以下、本発明の実施の形態を添付図面に従って説明する。
図1は、一般的な電子写真方式の画像形成装置の一例を概略断面で示したものであり、本願発明が適用可能な画像形成装置の一例としての複写機の例を示している。この図1に示される画像形成装置は、感光体上に形成されたトナー像が記録媒体に直接的に転写されるタイプの画像形成装置、すなわち記録媒体自身が被転写体とされている画像形成装置の一例を示しているが、本願発明はこの構成のみに捉われるものではない。
図1において、符号1は画像形成装置としてのフルカラー複写機の装置本体を示し、当該画像形成装置1には、入力画像情報に基づいたレーザ光を発する書込み部2、原稿Dの原稿画像情報を読み取るための原稿読込部4、当該原稿読込部4の上方に配置されたコンタクトガラス5上に、当該原稿Dを搬送する原稿搬送読取部3が配置されている。さらにまた、図1に示される画像形成装置1は、4つのドラム状に構成された感光体11(Y、M、C、K)及び周辺作像機器等をそのそれぞれに備えた4つの作像ステーション51(Y、M、C、K)からなる作像エンジンと、これら4つの感光体11(Y、M、C、K)に対向する位置でその表面に当接して配置され、且つ、複数のローラに内接(及び/又は外接)して配置される無端ベルト状の搬送ベルト17と、などを備えて成り、さらにまた、画像形成装置1の下方で図中右側面には、感光体11(Y、M、C、K)上に形成されたトナー像が転写される記録紙などの記録媒体を積層して収納する記録媒体収納部としての給紙部7と、当該給紙部7の記録媒体Pの搬送方向下流側には、記録媒体Pの搬送タイミングを調整するレジストローラ対9が配置されている。
なお、上記した感光体11(Y、M、C、K)には各色(イエロー、マゼンタ、シアン、黒)のトナー像がそれぞれ形成される。また、感光体11(Y、M、C、K)の周囲には、各感光体11(Y、M、C、K)上の表面を帯電する帯電部12(Y、M、C、K)、各感光体11(Y、M、C、K)上に形成される静電潜像を現像する現像ユニット13(Y、M、C、K)、及び、各感光体11(Y、M、C、K)上の未転写トナーを回収するクリーニング部15(Y、M、C、K)が配置されていると共に、各感光体11(Y、M、C、K)に搬送ベルト17を介して対向する位置には、転写バイアスローラ14(Y,M、C、K)が配置されている。
さらにまた、感光体11(Y、M、C、K)上に形成されたトナー像を記録媒体に定着するための定着装置19が作像エンジンの搬送方向下流側に設けられており、この定着装置19で、トナー像を担持する記録媒体に熱と圧力とが付与されることで、記録媒体上の未定着トナー像が定着される。なお、ここに図示したのは、当業者には、電磁誘導加熱方式などと称される定着装置であり、非常に良く知られたタイプの定着装置19である。この種の電磁誘導加熱方式の定着装置の一例を概略で説明すると、当該定着装置19は、例えば、発熱層を有する薄肉の定着スリーブなどが断熱弾性層の外周部に設けられた定着ローラと、当該定着ローラに圧接して定着ニップ部を形成する加圧ローラと、定着ローラの外周面に近接・対向して定着ローラを電磁誘導加熱させる電磁誘導加熱部材などで構成され、当該電磁誘導加熱部材のコイル部に高周波交番電流を通電させることにより、定着ローラに設けられた定着スリーブなどが有する発熱層のまわりに双方向に交互に切り替わる磁束を、すなわち交番磁界を形成させて、当該交番磁界によって発熱層に渦電流を生じせしめ、この渦電流に対する発熱層の電気抵抗により発生するジュール熱で発熱層を、ひいては定着ローラを加熱する。このように加熱された定着ローラの熱により、定着ニップ部に搬送された記録媒体上のトナーを溶融させ、また、定着ニップ部で定着部材の一方としての定着ローラに圧接する、定着部材の他方としての加圧ローラからの加圧力により、溶融させたトナーを記録媒体上に半永久的な画像として定着させるものである。
次いで、この図1に示されるような画像形成装置1の画像形成動作について説明する。まず、画像形成装置1で複写されるべき画像情報を有する原稿Dが、原稿搬送読取部3に配置された搬送ローラによって、原稿台から図1中矢印に示されるように搬送され、原稿読込部4が下方に配置されているコンタクトガラス5上に載置される。そして、このコンタクトガラス5上に載置された原稿Dの画像情報が、原稿読込部4により光学的に読み取られる。この原稿読込部4の画像情報取得の一例を示すと、原稿読込部4は、照明ランプから発した光を照射させながら、コンタクトガラス5上の原稿Dを走査する。そして、原稿Dからの反射光を、ミラー群及びレンズなどの適宜適切な光学部材を介して、カラーセンサに結像する。このようにカラーセンサに結像された原稿Dのカラー画像情報は、当該カラーセンサにてRGB(レッド、グリーン、ブルー)の色分解光ごとに読み取られた後で、電気的な画像信号に変換され、さらに、RGBの色分解画像信号を基にして画像処理部で色変換処理、色補正処理、空間周波数補正処理等の処理をおこない、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナー色に対応したカラー画像情報を得るようになっている。
また、4つの感光体11(Y、M、C、K)は、図中時計回り方向に回転を開始するが、その際には、対応する帯電部12(Y、M、C、K)によって、その表面を一様に帯電させられる。このように一様に帯電させられた感光体11(Y、M、C、K)に、上記のように取得されたイエロー、マゼンタ、シアン、黒の各トナー色の画像情報に基づいたこれら各トナー色の画像情報に対応するレーザ光(露光光)が、書込み部2からそれぞれ対応する感光体11(Y、M、C、K)上に向けて発せられ、各感光体11(Y、M、C、K)に、各トナー色に対応した静電潜像が形成されるようになっている。
なお、書き込み部2には、それぞれの感光体11(Y、M、C、K)に対応して4つの光源が設けられており、当該4つの光源から、既述のように各トナー色に対応して取得されたレーザー光が出射される。光源から出射されたレーザー光は、例えば、高速回転するポリゴンミラーや折り返しミラーなどにより、それぞれの感光体11(Y、M、C、K)の軸長手方向(図1で言えば、紙面に対して垂直方向)に走査され、このようにして、時計回り方向に回転する感光体11(Y、M、C、K)上に、所望の静電潜像が書き込まれる。
このように所望の静電潜像が形成された感光体11(Y、M、C、K)は、さらに時計回り方向に回転させられ、現像ユニット13(Y、M、C、K)に達した際に、静電潜像の電荷に対応した各色トナーが感光体11(Y、M、C、K)上に転移され、可視像化される。
その一方で、装置本体1に配置された給紙部7からは、画像を形成されるべき記録媒体が搬送を開始されるが、その際には、未だ回転駆動をしていないレジストローラ対9まで搬送され、当該レジストローラ対9が形成するレジストローラニップ部に記録媒体の先端が突き当たることで所謂ループを形成し、記録媒体のレジストレーションが行われる。レジストレーションされた記録媒体は、感光体11(Y、M、C、K)上に形成されたトナー像とのタイミングを計って、レジストローラ対9の回転駆動により搬送ベルト17に向けて搬送されるが、この際に、感光体11(Y、M、C、K)とこれに搬送ベルト17を挟んで対向する転写バイアスローラ14(Y、M、C、K)とで構成される転写部で、所定の電圧を転写バイアスローラ14(Y、M、C、K)に印加するなどして画像が被転写体としての記録媒体に直接的に転写される。このようにして、各感光体11(Y、M、C、K)にそれぞれ形成された各色トナー像が、搬送ベルト17の記録媒体搬送方向上流側から逐次タイミングを併せて記録媒体上の所望の位置に逐次重ね合わされ、フルカラー画像が記録媒体上に形成される。このフルカラー画像を担持する記録媒体は、記録媒体搬送方向下流側に配設された定着装置19までさらに搬送され、定着装置19で既述のように熱と圧力とを受けることにより半永久的な画像として記録媒体に定着させられ、その後、さらに搬送されて排出トレイなどの記録媒体排出部に排出される。
なお、感光体11(Y、M、C、K)上に残った転写残トナーは、それぞれ対応するクリーニング部15(Y、M、C、K)で回収され、その後、図示しない除電装置で感光体11(Y、M、C、K)上の電位が初期化されることで一連の画像形成動作が完了する。
次に、図2を用いて、本願発明が適用されるような画像形成装置の別の構成例を説明する。図2は、イエロー、マゼンタ、シアン、黒(Y、M、C、K)のトナーの作像ユニットを有する4連タンデム式の画像形成装置の概略構成を断面で示した図であり、当該図2では、感光体11(Y、M、C、K)と中間転写ベルト20を用いた二次転写機構と、定着装置19とだけを抽出して描いている。また、図2に示される画像形成装置では、先に説明した図1に記載された画像形成装置のように、感光体11(Y、M、C、K)上に形成されたトナー像が直接的に被転写体としての記録媒体に転写される構成とは異なり、中間転写ベルト20が被転写体として設けられ、当該中間転写ベルトを介して、形成されるべき画像が記録媒体に転写される例を示したものである。なお、感光体11(Y、M、C、K)上にトナー像を形成する構成については、図1に示した画像形成装置と同様であるため、以下の説明では、感光体上にトナー像が形成された後で、記録媒体にトナー像が担持されるまでを主に説明する。
