JP2012067843A - クラッチ構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】キャンセラ室からのオイル排出性の悪化を抑制し、クラッチピストンの迅速な作動を確実にできるクラッチ構造。
【解決手段】クランクケース32に回転自在に支承される回転軸41Cと、回転軸に同軸芯に配設され、軸方向移動に応じてクラッチオフ状態とクラッチオン状態とを切替えるクラッチピストン80とを備え、クラッチピストンの軸方向両面に制御油圧室86A,Bとキャンセラ室87A,Bとが形成された油圧クラッチ44のクラッチ構造において、回転軸に嵌装されたクラッチハブ72A,Bに、クラッチアウタ71A,Bが一体化され、クラッチピストンは、クラッチハブとクラッチアウタの間を軸方向に摺動し、キャンセラ室は、クラッチピストンと、クラッチハブ、クラッチアウタ間に設けられた壁部材82との間に形成され、クラッチハブに、キャンセラ室への供給油路93,96とは別に、キャンセラ室の内外を連通する排出油路100が設けられた。
【選択図】図4

Description

本発明は、油圧でクラッチを断接するクラッチ構造に関し、特に、キャンセラ室からのオイルの排出性を向上させたクラッチ構造に関する。
従来、油圧でクラッチを断接するクラッチ機構において、キャンセラ室(遠心力圧力補償室)を設けた構造が知られている。その場合、キャンセラ室の遠心力調整のため、例えば、下記特許文献1:特開2001-140934号公報には、キャンセラ室の壁に開口部を一箇所設けたものも示されるが、その開口部は油圧クラッチの摩擦板群への潤滑油供給孔を兼ねているので、次第にキャンセラ室外側とクラッチインナの間に形成される潤滑油室に、オイルが溜まることとなり、クラッチの回転による遠心力のため、開口部より外側(外周側)からオイルが溜まる。
そして、潤滑油室に開口部を超えて、軸側(内径側)にオイルが溜まると、キャンセラ室からのオイルの排出性が悪化し、結果として、クラッチピストンの作動応答性が悪くなり、クラッチ断接を迅速にできない、という課題があった。
特開2001−140934号公報(図1)
本発明は、油圧クラッチにおいて、キャンセラ室から排出されたオイルが、キャンセラ室外側とクラッチディスクの間に形成される潤滑油室に溜まることによる、キャンセラ室からのオイル排出性の悪化を抑制し、クラッチピストンの迅速な作動を確実にできるクラッチ構造を提供することを課題とする。
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、クランクケースに回転自在に支承される回転軸と、同回転軸に同軸芯に配設され、軸方向移動に応じてクラッチオフ状態とクラッチオン状態とを切替えるクラッチピストンとを備え、同クラッチピストンの軸方向両面に制御油圧室とキャンセラ室とが形成された油圧クラッチのクラッチ構造において、
前記回転軸に回転方向と軸方向を拘束されて嵌装されたクラッチハブに、クラッチアウタが一体化され、前記クラッチピストンは、前記クラッチハブとクラッチアウタの間を軸方向に摺動し、前記キャンセラ室は、前記クラッチピストンと、前記クラッチハブ、クラッチアウタ間に設けられた壁部材との間に形成され、前記クラッチハブに、前記キャンセラ室への供給油路とは別に、前記キャンセラ室の内外を連通する排出油路が設けられたことを特徴とするクラッチ構造である。
請求項2の発明は、クランクケースに回転自在に支承される回転軸と、同回転軸に同軸芯に配設され、軸方向移動に応じてクラッチオフ状態とクラッチオン状態とを切替えるクラッチピストンとを備え、同クラッチピストンの軸方向両面に制御油圧室とキャンセラ室とが形成された油圧クラッチのクラッチ構造において、前記回転軸に回転方向と軸方向を拘束されて嵌装されたクラッチハブに、クラッチアウタが一体化され、前記クラッチピストンは、前記クラッチハブとクラッチアウタの間を軸方向に摺動し、前記キャンセラ室は、前記クラッチピストンと、前記クラッチハブ、クラッチアウタ間に設けられた壁部材との間に形成され、前記クラッチハブは、前記回転軸と互いのスプライン歯を係合させて嵌装されるとともに、前記クラッチハブには、前記回転軸または前記クラッチハブの前記スプライン歯の少なくとも一方の一部を切欠いて、前記キャンセラ室の内外を連通する排出油路が設けられたことを特徴とするクラッチ構造である。
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のクラッチ構造において、前記排出油路は、前記回転軸または前記クラッチハブの円周方向において、間隔を空けて複数形成されたことを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のクラッチ構造において、前記油圧クラッチは、複数個の油圧クラッチを備えたツインクラッチであり、同ツインクラッチの各クラッチハブにそれぞれ前記排出油路が設けられたことを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1に記載のクラッチ構造において、前記排出油路の一部は、前記壁部材と前記クラッチハブとの間に形成されたことを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項2に記載のクラッチ構造において、前記排出油路は、前記回転軸側の前記スプライン歯を切欠いて形成されたことを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項2または請求項6に記載のクラッチ構造において、前記排出油路は、前記クラッチハブにおいて、前記キャンセラ室にオイルを供給する供給油路を介して前記キャンセラ室に連通されたことを特徴とする。
請求項8の発明は、請求項2または請求項6に記載のクラッチ構造において、前記排出油路は、前記クラッチハブにおいて、前記キャンセラ室にオイルを供給する供給油路と並列に、軸方向に位置をずらせて別に形成された上流側排出油路を介して前記キャンセラ室に連通されたことを特徴とする。
