以下、本発明の半導体用フィルムおよび半導体装置の製造方法について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1および図2は、本発明の半導体用フィルムおよび本発明の半導体装置の製造方法の好適な実施形態を説明するための図(縦断面図)、図3は、本発明の半導体用フィルムを製造する方法を説明するための図である。なお、以下の説明では、図1ないし図3中の上側を「上」、下側を「下」という。
[半導体用フィルム]
図1に示す半導体用フィルム10は、支持フィルム4と、第1粘着層1と、第2粘着層2と、接着層3とを有している。より詳しくは、半導体用フィルム10は、支持フィルム4上に、第2粘着層2と、第1粘着層1と、接着層3とをこの順で積層してなるものである。
このような半導体用フィルム10は、図1(a)に示すように、接着層3の上面に半導体ウエハー7を積層させ、半導体ウエハー7をダイシングにより個片化する際に半導体ウエハー7を支持するとともに、個片化された半導体ウエハー7(半導体素子71)をピックアップする際に、第1粘着層1と接着層3との間が選択的に剥離することにより、ピックアップした半導体素子71を絶縁基板5上に接着するための接着層31を提供する機能を有するものである。
また、支持フィルム4の外周部41および第2粘着層2の外周部21は、それぞれ第1粘着層1の外周縁11を越えて外側に存在している。
このうち、外周部21には、ウエハーリング9が貼り付けられる。これにより、半導体ウエハー7が確実に支持されることとなる。
ところで、半導体装置の製造にあたっては、優れたピックアップ性、すなわちピックアップ工程において半導体素子に割れや欠け等の不具合を発生させることなく、剥離すべき界面(特許文献1の場合、基材フィルムと2層の粘接着剤層との界面)で容易かつ確実に剥離を生じさせる特性が求められるが、従来の半導体用フィルムではそれが十分ではないという問題があった。
これに対して、本発明に係る半導体用フィルムの第1粘着層は、ベース樹脂とエネルギー線硬化性樹脂とエネルギー線硬化開始剤とを含む樹脂組成物で構成された層をエネルギー線照射により硬化させることにより形成された層である。これにより、接着層とエネルギー線硬化樹脂との反応を防ぐことができ、目的の硬化性を持った第1粘着層を得ることができる。また、第1粘着層がエネルギー線硬化されることにより、長期間放置した後であっても、接着層と第1粘着層との間の密着力の経時変化を小さいものとすることができ、安定して半導体素子のピックアップを行なうことができる。さらに、接着層と第1粘着層との間の密着力は良好であるため、半導体ウエハー加工時のダイシング性、ピックアップ性を安定させることができる。
以下、まず、半導体用フィルム10の各部の構成について順次詳述する。
(第1粘着層)
第1粘着層1は、ベース樹脂(粘着剤)とエネルギー線硬化性樹脂とエネルギー線硬化開始剤とを含む第1樹脂組成物で構成された層をエネルギー線照射により硬化させることにより形成された層である。
ベース樹脂(粘着剤)としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等を挙げることができる。。
アクリル系粘着剤としては、例えば(メタ)アクリル酸およびそれらのエステルで構成される樹脂、(メタ)アクリル酸およびそれらのエステルと、それらと共重合可能な不飽和単量体(例えば酢酸ビニル、スチレン、アクリルニトリル等)との共重合体等が挙げられる。また、これらの樹脂を2種類以上混合してもよい。
また、これらの中でも(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシルおよび(メタ)アクリル酸ブチルからなる群から選ばれる1種以上と、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルおよび酢酸ビニルの中から選ばれる1種以上との共重合体が好ましい。これにより、第1粘着層1が粘着する相手(被着体)との密着性や粘着性の制御が容易になる。
また、第1樹脂組成物には、粘着性(接着性)を制御するためにアクリレートモノマー、官能基含有のモノマー等を添加してもよい。前記アクリル系モノマーとしては、例えばアクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、エチルアクリレート、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられる。これらの中でもエチルアクリレート、ブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートの中から選ばれた1種以上が好ましい。これにより、良好な粘着性に加えて、凝集力の制御が可能となる。さらに、他成分との相溶性を調整することが可能となる。
また、上記官能基含有モノマーとしては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリルアミド、メチロールアクリルアミド、グリシジルメタクリレート、無水マレイン酸等が挙げられる。
また、上述したように、第1樹脂組成物は、エネルギー線硬化性樹脂を含んでいる。これにより、エネルギー線照射後の第1粘着層1の粘着力を低下させることができる。
第1粘着層1は、接着層3と被着させる前にエネルギー線硬化される。
第1粘着層1がエネルギー線硬化されることにより接着層3と被着後、該接着層3とエネルギー線硬化樹脂との反応を防ぐことができ、目的の硬化性を持った第1粘着層1を得ることができる。
さらに、第1粘着層1がエネルギー線硬化されることで、半導体ウエハー7への被着後の経時変化は見られず、長期間放置した後であっても安定して半導体素子71のピックアップ性を行なうことができる。
エネルギー線硬化型樹脂としては、例えば、紫外線、電子線等のエネルギー線の照射によって、三次元架橋可能な重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個以上分子内に有する低分子量化合物が広く用いられる。
エネルギー線硬化型樹脂として、具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレート等、芳香族系、脂肪族系等のウレタンアクリレート(オリゴマー)等を挙げることができる。これらの中でもウレタンアクリレートが好ましい。これによりピックアップ性を向上することができる。
第1樹脂組成物に含まれるエネルギー線硬化型樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、400以上30,000以下が好ましく、さらに好ましくは500以上、12,000以下である。重量平均分子量が400以上、30000以下の範囲内であると、放射線硬化後の架橋状態が最適化され、放射線硬化後の塗膜の伸びを与えることができ、ピックアップ性を向上することができる。なお重量平均分子量が400未満では放射線硬化後の塗膜の伸びがなく、ピックアップ時に糊が割れて、糊残りの原因になる。また重量平均分子量が30000を越える場合では、取り扱いの作業性が悪くなるという不具合が生じる。
第1樹脂組成物中におけるエネルギー線硬化型樹脂の含有量は、特に限定されないが、ベース樹脂100質量部に対して50〜150質量部であるのが好ましく、60〜140質量部であるのがより好ましい。これにより、第1粘着層1と接着層3との密着力をより好適なものとすることができ、長期にわたってピックアップ性を優れたものとすることができる。
また、上述したように、第1樹脂組成物は、エネルギー線硬化開始剤を含んでいる。
エネルギー線硬化開始剤としては、例えば、2−2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノン等が挙げられる。
第1樹脂組成物に含まれるエネルギー線硬化開始剤の含有量は、特に限定されないが、第1樹脂組成物のベース樹脂100質量部に対して1〜10質量部であるのが好ましく、3〜7質量部であるのがより好ましい。これにより、第1粘着層1と接着層3との密着力をより好適なものとすることができ、長期にわたってピックアップ性を優れたものとすることができる。
第1粘着層1のエネルギー線硬化に用いられるエネルギー線としては、例えば、紫外線(UV)や電子線(EB)等が挙げられる。反応に用いられるエネルギー量はエネルギー線硬化樹脂が硬化する量であれば、特に限定はないが、紫外線の場合、積算光量であらわすと50〜800mJ/cm2が好ましい。
