熱消滅性粒子は不活性ガス(たとえば窒素)雰囲気下においても効率的に消失するため、低酸素濃度で焼成を行うことがより有効である。
焼成に用いる熱源及び装置としては、公知の熱源及び装置を使用きる。
熱源としては、電熱ヒーター、遠赤外線、誘導加熱又はマイクロ波等を用いた熱源が挙げられる。
装置としては、通常のオーブン等を用いることができる。該装置は、ガス置換により酸素を低減できる機構、又は減圧できる機構を有することが好ましい。オーブンは、金属又は他の不純物のコンタミネーションを防止できるクリーンなオーブン等であることが好ましい。
焼成の際、半導体粒子を焼結させるために、特定の温度にて一定時間加熱処理(焼成)してもよく、連続的又は段階的に温度を上げて加熱処理してもよく、ペーストの性状に応じて、好ましい加熱処理方法が適宜採用される。なかでも、連続的又は段階的に温度を上げて加熱処理する方法が特に好ましい。この方法により、導電膜12と多孔質層13fとの線膨張係数の違いによる導電膜12−多孔質層13f界面での剥離、又は多孔質層13f、20fの割れ等を生じにくくすることができる。
段階的に温度を挙げて加熱処理する方法としては、100〜180℃程度の温度まで加熱する第一ステップの後、20℃ずつ昇温する中間ステップを経て、200〜500℃程度の温度まで加熱する最終ステップを経る方法などが挙げられる。中間ステップの昇温の度合いは、20〜100℃ずつの範囲で適宜調整される。
さらに、連続的な温度上昇と段階的な温度上昇とを組み合わせて加熱処理してもよい。
加熱処理(焼成)後は、温度を充分に下げてから、多孔質層含有積層体1を外部に取り出すことが好ましい。これは酸素による透明性又は導電性の低下を防止するためである。
多孔質層含有積層体1を得る各工程を、真空中又は不活性ガス中で行う場合には、比較的温度が高い状態にて、多孔質層含有積層体1を外部に取り出すこともできる。
(多孔質層含有積層体)
本発明の多孔質層含有積層体の製造方法によれば、電荷移動を容易にし、高い発電性能が安定に得られる多孔質層含有積層体を製造することができる。
図1(d)に示すように、本実施形態の製造方法では、基材本体11表面に設けられた導電膜12上に、多孔質層13fと、第一のペースト層21及び第二のペースト層22からなるペースト層20を加熱処理してなる多孔質層20fとが積み重なった多孔質層含有積層体1が製造されている。
多孔質層20fは、第一のペースト層21が加熱処理された部分と、第二のペースト層22が加熱処理された部分とから形成されている。
第一のペースト層21が加熱処理された部分は、第二のペースト層22が加熱処理された部分に比べて、加熱消滅性粒子の除去に伴う空孔が存在する割合が高い。すなわち、多孔質層20fには、加熱消滅性粒子の除去に伴う空孔が密な部分(多孔度の高い領域)と疎な部分(多孔度の低い領域)とが分布している。
加熱消滅性粒子の除去に伴う空孔が密なほど、多孔質層20fに注入される電解質の粘度が高くても、該電解質が充分に行き渡り、また、空孔が近接もしくは連結した状態で形成されるため、空孔間での電荷移動がより容易となる。
ところで、色素増感太陽電池においては、電極−対極方向の電荷移動の効率化が求められる。上述したように、色素増感太陽電池の電極を構成する多孔質層に、加熱消滅性粒子の除去に伴う空孔をあらたに形成しようとすると、通常、焼成の際に半導体粒子が互いに融着して発生する内部応力の影響により、電極面方向に扁平した形状の空孔が得られやすいため、電極−対極方向の電荷移動という観点ではその効率が悪い。
本発明の多孔質層含有積層体の製造方法によれば、多孔質層内に、加熱消滅性粒子の除去に伴う空孔が多数存在する領域が部分的に形成される。すなわち、多孔質層全体のうち、空孔が多数存在する領域には、該空孔が電極−対極方向に並んで密に形成される。これにより、電極−対極方向の電荷移動の効率化が図られる。そして、本発明の製造方法により製造される多孔質層含有積層体では、高い発電性能が得られる。
また、多孔質層20fには、加熱消滅性粒子の除去に伴う空孔が密な部分が形成されることによって、焼成時に生ずる内部応力が緩和され、多孔質層20f−基材10界面での剥離、又は電極表面の割れが生じにくくなり、光閉じ込め効果が向上して発電性能が安定に得られるようになる。加えて、多孔質層含有積層体を製造する際の歩留まりを向上させることも可能となる。
多孔質層内に該空孔が密な部分と疎な部分とが形成されることによって強度が維持され、第一のペーストのみを用いて形成された多孔質層(該空孔が密な部分のみからなる場合)では困難であった、発電性能と強度との両立、を図ることができる。かかる効果は、多孔質層の厚さが増すほど顕著に得られる。本発明の製造方法により得られる多孔質層含有積層体は、特に電極が厚い色素増感太陽電池の電極用として有用である。
本発明の多孔質層含有積層体の製造方法は、図1に示す実施形態に限定されず、以下に説明するような他の実施形態(1)〜(6)であってもよい。
他の実施形態(1):
本発明の多孔質層含有積層体の製造方法においては、前記第一のペースト層形成工程及び前記第二のペースト層形成工程の後、形成された第一のペースト層及び第二のペースト層からなるペースト層上に、さらに、第一のペースト層形成工程及び第二のペースト層形成工程を繰り返してペースト層を複数積層することも好ましい。
図3に、第一のペースト層及び第二のペースト層からなるペースト層を積層する工程の一例を示す。
図1(a)〜(c)と同様にして、導電性を有する基材10を用意し、第一のペーストを、基材10上に部分的に塗布して第一のペースト層21を形成し、次いで、第二のペーストを、基材10上の前記第一のペーストが塗布されない部分10aと共に第一のペースト層21を覆うように塗布して第二のペースト層22を形成する(図3(a);図1(c)と同じ)。
次に、第一のペーストを、すでに形成された第一のペースト層21及び第二のペースト層22からなるペースト層20上に、所定のパターンが形成されるように部分的に塗布して第一のペースト層210を形成する(図3(b);第一のペースト層形成工程)。
次に、第二のペーストを、ペースト層20上の前記第一のペーストが塗布されない部分20aと共に第一のペースト層210を覆うように塗布して第二のペースト層220を形成する(図3(c);第二のペースト層形成工程)。
次いで、ペースト層13と、第一のペースト層21及び第二のペースト層22からなるペースト層20と、第一のペースト層210及び第二のペースト層220からなるペースト層200とを同時に加熱処理して多孔質層13f、多孔質層20f、多孔質層200fを形成する(図3(d);焼成工程)。
以上により、基材本体11表面に設けられた導電膜12上に多孔質層13f、多孔質層20f、多孔質層200fが積み重なった多孔質層含有積層体1Wが製造される。
図3(b)〜(d)の各工程の詳細については、上述した第一のペースト層形成工程、第二のペースト層形成工程、焼成工程についての説明とそれぞれ同様である。
図3に示すように、第一のペースト層及び第二のペースト層からなるペースト層を積層して多孔質層の積層構造とすることにより、膜厚方向に、加熱消滅性粒子の除去に伴う空孔の密な部分が並んで形成される。色素増感太陽電池においては、電極−対極方向に、加熱消滅性粒子の除去に伴う空孔の密な部分が並んで形成される。これにより、電極−対極方向の電荷移動の効率化がより図られて、高い発電性能がさらに得られやすくなる。
図3には、第一のペースト層及び第二のペースト層からなるペースト層が二層積層の場合の実施形態が図示されているが、第一のペースト層及び第二のペースト層からなるペースト層が三層以上積層される場合であってもよく、その場合は二層積層の場合と同様の方法により積層構造とすることができる。
他の実施形態(2):
図1及び図3に示す実施形態では、各ペースト層を形成した後、全部のペースト層を同時に加熱処理して多孔質層が形成されているが、この実施形態に限定されず、まずペースト層を形成し、加熱処理(焼成)して多孔質層を形成した後、次のペーストを塗布してペースト層を形成し、加熱処理(焼成)して多孔質層を形成してもよい。
具体的には、第一のペースト層を形成し、加熱処理して多孔質層を形成した後、第二のペーストを塗布して第二のペースト層を形成し、加熱処理(焼成)して多孔質層を形成してもよい。また、第一のペースト層及び第二のペースト層からなるペースト層を加熱処理して多孔質層を形成した後、その多孔質層上に、次のペーストを塗布してペースト層を形成し、加熱処理(焼成)して多孔質層を形成してもよい。
他の実施形態(3):
図1及び図3に示す実施形態では、導電膜12と、第一のペースト層21及び第二のペースト層22からなるペースト層20との間に、単層のペースト層13が形成されているが、この実施形態に限定されず、半導体粒子、バインダ、及び溶媒を含有する従来公知のペースト、又は第二のペーストと同様のものを用いて、導電膜12とペースト層20との間に、二層以上のペースト層を形成してもよい。
