JP2012092301A - インクジェット記録用水性インクセット、インクジェット記録方法およびインクジェット記録装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】染料マゼンタインクの発色性、噴射安定性および耐候性に優れ、且つ、顔料ブラックインクと染料マゼンタインクとの両インク間にブリーディングが生じにくい顔料ブラックインクおよび染料マゼンタインクを含むインクジェット記録用水性インクの提供。
【解決手段】水性ブラックインクおよび水性マゼンタインクを含むインクジェット記録用水性インクセットであって、前記水性ブラックインクが、ブラック着色剤、水および水溶性有機溶剤を含み、前記ブラック着色剤が、自己分散型カーボンブラックを含み、前記水性マゼンタインクが、マゼンタ着色剤、水および水溶性有機溶剤を含み、前記マゼンタ着色剤が、特定のアントラピリドン染料を含み、前記水溶性有機溶剤が、浸透剤を含み、前記マゼンタインク全量に対し、前記浸透剤の配合量が、0.5重量%〜3.5重量%であることを特徴とする。
【選択図】なし
【解決手段】水性ブラックインクおよび水性マゼンタインクを含むインクジェット記録用水性インクセットであって、前記水性ブラックインクが、ブラック着色剤、水および水溶性有機溶剤を含み、前記ブラック着色剤が、自己分散型カーボンブラックを含み、前記水性マゼンタインクが、マゼンタ着色剤、水および水溶性有機溶剤を含み、前記マゼンタ着色剤が、特定のアントラピリドン染料を含み、前記水溶性有機溶剤が、浸透剤を含み、前記マゼンタインク全量に対し、前記浸透剤の配合量が、0.5重量%〜3.5重量%であることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、インクジェット記録用水性インクセット、インクジェット記録方法およびインクジェット記録装置に関する。
近年、顔料ブラックインクと染料カラーインクとを含むインクジェット記録用水性インクセットが普及している。このようなインクセットに用いる水性マゼンタインクとして、発色性および噴射安定性に優れるC.I.アシッドレッド52またはC.I.アシッドレッド289を含むインクが知られている(例えば、特許文献1参照)。
前記インクセットでは、前記染料マゼンタインク自身が、充分な耐候性を有することが求められる。また、前記インクセットには、前記顔料ブラックインクと前記染料マゼンタインクとを共に使用した場合に、両インク間にブリーディングが生じにくいことが求められる。
しかし、前記マゼンタ染料は、耐候性が充分でなく、前記染料マゼンタインク自身の特性と前記インクセットとしての特性を両立させるには不向きであった。
そこで、本発明は、染料マゼンタインクの発色性、噴射安定性および耐候性に優れ、且つ、顔料ブラックインクと染料マゼンタインクとの両インク間にブリーディングが生じにくい顔料ブラックインクおよび染料マゼンタインクを含むインクジェット記録用水性インクセットを提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明のインクジェット記録用水性インクセットは、水性ブラックインクおよび水性マゼンタインクを含むインクジェット記録用水性インクセットであって、
前記水性ブラックインクが、ブラック着色剤、水および水溶性有機溶剤を含み、
前記ブラック着色剤が、自己分散型カーボンブラックを含み、
前記水性マゼンタインクが、マゼンタ着色剤、水および水溶性有機溶剤を含み、
前記マゼンタ着色剤が、一般式(1)で表される染料を含み、
前記水溶性有機溶剤が、浸透剤を含み、
前記マゼンタインク全量に対し、前記浸透剤の配合量が、0.5重量%〜3.5重量%であることを特徴とする。
一般式(1)において、
n1は、1または2であり、
3つのMは、それぞれ、ナトリウムまたはアンモニウムであり、3つのMは互いに同一でも異なっていてもよく、
R0は、カルボキシ基で置換された炭素原子数1〜8のモノアルキルアミノ基である。
前記水性ブラックインクが、ブラック着色剤、水および水溶性有機溶剤を含み、
前記ブラック着色剤が、自己分散型カーボンブラックを含み、
前記水性マゼンタインクが、マゼンタ着色剤、水および水溶性有機溶剤を含み、
前記マゼンタ着色剤が、一般式(1)で表される染料を含み、
前記水溶性有機溶剤が、浸透剤を含み、
前記マゼンタインク全量に対し、前記浸透剤の配合量が、0.5重量%〜3.5重量%であることを特徴とする。
一般式(1)において、
n1は、1または2であり、
3つのMは、それぞれ、ナトリウムまたはアンモニウムであり、3つのMは互いに同一でも異なっていてもよく、
R0は、カルボキシ基で置換された炭素原子数1〜8のモノアルキルアミノ基である。
本発明のインクジェット記録用水性インクセットは、染料マゼンタインクの発色性、噴射安定性および耐候性に優れ、且つ、顔料ブラックインクと染料マゼンタインクとの両インク間にブリーディングが生じにくい。
本発明において、「耐候性」は、例えば、耐オゾン性、耐光性等を含む。
本発明のインクジェット記録用水性インクセット(以下、単に「水性インクセット」または「インクセット」と言うことがある)について説明する。本発明の水性インクセットは、水性ブラックインクおよび水性マゼンタインクを含む。
(水性ブラックインク)
前述のとおり、前記水性ブラックインクは、ブラック着色剤、水および水溶性有機溶剤を含む。前記ブラック着色剤は、自己分散型カーボンブラックを含む。前記自己分散型カーボンブラックは、例えば、カーボンブラック粒子にカルボニル基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基等の親水性官能基およびそれらの塩の少なくとも一種が、直接または他の基を介して化学結合により導入されていることによって、分散剤を使用しなくても水に分散可能なものである。前記水性ブラックインクは、高分子顔料分散剤を含んでもよいし、含まなくてもよい。前記水性ブラックインクが高分子顔料分散剤を含む場合には、前記水性ブラックインクの粘度に影響を与えない程度の量であることが好ましい。このように、本発明の水性ブラックインクは、自己分散型カーボンブラックを使用するため、高分子顔料分散剤に起因する粘度上昇の問題が無く、且つ、吐出安定性および保存安定性に優れたものとすることができる。
前述のとおり、前記水性ブラックインクは、ブラック着色剤、水および水溶性有機溶剤を含む。前記ブラック着色剤は、自己分散型カーボンブラックを含む。前記自己分散型カーボンブラックは、例えば、カーボンブラック粒子にカルボニル基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基等の親水性官能基およびそれらの塩の少なくとも一種が、直接または他の基を介して化学結合により導入されていることによって、分散剤を使用しなくても水に分散可能なものである。前記水性ブラックインクは、高分子顔料分散剤を含んでもよいし、含まなくてもよい。前記水性ブラックインクが高分子顔料分散剤を含む場合には、前記水性ブラックインクの粘度に影響を与えない程度の量であることが好ましい。このように、本発明の水性ブラックインクは、自己分散型カーボンブラックを使用するため、高分子顔料分散剤に起因する粘度上昇の問題が無く、且つ、吐出安定性および保存安定性に優れたものとすることができる。
前記自己分散型カーボンブラックは、例えば、特開平8−3498号公報、特表2000−513396号公報、特表2008−524400号公報、特表2009−515007号公報等に記載の方法によってカーボンブラックが処理されたものを用いることができる。前記自己分散型カーボンブラックの原料として用いることができるカーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等があげられる。特に、前記処理を行うのに適したカーボンブラックとしては、例えば、三菱化学(株)製の「MA8」および「MA100」、デグサ社製の「カラーブラックFW200」等があげられる。
前記自己分散型カーボンブラックは、例えば、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ社製の「CAB−O−JET(登録商標)200」、「CAB−O−JET(登録商標)250C」、「CAB−O−JET(登録商標)260M」、「CAB−O−JET(登録商標)270Y」、「CAB−O−JET(登録商標)300」、「CAB−O−JET(登録商標)400」、「CAB−O−JET(登録商標)450C」、「CAB−O−JET(登録商標)465M」および「CAB−O−JET(登録商標)470Y」;オリエント化学工業(株)製の「BONJET(登録商標)BLACK CW−2」および「BONJET(登録商標)BLACK CW−3」;東洋インキ製造(株)製の「LIOJET(登録商標)WD BLACK 002C」;等があげられる。
前記水性ブラックインク全量に対する前記自己分散型カーボンブラックの固形分配合量(顔料固形分量)は、特に限定されず、例えば、所望の光学濃度または色彩等により、適宜決定できる。前記顔料固形分量は、例えば、0.1重量%〜20重量%であり、好ましくは、1重量%〜10重量%であり、より好ましくは、2重量%〜8重量%である。
前記ブラック着色剤は、本発明の効果を損なわない範囲において、前記自己分散型カーボンブラックに加え、さらに他の顔料および染料等を含んでもよい。
前記水は、イオン交換水または純水であることが好ましい。前記水性ブラックインク全量に対する前記水の配合量(水割合)は、例えば、10重量%〜90重量%であり、好ましくは、40重量%〜80重量%である。前記水割合は、例えば、他の成分の残部としてもよい。
前記水溶性有機溶剤としては、例えば、インクジェットヘッドのノズル先端部における水性ブラックインクの乾燥を防止する湿潤剤および記録媒体上での乾燥速度を調整する浸透剤があげられる。
前記湿潤剤は、特に限定されず、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の低級アルコール;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド;アセトン等のケトン;ジアセトンアルコール等のケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;ポリアルキレングリコール、アルキレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;2−ピロリドン;N−メチル−2−ピロリドン;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等があげられる。前記ポリアルキレングリコールは、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等があげられる。前記アルキレングリコールは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、チオジグリコール、へキシレングリコール等があげられる。これらの湿潤剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、アルキレングリコール、グリセリン等の多価アルコールが好ましい。