請求項1の発明のクラッチ構造によれば、キャンセラ室からの排出オイルが、クラッチハブに設けられた排出油路から排出されるので、キャンセラ室の壁部材に開口部を設けて排出する場合と比べて、より内径側からオイルを排出でき、キャンセラ室外側とクラッチディスクの間に形成される潤滑油室にオイルが溜まることを抑制でき、また、溜まったオイルにより、キャンセラ室からのオイルの排出性が悪化することが抑制され、クラッチピストンの作動応答性の悪化が防止され、クラッチ断接が迅速になされる。
請求項2の発明のクラッチ構造によれば、キャンセラ室からの排出オイルが、回転軸またはクラッチハブのスプライン歯を切欠いた排出油路から排出されるので、キャンセラ室の壁部材に開口部を設けて排出する場合と比べて、より内径側からオイルを排出でき、キャンセラ室外側とクラッチディスクの間に形成される潤滑油室にオイルが溜まることを抑制でき、また、溜まったオイルにより、キャンセラ室からのオイルの排出性が悪化することが抑制され、クラッチピストンの作動応答性の悪化が防止され、クラッチ断接が迅速になされる。
請求項3の発明によれば、請求項1または請求項2の発明の効果に加え、クラッチハブ等クラッチ部材の剛性を確保しながら、排出油路を一箇所だけ設ける場合に比べて、オイルの排出性を向上させることができるため、クラッチ断接が迅速になされる。
請求項4の発明によれば、ツインクラッチを備えるクラッチ構造であっても、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明の効果により、各キャンセラ室からのオイル排出性を良好にし、クラッチ断接が迅速に行える。
請求項5の発明によれば、排出油路のために別部材を設けることなく、壁部材を利用して排出油路が形成されるので、部品点数を増やすことなく、請求項1の効果を奏することができる。
請求項6の発明によれば、請求項2の発明の効果に加え、回転軸の外面側の加工なので、クラッチハブ内面側のスプライン歯を切欠く場合に比べて、加工性が向上する。
請求項7の発明によれば、請求項2または請求項6の発明の効果に加え、キャンセラ室への供給油路と、排出油路とを別に設ける場合に比べて、製造工数が削減される。
請求項8の発明によれば、請求項2または請求項6の発明の効果に加え、排出油路に一部を供給油路と兼用とした構造に比べて、供給されるオイルが排出されるオイルに合流することがないので、よりスムーズにオイルの排出がなされ、クラッチ断接が迅速に行える。
本発明の実施形態に係るクラッチ構造を備えた内燃機関を搭載した自動二輪車の右側面概要図である。 本発明の実施形態に係るクラッチ構造を備えた内燃機関の右側面概要図である。 図2中、III−III矢視による、本発明の実施形態1のクラッチ構造を備えた内燃機関のクラッチおよび変速機周辺の断面展開図である。 図3中、クラッチ部分の拡大断面図であり、実施形態1のクラッチ構造の説明図である。 図4と同様部分の拡大断面図であり、本発明の実施形態2のクラッチ構造の説明図である。 図4と同様部分の拡大断面図であり、本発明の実施形態3のクラッチ構造の説明図である。
以下、本発明に係る実施形態1のクラッチ構造について図1ないし図4に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係るクラッチ構造を備えた内燃機関を搭載した自動二輪車1の右側面図である。
なお、本明細書の説明および特許請求の範囲における前後左右上下等の向きは、本実施形態に係る内燃機関を、車両、特に自動二輪車等の小型車両に搭載した状態での車両の向きに従うものとする。図中、矢印FRは車両前方を、LHは車両左方を、RHは車両右方を、UPは車両上方を、それぞれ示す。
図1に示されるように、自動二輪車1の車体フレーム2は、ヘッドパイプ3と、ヘッドパイプ3から斜め後方に延出するメインフレーム4と、メインフレーム4の後端から下方に延出するセンターフレーム5と、ヘッドパイプ3から下方に延びるダウンフレーム6と、センターフレーム5の上部から後方に延出するシートステー7と、センターフレーム5の後部とシートステー7の後部に掛け渡されたミッドフレーム8を備えている。
前輪9を支持するフロントフォーク10が、ヘッドパイプ3で操向可能に支持され、フロントフォーク10の上部にはステアリングハンドル11が連結されている。
また、後輪12を支持するリヤフォーク13が、センターフレーム5のピボットボルト14を介して上下揺動可能に支持されている。
内燃機関30は2気筒4ストロークサイクル内燃機関であり、メインフレーム4、センターフレーム5及びダウンフレーム6に支持されている。内燃機関30の出力軸の回転動力は、後輪駆動用チェーン15を介して後輪12に伝達される。
左右のメインフレーム4間には燃料タンク16が搭載され、燃料タンク16の後方の左右のシートステー7上には運転者Pと同乗者が前後に着座できるタンデム型シート17が取付けられている。
また、車体右側面で、センターフレーム5の下部でミッドフレーム8との連結部にステップホルダ20が設けられており、同ステップホルダ20にフットステップ21が突設されている。
車体左側面にも左右対称位置にフットステップ21が設けられている。
図2に示されるように、内燃機関30はクランク軸31を車体幅方向である左右方向に指向させて横置きに車体フレーム2に搭載され、クランク軸31は上下割りの上クランクケース32Aと下クランクケース32Bに軸受を介して挟まれ、回転自在に軸支される。
上クランクケース32Aから前方斜め上向きにシリンダブロック33、シリンダヘッド34、シリンダヘッドカバー35が順次重ねられて前傾して突設されている。
下クランクケース32Bの下側はオイルパン36で塞がれる。
上クランクケース32Aと下クランクケース32Bとからなるクランクケース32には、変速機40が一体的に組み込まれている。