また、第一のペースト層及び第二のペースト層からなるペースト層20、200上に、さらに、半導体粒子、バインダ、及び溶媒を含有する従来公知のペースト、又は第二のペーストと同様のものを用いてペースト層を形成してもよい。ペースト層20、200上に形成されるペースト層には、粒子径の大きい半導体粒子を含有させておいてもよく、加熱消滅性粒子を含有させておいてもよい。
このように複数のペースト層を積層して多孔質層の積層構造とすることにより、全体で数μm以上の厚さの多孔質層を形成する際、剥離又は割れがより生じにくくなる。さらに、異なる種類のペーストを用いて複数のペースト層を積層することにより、多孔質層の多孔度、密度、表面積等が連続的に大きくなる又は小さくなる積層構造を形成することができる。たとえば、導電膜12に近い多孔質層を孔の小さい緻密な層とし、導電膜12から遠ざかるにつれて徐々に孔の大きい粗い層とすることにより、光電変換効率が高い色素増感太陽電池が得られやすくなる。
他の実施形態(4):
図1及び図3に示す実施形態では、基材10(ペースト層13)上に、第一のペースト層21及び第二のペースト層22からなるペースト層20が形成されているが、この実施形態に限定されず、導電膜12上にペースト層20を形成することもできる。
他の実施形態(5):
図1及び図3に示す実施形態では、第二のペーストを、第一のペーストを覆うように塗布して第二のペースト層が形成されているが、この実施形態に限定されず、第一のペースト層と第二のペースト層とがそれぞれ基材から、又は、第一のペースト層及び第二のペースト層からなるペースト層から同じ高さであってもよい。
第一のペースト層と第二のペースト層とが同じ高さである場合、第一のペースト層形成工程と第二のペースト層形成工程の順序は限定されず、いずれの工程を先に行ってもよい。
また、図1及び図3に示す実施形態では、ペースト層13、第一のペースト層21、210、第二のペースト層22、220は、いずれも、ペースト層の厚さがほぼ均一(ペースト層表面が略平滑)となっているが、この実施形態に限定されず、ペースト層の厚さが不均一となっていてもよい。
(第一のペースト及び第二のペースト)
第一のペーストは、半導体粒子、加熱消滅性粒子、バインダ、及び溶媒を含有するものである。第一のペーストを塗布して加熱処理(焼成)することにより、半導体粒子が焼結し、加熱消滅性粒子の除去に伴う空孔があらたに形成された多孔質層を形成することができる。
第二のペーストは、半導体粒子、バインダ、及び溶媒を含有し、かつ、加熱消滅性粒子の含有量が前記第一のペーストより少ないか、又は加熱消滅性粒子を含まないものである。
半導体粒子、加熱消滅性粒子、バインダ、溶媒、その他の配合成分は、第一のペースト及び第二のペーストにおいて、同じものを用いてもよく、異なるものを用いてもよい。
・半導体粒子について
半導体粒子の一次粒子径(体積平均粒子径を示す、以下同じ)は、多孔質層の表面積を大きくするためにできるだけ小さいことが好ましく、3〜500nmであることが好ましく、3〜200nmであることがより好ましい。半導体粒子の全体に対して、一次粒子径3〜500nmである半導体粒子の含有量は60質量%以上であることが特に好ましい。一次粒子径が3nm以上であると、半導体粒子間の相互作用が小さくなり、半導体粒子の分散が高まる。また、半導体粒子の調製が容易になって安価になる。一次粒子径が500nm以下であると、形成される多孔質層の表面積がより一層大きくなる。
本発明において「半導体粒子の一次粒子径」は、動的光散乱式粒度分布計を用いて測定される体積平均粒子径を示す。これ以外にも、水銀ポロシメーター;BET法、走査電子顕微鏡(SEM)観察などの方法を用いることができる。
半導体粒子の形状は、特に限定されず、球状又はその類似形、正八面体状又はその類似形、星状又はその類似形、針状、板状、繊維状等が挙げられる。
色素増感太陽電池において、多孔質層は、その表面積が大きいほど色素が効率よく吸着する。そのため、半導体粒子の表面積もできるだけ大きいことが好ましい。
半導体粒子の材料としては、TiO、MgO、ZnO、SnO、WO、Nb、TiSrOなどの酸化金属、又はこれらの酸化金属にNもしくはSなどをドープしたもの等が挙げられる。
なかでも、半導体粒子としては、多孔質構造を高精度に制御する観点から、TiO粒子(酸化チタン粒子)を用いることが好ましい。
・・酸化チタン粒子について
TiOの結晶型として、ルチル構造、アナターゼ型、ブルッカイト型の3種類が知られている。
アナターゼ型酸化チタンは、ルチル構造の酸化チタンよりも反応活性が高く、色素からの電子注入が効率的に起こる。そのため、色素増感太陽電池用途においては、アナターゼ型酸化チタン粒子を用いることが好ましい。
また、色素増感太陽電池の電極における光散乱効果と光閉じ込め効果をより一層高める観点からは、TiOの結晶型は、ルチル構造であることが好ましい。ルチル構造の酸化チタンは屈折率が高いため、光散乱効果と光閉じ込め効果が良好に得られ、多孔質層における光利用効率を高めることができる。その結果、色素増感太陽電池における光電変換効率が高まる。さらに、長繊維状の酸化チタンを用いて、光散乱効果の向上と電子移動の効率化との双方を、より一層高くすることも可能である。
酸化チタン粒子は、特に、球形又は正八面体状の類似形のものの入手が容易である。
酸化チタン粒子においては、一次粒子径(体積平均粒子径)3〜5nmの小さな酸化チタン粒子のみでは粒子同士が密に合着し、多孔質層の表面積が充分に大きくならないことがある。そのため、主として一次粒子径5〜50nmの酸化チタン粒子を用いること、一次粒子径3〜50nmの酸化チタン粒子と一次粒子径50〜500nmの酸化チタン粒子との2種を混合して用いること、又は、3種以上の異なる一次粒子径の酸化チタン粒子を混合して用いることが好ましい。
酸化チタン粒子の市販品としては、たとえば日本アエロジル社製のP25とP90が挙げられる。また、繊維状の酸化チタン粒子は、特開2005−162584号公報に記載された方法等により調製でき、市販品を用いることもできる。
酸化チタン粒子は、四塩化チタン、チタンアルコキシド等で表面処理されていてもよい。また、酸化チタン含有ペースト層を、四塩化チタン、チタンアルコキシド等で表面処理してもよい。これらの表面処理により、加熱処理時に、酸化チタン粒子同士の結合が促進され、多孔質層の表面積を大きくすることができる。
各ペースト中、半導体粒子は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
・加熱消滅性粒子について
色素増感太陽電池の電極においては、表面積を高めて色素吸着量や電子移動反応機会を増加させたり、光散乱による光の効率的利用を高めたりするために多孔質層が利用されている。多孔質層を形成する方法としては、一般的に、半導体粒子、バインダ、及び溶媒を含有するペーストを加熱処理(焼成)してバインダ、溶媒を消失する方法がある。本発明における第一のペーストには、半導体粒子、バインダ、及び溶媒に加えて、加熱消滅性粒子がさらに配合されている。また、第一のペーストより少ない含有量で加熱消滅性粒子が配合されたペーストが第二のペーストとして用いられる場合がある。これにより、加熱消滅性粒子の除去に伴う空孔があらたに形成された多孔質層が得られる。
加熱消滅性粒子は、焼成温度領域において残渣として残り難く、焼成後に充分に消失する必要がある。電極材料である多孔質層の表面に加熱消滅性粒子が残渣として残留すると、色素の吸着面積が低下したり、残渣が光及び電子のトラップサイトとなったり、電解質溶液又はゲル及び固体電解質との電子授受の妨げとなったりする可能性があるためである。
本発明において「加熱消滅性」とは、常圧下、空気中において500℃で30分間加熱処理することにより、粒子の一部又は全部が消滅する特性を意味する。
加熱消滅性粒子は、常圧下、空気中において500℃で30分間加熱処理することにより、粒子全体の99質量%以上が消滅するものが好ましく、99.5質量%以上が消滅するものがより好ましく、99.9質量%以上が消滅するものがさらに好ましい。
これに対応し、ペースト層を500℃で30分間加熱処理して多孔質層を形成した際、該多孔質層中に残存する残炭素量(質量基準)は1000ppm未満であることが好ましい。
前記の残炭素量は、X線光電子分光(XPS)にて多孔質層の測定を行い、該多孔質層の原子%から質量換算して求められる値をいう。
前記の残炭素量を求める別の方法としては、熱重量分析にて、さらに高温(たとえば1000℃)まで測定して、質量減少分から残炭素量を算出する方法も知られている。しかし、この方法では、多孔質層の表面の吸着水の影響などを受けるおそれがある。従って、残炭素量の測定方法としては、XPSによる方法が好ましい。このXPSによる方法では、多孔質層の表面の残炭素量の測定のみ可能であるが、測定対象が多孔質構造を有する多孔質層であり、該多孔質層は充分な空隙を有することから、その表面と内部とにおける残炭素量の差はほとんど無いと考えられる。
