JP2012077126A - 蛍光体およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】焼成温度が低温であった場合においても、蛍光体中の賦活剤であるEuをEu3+からEu2+に効率的に還元することが可能な蛍光体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、金属ハロゲン化物とEu含有化合物を焼成し、固溶体を作製する工程と、前記固溶体と金属化合物を混合して焼成する工程を具備することを特徴とする黄色蛍光体の製造方法である。前記金属ハロゲン化物として、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物および希土類ハロゲン化物から選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましく、また前記金属化合物として、(i)Si化合物および/またはGe化合物と、(ii)アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属の化合物のうち、少なくとも前記金属ハロゲン化物で添加しなかった金属とを含む化合物を用いることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、蛍光体およびその製造方法に関するものである。
白色LEDは、紫外から青色の領域の光(波長が380〜500nm程度)を放出するLEDチップと、該LEDチップから放出される光で励起されて発光する蛍光体とを組み合わせて構成されるものであり、その組み合わせによって様々な色温度の白色を実現することができる。
紫外から青色の領域の光によって励起され発光する蛍光体、すなわち白色LEDに用いることのできる蛍光体は既に知られており、白色LED用の蛍光体として、例えば、特許文献1にはY3Al512:Ce3+で示される蛍光体が開示され、特許文献2、3には、Li2SrSiO4:Euで示される蛍光体が開示されている。ここでY3Al512:Ce3+を例にとると、Y3Al512が蛍光体の母体結晶を示し、Ce3+が母体結晶を賦活する発光イオンである。
特開平10−242513号公報 国際公開第03/80763号パンフレット 特開2006−237113号公報
式Li2SrSiO4:Euで示される蛍光体は、発光色に優れ、青色LEDから放出される青色光を効率よく吸収し、570nm付近に発光ピークを有するブロードな黄色発光を示すとともに、高温に曝された状態でも発光強度を十分に維持できるといった特性を持つことが知られている。なお、本願明細書において黄色発光とは、ピーク波長が560nm〜590nm付近に発光ピークを持つことを意味する。
また、YAG:Ce等の白色LED用蛍光体は、約1500℃という高温の焼成によって合成されるのに対して、Li2SrSiO4:Eu2+は、800〜900℃という低温焼成で合成することが可能であり、生産コストの面で有利である。
蛍光体において、発光イオンとして広く用いられているEuは空気中ではEu3+が安定であり、Eu2+によって発光する蛍光体もそのほとんどが還元雰囲気での高温焼成(例えば、1000℃以上)によってEu3+からEu2+に還元し、これを蛍光体の母体中に取り込ませることでEu2+の発光を得ている。しかしながら、Li2SrSiO4:Eu2+で示される蛍光体は低温焼成によるコストメリットといった優位な特性を有する反面、還元焼成温度が低温であるため、該蛍光体の発光イオンであるEu2+への還元が十分に進行しないという問題があった。
本発明は、焼成温度が低温であった場合においても、Eu3+からEu2+へ効率的に還元可能な黄色蛍光体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、金属ハロゲン化物とEu含有混合物を焼成し、固溶体を作製する工程と、前記固溶体と金属化合物を混合して焼成する工程を具備することを特徴とする黄色蛍光体の製造方法である。