図2に記載される画像形成装置において、感光体11(Y、M、C、K)上に形成されたトナー像は、無端ベルト状で且つ複数の搬送ローラに内接及び/又は外接されることでかけまわされた中間転写ベルト20に一次転写される。その際に、中間転写ベルト20の内側には、そのベルトを挟んで各感光体11(Y、M、C、K)に対向して位置する一次転写ローラ38(Y、M、C、K)が配置されており、この一次転写ローラ38(Y、M、C、K)が中間転写ベルト20の裏面に当接することで、感光体11(Y、M、C、K)と中間転写ベルト20との適正な一次転写ニップ部を形成していると共に、上記一次転写ローラ38(Y、M、C、K)には、感光体11(Y、M、C、K)上に形成されたトナー像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加され、これにより、感光体11(Y、M、C、K)と中間転写ベルト20との間に転写電界が形成され、感光体11(Y、M、C、K)上のトナー像が、その感光体11(Y、M、C、K)と同期して回転駆動される中間転写ベルト20上に静電的に一次転写される。このように、各感光体11(Y、M、C、K)上に形成された各色トナー像は、中間転写ベルト20の搬送方向上流側から逐次タイミングを併せて中間転写ベルト20上に重ね合わされることで、当該中間転写ベルト20上にフルカラーのトナー画像が形成される。
その一方で、図2では図示されていないレジストローラ9で所謂ループを形成することでレジストレーションされて待機している記録媒体は、中間転写ベルト20に逐次一次転写されたフルカラートナー像とのタイミングを計って、レジストローラ対9の回転駆動により搬送され、中間転写ベルト20をかけまわしている二次転写ローラ35とこれに中間転写ベルト20を挟んで対向する対向ローラ36とで構成される二次転写部60で、所定の電圧を対向ローラ36に印加するなどして画像を二次転写される。二次転写された記録媒体は、記録媒体搬送方向下流側に配設された定着装置19までさらに搬送され、定着装置19で熱と圧力とを受けることにより半永久的な画像として記録媒体に定着させられ、その後、さらに搬送されて排出トレイなどの記録媒体排出部に排出されるようになっている。なお、感光体11(Y、M、C、K)上に残った転写残トナーがクリーニング部15(Y、M、C、K)で回収され、その後、図示しない除電装置で感光体11(Y、M、C、K)上の電位が初期化されるのは図1に示した例と同一である。
ここで、図2に示される定着装置19は、加熱ローラ(定着ローラ)と加圧ローラとで構成され、加熱ローラの内部に加熱源を有する定着装置が用いられており、図1に示したような、所謂電磁誘導加熱方式の定着装置とは、加熱ローラの加熱源が異なる。なお、ここに図示したような内部加熱方式の定着装置の一例を図3及び図4を用いて説明すると、この定着装置は、図3や図4に示されるような加熱ローラ18と、当該加熱ローラ18に図示しないスプリングなどの付勢部材の付勢力で押し付けられた加圧ローラ16とを有している。この加熱ローラ18は、断熱ブッシュ51、51、及び、軸受52,52を介して、画像形成装置本体1側に設けられた定着側板50、50に取り付けられており、図示しない駆動源に直接的に又はギアやプリーなどを介して間接的に係合した歯車53により回転駆動される。加熱ローラ18の内部には輻射ヒータ23が設けられており、その輻射ヒータ23の端部はヒータ保持部材24により保持されている。加熱ローラ18の表面には温度センサ60が当接され、温度センサ60により検出された信号は入力回路61を経てCPU63に取り込まれる。CPU63は温度センサ60により検出した加熱ローラ18の温度に基づいてドライバ62を介して輻射ヒータ23への通電を制御するように構成されている。通常は画像形成装置の電源が投入されると、ドライバ62を介して輻射ヒータ23へ電流が流れ、加熱ローラ18の表面が例えば180℃前後の所定の設定温度まで急激に上昇される。また、図4に示すように、加熱ローラ18は、金属製であるアルミニウム製の薄肉パイプ27を基体としており、その外径は例えば40mm、厚みは0.4mmである。加熱ローラ18の外面には、定着後の記録媒体の分離性を向上させるためにフッ素系の表面離型層26が形成されているのが一般的である。さらにまた、加圧ローラ16は、芯金40と、弾性材料としての発泡シリコンゴム層42を有している。なお、輻射ヒータ23は、タングステンフィラメント29をガラス管28で覆うように構成されて、そのガラス管28内には、少なくとも不活性ガス封入されており、必要に応じてタングステンフィラメント29の酸化を防ぐ窒素や、ヨウ素、臭素、塩素などを含むハロゲン物質等が封入されている。
次いで、これまで説明してきた本願発明が適用されるような電子写真方式の画像形成装置で用いられる(乾式)2成分トナー(透明トナーも含まれる)の製法の一例について説明しておく。以下で説明する製法の2成分トナーに対しては、リコー製重合トナーを一例として挙げて説明するが、ここに示したトナーはあくまでも一例であり、本願発明で使用可能なトナーが以下に示すトナーに限定されるものではない。
乾式2成分トナーは、少なくとも、窒素原子を含む官能基を有するポリエステルプレポリマー、ポリエステル、着色剤、離型剤とを有機溶媒中に分散させたトナー材料液を、水系溶媒中で架橋及び/又は伸長反応させて得られるトナーである。以下に、この2成分トナーの構成材料及び製造方法について説明する。
(ポリエステル)
ポリエステルは、多価アルコール化合物と多価カルボン酸化合物との重縮合反応によって得られる。多価アルコール化合物(PO)としては、2価アルコール(DIO)及び3価以上の多価アルコール(TO)が挙げられ、2価アルコール(DIO)単独、または、2価アルコール(DIO)と少量の3価以上の多価アルコール(TO)との混合物が好ましい。2価アルコール(DIO)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコール及びビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、及びこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。3価以上の多価アルコール(TO)としては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
多価カルボン酸(PC)としては、2価カルボン酸(DIC)及び3価以上の多価カルボン酸(TC)が挙げられ、2価カルボン酸(DIC)単独、及び2価カルボン酸(DIC)と少量の3価以上の多価カルボン酸(TC)との混合物が好ましい。2価カルボン酸(DIC)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸及び炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。3価以上の多価カルボン酸(TC)としては、炭素数9〜20の芳香族多価カルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、多価カルボン酸(PC)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いて多価アルコール(PO)と反応させてもよい。
多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)の重縮合反応は、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下で、150〜280℃に加熱し、必要により減圧としながら生成する水を留去して、水酸基を有するポリエステルを得る。ポリエステルの水酸基価は5以上であることが好ましく、ポリエステルの酸価は通常1〜30、好ましくは5〜20である。酸価を持たせることで負帯電性となりやすく、さらには記録紙への定着時、記録紙とトナーの親和性がよく低温定着性が向上する。しかし、酸価が30を超えると帯電の安定性、特に環境変動に対し悪化傾向がある。また、重量平均分子量は1万〜40万、好ましくは2万〜20万である。重量平均分子量が1万未満では、耐オフセット性が悪化するため好ましくない。また、40万を超えると低温定着性が悪化するため好ましくない。