図3は、変速機40の、図2中III−III矢視による断面展開図である。変速機40は、メイン軸41と、カウンタ軸42と、プライマリ従動ギア43と、一対の第1クラッチ44Aと第2クラッチ44Bとからなるツインクラッチ(本発明の「油圧クラッチ」)44を備えている。シフトドラム、シフトフォークからなるチェンジ機構は、図示省略してある。
メイン軸41は、上クランクケース32Aに、クランク軸31の後方で若干斜め上位置において、クランク軸31と平行に回転自在に架設されている(図2参照)。
メイン軸41の左端はボールベアリング45を介してクランクケース32に、中央部はボールベアリング46を介してクランクケース32に、それぞれ回転可能に支持されている。
メイン軸41の右端は、ボールベアリング47を介して右クランクケースカバー37に回転可能に支持されている。
メイン軸41の後方斜め下位置に、内燃機関30の出力軸となるカウンタ軸42が、上クランクケース32Aと下クランクケース32Bに挟まれメイン軸41と平行に回転自在に軸支される(図2参照)。
カウンタ軸42の左端はボールベアリング48を介してクランクケース32に、右端はニードルベアリング49を介してクランクケース32に、それぞれ回転可能に支持されている。
メイン軸41は長いメイン軸内軸41Aと、メイン軸外軸41Bと、クラッチ部外軸(本発明の「回転軸」)41Cとからなっている。
メイン軸外軸41Bは、メイン軸内軸41Aの一部をニードルベアリング50、50を介して相対回転可能に覆っている。
メイン軸外軸41Bの左端は、C形止め輪51によって左方移動が規制されている。
メイン軸外軸41Bの右端は、クラッチ部外軸41Cに環状スペーサ52を介して当接し、右方移動が規制されている。メイン軸41にはM1〜M6の6個の歯車が設けてあり、カウンタ軸42には前記歯車M1〜M6に対応して、これらと常時噛み合うC1〜C6の6個の歯車が設けてある。
Mはメイン軸付属歯車、Cはカウンタ軸付属歯車、添数字1〜6は1速〜6速の変速比を決める歯車であることを示している。
奇数変速段の歯車M1、M5、M3はメイン軸内軸9Aに、偶数変速段の歯車M4、M6、M2はメイン軸外軸9Bに設けてある。
図3において、上記歯車符号に付した添字xは、軸と一体形成された固定歯車、添字wは、軸に保持され、軸上の所定の位置で軸に対して相対回転可能の空転歯車、添字sは軸方向摺動可能の摺動歯車を表す。摺動歯車は、スプライン53によって軸に保持され軸に対して周方向に相対回転しないが軸方向には摺動が可能な歯車である。固定歯車(添字x)及び摺動歯車(添字s)が噛み合う相手側の歯車は、必ず空転歯車(添字w)である。空転歯車(添字w)は単独では歯車としての機能を果たせず、歯車としての機能を果たすには、隣に設けられている摺動歯車(添字s)によって軸に固定されることが必要である。摺動歯車には、図示しないチェンジ機構のシフトフォークが係合する係合溝Gが設けてあり、これに係合するシフトフォークによって、摺動歯車(添字s)は必要に応じて軸方向に移動し、隣り合う空転歯車(添字w)と断接する。
右クランクケースカバー37は、上クランクケース32Aと下クランクケース32Bが合体した右側面に被せられる。
上下クランクケース32A,32Bの右側壁より右方に設けられる第1クラッチ44A、第2クラッチ44B、プライマリ従動ギア43、およびクランク軸31に嵌着されプライマリ従動ギア43と噛合するプライマリ駆動ギア38等が、右クランクケースカバー37により覆われる。
また、下クランクケース32Bの右側壁の前部に設けられる制御用オイルポンプ60も右ケースカバー37により覆われる(図2参照)。なお、潤滑用オイルポンプ61は、制御用オイルポンプ60の左側(図2上、奥側)に同軸に設けられている。
制御用オイルポンプ60が駆動すると、オイルパン36に溜まったオイルは図示しないオイルストレーナを介して吸入され、吐出されたオイルは右クランクケースカバー37に設けられたオイルフィルタ62に導入される。
オイルフィルタ62から第1、第2クラッチアクチュエータ63A、63Bに送られ、制御された各作動油は、一対の油圧クラッチからなるツインクラッチ44の、各油圧クラッチである第1、第2クラッチ44A,44Bの駆動制御に供される。
そのため、右クランクケースカバー37には、クラッチアクチュエータ収容部37aとツインクラッチ44を収容するクラッチ収容部37bの中央部との間を、直線的に連絡する互いに平行な1対の第1、第2制御用油路64A、64Bが表面に管状に膨出して形成されている。
したがって、第1クラッチアクチュエータ63Aの駆動により制御された作動油が第1制御用油路64Aを通って第1クラッチ44Aに供給されて第1クラッチ44Aの断続がなされ、第2クラッチアクチュエータ63Bの駆動により制御された作動油が第2制御用油路64Bを通って第2クラッチ44Bの断続がなされる。
第1、第2クラッチアクチュエータ63A、63Bが統一的に制御されることで、第1、第2クラッチ44A、44Bの駆動が相互にタイミング制御されて変速機40の変速が円滑に行われる。
プライマリ従動ギア43は、クランク軸31に嵌合されたプライマリ駆動ギア38と噛み合って、内燃機関40の回転動力が伝達される。
本実施形態において、プライマリ駆動ギア38は、図3に示されるように、セラシ機構を備えている。
すなわち、プライマリ駆動ギア38は互いに軸方向に重ね合わされるメインギア38Aと幅の狭いサブギア38Bとからなり、メインギア38Aは、クランク軸31に固定支持され、一方、サブギア38Bは、メインギア38Aのボス部38Aa上へ遊転可能に嵌装されている。
メインギア38Aとサブギア38Bは、同径、同ピッチのギアであり、共にプライマリ従動ギア43の同じ歯間に噛み合うが、両ギアの間にはコイルばね38aが介装され、両ギアは互いに逆向き方向に回動付勢される。