加熱消滅性粒子の粒子径(体積平均粒子径を示す、以下同じ)は、10nm以上、1μm以下であることが好ましく、下限値は20nm以上がより好ましく、さらに好ましくは30nm以上である。上限値は500nm以下がより好ましく、さらに好ましくは300nm以下である。
加熱消滅性粒子の粒子径が下限値以上であると、多孔質層における空孔が充分に大きくなり、電解質溶液との接触による反応場の提供、及び光散乱による光の利用効率向上の効果をより一層得ることができる。
一方、加熱消滅性粒子の粒子径が上限値以下であると、空孔が大きくなりすぎず、多孔質層の表面積がより一層大きくなる。その結果、多孔質層における吸着色素数が増加し、色素増感太陽電池における発電効率が高くなる。さらに、大きすぎる空孔が形成され難くなるため、多孔質層含有積層体(電極)自体の強度を高くすることができる。
加熱消滅性粒子の粒子径は、該加熱消滅性粒子を調製する際の、架橋剤と重合性不飽和基を有する単量体とを含む有機相の粘度、界面活性剤又は分散剤等の配合量、並びに、分散装置の種類又はその回転数などにより制御可能である。
第一のペーストにおいて、加熱消滅性粒子の粒子径は、電荷移送を容易にするため、1〜1000nmであることが好ましく、10〜100nmであることがより好ましい。
第二のペーストに加熱消滅性粒子を配合する場合、加熱消滅性粒子の粒子径は、第一のペーストと同様に、電荷移送を容易にするため、1〜10000nmであることが好ましく、1〜2000nmであることがより好ましい。
本発明において「加熱消滅性粒子の粒子径」は、動的光散乱式粒度分布計を用いて測定される体積平均粒子径を示す。
加熱消滅性粒子をペーストに配合する際、異なる粒子径の2種以上の加熱消滅性粒子を併用してもよい。この場合、複数の加熱消滅性粒子の粒子径は、その配合比率によって適宜変更することができ、必ずしも上記の好適な粒子径の範囲内である必要はなく、大粒子径の粒子を少量用いたり、小粒子径の粒子を比較的多量用いたりしてもよい。
加熱消滅性粒子の形状は、特に限定されず、球状、棒状、星状等が挙げられる。
たとえば色素増感太陽電池においては、電解質の溶液粘度に合わせて、加熱消滅性粒子の粒子径、形状、又はペースト中の含有量を適宜決定すればよい。これにより、多孔質中に電解質の溶液が充分に行き渡るように、又は、焼成の際に発生する内部応力を緩和して、多孔質層−基材界面での剥離もしくは電極表面の割れの発生を防止するようにできる。その一例として、電解質の溶液粘度が高い場合、粒子径の大きい加熱消滅性粒子を選択し、多孔質層中に大きめの空孔を形成することが好ましい。
加熱消滅性粒子の材料としては、有機高分子、炭素材料などが挙げられる。
有機高分子としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
炭素材料としては、グラファイト等が挙げられる。
加熱消滅性粒子を含有するペーストを調製する際、加熱消滅性粒子は、半導体粒子等と激しく混合される可能性がある。かかる混合によって、加熱消滅性粒子が膨潤したり、溶解したり、又は破砕されたりすると、適度な空隙構造を有する多孔質層の形成が困難になってしまう。また、焼成の際、比較的低温の段階で多孔質層の形状が崩れたり、多孔質層が溶融したりして、適度な空隙構造を有する多孔質層の形成が困難になるおそれがある。そのため、加熱消滅性粒子としては、ペーストを調製する際に付与される剪断応力で粒子形状が崩れにくく、さらに、焼成の際に比較的低温の段階で粒子形状が崩れにくいものが好ましい。
このような観点で本発明者らは検討を重ねた結果、架橋構造を有する材料からなる粒子が、ペーストを調製する際に付与される剪断応力に対する耐久性が高いことを見出した。
すなわち、加熱消滅性粒子としては、架橋構造を有する材料からなる粒子が好ましく、架橋剤と重合性不飽和基を有する単量体とが反応したものがより好ましい。なかでも、加熱消滅性粒子は、オキシプロピレンユニットとオキシテトラメチレンユニットとから選ばれる少なくとも一種のユニット並びに2つ以上の重合性不飽和基を有する架橋剤と、重合性不飽和基を有する単量体とが反応したものが特に好ましい。
・・重合性不飽和基を有する単量体について
単量体における重合性不飽和基は、解重合特性に優れていることから、スチレン性不飽和基、(メタ)アクリレート性不飽和基であることが好ましい。
なお、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
なかでも、単量体における重合性不飽和基は、(メタ)アクリロイル基であることが好ましく、メタクリロイル基であることがより好ましい。
重合性不飽和基を有する単量体としては、解重合反応が比較的容易に起こることから、スチレン類、(メタ)アクリレート類が挙げられる。
スチレン類としては、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、4−tert−ブチルスチレン等が挙げられる。
(メタ)アクリレート類としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記(メタ)アクリレート類を用いた場合、前記スチレン類を用いた場合と比較して、解重合と共にランダム結合の切断が発生し難くなり、焼成後の多孔質層において残渣が生じ難くなる。また、側鎖の炭素数が4以下である(メタ)アクリレート類を用いた場合には、解重合以外の反応が進行し難くなり、焼成時に加熱消滅性粒子をより一層効果的に消滅させることが可能になる。
重合性不飽和基を有する単量体は、アクリレートよりもメタクリレートの方が解重合が容易に起こることから、メタクリレート類であることが好ましい。そのなかでも、解重合が容易に起こり、かつ、解重合以外の反応が進行し難いことから、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレートであることがより好ましい。
・・架橋剤について
ここでの架橋剤は、オキシプロピレンユニットとオキシテトラメチレンユニットとから選ばれる少なくとも一種のユニット、並びに、2つ以上の重合性不飽和基を有する。
オキシプロピレンユニットとオキシテトラメチレンユニットとから選ばれる少なくとも一種のユニットを有することにより、これらのユニットを有さない架橋剤を使用した場合と比べて、加熱消滅性粒子の熱分解効率が高くなる。
この架橋剤における重合性不飽和基は、解重合特性に優れていることから、スチレン性不飽和基又は(メタ)アクリレート性不飽和基であることが好ましく、(メタ)アクリレート性不飽和基であることがより好ましく、(メタ)アクリロイル基であることがさらに好ましく、メタクリロイル基であることが特に好ましい。
ただし、この架橋剤は、オキシプロピレンユニットとオキシテトラメチレンユニット以外のユニットを有していてもよい。また、この架橋剤は、焼成により加熱消滅性粒子が効率的に消失するように、重合性不飽和基の間に、オキシアルキレンユニットが結合していることが好ましい。該オキシアルキレンユニットとしては、オキシエチレンユニット、オキシプロピレンユニット、オキシテトラメチレンユニット等が挙げられる。
架橋剤がオキシプロピレンユニットを有する場合、オキシプロピレンユニット並びに2つ以上の重合性不飽和基を有する架橋剤としては、下記式(1)で表されるものが好適なものとして挙げられる。
式(1):
(Rv1)−(CH(CH)CHO)−(CHCH(CH)O)−(Rv2)
上記式(1)中、Rv1及びRv2は、それぞれ独立に、重合性不飽和基を有する基であり、n+mは1〜20の整数である。
式(1)で表される架橋剤において、(CH(CH)CHO)のユニットと(CHCH(CH)O)のユニットとは、ブロック状に存在してもよくランダム状に存在してもよい。
上記式(1)で表されるもののなかでも、式(1)におけるRv1が下記式(11)で表される基であり、かつ、Rv2が下記式(12)で表される基であるものが好ましい。
上記式(11)中、R11は、メチル基又は水素原子を示す。
上記式(12)中、R12は、メチル基又は水素原子を示す。
架橋剤がオキシテトラメチレンユニットを有する場合、オキシテトラメチレンユニット並びに2つ以上の重合性不飽和基を有する架橋剤としては、下記式(2)で表されるものが好適なものとして挙げられる。
式(2):
(Rv3)−(CHCHCHCHO)−(Rv4)
上記式(2)中、Rv3及びRv4は、それぞれ独立に、重合性不飽和基を有する基であり、pは1〜20の整数である。
上記式(2)で表されるもののなかでも、式(2)におけるRv3が下記式(21)で表される基であり、かつ、Rv4が下記式(22)で表される基であるものが好ましい。