ポリエステルには、上記の重縮合反応で得られる未変性ポリエステルの他に、ウレア変性のポリエステルが好ましく含有される。ウレア変性のポリエステルは、上記の重縮合反応で得られるポリエステルの末端のカルボキシル基や水酸基等と多価イソシアネート化合物(PIC)とを反応させ、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)を得て、これとアミン類との反応により分子鎖が架橋及び/又は伸長されて得られるものである。多価イソシアネート化合物(PIC)としては、脂肪族多価イソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアネート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;及びこれら2種以上の併用が挙げられる。多価イソシアネート化合物(PIC)の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5を超えると低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1未満では、ウレア変性ポリエステルを用いる場合、そのエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中の多価イソシアネート化合物(PIC)構成成分の含有量は、通常0.5〜40wt%、好ましくは1〜30wt%、さらに好ましくは2〜20wt%である。0.5wt%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性との両立の面で不利になる。また、40wt%を超えると低温定着性が悪化する。イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有されるイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
次に、ポリエステルプレポリマー(A)と反応させるアミン類(B)としては、2価アミン化合物(B1)、3価以上の多価アミン化合物(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、及びB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。2価アミン化合物(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンなど);脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);及び脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などが挙げられる。3価以上の多価アミン化合物(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、前記B1〜B5のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリジン化合物などが挙げられる。これらアミン類(B)のうち好ましいものは、B1及びB1と少量のB2の混合物である。
アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2を超えたり1/2未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。また、ウレア変性ポリエステル中には、ウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量のモル比は、通常100/0〜10/90であり、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは、60/40〜30/70である。ウレア結合のモル比が10%未満では、耐ホットオフセット性が悪化する。
ウレア変性ポリエステルは、ワンショット法などにより製造される。多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)を、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧としながら生成する水を留去して、水酸基を有するポリエステルを得る。次いで40〜140℃にて、これに多価イソシアネート(PIC)を反応させ、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)を得る。さらにこの(A)にアミン類(B)を0〜140℃にて反応させ、ウレア変性ポリエステルを得る。
イソシアネート(PIC)を反応させる際、及び、ポリエステルプレポリマー(A)とアミン類(B)とを反応させる際には、必要により溶剤を用いることもできる。使用可能な溶剤としては、芳香族溶剤(トルエン、キシレンなど);ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど);エステル類(酢酸エチルなど);アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)及びエーテル類(テトラヒドロフランなど)などのイソシアネート(PIC)に対して不活性なものが挙げられる。また、ポリエステルプレポリマー(A)とアミン類(B)との架橋及び/又は伸長反応には、必要により反応停止剤を用い、得られるウレア変性ポリエステルの分子量を調整することができる。反応停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど)、及びそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。ウレア変性ポリエステルの重量平均分子量は、通常1万以上、好ましくは2万〜1000万、さらに好ましくは3万〜100万である。1万未満では耐ホットオフセット性が悪化する。ウレア変性ポリエステル等の数平均分子量は、先の未変性ポリエステルを用いる場合は特に限定されるものではなく、前記重量平均分子量とするのに得やすい数平均分子量でよい。ウレア変性ポリエステルを単独で使用する場合は、その数平均分子量は、通常2000〜15000、好ましくは2000〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。20000を超えると低温定着性及びフルカラー装置に用いた場合の光沢性が悪化する。
未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとを併用することで、低温定着性及びフルカラー画像形成装置に用いた場合の光沢性が向上するので、ウレア変性ポリエステルを単独で使用するよりも好ましい。尚、未変性ポリエステルはウレア結合以外の化学結合で変性されたポリエステルを含んでも良い。未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとは、少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。従って、未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとは類似の組成であることが好ましい。また、未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとの重量比は、通常20/80〜95/5、好ましくは70/30〜95/5、さらに好ましくは75/25〜95/5、特に好ましくは80/20〜93/7である。ウレア変性ポリエステルの重量比が5%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性との両立の面で不利になる。
未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとを含むバインダー樹脂のガラス転移点(Tg)は、通常45〜65℃、好ましくは45〜60℃である。45℃未満ではトナーの耐熱性が悪化し、65℃を超えると低温定着性が不十分となる。また、ウレア変性ポリエステルは、得られるトナー母体粒子の表面に存在しやすいため、公知のポリエステル系トナーと比較して、ガラス転移点が低くても耐熱保存性が良好な傾向を示す。
(着色剤)
着色剤としては、公知の染料及び顔料が全て使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びそれらの混合物が使用できる。着色剤の含有量はトナーに対して通常1〜15重量%、好ましくは3〜10重量%である。
