JP2012081065A - 吸収性物品 - Google Patents
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Abstract
【課題】防漏壁の内倒れが起こり難く、防漏壁本来の機能が十分に発揮され且つ防漏壁の体液による汚れが起こり難い吸収性物品を提供すること。
【解決手段】防漏壁5は、基壁部51と、該基壁部51の上端部51aに連接され、本体長手方向Xに沿って弾性部材15が伸長状態で配されている弾性伸縮部53とを含んで構成されている。少なくとも排泄部対向部Aに位置する防漏壁5Aは、吸収性物品1の着用前において、該防漏壁5Aの一部が互いに対向するように折り重ねられ且つその折り重ねられた対向部どうしが接合されて重層部56を形成している。吸収性物品1の着用中、重層部56における前記対向部どうしの接合が解除され、防漏壁5Aの起立高さが該接合の解除前に比して高くなる。
【選択図】図2
【解決手段】防漏壁5は、基壁部51と、該基壁部51の上端部51aに連接され、本体長手方向Xに沿って弾性部材15が伸長状態で配されている弾性伸縮部53とを含んで構成されている。少なくとも排泄部対向部Aに位置する防漏壁5Aは、吸収性物品1の着用前において、該防漏壁5Aの一部が互いに対向するように折り重ねられ且つその折り重ねられた対向部どうしが接合されて重層部56を形成している。吸収性物品1の着用中、重層部56における前記対向部どうしの接合が解除され、防漏壁5Aの起立高さが該接合の解除前に比して高くなる。
【選択図】図2
Description
本発明は、生理用ナプキン、パンティライナ、失禁パッド等の吸収性物品に関する。
生理用ナプキン等の吸収性物品として、液保持性の吸収体を具備する実質的に縦長の吸収性本体と、該吸収性本体の長手方向に沿う両側部それぞれに配置された一対の防漏壁とを備えたものが知られている。従来の防漏壁の構造は、吸収性物品の肌当接面を形成する表面シート上に本体長手方向に延びる防漏壁形成用シートが接合されており、該防漏壁形成用シートに、本体長手方向に延びる弾性部材が伸長状態で接合されたものが一般的である。防漏壁は、その本体長手方向の前端部及び後端部が吸収性本体に固定され、本体長手方向への弾性収縮力が付与されて、該前端部と該後端部との間において、着用者の肌側に向かって起立し、これにより、吸収性物品の側部における体液の漏れを防止している。
防漏壁を備えた吸収性物品に関し、例えば特許文献1には、基壁部とその上端部に連設された面状の弾性伸縮部とからなる起立可能な防漏壁を有し、着用時に着用者の排泄部に対向配置される排泄部対向部と、該排泄部対向部よりも背側に配される後方部とを長手方向に有する生理用ナプキンにおいて、後方部における基壁部の一部に重層部を設けることにより、該後方部における基壁部の起立高さ(基壁部の上端部から防漏層までの距離)を、排泄部対向部における基壁部の起立高さよりも短くすることが記載されている。特許文献1に記載の防漏壁の重層部は、該重層部を構成する相対向する基壁部形成用シートどうしを、接着剤やヒートシール等の通常の接合手段により接合して形成されており、該基壁部形成用シートどうしは、ナプキンの通常の使用では剥離しないようになされている。特許文献1によれば、このように後方部の防漏壁の起立高さを排泄部対向部のそれよりも低くすることにより、後方部における吸収性物品の湾曲の程度と排泄部対向部におけるナプキンの湾曲の程度とを容易且つ効果的に異ならせることができ、ナプキンの全体形状を、身体の曲面形状に一層フィットした形状とすることができるとされている。
また特許文献2には、使い捨ておむつにおける縦方向中央部(着用時に両側部が大腿部に当てられる部分)の防漏壁に、該防漏壁を構成するシートどうしを接合してなる接合部を設けることにより、他の部分の防漏壁よりも起立可能な長さを低くすることが記載されている。特許文献2に記載の防漏壁の接合部も、特許文献1に記載の重層部と同様に、該接合部を構成する相対向するシートどうしは、おむつの通常の使用では剥離しないように接合されている。特許文献2によれば、このように大腿部への装着部における防漏壁の起立可能な長さを相対的に低くすることで、該装着部において防漏壁がおむつ側方へはみ出ることが防止され、また、足をウエスト開口部からレッグ開口部へ挿入するときに防漏壁が足に引っ掛かる頻度を低下させることができるとされている。
防漏壁を備えた従来の吸収性物品においては、着用時に着用者の身体からの圧力を受けることにより、起立していた防漏壁が吸収性本体側に倒れて該吸収性本体の肌当接面を覆ってしまったり、あるいは起立していた防漏壁の上部(着用者の肌と当接する部分)が該防漏壁の起立起点と吸収性本体との間に入り込んでしまったりすることがあった。このような、いわゆる防漏壁の内倒れは、吸収性本体の肌当接面での実質的な液吸収領域を減少させ、体液の漏れを誘発するおそれがあり、特に防漏壁を高く形成している排泄部対向部でより生じ易い。更には、排泄された体液が防漏壁の上部に付着して該上部が汚れるおそれがある。防漏壁の内倒れを防止し、防漏壁本来の機能が十分に発揮されるようになされた吸収性物品は未だ提供されていない。
従って本発明の課題は、防漏壁の内倒れが起こり難く、防漏壁本来の機能が十分に発揮され且つ防漏壁の体液による汚れが起こり難い吸収性物品を提供することにある。
本発明者らは、防漏壁を備えた生理用ナプキンについて種々検討した結果、防漏壁の内倒れは、ナプキン着用時の初期段階、特に、ナプキンをショーツに取り付けて該ショーツを身体側に引き上げた時点で既に起こっている場合があり、この着用初期段階での防漏壁の内倒れを防止することが重要であるとの知見を得た。そして、更に検討した結果、ナプキン着用前においては防漏壁の起立高さを規制しておき、ナプキン着用中における防漏壁の動き、温度上昇、体液付着による濡れ等によって、該起立高さの規制が解除されて、該起立高さが着用前に比して高くなるようにすることにより、着用初期段階での防漏壁の内倒れが防止され、延いては該段階以降の防漏壁の内倒れが防止されることを知見した。