また、第1樹脂組成物には架橋剤が含まれていてもよい。
架橋剤としては、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、メチロール系架橋剤、キレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、多価金属キレート系架橋剤等が挙げられる。これらの中でもイソシアネート系架橋剤が好ましい。これにより、ベース樹脂に含まれる官能基と反応し、高分子量体を得ることができる。
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、多価イソシアネートのポリイソシアネート化合物およびポリイソシアネート化合物の三量体、前記ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネート化合物の三量体または末端イソシアネートウレタンプレポリマーをフェノール、オキシム類などで封鎖したブロック化ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。
第1樹脂組成物に含まれる架橋剤の含有量は、特に限定されないが、ベース樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部であるのが好ましく、1〜3質量部であるがより好ましい。これにより、架橋剤がベース樹脂とのみ反応することができる。
多価イソシアネートの具体例としては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4−4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2−4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4−4’−ジイソシアネート、ジシキウロヘキシルメタン−2−4’−ジイソシアネート等が挙げられる。これらの中でも2,4−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4−4’−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートの中から選ばれる1種以上が好ましい。これにより、特にイソシアネート自体の凝集と架橋のバランスを向上することができる。
また、第1樹脂組成物には、上記成分の他、帯電防止剤、粘着付与剤等を含んでいてもよい。
帯電防止剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤等の界面活性剤、温度依存しないようなものとしてはカーボンブラック、銀、ニッケル、アンチモンドープスズ酸化物、スズドープインジウム酸化物等の粉体が挙げられる。
また、帯電防止剤の含有量は、特に限定されないが、ベース樹脂100質量部に対して10〜50質量部であるが好ましく、20〜30質量部であるがより好ましい。これにより、特に粘着特性と帯電防止性能とのバランスに優れる。これにより、エキスパンド時あるいはピックアップ時に発生する静電気を抑制できるため、半導体素子71の信頼性を向上することができる。
また、粘着力を調整する目的およびシェア強度を高める目的で、ロジン樹脂、テルペン樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、スチレン樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族芳香族系石油樹脂等の粘着付与剤等を添加してもよい。
このような第1粘着層1の平均厚さは、特に限定されないが、1〜100μm程度であるのが好ましく、特に3〜50μm程度であるのがより好ましい。厚さが前記下限値未満であると十分な粘着力を確保するのが難しくなる場合があり、前記上限値を超えてもあまり特性に影響が無く、利点も得られない。厚さが前記範囲内であると、特に、ダイシング時に剥離せず、ピックアップ時には引っ張り荷重に伴って比較的容易に剥離可能になることから、ダイシング性、ピックアップ性に優れた第1粘着層1が得られる。
(第2粘着層)
第2粘着層2は、前述した第1粘着層1よりも粘着性が高いものである。これにより、第1粘着層1と接着層3との間よりも、第2粘着層2とウエハーリング9との間が強固に粘着することとなり、第2の工程においては、半導体ウエハー7をダイシングして個片化する際に、第2粘着層2とウエハーリング9との間が確実に固定されることとなる。その結果、半導体ウエハー7の位置ずれが確実に防止され、半導体素子71の寸法精度の低下を防止することができる。
第2粘着層2には、前述した第1粘着層1と同様のものを用いることができる。具体的には、第2粘着層2は、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等を含む第2樹脂組成物で構成されている。
アクリル系粘着剤としては、例えば(メタ)アクリル酸およびそれらのエステルで構成される樹脂、(メタ)アクリル酸およびそれらのエステルと、それらと共重合可能な不飽和単量体(例えば酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル等)との共重合体等が用いられる。また、これらの共重合体を2種類以上混合してもよい。
また、これらの中でも(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシルおよび(メタ)アクリル酸ブチルからなる群から選ばれる1種以上と、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルおよび酢酸ビニルの中から選ばれる1種以上との共重合体が好ましい。これにより、第2粘着層2が粘着する相手(被着体)との密着性や粘着性の制御が容易になる。
また、第2樹脂組成物には、粘着性(接着性)を制御するためにウレタンアクリレート、アクリレートモノマー、多価イソシアネート化合物(例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート)等のイソシアネート化合物等のモノマーおよびオリゴマーを添加してもよい。
さらに、第2樹脂組成物には、第1樹脂組成物と同様の光重合開始剤を添加してもよい。
また、粘着力を調整する目的およびシェア強度を高める目的で、ロジン樹脂、テルペン樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、スチレン樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族芳香族系石油樹脂等の粘着付与材等を添加してもよい。
このような第2粘着層2の平均厚さは、特に限定されないが、1〜100μm程度であるのが好ましく、特に3〜20μm程度であるのがより好ましい。厚さが前記下限値未満であると十分な粘着力を確保するのが困難となる場合があり、前記上限値を超えても特に優れた効果が得られない。また、第2粘着層2は、第1粘着層1によりも柔軟性が高いため、第2粘着層2の平均厚さが前記範囲内であれば、第2粘着層2の形状追従性が確保され、半導体用フィルム10の半導体ウエハー7に対する密着性をより高めることができる。
(接着層)
接着層3は、例えば熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを含む第3樹脂組成物で構成されている。このような樹脂組成物は、フィルム形成能、接着性および硬化後の耐熱性に優れる。
このうち、熱可塑性樹脂としては、例えばポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂等のポリイミド系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等のポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でもアクリル系樹脂が好ましい。アクリル系樹脂は、ガラス転移温度が低いため接着層3の初期密着性をより向上することができる。