着色剤は樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造、またはマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、ポリスチレン、ポリ−p−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体、あるいはこれらとビニル化合物との共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられ、単独あるいは混合して使用できる。透明トナーを作成する場合は、上記の着色剤を抜くだけで良い。
(荷電制御剤)
荷電制御剤としては公知のものが使用でき、例えばニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。具体的にはニグロシン系染料のボントロン03、4級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、4級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、4級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、4級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、4級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。このうち、特にトナーを負極性に制御する物質が好ましく使用される。
荷電制御剤の使用量は、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくはバインダー樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲で用いられる。好ましくは、0.2〜5重量部の範囲がよい。10重量部を超える場合にはトナーの帯電性が大きすぎ、荷電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招く。
(離型剤)
離型剤としては、融点が50〜120℃の低融点のワックスが、バインダー樹脂との分散の中でより離型剤として効果的に定着ローラとトナー界面との間で働き、これにより定着ローラにオイルの如き離型剤を塗布することなく高温オフセットに対し効果を示す。このようなワックス成分としては、以下のものが挙げられる。ロウ類及びワックス類としては、カルナバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス、ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス、オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス、及び及びパラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックス等が挙げられる。また、これら天然ワックスの外に、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス、エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス等が挙げられる。さらに、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド及び、低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ−n−ステアリルメタクリレート、ポリ−n−ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n−ステアリルアクリレート−エチルメタクリレートの共重合体等)等、側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子等も用いることができる。荷電制御剤、離型剤はマスターバッチ、バインダー樹脂とともに溶融混練することもできるし、もちろん有機溶剤に溶解、分散する際に加えても良い。
(外添剤)
トナー粒子の流動性や現像性、帯電性を補助するための外添剤として、無機微粒子が好ましく用いられる。この無機微粒子の一次粒子径は、5×10−3〜2μmであることが好ましく、特に5×10−3〜0.5μmであることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20〜500m2/gであることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01〜5wt%であることが好ましく、特に0.01〜2.0wt%であることが好ましい。無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。中でも、流動性付与剤としては、疎水性シリカ微粒子と疎水性酸化チタン微粒子を併用するのが好ましい。特に両微粒子の平均粒径が5×10−2μm以下のものを使用して攪拌混合を行った場合、トナーとの静電力、ファンデルワールス力は格段に向上することより、所望の帯電レベルを得るために行われる現像ユニット内部の攪拌混合によっても、トナーから流動性付与剤が脱離することなく、ホタルなどが発生しない良好な画像品質が得られて、さらに転写残トナーの低減が図られる。酸化チタン微粒子は、環境安定性、画像濃度安定性に優れている反面、帯電立ち上がり特性の悪化傾向にあることより、酸化チタン微粒子添加量がシリカ微粒子添加量よりも多くなると、この副作用の影響が大きくなることが考えられる。しかし、疎水性シリカ微粒子及び疎水性酸化チタン微粒子の添加量が0.3〜1.5wt%の範囲では、帯電立ち上がり特性が大きく損なわれず、所望の帯電立ち上がり特性が得られ、すなわち、コピーの繰り返しを行っても、安定した画像品質が得られる。
次に、トナーの製造方法について説明する。ここでは、好ましい製造方法について示すが、先に記述したように本願発明がこれに限られるものではない。
(トナーの製造方法)
1)着色剤、未変性ポリエステル、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー、離型剤を有機溶媒中に分散させトナー材料液を作る。
有機溶媒は、沸点が100℃未満の揮発性であることが、トナー母体粒子形成後の除去が容易である点から好ましい。具体的には、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。特に、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒及び塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましい。有機溶媒の使用量は、ポリエステルプレポリマー100重量部に対し、通常0〜300重量部、好ましくは0〜100重量部、さらに好ましくは25〜70重量部である。
2)トナー材料液を界面活性剤、樹脂微粒子の存在下、水系媒体中で乳化させる。
水系媒体は、水単独でも良いし、アルコール(メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などの有機溶媒を含むものであってもよい。トナー材料液100重量部に対する水系媒体の使用量は、通常50〜2000重量部、好ましくは100〜1000重量部である。50重量部未満ではトナー材料液の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られない。20000重量部を超えると経済的でない。
また、水系媒体中の分散を良好にするために、界面活性剤、樹脂微粒子等の分散剤を適宜加える。界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
また、フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果をあげることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[ω−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及び金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる。商品名としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製)、フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−102(ダイキン工業社製)、メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ社製)、エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204、(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F150(ネオス社製)などが挙げられる。