プライマリ駆動ギア38がプライマリ従動ギア43を回転駆動する時、プライマリ従動ギア43の歯面を押接するプライマリ駆動ギア38のメインギア38Aの歯の裏面にはバックラッシュが発生する恐れがあるが、サブギア38Bはメインギア38Aの回転駆動方向と逆方向に回動付勢されているので、裏面側の、プライマリ従動ギア43の次位の歯の正面側を押接し、バックラッシュを解消している。
従って、プライマリ駆動ギア38は、プライマリ従動ギア43との噛み合い部において、ガタ無しに噛み合うことができるので、起動、停止、トルク変動等において、衝撃音等のギア鳴りが発生することが防止されている。
図4は、図3のツインクラッチ44周辺の拡大断面図である。
メイン軸内軸41Aの右半部には、クラッチ部外軸(本発明の「回転軸」)41Cが設けてあり、クラッチ部外軸41Cは、ニードルベアリング55A、55Bを介して、メイン軸内軸41Aの軸端部の回りを回転可能に覆っている。メイン軸内軸41は、クランクケース32に回転自在に支承されている。
クラッチ部外軸41Cの右端は、他の部材(後述の第1クラッチ44Aのクラッチインナ70A)に環状スペーサ54を介して当接し、この部材と共にメイン軸内軸41Aの軸端の係止部材56によって軸方向が移動規制されている。
クラッチ部外軸41Cの左端は、メイン軸外軸41Bの右端に環状スペーサ52を介して当接し、メイン軸外軸41Bの左端はC形止め輪51によって移動規制されている(図3参照)。
クラッチ部外軸41Cに、プライマリ従動ギア43を左右から挟んで、第1クラッチ44Aと第2クラッチ44Bのクラッチアウタ71A、71Bそれぞれの内周側に溶接で一体化されたクラッチハブ72A、72Bが、その軸方向端部側の内周面のスプライン歯72aと、クラッチ部外軸41Cの外周面のスプライン歯41Caとを係合させた係合部73で回転方向を互いに拘束され、また、係止部材74を介して軸方向を拘束されて嵌装されている。
プライマリ従動ギア43は、結合円板75を介してクラッチ部外軸41Cに回転不能に嵌装されている。
プライマリ従動ギア43の左右方向移動は、クラッチ部外軸41Cを介して規制されている。
プライマリ従動ギア43は、クランク軸31に設けられたプライマリ駆動ギア38(図3参照)に常時噛合う歯車であり、クランク軸31からの回転駆動力を受けてクラッチ部外軸41Cを回転駆動する。
これに応じて、クラッチ部外軸41Cとスプラインによる係合部73で回cc転を共にするツインクラッチ44のクラッチハブ72A、72Bが回転駆動され、クラッチアウタ71A、71Bが共に回転する。ツインクラッチ44のクラッチインナ70A、70Bはそれぞれ別の部材、すなわちメイン軸内軸41A、メイン軸外軸41Bに接続されている(図3参照)。
第1クラッチ44Aのクラッチインナ70Aは、メイン軸内軸41Aの右端においてスプライン75に嵌合し、係止部材56によってメイン軸内軸41Aに固定されている。
第2クラッチ44Bのクラッチインナ70Bは、メイン軸外軸41Bの右端においてスプライン76に嵌合して固定されている(図3参照)。
ツインクラッチ44を構成する一対のクラッチ44A、44Bは共に油圧式多板クラッチである。
一対のクラッチ44A、44Bの各クラッチアウタ71A、71Bの外周部71bの内側には、クラッチアウタ71A、71Bに対して相対回転不能且つ軸方向移動可能に係合された複数の駆動摩擦板77が設けてある。
一対のクラッチ44A、44Bの各クラッチインナ70A、70Bの外側には、クラッチインナ70A、70Bに対して相対回転不能且つ軸方向移動可能に係合された複数の被動摩擦板78が設けてある。
駆動摩擦板77と被動摩擦板78は交互に配置されて摩擦板群79を構成している。
各クラッチ44A、44Bのクラッチアウタ71A、71Bの端板部71aと摩擦板群79との間にはそれぞれ、クラッチハブ72A、72Bとクラッチアウタ71A、71Bの外周部71bとの間を軸方向に摺動するクラッチピストン80が設けてあり、クラッチピストン80の外周部の端部は、摩擦板群79の一端の駆動摩擦板77に当接している。
摩擦板群79の他端の駆動摩擦板77はC形止め輪81を介して移動規制されている。
クラッチピストン80とクラッチインナ70A、70Bとの間にはそれぞれ、スプリングリテーナ(本発明の「壁部材」)82が設けてある。
スプリングリテーナ82の内周端は、クラッチハブ72A、72Bに設けられたC形止め輪83よって移動規制されている。
スプリングリテーナ82の外周端は、シール部材84を介してクラッチピストン80の外周部の内側に摺動可能に接している。
スプリングリテーナ82に一端を接するコイルばね85を介して、クラッチピストン80はそれぞれクラッチアウタ71A、71Bの端板部71aの方へ付勢されている。
各クラッチピストン80の軸方向両面には、制御油圧室86A、86Bとキャンセラ室87A、87Bとが形成されている。
制御油圧室86A、86Bはそれぞれ、クラッチアウタ71A、71Bの外周部71bとクラッチハブ72A、72Bとの間において、クラッチアウタ71A、71Bの端板部71aとクラッチピストン80との間に形成される。
キャンセラ室87A、87Bはそれぞれ、クラッチピストン80の外周部とクラッチハブ72A、72Bとの間において、スプリングリテーナ82とクラッチピストン80との間に形成される。
キャンセラ室87A、87Bは遠心力圧力補償室とも言うことができ、遠心力による制御油圧室86A、86Bの圧力増加を、キャンセラ室87A、87Bのオイルにかかる遠心力による圧力増加によって相殺し、クラッチOFFを確実にするためのものである。
メイン軸内軸41A内には、左側から延設されたメイン軸左側中心孔65と、右側から延設された第1制御油孔66Aと第2制御油孔66Bが設けてある。
メイン軸左側中心孔65は、潤滑用オイルポンプ61に連通し、潤滑用オイルが供給されている。
第1制御油孔66Aと第2制御油孔66Bは、それぞれ、第1制御用油路64A、第2制御用油路64Bを介して、第1クラッチアクチュエータ63A、第2クラッチアクチュエータ63Bに連通し、制御用オイルポンプ60から制御された制御用オイルが供給される(図2参照)。