前記水性ブラックインク全量に対する前記湿潤剤の配合量は、例えば、0重量%〜95重量%であり、好ましくは、5重量%〜80重量%であり、さらに好ましくは、5重量%〜50重量%である。
前記浸透剤は、例えば、グリコールエーテルがあげられる。前記グリコールエーテルは、例えば、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコール−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコール−n−へキシルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコール−n−プロピルエーテル、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコール−n−プロピルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコール−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルエーテル、トリプロピレングリコール−n−プロピルエーテルおよびトリプロピレングリコール−n−ブチルエーテル等があげられる。前記浸透剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
前記水性ブラックインク全量に対する前記浸透剤の配合量は、例えば、0重量%〜20重量%であり、好ましくは、0.1重量%〜15重量%であり、より好ましくは、0.5重量%〜10重量%である。
前記水性ブラックインクは、必要に応じて、さらに、従来公知の添加剤を含んでもよい。前記添加剤としては、例えば、界面活性剤、pH調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、防黴剤等があげられる。前記粘度調整剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性樹脂等があげられる。
前記水性ブラックインクは、例えば、ブラック着色剤、水および水溶性有機溶剤と、必要に応じて他の添加成分とを、従来公知の方法で均一に混合し、フィルタ等で不溶解物を除去することにより調製できる。
(水性マゼンタインク)
前述のとおり、前記水性マゼンタインクは、マゼンタ着色剤、水および水溶性有機溶剤を含む。前記マゼンタ着色剤は、一般式(1)で表される染料を含む。一般式(1)で表される前記染料を含ませることで、発色性および耐候性に優れた水性マゼンタインクを得ることができる。本発明において、「耐候性」は、例えば、耐オゾン性、耐光性等を含む。
前述のとおり、前記水性マゼンタインクは、マゼンタ着色剤、水および水溶性有機溶剤を含む。前記マゼンタ着色剤は、一般式(1)で表される染料を含む。一般式(1)で表される前記染料を含ませることで、発色性および耐候性に優れた水性マゼンタインクを得ることができる。本発明において、「耐候性」は、例えば、耐オゾン性、耐光性等を含む。
一般式(1)で表される前記染料は、3つのMがすべてナトリウムである化合物(ナトリウム塩)であってもよいし、3つのMがすべてアンモニウムである化合物(アンモニウム塩)であってよいし、3つのMの一つまたは二つがナトリウムであり残りがアンモニウムである化合物であってもよい。一般式(1)で表される前記染料は、単一の前記化合物で構成されていてもよいし、2種以上の前記化合物を含む混合物であってもよい。前記Mは、水性マゼンタインク中で電離して、イオン(Na+およびNH4 +の少なくとも一方)となっていてもよい。
一般式(1)で表される前記染料の好ましい具体例としては、表1に示すマゼンタ染料(1−A)〜(1−E)で表される化合物があげられる。
一般式(1)で表される前記染料は、従来公知の方法で製造できる。一般式(1)で表される前記染料の製造方法は、例えば、つぎのとおりである。
すなわち、まず、構造式(1−a)で表されるアントラキノン化合物1モルと、ベンゾイル酢酸エチルエステル1.1モル〜3モルとを、キシレン等の極性溶媒中で、炭酸ナトリウム等の塩基性化合物の存在下、130℃〜180℃で、5時間〜15時間反応させ、構造式(1−b)で表される化合物を得る。
つぎに、得られた構造式(1−b)で表される化合物1モルとメタアミノアセトアミド1モル〜5モルとを、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性有機溶媒中で、炭酸ナトリウム等の塩基および酢酸銅等の銅触媒の存在下、110℃〜150℃で、2時間〜6時間、ウルマン反応により縮合させ、構造式(1−c)で表される化合物を得る。
つぎに、得られた構造式(1−c)で表される化合物を8%〜15%の発煙硫酸中で、50℃〜120℃でスルホ化すると同時に、アセチルアミノ基を加水分解することにより、構造式(1−d)で表される化合物を得る。
つぎに、得られた構造式(1−d)で表される化合物1モルと、構造式(1−e)で表される化合物2モル〜2.5モルとを水中で、pH2〜9、2℃〜15℃で、30分〜1時間反応させる。得られた構造式(1−f)で表される化合物に、R0に対応する化合物、すなわち「R0−H」等で表される化合物2モル〜5モルを、pH7〜10、20℃〜90℃で、10分〜10時間反応させることにより、構造式(1−f)中の脱離基XをR0で置換することにより、一般式(1)で表される前記染料を得ることができる。
一般式(1)で表される前記染料の配合量は、特に制限されないが、前記水性マゼンタインク全量に対し、例えば、0.1重量%〜10重量%であり、好ましくは、1重量%〜7重量%であり、より好ましくは、2重量%〜6重量%である。
前記マゼンタ着色剤は、一般式(1)で表される前記染料のみで構成されていてもよいし、さらに他の染料および顔料等を含んでもよい。前記他の染料としては、例えば、一般式(2)で表される染料、一般式(3)で表される染料、C.I.アシッドレッド1、C.I.アシッドレッド254等があげられる。これらの他の染料を併用することで、さらに発色性を向上させることができる。
一般式(2)において、
R1は、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基であり、
R2は、水素原子、ハロゲン原子またはシアノ基であり、
R3は、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロ環基であり、
R4、R5、R6およびR7は、それぞれ、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロ環基、置換または無置換のスルホニル基、置換または無置換のアシル基であり、R4、R5、R6およびR7は互いに同一でも異なっていてもよいが、R4とR5が共に水素原子であることはなく、R6とR7が共に水素原子であることはなく、
A1およびA2は、双方が置換または無置換の炭素原子であるか、若しくは一方が置換または無置換の炭素原子であり、且つ、他方が窒素原子である。
一般式(3)において、
rは、0、1または2であり、
R12、R13およびR14は、それぞれ、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子、水素原子、ヒドロキシル基、置換または無置換のカルバモイル基、置換または無置換のスルファモイル基、置換または無置換のアミノ基、ニトロ基、スルホン酸エステル基、置換または無置換のアルキルスルホニル基、置換または無置換のアリールスルホニル基、カルボキシ基、カルボン酸エステル基であり、R12、R13およびR14は互いに同一でも異なっていてもよく、
R15、R16およびR17は、それぞれ、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のアラルキル基、置換または無置換の脂環基、置換または無置換のヘテロ環基であり、R15、R16およびR17は互いに同一でも異なっていてもよい。
一般式(2)において、
R1は、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基であり、
R2は、水素原子、ハロゲン原子またはシアノ基であり、
R3は、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロ環基であり、
R4、R5、R6およびR7は、それぞれ、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロ環基、置換または無置換のスルホニル基、置換または無置換のアシル基であり、R4、R5、R6およびR7は互いに同一でも異なっていてもよいが、R4とR5が共に水素原子であることはなく、R6とR7が共に水素原子であることはなく、
A1およびA2は、双方が置換または無置換の炭素原子であるか、若しくは一方が置換または無置換の炭素原子であり、且つ、他方が窒素原子である。
一般式(3)において、
rは、0、1または2であり、
R12、R13およびR14は、それぞれ、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子、水素原子、ヒドロキシル基、置換または無置換のカルバモイル基、置換または無置換のスルファモイル基、置換または無置換のアミノ基、ニトロ基、スルホン酸エステル基、置換または無置換のアルキルスルホニル基、置換または無置換のアリールスルホニル基、カルボキシ基、カルボン酸エステル基であり、R12、R13およびR14は互いに同一でも異なっていてもよく、
R15、R16およびR17は、それぞれ、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のアラルキル基、置換または無置換の脂環基、置換または無置換のヘテロ環基であり、R15、R16およびR17は互いに同一でも異なっていてもよい。
一般式(2)において、前記置換または無置換のアルキル基は、好ましくは、炭素原子数1〜6のアルキル基である。前記置換または無置換のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−ブチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ヒドロキシエチル基、メトキシエチル基、シアノエチル基、トリフルオロメチル基、3−スルホプロピル基、4−スルホブチル基等があげられる。前記置換アルキル基の置換基としては、例えば、ヒドロキシル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;シアノ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;カルボン酸塩、スルホン酸塩等のイオン性親水性基等があげられる。