また、カチオン性界面活性剤としては、フルオロアルキル基を右する脂肪族1級、2級もしくは2級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6−C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、商品名としてはサーフロンS−121(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDS−202(ダイキンエ業杜製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製)、エクトップEF−132(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−300(ネオス社製)などが挙げられる。
樹脂微粒子は、水系媒体中で形成されるトナー母体粒子を安定化させるために加えられる。このために、トナー母体粒子の表面上に存在する被覆率が10〜90%の範囲になるように加えられることが好ましい。例えば、ポリメタクリル酸メチル微粒子1μm、及び3μm、ポリスチレン微粒子0.5μm及び2μm、ポリ(スチレン―アクリロニトリル)微粒子1μm、商品名では、PB−200H(花王社製)、SGP(総研社製)、テクノポリマーSB(積水化成品工業社製)、SGP−3G(総研社製)、ミクロパール(積水ファインケミカル社製)等がある。また、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト等の無機化合物分散剤も用いることができる。
上記の樹脂微粒子、無機化合物分散剤と併用して使用可能な分散剤として、高分子系保護コロイドにより分散液滴を安定化させても良い。例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸−β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−β−ヒドロキシエチル、アクリル酸−β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸−β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなど、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエーテル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなど、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの含窒素化合物、またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。
分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。この中でも、分散体の粒径を2〜20μmにするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜20000rpmである。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜5分である。分散時の温度としては、通常、0〜150℃(加圧下)、好ましくは40〜98℃である。
3)乳化液の作製と同時に、アミン類(B)を添加し、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)との反応を行わせる。
この反応は、分子鎖の架橋及び/又は伸長を伴う。反応時間は、ポリエステルプレポリマー(A)の有するイソシアネート基構造とアミン類(B)との反応性により選択されるが、通常10分〜40時間、好ましくは2〜24時間である。反応温度は、通常、0〜150℃、好ましくは40〜98℃である。また、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。具体的にはジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレートなどが挙げられる。
4)反応終了後、乳化分散体(反応物)から有機溶媒を除去し、洗浄、乾燥してトナー母体粒子を得る。
有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に層流の攪拌状態で昇温し、一定の温度域で強い攪拌を与えた後、脱溶媒を行うことで紡錘形のトナー母体粒子が作製できる。また、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩などの酸、アルカリに溶解可能な物を用いた場合は、塩酸等の酸により、リン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、トナー母体粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他酵素による分解などの操作によっても除去できる。
5)上記で得られたトナー母体粒子に、荷電制御剤を打ち込み、ついで、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子等の無機微粒子を外添させ、トナーを得る。
荷電制御剤の打ち込み、及び無機微粒子の外添は、ミキサー等を用いた公知の方法によって行われる。これにより、小粒径であって、粒径分布のシャープなトナーを容易に得ることができる。さらに、有機溶媒を除去する工程で強い攪拌を与えることで、真球状からラクビーボール状の間の形状を制御することができ、さらに、表面のモフォロジーも滑らかなものから梅干形状の間で制御することができる。
上記で説明されたような透明トナーを含む乾式2成分トナーを用い、且つ、図1や図2に概略で記載された画像形成装置を用いて、透明トナーを含んだ画像を記録媒体上に形成することができれば、既存の画像形成装置を用いて透明トナーを含んだ高付加価値印刷ができるようになるため、非常に好適である。
そこで、まずは以下で、図2に記載されるような非常に一般的な画像形成装置に透明トナーの作像ユニットを追加する追加方法について説明する。図2で示されるように、基本4色のトナー色に対応した作像ステーション51(Y、M、C、K)が4つ設けられた画像形成装置では、作像できるトナー色数は、当然ながら4色であり、この作像エンジンを用いて、さらにもう1色以上のトナー色を追加するためには、この作像エンジンが搭載される基本プラットフォームでは作像ステーションの数が足りず、透明トナーによるトナー像を含んだ画像を形成することができない。
そこで、本発明の一実施形態では、このような4色分の作像ステーションが設けられた作像エンジンにおける、作像ステーションのうちの一部の作像ステーションを入替えて、複数回(例えば2度)作像することで5色以上のトナー色数の画像形成が可能となるようにした。すなわち、作像ステーションを入替えたりするなどして、基本4色以上の複数個の(例えば、基本4色+透明トナー1色の5色の、あるいはそれ以上のトナー色数に対応する)作像ステーションを用いて作像エンジンを構成することで、透明トナーを含んだ高付加価値印刷に対応する。この目的のために、複数個用いられる作像ステーションは、全て同一の構成であり、これら作像ステーションのいずれにも透明トナーを使用可能であるように構成されている。この構成において、例えば、基本4色のトナー作像に対して、透明トナー1色を追加することを想定すると、1回目の作像動作では、イエロー、マゼンタ、シアン、黒(Y、M、C、K)の基本4色のトナー色で作像を行い、その後、上記基本4色のトナーを作像する作像ステーションのいずれかを透明トナー用の作像ステーションと入替えて、2回目の作像を実施する。あるいは、4つの作像ステーションのうちの一つを予め透明トナー用の作像ステーションにしておき、1回目の作像動作では、透明トナーだけの作像を行った後に、当該透明トナー用の作像ステーションを、作像エンジンが基本4色のトナー色構成になるように、対応する基本4色のいずれかのトナー色の作像ステーションに入替えて、2回目の作像を行えばよい。このように、いずれかの作像ステーションを透明トナー用の作像ステーションと入替えるか、あるいは、4つ並列して配置される作像ステーションの並び順などを入替えることなどによって、様々な作像順を達成することが可能になる。