第1制御油孔66Aは、メイン軸内軸41Aとクラッチ部外軸41Cと、クラッチハブ72Aを径方向に貫通して連通する油路90を介して、第1クラッチ44Aの制御油圧室86Aに連通している。
第2制御油孔66Bは、メイン軸内軸41Aとクラッチ部外軸41Cと、クラッチハブ72Bを径方向に貫通して連通する油路91を介して、第2クラッチ44Bの制御油圧室86Bに連通している。
第1クラッチ44Aのキャンセラ室87Aは、制御用オイルポンプ60からの高圧油路に図示しない降圧油路を介して連通するメイン軸潤滑油孔67に、ニードルベアリング55A、メイン軸内軸外周隙間油路92、及びクラッチ部外軸9Cとクラッチハブ72Aを径方向に貫通する油路93を介して、連通している。
従って、キャンセラ室87Aには、常に供給油路となる油路(本発明の「供給油路」)93から降圧された潤滑用のオイルが供給される。
第2クラッチ44Bのキャンセラ室87Bは、メイン軸左側中心孔65に、メイン軸内軸41Aを径方向に貫通する油路94、ニードルベアリング55B、メイン軸内軸外周隙間油路95、及びクラッチ部外軸41Cとクラッチハブ72Bを径方向に貫通する油路96を介して、連通している。メイン軸左側中心孔65には、常に潤滑用オイルポンプ61から潤滑用のオイルが供給されている。
従って、キャンセラ室87Bには、常に供給油路となる油路(本発明の「供給油路」)96から潤滑用のオイルが供給される。
一方、クラッチハブ72A、72Bの外周面にはそれぞれ、クラッチインナ70A、70B側を向いた端面に至る軸方向の切欠き101が複数設けられており、スプリングリテーナ82の内周面との間に、キャンセラ室87A、87Bの内外を連通する排出油路100が、クラッチハブ72A、72Bの円周方向において、間隔を空けて複数形成されている。
したがって、各キャンセラ室87A、87Bに供給されて充満した潤滑用のオイルは、排出油路100から排出され、キャンセラ室87A、87Bの外側とクラッチインナ70A、70Bの間に形成される潤滑油室88A、88Bに流入し、クラッチの回転により外周方向へ移動して、駆動摩擦板77と被動摩擦板78からなる摩擦板群79の潤滑に供される。
上記のような、本実施形態のクラッチ構造において、第1クラッチアクチュエータ63Aの作動により、第1クラッチ44Aの制御油圧室86Aに制御用のオイルが送られると、クラッチピストン80が右方に移動し、摩擦板群79を圧接することで、第1クラッチが断(OFF)状態から、接(ON)状態となる。
そのとき、キャンセラ室87A内に充満していた潤滑用のオイルは、クラッチピストン80の移動に伴うキャンセラ室87Aの縮小により、排出油路100から潤滑油室88Aへ排出される。
潤滑油室88Aには、クラッチの回転による遠心力のため、外周側からオイルが溜まっていくので、排出油路100が仮に外周側に寄って設けられていれば、排出油路100が溜まったオイルに塞がれて、キャンセラ室87Aからのオイルの排出が迅速に行われず、クラッチピストンの作動応答性が悪化する恐れがあるが、本実施形態における排出油路100は内径側のクラッチハブ72Aに設けられているので、そのような恐れが少ない。
また、第1クラッチを断(ON)状態から、接(OFF)状態とする場合は、排出油路100が潤滑油室88Aに溜まったオイルで塞がれていないので、クラッチピストン80がコイルばね85によって、クラッチアウタ71Aの端板部71a側に復帰することが妨げられない。
従って、クラッチピストン80の作動応答性の悪化が防止され、クラッチ断接が迅速になされる。
以上のことは、第2クラッチ44Bにおいても同様である。
すなわち、本実施形態のクラッチ構造の特徴を述べれば下記の通りである。
メイン軸41のクラッチ部外軸41Cがクランクケース32に回転自在に支承され、クラッチピストン80がクラッチ部外軸41Cに同軸芯に配設され、その軸方向移動に応じてクラッチオフ状態とクラッチオン状態とが切替えられ、各クラッチピストン80の軸方向両面に制御油圧室86A、86Bとキャンセラ室87A、87Bとが形成された油圧クラッチ44において、クラッチ部外軸41Cに回転方向と軸方向を拘束されて嵌装されたクラッチハブ72A、72Bに、クラッチアウタ71A、71Bが一体化されている。
各クラッチピストン80は、クラッチハブ72A、72Bとクラッチアウタ71A、71Bの間を軸方向に摺動し、キャンセラ室87A、87Bは、クラッチピストン80と、クラッチハブ72A、72B、クラッチアウタ71A、71B間に設けられたスプリングリテーナ82との間に形成さている。
クラッチハブ72A、72Bには、キャンセラ室87A、87Bへの供給油路93、96等とは別に、キャンセラ室87A、87Bの内外を連通する排出油路100が設けられている。
そのため、キャンセラ室87A、87Bからの排出オイルが、クラッチハブ72A、72Bに設けられた排出油路100から排出されるので、キャンセラ室87A、87Bの壁部材としてのスプリングリテーナ82に開口部を設けて排出する場合と比べて、より内径側からオイルを排出でき、キャンセラ室87A、87Bの外側とクラッチインナ70A、70Bの間に形成される潤滑油室88A、88Bにオイルが溜まることを抑制できる。また、溜まったオイルにより、キャンセラ室87A、87Bからのオイルの排出性が悪化することが抑制され、クラッチピストン80の作動応答性の悪化が防止され、クラッチ断接が迅速になされる。
また、排出油路100は、クラッチハブ72A、72Bの円周方向において、間隔を空けて複数形成されたので、クラッチハブ72A、72B等クラッチ部材の剛性を確保しながら、排出油路100を一箇所だけ設ける場合に比べて、オイルの排出性を向上させることができるため、クラッチ断接が迅速になされる。
油圧クラッチは、複数個の油圧クラッチを備えたツインクラッチ44であり、ツインクラッチ44の各クラッチハブ72A、72Bにそれぞれ排出油路100が設けられたので、ツインクラッチ44を備えるクラッチ構造であっても、各キャンセラ室87A、87Bからのオイル排出性を良好にし、クラッチ断接が迅速に行える。