一般式(2)において、前記置換または無置換のアリール基は、好ましくは、炭素原子数6〜12のアリール基である。ただし、置換アリール基の場合、前記炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まないものとする。前記置換または無置換のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−オクチルフェニル基、メシチル基、p−メトキシフェニル基、o−クロロフェニル基、m−(3−スルホプロピルアミノ)フェニル基等があげられる。前記置換アリール基の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基等のアルキル基;前述と同様のアルコキシ基;前述と同様のハロゲン原子;メチルアミノ基、ジメチルアミノ基等のアルキルアミノ基;アミド基;カルバモイル基;スルファモイル基;スルホアミド基;水酸基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のエステル基;前述と同様のイオン性親水性基等があげられる。
一般式(2)において、前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等があげられる。
一般式(2)において、前記置換または無置換のヘテロ環基は、好ましくは、5員または6員環のヘテロ環基である。前記置換または無置換のヘテロ環基としては、例えば、2−ピリジル基、2−チエニル基、2−チアゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、2−フリル基、6−スルホベンゾチアゾリル基、6−スルホン酸塩ベンゾチアゾリル基等があげられる。前記置換ヘテロ環基の置換基としては、例えば、アミド基;カルバモイル基;スルファモイル基;スルホアミド基;水酸基;前述と同様のエステル基;前述と同様のイオン性親水性基等があげられる。
一般式(2)において、前記置換または無置換のスルホニル基としては、例えば、メチルスルホニル基、フェニルスルホニル基等があげられる。前記置換スルホニル基の置換基としては、例えば、前述と同様の置換または無置換のアルキル基、前述と同様の置換または無置換のアリール基等があげられる。
一般式(2)において、前記置換または無置換のアシル基は、好ましくは、炭素原子数1〜12のアシル基である。ただし、置換アシル基の場合、前記炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まないものとする。前記置換または無置換のアシル基としては、例えば、アセチル基、ベンゾイル基、クロロアセチル基等があげられる。前記置換アシル基の置換基としては、例えば、前述と同様のイオン性親水性基等があげられる。
一般式(2)において、A1およびA2は、前述のとおり、双方が置換または無置換の炭素原子であるか、若しくは一方が置換または無置換の炭素原子であり、且つ、他方が窒素原子である。A1およびA2の双方が炭素原子である場合が、より優れた耐候性を発揮できる点で好ましい。A1およびA2の炭素原子に結合する置換基としては、例えば、炭素原子数1〜3のアルキル基、カルボキシ基、カルバモイル基、シアノ基等があげられる。
前述のとおり、一般式(2)において、R4とR5とは共に水素原子であることはなく、またR6とR7も共に水素原子であることはない。また、一般式(2)において、スルホ基若しくはカルボキシ基の置換数が多くなると前記染料の水溶性が向上する傾向があるので、必要に応じてそれらの置換数を調整することが好ましい。
一般式(2)で表される前記染料の好ましい態様としては、例えば、一般式(2)において、R1がアルキル基、R2がシアノ基、R3が水素原子若しくは置換または無置換のヘテロ環基、R4が水素原子、置換または無置換のヘテロ環基若しくは置換アリール基、R5およびR6が、それぞれ、置換ヘテロ環基または置換アリール基、R7が水素原子であり、A1が置換されている炭素原子、A2が置換または無置換の炭素原子である。
一般式(2)で表される前記染料のより好ましい態様としては、例えば、一般式(2)において、R1がtert−ブチル基、R2がシアノ基、R3が水素原子またはスルホ基若しくはそのアルカリ金属塩基で置換されてもよいベンゾチアゾリル基(好ましくは、ベンゾチアゾール−2−イル基)、R4が水素原子、スルホ基若しくはそのアルカリ金属塩基で置換されてもよいベンゾチアゾリル基(好ましくは、ベンゾチアゾール−2−イル基)またはスルホ基若しくはそのアルカリ金属塩基で置換されているトリアルキルフェニル基(好ましくは、メシチル基)、R5およびR6が、それぞれ、スルホ基若しくはそのアルカリ金属塩基で置換されてもよいモノ、ジ若しくはトリアルキルフェニル基(好ましくは、p−オクチルフェニル基若しくはメシチル基)またはスルホ基若しくはそのアルカリ金属塩基で置換されているベンゾチアゾリル基(好ましくは、ベンゾチアゾール−2−イル基)、R7が水素原子であり、A1がアルキル基で置換されている炭素原子、A2がシアノ基で置換されてもよい炭素原子である。
一般式(2)で表される前記染料の好ましい具体例としては、化学式(2−A)〜(2−F)で表される化合物があげられる。
化学式(2−A)で表される化合物は、一般式(2)において、R1がtert−ブチル基、R2がシアノ基、R3がベンゾチアゾール−2−イル基、R4が水素原子、R5およびR6が、それぞれ、p−オクチルフェニル基、R7が水素原子であり、A1がメチル基で置換されている炭素原子、A2がシアノ基で置換されている炭素原子である。
化学式(2−B)で表される化合物は、一般式(2)において、R1がtert−ブチル基、R2がシアノ基、R3およびR4が、それぞれ、ベンゾチアゾール−2−イル基、R5およびR6が、それぞれ、メシチル基、R7が水素原子であり、A1がメチル基で置換されている炭素原子、A2が炭素原子である。
化学式(2−C)で表される化合物は、一般式(2)において、R1がtert−ブチル基、R2がシアノ基、R3およびR4が、それぞれ、6−スルホナトリウム塩ベンゾチアゾール−2−イル基、R5およびR6が、それぞれ、3−スルホナトリウム塩メシチル基、R7が水素原子であり、A1がメチル基で置換されている炭素原子、A2が炭素原子である。
化学式(2−D)で表される化合物は、一般式(2)において、R1がtert−ブチル基、R2がシアノ基、R3およびR4が、それぞれ、6−スルホリチウム塩ベンゾチアゾール−2−イル基、R5およびR6が、それぞれ、2,6−ジエチル−4−メチル−3−スルホリチウム塩フェニル基、R7が水素原子であり、A1がメチル基で置換されている炭素原子、A2が炭素原子である。
化学式(2−E)で表される化合物は、一般式(2)において、R1がtert−ブチル基、R2がシアノ基、R3およびR4が、それぞれ、6−スルホカリウム塩ベンゾチアゾール−2−イル基、R5およびR6が、それぞれ、3−スルホカリウム塩メシチル基、R7が水素原子であり、A1がメチル基で置換されている炭素原子、A2が炭素原子である。
化学式(2―F)で表される化合物は、一般式(2)において、R1がtert−ブチル基、R2がシアノ基、R3およびR4が6−スルホリチウム塩ベンゾチアゾール−2−イル基、R5およびR6が2,6−ジエチル−4−スルホリチウム塩フェニル基、R7が水素原子であり、A1がメチル基で置換されている炭素原子、A2が炭素原子である。
一般式(2)で表される前記染料は、例えば、下記工程(A)〜(C)により製造できる。
工程(A)
化学式(2−a)で表されるアミノピラゾールと、ジアゾ化剤とを反応させてジアゾニウム塩を形成する。前記ジアゾ化剤としては、亜硝酸ナトリウムの希塩酸水溶液が好適であり、亜硝酸イソペンチルやニトロシル硫酸等も使用できる。
化学式(2−a)で表されるアミノピラゾールと、ジアゾ化剤とを反応させてジアゾニウム塩を形成する。前記ジアゾ化剤としては、亜硝酸ナトリウムの希塩酸水溶液が好適であり、亜硝酸イソペンチルやニトロシル硫酸等も使用できる。
化学式(2−a)における置換基R1およびR2は、一般式(2)で説明したとおりである。なお、化学式(2−a)で表されるアミノピラゾールは、例えば、米国特許第3,336,285号明細書;Heterocycles, 20, 519(1983);特公平6−19036号公報等に記載されている方法により合成できる。
工程(B)
つぎに、工程(A)で形成されたジアゾニウム塩を、化学式(2−b)で表されるピリジン系のカップリング剤と反応させ、化学式(2−c)で表される化合物を形成する。
つぎに、工程(A)で形成されたジアゾニウム塩を、化学式(2−b)で表されるピリジン系のカップリング剤と反応させ、化学式(2−c)で表される化合物を形成する。
化学式(2−b)における置換基R4〜R7、および化学式(2−c)における置換基R4〜R7は、一般式(2)で説明したとおりである。なお、化学式(2−b)で表されるピリジン系のカップリング剤は、例えば、特開昭51−83631号公報、特開昭49−74718号公報、特公昭52−46230号公報等に記載されている方法により合成できる。
工程(C)
つぎに、塩基の存在下で、工程(B)で形成された化合物をアルキル化剤、アリール化剤またはヘテリル化剤と反応させることにより、一般式(2)で表される染料が得られる。前記塩基としては、ジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基等を使用することができる。前記アルキル化剤は、“R−X”で表される化合物である。ここで、Rは、置換されてもよいアルキル基であり、Xは、ハロゲン原子またはOSO2R’であり、R’は、アルキル基、またはフェニル基等のアリール基である。前記アリール化剤は、“Ar−X”で表される化合物である。ここで、Arは、電子吸引性基が置換されたフェニル基(ハメットのσp値の合計が0.2以上の置換基で置換されていることが好ましい)である。前記ヘテリル化剤は、“Het−X”で表される化合物である。ここで、Hetは、ヘテロ環基であり、例えば、2−ピリジル基、2−チエニル基、2−チアゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、トリアジル基、2−フリル基等があげられる。