本発明は、前記知見に基づきなされたもので、着用時に着用者の排泄部に対向する排泄部対向部を有する実質的に縦長の吸収性本体と、該吸収性本体の本体長手方向に沿う両側部それぞれに配置され且つ少なくとも該排泄部対向部において着用時に着用者の肌側に向かって起立する一対の防漏壁とを備えた吸収性物品であって、前記防漏壁は、基壁部と、該基壁部の上端部に連接され、本体長手方向に沿って弾性部材が伸長状態で配されている弾性伸縮部とを含んで構成されており、少なくとも前記排泄部対向部に位置する前記防漏壁は、前記吸収性物品の着用前において、該防漏壁の一部が互いに対向するように折り重ねられ且つその折り重ねられた対向部どうしが接合されて重層部を形成し、着用中、該重層部における該対向部どうしの接合が解除され、該防漏壁の起立高さが該接合の解除前に比して高くなる吸収性物品を提供することにより、前記課題を解決したものである。
本発明の吸収性物品は、防漏壁の内倒れが起こり難く、防漏壁本来の機能が十分に発揮され且つ防漏壁の体液による汚れが起こり難い。
以下、本発明の吸収性物品を、その好ましい一実施形態である生理用ナプキンに基づき図1〜図5を参照して説明する。第1実施形態のナプキン1Aは、図1に示すように、着用時に着用者の排泄部(膣口)に対向する排泄部対向部Aを有する実質的に縦長の吸収性本体10と、該吸収性本体10の本体長手方向Xに沿う両側部それぞれに配置された一対の防漏壁5,5とを備えている。
吸収性本体10は、一方向に長い形状をしており実質的に縦長で、図1に示すように、排泄部対向部Aと、着用時に排泄部対向部Aより着用者の背中側に配される後方部Bとを、長手方向に有している。排泄部対向部Aは、後述する、左右に一対のウイング部7,7を有する部分である。一対の防漏壁5,5は、それぞれ、図1に示すように吸収性本体10の長手方向の略全長に亘って配されており、また、図2及び図3に示すように、排泄部対向部A及び後方部Bにおいて着用時に着用者の肌側に向かって起立するが、後述するように、ナプキン1Aの着用前においては、排泄部対向部Aに位置する防漏壁5Aの起立高さは、後方部Bに位置する防漏壁5Bの起立高さに比して低くなっている。
尚、本発明の吸収性物品(生理用ナプキン)において、排泄部対向部は、第1実施形態のナプキン1のようにウイング部を有する場合には、通常、吸収性物品の長手方向(図中X方向)においてウイング部を有する領域である。ウイング部を有しない吸収性物品における排泄部対向部は、吸収性物品が個装形態に折り畳まれた際に生じる、該吸収性物品を幅方向(図中Y方向)に横断する2本の折線(図示せず)について、該吸収性物品の長手方向の前端から数えて第1折線と第2折線とに囲まれた領域と同じか又は該領域よりも狭い領域である。また、吸収性物品の長手方向の長さが長く、3本の前記折線が生じる場合には、吸収性物品の長手方向の前端から数えて第1折線と第2折線とに囲まれた領域あるいは該前端から数えて第1折線と第3折線とに囲まれた領域と同じか又は該領域よりも狭い領域である。
本明細書において、肌当接面は、吸収性物品(生理用ナプキン)又はその構成部材における、吸収性物品(生理用ナプキン)の着用時に着用者の肌側に向けられる面であり、非肌当接面は、吸収性物品(生理用ナプキン)又はその構成部材における、吸収性物品(生理用ナプキン)の着用時に肌側とは反対側(着衣側)に向けられる面である。また、長手方向は、吸収性物品(生理用ナプキン)又はその構成部材(例えば吸収性本体)の長辺に沿う方向であり、幅方向は、該長手方向と直交する方向である。図中、符号Xで示す方向は、ナプキン1A(吸収性本体10)の長手方向(本体長手方向)であり、符号Yで示す方向は、ナプキン1A(吸収性本体10)の幅方向(本体幅方向)である。
更に説明すると、吸収性本体10は、図1〜図3に示すように、ナプキン1の肌当接面を形成する表面シート2、ナプキン1の非肌当接面を形成する裏面シート3、及びこれら両シート2,3間に介在された吸収体4を具備している。
表面シート2の長手方向Xに沿う両側縁は、図2に示すように、吸収体4の長手方向Xに沿う両側縁と幅方向Yにおいて同位置か、又は吸収体4の長手方向Xに沿う両側縁よりも幅方向Yの内方に位置しており、表面シート2が吸収体4の長手方向Xに沿う両側縁に挟まれた領域内に収まっている。吸収体4の長手方向Xに沿う側縁は、吸収体4において最も幅方向Yに突出している縁であり、第1実施形態においては後述する下層吸収体40の長手方向Xに沿う側縁である。一方、裏面シート3は、図2及び図3に示すように、吸収体4の非肌当接面の全域を被覆し、更に吸収体4の長手方向Xに沿う両側縁から幅方向Yの外方に延出してサイドフラップ部6を形成している。
サイドフラップ部6は、図1に示すように、排泄部対向部Aにおいて幅方向Yの外方に向かって大きく張り出しており、これにより吸収性本体10の左右両側に、一対のウイング部7,7が延設されている。また、サイドフラップ部6は、後方部Bにおいても幅方向Yの外方に向かって大きく張り出しており、これにより吸収性本体10の左右両側に、一対の後部フラップ部8,8が延設されている。また、表面シート2及び裏面シート3は、図1に示すように、吸収体4の長手方向Xの前端及び後端それぞれから長手方向Xの外方に延出し、それらの延出部において、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって、互いに接合されてエンドシール部を形成している。
ナプキン1Aの非肌当接面(裏面シート3の非肌当接面3b)は、着用時にショーツのクロッチ部等、着衣側に向けられる。非肌当接面3bには、ナプキン1Aをショーツ等の下着のクロッチ部に固定するための粘着部(図示せず)が設けられている。また、一対のウイング部7,7の非肌当接面には、ショーツの外面(非肌当接面)に固定するための粘着部(図示せず)が設けられている。また、一対の後方フラップ部8,8は、ナプキン1Aの着用時に、ショーツの内面(肌当接面)上に配されるもので、その非肌当接面には粘着部(図示せず)が設けられている。これらの粘着部は、ホットメルト粘着剤を所定箇所に塗布することにより設けられており、ナプキン1Aの使用前においてはフィルム、不織布、紙などからなる図示しない剥離シートによって被覆されている。
