JP2014167066A - 酸窒化物蛍光体及びそれを用いた発光素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】 温度特性や耐久性等の諸特性に優れ、従来よりも高輝度な新しいタイプの酸窒化物蛍光体を提供する。
【解決手段】 Sr、Ba、Si、O、N、およびEuを構成元素として含む蛍光体に、微量のK(カリウム)を構成元素に加えて成ることを特徴とする酸窒化物蛍光体[例えば、一般式 (Sr1-x-z Bax)Si2 O2 N2 Ky:Euz(0.35<x<0.6,0<y<0.2,0<z<0.1)]およびそれを用いる発光素子を使用することによって、温度特性や耐久性等の諸特性に優れ、従来よりも高輝度な発光を得る。
【選択図】図1

Description

本発明は青色光等の可視光線や紫外線を吸収し、黄色の可視光を発する蛍光体に関する。さらに白色LED等の黄色蛍光体として好適に使用できる蛍光体及びそれを使用した発光素子に関する。
一般に蛍光体は、紫外線、電子線、X線等の電磁波による励起によって近紫外光〜可視光を発する。そして、蛍光体の種類によって種々の分光分布を持たせることができるため、適当な励起源と組み合わせることにより様々な発光素子が開発されている。
蛍光体からの発光色については、光の三原色(赤色、青色、緑色)を利用すると全ての色味を表現できる。よって、種々の発光色のうち、特に、赤色、青色、緑色に発光する蛍光体について様々な開発が行われている。
更に最近、蛍光ランプに代わる次世代の照明用光源として、白色LEDが注目されている。白色LEDは、蛍光ランプと比べ、省エネルギーで長寿命であり、また水銀を使用しないことから地球環境に優しいといった利点を有している。
白色LEDの光源としては、基本的に、一種類のLEDを使用する方式(以下、「one chip型」という)と、色の異なる複数種のLEDを同時に使用する方式(以下、「multi−chips型」という)の二つを挙げることができる。
前者の「one chip型」は、青色LEDまたは紫外LEDを蛍光体の励起光源として使用し、蛍光体の発光を利用するものである。これに対し、後者の「multi−chips型」は、光の三原色である赤色,緑色,青色(R/G/B)のLED、あるいは補色関係の青色と黄色のLEDといった、色の異なる複数種のLEDを同時に点灯させるものである。このように前者の「one chip型」は一種類のLEDしか使用しないため、「multi−chips型」に比べて、安価であることや、駆動回路の設計が容易になるなどの利点がある。
上記した「one chip型」のうち、励起光源として青色LEDを用いたものが既に実用化されている。これは、青色LEDと酸化物系黄色蛍光体(Y3Al5O12:Ce、(Sr,Ca,Ba)2SiO4:Eu)を組み合わせることにより、青色と黄色の二色の光を混ぜ合わせ、白色を実現したものである。しかしながら、青色と黄色の二色の光を混ぜ合わせているため、この白色LEDの白色光で赤い物体を照らすと実際より黒く見えるなど、色の再現性に問題がある。
また、これらの酸化物系黄色蛍光体は温度上昇に伴う輝度低下や耐久性に問題がある(例えば非特許文献1)。そこで近年、温度特性や耐久性に優れた窒化物や酸窒化物蛍光体が提案されている(例えば特許文献1及び2参照)。このうち特許文献2には、ストロンチウム(Sr)やバリウム(Br)に代表されるアルカリ土類元素(AE):ケイ素(Si):酸素(O):窒素(N)=1:2:2:2の組成に、微量のユーロピウム(Eu)を加えた組成の蛍光体が良好な特性を有することが記載されている。
しかしながら、上記酸窒化物蛍光体の特性は未だ充分なものではなく、更なる特性改善が求められている。そこで特性改善の手法として、酸素の一部をハロゲン元素で置換することが提案されている(特許文献3)。しかしながら、ハロゲン元素は腐食性が強いので製造設備等に対し好ましいとは言えず、さらに容易に特性を向上できる手法が求められていた。
特開平10-242513号公報 特開2004-134805号公報 特許第3981149号公報
「次世.代照明のための白色LED材料」(日刊工業新聞社、2010、第124−125頁)
本発明は、前述の従来技術に鑑み、アルカリ土類元素(AE)、ケイ素(Si)、酸素(O)、窒素(N)を構成成分とし、微量のユーロピウム(Eu)を含むタイプの温度特性や耐久性に優れた酸窒化物蛍光体において、従来よりも高輝度な新しいタイプの酸窒化物蛍光体の提供を目的とする。