なお、アクリル系樹脂とは、アクリル酸およびその誘導体を意味し、具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル、アクリロニトリル、アクリルアミド等の重合体および他の単量体との共重合体等が挙げられる。
また、アクリル系樹脂の中でもエポキシ基、水酸基、カルボキシル基、ニトリル基等の官能基を持つ化合物(共重合モノマー成分)を有するアクリル系樹脂(特に、アクリル酸エステル共重合体)が好ましい。これにより、半導体素子71等の被着体への密着性をより向上することができる。前記官能基を持つ化合物としては、具体的にはグリシジルエーテル基を持つグリシジルメタクリレート、水酸基を持つヒドロキシメタクリレート、カルボキシル基を持つカルボキシメタクリレート、ニトリル基を持つアクリロニトリル等が挙げられる。
また、前記官能基を持つ化合物の含有量は、特に限定されないが、アクリル系樹脂全体の0.5〜40質量%程度であるのが好ましく、特に5〜30質量%程度であるのがより好ましい。含有量が前記下限値未満であると密着性を向上する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えると粘着力が強すぎて作業性を向上する効果が低下する場合がある。
また、熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、特に限定されないが、−25〜120℃であることが好ましく、特に−20〜60℃であることがより好ましく、−10〜50℃であることがさらに好ましい。ガラス転移温度が前記下限値未満であると接着層3の粘着力が強くなり作業性が低下する場合があり、前記上限値を超えると低温接着性を向上する効果が低下する場合がある。
また、熱可塑性樹脂(特にアクリル系樹脂)の重量平均分子量は、特に限定されないが、10万以上が好ましく、特に15万〜100万が好ましい。重量平均分子量が前記範囲内であると、特に接着層3の成膜性を向上することができる。
一方、熱硬化性樹脂としては、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾールフェノール樹脂等のフェノール樹脂、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂等のトリアジン環を有する樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、シアネートエステル樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物を用いるようにしてもよい。また、これらの中でもエポキシ樹脂またはフェノール樹脂が好ましい。これらの樹脂によれば、接着層3の耐熱性および密着性をより向上することができる。
また、熱硬化性樹脂の含有量は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.05〜100質量部程度であるのが好ましく、特に0.1〜50質量部程度であるのがより好ましい。含有量が前記上限値を上回ると、チッピングやクラックが起こる場合や、密着性を向上する効果が低下する場合があり、含有量が前記下限値を下回ると、粘着力が強すぎ、ピックアップ不良が起こる場合や、作業性を向上する効果が低下する場合がある。
また、第3樹脂組成物は、さらに硬化剤(熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂の場合、特に、フェノール系硬化剤)を含有することが好ましい。
硬化剤としては、例えばジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレリレンジアミン(MXDA)等の脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m−フェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)等の芳香族ポリアミン、ジシアンジアミド(DICY)、有機酸ジヒドララジド等を含むポリアミン化合物等のアミン系硬化剤、ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)等の脂環族酸無水物(液状酸無水物)、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)等の芳香族酸無水物等の酸無水物系硬化剤、フェノール樹脂等のフェノール系硬化剤が挙げられる。これらの中でもフェノール系硬化剤が好ましく、具体的にはビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン(通称テトラメチルビスフェノールF)、4,4’−スルホニルジフェノール、4,4’−イソプロピリデンジフェノール(通称ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタン、およびこれらの内ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタンの3種の混合物(例えば、本州化学工業(株)製、ビスフェノールF−D)等のビスフェノール類、1,2−ベンゼンジオール、1,3−ベンゼンジオール、1,4−ベンゼンジオール等のジヒドロキシベンゼン類、1,2,4−ベンゼントリオール等のトリヒドロキシベンゼン類、1,6−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類の各種異性体、2,2’−ビフェノール、4,4’−ビフェノール等のビフェノール類の各種異性体等の化合物が挙げられる。
また、硬化剤(特にフェノール系硬化剤)の含有量は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂100質量部に対して1〜90質量部であるのが好ましく、特に3〜60質量部であるのがより好ましい。含有量が前記下限値を下回ると、接着層3の耐熱性を向上する効果が低下する場合があり、含有量が前記上限値を上回ると、接着層3の保存性が低下する場合がある。
また、前述した熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂の場合は、エポキシ当量と硬化剤の当量比を計算して決めることができ、エポキシ樹脂のエポキシ当量と硬化剤の官能基の当量(例えばフェノール樹脂であれば水酸基当量)の比が0.5〜1.5であることが好ましく、特に0.7〜1.3であることが好ましい。含有量が前記下限値未満であると保存性が低下する場合があり、前記上限値を超えると耐熱性を向上する効果が低下する場合がある。
また、第3樹脂組成物は、特に限定されないが、さらに硬化触媒を含むことが好ましい。これにより、接着層3の硬化性を向上することができる。
硬化触媒としては、例えばイミダゾール類、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン等アミン系触媒、トリフェニルホスフィン等リン系触媒等が挙げられる。これらの中でもイミダゾール類が好ましい。これにより、特に速硬化性と保存性を両立することができる。
イミダゾール類としては、例えば1−ベンジル−2メチルイミダゾール、1−ベンジル−2フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。これらの中でも2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールまたは2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールが好ましい。これにより、保存性を特に向上することができる。
また、硬化触媒の含有量は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.01〜30質量部程度であるのが好ましく、特に0.5〜10質量部程度であるのがより好ましい。含有量が前記下限値未満であると硬化性が不十分である場合があり、前記上限値を超えると保存性が低下する場合がある。
また、硬化触媒の平均粒子径は、特に限定されないが、10μm以下であることが好ましく、特に1〜5μmであることがより好ましい。平均粒子径が前記範囲内であると、特に硬化触媒の反応性に優れる。
また、第3樹脂組成物は、特に限定されないが、さらにカップリング剤を含むことが好ましい。これにより、樹脂と被着体および樹脂界面の密着性をより向上させることができる。