吸収体4は、図1〜図3に示すように、排泄部対向部A及び後方部Bに、周辺部よりも厚みが厚く且つ表面シート2側に突出して形成された中高部41,42を有している。より具体的には、吸収体4は、平面視において角が丸みを帯びた略矩形形状で且つ排泄部対向部Aから後方部Bに亘って延びる、下層吸収体40と、下層吸収体40よりも幅狭で且つ排泄部対向部Aにおいて下層吸収体40の幅方向中央部の肌当接面側に配置された、前方上層吸収体43と、下層吸収体40よりも幅狭で且つ後方部Bにおいて下層吸収体40の幅方向中央部の肌当接面側に配置された、後方上層吸収体44とを具備している。前方上層吸収体43及び下層吸収体40における前方上層吸収体43の下方に位置する部分が、前方中高部41を形成し、後方上層吸収体44及び下層吸収体40における後方上層吸収体44の下方に位置する部分が、後方中高部42を形成している。上層吸収体43,44は、それぞれ、平面視において角が丸みを帯びた略矩形形状で、その長手方向を下層吸収体40の長手方向に一致させて、下層吸収体40上に配置されている。吸収体4(下層吸収体40、上層吸収体43,44)と表面シート2との間は、接着剤によって接合されていても良い。
一対の防漏壁5,5は、それぞれ、図2及び図3に示すように、幅方向Yに一定の幅を有する一枚のサイドシート(防漏壁形成用シート)50と、該サイドシート50に伸長状態で配置された弾性部材15とを含んで構成されており、基壁部51と、該基壁部51の上端部51aに連接され且つ弾性部材15が伸長状態で配置固定されている弾性伸縮部53とを有している。サイドシート50は、基壁部51及びその上端部51aに弾性伸縮部53が連設された形状を有するように折り返されている。このように、サイドシート50を折り返して形成された防漏壁5は、基壁部51(起立部52)及び弾性伸縮部53において2層構造となっており、該2層構造を構成するサイドシート50,50間及び弾性部材15とサイドシート50との間は、それぞれ図示しない接着剤によって接合されている。
基壁部51は、吸収体4の上方にて表面シート2の肌当接面2aに接合されており、その接合部13を起点として着用時に着用者の肌側に向かって起立する起立部52を有している。基壁部51における起立部52以外の部分は、吸収体4(下層吸収体40)の長手方向Xに沿う側部に沿って巻き下げられ、更にその一部が吸収体4(下層吸収体40)と裏面シート3との間に介在配置されて、接着剤やヒートシール等の公知の接合手段によって固定されている。基壁部51(起立部52)と表面シート2との接合部13は、平面視において線状であり、長手方向Xに沿って防漏壁5(吸収性本体10)の略全長に亘って延びている。接合部13は、ホットメルト接着剤等の接着剤が塗布されて形成されている。線状の接合部13は、長手方向Xに沿って接着剤が連続的に塗布された連続線であっても良く、あるいは接着剤が不連続に塗布された破線であっても良く、また、直線でも曲線でも良い。第1実施形態における線状の接合部13は、直線且つ連続線である。
このように、基壁部51(起立部52)が吸収体4の上方に位置する接合部13を起点として起立するようになされていると、例えば特許文献1の図2に記載されているように、基壁部が、吸収体の幅方向外方に位置し且つ該吸収体の非肌当接面と略同一平面上に位置する接合部を起点として起立するようになされている場合に比して、起立起点と基壁部の上端部との間の距離が、吸収体の厚みに相当する分短いため、使用時に基壁部51が倒れるおそれが少なく、防漏壁5による所定の防漏効果がより確実に奏されるようになる。
弾性伸縮部53は、図1に示すように、吸収性本体10の長手方向Xの略全長に亘って延びている。弾性伸縮部53には、長手方向Xに延びる複数本(第1実施形態では6本)の弾性部材15が伸長状態でサイドシート50に接合固定されていることによって、弾性伸縮性が付与されており、その伸縮方向は長手方向Xに一致している。複数本の弾性部材15は、それぞれ、吸収性本体10の長手方向Xの略全長に亘って配されている。弾性伸縮部53は、長手方向Xに延びる複数本の弾性部材15が幅方向Yに所定間隔を置いて配置されていることによって、図1〜図3に示すように面状に形成されており、この面状の部分(弾性伸縮部53の上面)がナプキン1Aの着用者の肌に当接する。
弾性伸縮部53は、図2及び図3に示すように、起立部52(基壁部51)の上端部51aから幅方向Yの内方に略水平に張り出す内方弾性伸縮部53Aと、該上端部51aから幅方向Yの外方に略水平に張り出す外方弾性伸縮部53Bとから構成されている。内方弾性伸縮部53A及び外方弾性伸縮部53Bそれぞれには、弾性部材15が1本以上配置されて弾性伸縮性が付与されている。第1実施形態においては、内方弾性伸縮部53A及び外方弾性伸縮部53Bにそれぞれ3本の弾性部材15が配置されている。弾性部材15は、内方弾性伸縮部53A及び外方弾性伸縮部53Bを構成する2枚のサイドシート50,50の間に伸長状態で配置されており、図示しない接着剤によって両サイドシート50,50に接合されている。このように、第1実施形態においては、内方弾性伸縮部53A及び外方弾性伸縮部53Bは、両者が一体となって平面状に形成され、起立部52と合わせて、図2に示す如き幅方向Yに沿う断面視において、T字状を形成するように起立する。
弾性伸縮部53の幅(内方弾性伸縮部53Aの長手方向Xに沿った自由端から外方弾性伸縮部53Bの長手方向Xに沿った自由端までの長さ)は、フィット性及び漏れ防止の観点から、15〜30mm、特に17〜25mmが好ましい。また、弾性伸縮部53における弾性部材15の本数は、弾性伸縮部53の上面が着用者の肌に面状に当接することを可能にする観点から、好ましくは3本以上、特に5〜7本である。また、内方弾性伸縮部53Aの張り出し幅と外方弾性伸縮部53Bの張り出し幅との比(前者:後者)は、基壁部51(起立部52)の起立性と身体へのフィット性の観点から、好ましくは3:2〜1:2、更に好ましくは1:1〜2:3である。
図1に示すように、防漏壁5の長手方向Xの前端部及び後端部には、それぞれ、弾性伸縮部53が吸収性本体10に固定されて、端部固定部54(前端部固定部54a,後端部固定部54b)が形成されていると共に、該前端部と該後端部との間(前端部固定部54aと後端部固定部54bとの間)に、弾性伸縮部53が吸収性本体10に固定されて、中間部固定部55が局部的に形成されている。中間部固定部55は、排泄部対向部Aと後方部Bとの境界及びその近傍に位置している。
図4には、中間部固定部55の幅方向Xに沿う模式的な断面図が示されている。尚、図4では、ナプキン1Aの右側の中間部固定部55のみを示しているが、左側の中間部固定部55も右側と同様に構成されている。中間部固定部55は、図4に示すように、弾性伸縮部53における内方弾性伸縮部53Aの略全域が、折り重ねられた起立部52と共に、吸収性本体10を構成する表面シート2に、接着剤やヒートシール等の公知の接合手段で接合され固定されて形成されている。第1実施形態における中間部固定部55は、内方弾性伸縮部53Aをその肌当接面側から加熱加圧(ヒートシール)し、起立部52を介して吸収性本体10に熱融着させることによって形成されている。中間部固定部55における外方弾性伸縮部53Bは、その全域が他の部材に固定されていない。尚、図示していないが、端部固定部54も、図4に示す中間部固定部55と同様に構成されている。