前記金属ハロゲン化物として、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物および希土類ハロゲン化物から選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましく、より好ましくはアルカリ金属ハロゲン化物およびアルカリ土類金属ハロゲン化物の少なくとも一方を用いる。前記金属ハロゲン化物として、ハロゲン化ストロンチウムを用いることがさらに好ましく、特に塩化ストロンチウムを用いることが好ましい。
前記金属化合物として、(i)Si化合物および/またはGe化合物と、(ii)アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属の化合物のうち、少なくとも前記金属ハロゲン化物で添加しなかった金属とを含む化合物を用いることが好ましく、必要に応じて更に(iii)希土類元素化合物、Zn化合物、Bi化合物およびMn化合物より選ばれる少なくとも一種を用いることも好ましい。
前記Eu含有化合物に含まれるEuに対する、前記金属ハロゲン化物に含有される金属元素の原子比(金属ハロゲン化物に含有される金属元素/Eu含有化合物に含まれるEu)は0.05以上、20以下であることが好ましい。
本発明の製造方法によって得られる蛍光体は、M1 2a(M2 bLnc)M3 d4で表される黄色蛍光体であり、M1はアルカリ金属から選択される少なくとも1種、M2はアルカリ土類金属およびZnから選択される少なくとも1種、M3はSiおよびGeから選択される少なくとも1種、Lnは希土類元素、BiおよびMnより選ばれる1種以上のうち、少なくともEuを含み、aは0.1以上、1.5以下、bは0.8以上、1.2以下、cは0.005以上、0.2以下、dは0.8以上、1.2以下である。上記黄色蛍光体は、M1がLiであり、かつM3がSiであること;aが0.9以上、1.1以下であること;b、c、dが、b+c=1、d=1を満たすこと;M2がCa、Ba、MgおよびZnよりなる群から選ばれる1種、またはCa、Sr、Ba、Mg、およびZnよりなる群から選ばれる2種以上の元素であること;または結晶系が六方晶であることなどが好ましい。
本発明は、M1 2a(M2 bLnc)M3 d4で表される蛍光体であって、該蛍光体に含まれるEuのうち、2価のEuの割合が25原子%以上100原子%以下である黄色蛍光体も包含する。但し、M1はアルカリ金属から選択される少なくとも1種、M2はアルカリ土類金属およびZnから選択される少なくとも1種、M3はSiおよびGeから選択される少なくとも1種、Lnは希土類元素、BiおよびMnより選ばれる1種以上のうち、少なくともEuを含み、aは0.9以上、1.1以下、bは0.8以上、1.2以下、cは0.005以上、0.2以下、dは0.8以上、1.2以下である。
本発明は、上記のいずれかの蛍光体を有する白色LEDおよび発光装置も包含する。
本発明の製造方法は、金属ハロゲン化物とEu含有化合物の固溶体を作製するので、低温還元焼成においてもEu2+を安定的に生成することができ、その後に前記固溶体と金属化合物との混合物を焼成するので、さらにEu2+の割合を向上させることが可能である。すなわち、本発明の製造方法では、焼成温度が低い場合でもEu原料を効率よく還元して、蛍光体に含まれる全Eu中のEu2+の割合を向上でき、低環境負荷かつ低コストで蛍光体を製造することができる。
以下、本発明の蛍光体およびその製造方法について順に説明する。
本発明の蛍光体は、M1 2a(M2 bLnc)M3 d4で表される黄色蛍光体であって、該蛍光体中に含まれるEuのうち、2価のEuの割合が25原子%以上100原子%以下である。2価のEuの割合は、30原子%以上であることが好ましく、より好ましくは40原子%以上、さらに好ましくは50原子%以上である。
1はアルカリ金属から選択される少なくとも1種であり、M2はアルカリ土類金属およびZnから選択される少なくとも1種であり、M3はSiおよびGeから選択される少なくとも1種である。M1はLi、Na、Kであることが好ましく、より好ましくはLiであり、M3はSiであることが好ましい。またM2はSrのみでないことが好ましく、すなわち、Mg、Ca、BaまたはZnであるか、或いはMg、Ca、Sr、BaおよびZnよりなる群から選択される2種以上であることが好ましく、CaおよびSrであることがより好ましい。発光イオンとして賦活されるLnは、少なくともEuを含み、必要に応じて更に希土類元素、BiおよびMnより選ばれる1種以上を含む。