上記式(21)中、R21は、メチル基又は水素原子を示す。
上記式(22)中、R22は、メチル基又は水素原子を示す。
上記の式(11)及び式(21)は、(メタ)アクリロイル基を有する基である。上記式(12)及び式(22)は、(メタ)アクリロイル基である。
解重合性に優れているので、上記式(11)、(12)、(21)及び(22)中、R11、R12、R21及びR22は、それぞれ、メチル基であることが好ましい。
オキシプロピレンユニット並びに2つ以上の重合性不飽和基を有する架橋剤は、市販されており、容易に入手可能である。
この架橋剤の市販品として具体的には、日油社製のブレンマーPDP−400N、PDP−700、ADP−400(以上、商品名);新中村化学社製のPG9、APG−200、APG−400(以上、商品名)等が挙げられる。これらの市販品は、ポリオキシプロピレンジ(メタ)アクリレートである。
複数の(メタ)アクリロイル基を有する基をつなぐ結合部分にオキシプロピレンユニットを有する架橋剤の市販品としては、日油社製のブレンマーPDPT、ブレマーPDC、ブレンマーPDBP−600、ブレンマーPDBPE、ブレンマーADPT、ブレンマーADC、ブレンマーADBP(以上、商品名);新中村化学社製のNPG、1206PE、A−BPP−3(以上、商品名)等が挙げられ、これらの市販品も用いることができる。
オキシプロピレンユニットを有する架橋剤における(メタ)アクリロイル基などの重合性不飽和基の数は3つ以上であってもよい。
オキシプロピレンユニット並びに2つ以上の重合性不飽和基を有する架橋剤は、市販試薬を原料として容易に合成することも可能である。この架橋剤は、市販のプロピレングリコール類に対して、(メタ)アクリル酸クロリドとアミン触媒とを反応させることにより得ることができる。
オキシテトラメチレンユニット並びに2つ以上の重合性不飽和基を有する架橋剤は、市販されており、容易に入手可能である。
この架橋剤の市販品として具体的には、日油社製のブレンマーPDT−650、ブレンマーADT−250(以上、商品名);新中村化学社製のA−PTMG−65(商品名)等が挙げられる。これらの市販品は、ポリオキシテトラメチレンジ(メタ)アクリレートである。
複数の(メタ)アクリロイル基を有する基をつなぐ結合部分にオキシテトラメチレンユニットを有する架橋剤の市販品としては、日油社製ブレンマーADPT、ブレンマーADET(以上、商品名)等が挙げられ、これらの市販品も用いることができる。
オキシテトラメチレンユニットを有する架橋剤における(メタ)アクリロイル基などの重合性不飽和基の数は3つ以上であってもよい。
オキシテトラメチレンユニット並びに2つ以上の重合性不飽和基を有する架橋剤は、市販試薬を原料として容易に合成することも可能である。この架橋剤は、市販の(ポリ)テトラメチレングリコール類に対して、(メタ)アクリル酸クロリドとアミン触媒とを反応させることにより得ることができる。
焼成後に加熱消滅性粒子を効率的に消滅させる観点から、前記の架橋剤及び重合性不飽和基を有する単量体の種類と、架橋剤と重合性不飽和基を有する単量体との配合比率を適宜選択することが好ましい。
前記の重合性不飽和基を有する単量体と、架橋剤との好ましい組み合わせとしては、重合性不飽和基を有する単量体としてメタクリレート類を用い、オキシアルキレンユニットとしてオキシプロピレンユニットのみと2つ以上の重合性不飽和基として(メタ)アクリロイル基を有する基とを有する架橋剤を用いる組み合わせが挙げられる。
加熱消滅性粒子は、架橋剤と重合性不飽和基を有する単量体とが質量比で1:99〜50:50で反応したものが好ましく、質量比で5:95〜20:80で反応したものがより好ましい。架橋剤の比率が低すぎると、加熱消滅性粒子の形状安定性が不充分となる傾向がある。架橋剤の比率が高すぎると、反応が困難となり、また、得られる加熱消滅性粒子が硬くなりすぎて破壊しやすくなる。前記質量比で架橋剤と重合性不飽和基を有する単量体とを反応させると、これらの種類によらず、所望とする特性を有する加熱消滅性粒子を容易に得ることができる。
上述した架橋剤と重合性不飽和基を有する単量体とが反応した加熱消滅性粒子は、架橋構造を有し、高い熱分解性を有する。
(メタ)アクリレート類を用いて得られた架橋していない有機物粒子、又はスチレン類を用いて得られた架橋していない有機物粒子は、いずれも、分解温度よりも熱変形温度が低いため、高温で流動し、粒子が変形する。そのため、多孔質層にあらたに意図した形状の空孔を形成することは困難である。また、ペースト中で前記有機物粒子を溶媒と混合した場合、該有機物粒子は膨潤又は溶解しやすく、所望とする空孔を形成することは困難である。
これに対して、架橋剤と重合性不飽和基を有する単量体とが反応した加熱消滅性粒子は、高温でも流動が抑制され、分解に至るまで粒子の形状が変化し難い。さらに、この加熱消滅性粒子を溶媒と混合した場合でも、該加熱消滅性粒子は膨潤し難い。そのため、多孔質層に所望とする空孔を形成することが可能である。
なお、仮に、従来用いられている(メタ)アクリレート類又はスチレン類を、任意の架橋性材料を用いて架橋させた場合、得られる有機物粒子は、高温での流動が抑制され、ペースト中での安定性が良好となるものの、有機物粒子の熱分解性が低下し、多孔質層の表面において炭素残渣が高くなってしまう。
架橋剤と重合性不飽和基を有する単量体とが反応した加熱消滅性粒子においては、オキシプロピレンユニットとオキシテトラメチレンユニットとから選ばれる少なくとも一種のユニットを有する架橋剤の使用により、高い耐久性と、良好な安定性と、高い熱分解性とを兼ね備える。
オキシプロピレンユニット又はオキシテトラメチレンユニットは、分解しやすい架橋基としての役割を単に果たすだけではなく、加熱消滅性粒子全体の分解性能の向上にも寄与する。オキシプロピレンユニットとオキシテトラメチレンユニットは、(メタ)アクリレート類又はスチレン類に由来するユニットと比較して、分子切断温度が低い。解重合性高分子、特にメタアクリレート類を用いた高分子は、一部分解すると、その分解部分から連鎖的に解重合が進行する傾向がある。これは「ジッパー効果」と呼ばれ、よく知られている現象である。
該架橋剤におけるオキシプロピレンユニットは、(メタ)アクリレート類に由来するユニットの繰返し構造の主鎖結合よりも比較的切れやすい。このため、オキシプロピレンユニットは、低温にてジッパー効果が発現する起点となり得る。これにより、オキシプロピレンユニットを有する架橋剤を反応させてなる加熱消滅性粒子を使用した場合、(メタ)アクリレート類のホモポリマーにより形成された有機物粒子を使用した場合と比較して、解重合(すなわち分解)がより一層効果的に進行する。
該架橋剤は、加熱消滅性粒子の強度を高め、熱変形及び膨潤を防止する役割を有し、かつ、熱分解性を促進する役割を有する。
該架橋剤と重合性不飽和基を有する単量体とが反応した加熱消滅性粒子は、色素増感太陽電池用電極材料である多孔質層を形成するためのペーストに配合する成分として特に優位である。この加熱消滅性粒子を含有するペーストは、光電変換効率が高く、かつ、安価である色素増感太陽電池の製造に大きく寄与する。
また、該架橋剤と重合性不飽和基を有する単量体とが反応した加熱消滅性粒子の有用な点の一つとして、ペースト中における膨潤の低さがある。
ペーストに含まれる溶媒は、特に限定されないが、最も一般的な溶媒としてテルピネオールが挙げられる。テルピネオールに対する加熱消滅性粒子の膨潤における粒子径変化率は20%以下であることが好ましい。
架橋剤と重合性不飽和基を有する単量体とが反応した加熱消滅性粒子においては、特定の架橋構造が導入されることから、テルピネオールに対する前記粒子径変化率を20%以下にすることができる。
テルピネオールに対する加熱消滅性粒子の膨潤における粒子径変化率は、加熱消滅性粒子をテルピネオールに23℃で24時間浸漬して、浸漬前の加熱消滅性粒子の粒子径と、浸漬後の加熱消滅性粒子の粒子径とから求められる。
粒子径変化率を求める際、加熱消滅性粒子の粒子径は、膨潤前後の加熱消滅性粒子を、顕微鏡などで直接観察することにより測定できる。粒子径変化率は、簡易的には、テルピネオールに加熱消滅性粒子を浸漬させて、浸漬直後と、浸漬から24時間後との体積変化から求めることができる。
加熱消滅性粒子の膨潤を低減する観点から、前記の架橋剤と重合性不飽和基を有する単量体との配合比率は、質量比で、1:99〜50:50であることが好ましく、5:95〜20:80であることがより好ましい。架橋剤の比率が低くすぎると、加熱消滅性粒子が膨潤しやすくなり、多孔質層に安定的に空孔を形成し難くなる。架橋剤の比率が高すぎると、反応が困難となり、また、加熱消滅性粒子が硬くなりすぎて破壊しやすくなる。前記質量比で架橋剤と重合性不飽和基を有する単量体とを反応させると、これらの種類によらず、所望とする特性を有する加熱消滅性粒子を容易に得ることができる。