なお、本実施形態は、ツインクラッチ44の場合を示して説明したが、単一の油圧クラッチ(例えば、第1クラッチ44A、または第1クラッチ44B)で構成されるクラッチ構造においても、本発明の要旨が適用されることは勿論である。
また排出油路100の一部は、壁部材としてのスプリングリテーナ82とクラッチハブ72A、72Bとの間に形成されたので、排出油路100のために別部材を設けることなく、スプリングリテーナ82を利用して排出油路100が形成されるため、部品点数を増やすことなく、オイルの排出性の向上、クラッチ断接の迅速化がなされる。
次に、本発明に係る実施形態2のクラッチ構造について図5に基づいて説明する。
なお、本実施形態は、上述の実施形態1に対して、排出油路200の設け方が異なる以外は、実施形態1と同じであり、図1、図2は本実施形態も同じであり、図3においても、図示される排出油路100が実施形態1のものであること以外は同じである。また、図4に示されるツインクラッチ44の構造は、排出油路100以外は、本実施形態2と同様であるので、図1〜図4も本実施の形態の説明において参照するものとする。
よって、本実施形態2に関しては、図5において、実施形態1と異なる箇所を主に説明し、他の箇所は同じ符号を付して説明を省略する。
実施形態1と同様に、第1クラッチ44Aのキャンセラ室87Aには、常に供給油路となる油路93から潤滑用のオイルが供給される。
第2クラッチ44Bのキャンセラ室87Bには、常に供給油路となる油路96から潤滑用のオイルが供給される。
一方、クラッチハブ72A、72Bにおいては、クラッチハブ72A、72Bの軸方向端部側の内周面のスプライン歯72aと、クラッチ部外軸41Cの外周面のスプライン歯41Caとの係合部73において、クラッチ部外軸41Cの外周面のスプライン歯41Caの一部が切欠かれて、キャンセラ室87A、87Bの内外を連通する排出油路200が設けられている。
スプライン歯41Caの切欠き201はそれぞれ、一端側が供給油路となる油路93、96に連通し、他端側がクラッチハブ72A、72Bのクラッチインナ70A、70B側に向いた端面に設けられた径方向切欠き202に連通し、各キャンセラ室87A、87Bの排出油路200を形成している。
排出油路200は、クラッチ部外軸41Cまたはクラッチハブ72A、72Bの円周方向において、間隔を空けて複数形成されている。
したがって、各キャンセラ室87A、87Bに供給されて充満した潤滑用のオイルは、排出油路200から排出され、キャンセラ室87A、87Bの外側とクラッチインナ70A、70Bの間に形成される潤滑油室88A、88Bに流入し、クラッチの回転により外周方向へ移動して、駆動摩擦板77と被動摩擦板78からなる摩擦板群79の潤滑が行われる。
上記のような、本実施形態2のクラッチ構造において、第1クラッチアクチュエータ63A(図2参照)の作動により、第1クラッチ44Aの制御油圧室86Aに制御用のオイルが送られると、クラッチピストン80が右方に移動し、摩擦板群79を圧接することで、第1クラッチが断(OFF)状態から、接(ON)状態となる。
そのとき、キャンセラ室87A内に充満していた潤滑用のオイルは、クラッチピストン80の移動に伴うキャンセラ室87Aの縮小により、排出油路200から潤滑油室88Aへ排出され、摩擦板群79の潤滑に供される。
潤滑油室88Aには、クラッチの回転による遠心力のため、外周側からオイルが溜まっていくので、排出油路200が仮に外周側に寄って設けられていれば、排出油路200が溜まったオイルに塞がれて、キャンセラ室87Aからのオイルの排出が迅速に行われず、クラッチピストンの作動応答性が悪化する恐れがあるが、本実施形態2における排出油路200は内径側のクラッチハブ72Aに設けられているので、そのような恐れが少ない。
また、第1クラッチを断(OFF)状態から、接(ON)状態とする場合は、排出油路200が潤滑油室88Aに溜まったオイルで塞がれていないので、クラッチピストン80が、コイルばね85によってクラッチアウタ71Aの端板部71a側に復帰することが妨げられない。
従って、クラッチピストン80の作動応答性の悪化が防止され、クラッチ断接が迅速になされる。
以上のことは、第2クラッチ44Bにおいても同様である。
すなわち、本実施形態2のクラッチ構造の特徴を述べれば下記の通りである。
メイン軸41のクラッチ部外軸41Cがクランクケース32に回転自在に支承され、クラッチピストン80がクラッチ部外軸41Cに同軸芯に配設され、その軸方向移動に応じてクラッチオフ状態とクラッチオン状態とが切替えられ、各クラッチピストン80の軸方向両面に制御油圧室86A、86Bとキャンセラ室87A、87Bとが形成された油圧クラッチ44において、クラッチ部外軸41Cに回転方向と軸方向を拘束されて嵌装されたクラッチハブ72A、72Bに、クラッチアウタ71A、71Bが一体化されている。
各クラッチピストン80は、クラッチハブ72A、72Bとクラッチアウタ71A、71Bの間を軸方向に摺動し、キャンセラ室87A、87Bは、クラッチピストン80と、クラッチハブ72A、72B、クラッチアウタ71A、71B間に設けられたスプリングリテーナ82との間に形成されている。
クラッチハブ72A、72Bは、クラッチ部外軸41Cと互いのスプライン歯41Ca、72aを係合させて嵌装されるとともに、クラッチハブ72A、72Bには、クラッチ部外軸41Cのスプライン歯41Caを一部切欠いて、キャンセラ室87A、87Bの内外を連通する排出油路200が設けられている。
そのため、キャンセラ室87A、87Bからの排出オイルが、クラッチ部外軸41Cのスプライン歯41Caを切欠いた排出油路200から排出されるので、キャンセラ室87A、87Bの壁部材としてのスプリングリテーナ82に開口部を設けて排出する場合と比べて、より内径側からオイルを排出でき、キャンセラ室87A、87Bの外側とクラッチインナ70A、70Bの間に形成される潤滑油室88A、88Bにオイルが溜まることを抑制でき、また、溜まったオイルにより、キャンセラ室87A、87Bからのオイルの排出性が悪化することが抑制され、クラッチピストン80の作動応答性の悪化が防止され、クラッチ断接が迅速になされる。