このように、前端部固定部54aと後端部固定部54bとの間に中間部固定部55が局部的に形成されていることにより、中間部固定部55の前後で起立している起立部52の幅方向Yの動きの自由度が制限され、これにより、防漏壁5の吸収性本体10の肌当接面側への倒れ込み(内倒れ)や、これに起因する体液の漏れが効果的に防止される。また、中間部固定部55の存在は、後述するように、防漏壁5Aにおける重層部56がナプキン1Aの着用前に消失してしまう(接合手段60による基壁部51の固定がナプキン1Aの着用前に解除されてしまう)不都合を回避する上でも有効である。
ナプキン1Aは、吸収性本体10の長手方向Xの略全長に亘って延びる左右一対の弾性伸縮部53,53が、それぞれ、伸長状態で前端部固定部54a及び後端部固定部54bで固定されていることにより、図1に示すように、自然状態において端部固定部54a,54b間で湾曲する。ナプキン1Aは、弾性伸縮部53の収縮によって、長手方向Xの全体形状が、図1に示すように自然状態において肌当接面側(表面シート2側)に凹状に湾曲している。
本発明の主たる特徴の一つとして、少なくとも排泄部対向部Aに位置する(前端部固定部54aと中間部固定部55との間に位置する)防漏壁5Aが、ナプキン1Aの着用前において、図2に示すように、防漏壁5Aの一部が互いに対向するように折り重ねられ且つその折り重ねられた対向部どうしが接合されて重層部56を形成している点が挙げられる。重層部56は、防漏壁5Aが幅方向Yの外方に折り返されて形成されている。より具体的には、重層部56は、防漏壁5Aの基壁部51を構成するサイドシート50が、ナプキン1Aの肌当接面の上方に位置する、接合部13と基壁部51の上端部51aとの間において、長手方向Xに延びる折曲線56aで幅方向Yの内方へ突出するように折り曲げられ(即ち幅方向Yの外方に折り返され)、その突出部を構成する、相対向するサイドシート50の内面どうしを、接着剤等の接合手段60によって接合することで形成されている。こうして形成された重層部56は、接合部13に接合されている。
第1実施形態においては、重層部56は、排泄部対向部Aに位置する防漏壁5Aにのみ形成されており、図3に示すように、後方部Bに位置する(中間部固定部55と後端部固定部54bとの間に位置する)防漏壁5Bには形成されていない。そのため、ナプキン1Aの着用前においては、防漏壁5Aは、防漏壁5Bに比して、起立高さ〔防漏壁5において接合部13よりも上方(肌側)に位置する部分の垂直方向に沿った長さ〕が重層部56の分だけ低くなっている。
そして、第1実施形態においては、重層部56における前記対向部どうしの接合(接合手段60による接合)が、ナプキン1Aの着用中〔ナプキン1Aを身体の所定位置(股間)に装着してから取り外すまでの間〕に解除されるようになされており、該接合の解除によって重層部56が消失し、防漏壁5Aの起立高さが該接合の解除前に比して高くなるようになされている。即ち、重層部56において基壁部51の前記対向部どうしを接合している接合手段60は、ナプキン1Aの通常の使用により、その前記対向部どうしの接合を維持する接合力が低下し、その結果重層部56が消失して、基壁部51の折り重ねられていた部分が本来の起立状態に戻る。接合手段60による接合が解除され重層部56が消失した後の防漏壁5Aは、図3に示す防漏壁5Bと同様の状態となり、防漏壁5Aの起立高さは、防漏壁5Bの起立高さと同じになる。
前述したように、重層部56における接合手段60による基壁部51の前記対向部どうしの接合が、ナプキン1Aの着用中に解除されるようにするために、接合手段60としては、ナプキン1Aの通常の使用においてその接合力が低下するものが好ましく用いられ、具体的には1)被剥離処理部上に塗設された接着剤、又は2)ウオームオフタイプ感温性接着剤が好ましい。前記1)は、ナプキン1Aの着用中における重層部56の動きによって、前記対向部どうしの接合が解除されるようにするための手段であり、前記2)は、ナプキン1Aの着用者の体温による重層部56(防漏壁5A)の温度上昇によって、前記対向部どうしの接合が解除されるようにするための手段である。以下、前記1)及び2)について説明する。
前記1)の具体例としては、ナプキン1Aの着用前の重層部56における前記対向部どうしが、該対向部における剥離処理された部分に塗布された接着剤で互いに接合されている形態が挙げられる。前記1)で用いる接合手段60としての接着剤(剥離処理と組み合わされる接着剤)は、下記方法による再剥離力が10〜100cN/25mm、特に10〜80cN/25mm、とりわけ15〜60cN/25mmであることが好ましい。ここでいう接着剤の再剥離力は、重層部56における前記対向部どうしの再接合力と同じである。剥離処理と組み合わされる接着剤の再剥離力(重層部における前記対向部どうしの再接合力)が斯かる範囲にあることにより、ナプキン1Aの着用中の重層部56における前記対向部どうしの接合の解除がより確実になされるようになる。
また、前記1)で用いる接合手段60としての接着剤は、下記方法による剥離力が500〜1500cN/25mmであることが、ナプキン1Aの着用初期における重層部56の形状維持の点から好ましい。ここでいう接着剤の剥離力は、重層部56における前記対向部どうしの接合力と同じである。
<接着剤の剥離力及び再剥離力の測定方法>