加熱消滅性粒子は、酸素濃度1容量%未満の不活性ガス中においても、500℃で30分間加熱処理することにより、99質量%以上が消失するものが好ましい。
この物性をより一層効果的に発現するために、上記の重合性不飽和基を有する単量体として、側鎖の炭素数が4以下であるメタクリレート類を用い、上記架橋剤として、オキシプロピレンユニットとオキシテトラメチレンユニットとから選ばれる少なくとも一種のユニットが(メタ)アクリロイル基を有する基の間の結合部分に存在するものを用いることが好ましい。このような重合性不飽和基を有する単量体と架橋剤との組み合わせにより、解重合による分解がより一層起こりやすくなる。
これに対し、従来のスチレン類を用いた有機物粒子では、分解時に酸化が生じて、不活性ガス中では充分に分解しない。その結果として、該有機物粒子を含有するペーストを用いて、色素増感太陽電池の電極を形成すると、該電極に不純物(炭素残渣)が多く含まれる。従って、従来のスチレン類を用いた有機物粒子を含有するペーストは、色素増感太陽電池の電極を形成する用途に適さない。
また、(メタ)アクリレート類を用いた有機物粒子は、オキシプロピレンユニット又はオキシテトラメチレンユニットのような分解の起点となり得る構造部分を有さない。このため、(メタ)アクリレート類を用いた有機物粒子は充分に分解できない。その結果として、該有機物粒子を含有するペーストを用いると、所望とする色素増感太陽電池の電極は得られない。
上記の架橋剤と重合性不飽和基を有する単量体とが反応した加熱消滅性粒子は、色素増感太陽電池用電極材料である多孔質層を形成するためのペーストに配合する成分として、極めて有用である。
上記の架橋剤と重合性不飽和基を有する単量体とを反応させて加熱消滅性粒子を調製する方法は、特に限定されず、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法などの公知の方法を用いることができる。
かかる加熱消滅性粒子を得る方法の好ましい一例としては、上記の架橋剤と重合性不飽和基を有する単量体とを混合し、水などの溶媒中にて懸濁重合する方法が挙げられる。
懸濁重合の一般的な方法を以下に例示する。ただし、加熱消滅性粒子の合成方法はこの方法に限定されない。
上記の架橋剤と重合性不飽和基を有する単量体とを混合し、そこに重合開始剤をさらに添加して混合する。上記の架橋剤と重合性不飽和基を有する単量体とを重合させるために、ラジカル重合法が好ましく用いられる。ラジカル重合法に代えて、イオン重合法等を用いてもよい。
前記重合開始剤としては、特に限定されず、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過酸化ベンゾイル(BPO)等が挙げられる。これらの重合開始剤は、一般的なラジカル発生源である。
重合の際には、上記の架橋剤と、上記の重合性不飽和基を有する単量体と、上記の重合開始剤と、必要に応じて有機溶媒の混合物とを、水中に分散させて、懸濁した分散液を得る。重合の際、界面活性剤又は分散安定化剤等を用いてもよい。
上記分散液を得るために、公知の分散装置を用いることができる。該分散装置としては、ディスパー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等を用いることができる。
上記分散液を必要に応じて脱酸素し、加熱することにより、架橋剤と重合性不飽和基を有する単量体とが反応した加熱消滅性粒子が得られる。加熱消滅性粒子を取り出すために、必要に応じて、洗浄工程、乾燥工程を設けてもよい。
各ペースト中、加熱消滅性粒子は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
・バインダについて
バインダは、ペーストの粘度調整、半導体粒子と加熱消滅性粒子の分散安定化、多孔質構造の形成などを目的として用いられる。
バインダは、上記加熱消滅性粒子と同様、加熱処理(焼成)により消失する特性を有するものが好ましい。加えて、溶媒(好ましくは極性溶媒)に溶解しやすい特性を有していることが好ましい。
バインダとしては、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールアセタール変性物(ポリビニルブチラールなど)、ゼラチン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、デキストリン等が挙げられる。なかでも、エチルセルロースは、種々のペースト、インク類に使用され、入手が容易であることから好ましい。
エチルセルロースの市販品としては、米国ダウケミカルカンパニーから種々のグレードで販売されている「エトセル(登録商標)」等が挙げられ、該グレード(粘度)で7〜100cPのエチルセルロースが好ましく、10〜45cPのエチルセルロースがより好ましい。
「エチルセルロースのグレード(粘度)」は、トルエン:エタノール=80:20(質量比)の混合溶媒に溶解した濃度5質量%の溶液の粘度にて表される。エチルセルロースのグレードは、半導体粒子の一次粒子径又はその配合量、加熱消滅性粒子の粒子径又はその配合量、溶媒の種類などにより適宜選択される。
各ペースト中、バインダは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
・溶媒について
溶媒は、適度な極性と、適度な沸点及び蒸気圧とを有するものが好ましい。
溶媒の極性は、半導体粒子の分散性に影響する。また、ペーストを保存する際、ペースト中の各成分の濃度が大きく変化しないようにするため、溶媒は、ある程度沸点が高く、飽和蒸気圧が低いものが好ましい。加えて、焼成によって蒸発するように、ペーストの焼成温度(たとえば酸化チタン粒子を用いた場合では500℃)以下の沸点を有し、かつ、蒸発前に分解等により残渣を形成しない溶媒が好ましい。
溶媒としては、アルコール類、アミド類、スルホキシド類、アミン類、環状エーテル類、グリコールエーテル類、エステル類、天然アルコール類、水等が挙げられる。
アルコール類としては、ブチルアルコール、ベンジルアルコール、ブチルカルビトール等が挙げられる。アミド類としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。スルホキシド類としては、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。アミン類としては、n−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。環状エーテル類としては、ジオキサン等が挙げられる。グリコールエーテル類としては、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ等が挙げられる。エステル類としては、ジブチルフタレート等が挙げられる。天然アルコール類としては、テルピネオール等が挙げられる。
これらのなかでも、酸化金属を材料とする半導体粒子は酸素原子を有しているため、溶媒としては、半導体粒子と水素結合の可能なアルコール類(合成、天然)、又はアミド類が好ましく、天然アルコール類がより好ましく、ペーストの溶媒として実績があり、本発明の目的に適したものとしてテルピネオールが特に好ましい。テルピネオールは、市販されており、安価で、かつ、大量に入手できる。
各ペースト中、溶媒は、一種を単独で用いてもよく、二種以上の混合溶媒を用いてもよい。
・その他の成分について
第一のペースト及び第二のペーストは、必要に応じて、半導体粒子、加熱消滅性粒子、バインダ、及び溶媒以外の添加剤を含有してもよい。
かかる添加剤としては、界面活性剤などの分散剤、分散安定剤、消泡剤、酸化防止剤、着色剤、粘度調整剤等が挙げられる。なかでも、半導体粒子を含有するペーストを安定化させるためには、分散剤をさらに含有することが好ましい。
塩などの強イオン性の分散剤は、半導体粒子へのアルカリ金属等の付着による性能変化を引き起こす可能性が高い。このため、分散剤としては、非アルカリ金属性のものが好ましい。非アルカリ金属性の分散剤としては、ノニオン性のものであってもよくイオン性のものであってもよい。
分散剤としては、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類等が挙げられる。
分散剤は、半導体粒子、加熱消滅性粒子、又は添加剤の種類もしくは濃度により適宜選択される。高い分散性を得る観点から、分散剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸類であることが好ましい。
[第一のペーストにおける各成分の含有量]