本発明者は、前記課題を解決するため種々の試験を行った結果、Sr、Ba、Si、O、N、およびEuを構成元素として含有する蛍光体に対して、微量のアルカリ金属元素K(カリウム)を添加して成る新しいタイプの酸窒化物蛍光体を見出し、特に該酸窒化物蛍光体が、優れた諸特性(温度特性、耐久性、輝度)を有するという従来では得られなかった優れた発光特性を発揮できることを見出し、本発明を導き出した。かくして、本発明によれば、Sr、Ba、Si、O、N、およびEuを構成元素として含む蛍光体に、微量のK(カリウム)を構成元素に加えて成ることを特徴とする酸窒化物蛍光体が提供される。また、本発明によれば、この酸窒化物蛍光体を用いることを特徴とする発光素子が提供される。
本発明の酸窒化物蛍光体は、黄色の可視光を効率よく確実に発光することができ、この蛍光体を用いた発光素子では、温度特性や耐久性等の諸特性に優れることに加えて、高輝度な発光を得ることができる。
本発明に係る酸窒化物蛍光体(実施例1〜4)、および比較例(比較例1)の酸窒化物蛍光体におけるK(カリウム)添加量と積分強度の関係を示す。 本発明に係る酸窒化物蛍光体(実施例2)の波長分散型X線分析システムによる元素分析結果を示す。 比較例の酸窒化物蛍光体(比較例1)の波長分散型X線分析システムによる元素分析結果を示す。
本発明に係る酸窒化物蛍光体は、Sr、Ba、Si、O、N、およびEuを構成元素として含む蛍光体に、微量のK(カリウム)を構成元素に加えて成るものである。
本発明に係る酸窒化物蛍光体の一つの態様としては、一般式(Sr1-x-z Bax)Si2 O2 N2 Ky:Euz(0.35<x<0.6,0<y<0.2,0<z<0.1)で表される配合比率で表される蛍光体であって、K(カリウム)を構成元素に含むことを特徴とする酸窒化物蛍光体が挙げられる。
ここで、上記一般式で示される各構成元素の組成比は、出発原料の原料モル組成比から定められるものである。すなわち、x、y、およびzは、各々、出発原料におけるBa(バリウム)、K(カリウム)、およびEu(ユーロピウム;付活剤)の原料モル組成比を表している。
xで表されるBa(バリウム)の量が0.6以上または0.35より小さい場合では、不純物相が増え発光輝度が低下する。yで表されるK(カリウム)の量が0.2を超える場合では、添加したK(カリウム)が不純物として働き、発光輝度が低下する。zで表される付活剤としてのEu(ユーロピウム)の量が0.1を超える場合では、濃度消光により発光輝度が低下する。
これらのことから、上記一般式においては、xを0.35<x<0.6、yを0<y<0.2、zを0<z<0.1とすることで、所望の高輝度な蛍光体を得ることができる。
上記したように、本発明によれば、Sr、Ba、Si、O、N、およびEuを含む酸窒化物蛍光体にアルカリ金属元素に属するK(カリウム)を添加することによって、より高輝度な特性が得られるが、K(カリウム)以外のアルカリ金属元素では、上記特性が有意に向上しないことも、本発明者は見出している(後述の実施例参照)。この優れた効果が得られる詳細なメカニズムは未だ解明されていないが、前記酸窒化物蛍光体に含まれるSr、Ba、Si、O、N、およびEuの各構成元素に対して、K(カリウム)が原子レベルで蛍光体の輝度を高めるような相補作用を奏していることが推察され、さらにこの相互作用は、他のアルカリ金属では生じていないものと推察される。
本発明に係る酸窒化物蛍光体の調製方法
本発明に係る酸窒化物蛍光体の作製方法について説明する。本発明に係る蛍光体は、成分元素を含む化合物を所定の比率になるように混合し、得られた混合物を焼成することにより得られる。
出発原料としては各構成元素の酸化物、硝酸塩、硫酸塩、有機物などを用いることができる。混合方法は公知の方法を採用することができ、例えば湿式混合や乾式混合を挙げることができる。また、溶解性のある出発原料を用いる場合はゾル−ゲル法、共沈法などの化学反応を利用することもできる。
混合した出発原料は、アルミナるつぼ等の耐熱容器に入れて所定の条件下で焼成する。焼成時の雰囲気は、水素と窒素混合ガス雰囲気が好ましい。水素ガス濃度は1〜10vol%の範囲が好ましい。
なお、粒子径の制御や発光効率を向上させるために、ハロゲン化合物やホウ素化合物などの反応助剤(フラックス)を一緒に添加しても良い。添加は混合する際に添加したり、混合後に添加することもできる。