前記カップリング剤としてはシラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらの中でもシラン系カップリング剤が好ましい。これにより、耐熱性をより向上することができる。
このうち、シラン系カップリング剤としては、例えばビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファンなどが挙げられる。
カップリング剤の含有量は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.01〜10質量部程度であるのが好ましく、特に0.5〜10質量部程度であるのがより好ましい。含有量が前記下限値未満であると密着性の効果が不十分である場合があり、前記上限値を超えるとアウトガスやボイドの原因になる場合がある。
接着層3を成膜するにあたっては、このような第3樹脂組成物を、例えばメチルエチルケトン、アセトン、トルエン、ジメチルホルムアルデヒド等の溶剤に溶解して、ワニスの状態にした後、コンマコーター、ダイコーター、グラビアコーター等を用いてキャリアフィルムに塗工し、乾燥することで接着層3を得ることができる。
接着層3の平均厚さは、特に限定されないが、3〜100μm程度であるのが好ましく、特に5〜70μm程度であるのがより好ましい。厚さが前記範囲内であると、特に厚さ精度の制御を容易にできる。
また、第3樹脂組成物は、必要に応じてフィラーを含有していてもよい。フィラーを含むことにより、接着層3の機械的特性および接着力の向上を図ることができる。
このフィラーとしては、例えば銀、酸化チタン、シリカ、マイカ等の粒子が挙げられる。
また、フィラーの平均粒径は、0.1〜25μm程度であることが好ましい。平均粒径が前記下限値未満であるとフィラー添加の効果が少なくなり、前記上限値を超えるとフィルムとしての接着力の低下をもたらす可能性がある。
フィラーの含有量は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.1〜100質量部程度であるのが好ましく、特に5〜90質量部程度であるのがより好ましい。これにより、接着層3の機械的特性を高めつつ、接着力をより高めることができる。
(支持フィルム)
支持フィルム4は、以上のような第1粘着層1、第2粘着層2および接着層3を支持する支持体である。
このような支持フィルム4の構成材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン、エチレン酢ビ共重合体、アイオノマー、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリスチレン、ビニルポリイソプレン、ポリカーボネート等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が挙げられる。
支持フィルム4の平均厚さは、特に限定されないが、5〜200μm程度であるのが好ましく、30〜150μm程度であるのがより好ましい。これにより、支持フィルム4は、適度な剛性を有するものとなるため、第1粘着層1、第2粘着層2および接着層3を確実に支持して、半導体用フィルム10の取扱いを容易にするとともに、半導体用フィルム10が適度に湾曲することで、半導体ウエハー7との密着性を高めることができる。
(半導体用フィルムの特性)
第1粘着層1、第2粘着層2および接着層3は、それぞれ異なる密着力(粘着力)を有しているが、それらは以下のような特性を有していることが好ましい。
まず、第1粘着層1の接着層3に対する密着力は、第2粘着層2の支持フィルム4に対する密着力よりも小さいことが好ましい。これにより、後述する第3の工程において、個片83をピックアップした際に、第2粘着層2との支持フィルム4との間は剥離することなく、接着層3と第1粘着層1との間が選択的に剥離する。そして、ダイシングの際には、ウエハーリング9により積層体8を確実に支持し続けることができる。
すなわち、本実施形態では、第1粘着層1および第2粘着層2の2層の粘着層を用いているため、それぞれの密着力(粘着力)を異ならせることで、上記のように、積層体8の確実な固定と個片83の容易なピックアップとを両立させることが可能になる。換言すれば、ダイシング性とピックアップ性の両立を図ることができる。
なお、第1粘着層1の接着層3に対する密着力や第2粘着層2のウエハーリング9に対する密着力は、それぞれ、前述したアクリル系樹脂等の種類(組成)、モノマー等の種類、含有量、硬度等を変化させることで調整することができる。
また、ダイシング前における第1粘着層1の接着層3に対する密着力は、特に限定されないが、密着界面の平均で2.5〜80cN/25mm程度であるのが好ましく、特に7.5〜60cN/25mm程度であるのがより好ましい。密着力が前記範囲内であると、後述するように積層体8を伸ばしたり(エキスパンド)、積層体8をダイシングした際に、半導体素子71が第1粘着層1から脱落する等の不具合が防止されるとともに、優れたピックアップ性が確保される。
なお、上記密着力の単位である「cN/25mm」は、第1粘着層1の表面に接着層3を貼り付けたサンプルを25mm幅の短冊状にし、その後、23℃(室温)において、この積層フィルムにおいて接着層部分を剥離角180°でかつ引っ張り速度1000mm/minで引き剥がしたときの荷重(単位cN)を表すものである。すなわち、ここでは、第1粘着層1の接着層3に対する密着力は、180°ピール強度として説明する。
上記のような特性を有する第1粘着層1の組成としては、例えば、アクリル系樹脂100質量部に対して、アクリレートモノマー50〜150質量部と、エネルギー線硬化開始剤1〜10質量部と、イソシアネート化合物0.1〜10質量部とを配合したものが挙げられる。
一方、第2粘着層2のウエハーリング9に対する密着力は、特に限定されないが、密着界面の平均で100〜2,000cN/25mm程度であるのが好ましく、特に400〜1,200cN/25mm程度であるのがより好ましい。密着力が前記範囲内であると、後述するように積層体8を引き伸ばしたり(エキスパンド)、積層体8をダイシングした際に、ウエハーリング9により積層体8を確実に支持することができる。
なお、上記密着力の単位である「cN/25mm」は、ウエハーリング9の上面に第2粘着層2が接するように、25mm幅の短冊状の第2粘着層2を積層した支持フィルム4を23℃(室温)で貼り付け、その後、23℃(室温)において、この第2粘着層2を積層した支持フィルム4を、剥離角180°でかつ引っ張り速度1000mm/minでウエハーリング9から引き剥がしたときの荷重(単位cN)を表すものである。すなわち、ここでは、第2粘着層2のウエハーリング9に対する密着力は、180°ピール強度として説明する。
上記のような特性を有する第2粘着層2の組成としては、例えば、アクリル系樹脂100質量部に対して、ウレタンアクリレート1〜50質量部と、イソシアネート化合物0.5〜10質量部とを配合したものが挙げられる。
なお、第1粘着層1の接着層3に対する密着力をA1とし、第2粘着層2の第1粘着層1に対する密着力をA2としたとき、A2/A1は、特に限定されないが、5〜200程度であるのが好ましく、10〜50程度であるのがより好ましい。これにより、第1粘着層1、第2粘着層2および接着層3は、ダイシング性およびピックアップ性において特に優れたものとなる。
また、第1粘着層1の接着層3に対する密着力は、接着層3の半導体ウエハー7に対する密着力よりも小さいことが好ましい。これにより、個片83をピックアップした際に、半導体ウエハー7と接着層3との界面が不本意にも剥離してしまうのを防止することができる。すなわち、第1粘着層1と接着層3との界面で選択的に剥離を生じさせることができる。
なお、接着層3の半導体ウエハー7に対する密着力は、特に限定されないが、50〜1000cN/25mm程度であるのが好ましく、特に80〜750cN/25mm程度であるのがより好ましい。密着力が前記範囲内であると、特にダイシング時に振動や衝撃で半導体素子71が飛んで脱落する、いわゆる「チップ飛び」の発生を十分に防止することができる。