つぎに、塩基の存在下で、工程(B)で形成された化合物をアルキル化剤、アリール化剤またはヘテリル化剤と反応させることにより、一般式(2)で表される染料が得られる。前記塩基としては、ジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基等を使用することができる。前記アルキル化剤は、“R−X”で表される化合物である。ここで、Rは、置換されてもよいアルキル基であり、Xは、ハロゲン原子またはOSO2R’であり、R’は、アルキル基、またはフェニル基等のアリール基である。前記アリール化剤は、“Ar−X”で表される化合物である。ここで、Arは、電子吸引性基が置換されたフェニル基(ハメットのσp値の合計が0.2以上の置換基で置換されていることが好ましい)である。前記ヘテリル化剤は、“Het−X”で表される化合物である。ここで、Hetは、ヘテロ環基であり、例えば、2−ピリジル基、2−チエニル基、2−チアゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、トリアジル基、2−フリル基等があげられる。
前記水性マゼンタインクにおいて、一般式(2)で表される前記染料を併用した場合、一般式(1)で表される前記染料の配合量は、特に制限されないが、前記水性マゼンタインク全量に対し、例えば、0.1重量%〜10重量%であり、好ましくは、0.4重量%〜3.6重量%であり、一般式(2)で表される前記染料の配合量は、特に制限されないが、前記水性マゼンタインク全量に対し、例えば、0.1重量%〜10重量%であり、好ましくは、0.8重量%〜4.8重量%である。
前記水性マゼンタインクにおいて、一般式(2)で表される前記染料を併用する場合、前記水性マゼンタインクにおける一般式(1)で表される前記染料と一般式(2)で表される前記染料との重量比は、一般式(1)で表される前記染料:一般式(2)で表される前記染料=60:40〜20:80であることが好ましい。
一般式(3)において、R12、R13およびR14における置換または無置換のアルキル基は、好ましくは、総炭素原子数が1〜9のアルキル基である。前記置換または無置換のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、トリフルオロメチル基、ジメチルアミノメチル基等があげられる。前記置換アルキル基の置換基としては、例えば、ヒドロキシル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;シアノ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;カルボン酸塩、スルホン酸塩等のイオン性親水性基等があげられる。
一般式(3)において、R12、R13およびR14における置換または無置換のアルコキシ基は、好ましくは、総炭素原子数が1〜9のアルコキシ基である。前記置換または無置換のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基等があげられる。
一般式(3)において、R12、R13およびR14におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等があげられる。
一般式(3)において、R12、R13およびR14における置換または無置換のカルバモイル基としては、例えば、カルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基等があげられる。
一般式(3)において、R12、R13およびR14における置換または無置換のスルファモイル基としては、例えば、スルファモイル基、N−メチルスルファモイル基、N−エチルスルファモイル基、N−エチル−N−フェニルスルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、p−カルボキシフェニルスルファモイル基等があげられる。
一般式(3)において、R12、R13およびR14における置換または無置換のアミノ基としては、例えば、N−メチルアミノ基、カルバモイルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、アセチルアミノ基等があげられる。
一般式(3)において、R12、R13およびR14におけるスルホン酸エステル基としては、例えば、フェノキシスルホニル基等があげられる。
一般式(3)において、R12、R13およびR14における置換または無置換のアルキルスルホニル基は、好ましくは、総炭素原子数が1〜9のアルキルスルホニル基である。前記置換または無置換のアルキルスルホニル基としては、例えば、ヒドロキシスルホニル基等があげられる。
一般式(3)において、R12、R13およびR14における置換または無置換のアリールスルホニル基は、好ましくは、総炭素原子数が6〜15のアリールスルホニル基である。前記置換または無置換のアリールスルホニル基としては、例えば、ベンジルスルホニル基等があげられる。
一般式(3)において、R12、R13およびR14におけるカルボン酸エステル基としては、例えば、メトキシカルボニル基等があげられる。
一般式(3)において、R15、R16およびR17における置換または無置換のアルキル基は、好ましくは、総炭素原子数が1〜18のアルキル基である。前記置換または無置換のアルキル基としては、例えば、エチル基、n−ブチル基、n−オクチル基、エチルヘキシル基、ヒドロキシエチル基、カルボキシプロピル基、カルボキシシクロヘキシルメチル基、1−カルボキシ−2−メルカプトエチル基、1−カルボキシ−2−カルバモイル−エチル基、1−イソプロピル−1−カルボキシメチル基、1,2−ジカルボキシプロピル基等があげられる。前記置換アルキル基の置換基としては、例えば、ヒドロキシル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;シアノ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;カルボン酸塩、スルホン酸塩等のイオン性親水性基等があげられる。
一般式(3)において、R15、R16およびR17における置換または無置換のアルケニル基は、好ましくは、総炭素原子数2〜18のアルケニル基である。前記置換または無置換のアルケニル基としては、例えば、2−メチル−1−プロペニル基、ビニル基、アリル基等があげられる。
一般式(3)において、R15、R16およびR17における置換または無置換のアリール基としては、例えば、3,4−ジカルボキシフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−カルボキシフェニル基等があげられる。前記置換アリール基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基と同じものがあげられる。
一般式(3)において、R15、R16およびR17における置換または無置換のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、1−カルボキシ−2−フェニル−エチル基、1−カルボキシ−2−ヒドロキシフェニルエチル基、4−カルボキシベンジル基等があげられる。
一般式(3)において、R15、R16およびR17における置換または無置換の脂環基としては、例えば、シクロヘキシル基、4−カルボキシシクロヘキシル基等があげられる。
一般式(3)において、R15、R16およびR17における置換または無置換のヘテロ環基としては、例えば、ピリジル基、チアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル基等があげられる。前記置換ヘテロ環基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基と同じものがあげられる。
一般式(3)において、R15、R16およびR17としては、少なくとも一つが1〜4個のカルボキシ基またはスルファモイル基で置換されているアルキル基、アルケニル基、アリール基、脂環基、アラルキル基若しくはヘテロ環基であってもよい。
一般式(3)において、R15およびR16は、それぞれ、水素原子または3置換フェニル基であってもよく、R15およびR16は互いに同一でも異なっていてもよい。ここで、前記3置換フェニル基の三つの置換基は、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、総炭素原子数が1〜9の置換または無置換のアルキル基、総炭素原子数が1〜9の置換または無置換のアルコキシ基、置換または無置換のカルバモイル基、置換または無置換のスルファモイル基、置換または無置換のアミノ基、ニトロ基、スルホン酸エステル基、カルボン酸エステル基であり、前記三つの置換基は、同一でも異なっていてもよい。
一般式(3)で表される前記染料の好ましい態様としては、例えば、一般式(3)において、R15、R16およびR17の少なくとも一つが、1〜4個のカルボキシ基またはスルファモイル基で置換されているアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基若しくはシクロへキシル基である態様があげられる。
一般式(3)で表される前記染料は、その構造中に、スルホ基およびカルボキシ基またはこれらの塩を合計で6個以下、好ましくは5個以下、特に好ましくは4個以下有することが好ましい。また、一般式(3)で表される前記染料は、遊離酸型のまま使用してもよいが、製造時に塩型で得られた場合はそのまま使用してもよいし、所望の塩型に変換してもよい。また、一般式(3)で表される前記染料は、酸基の一部が塩型のものであってもよく、塩型の色素と遊離酸型の色素が混在していてもよい。このような塩型としては、例えば、Na、Li、K等のアルカリ金属の塩、アルキル基若しくはヒドロキシアルキル基で置換されていてもよいアンモニウムの塩、または有機アミンの塩等があげられる。前記有機アミンとしては、例えば、低級アルキルアミン、ヒドロキシ置換低級アルキルアミン、カルボキシ置換低級アルキルアミン、炭素原子数2〜4のアルキレンイミン単位を2〜10個有するポリアミン等があげられる。これらの塩型の場合、その種類は、1種類に限られず複数種混在していてもよい。
一般式(3)で表される前記染料の好ましい態様としては、例えば、一般式(3)において、
rは、0であり、
R12は、カルボキシ基、カルバモイル基、トリフルオロメチル基またはスルファモイル基であり、
R13、R14およびR16は、それぞれ、水素原子であり、
R15は、カルボキシ基またはスルファモイル基で置換されてもよいフェニル基またはカルボキシアルキル基であり、
R17は、水素原子またはアルキル基である態様があげられる。
rは、0であり、
R12は、カルボキシ基、カルバモイル基、トリフルオロメチル基またはスルファモイル基であり、
R13、R14およびR16は、それぞれ、水素原子であり、