焼成温度は、1300℃以上1600℃以下が好ましい。焼成温度が1300℃未満では、反応が不十分で特性の良い蛍光体が得られない。一方、焼成温度が1600℃を超えると焼結溶融が著しく、粉末状の蛍光体を得ることが困難となる。
焼成時間は3時間以上が好ましく、焼成時間が短いと反応が不十分で良好な蛍光体粒子が得られないので好ましくない。
このような条件下で焼成すると、固相反応によって目的の酸窒化物蛍光体が得られる。焼成直後は、通常、粉末が凝集した状態となっているので、これをLED用の蛍光体として用いるためには、粉砕、洗浄等の工程を通し製品化する。なお、均質な蛍光体粉末を得るために、焼成を2回以上行っても良い。
本発明の酸窒化物蛍光体を用いた発光素子としては、励起源として青色LEDを用いる発光素子等に利用できる。
次に本発明を下記の実施例を参照して説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[実施例1]
原料としてSrCO3、BaCO3、Eu2O3、SiO2、Si3N4、K2CO3を最終的なSr:Ba:Eu:Si:N:Kのモル比が表1に示すように0.596:0.4:0.04:2:2:0.02になるように秤量し、乳鉢を用いて混合した。この混合物をアルミナ製るつぼに入れ、電気炉にて5vol%の水素ガスを含有した窒素ガスの雰囲気中、1500℃で5時間保持し焼成した。この焼成物を粉砕、洗浄し、目的のアルカリ金属添加酸窒化物蛍光体を得た。
[実施例2〜4]
原料としてSrCO3、BaCO3、Eu2O3、SiO2、Si3N4、K2CO3を最終的なSr:Ba:Eu:Si:N:Kのモル比が、表1に示すように0.596:0.4:0.04:2:2:0.05(実施例2)、0.596:0.4:0.04:2:2:0.1(実施例3)、0.596:0.4:0.04:2:2:0.2(実施例4)になるように秤量し、乳鉢を用いて混合した。この混合物をアルミナ製るつぼに入れ、電気炉にて5vol%の水素ガスを含有した窒素ガスの雰囲気中、1500℃で5時間保持し焼成した。この焼成物を粉砕、洗浄し、目的のアルカリ金属添加酸窒化物蛍光体を得た。
[参考例1]
原料としてSrCO3、BaCO3、Eu2O3、SiO2、Si3N4、Li2CO3を最終的なSr:Ba:Eu:Si:N:Liのモル比が、表1に示すように0.596:0.4:0.04:2:2:0.05になるように秤量し、乳鉢を用いて混合した。この混合物をアルミナ製るつぼに入れ、電気炉にて5vol%の水素ガスを含有した窒素ガスの雰囲気中、1500℃で5時間保持し焼成した。この焼成物を粉砕、洗浄し、目的のアルカリ金属添加酸窒化物蛍光体を得た。
[参考例2]
原料としてSrCO3、BaCO3、Eu2O3、SiO2、Si3N4、Na2CO3を最終的なSr:Ba:Eu:Si:N:Naのモル比が、表1に示すように0.596:0.4:0.04:2:2:0.05になるように秤量し、乳鉢を用いて混合した。この混合物をアルミナ製るつぼに入れ、電気炉にて5vol%の水素ガスを含有した窒素ガスの雰囲気中、1500℃で5時間保持し焼成した。この焼成物を粉砕、洗浄し、目的のアルカリ金属添加酸窒化物蛍光体を得た。
[参考例3]
原料としてSrCO3、BaCO3、Eu2O3、SiO2、Si3N4、Rb2CO3を最終的なSr:Ba:Eu:Si:N:Rbのモル比が、表1に示すように0.596:0.4:0.04:2:2:0.05になるように秤量し、乳鉢を用いて混合した。この混合物をアルミナ製るつぼに入れ、電気炉にて5vol%の水素ガスを含有した窒素ガスの雰囲気中、1500℃で5時間保持し焼成した。この焼成物を粉砕、洗浄し、目的のアルカリ金属添加酸窒化物蛍光体を得た。
[参考例4]
原料としてSrCO3、BaCO3、Eu2O3、SiO2、Si3N4、Cs2CO3を最終的なSr:Ba:Eu:Si:N:Csのモル比が、表1に示すように0.596:0.4:0.04:2:2:0.05になるように秤量し、乳鉢を用いて混合した。この混合物をアルミナ製るつぼに入れ、電気炉にて5vol%の水素ガスを含有した窒素ガスの雰囲気中、1500℃で5時間保持し焼成した。この焼成物を粉砕、洗浄し、目的のアルカリ金属添加酸窒化物蛍光体を得た。
[比較例1]