ここで、上記密着力の単位である「cN/25mm」は、半導体ウエハー7の上面に接着層3が接するように、25mm幅の短冊状の接着層3とポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)とを積層した積層体を23℃(室温)で貼り付け、その後、23℃(室温)において、この積層体を、剥離角180°でかつ引っ張り速度1000mm/minで半導体ウエハー7から引き剥がしたときの荷重(単位cN)を表すものである。すなわち、ここでは、接着層3の半導体ウエハー7に対する密着力は、180°ピール強度として説明する。
また、第1粘着層1の接着層3に対する密着力は、第1粘着層1の第2粘着層2に対する密着力よりも小さいことが好ましい。これにより、個片83をピックアップした際に、第1粘着層1と第2粘着層2との界面が不本意にも剥離してしまうのを防止することができる。すなわち、第1粘着層1と接着層3との界面で選択的に剥離を生じさせることができる。
なお、第1粘着層1の第2粘着層2に対する密着力は、特に限定されないが、100〜1,000cN/25mm程度であるのが好ましく、特に300〜600cN/25mm程度であるのがより好ましい。密着力が前記範囲内であると、特にダイシング性やピックアップ性に優れる。
ここで、上記密着力の単位である「cN/25mm」は、支持フィルム4上の第2粘着層2の表面に第1粘着層1を積層して貼り付けたサンプルを25mm幅の短冊状にし、その後、23℃(室温)において、この積層フィルムにおいて第1粘着層1部分を剥離角180°でかつ引っ張り速度1000mm/minで引き剥がしたときの荷重(単位cN)を表すものである。すなわち、ここでは、第1粘着層1の第2粘着層2に対する密着力は、180°ピール強度として説明する。
(半導体用フィルムの製造方法)
以上説明したような半導体用フィルム10は、例えば以下のような方法で製造される。
まず、図3(a)に示す基材4aを用意し、この基材4aの一方の面上に第1粘着層1を成膜する。これにより、基材4aと第1粘着層1との積層体61を得る。第1粘着層1の成膜は、前述した第1樹脂組成物を含む樹脂ワニスを各種塗布法等により塗布し、その後塗布膜を乾燥させる方法や、第1樹脂組成物からなるフィルムをラミネートする方法等により行うことができる。また、紫外線等の放射線を照射することにより、塗布膜を硬化させるようにしてもよい。
上記塗布法としては、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、カーテンコート法等が挙げられる。
また、積層体61と同様にして、図3(a)に示すように、用意した基材4bの一方の面上に接着層3を成膜し、これにより、基材4bと接着層3との積層体62を得る。
さらに、各積層体61、62と同様にして、図3(a)に示すように、用意した支持フィルム4の一方の面上に第2粘着層2を成膜し、これにより、支持フィルム4と第2粘着層2との積層体63を得る。
次いで、図3(b)に示すように、第1粘着層1と接着層3とが接するように積層体61と積層体62とを積層し、積層体64を得る。この積層は、例えばロールラミネート法等により行うことができる。
次いで、図3(c)に示すように、積層体64から基材4aを剥離する。そして、図3(d)に示すように、前記基材4aを剥離した積層体64に対して、基材4bを残して、前記接着層3および前記第1粘着層1の有効領域の外側部分をリング状に除去する。ここで、有効領域とは、その外周が、半導体ウエハー7の外径よりも大きく、かつ、ウエハーリング9の内径よりも小さい領域を指す。
次いで、図3(e)に示すように、第1粘着層1の露出面に第2粘着層2が接するように、基材4aを剥離し有効領域の外側部分をリング状に除去した積層体64と積層体63を積層する。その後、基材4bを剥離することにより、図3(f)に示す半導体用フィルム10が得られる。
[半導体装置の製造方法]
次に、上述したような半導体用フィルム10を用いて半導体装置100を製造する方法(本発明の半導体装置の製造方法の第1実施形態)について説明する。
図1および図2に示す半導体装置の製造方法は、半導体ウエハー7と半導体用フィルム10とを積層し、積層体8を得る第1の工程と、半導体用フィルム10の外周部21をウエハーリング9に貼り付けた状態で、半導体ウエハー7側から積層体8に切り込み81を設ける(ダイシングする)ことにより、半導体ウエハー7および接着層3を個片化し、半導体素子71および接着層31からなる複数の個片83を得る第2の工程と、個片83の少なくとも1つをピックアップする第3の工程と、ピックアップされた個片83を絶縁基板5上に載置し、半導体装置100を得る第4の工程とを有する。以下、各工程について順次詳述する。
[1]
[1−1]まず、半導体ウエハー7および半導体用フィルム10を用意する。
半導体ウエハー7は、あらかじめ、その表面に複数個分の回路が形成されたものである。かかる半導体ウエハー7としては、シリコンウエハーの他、ガリウムヒ素、窒化ガリウムのような化合物半導体ウエハー等が挙げられる。
このような半導体ウエハー7の平均厚さは、特に限定されず、好ましくは0.01〜1mm程度、より好ましくは0.03〜0.5mm程度とされる。本発明の半導体装置の製造方法によれば、このような厚さの半導体ウエハー7に対して欠けや割れ等の不具合を生じさせることなく、簡単かつ確実に切断して個片化することができる。
[1−2]次に、図1(a)に示すように、上述したような半導体用フィルム10の接着層3と、半導体ウエハー7とを密着させつつ、半導体用フィルム10と半導体ウエハー7とを積層する(第1の工程)。なお、図1に示す半導体用フィルム10では、接着層3の平面視における大きさおよび形状が、半導体ウエハー7の外径よりも大きく、かつ、ウエハーリング9の内径よりも小さい形状に、あらかじめ設定されている。このため、半導体ウエハー7の下面全体が接着層3の上面全体と密着し、これにより半導体ウエハー7が半導体用フィルム10で支持されることとなる。
上記積層の結果、図1(b)に示すように、半導体用フィルム10と半導体ウエハー7とが積層されてなる積層体8が得られる。
[2]
[2−1]次に、ウエハーリング9を用意する。続いて、第2粘着層2の外周部21の上面とウエハーリング9の下面とが密着するように、積層体8とウエハーリング9とを積層する。これにより、積層体8の外周部がウエハーリング9により支持される。
ウエハーリング9は、一般にステンレス鋼、アルミニウム等の各種金属材料等で構成されるため、剛性が高く、積層体8の変形を確実に防止することができる。
半導体用フィルム10が上述したように粘着性の異なる2層の粘着層(第1粘着層1および第2粘着層2)を有していることにより、これらの粘着性の違いを利用して、ダイシング性とピックアップ性の両立を図ることができる。
[2−2]次に、図示しないダイサーテーブルを用意し、ダイサーテーブルと支持フィルム4とが接触するように、ダイサーテーブル上に積層体8を載置する。
続いて、図1(c)に示すように、ダイシングブレード82を用いて積層体8に複数の切り込み81を形成する(ダイシング)。ダイシングブレード82は、円盤状のダイヤモンドブレード等で構成されており、これを回転させつつ積層体8の半導体ウエハー7側の面に押し当てることで切り込み81が形成される。そして、半導体ウエハー7に形成された回路パターン同士の間隙に沿って、ダイシングブレード82を相対的に移動させることにより、半導体ウエハー7が複数の半導体素子71に個片化される(第2の工程)。また、接着層3も同様に、複数の接着層31に個片化される。このようなダイシングの際には、半導体ウエハー7に振動や衝撃が加わるが、半導体ウエハー7の下面が半導体用フィルム10で支持されているため、上記の振動や衝撃が緩和されることとなる。その結果、半導体ウエハー7における割れや欠け等の不具合の発生を確実に防止することができる。
切り込み81の深さは、半導体ウエハー7と接着層3とを貫通し得る深さであれば特に限定されない。すなわち、切り込み81の先端は、第1粘着層1、第2粘着層2および支持フィルム4のいずれかに達していればよい。これにより、半導体ウエハー7と接着層3とが確実に個片化され、それぞれ半導体素子71と接着層31とが形成されることとなる。
なお、本実施形態では、図1(c)に示すように、切り込み81の先端が支持フィルム4にまで達している場合を例に説明する。このように先端が支持フィルム4に達するように切り込み81を設けるようにした場合、支持フィルム4の厚さは第1粘着層1や第2粘着層2の厚さに比べて十分に厚いため、ダイシングブレード82の上下方向の位置精度と、切り込み81の深さのバラつきとを考慮した場合、製造容易性を高めることができる。換言すれば、先端を第1粘着層1内または第2粘着層2内に留めるように切り込み81を形成するには、ダイシングブレード82の上下方向の位置を厳密に制御する必要があり、製造効率が低下するおそれがある。