R15は、カルボキシ基またはスルファモイル基で置換されてもよいフェニル基またはカルボキシアルキル基であり、
R17は、水素原子またはアルキル基である態様があげられる。
一般式(3)で表される前記染料の好ましい具体例としては、化学式(3−A)〜(3−E)で表される化合物があげられる。
化学式(3−A)で表される化合物は、一般式(3)において、
rは、0であり、
R12は、アゾ基に結合するフェニル基の2位に位置するカルボキシ基であり、
R13、R14およびR16は、それぞれ、水素原子であり、
R15は、2−カルボキシフェニル基であり、
R17は、水素原子である態様である。化学式(3−A)で表される化合物において、ナフタレン環の3位および6位に位置するスルホン酸は、アンモニウム塩となっている。
rは、0であり、
R12は、アゾ基に結合するフェニル基の2位に位置するカルボキシ基であり、
R13、R14およびR16は、それぞれ、水素原子であり、
R15は、2−カルボキシフェニル基であり、
R17は、水素原子である態様である。化学式(3−A)で表される化合物において、ナフタレン環の3位および6位に位置するスルホン酸は、アンモニウム塩となっている。
化学式(3−B)で表される化合物は、一般式(3)において、
rは、0であり、
R12は、アゾ基に結合するフェニル基の2位に位置するカルバモイル基であり、
R13、R14およびR16は、それぞれ、水素原子であり、
R15は、2−カルボキシフェニル基であり、
R17は、水素原子である態様である。化学式(3−B)で表される化合物において、ナフタレン環の3位および6位に位置するスルホン酸は、ナトリウム塩となっている。
rは、0であり、
R12は、アゾ基に結合するフェニル基の2位に位置するカルバモイル基であり、
R13、R14およびR16は、それぞれ、水素原子であり、
R15は、2−カルボキシフェニル基であり、
R17は、水素原子である態様である。化学式(3−B)で表される化合物において、ナフタレン環の3位および6位に位置するスルホン酸は、ナトリウム塩となっている。
化学式(3−C)で表される化合物は、一般式(3)において、
rは、0であり、
R12は、アゾ基に結合するフェニル基の3位に位置するスルファモイル基であり、
R13、R14およびR16は、それぞれ、水素原子であり、
R15は、2−スルファモイルフェニル基であり、
R17は、イソプロピル基である態様である。化学式(3−C)で表される化合物において、ナフタレン環の3位および6位に位置するスルホン酸は、エチルアンモニウム塩となっている。
rは、0であり、
R12は、アゾ基に結合するフェニル基の3位に位置するスルファモイル基であり、
R13、R14およびR16は、それぞれ、水素原子であり、
R15は、2−スルファモイルフェニル基であり、
R17は、イソプロピル基である態様である。化学式(3−C)で表される化合物において、ナフタレン環の3位および6位に位置するスルホン酸は、エチルアンモニウム塩となっている。
化学式(3−D)で表される化合物は、一般式(3)において、rは、0であり、
R12は、アゾ基に結合するフェニル基の2位に位置するトリフルオロメチル基であり、R13、R14およびR16は、それぞれ、水素原子であり、
R15は、1−カルボキシ−2−メチルブチル基であり、
R17は、メチル基である態様である。化学式(3−D)で表される化合物において、ナフタレン環の3位および6位に位置するスルホン酸は、メチルアンモニウム塩となっている。
R12は、アゾ基に結合するフェニル基の2位に位置するトリフルオロメチル基であり、R13、R14およびR16は、それぞれ、水素原子であり、
R15は、1−カルボキシ−2−メチルブチル基であり、
R17は、メチル基である態様である。化学式(3−D)で表される化合物において、ナフタレン環の3位および6位に位置するスルホン酸は、メチルアンモニウム塩となっている。
化学式(3−E)で表される化合物は、一般式(3)において、
rは、0であり、
R12は、アゾ基に結合するフェニル基の2位に位置するカルボキシ基であり、
R13、R14およびR16は、それぞれ、水素原子であり、
R15は、フェニル基であり、
R17は、水素原子である態様である。化学式(3−E)で表される化合物において、ナフタレン環の3位および6位に位置するスルホン酸は、アンモニウム塩となっている。
rは、0であり、
R12は、アゾ基に結合するフェニル基の2位に位置するカルボキシ基であり、
R13、R14およびR16は、それぞれ、水素原子であり、
R15は、フェニル基であり、
R17は、水素原子である態様である。化学式(3−E)で表される化合物において、ナフタレン環の3位および6位に位置するスルホン酸は、アンモニウム塩となっている。
一般式(3) で表される染料は、周知の方法に従って製造することができる。例えば以下の工程(A)〜(C)に従って製造できる。
工程(A)
まず、2−アミノ安息香酸(アントラニル酸)と1−アミノ−8−ヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸(H酸)とから常法( 例えば、細田豊著「新染料化学」( 昭和48年12月21日、技報堂発行)396〜409頁参照) に従って、ジアゾ化、カップリング反応を経てモノアゾ化合物を製造する。
まず、2−アミノ安息香酸(アントラニル酸)と1−アミノ−8−ヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸(H酸)とから常法( 例えば、細田豊著「新染料化学」( 昭和48年12月21日、技報堂発行)396〜409頁参照) に従って、ジアゾ化、カップリング反応を経てモノアゾ化合物を製造する。
工程(B)
得られたモノアゾ化合物を塩化シアヌル懸濁液に加えて、数時間反応を行う。この際、反応液のpHを4〜6、温度を0〜5℃に維持する。この反応に続いて、室温にて液性がアルカリ性にならない様に反応液に2−アミノ安息香酸(アントラニル酸)水溶液を加えて数時間縮合反応を行う。次いで、25%水酸化ナトリウム水溶液を反応液温度50〜60℃で加え強アルカリ性とすることにより加水分解反応を行い、反応を完結させる。
得られたモノアゾ化合物を塩化シアヌル懸濁液に加えて、数時間反応を行う。この際、反応液のpHを4〜6、温度を0〜5℃に維持する。この反応に続いて、室温にて液性がアルカリ性にならない様に反応液に2−アミノ安息香酸(アントラニル酸)水溶液を加えて数時間縮合反応を行う。次いで、25%水酸化ナトリウム水溶液を反応液温度50〜60℃で加え強アルカリ性とすることにより加水分解反応を行い、反応を完結させる。
工程(C)
反応終了後、反応液を冷却し、塩化ナトリウムで塩析することにより、一般式(3)で表される染料が得られる。
反応終了後、反応液を冷却し、塩化ナトリウムで塩析することにより、一般式(3)で表される染料が得られる。
C.I.アシッドレッド1は、構造式(4)で表される染料である。
前記水性マゼンタインクにおいて、一般式(1)で表される染料を一般式(3)で表される前記染料、C.I.アシッドレッド1およびC.I.アシッドレッド254からなる群から選択される少なくとも一種の染料と併用する場合、一般式(1)で表される前記染料の配合量は、特に制限されないが、前記水性マゼンタインク全量に対し、例えば、0.1重量%〜10重量%であり、好ましくは、1.4重量%〜5.4重量%であり、前記少なくとも一種の染料の配合量は、特に制限されないが、前記水性マゼンタインク全量に対し、例えば、0.05重量%〜5重量%であり、好ましくは、0.2重量%〜1.8重量%である。
前記水性マゼンタインクにおいて、一般式(1)で表される染料を前記少なくとも一種の染料と併用する場合、前記水性マゼンタインクにおける一般式(1)で表される前記染料と前記少なくとも一種の染料との重量比は、一般式(1)で表される前記染料:前記少なくとも一種の染料=60:40〜90:10であることが好ましい。
一般式(1)で表される前記染料、一般式(2)で表される前記染料、一般式(3)で表される前記染料、C.I.アシッドレッド1およびC.I.アシッドレッド254の総配合量は、特に制限されないが、前記水性マゼンタインク全量に対し、0.1重量%〜10重量%であることが好ましく、1重量%〜7重量%であることがより好ましく、2重量%〜6重量%であることがさらに好ましい。
前記水およびその配合量は、前述の水性ブラックインクにおける水およびその配合量と同様である。
前述のとおり、前記水溶性有機溶剤は、浸透剤を含む。前記浸透剤としては、前述の水性ブラックインクにおける浸透剤と同様のものがあげられ、その中でも、ジプロピレングリコール−n−プロピルエーテル、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコール−n−プロピルエーテル、トリプロピレングリコール−n−ブチルエーテルが好ましい。前記浸透剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
前記浸透剤の配合量は、前記水性マゼンタインク全量に対し、0.5重量%〜3.5重量%である。前記浸透剤の配合量を3.5重量%以下とすることで、発色性および耐候性に加え、噴射安定性に優れた水性マゼンタインクを得ることができる。また、前記浸透剤の配合量を0.5重量%以上とすることで、前記3つの性能に優れた水性マゼンタインクを得られるとともに、水性ブラックインクと水性マゼンタインクとの両インク間にブリーディングが生じにくい水性インクセットを得ることができる。
前記水溶性有機溶剤は、浸透剤に加え、湿潤剤を含んでもよい。前記湿潤剤およびその配合量は、前述の水性ブラックインクにおける湿潤剤およびその配合量と同様である。
前記水性マゼンタインクは、必要に応じて、さらに、従来公知の添加剤を含んでもよい。前記添加剤も、前述の水性ブラックインクにおける添加剤と同様である。
前記水性マゼンタインクは、例えば、マゼンタ着色剤、水および水溶性有機溶剤と、必要に応じて他の添加成分とを、従来公知の方法で均一に混合し、フィルタ等で不溶解物を除去することにより調製できる。
本発明のインクジェット記録用水性インクセットは、前記水性ブラックインクおよび前記水性マゼンタインクのみで構成されていてもよいし、さらに他の色の水性インクを含んでもよい。前記他の色の水性インクとしては、例えば、水性イエローインク、水性シアンインク、水性レッドインク、水性グリーンインク、水性ブルーインク、着色剤濃度が低い水性ライトインク(水性ライトブラックインク、水性ライトマゼンタインク、水性ライトイエローインク、水性ライトシアンインク、水性ライトレッドインク、水性ライトグリーンインク、水性ライトブルーインク等)等があげられる。フルカラー記録に対応可能となることから、本発明の水性インクセットは、水性イエローインクおよび水性シアンインクを含むことが好ましい。