また、排出油路200は、クラッチ部外軸41Cの円周方向において、間隔を空けて複数形成されたので、クラッチハブ72A、72B等クラッチ部材の剛性を確保しながら、排出油路200を一箇所だけ設ける場合に比べて、オイルの排出性を向上させることができ、クラッチ断接が迅速になされる。
油圧クラッチは、複数個の油圧クラッチを備えたツインクラッチ44であり、ツインクラッチ44の各クラッチハブ72A、72Bにそれぞれ排出油路200が設けられたので、ツインクラッチ44を備えるクラッチ構造であっても、各キャンセラ室87A、87Bからのオイル排出性を良好にし、クラッチ断接が迅速に行える。
なお、本実施形態は、ツインクラッチ44の場合を示して説明したが、単一のクラッチ(例えば、第1クラッチ44A、または第1クラッチ44B)のみで構成されるクラッチ構造においても、本発明の要旨が適用されることは勿論である。
また、排出油路200は、クラッチ部外軸41Cのスプライン歯41Caを切欠いて形成されたため、クラッチ部外軸41Cの外面側の加工なので、クラッチハブ72A、72B内面側のスプライン歯72aを切欠く場合に比べて、加工性が向上する。
もっとも、クラッチハブ72A、72B内面側のスプライン歯72aを一部切欠いて排出油路200を形成しても、本発明として何ら支障はなく、本発明の要旨に含まれることはもちろんである。
また、排出油路200は、クラッチハブ72A、72Bにおいて、キャンセラ室87A、87Bにオイルを供給する供給油路である油路93、96を介してキャンセラ室87A、87Bに連通されたので、キャンセラ室87A、87Bへの供給油路93、96と、排出油路200とを別に設ける場合に比べて、製造工数が削減される。
次に、本発明に係る実施形態3のクラッチ構造について図6に基づいて説明する。
なお、本実施形態は、上述の実施形態2に対して、排出油路300の設け方が異なる以外は、実施形態2と同じであり、図1、図2は本実施形態も同じであり、図3においても、排出油路100が実施形態1のものであること以外は同じである。また、図4、図5に示されるツインクラッチ44の構造は、排出油路100、200以外は、本実施形態も同様であるので、図1〜図5も本実施の形態の説明において参照するものとする。
よって、本実施形態3に関しては、図6において、実施形態2と異なる箇所を主に説明し、他の箇所は同じ符号を付して説明を省略する。
実施形態2と同様に、クラッチハブ72A、72Bにおいては、クラッチハブ72A、72Bの軸方向端部側の内周面のスプライン歯72aと、クラッチ部外軸41Cの外周面のスプライン歯41Caとの係合部73において、クラッチ部外軸41Cの外周面のスプライン歯41Caが一部切欠かれて、キャンセラ室87A、87Bの外に連通する排出油路300が設けられている。
本実施形態3においては、実施形態2と異なり、スプライン歯41Caの切欠き301がそれぞれ、一端側が供給油路となる油路93、96と連通せず、別個にクラッチハブ72A、72Bに設けられ、キャンセラ室87A、87B内に連通する径方向の上流側排出油路303に接続している。
切欠き301の他端側は、クラッチハブ72A、72Bのクラッチインナ70A、70B側に向いた端面に設けられた径方向切欠き302に連通し、各キャンセラ室87A、87Bの排出油路300を形成している。
排出油路300は、クラッチ部外軸41Cまたはクラッチハブ72A、72Bの円周方向において、間隔を空けて複数形成されている。
上記のほかの特徴は、実施形態2で述べたと同様である。
したがって、実施形態2と同様に、キャンセラ室87A、87Bからの排出オイルが、クラッチ部外軸41Cのスプライン歯41Caを切欠いた排出油路300から排出されるので、キャンセラ室87A、87Bの壁部材としてのスプリングリテーナ82に開口部を設けて排出する場合と比べて、より内径側からオイルを排出でき、キャンセラ室87A、87Bの外側とクラッチインナ70A、70Bの間に形成される潤滑油室88A、88Bにオイルが溜まることを抑制でき、また、溜まったオイルにより、キャンセラ室87A、87Bからのオイルの排出性が悪化することが抑制され、クラッチピストン80の作動応答性の悪化が防止され、クラッチ断接が迅速になされる。
そしてさらに、本実施形態3においては排出油路300が、実施形態2と異なり、クラッチハブ72A、72Bにおいて、キャンセラ室87A、87Bにオイルを供給する供給油路93、96と並列に、軸方向に位置をずらせて別に形成された上流側排出油路303を介してキャンセラ室87A、87Bに連通されたので、排出油路200の一部を供給油路93、96と兼用とした実施形態2の構造に比べて、供給されるオイルが排出されるオイルに合流することがないため、よりスムーズにオイルの排出がなされ、クラッチ断接が迅速に行える。
なお、排出油路300は、クラッチ部外軸41Cのスプライン歯41Caを切欠いて形成されたため、クラッチ部外軸41Cの外面側の加工なので、クラッチハブ72A、72B内面側のスプライン歯72aを切欠く場合に比べて、加工性が向上するが、クラッチハブ72A、72B内面側のスプライン歯72aを一部切欠いて排出油路300を形成しても、本発明として何ら支障はなく、本発明の要旨に含まれることは実施形態2と同様である。
また、実施形態3で示される本発明が、単一の油圧クラッチで構成されるクラッチ構造にも適用され得ることも同様である。
以上、本発明のクラッチ構造の実施形態につき説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲で、種々の実施態様が含まれることは勿論である。
例えば、上記実施形態において、内燃機関30は自動二輪車1に搭載されたものを示したが、内燃機関30のタイプ、気筒数、搭載する車両等を限定するものではなく、さらに、同様の油圧クラッチであれば、据え置き型の内燃機関のクラッチにも適用可能なものである。