前記aの値は0.1以上、1.5以下であり、bは0.8以上、1.2以下であり、cは0.005以上、0.2以下であり、dは0.8以上、1.2以下である。aは0.8以上、1.2以下であることが好ましく、より好ましくは0.9以上、1.1以下である。b、dはいずれも0.8以上、1.0以下であることが好ましく、より好ましくは0.9以上、1.0以下である。cは好ましくは、0.01以上、0.1以下である。本発明の蛍光体の組成は、M1がLi、M3がSiであること、b、c、dは、b+c=1かつd=1の関係も満たすこと、M2がSrのみでないこと、などが好ましい。本発明の黄色蛍光体の結晶系は、六方晶であることが好ましい。
以下、本発明の蛍光体を製造する方法について説明する。
本発明の黄色蛍光体の製造方法は、金属ハロゲン化物と、Eu源となるEu含有化合物の混合物(第一混合物)を焼成し、固溶体を得ること、さらにその固溶体と金属化合物の混合物(第二混合物)を焼成することを特徴とする。通常、蛍光体は、蛍光体が所望の組成となるように、原料となる化合物を秤量、混合し、この混合物を焼成することによって得られるのに対し、本発明は、まず初めに金属ハロゲン化物とEu含有化合物の混合物を焼成して固溶体を得て、得られた固溶体と金属化合物の混合物をさらに焼成して蛍光体を得る点で、従来とは異なっている。
前記金属ハロゲン化物としては、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物および希土類ハロゲン化物から選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましく、中でもアルカリ金属ハロゲン化物およびアルカリ土類金属ハロゲン化物の少なくとも一方を用いることがより好ましい。また、金属ハロゲン化物としてアルカリ土類ハロゲン化物を用いることがさらに好ましく、最も好ましくはアルカリ土類塩化物(特にハロゲン化ストロンチウムであり、例えば塩化ストロンチウム(SrCl2))である。
金属ハロゲン化物と、Eu含有化合物のモル比(金属ハロゲン化物/Eu含有化合物)は、例えば0.05以上、20以下であることが好ましく、好ましくは0.1以上、10以下、より好ましくは0.5以上、5以下である。また、金属ハロゲン化物中の金属元素と、Eu含有化合物中のユーロピウムの原子比(金属ハロゲン化物中の金属元素/Eu含有化合物中のユーロピウム)は、例えば0.05以上、20以下、好ましくは0.1以上、10以下、より好ましくは0.5以上、5以下である。例えば金属ハロゲン化物としてSrCl2を用いる場合は、SrとEuの原子比(Sr/Eu)を0.5〜3(特に望ましくは1.0)となるようにSrCl2とEu含有化合物(例えば、Eu23)の混合比率を定めて第一混合物を得、第一混合物を焼成して固溶体を得る。
固溶体の合成(以下、「第一の焼成」と呼ぶ)は還元雰囲気下で行うことが好ましい。第一の焼成の雰囲気、温度および時間は、金属ハロゲン化物の組成や、金属ハロゲン化物と酸化ユーロピウムの混合比率等にもよるが、例えば、焼成雰囲気は、還元性ガス雰囲気とすることができ、例えば水素を0.1〜10体積%含有する不活性ガス(窒素、アルゴンなど)、アンモニアが挙げられる。焼成雰囲気は、好ましくは5体積%のH2を含有するN2雰囲気である。焼成温度は例えば500〜700℃であり、焼成時間は例えば1〜24時間である。
次に、固溶体と金属化合物を混合した第二混合物を焼成(以下、「第二の焼成」と呼ぶ。)することによって、蛍光体を得ることができる。前記金属化合物としては、(i)Si化合物および/またはGe化合物と、(ii)アルカリ金属及びアルカリ土類金属の化合物のうち、少なくとも前記金属ハロゲン化物で添加しなかった金属とを含む化合物を用いることが好ましい。なお、本明細書において「金属」とは、SiやGeのような半金属も含む。