[3]
[3−1]次に、複数の切り込み81が形成された積層体8を、図示しないエキスパンド装置により、放射状に引き伸ばす(エキスパンド)。これにより、図1(d)に示すように、積層体8に形成された切り込み81の幅が広がり、それに伴って個片化された半導体素子71同士の間隔も拡大する。その結果、半導体素子71同士が干渉し合うおそれがなくなり、個々の半導体素子71をピックアップし易くなる。なお、エキスパンド装置は、このようなエキスパンド状態を後述する工程においても維持し得るよう構成されている。
[3−2]次に、図示しないダイボンダにより、個片化された半導体素子71のうちの1つを、ダイボンダのコレット(チップ吸着部)で吸着するとともに上方に引き上げる。その結果、図2(e)に示すように、接着層31と第1粘着層1との界面が選択的に剥離し、半導体素子71と接着層31とが積層されてなる個片83がピックアップされる(第3の工程)。
なお、接着層31と第1粘着層1との界面が選択的に剥離する理由は、前述したように、第2粘着層2の粘着性が第1粘着層1の粘着性より高いため、支持フィルム4と第2粘着層2との界面の密着力、および、第2粘着層2の第1粘着層1との界面の密着力は、第1粘着層1と接着層3との密着力より大きいからである。すなわち、半導体素子71を上方にピックアップした場合、これらの3箇所のうち、最も密着力の小さい第1粘着層1と接着層3との界面が選択的に剥離することとなる。
また、個片83をピックアップする際には、半導体用フィルム10の下方から、ピックアップすべき個片83を選択的に突き上げるようにしてもよい。これにより、積層体8から個片83が突き上げられるため、前述した個片83のピックアップをより容易に行うことができるようになる。なお、個片83の突き上げには、半導体用フィルム10を下方から突き上げる針状体(ニードル)等が用いられる。
[4]
[4−1]次に、半導体素子71(チップ)を搭載(マウント)するための絶縁基板5を用意する。
この絶縁基板5としては、半導体素子71を搭載し、半導体素子71と外部とを電気的に接続するための配線や端子等を備えた絶縁性を有する基板が挙げられる。
具体的には、ポリエステル銅張フィルム基板、ポリイミド銅張フィルム基板、アラミド銅張フィルム基板等の可撓性基板や、ガラス布・エポキシ銅張積層板等のガラス基材銅張積層板、ガラス不織布・エポキシ銅張積層板等のコンポジット銅張積層板、ポリエーテルイミド樹脂基板、ポリエーテルケトン樹脂基板、ポリサルフォン系樹脂基板等の耐熱・熱可塑性基板といった硬質性基板の他、アルミナ基板、窒化アルミニウム基板、炭化ケイ素基板等のセラミックス基板、ビスマレイミド−トリアジン(BT)基板などが挙げられる。
なお、絶縁基板5に代えて、リードフレーム等を用いるようにしてもよい。
次いで、図2(f)に示すように、ピックアップされた個片83を、絶縁基板5上に載置する。
[4−2]次に、図2(g)に示すように、絶縁基板5上に載置された個片83を加熱・圧着する。これにより、接着層31を介して半導体素子71と絶縁基板5とが接着(ダイボンディング)される(第4の工程)。
加熱・圧着の条件としては、例えば加熱温度は100〜300℃程度であるのが好ましく、100〜200℃程度であるのがより好ましい。また、圧着時間は1〜10秒程度であるのが好ましく、1〜5秒程度であるのがより好ましい。
また、その後に加熱処理を施してもよい。この場合の加熱条件は、加熱温度が好ましくは100〜300℃程度、より好ましくは150〜250℃程度とされ、加熱時間が好ましくは1〜240分程度、より好ましくは10〜60分程度とされる。
その後、半導体素子71の端子(図示せず)と絶縁基板5上の端子(図示せず)とをワイヤ84により電気的に接続する。なお、この接続には、ワイヤ84に代えて、導電性ペースト、導電性フィルム等を用いるようにしてもよい。
そして、絶縁基板5上に載置された個片83およびワイヤ84を樹脂材料で被覆し、モールド層85を形成する。このモールド層85を構成する樹脂材料としては、エポキシ系樹脂等の各種モールド樹脂が挙げられる。
さらに、絶縁基板5の下面に設けられた端子(図示せず)にボール状電極86を接合することにより、半導体素子71をパッケージ内に収納してなる図2(h)に示すような半導体装置100が得られる。
以上のような方法によれば、第3の工程において、半導体素子71に接着層31が付着した状態、すなわち個片83の状態でピックアップされることから、第4の工程において、この接着層31をそのまま絶縁基板5との接着に利用することができる。このため、別途接着剤等を用意する必要がなく、半導体装置100の製造効率をより高めることができる。
なお、半導体用フィルム10は、前述したように、半導体ウエハー7と積層され、その後、半導体ウエハー7および接着層3を個片化した後の状態において、得られた半導体素子71および接着層31を積層してなる個片83の密着力を測定し、個片83の縁部の密着力をa(N/10mm)とし、個片83の中央部(縁部以外の部分)の密着力をb(N/10mm)としたとき、a/bが1〜4となるように構成されているのが好ましく、1〜3程度となるよう構成されているのがより好ましく、1〜2程度となるよう構成されているのがさらに好ましい。これにより、ピックアップの際に半導体素子71に割れや欠け等の不具合が発生するのを確実に抑制することができ、個片83のピックアップ性のさらなる向上を図ることができる。
なお、密着力aおよび密着力bは、それぞれ詳しくは次のようにして測定される。図4は、第1粘着層1と接着層3との密着力を測定する方法を説明するための図(縦断面図)である。
まず、半導体用フィルム10と半導体ウエハー7とを積層して積層体8を得た後、半導体ウエハー7を10mm×10mm角に個片化した後の状態で、第3の工程を行う前の積層体8の上面に、1cm幅の短冊状の粘着フィルム87を23℃(室温)で貼り付ける(図4(a)参照)。
次いで、23℃(室温)において、図4(b)に示すように、積層体8から第1粘着層1、第2粘着層2、支持フィルム4を剥離角90°でかつ引っ張り速度50mm/minで引き剥がす。この際、第1粘着層1、第2粘着層2、支持フィルム4を引き剥がしつつ、第1粘着層1、第2粘着層2、支持フィルム4にかかる引っ張り荷重(単位N)の大きさを測定する。そして、個片83の縁部Eが第1粘着層1から離れる際に第1粘着層1、第2粘着層2、支持フィルム4にかかる引っ張り荷重の平均値が「密着力a」に相当し、図4(c)に示すように、個片83の中央部(縁部以外の部分)Cが第1粘着層1から離れる際に第1粘着層1、第2粘着層2、支持フィルム4にかかる引っ張り荷重の平均値が「密着力b」に相当する。
すなわち、半導体用フィルム10によれば、図4(b)の状態(個片83の縁部Eが第1粘着層1から離れようとする状態)であっても、図4(c)の状態(個片83の中央部Cが第1粘着層1から離れようとする状態)であっても、第1粘着層1、第2粘着層2、支持フィルム4にかかる引っ張り荷重の大きさの差が比較的小さく抑えられるため、仮に図4(c)に示すように半導体素子71に反りが生じた場合でも、その反りの程度が最小限に抑えられることとなる。その結果、半導体素子71の割れや欠け等の不具合が最小限に抑えられることとなる。
ここで、一般的には、上記の個片83のような平板状の個片を引き剥がす場合、中央部(縁部以外の部分)の密着力に比べて縁部の密着力の方が大きい傾向にある。これは次のような理由によるところが大きいと考えられる。
1つは、個片83の縁部Eでは、個片83の端面に第1粘着層1中の成分や第2粘着層2中の成分が這い上がる等して、個片83の端面までが第1粘着層1との密着に寄与することになる。このため、中央部Cに比べて密着力が大きくなり易いことが挙げられる。
また、1つは、切り込み81が支持フィルム4まで達した場合に、支持フィルム4が削られ、これにより発生した削り屑が原因になっていることが挙げられる。これらの削り屑は、個片83を引き剥がす際に、個片83の端面に引っ掛かる等して、縁部Eの密着力の局所的な上昇を招くと考えられる。