接着剤の剥離力及び再剥離力の評価には、(株)オリエンテック製のテンシロンRTC−1210Aと引張・圧縮・曲げ試験用データ処理システムを使用する。吸収性物品から測定対象部分(防漏壁の対向部どうしが接着剤で接合された重層部)を切り出して測定サンプルとし、テンシロンのチャック間距離を20mmに設定して、測定サンプルの長手方向の一端をテープ等でチャックに固定し、他端を25mm程度剥がして(又は接合されていない部分を予め形成して)チャックに固定する。そして、100mm/秒の速度でチャック間距離を拡げて測定サンプルをT字剥離させ、その間の指示計(荷重計)が示す最大値(cN)を読み取る。別途、測定サンプルにおける接着剤の幅〔引張方向と直交する方向(測定サンプルの幅方向)の長さ〕を計測しておき、読み取った最大値を、接着剤の幅が25mmの場合に換算し、その換算値を接着剤の剥離力とする。次いで、測定サンプルをT字剥離させて得られた2枚の測定サンプル片を、下記手順で貼り合わせて測定サンプルを再生し、再生された測定サンプルを、前記手順に従ってT字剥離させて接着剤幅25mmにおける剥離力を求め、これを接着剤の再剥離力とする。2枚の測定サンプル片の貼り合わせは、2枚の測定サンプル片をT字剥離前の状態と同様に重ね合わせて積層体を得、該積層体上を、重量2kgのゴムローラを略毎秒50mmの速さで1往復させた後、30分間放置することにより実施する。ゴムローラは、金属の剛体からなる円筒状のローラ本体の周面を、厚さ約6mm、スプリング硬さ80程度のゴム層で被覆してなるもので、軸長方向の長さ(幅)約45mm、外径約83mmのものを使用する。尚、測定は、23℃、65%RHの環境下で実施し、測定値(前記最大値)は3回の平均とする。また、測定サンプルが、弾性部材を含んでいる等の理由により伸縮性を有しているため、T字剥離において測定サンプルの伸縮による変形が発生する場合には、弾性部材の切断や伸縮部分に変形を抑制するテープ材料を接合する等の処置を施すことで、T字剥離中での測定サンプルの変形を抑える。
接着剤の剥離力及び再剥離力の評価には、(株)オリエンテック製のテンシロンRTC−1210Aと引張・圧縮・曲げ試験用データ処理システムを使用する。吸収性物品から測定対象部分(防漏壁の対向部どうしが接着剤で接合された重層部)を切り出して測定サンプルとし、テンシロンのチャック間距離を20mmに設定して、測定サンプルの長手方向の一端をテープ等でチャックに固定し、他端を25mm程度剥がして(又は接合されていない部分を予め形成して)チャックに固定する。そして、100mm/秒の速度でチャック間距離を拡げて測定サンプルをT字剥離させ、その間の指示計(荷重計)が示す最大値(cN)を読み取る。別途、測定サンプルにおける接着剤の幅〔引張方向と直交する方向(測定サンプルの幅方向)の長さ〕を計測しておき、読み取った最大値を、接着剤の幅が25mmの場合に換算し、その換算値を接着剤の剥離力とする。次いで、測定サンプルをT字剥離させて得られた2枚の測定サンプル片を、下記手順で貼り合わせて測定サンプルを再生し、再生された測定サンプルを、前記手順に従ってT字剥離させて接着剤幅25mmにおける剥離力を求め、これを接着剤の再剥離力とする。2枚の測定サンプル片の貼り合わせは、2枚の測定サンプル片をT字剥離前の状態と同様に重ね合わせて積層体を得、該積層体上を、重量2kgのゴムローラを略毎秒50mmの速さで1往復させた後、30分間放置することにより実施する。ゴムローラは、金属の剛体からなる円筒状のローラ本体の周面を、厚さ約6mm、スプリング硬さ80程度のゴム層で被覆してなるもので、軸長方向の長さ(幅)約45mm、外径約83mmのものを使用する。尚、測定は、23℃、65%RHの環境下で実施し、測定値(前記最大値)は3回の平均とする。また、測定サンプルが、弾性部材を含んでいる等の理由により伸縮性を有しているため、T字剥離において測定サンプルの伸縮による変形が発生する場合には、弾性部材の切断や伸縮部分に変形を抑制するテープ材料を接合する等の処置を施すことで、T字剥離中での測定サンプルの変形を抑える。
前記1)で用いる接合手段60としての接着剤(剥離処理と組み合わされる接着剤)としては、例えば、粘着付与成分として低流動性樹脂を使用したホットメルト型粘着剤が挙げられる。また、前記1)で用いる剥離処理は、重層部56における前記対向部どうしの相対向する面の両方又は一方(好ましくは両方)に、剥離処理剤を付与することで実施できる。剥離処理剤としては、シリコーン系の界面活性剤や樹脂等、吸収性物品用途において剥離処理剤として通常用いられているものを特に制限無く用いることができる。この場合、剥離処理面を接着剤を挟んで折畳み、折畳みを解除する力は、装着前の誤解除防止、装着後に解除しやすさの両立の観点から、50〜250cN/25mmが好ましい。
接合手段60として、前記1)の「被剥離処理部上に塗設された接着剤」を採用した場合、以下に説明するように、ナプキン1Aの着用中における重層部56の動きによって、重層部56における前記対向部どうしの接合が解除される。図5には、ナプキン1Aをショーツ100の股下部の肌当接面に常法に従って装着した状態が示されている。ナプキン1Aは、図5に示すように、吸収性本体10の非肌当接面に設けられた粘着部(図示せず)を介して、ショーツ100の肌当接面に固定されていると共に、ウイング部7,7がショーツ100の股下部の外縁100sに沿って折り曲げられ、折り曲げられたウイング部7,7それぞれの非肌当接面に設けられた粘着部(図示せず)を介して、ショーツ100の非肌当接面に固定されている。斯かるナプキン1Aの着用状態において、着用者が歩行したり足を組んだり等の動作をすると、一対の防漏壁5A,5Aには、それぞれ、図5中F1,F2で示す如き、異なる二方向以上の応力が同時に作用してナプキン1Aに捻れが発生し、重層部56に動きが生じる。この重層部56に動きによって、前述した「被剥離処理部上に塗設された接着剤」からなる接合手段60による、基壁部51の前記対向部どうしの接合が解除され、重層部56が消失して、防漏壁5Aの起立高さが高くなる。
このように、前記1)の「被剥離処理部上に塗設された接着剤」からなる接合手段60による、基壁部51の前記対向部どうしの接合は、防漏壁5Aに異なる二方向以上の応力が同時に作用することによって初めて解除され、防漏壁5Aに一方向のみの応力が作用しても該接合は解除され難い。一方、ナプキン1Aの着用前の主たる操作において、防漏壁5Aに作用する応力は略一方向のみであるため、接合手段60として前述した「被剥離処理部上に塗設された接着剤」を用いることにより、ナプキン1Aの着用前の操作で前記接合が解除されて重層部56が消失してしまう不都合が回避される。例えば、ナプキン1Aは通常、未使用の状態においては、長手方向Xに折り畳まれ且つ所定箇所が封止されて個装されているところ、ナプキン1Aの使用に際しその個装を開封するときには、個装を展開するときに防漏壁5Aに長手方向Xに沿う応力が作用するが、斯かる一方向の応力では、防漏壁5Aにおける接合手段60(被剥離処理部上に塗設された接着剤)による基壁部51の前記対向部どうしの接合は解除され難い。また、前記個装を開封後、展開されたナプキン1Aをショーツに装着するときには、図5に示すように、ウイング部7,7をショーツの非肌当接面側に折り曲げるが、このとき防漏壁5Aに作用する幅方向Yに沿う応力によっても、防漏壁5Aにおける接合手段60(被剥離処理部上に塗設された接着剤)による基壁部51の前記対向部どうしの接合は解除され難い。