前記(ii)に関して、例えば前記金属ハロゲン化物としてアルカリ金属ハロゲン化物を用いた場合は、金属化合物としては、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属の化合物のうち、少なくともアルカリ土類金属化合物を用いることが好ましく、また前記金属ハロゲン化物としてアルカリ土類金属ハロゲン化物を用いた場合は、金属化合物としては、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属の化合物のうち、少なくともアルカリ金属化合物を用いることが好ましい。前記金属化合物は、必要に応じて更に(iii)希土類元素化合物、Zn化合物、Bi化合物およびMn化合物より選ばれる少なくとも一種を用いることも好ましい。前記金属化合物は、例えば、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、シュウ酸塩など、高温で分解および/または酸化して酸化物になり得るものである。
本発明の蛍光体は、上記した通り、賦活剤としてEuを含み、必要に応じて更に希土類元素、MnおよびBiよりなる群から選択される少なくとも1種を含有することができる。Euは固溶体中にEuを含有させることによって蛍光体中に含有させることができ、具体的には、固溶体を形成するEu含有化合物中のEuによって蛍光体中にEuを含有させることができる。また、さらに固溶体を形成する金属ハロゲン化物としてEuハロゲン化物を用いても良いし、第二混合物中の金属化合物としてEu化合物を用いても良い。またEu以外の賦活剤を蛍光体中に含有させる場合は、固溶体中の金属ハロゲン化物として、賦活剤に用いる金属のハロゲン化物を用いるか、また第二混合物中の金属化合物として、賦活剤に用いる金属の化合物を用いれば良い。
本発明の蛍光体であるM1 2a(M2 bLnc)M3 d4を得るためには、固溶体と金属化合物の混合割合は、(M1元素):(M2元素):(Euおよびその他の賦活剤):(M3元素)の比率が2a:b:c:dとなるように定めれば良い。すなわち、例えば本発明の蛍光体の好ましい組成の一つであるLi1.96Sr0.98Eu0.02SiO4を得るために、例えば金属ハロゲン化物としてSrCl2を用い(すなわち、固溶体はSrCl2とEu23を含む)、金属化合物としてSrCO3、Li2CO3、SiO2およびEu23を用いる場合、Li:Sr:Eu:Siの原子比が1.96:0.98:0.02:1.0となるように固溶体および金属化合物の混合比率を定めればよい。
第二の焼成の雰囲気、温度および時間は、第一焼成物および金属化合物の組成、混合比率等にもよるが、例えば、焼成雰囲気は、不活性ガス雰囲気、酸化性ガス雰囲気、還元性ガス雰囲気のいずれでも良い。不活性ガスとしては例えば窒素、アルゴンが挙げられ、酸化性ガスとしては例えば空気、酸素、酸素を0体積%超100体積%未満含有する不活性ガス(窒素、アルゴンなど)が挙げられ、還元性ガスとしては例えば水素を0.1〜10体積%含有する不活性ガス(窒素、アルゴンなど)、アンモニアが挙げられる。焼成雰囲気は、好ましくは5体積%のH2を含有するN2雰囲気である。また、強い還元性雰囲気で焼成する場合には、上記金属化合物に適量の炭素を添加して焼成しても良い。焼成温度は例えば700〜1000℃の温度、焼成時間は例えば1〜100時間とすることができる。前記第二混合物が水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、シュウ酸塩等の、高温で分解および/または酸化することによって酸化物になる化合物を含有する場合、第二の焼成前であって第一の焼成後に、第二混合物を第二の焼成温度よりも低い温度で所定時間保持(例えば500〜800℃で、1〜100時間)して仮焼し、酸化物としたり、結晶水を除去したりすることも可能である。また、仮焼後に粉砕を行っても良い。
第一混合物の混合、金属化合物の混合、および金属化合物と固溶体との混合は、湿式であってもよく、乾式であってもよい。また混合には、通常の装置を用いることができ、例えばボールミル、V型混合機、攪拌機等である。