以上説明したインクジェット記録用水性インクセットは、染料マゼンタインクの発色性、噴射安定性および耐候性に優れ、且つ、顔料ブラックインクと染料マゼンタインクとの両インク間にブリーディングが生じにくい。
つぎに、本発明において、インクジェット記録用水性インクセットは、インクカートリッジとして提供することも可能である。例えば、本発明のインクカートリッジは、水性ブラックインクおよび水性マゼンタインクのそれぞれの収納部を有するインクカートリッジであって、前記水性ブラックインクおよび前記水性マゼンタインクが、本発明のインクジェット記録用水性インクセットを構成する水性ブラックインクおよび水性マゼンタインクであることを特徴とする。本発明のインクカートリッジは、さらに、前記他の色の水性インクの収納部を有してもよい。
本発明のインクカートリッジは、1色の水性インクの収納部を有するインクカートリッジが複数集まったインクカートリッジ集合体であることが好ましい。ただし、本発明はこれに限定されない。本発明のインクカートリッジは、各色の水性インクの収納部を形成するようにその内部が間仕切りされた一体型のインクカートリッジであってもよい。本発明のインクカートリッジの本体としては、例えば、従来公知のものを使用できる。
つぎに、本発明のインクジェット記録方法およびインクジェット記録装置について説明する。
本発明のインクジェット記録方法は、記録媒体に水性インクセットを構成する水性インクをインクジェット方式により吐出して記録するインクジェット記録方法であって、前記水性インクセットが、本発明のインクジェット記録用水性インクセットであることを特徴とする。
本発明のインクジェット記録装置は、インクセット収容部およびインク吐出手段を含むインクジェット記録装置であって、前記インクセット収容部に、本発明のインクジェット記録用水性インクセットが収容され、前記インクジェット記録用水性インクセットを構成する水性ブラックインクおよび水性マゼンタインクが、それぞれ、前記インク吐出手段によって記録媒体に吐出されることを特徴とする。
本発明のインクジェット記録方法は、例えば、本発明のインクジェット記録装置を用いて実施可能である。前記記録は、印字、印画、印刷等を含む。
図1に、本発明のインクジェット記録装置の一例の構成を示す。図1に示すのとおり、このインクジェット記録装置1は、4つのインクカートリッジ2と、インク吐出手段(インクジェットヘッド)3と、ヘッドユニット4と、キャリッジ5と、駆動ユニット6と、プラテンローラ7と、パージ装置8とを主要な構成要素として含む。
前記4つのインクカートリッジ2は、ブラック、マゼンタ、イエローおよびシアンの4色の水性インクを、それぞれ1色ずつ含む。前記水性ブラックインクおよび前記水性マゼンタインクが、本発明の水性インクセットを構成する水性ブラックインクおよび水性マゼンタインクである。その他の水性インクは、一般的な水性インクを用いてよい。前記ヘッドユニット4に設置された前記インクジェットヘッド3は、記録媒体(例えば、記録用紙)Pに記録を行う。前記キャリッジ5には、前記4つのインクカートリッジ2および前記ヘッドユニット4が搭載される。前記駆動ユニット6は、前記キャリッジ5を直線方向に往復移動させる。前記駆動ユニット6としては、例えば、従来公知のものを使用できる(例えば、特開2008−246821号公報参照)。前記プラテンローラ7は、前記キャリッジ5の往復方向に延び、前記インクジェットヘッド3と対向して配置されている。
前記記録用紙Pは、例えば、このインクジェット記録装置1の側方または下方に設けられた給紙カセット(図示せず)から給紙される。前記記録用紙Pは、前記インクジェットヘッド3と、前記プラテンローラ7との間に導入される。導入された前記記録用紙Pに、前記インクジェットヘッド3から吐出されるインクにより所定の記録がされる。記録された前記記録用紙Pは、前記インクジェット記録装置1から排紙される。なお、図1においては、前記記録用紙Pの給紙機構および排紙機構の図示を省略している。
前記パージ装置8は、前記インクジェットヘッド3の内部に溜まる気泡等を含んだ不良インクを吸引する。前記パージ装置8としては、例えば、従来公知のものを使用できる(例えば、特開2008−246821号公報参照)。
前記パージ装置8の前記プラテンローラ7側には、前記パージ装置8に隣接してワイパ部材20が配設されている。前記ワイパ部材20は、へら状に形成されており、前記キャリッジ5の移動に伴って、前記インクジェットヘッド3のノズル形成面を拭うものである。図1において、キャップ18は、インクの乾燥を防止するため、記録が終了すると前記リセット位置に戻される前記インクジェットヘッド3の複数のノズルを覆うものである。
前記インクジェット記録装置において、前記4つのインクカートリッジは、複数のキャリッジに搭載されていてもよい。また、前記インクカートリッジは、前記キャリッジには搭載されず、インクジェット記録装置内に配置、固定されていてもよい。この態様においては、例えば、前記インクカートリッジと、前記キャリッジに搭載された前記ヘッドユニットとが、チューブ等により連結され、前記インクカートリッジから前記ヘッドユニットに前記インクが供給される。
つぎに、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。なお、本発明は、下記の実施例および比較例により限定および制限されない。
[水性ブラックインクの調製]
水性ブラックインク組成(表2および表3)における、自己分散型カーボンブラックの水分散体を除く成分を、均一に混合しインク溶媒を得た。つぎに、前記自己分散型カーボンブラックの水分散体に前記インク溶媒を加え、均一に混合した。その後、得られた混合物を、東洋濾紙(株)製のセルロースアセテートタイプメンブレンフィルタ(孔径3.00μm)を用いてろ過することで、水性ブラックインクBk1およびBk2を得た。
水性ブラックインク組成(表2および表3)における、自己分散型カーボンブラックの水分散体を除く成分を、均一に混合しインク溶媒を得た。つぎに、前記自己分散型カーボンブラックの水分散体に前記インク溶媒を加え、均一に混合した。その後、得られた混合物を、東洋濾紙(株)製のセルロースアセテートタイプメンブレンフィルタ(孔径3.00μm)を用いてろ過することで、水性ブラックインクBk1およびBk2を得た。
[水性マゼンタインクの調製]
水性マゼンタインク組成(表2および表3)の各成分を、均一に混合した。その後、得られた混合物を、東洋濾紙(株)製の親水性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)タイプメンブレンフィルタ(孔径0.20μm)を用いてろ過することで、水性マゼンタインクM1〜M21およびM22c〜M35cを得た。なお、表2および表3において、染料(1−A)〜(1−E)は、それぞれ、表1に示すマゼンタ染料(1−A)〜(1−E)で表される化合物であり、染料(2−A)〜(2−E)は、それぞれ、化学式(2−A)〜(2−E)で表される化合物であり、染料(3−A)〜(3−C)は、それぞれ、化学式(3−A)〜(3−C)で表される化合物である。
水性マゼンタインク組成(表2および表3)の各成分を、均一に混合した。その後、得られた混合物を、東洋濾紙(株)製の親水性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)タイプメンブレンフィルタ(孔径0.20μm)を用いてろ過することで、水性マゼンタインクM1〜M21およびM22c〜M35cを得た。なお、表2および表3において、染料(1−A)〜(1−E)は、それぞれ、表1に示すマゼンタ染料(1−A)〜(1−E)で表される化合物であり、染料(2−A)〜(2−E)は、それぞれ、化学式(2−A)〜(2−E)で表される化合物であり、染料(3−A)〜(3−C)は、それぞれ、化学式(3−A)〜(3−C)で表される化合物である。
[実施例1〜21および比較例1〜14]
〔インクジェット記録用水性インクセットの構成〕
表2および表3に示すように水性ブラックインクおよび水性マゼンタインクを組み合わせて、インクジェット記録用水性インクセットを構成した。
〔インクジェット記録用水性インクセットの構成〕
表2および表3に示すように水性ブラックインクおよび水性マゼンタインクを組み合わせて、インクジェット記録用水性インクセットを構成した。
〔インクジェット記録用水性インクセットの評価〕
実施例および比較例の水性インクセットについて、(a)水性マゼンタインクの噴射安定性(マゼンタ噴射安定性)評価、(b)水性マゼンタインクの発色性(マゼンタ発色性)評価、(c)水性マゼンタインクの耐候性(マゼンタ耐候性)評価、(d)ブリーディング評価および(e)総合評価を、下記の方法により行った。なお、(b)マゼンタ発色性評価および(c)マゼンタ耐候性評価に用いるサンプルは、つぎのようにして準備した。
実施例および比較例の水性インクセットについて、(a)水性マゼンタインクの噴射安定性(マゼンタ噴射安定性)評価、(b)水性マゼンタインクの発色性(マゼンタ発色性)評価、(c)水性マゼンタインクの耐候性(マゼンタ耐候性)評価、(d)ブリーディング評価および(e)総合評価を、下記の方法により行った。なお、(b)マゼンタ発色性評価および(c)マゼンタ耐候性評価に用いるサンプルは、つぎのようにして準備した。
〔サンプル調製〕
まず、実施例および比較例の水性インクセットを構成する水性マゼンタインクを、インクカートリッジに充填した。ついで、前記インクカートリッジを、ブラザー工業(株)製のインクジェットプリンタ搭載デジタル複合機DCP−385Cに装着した。つぎに、ブラザー工業(株)製の写真光沢紙BP71GAに前記水性マゼンタインクの単色グラデーションサンプルをプリントした。
まず、実施例および比較例の水性インクセットを構成する水性マゼンタインクを、インクカートリッジに充填した。ついで、前記インクカートリッジを、ブラザー工業(株)製のインクジェットプリンタ搭載デジタル複合機DCP−385Cに装着した。つぎに、ブラザー工業(株)製の写真光沢紙BP71GAに前記水性マゼンタインクの単色グラデーションサンプルをプリントした。
(a)マゼンタ噴射安定性評価
実施例および比較例の水性インクセットを構成する水性マゼンタインクについて、前記インクジェットプリンタ搭載デジタル複合機DCP−385Cを使用し、富士通コワーコ(株)製のオフィス用紙W(記録用紙)上に、1億ドット(約3万枚)の連続記録を行った。前記連続記録の結果を、下記の評価基準に従って評価した。不吐出とは、インクジェットヘッドのノズルが目詰まりし、前記水性マゼンタインクが吐出されない状態である。吐出曲がりとは、インクジェットヘッドのノズルの一部が目詰まりし、前記水性マゼンタインクが、前記記録用紙に対して垂直に吐出されず、斜めに吐出される状態である。