前記2)で用いる接合手段60としてのウオームオフタイプ感温性接着剤は、設定温度よりも低い温度で所定の接合力を発揮し且つ設定温度よりも高い温度で接合力が低下するものである。ウオームオフタイプ感温性接着剤の設定温度(スイッチング温度)は、人間の体温と同程度かそれ以上に設定することが好ましく、より具体的には35〜50℃が好ましい。ウオームオフタイプ感温性接着剤としては、例えば、軟化点が35℃〜50℃のホットメルト接着剤を用いることができ、また市販品として、インテリマーウオームオフタイプ(商品名、ニッタ(株)製)等を用いることができる。
以上、接合手段60として挙げた具体例(被剥離処理部上に塗設された接着剤、ウオームオフタイプ感温性接着剤)は適宜組み合わせて用いることができる。また、接合手段60の具体例として挙げた前記1)及び2)において、重層部56における前記対向部どうしを接合する接着剤(被剥離処理部上に塗設された接着剤、ウオームオフタイプ感温性接着剤)は、水溶性であること、即ち水溶性接着剤が好ましい。前記対向部どうしを接合する接着剤が水溶性接着剤であると、ナプキン1Aの着用中に排泄された経血等の体液によって重層部56が濡れた場合に、その濡れた重層部56における水溶性接着剤が軟化するため、該水溶性接着剤による前記対向部どうしの接合がナプキン1Aの着用中に解除されやすくなる。接合手段60として使用可能な水溶性接着剤としては、例えば、水性ビニルウレタン系水性系接着剤、ポリビニルアルコール系水性系接着剤等が挙げられる。
接合手段60は、平面視において、長手方向Xに延びる連続直線状であっても良く、長手方向Xに延びる破線状であっても良く、また直線でも曲線でも良い。第1実施形態における接合手段60は、図1に示すように、排泄部対向部Aの長手方向Xの略全長(起立可能な防漏壁5Aの長手方向Xの略全長)に亘って連続直線状に延びている。接合手段60がこのように所定領域に途切れることなく連続して存在していると、連続している接合手段60の一部が、前述したように重層部56の動き、温度上昇、濡れ等によってその接合力が低下して、該一部における重層部56が消失したときに、該所定領域における重層部56の他の部分もこれに連動して消失しやすく、結果として防漏壁5Aの本来の起立状態が速やかに実現するようになる。
ところで、防漏壁5(弾性伸縮部53)の長手方向Xの長さは、重層部56における接合手段60による基壁部51の前記対向部どうしの接合に影響を及ぼす。即ち、防漏壁5の長手方向Xの長さが長くなると、弾性伸縮部53に導入される弾性部材15の長手方向Xの長さも長くなるため、防漏壁5(ナプキン1A)が湾曲し易くなり、これにより、ナプキン着用前に接合手段60による前記接合が解除されて重層部56が消失してしまうという不都合が起こるおそれがある。特に、第1実施形態のナプキン1Aの如き、夜用の生理用ナプキン(製品長が300mmを超える生理用ナプキン)は、昼用の生理用ナプキンに比して製品長が長く、それに伴って防漏壁も長くなる傾向がある。これに対し、第1実施形態においては、前述したように防漏壁5に中間部固定部55を設けることで、吸収性本体10の長手方向Xの略全長に亘る防漏壁5を、中間部固定部55を挟んで前方側(防漏壁5A)と後方側(防漏壁5B)とに区分し、接合手段60を備えた防漏壁5Aの長手方向Xの長さを、このような不都合が起こり難い範囲に調整している。斯かる中間部固定部55による重層部56(接合手段60)に関する効果をより確実に奏させるようにする観点から、中間部固定部55は、中間部固定部55によって区分されて生じた各防漏壁5A,5Bにおける起立可能な部分(防漏壁5A,5Bにおける端部固定部54を除いた部分)の長手方向Xの長さが、55〜190mm、特に75〜150mmとなるような位置に設けられることが好ましい。
第1実施形態のナプキン1について更に説明すると、図1に示すように、ナプキン1の肌当接面(表面シート2の肌当接面2a)における、該ナプキン1の平面視において吸収体4と重なる領域には、表面シート2及び吸収体4が裏面シート3に向かって一体的に凹陥した、線状の溝部9が形成されている。溝部9においては、表面シート2及び吸収体4が熱融着等により一体化している。溝部9は、中高部41,42を包囲するように形成されている。このように、ナプキン1の肌当接面側に、表面シート2と吸収体4とが一体化された溝部9が形成されていることにより、吸収体4の平面方向の液の拡散が効果的に抑制されるようになり、また吸収体4のヨレを防止できる。溝部9の形成は、経血等の排泄液の拡散防止、着用時の身体に対する密着性の向上等に特に有効である。溝部9は、熱を伴うか又は伴わないエンボス、あるいは超音波エンボス等のエンボス加工により常法に従って形成することができる。
ナプキン1における各部の形成材料について説明すると、表面シート2及び裏面シート3としては、当該技術分野において従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができる。表面シート2としては、例えば、親水化処理が施された各種不織布や開孔フィルム等の液透過性のシートを用いることができる。また、裏面シート3としては、液不透過性でも液透過性でも良く、例えば透湿性を有しない樹脂フィルムや、微細孔を有し、透湿性を有する樹脂フィルム、撥水不織布等の不織布、これらと他のシートとのラミネート体等を用いることができる。
吸収体4(下層吸収体40、上層吸収体43,44)を構成する材料としては、当該技術分野において従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができ、例えば、木材パルプ、合繊繊維等の親水性繊維からなる繊維集合体、又は該繊維集合体に粒子状の高吸水性樹脂を保持させたもの等を用いることができる。また吸収体4は、該繊維集合体等からなる液保持性の吸収性コア(図示せず)と、該吸収性コアを被覆する液透過性のコアラップシート(図示せず)とを含んで構成されていても良く、その場合、吸収性コアとコアラップシートとの間は、所定の部位においてホットメルト粘着剤等の接合手段により接合されていても良い。吸収性コアを被覆するコアラップシートとしては、例えば、ティッシュペーパー等の紙や各種不織布、開孔フィルム等を用いることができる。