ここで、本発明における作像ステーションとは、少なくとも感光体と現像ユニットとを含んだ、例えばプロセスカートリッジなどの総称であり、場合によっては、感光体の帯電ユニットや転写ユニットなども含むことも可能である。作像ステーションの交換の際には、作像ステーション自体を交換する場合だけでなく、作像ステーションの現像ユニットだけを交換してもよいが、現像ユニットを交換することにより作像ステーションのトナーを入替える場合には、現像ユニットにトナーを補給するトナー補給ユニットも同時に交換するのが好ましい。ただし、画像形成装置の構成上、トナー補給ユニットも同時に交換するのが困難な場合には、トナーが混色しないように、トナー補給ユニットから現像ユニットへのトナー補給用開口を塞いでおくようにするとよい。なお、この開口を塞ぐ動作に加えて、トナー補給ユニットから現像ユニットへのトナー補給動作自体を停止し、現像ユニット内に存在するトナーのみで作像を行うように構成するか、あるいは、通常のトナー補給動作以外のトナー補給手段を用いるように構成することも可能である。
なお、透明トナーの作像順の決定については、例えば、入替える作像ステーションの位置をユーザーが任意に選択することで、ユーザーが任意に乃至自在に選択することができる。この透明トナー作像ステーションの入替え位置や配置位置については、これら作像ステーションのいずれにも透明トナーを使用可能であるように構成されているため、当然ながら任意に乃至自在に設定することが可能である。ただし、一般的な透明トナーの作像順は、通常であれば、記録媒体の表面における最上面に、すなわち、他のトナー色よりも透明トナーが記録媒体の表面に対して最も上に載るような順番で使用される。
ここで、一般的な透明トナーの使用用途について簡単に説明すると、第一には、透明トナーによる画像面の保護である。この画像面保護に関しては、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、黒(Y、M、C、K)のなどの有色トナーで形成された画像面を透明トナーにて覆ってしまう場合と、画像面を形成している有色トナーの周囲に透明トナーを作像する場合とがある。前者は、透明トナーによる画像面のオーバーコートとなり、当該透明トナーのオーバーコート層が有色トナーの画像表面を保護する。後者は、電子写真方式の画像形成装置に特有な、記録媒体上の有色トナーの突出、すなわち、トナーのパイルハイトに起因する段差によって生じる画像部の保護機能低下を、有色トナー突出部周辺に有色トナー表面と略面一となるように透明トナーを作像することで解決しようとするものである。
第二の透明トナーの使用用途としては、透明トナーを用いて透かしや地紋などを作像することにある。このような場合で透明トナー上に有色トナーを重ねてしまうと、有色トナーの不透明性から、透明トナーによる透かしや地紋などの画像が見えなくなってしまうため、必然的に透明トナーは記録媒体最表面側に作像されることになる。さらに別の使用用途である第三の使用用途としては、透明トナーによって記録媒体の表面形状を変更することにある。例えば、記録媒体の表面が平滑なものである場合に、透明トナーで特定のパタンを作像することで、ファンシーペーパーなどのような質感を記録媒体に与えることができるようになる。記録媒体上の透明トナー付着量を増減すれば、この種の質感を変更することが可能であり、特に質感に関する効果が顕著に現れるようにするためには、付着量を多くすると共に、記録媒体上最表面に透明トナーを作像した方が効果が顕著に現れる。このように、透明トナーの使用用途については様々なものがあり、現状では、記録媒体上に形成される画像の最表面側に透明トナーを作像するのが一般的ではあるが、将来的には、透明トナーを、例えば基本4色のイエロー、マゼンタ、シアン、黒(Y、M、C、K)のトナー作像順のいずれかの間に設けることも考えられる。
この作像ステーションの入替え動作について、図5及び図6を用いてさらに説明する。図5は、4色のトナーで、ひいては4つの作像ステーションでトナー像を被転写体としての中間転写ベルト上に作像する従来例を示した概略模式図であり、図6は、本発明のように、この図5で示された作像ステーションの一つを入替えて、透明トナーを含んだ5色分のトナー像を中間転写ベルト上に作像する例を示した概略模式図である。なお、図5及び図6は、概略模式図であることから、作像ステーションにおける4つの感光体と中間転写ベルトとだけを抽出して描いており、これら図5、6における感光体本体に付された符号と、中間転写ベルト20上で模式的に描かれたトナーに付された符号とは、トナー像の作像順を示している。
まず、図5に示されるように、図中左方から右方へ動作する中間転写ベルト20には、その動作方向上流側の作像ステーションの感光体から順番に、中間転写ベルト20上へトナーを転写している。その一方で、図6のa)では、図中最も右側に位置する一つの作像ステーションのみから中間転写ベルト上へトナーが(例えば、透明トナーが)転写されている。本発明のこの実施形態では、この図6a)に示された状態から、最下流側の作像ステーションを所望のトナー色を有した作像ステーションに入替えることになる。その後、この中間転写ベルト20上に転写されたトナー像は、当該中間転写ベルト20がさらに回転駆動することで、二次転写部60を通過するが(図2参照)、後述するトナー転写機構の一時無効化により、そのトナー像に何ら影響されることなく再度作像ステーションの転写位置まで戻ってくる。その後、図6のb)では、再び戻ってきた中間転写ベルト20上のトナーに対して、更にもう一度それぞれの作像ステーションからトナー像が転写されることで、基本4色のトナー色数に透明トナーなどの別のトナー像を加えた5色分のトナー像を形成することが可能となる。
なお、これら一連の動作において、本願発明では、複数個用いられる作像ステーションのいずれにも透明トナーを用いることができるように構成されていることにより、図6では、中間転写ベルト20の動作方向に対して最下流側の作像ステーションを入れ替えることによって、基本プラットフォーム構成を大きく変更することなく5種類のトナー像の作像を可能にしているが、本発明では、作像順をも任意に変更することが可能である。これを発明の理解を深めるために黒トナーと透明トナーとを用いた最も単純な白黒画像に透明トナーを組み合わせた例で説明すると、例えば、図6のa)において最下流側の作像ステーションの作像ユニットを最初は透明トナーにして、この作像ステーションを2回目の作像では、黒トナーの作像ユニットに入替えることで、透明トナーの作像順を最初にすることも可能でなる。あるいは最下流の作像ステーションの作像ユニットを最初は黒トナーにして、2回目を透明トナーにすることで、透明トナーの作像順を最後にすることが可能となる。また、図示はしないが、最下流側の作像ステーションに透明トナーが用いられている場合に、その他の3つの作像ステーションに黒トナーに対応する作像ステーションが存在する場合には、1回目で中間転写ベルト20上に透明トナーを転写して、その後、中間転写ベルト20が再度作像エンジン部に戻ってきた際の2回目で、その他の3つの作像ステーションに存在する黒トナーの作像ステーションから黒トナーを中間転写ベルト20に転写することもできるし、その逆に、1回目で黒トナーを転写して、2回目で透明トナーを転写することもできる。
さらに、本願発明では、複数個用いられる作像ステーションのいずれにも透明トナーを用いることができるように構成されているため、作像エンジンにおけるいずれの位置においても、透明トナー用の作像ステーションを配置することができる。この一例が図7に示されていて、図7のa)に示されているように、例えば、中間転写ベルト20の動作方向で上流側から3番目の作像ステーションに存在するトナー色(符号1)で、1回目の作像を行った後、当該3番目の作像ステーションを透明トナー用の作像ステーションに入替えることで、図7のb)に示されるように、透明トナー(符号5)が基本4色のイエロー、マゼンタ、シアン、黒(Y、M、C、K)間に配置される作像が可能である。
このように、透明トナーが使用される作像ステーションが、作像エンジンの何れの位置にでも任意に配置できれば、電子写真方式の画像形成装置において、透明トナーの作像順をその他のトナーに対してユーザーが最良と考える位置に対応して配置できるので、作像順などの条件を最適化できるため好適である。これは、例えば、最初の作像を基本4色のいずれかのトナーで作像した後に、当該トナーに入替えて透明トナーを用いる場合に、残りの基本4色のトナー色に対応する作像ユニットを透明トナー用の作像ユニットを含んだ4つで様々な配置順序に配置しなおしたりすることで、透明トナーが被転写体上へ転写される作像順を、透明トナーを用いた作像ステーション以外の作像ステーションに対して任意の順番にすることができることも意味する。この場合にもやはり、透明トナーの作像順をその他のトナーに対してユーザーが最良と考える作像順にすることができるため、作像条件を最適化でき好適である。