実施例および比較例の水性インクセットを構成する水性マゼンタインクについて、前記インクジェットプリンタ搭載デジタル複合機DCP−385Cを使用し、富士通コワーコ(株)製のオフィス用紙W(記録用紙)上に、1億ドット(約3万枚)の連続記録を行った。前記連続記録の結果を、下記の評価基準に従って評価した。不吐出とは、インクジェットヘッドのノズルが目詰まりし、前記水性マゼンタインクが吐出されない状態である。吐出曲がりとは、インクジェットヘッドのノズルの一部が目詰まりし、前記水性マゼンタインクが、前記記録用紙に対して垂直に吐出されず、斜めに吐出される状態である。
マゼンタ噴射安定性評価 評価基準
AA:連続記録中において、不吐出および吐出曲がりが全くなかった。
A :連続記録中において、不吐出若しくは吐出曲がりが僅かにあったが、前記不吐出若しくは吐出曲がりが、共に5回以内のパージによって回復した。
B :連続記録中において、不吐出若しくは吐出曲がりがあったが、前記不吐出若しくは吐出曲がりが、共に10回以内のパージによって回復した。
C :連続記録中において、不吐出および吐出曲がりが多数有り、前記不吐出および吐出曲がりが、共に10回のパージでは回復しなかった。
AA:連続記録中において、不吐出および吐出曲がりが全くなかった。
A :連続記録中において、不吐出若しくは吐出曲がりが僅かにあったが、前記不吐出若しくは吐出曲がりが、共に5回以内のパージによって回復した。
B :連続記録中において、不吐出若しくは吐出曲がりがあったが、前記不吐出若しくは吐出曲がりが、共に10回以内のパージによって回復した。
C :連続記録中において、不吐出および吐出曲がりが多数有り、前記不吐出および吐出曲がりが、共に10回のパージでは回復しなかった。
(b)マゼンタ発色性評価
前記グラデーションサンプルを、目視にて観察し、マゼンタ色が充分に表現されているか否かを、下記の評価基準に従って評価した。
前記グラデーションサンプルを、目視にて観察し、マゼンタ色が充分に表現されているか否かを、下記の評価基準に従って評価した。
マゼンタ発色性評価 評価基準
AA:マゼンタを充分に表現できている。
A :マゼンタ色を表現できている。
C :マゼンタ色を表現できていない。
AA:マゼンタを充分に表現できている。
A :マゼンタ色を表現できている。
C :マゼンタ色を表現できていない。
(c)マゼンタ耐候性評価
マゼンタ耐候性は、下記耐オゾン性評価および耐光性評価により評価した。
マゼンタ耐候性は、下記耐オゾン性評価および耐光性評価により評価した。
(c−1)耐オゾン性評価
前記グラデーションサンプルのうち、初期OD値が1.0のパッチを評価サンプルとして用いた。前記OD値は、Gretag Macbeth社製の分光測色計Spectrolino(光源:D65;視野:2°;status A)により測定した。スガ試験機(株)製のオゾンウェザーメーターOMS−Hを用いて、オゾン濃度1ppm、槽内温度24℃、槽内相対湿度60%の条件下、前記パッチを40時間放置した。ついで、前記放置後の前記パッチのOD値を、前述と同様にして、測定した。つぎに、下記式(I)によりOD値減少率(%)を求めた。なお、前記OD値減少率が小さいほど、画質の劣化が少なく、耐オゾン性に優れていたこととなる。
OD値減少率(%)={(X−Y)/X}×100 ・・・(I)
X:1.0(初期OD値)
Y:放置後のOD値
前記グラデーションサンプルのうち、初期OD値が1.0のパッチを評価サンプルとして用いた。前記OD値は、Gretag Macbeth社製の分光測色計Spectrolino(光源:D65;視野:2°;status A)により測定した。スガ試験機(株)製のオゾンウェザーメーターOMS−Hを用いて、オゾン濃度1ppm、槽内温度24℃、槽内相対湿度60%の条件下、前記パッチを40時間放置した。ついで、前記放置後の前記パッチのOD値を、前述と同様にして、測定した。つぎに、下記式(I)によりOD値減少率(%)を求めた。なお、前記OD値減少率が小さいほど、画質の劣化が少なく、耐オゾン性に優れていたこととなる。
OD値減少率(%)={(X−Y)/X}×100 ・・・(I)
X:1.0(初期OD値)
Y:放置後のOD値
(c−2)耐光性評価
前記グラデーションサンプルのうち、初期OD値が1.0のパッチを評価サンプルとして用いた。前記OD値は、Gretag Macbeth社製の分光測色計Spectrolino(光源:D65;視野:2°;status A)により測定した。スガ試験機(株)製のスーパーキセノンウェザーメーターSX75を用いて、槽内温度23℃、槽内相対湿度50%、照度81klxの条件下、前記パッチにキセノンランプ光を100時間照射した。ついで、前記照射後の前記パッチのOD値を、前述と同様にして、測定した。つぎに、下記式(II)によりOD値減少率(%)を求めた。なお、前記OD値減少率が小さいほど、画質の劣化が少なく、耐光性に優れていたこととなる。
OD値減少率(%)={(X−Y)/X}×100 ・・・(II)
X:1.0(初期OD値)
Y:照射後のOD値
前記グラデーションサンプルのうち、初期OD値が1.0のパッチを評価サンプルとして用いた。前記OD値は、Gretag Macbeth社製の分光測色計Spectrolino(光源:D65;視野:2°;status A)により測定した。スガ試験機(株)製のスーパーキセノンウェザーメーターSX75を用いて、槽内温度23℃、槽内相対湿度50%、照度81klxの条件下、前記パッチにキセノンランプ光を100時間照射した。ついで、前記照射後の前記パッチのOD値を、前述と同様にして、測定した。つぎに、下記式(II)によりOD値減少率(%)を求めた。なお、前記OD値減少率が小さいほど、画質の劣化が少なく、耐光性に優れていたこととなる。
OD値減少率(%)={(X−Y)/X}×100 ・・・(II)
X:1.0(初期OD値)
Y:照射後のOD値
マゼンタ耐候性を、下記の評価基準に従って評価した。
マゼンタ耐候性評価 評価基準
AA:耐オゾン性評価および耐光性評価のOD値減少率が、共に20%未満
A :耐オゾン性評価および耐光性評価のOD値減少率が、共に20%以上30%未満
B :耐オゾン性評価および耐光性評価のOD値減少率が、共に30%以上40%未満
C :耐オゾン性評価および耐光性評価のOD値減少率が、共に40%以上
AA:耐オゾン性評価および耐光性評価のOD値減少率が、共に20%未満
A :耐オゾン性評価および耐光性評価のOD値減少率が、共に20%以上30%未満
B :耐オゾン性評価および耐光性評価のOD値減少率が、共に30%以上40%未満
C :耐オゾン性評価および耐光性評価のOD値減少率が、共に40%以上
(d)ブリーディング評価
前記インクジェットプリンタ搭載デジタル複合機DCP−385Cを使用して、普通紙3紙(International Paper社製のRey Copy Paper、Xerox社製のBusinessおよびRecycled Supreme)上に、実施例および比較例の水性インクセットを構成する水性マゼンタインクを用いて形成した2つのマゼンタ色領域間に、実施例および比較例の水性インクセットを構成する水性ブラックインクを用いて黒色のラインを形成したパッチを記録し評価サンプルを作成した。前記評価サンプルにおけるブリーディングは、クオリティ・エンジニアリング・アソシエイツ(QEA)社製のハンディ型画像評価システム「PIAS(登録商標)−II」によりラギットネス(Raggedness)を測定し、下記評価基準に従って評価した。前記ラギットネスの測定は、ISO−13660に準拠して実施し、各普通紙について3回行った。ここで、各普通紙における測定結果は、それぞれ、3回測定した値の平均値の小数第1位を四捨五入したものであり、「3紙平均」は、前記各普通紙のそれぞれの前記平均値(小数第1位を四捨五入する前の値)の和を3で除した3紙の測定結果の平均値について小数第1位を四捨五入したものである。
前記インクジェットプリンタ搭載デジタル複合機DCP−385Cを使用して、普通紙3紙(International Paper社製のRey Copy Paper、Xerox社製のBusinessおよびRecycled Supreme)上に、実施例および比較例の水性インクセットを構成する水性マゼンタインクを用いて形成した2つのマゼンタ色領域間に、実施例および比較例の水性インクセットを構成する水性ブラックインクを用いて黒色のラインを形成したパッチを記録し評価サンプルを作成した。前記評価サンプルにおけるブリーディングは、クオリティ・エンジニアリング・アソシエイツ(QEA)社製のハンディ型画像評価システム「PIAS(登録商標)−II」によりラギットネス(Raggedness)を測定し、下記評価基準に従って評価した。前記ラギットネスの測定は、ISO−13660に準拠して実施し、各普通紙について3回行った。ここで、各普通紙における測定結果は、それぞれ、3回測定した値の平均値の小数第1位を四捨五入したものであり、「3紙平均」は、前記各普通紙のそれぞれの前記平均値(小数第1位を四捨五入する前の値)の和を3で除した3紙の測定結果の平均値について小数第1位を四捨五入したものである。
ブリーディング評価 評価基準
AA:3紙平均のラギットネスが、30μm未満
A :3紙平均のラギットネスが、30μm以上33μm未満
B :3紙平均のラギットネスが、33μm以上36μm未満
C :3紙平均のラギットネスが、36μm以上
AA:3紙平均のラギットネスが、30μm未満
A :3紙平均のラギットネスが、30μm以上33μm未満
B :3紙平均のラギットネスが、33μm以上36μm未満
C :3紙平均のラギットネスが、36μm以上
(e)総合評価
各水性インクセットについて、前記(a)〜(d)の結果から、下記の評価基準に従って総合評価を行った。
各水性インクセットについて、前記(a)〜(d)の結果から、下記の評価基準に従って総合評価を行った。
総合評価 評価基準
G :すべての評価結果がA以上であった。
NG:評価結果のいずれかにB以下があった。
G :すべての評価結果がA以上であった。
NG:評価結果のいずれかにB以下があった。
実施例の水性インクセットの構成および評価結果を、表2に示す。また、比較例の水性インクセットの構成および評価結果を、表3に示す。
表2に示すとおり、実施例1〜21の水性インクセットは、マゼンタ噴射安定性評価、マゼンタ発色性評価、マゼンタ耐候性評価およびブリーディング評価のすべての結果がA又はAAと、良好であった。よって、総合評価はGであった。特に、一般式(1)で表される前記染料に加え、一般式(2)で表される染料、一般式(3)で表される染料、C.I.アシッドレッド1またはC.I.アシッドレッド254を用いた実施例9〜21では、マゼンタ発色性評価の結果がAAと優れていた。その中でも、一般式(1)で表される前記染料に加え、一般式(2)で表される染料を用いた実施例9及び14〜17は、マゼンタ発色性評価及びマゼンタ耐光性評価が共にAAであり、特に優れていた。