防漏壁5〔基壁部51(起立部52)、弾性伸縮部53〕を構成するサイドシート50としては、当該技術分野において従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができ、例えば、例えば、撥水性の不織布、樹脂フィルム製のシート、不織布と樹脂フィルムとのラミネート体等を用いることができる。特に撥水性のエアスルー不織布を用いることが、肌触りのよさと横モレ防止の点から好ましい。また、弾性伸縮部53に配される弾性部材15としては、当該技術分野において従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができ、糸状でも帯状でも良い。
第1実施形態のナプキン1Aは、ウイング部を有する公知の生理用ナプキンと同様にショーツ等の着衣に装着して使用する。第1実施形態のナプキン1Aによれば、着用前において、排泄部対向部Aに位置する防漏壁5Aに、基壁部51が折り曲げられ且つ接合手段60で固定されて形成された、重層部56が設けられており、これにより防漏壁5Aの起立高さが本来の起立高さ(防漏壁5Bの起立高さと同じ起立高さ)よりも低く抑えられているため、着用初期段階における防漏壁5Aの内倒れを起こし難い。着用初期段階における防漏壁の内倒れ防止は、該段階以降の防漏壁の内倒れ防止に有効であり、第1実施形態のナプキン1Aによれば、着用中を通じて防漏壁5Aの内倒れが防止され、これにより防漏壁5A本来の機能(漏れ防止機能)が十分に発揮され且つ防漏壁5Aの経血等の体液による汚れが起こり難い。また、防漏壁5Aの重層部56は、ナプキン1Aの着用中における重層部56の動き若しくは温度上昇又はナプキン1Aの着用中に排泄された体液による重層部56の濡れ等によって消失するようになされているため、防漏壁5Aは、ナプキン1Aの着用後に容易に本来の起立状態に戻ることができ、漏れ防止手段として有効に作用する。
本発明に係る防漏壁は、前述した第1実施形態に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の形態のものを採用することができる。図6〜図11には、本発明に係る防漏壁の他の実施形態が示されている。後述する他の実施形態(第2、第3、第4実施形態)については、前述した第1実施形態と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、第1実施形態についての説明が適宜適用される。
図6は、本発明の吸収性物品の第2実施形態である生理用ナプキン1Bの図2相当図、図7は、図6に示す防漏壁5A1の重層部57が消失した状態を示す断面図である。第2実施形態における防漏壁5A1は、弾性伸縮部53が、基壁部51(起立部52)の上端部51aから幅方向Yの外方に張り出す外方弾性伸縮部のみから構成されている点で、第1実施形態における防漏壁5Aと異なる。
第2実施形態における防漏壁5A1においては、図6に示すように、防漏壁5A1の一部が互いに対向するように折り重ねられ且つその折り重ねられた対向部どうしが接合されて形成された、重層部57が、基壁部51と弾性伸縮部53とが固定されて形成されている。より具体的には、重層部57は、防漏壁5A1の基壁部51を構成するサイドシート50が、基壁部51の上端部51a又はその近傍において、長手方向Xに延びる折曲線56aで幅方向Yの内方へ突出するように折り曲げられ(即ち幅方向Yの外方に折り返され)、その突出部を構成する、相対向する基壁部51と弾性伸縮部53との内面どうしを、接合手段60によって接合することで形成されており、接合手段60が弾性伸縮部53に直接接合されている。
第2実施形態のナプキン1Bによっても、第1実施形態のナプキン1Aと同様の効果が奏される。特に第2実施形態においては、接合手段60が弾性伸縮部53に直接接合されているため、接合手段60が弾性伸縮部53を構成する弾性部材15の伸縮の影響を受けやすく、そのため、接合手段60が弾性伸縮部53に直接接合されていない第1実施形態に比して、ナプキンの着用中における重層部57(防漏壁5A1)の動きによって、接合手段60による接合(基壁部51と弾性伸縮部53との接合)が解除されやすく、結果として図7に示す如き防漏壁5A1の本来の起立状態がより速やかに実現される。斯かる第2実施形態の作用効果は、特に、接合手段60として前述した接着剤(被剥離処理部上に塗設された接着剤、ウオームオフタイプ感温性接着剤)を用いた場合に奏されやすい。尚、重層部が消失した状態を示す図7並びに後述する図9及び図11では、接合手段60を図示していないが、実際には、重層部が消失しても接合手段60が消失するとは限らず、接合力が低下した接合手段60が残っている場合もある。
図8は、本発明の吸収性物品の第3実施形態である生理用ナプキン1Cの図2相当図、図9は、図8に示す防漏壁5A2の重層部58が消失した状態を示す断面図である。第3実施形態における防漏壁5A2においては、図8に示すように、防漏壁5A2の一部が互いに対向するように折り重ねられ且つその折り重ねられた対向部どうしが接合されて形成された、重層部58が、基壁部51と弾性伸縮部53とが接合されて形成されていることに加えて、更に、防漏壁5A2が幅方向Yの内方に折り返されて形成されている。より具体的には、防漏壁5A2の基壁部51を構成するサイドシート50が、長手方向Xに延びる第1折曲線56bで幅方向Yの内方へ突出するように折り曲げられ(即ち幅方向Yの外方に折り返され)、更に、長手方向Xに延びる第2折曲線56cで幅方向Yの外方へ突出するように折り曲げられ(即ち幅方向Yの内方に折り返され)ており、重層部58は、この第2折曲線56cを挟んで相対向する基壁部51と弾性伸縮部53との内面どうしを、接合手段60によって接合することで形成されており、接合手段60は、弾性伸縮部53に直接接合され且つ接合手段60の内側部(接合手段60の長手方向Xに沿う両側部のうち、幅方向内方側の側部)がサイドシート50によって被覆されずに露出している。