次に、本発明では、既存の画像形成装置を用いて、透明トナーを含んだ高付加価値印刷を行うために、複数回の転写工程を行うことをその特徴としているが、この際、先に転写された画像が、例えば、図2で言えば二次転写部60を通過したり、あるいは、再度作像ステーションが配置された作像エンジン部に達し、感光体11と一次転写ローラ38とで構成される一次転写用の転写ニップ部を通過することになる。このような場合、以下に記載するような、トナー転写機構を一時的に無効化する転写一時無効化を行うことによって、先に被転写体上に形成されているトナー像を乱さないように構成することが好ましい。この転写一時無効化は、転写ニップ部で転写電界を供与しない又は低減する動作や、ソレノイド(図示せず)などを用いて、転写ニップ部を形成している転写部材、例えば、図2に示される二次転写部では対向ローラ36や、一次転写部では、転写バイアスローラ38(Y、M、C、K)を脱圧させるか若しくは離間させる動作で実現することが可能である。この種の転写一時無効化は、現行の画像形成装置に通常的に設けられている機能であり、例えば、プロセスコントロール時に被検査体のトナーパッチを乱さないようにする際に作動されている。なお、本発明の転写一時無効化の動作は、厳密な規定はなく、あくまでも、被転写体上のトナー像を乱さない程度であればよい。
この転写一時無効化を図8a〜図8dを用いて説明する。図8a〜図8dは、転写一時無効化及びその手段を説明するためのステップ図であり、図8aは、透明トナーにより被転写体である中間転写ベルト20上にトナー像を転写させる際の状態を示したものであり、図8bは、透明トナーのトナー像が転写一時無効化により、そのトナー像が乱されずに再度作像エンジン部まで搬送された状態を示したものであり、図8cは、透明トナーの作像ステーションが黒トナーの作像ステーションに入替えられて、トナー像が乱されずに再度作像エンジン部まで搬送された透明トナー像の上に、基本4色のトナー像が形成された状態を示したものであり、図8dは、これら透明トナーを含む5色のトナー像が記録媒体上に転写されて定着された状態を示す。
まず、図8aにおいて、透明トナー像が中間転写ベルト20上に転写される。その際には、例えば、透明トナー用の作像ステーション以外のイエロー、シアン、マゼンタ(Y、C、M)の各色トナーの作像ステーションらでは、転写バイアスローラ38(Y、C、M)の転写電界を供与しないことで、中間転写ベルト20上にトナー像を転写させない。次に、図8bに示されている状態にするために、透明トナー像を転写された中間転写ベルト20が二次転写部60を通過する際にも、対向ローラ36に二次転写バイアスを供与しないことで、及び/又は、対向ローラ36を中間転写ベルト20から離間させることで、中間転写ベルト20上に転写されて担持されている透明トナー像に何ら影響を与えることなく、再度、作像エンジン部へ透明トナーのトナー像を搬送する。次いで、図8cに示されるように、透明トナーの作像ステーションを黒トナーの作像ステーションに入替えて、イエロー、シアン、マゼンタ、黒(Y、C、M、K)の各色トナーのトナー像を中間転写ベルト20上に転写する。最後に、図8dに示されるように、中間転写ベルト20上のこれら透明トナーを含む5色のトナー像を、二次転写部60で対向ローラ36に二次転写電圧を印加して記録媒体に一括して転写させ、これら5色分のトナー像が転写された記録媒体を定着装置19で定着させる。このように、本願発明では、5色分のトナー像を一度の定着動作で定着させることが可能であるため、複数回の定着動作を行うことがなく、その結果、記録媒体上のトナー像に過剰な熱量を与えることがなくなり、省エネルギーを達成できるだけでなく、画像形成後の記録媒体が過剰に反ったり、光沢異常を低減できるようになるなど、記録媒体の品質向上を図ることができるようになる。
なお、これまで4つの作像ステーションが設けられる作像エンジンで、作像ステーションを入替えることにより、透明トナーを含んだ複数個の作像ステーションを用いた高付加価値印刷を行う例を示したが、本願発明では、これに限られるものではない。例えば、5つの作像ステーションが元々設けられている、あるいは、それ以上の作像ステーションが設けられている作像エンジンを有する画像形成装置でも適用は可能である。この場合は、4つ以上の、例えば5つの作像ステーションが存在しているため、そのうちの一つを透明トナー用の作像ステーションとして用いて、さらに、被転写体上のトナー像が透明トナーを含む所望のトナー色数となるまで複数回の転写動作を行うと共に、透明トナーが使用される作像ステーションから被転写体に透明トナーを転写する順番と、透明トナーが使用されない作像ステーションから被転写体に透明トナー以外のトナーを転写する順番とを、ユーザーが任意に、あるいは、制御手段を用いて自動で決定していれば、本願発明の目的を達成することが可能である。すなわち、本願発明では、作像ステーションを入替える場合であっても、入替えない場合であっても、透明トナーを使用できる作像ステーションを含んだ複数個の作像ステーションを用いて複数回画像形成を行っていればよい。なお、この際、先に記述した転写一時無効化を行うことが好適であることも変わらない。
さらにまた、発明の理解を深めるために、上記した例では、被転写体である中間転写ベルト20に対して、2回の作像工程を行う例を示したが、本発明は、これに限られるものではない。例えば、さらに作像工程を繰り返して、すなわち3回以上の作像工程を繰り返して、画像を形成することも可能である。これを説明すると、例えば、1回目の被転写体への転写工程で、イエロートナー像を形成した後で、2回目の被転写体への転写工程で、透明トナー像を形成し、さらに、3回目の被転写体への転写工程で、残りのシアン、マゼンタ、黒のトナー像を被転写体上へ転写することもできる。このように、複数回の転写工程を実施することが可能であるため、既存の画像形成装置の構成を大きく変更することなく、ユーザーの透明トナーの使用用途に応じた最適な作像順を簡易且つ容易に変更することが可能になる。なお、このような複数回の作像工程を実施する際に、透明トナー像が記録媒体の再表面側に配置乃至位置するトナー像が得られるまで、被転写体が転写ニップ部を複数回、すなわち何回でも通過させるように構成してもよい。このように構成すると、画像形成動作の生産性は低下するものの、透明トナーの使用用途として最も一般的である記録媒体の再表面側に透明トナー像が形成される作像順を必ず実施することができるようになる。
次に、本発明では、透明トナーが使用される作像ステーションから被転写体に透明トナーを転写する順番と、透明トナーが使用されない作像ステーションから被転写体に透明トナー以外のトナーを転写する順番とを、ユーザーが任意に、あるいは、制御手段を用いて自動で選択乃至変更できることをも特徴としているが、これについて説明する。
最初に、作像エンジンにおける作像ステーションのいずれかを入替えることによって、透明トナーを含む高付加価値印刷を行うことが可能な画像形成装置について説明する。本願発明において、例えば、透明トナー用の作像ステーションを作像エンジンのどの位置に配置させるかは、画像形成装置に設けられている制御手段としての制御部でデフォルト値として設定乃至登録しておくことができる。この場合、画像形成装置では、作像ステーションを入替える際にはデフォルト値を使用するか否かをユーザーに選択させることが可能である。また、デフォルト値とは別の作像ステーション配置位置で、透明トナー用の作像ステーションを使用したいのか否かも同時に選択させることも可能である。この際、透明トナーを使用した高付加価値印刷を実施する旨の指令が画像形成装置本体に入力された場合には、例えば、図9に示される表示を画像形成装置本体に表示させ、ユーザーがデフォルト値として設定された作像ステーション位置で透明トナーを使用したいのか、あるいは、違う作像ステーション位置で透明トナーを使用したいのかを選択させる。なお、この表示が現れてから所定時間経過してもユーザーからの入力が開始されない場合には、自動でデフォルト値が選択されたと画像形成装置に判断させることも可能である。このように構成しておけば、ユーザーが任意に、あるいは、制御手段を用いて自動で、透明トナーが使用される作像ステーションから前記被転写体に透明トナーを転写する順番と、透明トナーが使用されない作像ステーションから前記被転写体に透明トナー以外のトナーを転写する順番とを選択乃至変更することができるので、透明トナーの使用用途に応じた最適な作像順を簡易且つ容易に変更することが可能になる。
次に、例えば、5つ以上の作像ステーションが設けられているので予め透明トナー用の作像ステーションを用意することが可能な画像形成装置では、制御部で予め透明トナーを作像する順番をデフォルト値として設定しておくことが可能であるし、あるいは、図示はしないが、画像形成装置本体にトナーの作像順を選択するための表示、例えば、1番→透明、Y、M、C、K;2番→透明、Y、M、C、K;・・・などの表示をして、ユーザーに選択させることも可能である。この場合でも、所定時間を経過してもユーザーからの入力が開始されない場合には、デフォルト値が選択されたと制御部に判断させることが可能である。