一方、表3に示すとおり、比較例1の水性インクセットは、水性マゼンタインクに一般式(1)で表される前記染料を用いているにもかかわらず、マゼンタ噴射安定性評価の結果がBと劣っており、また、水性ブラックインクと水性マゼンタインクとが混ざらなかったのでブリーディング評価を実施することができなかった。これは、マゼンタインクの浸透剤割合が0.2重量%と少ないためだと考えられる。
比較例2及び13の水性インクセットは、水性マゼンタインクに一般式(1)で表される染料を用いている点は比較例1と同様であるが、浸透剤割合をそれぞれ4.0重量%及び4.5重量%に増やした。この結果、比較例2及び比較例13では、ブリーディング評価結果はAAと良好であったが、マゼンタ噴射安定性評価の結果がそれぞれB及びCと劣っていた。
比較例3の水性インクセットは、ブリーディング評価の結果がCと著しく劣っていた。これは、比較例3の水性マゼンタインクに含まれるマゼンタ着色剤が、一般式(1)で表される染料を含まず、一般式(2)で表される染料であるためだと考えられる。比較例14の水性インクセットでは、比較例3と同様に水性マゼンタインクに一般式(2)で表される染料を用いて、浸透剤割合を3.5重量%に増やした。この結果、比較例14のブリーディング評価の結果はBとなり、若干、改善したものの不十分であった。比較例4の水性インクセットでは、比較例3と同様に水性マゼンタインクに一般式(2)で表される染料を用いて、更に浸透剤割合を4.5重量%に増やした。この結果、比較例4の水性インクセットでは、ブリーディング評価の結果はAAに改善したものの、マゼンタ噴射安定性評価の結果がCと著しく劣っていた。比較例11の水性インクセットでは、水性マゼンタインクに一般式(2)で表される染料を用いて、浸透剤割合を4.5重量%添加している点は比較例4と同様であるが、水性ブラックインクの自己分散型カーボンブラックの種類を比較例4とは変えた。この結果、比較例11では、自己分散型カーボンブラックの種類を変えてもブリーディング評価はAAと良好であったが、比較例4と同様、マゼンタ噴射安定性評価の結果がCと著しく劣っていた。
比較例5〜7の水性インクセットは、マゼンタ耐候性評価の結果がBと劣っていた。これは、水性マゼンタインクに含まれるマゼンタ着色剤が、一般式(1)で表される染料を含まず、一般式(3)で表される染料、C.I.アシッドレッド1またはC.I.アシッドレッド254であるためだと考えられる
比較例8の水性インクセットは、マゼンタ耐候性評価の結果がCと著しく劣っていた。これは、水性マゼンタインクに含まれるマゼンタ着色剤が、一般式(1)で表される染料を含まず、C.I.アシッドレッド52であるためだと考えられる。
比較例9の水性インクセットは、マゼンタ耐候性評価の結果がCと著しく劣っており、ブリーディング評価の結果もBと劣っていた。これは、水性マゼンタインクに含まれるマゼンタ着色剤が、一般式(1)で表される染料を含まず、C.I.アシッドレッド289であるためだと考えられる。また、比較例12の水性インクセットでは、比較例9における水性ブラックインクの自己分散型カーボンブラックの種類を変えた。比較例12においても、比較例9と同様、マゼンタ耐候性評価の結果がCと著しく劣っており、ブリーディング評価の結果がBと劣っていた。また、比較例10では、比較例9における水性マゼンタインクの浸透剤割合を4.0重量%に増やした。この結果、比較例10では、ブリーディング評価の結果はAAと改善したものの、マゼンタ噴射安定性評価の結果がBと低下しており、マゼンタ耐候性評価もCと著しく劣っていた。
以上のように、本発明の水性インクセットは、染料マゼンタインクの発色性、噴射安定性および耐候性に優れ、且つ、顔料ブラックインクと染料マゼンタインクとの両インク間にブリーディングが生じにくい。本発明の水性インクセットの用途は、特に限定されず、各種のインクジェット記録に広く適用可能である。
1 インクジェット記録装置
2 インクカートリッジ
3 インク吐出手段(インクジェットヘッド)
4 ヘッドユニット
5 キャリッジ
6 駆動ユニット
7 プラテンローラ
8 パージ装置
2 インクカートリッジ
3 インク吐出手段(インクジェットヘッド)
4 ヘッドユニット
5 キャリッジ
6 駆動ユニット
7 プラテンローラ
8 パージ装置
Claims (9)
- 水性ブラックインクおよび水性マゼンタインクを含むインクジェット記録用水性インクセットであって、
前記水性ブラックインクが、ブラック着色剤、水および水溶性有機溶剤を含み、
前記ブラック着色剤が、自己分散型カーボンブラックを含み、
前記水性マゼンタインクが、マゼンタ着色剤、水および水溶性有機溶剤を含み、
前記マゼンタ着色剤が、一般式(1)で表される染料を含み、
前記水溶性有機溶剤が、浸透剤を含み、
前記マゼンタインク全量に対し、前記浸透剤の配合量が、0.5重量%〜3.5重量%であることを特徴とするインクジェット記録用水性インクセット。
一般式(1)において、
n1は、1または2であり、
3つのMは、それぞれ、ナトリウムまたはアンモニウムであり、3つのMは互いに同一でも異なっていてもよく、
R0は、カルボキシ基で置換された炭素原子数1〜8のモノアルキルアミノ基である。 - 前記マゼンタ着色剤が、さらに、一般式(2)で表される染料、一般式(3)又はその塩として表される染料、C.I.アシッドレッド1およびC.I.アシッドレッド254からなる群から選択される少なくとも一種の染料を含む請求項1記載のインクジェット記録用水性インクセット。
一般式(2)において、
R1は、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基であり、
R2は、水素原子、ハロゲン原子またはシアノ基であり、
R3は、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロ環基であり、
R4、R5、R6およびR7は、それぞれ、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロ環基、置換または無置換のスルホニル基、置換または無置換のアシル基であり、R4、R5、R6およびR7は互いに同一でも異なっていてもよいが、R4とR5が共に水素原子であることはなく、R6とR7が共に水素原子であることはなく、
A1およびA2は、双方が置換または無置換の炭素原子であるか、若しくは一方が置換または無置換の炭素原子であり、且つ、他方が窒素原子である。
一般式(3)において、
rは、0、1または2であり、
R12、R13およびR14は、それぞれ、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子、水素原子、ヒドロキシル基、置換または無置換のカルバモイル基、置換または無置換のスルファモイル基、置換または無置換のアミノ基、ニトロ基、スルホン酸エステル基、置換または無置換のアルキルスルホニル基、置換または無置換のアリールスルホニル基、カルボキシ基、カルボン酸エステル基であり、R12、R13およびR14は互いに同一でも異なっていてもよく、
R15、R16およびR17は、それぞれ、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のアラルキル基、置換または無置換の脂環基、置換または無置換のヘテロ環基であり、R15、R16およびR17は互いに同一でも異なっていてもよい。 - 前記浸透剤が、ジプロピレングリコール−n−プロピルエーテル、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコール−n−プロピルエーテルおよびトリプロピレングリコール−n−ブチルエーテルからなる群から選択される少なくとも一種である請求項1に記載のインクジェット記録用水性インクセット。
- 一般式(2)において、R1がアルキル基、R2がシアノ基、R3が水素原子または、置換若しくは無置換のヘテロ環基、R4が水素原子、置換若しくは無置換のヘテロ環基または、置換アリール基、R5およびR6が、それぞれ、置換へテロ環基または置換アリール基、R7が水素原子であり、A1が置換されている炭素原子、A2が置換または無置換の炭素原子である請求項2に記載のインクジェット記録用水性インクセット。
- 一般式(2)において、R1がtert−ブチル基、R3が水素原子またはスルホ基若しくはそのアルカリ金属塩基で置換されてもよいベンゾチアゾリル基、R4が水素原子、スルホ基若しくはそのアルカリ金属塩基で置換されてもよいベンゾチアゾリル基またはスルホ基若しくはそのアルカリ金属塩基で置換されているトリアルキルフェニル基、R5およびR6が、それぞれ、スルホ基若しくはそのアルカリ金属塩基で置換されてもよいモノ、ジ若しくはトリアルキルフェニル基またはスルホ基若しくはそのアルカリ金属塩基で置換されているベンゾチアゾリル基であり、A1がアルキル基で置換されている炭素原子、A2がシアノ基で置換されてもよい炭素原子である請求項4に記載のインクジェット記録用水性インクセット。
- 一般式(2)において、R3が水素原子またはスルホ基若しくはそのアルカリ金属塩基で置換されてもよいベンゾチアゾール−2−イル基、R4が水素原子、スルホ基若しくはそのアルカリ金属塩基で置換されてもよいベンゾチアゾール−2−イル基またはスルホ基若しくはそのアルカリ金属塩基で置換されているメシチル基、R5およびR6が、それぞれ、スルホ基若しくはそのアルカリ金属塩基で置換されてもよいp−オクチルフェニル基若しくはメシチル基またはスルホ基若しくはそのアルカリ金属塩基で置換されているベンゾチアゾール−2−イル基であり、A1がメチル基で置換されている炭素原子、A2がシアノ基で置換されてもよい炭素原子である請求項5に記載のインクジェット記録用水性インクセット。
- 一般式(3)において、r が0であり、R12がカルボキシル基、カルバモイル基、トリフルオロメチル基又はスルファモイル基であり、R13及びR14が水素原子であり、R15がカルボキシル基もしくはスルファモイル基で置換されてもよいフェニル基又はカルボキシアルキル基であり、R16が水素原子であり、R17が水素原子又はアルキル基である請求項2記載のインクジェット記録用水性インクセット。
- 記録媒体に記録を行なうインクジェット記録方法であって、
前記記録媒体に、請求項1に記載のインクジェット記録用水性インクセットを構成する水性インクを吐出するインクジェット記録方法。 - 記録媒体に記録を行なうインクジェット記録装置であって
請求項1に記載のインクジェット記録用水性インクセットを収容するインクセット収容部および
前記記録媒体に、前記インクジェット記録用水性インクセットを構成する水性ブラックインクおよび水性マゼンタインクを、それぞれ、吐出するインク吐出手段を含むインクジェット記録装置。
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