本発明の製造方法によって得られる蛍光体は単一の結晶相を有することが好ましく、そのためには第二の焼成時または仮焼時に反応促進剤を添加することが好ましい。反応促進剤を添加することによって、得られる蛍光体の発光強度をより高いものとすることができる。反応促進剤としては、例えばアルカリ金属ハロゲン化物(LiF、NaF、KF、LiCl、NaCl、KClなど)、アルカリ金属炭酸塩(Li2CO3、Na2CO3、K2CO3など)、アルカリ金属炭酸水素塩(NaHCO3など)、ハロゲン化アンモニウム(NH4Cl、NH4Iなど)、土類金属の酸化物(B23など)、土類金属のオキソ酸(H3BO3など)などが挙げられる。
本発明の蛍光体は、原料(後述する金属ハロゲン化物、反応促進剤等)に由来するハロゲン元素、すなわちF、Cl、BrおよびIの1種以上を含有していてもよく、その合計含有量は、原料中に含有されるハロゲン元素の合計量に対して同量以下であれば良く、好ましくは50%以下、さらに好ましくは25%以下である。
上記した仮焼後の第二混合物、また最終的に得られた蛍光体は、例えばボールミルやジェットミル等を用いて粉砕したり、洗浄、分級することもできる。
本発明は、上記した蛍光体を含有する発光装置も包含する。発光装置として白色LEDを例に挙げ、以下に説明する。
白色LEDは、例えば特開平11−31845号公報、特開2002−226846号公報等に開示の方法によって製造することができる。すなわち、200nm以上、550nm以下の波長の光を発する発光素子を、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の透光性樹脂で封止し、その表面を覆うように蛍光体を配置することによって、白色LEDを製造することができる。白色LEDが所望の白色を発光できるように、蛍光体の量を適宜設定すれば良い。
蛍光体は、本発明の蛍光体を単独で用いても良いし、他の蛍光体と併用しても良い。他の蛍光体としては、BaMgAl1017:Eu、(Ba,Sr,Ca)(Al,Ga)24:Eu、BaMgAl1017:(Eu,Mn)、BaAl1219:(Eu,Mn)、(Ba,Sr,Ca)S:(Eu,Mn)、YBO3:(Ce,Tb)、Y23:Eu、Y22S:Eu、YVO4:Eu、(Ca,Sr)S:Eu、SrY24:Eu、Ca−Al−Si−O−N:Eu、Li−(Ca,Mg)−Ln−Al−O−N:Eu、(Ba,Sr,Ca)Si222:Eu、β−サイアロン、CaSc24:Ce(ただし、LnはEu以外の希土類金属元素を表す)などが挙げられる。
200nm以上550nm以下の波長の光を発する発光素子としては、紫外LED、青色LED等が挙げられ、これらは発光層としてGaN、IniGa1-iN(0<i<1)、IniAljGa1-i-jN(0<i<1、0<j<1、i+j<1)等の層を有する半導体が用いられる。発光層の組成を変化させることにより、発光波長を変化させることができる。
蛍光体は、白色LED以外にも、蛍光体励起源が真空紫外線である発光装置(例えば、PDP);蛍光体励起源が紫外線である発光装置(例えば、液晶ディスプレイ用バックライト、三波長形蛍光ランプ);蛍光体励起源が電子線である発光装置(例えば、CRTやFED)にも使用できる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前記、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
蛍光体の発光強度の測定は蛍光分光測定装置(日本分光(株)製FP−6500)を用い、XRD測定はX線回折装置(リガク製RINT2000)を用い、蛍光体中のEuの価数割合評価はXAFS測定により行った。
XAFS測定条件としてはSPring−8においてビームラインBL14B2を用い、透過法により行い、Eu−L3吸収端である6650〜7600eV測定領域として測定した。Eu2+(6972eV)の標準試料としてBaMgAl1017:Eu2+(BAM)、Eu3+(6980eV)の標準試料として酸化ユウロピウム(信越化学工業株式会社製、純度99.99%)を用いた。
解析プログラム(リガク製REX2000)を用い、各試料のXAFSデータをバックグラウンド処理し、XANESスペクトルを得た後、Eu2+、Eu3+標準試料のXANESスペクトルを用いて、各試料のXANESスペクトルのパターンフィッティングを行い、Eu2+ピークの割合から試料中のEu2+の割合を算出した。
比較例1