第一のペースト中、半導体粒子の含有量は少ないほど電荷移送が容易になり、多いほど電荷移送が低下する。かかる傾向は、電解質の粘度が高くなるほど顕著になる。半導体粒子の含有量としては、1〜50質量%であることが好ましく、3〜10質量%であることがより好ましい。
第一のペースト中、加熱消滅性粒子の含有量は少ないほど電荷移送が低下し、多いほど電荷移送が向上する。かかる傾向は、電解質の粘度が高くなるほど顕著になる。加熱消滅性粒子の含有量としては、1〜97質量%であることが好ましく、50〜95質量%であることがより好ましい。
第一のペースト中、バインダの含有量は、1〜40質量%であることが好ましく、1〜30質量%であることがより好ましい。
バインダの含有量が下限値未満であると、ペーストの粘度が高くなる(半導体粒子等の含有量が多くなる)ために基材上への塗布が困難になる。一方、バインダの含有量が上限値を超えると、(バインダ自身の粘度により)ペーストの粘度が高くなり、基材上への塗布が困難になる。
第一のペースト中、溶媒の含有量は、1〜89質量%であることが好ましく、5〜85質量%であることがより好ましい。
溶媒の含有量が下限値以上であると、適度な流動性を有するペーストが得られ、ペーストを基材上に塗布することが容易になる。一方、溶媒の含有量が上限値以下であると、ペーストの粘度が低くなりすぎず、適度な膜厚にペーストを容易に塗布できる。また、ペーストの分散安定性がより高まる。
第一のペーストが分散剤を含有する場合、分散剤の含有量は、半導体粒子、加熱消滅性粒子、バインダ及び溶媒の濃度、又はそれらの種類により適宜決定される。半導体粒子として酸化チタン粒子を用いた場合、好ましい範囲の一例を挙げると、第一のペースト中、分散剤の含有量は、酸化チタン粒子100質量部に対して1〜30質量部である。
[第二のペーストにおける各成分の含有量]
第二のペースト中、半導体粒子の含有量は、5〜40質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。
半導体粒子の含有量が下限値以上であると、適度な膜厚にペーストを塗布でき、また、粘度調整のためにバインダ等を過剰に加える必要がなくなる。一方、半導体粒子の含有量が上限値以下であると、適度な粘度のペーストが得られ、ペーストの塗布が容易になる。また、ペースト塗布後の膜厚が厚くなりすぎない。半導体粒子の含有量が10〜30質量%であると、ペースト中の半導体粒子濃度の調整が比較的容易になり、また、適度な厚みの多孔質層を容易に形成できる。
第二のペーストが加熱消滅性粒子を含有する場合、第二のペースト中、加熱消滅性粒子の含有量は、3〜60質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。
加熱消滅性粒子の含有量が下限値以上であると、多孔質層に適度な空隙構造を形成でき、多孔質層の表面積を充分に大きくすることができる。一方、加熱消滅性粒子の含有量が上限値以下であると、多孔質層の多孔度が充分に高く保たれ、電極としての電導性が高くなる。また、多孔質層の強度がより高くなる。加熱消滅性粒子の含有量が10〜40質量%であると、加熱消滅性粒子の配合効果が顕著に高くなり、焼成後に得られる多孔質層の表面積が大きくなり、より一層好ましい多孔質構造となり、光電変換効率がより一層高い色素増感太陽電池を提供することが可能になる。
第二のペースト中、バインダの含有量は、1〜40質量%であることが好ましく、3〜30質量%であることがより好ましい。
バインダの含有量が下限値以上であると、ペーストの分散安定性がより一層高くなる。一方、バインダの含有量が上限値以下であると、ペーストの粘度が高くなりすぎず、ペーストを基材に容易に塗布できる。
第二のペースト中、溶媒の含有量は、10〜89質量%であることが好ましく、30〜85質量%であることがより好ましい。
溶媒の含有量が下限値以上であると、適度な流動性を有するペーストが得られ、ペーストを基材上に塗布することが容易になる。一方、溶媒の含有量が上限値以下であると、ペーストの粘度が低くなりすぎず、適度な膜厚にペーストを容易に塗布できる。また、ペーストの分散安定性がより高まる。
第二のペーストが分散剤を含有する場合、分散剤の含有量は、半導体粒子、加熱消滅性粒子、バインダ及び溶媒の濃度、又はそれらの種類により適宜決定される。半導体粒子として酸化チタン粒子を用いた場合、好ましい範囲の一例を挙げると、第二のペースト中、分散剤の含有量は、酸化チタン粒子100質量部に対して1〜30質量部である。
ペーストを調製する際、配合成分の混合順序は特に限定されず、半導体粒子と加熱消滅性粒子が良好な分散状態となるように適宜混合すればよい。また、混合時に、加熱、冷却、加圧又は減圧を行ってもよい。
配合成分の混合には、分散装置を用いることが好ましい。分散装置としては、ボールミル、ビーズミル、ブレンダーミル、超音波ミル、ペイントシェイカー、ホモジナイザー、ディスパー、撹拌羽根式ミキサー、3本ロール、ヘンシェルミキサー、自転公転型ミキサー等の公知のものを用いることができる。
半導体粒子を含有するペーストは、たとえば以下のようにして得ることができる。
半導体粒子と加熱消滅性粒子を、低粘度及び低沸点である溶媒(たとえばエタノール)に入れ、自転公転型ミキサー又は撹拌羽根式ミキサーにて混合して分散液を得る。
得られた分散液を、ボールミル又はビーズミルにて、より激しくさらに混合し、一次粒子レベルまで分散を行う。その際、分散の程度をレーザー散乱又は回折方式等の粒度分布計にて確認し、分散装置の混合条件、温度及び時間をそれぞれ好ましい条件に設定して分散を行う。
次に、分散液に、バインダ(たとえばエチルセルロース)を溶解させた溶媒(たとえばターピネオール)を入れ、分散装置(たとえば自転公転型ミキサー)にて混合する。
その後、分散液を混合しながら減圧し、低沸点溶媒を除去することにより、分散安定性に優れたペーストが得られる。
ペースト中に分散剤を添加する場合、分散剤は、低粘度及び低沸点である溶媒と半導体粒子との混合時に添加してもよいし、溶媒(たとえばターピネオール)の混合時に添加してもよい。また、低粘度及び低沸点である溶媒に、バインダを予め溶解させてもよいし、低粘度及び低沸点である溶媒を用いずに、半導体粒子を溶媒(たとえばターピネオール)に分散させてもよい。
<色素増感太陽電池>
本発明の色素増感太陽電池は、色素が担持された酸化金属を含む電極と、酸化還元反応可能な化学種を含む電解質と、対極とを備えたものである。
図4に、色素増感太陽電池の一実施形態例を示す。
図4において、色素増感太陽電池100は、色素が担持された多孔質層含有積層体からなる電極1Xと、基材本体41表面に導電膜42を有する対極40と、電極1Xと対極40との間に配置された電解質層50とを備えている。
また、導電膜12と導電膜42とを繋いで、光電変換により生じた電力を外部の回路に供給するためのリード線60が接続されている。
(電極)
図4において、電極1Xは、色素が担持された多孔質層含有積層体からなる。
図4における多孔質層含有積層体は、基材本体11表面に、導電膜12と、多孔質層13fと、多孔質層14fと、第一のペースト層及び第二のペースト層からなるペースト層を加熱処理してなる多孔質層20fと、多孔質層30fとがこの順序で積層したものであり、上記本発明の多孔質層含有積層体の製造方法により得られたものである。
多孔質層13f、多孔質層14f、多孔質層20f、及び多孔質層30fには、色素が担持されている。
多孔質層13f、多孔質層14f、及び多孔質層30fは、半導体粒子、バインダ、及び溶媒を含有する従来公知のペースト、又は第二のペーストと同様のものを用いて形成された各ペースト層が加熱処理(焼成)された層である。
各多孔質層に担持されている色素としては、一般的に色素増感太陽電池に使用されているものを用いることができ、シス−ジ(チオシアナト)−ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)ルテニウム(II)(N3と呼ばれることがある)、シス−ジ(チオシアナト)−ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)ルテニウムのビス−テトラブチルアンモニウム塩(N719と呼ばれることがある)、トリ(チオシアナト)−(4,4’,4”−トリカルボキシ−2,2’,6’,2”−ターピリジン)ルテニウム(ブラックダイと呼ばれることがある)等のルテニウム色素系などが挙げられる。
また、色素としては、クマリン系、ポリエン系、シアニン系、ヘミシアニン系、チオフェン系、インドリン系、キサンテン系、カルバゾール系、ペリレン系、ポルフィリン系、フタロシアニン系、メロシアニン系、カテコール系、スクアリリウム系等の各種有機色素なども挙げられる。
さらに、上記の色素を組み合わせたドナー−アクセプター複合色素を用いることもできる。
(対極)
対極40は、基材本体41表面に導電膜42を有するものからなる。