これに対し、本発明は、上述したような第1粘着層を備えていることから、半導体素子71の割れや欠け等の不具合が最小限に抑えられることとなる。
なお、個片83の縁部Eとは、半導体素子71の外縁から、半導体素子71の幅の10%以下の領域(図4参照)を指すものとする。一方、個片83の中央部Cとは、前記縁部E以外の領域(図4参照)を指すものとする。すなわち、半導体素子71の形状が、例えば平面視において10mm角の正方形である場合、外縁から1mm幅の領域が縁部Eであり、残りの領域が中央部Cとなる。
また、個片83の縁部Eを第1粘着層1から剥離させる際に測定される密着力aは、1N/10mm以下であるのが好ましく、0.01N/10mm以上、0.5N/10mm以下であるのがより好ましい。これにより、個片83のピックアップ性が特に向上し、ピックアップの際に半導体素子71に割れや欠け、バリ等の不具合が発生するのを防止することができる。その結果、最終的に、信頼性の高い半導体装置100を高い歩留まりで製造することができる。
また、個片83の中央部C(縁部E以外の部分)の密着力bは、前述した第1粘着層1と接着層3との密着力の範囲にあることが好ましいが、その上で、0.01〜0.5N/10mm程度であるのが好ましく、0.03〜0.25N/10mm程度であるのがより好ましい。密着力bが前記範囲内にあることにより、個片83のピックアップ性が特に向上し、ピックアップの際に半導体素子71に割れや欠け、バリ等の不具合が発生するのを防止することができる。その結果、最終的に、信頼性の高い半導体装置100を高い歩留まりで製造することができる。
特に、半導体ウエハー7の厚さが薄い(例えば200μm以下)の場合には、密着力bを前記範囲内とすることで、半導体素子71に生じる上記のような不具合の防止効果が顕著になる。
また、第1粘着層1の23℃における弾性率は0.5〜4.0GPa程度であるのが好ましく、0.5〜2.0GPa程度であるのがより好ましい。このような弾性率の第1粘着層1は、粘着性が適度に抑えられる一方、成分の流動性や流出性を比較的抑えられることから、この第1粘着層1に切り込み81が形成されたとしても、ピックアップ性の向上と、第1粘着層1からの物質の染み出しによる不具合の防止とを両立させることができる。なお、弾性率は一般的な引張り試験等で測定することができる。
また、半導体用フィルム10が上記のような特性を示すためには、1本の切り込み81のうち、接着層3と第1粘着層1との界面より先端側の部分の横断面積は、ダイシングブレード82の厚さや各粘着層1、2の厚さに応じて異なるものの、5〜300(×10−5mm2)程度であるのが好ましく、10〜200(×10−5mm2)程度であるのがより好ましい。切り込み81の前記部分の横断面積を前記範囲内に設定することにより、第1粘着層1中の成分や第2粘着層2中の成分の染み出し、および支持フィルム4からの削り屑の発生を抑制することができる。その結果、半導体素子71の縁部と中央部との間で密着力の差が最適化され、半導体素子71の割れや欠け等の不具合がより小さく抑えられる。
なお、図1では、先端が支持フィルム4に達するように切り込み81を形成する場合について説明したが、図5では、先端が第1粘着層1内に留まるように切り込み81を形成する場合について説明する。
図5は、本発明の半導体装置の製造方法の他の実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図5中の上側を「上」、下側を「下」という。
以下、図5について説明するが、図1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、図5において、図1と同様の構成部分については、先に説明した図1と同様の符号を付している。
図5では、先端が第1粘着層1内に留まるように切り込み81が形成されている。このように切り込み81の先端を第1粘着層1内に留めた場合、第2粘着層2の成分が切り込み81を介して、接着層3の周辺や半導体ウエハー7の周辺に染み出すことが防止される。その結果、染み出した物質が不本意にも接着層3と第1粘着層1との間の密着力(特に縁部Eの密着力)を高めてしまい、個片83のピックアップを阻害する不具合を防止することができる。さらには、染み出した物質が半導体素子71の変質・劣化を引き起こすのを防止することができる。
このような成分の染み出しは、第2粘着層2の粘着性が第1粘着層1の粘着性よりも強いことから、必然的に、第2粘着層2は第1粘着層1よりも柔軟性が高いと考えられ、したがって第2粘着層2に含まれる物質は流動性や流出性が第1粘着層1よりも高いということに起因する現象であると考えられる。すなわち、本実施形態のように、粘着層が複数層で構成されており、接着層3側の粘着層(図5では第1粘着層1)よりも支持フィルム4側の粘着層(図5では第2粘着層2)の粘着性が強い場合には、図5に示すように切り込み81の先端を第1粘着層1内に留めることが、上記不具合を防止するにあたって特に有効である。
また、本実施形態では、切り込み81の先端を第1粘着層1内に留めることにより、半導体ウエハー7および接着層3は確実に個片化される一方、第1粘着層1および第2粘着層2は個片化されない。したがって、第3の工程において、個片83をピックアップする際に、第1粘着層1や第2粘着層2が支持フィルム4側に残すべきところ、不本意にも個片83側に貼り付いた状態でピックアップされてしまうのを防止することができる。これは、第1粘着層1および第2粘着層2を個片化しなかったことで、これらの面方向の繋がりが維持されるため、第1粘着層1と第2粘着層2との密着力、および、第2粘着層2と支持フィルム4との密着力の低下が防止されるためである。すなわち、第1粘着層1と第2粘着層2との密着力、および、第2粘着層2と支持フィルム4との密着力が、ピックアップにおける上方への引っ張り力に対して十分な抗力を有するためである。
また、上述したように、第1粘着層1と第2粘着層2との密着力、および、第2粘着層2と支持フィルム4との密着力の低下が防止されることから、第1粘着層1と接着層3との密着力をより大きくしたとしても、ピックアップ性の低下が抑制される。すなわち、第1粘着層1と接着層3との密着力において、良好なピックアップを可能にする許容範囲をより拡大することができるため、半導体用フィルム10の製造容易性およびマウント後の半導体素子71と絶縁基板5との接着性が向上するという利点もある。
なお、図5に示す方法においても、図1に示す方法と同様の作用・効果が得られる。
以上、本発明の半導体用フィルムおよび半導体装置の製造方法を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、パッケージの形態は、BGA(Ball Grid Array)、LGA(Land Grid Array)等のCSP(Chip Size Package)、TCP(Tape Carrier Package)のような表面実装型のパッケージ、DIP(Dual Inline Package)、PGA(Pin Grid Array)のような挿入型のパッケージ等であってもよく、特に限定されない。
また、前記各実施形態では、絶縁基板5上に個片83をマウントする場合について説明したが、この個片83は、別の半導体素子上にマウントするようにしてもよい。すなわち、本発明の半導体装置の製造方法は、複数の半導体素子を積層してなるチップスタック型の半導体装置を製造する場合にも適用することができる。これにより、半導体素子間に削り屑等が侵入するおそれがなくなり、信頼性の高いチップスタック型の半導体装置を高い製造歩留まりで製造することができる。
なお、本発明の半導体用フィルムをダイシングに供するにあたっては、半導体ウエハー7および接着層3を個片化し得る切り込み81が形成されていれば、切り込み81の深さは特に限定されない。
また、本発明の半導体装置の製造方法では、必要に応じて、任意の工程を追加することもできる。
以下、本発明の具体的実施例について説明する。
1.半導体用フィルムの製造
(実施例1)
<1>第1粘着層の形成