炭酸リチウム(関東化学株式会社製、純度99%)、炭酸ストロンチウム(堺化学工業株式会社製、純度99%以上)、酸化ユウロピウム(信越化学工業株式会社製、純度99.99%)、二酸化珪素(日本アエロジル株式会社製:純度99.99%)の各原料をLi:Sr:Eu:Siの原子比が1.96:0.98:0.02:1.0となるように秤量し、乾式ボールミルにより6時間混合して金属化合物混合物を得た。
前記金属化合物混合物を5体積%のH2を含有するN2雰囲気中で、800℃の温度で24時間保持して焼成し、その後室温まで徐冷して、式Li1.96(Sr0.98Eu0.02)SiO4で表される化合物を含有する蛍光体を得た。
蛍光体の全Eu中の2価のEu(Eu2+)の割合は14原子%であった。
比較例2
炭酸リチウム(関東化学株式会社製、純度99%)、炭酸ストロンチウム(堺化学工業株式会社製、純度99%以上)、酸化ユウロピウム(信越化学工業株式会社製、純度99.99%)、二酸化珪素(日本アエロジル株式会社製:純度99.99%)の各原料をLi:Sr:Eu:Siの原子比が1.96:0.98:0.02:1.0となるように秤量し、乾式ボールミルにより6時間混合して金属化合物混合物を得た。
前記金属化合物混合物を5体積%のH2を含有するN2雰囲気中で、800℃の温度で24時間保持して焼成し、その後室温まで徐冷した。得られた焼成物を粉砕し、さらに5体積%のH2を含有するN2雰囲気中で、800℃の温度で24時間保持して焼成し、式Li1.96(Sr0.98Eu0.02)SiO4で表される化合物を含有する蛍光体を得た。
蛍光体の全Eu中の2価のEu(Eu2+)の割合は17原子%であった。
実施例
塩化ストロンチウム(堺化学工業株式会社製、純度99%以上)、酸化ユウロピウム(信越化学工業株式会社製、純度99.99%)をSr/Euの原子比が1となるように秤量して混合し(SrCl2/Eu23のモル比=2)、混合物(第一混合物)を5体積%のH2を含有するN2雰囲気にて、650℃、12時間焼成することで固溶体を得た。なお、上記した第一混合物を焼成したものは、XRD測定によって固溶体を生成していることを確認した。
実施例1
上記固溶体と、炭酸リチウム(関東化学株式会社製、純度99%)、炭酸ストロンチウム(堺化学工業株式会社製、純度99%以上)、二酸化珪素(日本アエロジル株式会社製:純度99.99%)を、Li:Sr:Eu:Siの原子比が1.96:0.98:0.02:1.0となるように秤量し、乾式ボールミルにより6時間混合して第二混合物を得た。
第二混合物を5体積%のH2を含有するN2雰囲気中、800℃の温度で24時間保持して焼成し、その後室温まで徐冷して式Li1.96(Sr0.98Eu0.02)SiO4で表される化合物を含有する蛍光体を得た。
得られた蛍光体は、571nmに発光ピークを有し、全Eu中の2価のEu(Eu2+)の割合は25原子%であった。
実施例2
上記固溶体と、炭酸リチウム(関東化学株式会社製、純度99%)、炭酸ストロンチウム(堺化学工業株式会社製、純度99%以上)、二酸化珪素(日本アエロジル株式会社製:純度99.99%)を、Li:Sr:Eu:Siの原子比が1.96:0.98:0.02:1.0となるように秤量し、乾式ボールミルにより6時間混合して第二混合物を得た。
第二混合物を5体積%のH2を含有するN2雰囲気中、800℃の温度で24時間保持して焼成し、その後室温まで徐冷して焼成物を得た。この焼成物を粉砕して、さらに5体積%のH2を含有するN2雰囲気中、800℃の温度で24時間保持して焼成して、室温まで徐冷することで式Li1.96(Sr0.98Eu0.02)SiO4で表される化合物を含有する蛍光体を得た。
得られた蛍光体は、571nmに発光ピークを有し、全Eu中の2価のEu(Eu2+)の割合は46.3原子%であった。
実施例3
上記固溶体と、炭酸リチウム(関東化学株式会社製、純度99%)、炭酸ストロンチウム(堺化学工業株式会社製、純度99%以上)、二酸化珪素(日本アエロジル株式会社製:純度99.99%)を、Li:Sr:Eu:Siの原子比が1.96:0.98:0.02:1.0となるように秤量し、乾式ボールミルにより6時間混合して第二混合物を得た。