1…自動二輪車、2…車体フレーム、30…内燃機関、31…クランク軸、32…クランクケース、37…右クランクケースカバー、40…変速機、41…メイン軸、41A…メイン軸内軸、41B…メイン軸外軸、41C…クラッチ部外軸(回転軸)、41Ca…スプライン歯、42…カウンタ軸、43…プライマリ従動ギア、44…ツインクラッチ(油圧クラッチ)、44A…第1クラッチ、44B…第2クラッチ、60…制御用オイルポンプ、63A…第1クラッチアクチュエータ、63B…第2クラッチアクチュエータ、64A…第1制御用油路、64B…第2制御用油路、65…メイン軸左側中心孔、66A…第1制御油孔、66B…第2制御油孔、67…メイン軸潤滑油孔、70A、70B…クラッチインナ、71A、71B…クラッチアウタ、71a…端板部、72A、72B…クラッチハブ、72a…スプライン歯、79…摩擦板群、80…クラッチピストン、82…スプリングリテーナ(壁部材)、85…コイルばね、86A、86B…制御油圧室、87A、87B…キャンセラ室、88A、88B…潤滑油室、93、96…油路(供給油路)、100…排出油路、101…切欠き、200…排出油路、201…切欠き、202…径方向切欠き、300…排出油路、301…切欠き、302…径方向切欠き、303…上流側排出油路

Claims (8)

  1. クランクケース(32)に回転自在に支承される回転軸(41C)と、同回転軸(41C)に同軸芯に配設され、軸方向移動に応じてクラッチオフ状態とクラッチオン状態とを切替えるクラッチピストン(80)とを備え、同クラッチピストン(80)の軸方向両面に制御油圧室(86A,86B)とキャンセラ室(87A,87B)とが形成された油圧クラッチ(44)のクラッチ構造において、
    前記回転軸(41C)に回転方向と軸方向を拘束されて嵌装されたクラッチハブ(72A,72B)に、クラッチアウタ(71A,71B)が一体化され、
    前記クラッチピストン(80)は、前記クラッチハブ(72A,72B)とクラッチアウタ(71A,71B)の間を軸方向に摺動し、
    前記キャンセラ室(87A,87B)は、前記クラッチピストン(80)と、前記クラッチハブ(72A,72B)、クラッチアウタ(71A,71B)間に設けられた壁部材(82)との間に形成され、
    前記クラッチハブ(72A,72B)に、前記キャンセラ室(87A,87B)への供給油路(93,96)とは別に、前記キャンセラ室(87A,87B)の内外を連通する排出油路(100)が設けられたことを特徴とするクラッチ構造。
  2. クランクケース(32)に回転自在に支承される回転軸(41C)と、同回転軸(41C)に同軸芯に配設され、軸方向移動に応じてクラッチオフ状態とクラッチオン状態とを切替えるクラッチピストン(80)とを備え、同クラッチピストン(80)の軸方向両面に制御油圧室(86A,86B)とキャンセラ室(87A,87B)とが形成された油圧クラッチ(44)のクラッチ構造において、
    前記回転軸(41C)に回転方向と軸方向を拘束されて嵌装されたクラッチハブ(72A,72B)に、クラッチアウタ(71A,71B)が一体化され、
    前記クラッチピストン(80)は、前記クラッチハブ(72A,72B)とクラッチアウタ(71A,71B)の間を軸方向に摺動し、
    前記キャンセラ室(87A,87B)は、前記クラッチピストン(80)と、前記クラッチハブ(72A,72B)、クラッチアウタ(71A,71B)間に設けられた壁部材(82)との間に形成され、
    前記クラッチハブ(72A,72B)は、前記回転軸(41C)と互いのスプライン歯(41Ca,72a)を係合させて嵌装されるとともに、前記クラッチハブ(72A,72B)には、前記回転軸(41C)または前記クラッチハブ(72A,72B)の前記スプライン歯(41Ca,72a)の少なくとも一方の一部を切欠いて、前記キャンセラ室(87A,87B)の内外を連通する排出油路(200,300)が設けられたことを特徴とするクラッチ構造。
  3. 前記排出油路(100,200,300)は、前記回転軸(41C)または前記クラッチハブ(72A,72B)の円周方向において、間隔を空けて複数形成されたことを特徴とする請求項1または請求項2記載のクラッチ構造。
  4. 前記油圧クラッチ(44)は、複数個の油圧クラッチ(41A,41B)を備えたツインクラッチ(44)であり、同ツインクラッチ(44)の各クラッチハブ(72A,72B)にそれぞれ前記排出油路(101,200,300)が設けられたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか記載のクラッチ構造。
  5. 前記排出油路(100)の一部は、前記壁部材(82)と前記クラッチハブ(72A,72B)との間に形成されたことを特徴とする請求項1記載のクラッチ構造。
  6. 前記排出油路(200,300)は、前記回転軸(41C)側の前記スプライン歯(41Ca)を切欠いて形成されたことを特徴とする請求項2記載のクラッチ構造。
  7. 前記排出油路(200)は、前記クラッチハブ(72A,72B)において、前記キャンセラ室(87A,87B)にオイルを供給する供給油路(93,96)を介して前記キャンセラ室(87A,87B)に連通されたことを特徴とする請求項2または請求項6記載のクラッチ構造。
  8. 前記排出油路(300)は、前記クラッチハブ(72A,72B)において、前記キャンセラ室(87A,87B)にオイルを供給する供給油路(93,96)と並列に、軸方向に位置をずらせて別に形成された上流側排出油路(303)を介して前記キャンセラ室(87A,87B)に連通されたことを特徴とする請求項2または請求項6記載のクラッチ構造。
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