原料としてSrCO3、BaCO3、Eu2O3、SiO2、Si3N4を最終的なSr:Ba:Eu:Si:Nのモル比が表1に示すように0.596:0.4:0.04:2:2になるように秤量し、乳鉢を用いて混合した。この混合物をアルミナ製るつぼに入れ、電気炉にて5vol%の水素ガスを含有した窒素ガスの雰囲気中、1500℃で5時間保持し焼成した。この焼成物を粉砕、洗浄し、目的の蛍光体を得た。
[比較例2]
原料としてSrCO3、BaCO3、Eu2O3、SiO2、Si3N4を最終的なSr:Ba:Eu:Si:Nのモル比が表1に示すように0.496:0.5:0.04:2:2になるように秤量し、乳鉢を用いて混合した。この混合物をアルミナ製るつぼに入れ、電気炉にて5vol%の水素ガスを含有した窒素ガスの雰囲気中、1500℃で5時間保持し焼成した。この焼成物を粉砕、洗浄し、目的の蛍光体を得た。
[実施例5]
原料としてSrCO3、BaCO3、Eu2O3、SiO2、Si3N4、K2CO3を最終的なSr:Ba:Eu:Si:N:Kのモル比が表1に示すように0.496:0.5:0.04:2:2:0.05になるように秤量し、乳鉢を用いて混合した。この混合物をアルミナ製るつぼに入れ、電気炉にて5vol%の水素ガスを含有した窒素ガスの雰囲気中、1500℃で5時間保持し焼成した。この焼成物を粉砕、洗浄し、目的のアルカリ金属添加酸窒化物蛍光体を得た。
実施例1〜9及び比較例1、2に係る蛍光体の発光特性評価を、以下に示す方法により行った。市販の分光蛍光光度計(FP−6500、日本分光製)を用い、波長450nmの青色光による発光スペクトルをそれぞれ測定し、波長、ピーク強度、積分強度、半値幅を算出した。表1の値は、比較例1の発光のピーク強度、積分強度をそれぞれ100%として規格化している。
x=0.4の場合における評価
表2から明らかなように、実施例1〜4のK(カリウム)を添加した酸窒化物蛍光体は、比較例1に比べて明らかにピーク強度、積分強度ともに改善が見られた。この改善は表2からも明らかなように他のアルカリ金属(Li、Na、Rb、Cs)の場合(参考例1〜4)には認められなかった。
x=0.5の場合における評価
表2から明らかなように、実施例5のK(カリウム)を添加した酸窒化物蛍光体は、比較例2に比べて明らかにピーク強度、積分強度ともに改善が見られた。
図1は本発明に係るK2CO3添加量と酸窒化物蛍光体の積分強度の関係を示す。なお、同図では、上記比較例1の積分強度を100%として規格化したものである。図からも明らかなように、実施例1〜4の酸窒化物蛍光体は、比較例1のものに比べて、K2CO3を添加するだけで発光特性が大幅に向上していることがわかる。
(元素分析結果)
図2は市販の波長分散型X線分析システム(INCA Wave、オックスフォード・インストゥルメンツ製)による比較例の酸窒化物蛍光体(比較例1)の元素分析結果を示す。図3は市販の波長分散型X線分析システム(INCA Wave、オックスフォード・インストゥルメンツ製)による本発明に係る酸窒化物蛍光体(実施例2)の元素分析結果を示す。
図2および図3の元素分析結果から、本発明に係る酸窒化物蛍光体(実施例2)は、比較例(比較例1)では含まれていないカリウム元素が確かに残存していることがわかった。
なお、本明細書で使用している用語と表現はあくまで説明上のものであって、限定的なものではなく、上記用語、表現と等価の用語、表現を除外するものではない。

Claims (4)

  1. Sr、Ba、Si、O、N、およびEuを構成元素として含む蛍光体に、微量のK(カリウム)を構成元素に加えて成ることを特徴とする酸窒化物蛍光体。
  2. 一般式 (Sr1-x-z Bax)Si2 O2 N2 Ky:Euz(0.35<x<0.6,0<y<0.2,0<z<0.1)で表される配合比率で表される蛍光体であって、K(カリウム)を構成元素に含むことを特徴とする酸窒化物蛍光体。
  3. 請求項1または2に記載された蛍光体の発光の半値幅が90nmよりも大きいことを特徴とする酸窒化物蛍光体。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載された酸窒化物蛍光体を用いた発光素子。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR20180078448A (ko) * 2016-12-29 2018-07-10 주식회사 효성 산질화물 형광체와 그 제조방법

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