第二混合物を、5体積%のH2を含有するN2雰囲気中、800℃の温度で24時間保持して焼成し、その後室温まで徐冷して式Li1.96(Sr0.98Eu0.02)SiO4で表れる化合物を含有する蛍光体を得た。
得られた蛍光体は、571nmに発光ピークを有し、全Eu中の2価のEu(Eu2+)の割合は54.1原子%であった。
実施例4
上記固溶体と、炭酸リチウム(関東化学株式会社製、純度99%)、炭酸ストロンチウム(堺化学工業株式会社製、純度99%以上)、二酸化珪素(日本アエロジル株式会社製:純度99.99%)を、Li:Sr:Eu:Siの原子比が1.96:0.97:0.03:1.0となるように秤量し、乾式ボールミルにより6時間混合して第二混合物を得た。
第二混合物を、5体積%のH2を含有するN2雰囲気中、800℃の温度で24時間保持して焼成し、その後室温まで徐冷して式Li1.96(Sr0.98Eu0.02)SiO4で表れる化合物を含有する蛍光体を得た。
得られた蛍光体は、571nmに発光ピークを有し、全Eu中の2価のEu(Eu2+)の割合は54.0原子%であった。
実施例5
上記固溶体と、炭酸リチウム(関東化学株式会社製、純度99%)、炭酸ストロンチウム(堺化学工業株式会社製、純度99%以上)、二酸化珪素(日本アエロジル株式会社製:純度99.99%)を、Li:Sr:Eu:Siの原子比が1.96:0.95:0.05:1.0となるように秤量し、乾式ボールミルにより6時間混合して第二混合物を得た。
第二混合物を、5体積%のH2を含有するN2雰囲気中、800℃の温度で24時間保持して焼成し、その後室温まで徐冷して式Li1.96(Sr0.95Eu0.05)SiO4で表れる化合物を含有する蛍光体を得た。
得られた蛍光体は、571nmに発光ピークを有し、全Eu中の2価のEu(Eu2+)の割合は28.0原子%であった。
実施例6
上記固溶体と、炭酸リチウム(関東化学株式会社製、純度99%)、炭酸ストロンチウム(堺化学工業株式会社製、純度99%以上)、二酸化珪素(日本アエロジル株式会社製:純度99.99%)を、Li:Sr:Eu:Siの原子比が1.96:0.97:0.03:1.0となるように秤量し、乾式ボールミルにより6時間混合して第二混合物を得た。
第二混合物を、5体積%のH2を含有するN2雰囲気中、800℃の温度で24時間保持して焼成し、その後室温まで徐冷して式Li1.96(Sr0.97Eu0.03)SiO4で表れる化合物を含有する蛍光体を得た。
得られた蛍光体は、571nmに発光ピークを有し、全Eu中の2価のEu(Eu2+)の割合は64.3原子%であった。
実施例7
上記固溶体と、炭酸リチウム(関東化学株式会社製、純度99%)、炭酸ストロンチウム(堺化学工業株式会社製、純度99%以上)、二酸化珪素(日本アエロジル株式会社製:純度99.99%)を、Li:Sr:Eu:Siの原子比が1.96:0.95:0.05:1.0となるように秤量し、乾式ボールミルにより6時間混合して第二混合物を得た。
第二混合物を、5体積%のH2を含有するN2雰囲気中、800℃の温度で24時間保持して焼成し、その後室温まで徐冷して式Li1.96(Sr0.95Eu0.05)SiO4で表れる化合物を含有する蛍光体を得た。
得られた蛍光体は、571nmに発光ピークを有し、全Eu中の2価のEu(Eu2+)の割合は56.0原子%であった。
実施例8
上記固溶体と、炭酸リチウム(関東化学株式会社製、純度99%)、炭酸ストロンチウム(堺化学工業株式会社製、純度99%以上)、二酸化珪素(日本アエロジル株式会社製:純度99.99%)を、Li:Sr:Eu:Siの原子比が1.96:0.93:0.07:1.0となるように秤量し、乾式ボールミルにより6時間混合して第二混合物を得た。
第二混合物を、5体積%のH2を含有するN2雰囲気中、800℃の温度で24時間保持して焼成し、その後室温まで徐冷して式Li1.96(Sr0.93Eu0.07)SiO4で表れる化合物を含有する蛍光体を得た。
得られた蛍光体は、571nmに発光ピークを有し、全Eu中の2価のEu(Eu2+)の割合は50.0原子%であった。
また、実施例1〜8で得られた蛍光体は、いずれも六方晶であったことをXRDにより確認している。

Claims (17)

  1. 金属ハロゲン化物とEu含有化合物を焼成し、固溶体を作製する工程と、前記固溶体と金属化合物を混合して焼成する工程を具備することを特徴とする黄色蛍光体の製造方法。