アクリル酸2−エチルヘキシル30質量%と酢酸ビニル70質量%とを共重合して得られた重量平均分子量300,000のベース樹脂としての共重合体100質量部と、エネルギー線硬化性樹脂としての、分子量が700の5官能アクリレートモノマー60質量部と、エネルギー線硬化開始剤としての2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン5質量部と、架橋剤としてのトリレンジイソシアネート(コロネートT−100、日本ポリウレタン工業(株)製)3質量部と、を剥離処理した厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに対して、乾燥後の厚さが10μmになるように塗布し、その後、80℃で5分間乾燥した。そして、得られた塗布膜に対して紫外線500mJ/cm2を照射し、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に第1粘着層を成膜した。
なお、得られた第1粘着層の23℃における弾性率は、1.0GPaであった。
<2>第2粘着層の形成
アクリル酸ブチル70質量%とアクリル酸2−エチルヘキシル30質量%とを共重合して得られた重量平均分子量500,000の共重合体100質量部と、トリレンジイソシアネート(コロネートT−100、日本ポリウレタン工業(株)製)3質量部と、を剥離処理した厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに対して、乾燥後の厚さが10μmになるように塗布し、その後、80℃で5分間乾燥した。そして、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に第2粘着層を成膜した。その後、支持フィルムとして厚さ100μmのポリエチレンシートをラミネートした。
<3>接着層の形成
アクリル酸エステル共重合体(エチルアクリレート−ブチルアクリレート−アクリロニトリル−アクリル酸−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体のメチルエチルケトン(MEK)溶解品、ナガセケムテックス(株)製、SG−708−6、Tg:6℃、重量平均分子量:500,000)の固形成分で100質量部と、フェノキシ樹脂(JER1256、重量平均分子量:50,000、三菱化学(株)製)9.8質量部と、フィラーとして添加される球状シリカ(SC1050、平均粒径:0.3μm、(株)アドマテックス製)90.8質量部と、カップリング剤として添加されるγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM403E、信越化学工業(株)製)1.1質量部と、フェノール樹脂(PR−53647、水酸基当量104g/OH基、住友ベークライト(株)製)0.1質量部とを、メチルエチルケトンに溶解して、樹脂固形分20質量%の樹脂ワニスを得た。
次に、得られた樹脂ワニスを、コンマコーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製、品番ピューレックスA43、厚さ38μm)に塗布した後、温度150℃で3分間乾燥して、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に厚さ10μmの接着層を成膜した。
<4>半導体用フィルムの製造
第1粘着層を成膜したフィルムと、接着層を成膜したフィルムとを、第1粘着層と接着層とが接するようにラミネート(積層)し、第1粘着層側のポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離して、積層体を得た。
次にロール状の金型を用いて、第1粘着層と接着層を半導体ウエハーの外径よりも大きく、かつウエハーリングの内径よりも小さく打ち抜き、その後不要部分を除去して、第2積層体を得た。
さらに第2粘着層の一方の面側にあるポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離する。そして前記第2積層体の第1粘着層と第2粘着層とが接するように、これらを積層した。これにより、ポリエチレンシート(支持フィルム)、第2粘着層、第1粘着層、接着層およびポリエチレンテレフタレートフィルムの5層がこの順で積層してなる半導体用フィルムを得た。
(実施例2〜4)
第1粘着層を構成する第1樹脂組成物として表1に示す構成のものを用いた以外は、前記実施例1と同様にして半導体用フィルムを作製した。
(比較例1)
第1粘着層の5官能アクリレートモノマーの添加量を0質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして半導体用フィルムを作製した。
(比較例2)
第1粘着層の2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンを0質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして半導体用フィルムを作製した。
(比較例3)
第1粘着層の形成において、紫外線照射を行わなかった以外は、実施例1と同様にして半導体用フィルムを作製した。
2.半導体装置の製造
まず、厚さ100μm、8インチのシリコンウエハーを用意した。
そして、各実施例および各比較例の半導体用フィルムからポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、その剥離面にシリコンウエハーを60℃で積層した。これにより、半導体用フィルムおよびシリコンウエハーの5層がこの順で積層してなる積層体を得た。
次いで、この積層体をシリコンウエハー側から、ダイシングソー(DFD6360、(株)ディスコ製)を用いて以下の条件でダイシング(切断)した。これにより、シリコンウエハーが個片化され、以下のダイシングサイズの半導体素子を得た。
<ダイシング条件>
・ダイシングサイズ :10mm×10mm角
・ダイシング速度 :50mm/sec
・スピンドル回転数 :40,000rpm
・ダイシング深さ :0.150mm(シリコンウエハーの表面からの切り込み量)
・ダイシングブレードの厚さ:15μm
・切り込みの横断面積 :60.0×10−5mm2(接着層と第1粘着層との界面より先端側の部分の横断面積)
なお、このダイシングにより形成された切り込みは、その先端が支持フィルム4内に達していた。
次いで、半導体素子の1つを半導体用フィルムの裏面からニードルで突き上げ、突き上げた半導体素子の表面をダイボンダのコレットで吸着しつつ上方に引き上げた。これにより、半導体素子と接着層の個片をピックアップした。
次に、ピックアップした個片を、ソルダーレジスト(太陽インキ製造(株)製、商品名:AUS308)をコーティングしたビスマレイミド−トリアジン樹脂基板(回路段差5〜10μm)に、温度130℃、荷重5Nで、1.0秒間圧着して、ダイボンディングした。
次いで、半導体素子と樹脂基板とをワイヤボンディングにより電気的に接続した。
そして、樹脂基板上の半導体素子およびボンディングワイヤを、封止樹脂EME−G760(住友ベークライト(株)製、商品名)で封止し、さらに温度175℃で2時間の熱処理に供した。これにより、封止樹脂を硬化させて半導体装置を得た。
3.半導体素子(個片)の密着力の測定
各実施例および各比較例の上記2.半導体装置の製造において作製した切り込みを形成した積層体について、半導体素子のピックアップ性を評価するため、半導体素子(個片)の90°ピール強度(密着力)を測定し、個片の中央部におけるピール強度の平均値bおよび個片の縁部におけるピール強度の平均値aを求め、それらの結果およびa/bを表1に示した。
なお、ピール強度は、半導体素子の上面に1cm幅の短冊状の粘着フィルムを23℃(室温)で貼り付け、その後、23℃(室温)において、この支持フィルムの側より剥離角90°でかつ引っ張り速度50mm/minで引き剥がしたときの荷重とした。
4.ダイシング性およびピックアップ性の評価
各実施例および比較例におけるダイシング性はいずれも良好であった。すなわち、ダイシングの際には、半導体素子の欠けや剥離等が生じることはなかった。
また、各実施例では、いずれも安定的にピックアップを行い得ることがわかった。このため、各実施例では、局所的に大きな荷重がかかることによる半導体素子の割れや欠け等の不具合を確実に抑制し得ることが明らかとなった。また、各実施例においてピックアップ後の半導体素子の縁部を観察したところ、バリや削り屑等の異物の付着は認められなかった。また、1ヶ月半導体用フィルムを室温に放置した後、再度、ダイシング性およびピックアップ性の評価を行ったところ同等の評価が得られた。
一方、比較例では、満足な結果が得られなかった。