基材本体41、導電膜42は、上述した基材本体11、導電膜12とそれぞれ同様の材料からなるものが挙げられる。
(電解質層)
電解質層50は、電極1Xと対極40との間に配置され、酸化還元反応可能な化学種を含む電解質からなる。
電解質としては、アセトニトリル、プロピオニトリル等の非水系電解質溶剤;ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウム又はヨウ化ブチルメチルイミダゾリウム等のイオン液体などの液体成分に、ヨウ化リチウム等の支持電解質とヨウ素とが混合された溶液等が挙げられる。また、前記の電解質液は、逆電子移動反応を防止するため、t−ブチルピリジンを含むものでもよい。
また、電解質としては、色素増感太陽電池の耐久性を向上させるため、高分子電解質(メトキシプロピオニトリル(MPN)等)、凝固体又は固体電解質を用いることもできる。
色素増感太陽電池100の原理は次の通りである。基材本体11の多孔質層側とは反対側の面11aから、図4に矢印Yで示すように光が照射される。各多孔質層に担持された色素が光を受けて光励起し、該色素から多孔質層へ電子注入が起こる。該色素はカチオンラジカルの状態となる。このカチオンラジカルは、電解質層50のイオンから電子を受け取る。電子を渡したイオンは、電解質層50中を拡散し、対極40に近づいた際に電子を受け取る。このようにして、導電膜12と導電膜42とを繋ぐリード線60に電流が流れて色素増感太陽電池は動作する。
色素増感太陽電池100は、たとえば以下のようにして製造される。上記本発明の多孔質層含有積層体の製造方法により多孔質層含有積層体を得る。得られた多孔質層含有積層体における多孔質層に色素を吸着させる。
多孔質層に色素を吸着させる方法としては、色素をアルコール等の溶剤に溶かした溶液中に、多孔質層含有積層体を浸漬する方法が挙げられる。浸漬時の溶液温度は10〜90℃であることが好ましく、浸漬時間は30分〜50時間であることが好ましい。浸漬時の溶液温度と浸漬時間との組み合わせは、用いる色素と半導体粒子の組合せに応じて適宜設定すればよい。
浸漬の後、多孔質層含有積層体を上記溶液から取り出し、必要に応じてアルコール洗浄する。このようにして色素を吸着させた多孔質層含有積層体からなる電極1Xを用いて、電極1Xと対極40との間に、多孔質層30fと導電膜42の両方に接するように電解質層50を配置することにより色素増感太陽電池100が得られる。なお、必要に応じて電解質層50はスペーサーにより封止される。
本発明の色素増感太陽電池は、上述した多孔質層含有積層体の製造方法により得られた多孔質層含有積層体を電極として備えることから、高い発電性能が安定に得られる。色素増感太陽電池は、次世代のエネルギー源として期待されているデバイスである。このように、本発明の多孔質層含有積層体の製造方法は、色素増感太陽電池における電極用材料の製造に特に有用である。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
本実施例において使用したペーストを以下に示す。
TiO粒子の一次粒子径、加熱消滅性粒子の粒子径(いずれも体積平均粒子径を示す)は、それぞれ動的光散乱式粒度分布計(日機装社製、「Microtrac UPA−EX150」)を用いて測定した。
酸化チタンペースト(Solanonix社製、TiO HT/SP):TiO粒子(一次粒子径10nm)20質量%、バインダ(成分名:エチルセルロース)8質量%、溶媒(成分名:ターピネオール)72質量%
酸化チタンペースト(Solanonix社製、TiO T/SP):TiO粒子(一次粒子径13nm)20質量%、バインダ(成分名:エチルセルロース)8質量%、溶媒(成分名:ターピネオール)72質量%
酸化チタンペースト(Solanonix社製、TiO D/SP):TiO粒子(一次粒子径13nmのものと一次粒子径60nmのものとの混合物)20質量%、バインダ(成分名:エチルセルロース)8質量%、溶媒(成分名:ターピネオール)72質量%
酸化チタンペースト(Solanonix社製、TiO R/SP):TiO粒子(一次粒子径13nmのものと一次粒子径300nmのものとの混合物)20質量%、バインダ(成分名:エチルセルロース)8質量%、溶媒(成分名:ターピネオール)72質量%
第一のペースト:TiO粒子(一次粒子径40nm)10質量%、バインダ(成分名:エチルセルロース)10質量%、溶媒(成分名:エタノール)10質量%、加熱消滅性粒子(下記の製造例により調製される樹脂粒子(1)、粒子径30nm)70質量%
第二のペースト:TiO粒子(一次粒子径40nm)25質量%、バインダ(成分名:エチルセルロース)10質量%、溶媒(成分名:ターピネオール)50質量%、加熱消滅性粒子(下記の製造例により調製される樹脂粒子(2)、粒子径500nm)15質量%
[加熱消滅性粒子:樹脂粒子(1)の製造例]
架橋剤としてポリオキシプロピレンジメタクリレート(ポリオキシプロピレンユニット数=約7;日油社製、ブレンマーPDP−400)10質量部と、重合性不飽和基を有する単量体としてメタクリル酸イソブチル(IBM)90質量部とを混合したモノマー成分100質量部全量を、アニオン系界面活性剤であるネオゲンS−20F(第一工業製薬社製)1質量%水溶液100質量部中に加え、撹拌分散装置を用いて撹拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、撹拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた2リットルの重合器を用意した。この重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内を窒素雰囲気とした。この重合器内に、水200質量部を入れ、重合器内の温度を70℃まで昇温した。その後、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5質量部と、上記乳化懸濁液のうち20質量部とをシードモノマーとして、重合器内に添加して重合を開始した。15分間熟成させた後、残りの乳化懸濁液を2時間かけて滴下した。さらに2時間熟成させた後、重合器内の温度を室温まで冷却して、樹脂粒子を含むスラリーを得た。得られた樹脂粒子の体積平均粒子径は30nmであった。
得られたスラリーを遠心分離にて水で5回洗浄した。次いで、溶媒を、遠心分離機を用いてエタノールに置換し、樹脂粒子を含むエタノール分散液を得た。
[加熱消滅性粒子:樹脂粒子(2)の製造例]
前記の樹脂粒子(1)の製造例における乳化懸濁液の調製方法と同様にして、乳化懸濁液を得た。
次に、撹拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた2リットルの重合器を用意した。この重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内を窒素雰囲気とした。この重合器内に、水200質量部を入れ、重合器内の温度を70℃まで昇温した。その後、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5質量部と、上記乳化懸濁液のうち3質量部とをシードモノマーとして、重合器内に添加して重合を開始した。30分間熟成させた後、残りの乳化懸濁液を2時間かけて滴下した。さらに2時間熟成させた後、重合器内の温度を室温まで冷却して、樹脂粒子を含むスラリーを得た。得られた樹脂粒子の体積平均粒子径は500nmであった。
得られたスラリーを遠心分離にて水で5回洗浄した。次いで、溶媒を、遠心分離機を用いてエタノールに置換し、樹脂粒子を含むエタノール分散液を得た。
<多孔質層含有積層体の製造>
(実施例1)
ガラス基材表面に設けられた透明導電膜(FTO)の一面全体に、酸化チタンペースト(Solanonix社製、TiO HT/SP)をスクリーン印刷によって塗布し、130℃で3分間加熱して溶媒を除去することにより、厚さ2μmのペースト層(a)を形成した。
次に、ペースト層(a)の一面全体に、酸化チタンペースト(Solanonix社製、TiO T/SP)をスクリーン印刷によって塗布し、130℃で3分間加熱して溶媒を除去することにより、厚さ8μmのペースト層(b)をペースト層(a)上に積層した。
第一のペースト層形成工程:
次に、第一のペーストを、スクリーン印刷板(A)を介して、ペースト層(b)上に部分的に塗布し、130℃で3分間加熱して溶媒を除去することにより、厚さ1μmの第一のペースト層をペースト層(b)上に形成した。
スクリーン印刷板(A)として、30μm×30μmの貫通孔がピッチ30μmで、該スクリーン印刷板全体に設けられているものを用いた。
第二のペースト層形成工程:
次に、第二のペーストを、ペースト層(b)上の前記第一のペーストが塗布されない部分と共に第一のペースト層を完全に覆うように、スクリーン印刷によって塗布し、130℃で3分間加熱して溶媒を除去することにより、厚さ(最も厚いところ)8μmの第二のペースト層をペースト層(b)上に形成した。
焼成工程:
次に、ペースト層(a)と、ペースト層(b)と、第一のペースト層と、第二のペースト層とを、同時に、500℃で30分間加熱処理(焼成)し、バインダと加熱消滅性粒子を除去すると共に酸化チタン粒子を焼結させることにより、多孔質層の積層構造を透明導電膜(FTO)上に形成した。
次に、多孔質層の最表層の一面全体に、酸化チタンペースト(Solanonix社製、TiO R/SP)をスクリーン印刷によって塗布し、130℃で3分間加熱して溶媒を除去することにより、厚さ2μmのペースト層(d)を多孔質層の最表層上に積層した。
その後、調製物の全体を500℃で30分間加熱処理(焼成)することにより、多孔質層含有積層体を得た。該多孔質層含有積層体における多孔質層全体の厚さは約20μmであった。
図5に、実施例1により得られた多孔質層含有積層体における多孔質層の断面像を示す。該断面像から、得られた多孔質層含有積層体において、空孔同士の連結(以下空孔同士が連結したものを「大空孔70」という。)が確認できる。空孔同士の連結により、及び、大空孔70近傍にある微小な空孔が大空孔70同士を連結していることにより、色素増感太陽電池の電極とした際、多孔質層内に電解質が行き渡りやすくなり、また、電荷が移動しやすく、高い発電性能が得られやすくなる。
(比較例1)
実施例1における第一のペースト層形成工程の前まで、実施例1と同じ操作を行うことにより、厚さ8μmのペースト層(b)をペースト層(a)上に積層した。
次に、ペースト層(b)の一面全体に、酸化チタンペースト(Solanonix社製、TiO D/SP)をスクリーン印刷によって塗布し、130℃で3分間加熱して溶媒を除去することにより、厚さ8μmのペースト層(c)をペースト層(b)上に積層した。
次に、ペースト層(c)の一面全体に、酸化チタンペースト(Solanonix社製、TiO R/SP)をスクリーン印刷によって塗布し、130℃で3分間加熱して溶媒を除去することにより、厚さ2μmのペースト層(d)をペースト層(c)上に積層した。
その後、調製物の全体を500℃で30分間加熱処理(焼成)することにより、多孔質層含有積層体を得た。該多孔質層含有積層体における多孔質層全体の厚さは約20μmであった。
[多孔質層含有積層体における剥離又は割れの有無の評価]
各例の多孔質層含有積層体を製造した後、導電膜−多孔質層界面での剥離の有無、多孔質層の割れの有無についてそれぞれ評価した。
実施例1により得られた多孔質層含有積層体では、透明導電膜(FTO)と多孔質層との界面での剥離は認められず、多孔質層の割れについても認められなかった。
これに対して、比較例1により得られた多孔質層含有積層体では、透明導電膜(FTO)と多孔質層との界面での剥離が認められ、多孔質層に割れも認められた。
<色素増感太陽電池の簡易セルの作製>
(実施例2)
色素増感太陽電池用電極の作製:
0.02Mの色素溶液(Solanonix社製;N719、溶剤は体積比でt−BuOH:MeCN=1:1)に、10質量%水酸化テトラブチルアンモニウム(TBA)水溶液を、色素モル当たり0.5当量となるように添加し、溶液(色素+TBAカチオン溶液)を調製した。
前記溶液(色素+TBAカチオン溶液)を室温にて撹拌し、MgSOを加えて乾燥させた後、綿栓ろ過を行った。その後、溶剤(t−BuOH:MeCN=1:1体積比)で希釈し、色素濃度が0.3mMの浸漬用色素溶液を調製した。
該浸漬用色素溶液に、実施例1により得られた多孔質層含有積層体を、30℃にて18時間浸漬して、多孔質酸化チタン層に色素とTBAカチオンを吸着させた。浸漬終了後、多孔質層含有積層体を浸漬用色素溶液からそれぞれ取り出し、溶剤(t−BuOH:MeCN=1:1体積比)で洗浄し、乾燥させて、色素増感太陽電池用電極を作製した。
簡易セルの作製:
得られた色素増感太陽電池用電極の多孔質酸化チタン層の周りに、30μm厚みのシリコンゴムシートをスペーサーとして設置した。ここに、高分子電解質(MPN:メトキシプロピオニトリル)を注入し、その上(多孔質酸化チタン層とは反対側)に、気泡を巻き込まないように、対極として白金コーティング付きガラス基材を、白金層を電解質側に向けて重ね、ダブルクリップにて圧着させ、色素増感太陽電池の簡易セルを得た。有効面積は4mm角とした。
(比較例2)
比較例1により得られた多孔質層含有積層体を用いた以外は、実施例2と同様にして、色素増感太陽電池の簡易セルを得た。有効面積は4mm角とした。
[発電特性の評価]
ソーラーシミュレーター及びIV(電流−電圧)特性測定装置を接続した評価装置を用い、AM(エア・マス)1.5及び100mW/cmにて、各例で得られた簡易セルの光電変換効率をそれぞれ評価した。
図6に、本実施例における発電特性の評価結果を示す。図6のグラフは、実施例2及び比較例2で得られた簡易セルについて、それぞれ評価を3回行った結果を示している。
図6に示した通り、実施例2で得られた簡易セルは、比較例2で得られた簡易セルに比べて、変換効率が高く、高い発電性能を有することが分かる。
多孔質層含有積層体における剥離又は割れの有無の評価結果と合わせて、本発明の多孔質層含有積層体の製造方法によれば、電荷移動を容易にし、高い発電性能が安定に得られる多孔質層含有積層体を製造できること、が確認された。
1 多孔質層含有積層体、1X 電極、10 基材、11 基材本体、12 導電膜、13 ペースト層、13f 多孔質層、20 ペースト層、20f 多孔質層、21 第一のペースト層、22 第二のペースト層、40 対極、41 基材本体、42 導電膜、50 電解質層、60 リード線、70 大空孔、100 色素増感太陽電池 200 ペースト層、200f 多孔質層、210 第一のペースト層、211〜217 貫通孔、220 第二のペースト層

Claims (6)

  1. 半導体粒子、加熱消滅性粒子、バインダ、及び溶媒を含有する第一のペーストを、基材上に部分的に塗布して第一のペースト層を形成する第一のペースト層形成工程と、
    半導体粒子、バインダ、及び溶媒を含有し、かつ、前記加熱消滅性粒子の含有量が前記第一のペーストより少ないか、又は前記加熱消滅性粒子を含まない第二のペーストを、前記基材上の前記第一のペーストが塗布されない部分に塗布して第二のペースト層を形成する第二のペースト層形成工程と、
    前記第一のペースト層と前記第二のペースト層を加熱処理して多孔質層を形成する焼成工程と
    を有することを特徴とする多孔質層含有積層体の製造方法。
  2. 前記第二のペーストを、前記基材上の前記第一のペーストが塗布されない部分と共に前記第一のペースト層を覆うように塗布して第二のペースト層を形成する、請求項1記載の多孔質層含有積層体の製造方法。
  3. 前記第一のペースト層形成工程及び前記第二のペースト層形成工程の後、形成された第一のペースト層及び第二のペースト層からなるペースト層上に、さらに、第一のペースト層形成工程及び第二のペースト層形成工程を繰り返してペースト層を複数積層する、請求項1又は請求項2記載の多孔質層含有積層体の製造方法。
  4. 前記第一のペースト層形成工程において、前記第一のペーストを、スクリーン印刷によって基材上に部分的に塗布して第一のペースト層を形成する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の多孔質層含有積層体の製造方法。
  5. 前記加熱消滅性粒子が、オキシプロピレンユニットとオキシテトラメチレンユニットとから選ばれる少なくとも一種のユニット並びに2つ以上の重合性不飽和基を有する架橋剤と、重合性不飽和基を有する単量体とが反応したものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質層含有積層体の製造方法。
  6. 色素が担持された酸化金属を含む電極と、酸化還元反応可能な化学種を含む電解質と、対極とを備えた色素増感太陽電池において、
    前記電極が、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多孔質層含有積層体の製造方法により得られた多孔質層含有積層体に色素が担持されたものであることを特徴とする色素増感太陽電池。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2014130766A (ja) * 2012-12-28 2014-07-10 International Frontier Technology Laboratory Inc 色素増感タンデム2酸化ケイ素ソーラーセル

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