第3実施形態のナプキン1Cによっても、第2実施形態のナプキン1Bと同様の効果が奏される。特に第3実施形態においては、接合手段60が弾性伸縮部53に直接接合されていることによる前述した効果に加えて、防漏壁5A2が幅方向Yの内方に折り返されて重層部58が形成されていることによって、接合手段60の内側部が露出しているため、ナプキン1Cの着用中に排泄された経血等の体液によって接合手段60自体が濡れやすく、そのため、接合手段60の内側部がサイドシート50で被覆されている第2実施形態に比して、排泄された体液による重層部58の濡れによって、接合手段60による接合(基壁部51と弾性伸縮部53との接合)が解除されやすく、結果として図9に示す如き防漏壁5A2の本来の起立状態がより速やかに実現される。つまり、第3実施形態における防漏壁5A3は、前記1)及び2)の両方の作用によって本来の起立状態を得ることができる。斯かる第3実施形態の作用効果は、特に、接合手段60として前述した水溶性接着剤(被剥離処理部上に塗設された接着剤、ウオームオフタイプ感温性接着剤)を用いた場合に奏されやすい。
図10は、本発明の吸収性物品の第4実施形態である生理用ナプキン1Dの図2相当図、図11は、図10に示す防漏壁5A3の重層部59が消失した状態を示す断面図である。第4実施形態における防漏壁5A3においては、図10に示すように、防漏壁5A3の一部が互いに対向するように折り重ねられ且つその折り重ねられた対向部どうしが接合されて形成された、重層部59が、防漏壁5A3が幅方向Yの内方に折り返されて形成されている。より具体的には、防漏壁5A3の基壁部51を構成するサイドシート50が、長手方向Xに延びる第1折曲線56bで幅方向Yの内方へ突出するように折り曲げられ(即ち幅方向Yの外方に折り返され)、更に、長手方向Xに延びる第2折曲線56cで幅方向Yの外方へ突出するように折り曲げられ(即ち幅方向Yの内方に折り返され)、更に、長手方向Xに延びる第2折曲線56dで幅方向Yの内方へ突出するように折り曲げられ(即ち幅方向Yの外方に折り返され)ており、重層部59は、この第2折曲線56cを挟んで相対向する基壁部51の内面どうしを、接合手段60によって接合することで形成されており、接合手段60の内側部がサイドシート50によって被覆されずに露出している。
第4実施形態のナプキン1Dによっても、第1実施形態のナプキン1Aと同様の効果が奏される。特に第4実施形態においては、防漏壁5A3が幅方向Yの内方に折り返されて重層部59が形成されていることによって、接合手段60の内側部が露出しているため、排泄された体液による重層部59の濡れによって、接合手段60による接合が解除されやすく、結果として図10に示す如き防漏壁5A3の本来の起立状態がより速やかに実現される。斯かる第4実施形態の作用効果は、特に、接合手段60として前述した水溶性接着剤(被剥離処理部上に塗設された接着剤、ウオームオフタイプ感温性接着剤)を用いた場合に奏されやすい。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、前記実施形態では、重層部は、排泄部対向部に位置する防漏壁にのみ設けられていたが、例えば後方部等、排泄部対向部以外の部位に位置する防漏壁に設けても良い。
また、本発明に係る生理用ナプキンは、ウイング部を有しないものであっても良く、後部フラップ部を有しないものであっても良く、ウイング部及び後部フラップ部を有しないものであっても良い。また、本発明の吸収性物品は、パンティライナ(おりものシート)、失禁パッド等であっても良い。
1A,1B,1C,1D 生理用ナプキン(吸収性物品)
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
5,5A,5B,5A1,5A2,5A3 防漏壁
10 吸収性本体
15 弾性部材
50 サイドシート
51 基壁部
52 起立部
53 弾性伸縮部
54 端部固定部
54a 前端部固定部
54b 後端部固定部
55 中間部固定部
56,57,58,59 重層部
60 接合手段
A 排泄部対向部
B 後方部
X 本体長手方向
Y 本体幅方向
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
5,5A,5B,5A1,5A2,5A3 防漏壁
10 吸収性本体
15 弾性部材
50 サイドシート
51 基壁部
52 起立部
53 弾性伸縮部
54 端部固定部
54a 前端部固定部
54b 後端部固定部
55 中間部固定部
56,57,58,59 重層部
60 接合手段
A 排泄部対向部
B 後方部
X 本体長手方向
Y 本体幅方向
Claims (6)
- 着用時に着用者の排泄部に対向する排泄部対向部を有する実質的に縦長の吸収性本体と、該吸収性本体の本体長手方向に沿う両側部それぞれに配置され且つ少なくとも該排泄部対向部において着用時に着用者の肌側に向かって起立する一対の防漏壁とを備えた吸収性物品であって、
前記防漏壁は、基壁部と、該基壁部の上端部に連接され、本体長手方向に沿って弾性部材が伸長状態で配されている弾性伸縮部とを含んで構成されており、
少なくとも前記排泄部対向部に位置する前記防漏壁は、前記吸収性物品の着用前において、該防漏壁の一部が互いに対向するように折り重ねられ且つその折り重ねられた対向部どうしが接合されて重層部を形成し、着用中、該重層部における該対向部どうしの接合が解除され、該防漏壁の起立高さが該接合の解除前に比して高くなる吸収性物品。 - 前記吸収性物品の着用前の前記重層部における前記対向部どうしは、設定温度よりも低い温度で所定の接合力を発揮し且つ設定温度よりも高い温度で接合力が低下する、ウオームオフタイプ感温性接着剤で互いに接合されており、該設定温度が、人間の体温と同程度かそれ以上に設定されている請求項1記載の吸収性物品。
- 前記吸収性物品の着用前の前記重層部における前記対向部どうしは、該対向部における剥離処理された部分に塗布された接着剤で互いに接合されている請求項1記載の吸収性物品。
- 前記接着剤の剥離力は、10〜100cN/25mmである請求項3記載の吸収性物品。
- 前記重層部における前記対向部どうしを接合する接着剤は水溶性である請求項2〜4の何れか一項に記載の吸収性物品。
- 前記防漏壁の本体長手方向の前端部及び後端部それぞれに、前記弾性伸縮部が前記吸収性本体に接合されて、端部接合部が形成されていると共に、該前端部と該後端部との間に、該弾性伸縮部が前記吸収性本体に固定されて、中間部固定部が局部的に形成されている請求項1〜5の何れか一項に記載の吸収性物品。
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