  2. 前記金属ハロゲン化物として、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物および希土類ハロゲン化物から選ばれる少なくとも一種を用いる請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記金属ハロゲン化物として、アルカリ金属ハロゲン化物およびアルカリ土類金属ハロゲン化物の少なくとも一方を用いる請求項2に記載の製造方法。
  4. 金属ハロゲン化物がハロゲン化ストロンチウムである請求項3に記載の製造方法。
  5. ハロゲン化ストロンチウムが塩化ストロンチウムである請求項4に記載の製造方法。
  6. 前記金属化合物として、(i)Si化合物および/またはGe化合物と、(ii)アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属の化合物のうち、少なくとも前記金属ハロゲン化物で添加しなかった金属とを含む化合物を用いる請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 前記金属化合物として、更に(iii)希土類元素化合物、Zn化合物、Bi化合物およびMn化合物より選ばれる少なくとも一種を用いる請求項6に記載の製造方法。
  8. 前記Eu含有化合物に含まれるEuに対する、前記金属ハロゲン化物に含有される金属元素の原子比(金属ハロゲン化物に含有される金属元素/Eu含有化合物に含まれるEu)が0.05以上、20以下である請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
  9. 前記黄色蛍光体がM1 2a(M2 bLnc)M3 d4で表される請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
    但し、M1はアルカリ金属から選択される少なくとも1種、
    2はアルカリ土類金属およびZnから選択される少なくとも1種、
    3はSiおよびGeから選択される少なくとも1種、
    Lnは希土類元素、BiおよびMnより選ばれる1種以上のうち、少なくともEuを含み、
    aは0.1以上、1.5以下、
    bは0.8以上、1.2以下、
    cは0.005以上、0.2以下、
    dは0.8以上、1.2以下である。
  10. 1がLiであり、M3がSiである請求項9に記載の製造方法。
  11. aが0.9以上、1.1以下である請求項9または10に記載の製造方法。
  12. b、c、dが、b+c=1、d=1を満たす請求項9〜11のいずれかに記載の製造方法。
  13. 2がCa、Ba、MgおよびZnよりなる群から選ばれる1種、またはCa、Sr、Ba、Mg、およびZnよりなる群から選ばれる2種以上の元素である請求項9〜12のいずれかに記載の製造方法。
  14. 黄色蛍光体の結晶系が六方晶である請求項1〜13のいずれかに記載の製造方法。
  15. 1 2a(M2 bLnc)M3 d4で表される蛍光体であって、該蛍光体に含まれるEuのうち、2価のEuの割合が25原子%以上100原子%以下であることを特徴とする黄色蛍光体。
    但し、M1はアルカリ金属から選択される少なくとも1種、
    2はアルカリ土類金属およびZnから選択される少なくとも1種、
    3はSiおよびGeから選択される少なくとも1種、
    Lnは希土類元素、BiおよびMnより選ばれる1種以上のうち、少なくともEuを含み、
    aは0.9以上、1.1以下、
    bは0.8以上、1.2以下、
    cは0.005以上、0.2以下、
    dは0.8以上、1.2以下である。
  16. 請求項1〜14のいずれかに記載の製造方法によって得られる蛍光体または請求項15に記載の黄色蛍光体を用いた発光装置。
  17. 請求項1〜14のいずれかに記載の製造方法によって得られる蛍光体または請求項15に記載の黄色蛍光体を用いた白色LED。
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