次に、本発明の変形例を図10を用いて説明する。図10は、本発明の変形例を概略断面で示した例であり、具体的には、図1で示されたような画像形成装置の定着装置19の下流側から、4つの作像ステーションが配置される作像エンジン部までつながる記録媒体の搬送経路であって、定着動作が行われた記録媒体を再度当該作像エンジンまで搬送する再作像搬送経路70が設けられること、及び、当該搬送経路70には、先の定着動作が行われた記録媒体が次の定着動作に向けて一旦貯蔵される貯蔵箇所71が設けられていることが相違する。なお、図2に示したような画像形成装置であっても、当然ながら以下に説明する再作像搬送経路70や記録媒体搬送経路80を設けることができる。
この図10に示した例では、最初に、複数個用いられる作像ステーションの少なくとも一つのトナー像を被転写体である記録媒体に転写する転写工程を実施した後で、定着装置19により当該記録媒体にこのトナー像を定着する工程を実施する。その後、残りの作像ステーションの少なくとも一つのトナー像を被転写体に転写する工程と定着装置19によりさらに記録媒体にトナー像を定着する工程とを実施するために、前記した再作像搬送経路70に記録媒体が搬送される。そのために、定着装置19の記録媒体搬送経路下流側には、搬送経路を通常の排紙方向と再作像搬送経路70とに切り替えるための切替爪80が設けられていて、この切替爪80を図示しないソレノイドなどで切り替えることで、記録媒体の搬送方向を当該再作像搬送経路70側に切り替えることが可能なように構成されている。次に、再作像搬送経路70を介して再度作像エンジン部へ搬送される記録媒体は、一旦、再作像搬送経路70に配置された貯蔵箇所71に貯蔵される。この貯蔵箇所71で記録媒体を貯蔵している間に、例えば、透明トナー用の作像ステーションを基本4色のいずれかのトナー用に入替えたり、あるいは、基本4色のトナー用の作像ステーションを透明トナー用のものに入替えたりすることが可能である。なお、この貯蔵箇所71に記録媒体が貯蔵されている際に、作像ステーションの交換をユーザーに促すためのメッセージなどを画像形成装置に表示することができる。その後、残りの作像ステーションの少なくとも一つのトナー像を被転写体に転写する工程と前記定着装置により記録媒体に定着する工程とを少なくとも一回実施し、あるいは、さらに再作像搬送経路70を介して作像エンジンまで記録媒体を搬送し、さらなるトナー色の作像と定着とを実施することを繰り返して、複数回の定着動作を記録媒体に実施することで、記録媒体の同一面に透明トナーを含む所望のトナー色数のトナー像を定着させ、最後に切替爪80の搬送方向を画像形成装置の機外へと続く排紙方向へと切り替えることで、排出トレイなどに記録媒体を排出させる。このように、貯蔵箇所71を設けておけば、ユーザーが作像途中の記録媒体の取り扱いに手を煩わせることがなくなるため好都合である。
なお、ここに図示した例では、切替爪80を、再作像搬送経路70に切替える場合とは逆方向に切り替えることで、図中上方に一旦記録媒体を搬送させ、当該記録媒体をスイッチバックさせることで、記録媒体の表裏を反転させ、その後に、作像エンジン部へ再度記録媒体を搬送して、裏面側に画像を形成する所謂両面印刷を可能とするための記録媒体反転搬送経路90も設けられている。このような記録媒体の両面に画像を形成するための記録媒体反転搬送経路90は、当業者にはよく知られており、また、この種の反転搬送経路90を備えた画像形成装置は、広く市場に流通しているものであり、ここに図示した例では、発明の理解を深めるために、反転搬送経路90と再作像搬送経路70とを別の搬送経路であるように構成しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、ここに図示した例とは相違するが、この記録媒体反転搬送路90の搬送経路の一部であって、スイッチバック後の記録媒体が作像エンジン部まで搬送される切替爪80以降の搬送経路を、上記した再作像搬送経路70と兼用する構成を採用することが可能である。このように、記録媒体反転搬送経路90と再作像搬送経路70とを兼用させると、元々存在する記録媒体反転搬送経路90に貯蔵箇所71を設け、制御系を改良するだけで、本願発明の目的を達成することが可能であり、画像形成装置の構成を既存のものから大きく変更することがないため好適である。
なお、図10に示したような再作像搬送経路70を設ける例は、図1に示されるようなトナー像を直接記録媒体に転写する画像形成装置、言い換えれば、被転写体が記録媒体である画像形成装置だけでなく、図2に示したような、4連タンデム式の画像形成装置に対しても、同様の切替爪80や、再作像搬送経路70を設けることで適用が可能であり、その際に、記録媒体反転搬送路90を再作像反転搬送経路70と兼用することも可能である。さらにまた、図10で図示した例では、画像形成装置本体内に貯蔵箇所71を設ける例を示したが、画像形成装置の構成によっては、例えば、画像形成装置とインライン化されて、記録媒体を画像形成装置との間で搬送しあう外部機器が設けられている場合には、当該インライン化された外部機器側に記録媒体を一時的に貯蔵する貯蔵箇所を配置してもよい。
次に、このような画像形成装置では、複数回のトナー像形成に応じた回数だけトナー像の記録媒体への転写及び定着が行われることになるが、この場合、一回の定着動作しか行わない通常の定着動作と同じ条件で、複数の定着動作を行ってしまうと、記録媒体や当該記録媒体に担持されているトナー像に過剰に熱が加えられてしまうことになる。そこで、本願発明では、複数回行われる定着動作の最終定着動作条件と、その他の定着動作条件(最終定着動作条件以外の定着動作条件)とを異ならせ、複数回の定着動作全体では、画像を形成されるべき記録媒体上のトナー像が過剰な定着熱量を供与されないようにした。このように構成することで、画像形成装置の省エネを図ることが可能になると共に、記録媒体が過剰な熱量を受けたことで反ってしまったり、記録媒体に形成されるべき画像の光沢度の異常を引き起こしたりすることを低減することが可能になり、画像形成装置から出力される記録媒体の品質向上に寄与することが可能となる。なお、最終定着動作の定着動作条件で記録媒体に加えられる熱量が、それ以前のその他の定着動作条件の熱量と比較して低くなるように構成しておけば、記録媒体や、当該記録媒体上のトナー像に過剰な熱量を与えることを最も簡易に調整・低減することが可能になり、好適である。
また、このような定着動作条件における記録媒体や当該記録媒体上のトナー像に与える熱量について説明すると、定着動作で記録媒体やトナー像に供給される熱量は、定着部材の界面温度や熱伝導率、さらには比熱などの関数によって表されることが一般的に知られている。しかしながら、実際の定着挙動には様々な因子に基づく様々な相互作用が存在しており、その挙動に関しては非常に複雑であることも知られている。そのため、定着動作で供給される熱量の制御に関しては、記録媒体やトナー像に加えられる熱量そのものを制御するのではなく、定着温度や定着線速などを制御することで、熱量を制御することが一般的である。
そこで、本発明においては、定着熱量を変動させる構成については、定着温度、定着線速、定着圧力、あるいは、定着ニップ幅のいずれか又はこれらの少なくとも2つの組み合わせを変動させることで、最終定着動作条件と、その他の定着動作条件(最終定着動作条件以外の定着動作条件)とを異ならせている。すなわち、上記したように、最終定着動作条件が、その他の定着動作条件と異ならせる際に、最終定着動作条件で記録媒体に加えられる熱量が、それ以前のその他の定着動作条件の熱量と比較して低くなるようにする場合には、最後の定着動作時には、定着装置19での定着温度を低くするか、定着圧力を低くするか、定着ニップ幅を狭くするか、あるいは、定着線速を遅くするかのいずれか一つ又はこれらの少なくとも2つの組み合わせで行うようにすればよい。
この際、定着温度の制御を行う場合は、例えば、加熱ローラ内部の加熱ヒータをサーモスタットで温度制御するといった一般的な手段を用いることで対応が可能であるし、定着線速の制御を行う場合は、例えば、厚い記録媒体に十分な定着熱量を与えるために、定着線速を低下させるといった通常の画像形成装置に設けられている機能を使用することで対応が可能である。なお、定着線速を低下させるために、画像形成装置全体における記録媒体の搬送線速を低下させてもよい。さらに、定着圧力の制御を行う場合には、例えば、ソレノイドやカムといった離間機能を加圧ローラに持たせ、当該離間機能の作用によって、加熱ローラと加圧ローラとの間の加圧力を脱圧させるといった一般的な手段を用いることで対応が可能であるし、定着ニップ幅を制御する場合には、例えば、定着装置19における加熱ローラの軸心位置に対する加圧ローラの軸心位置をソレノイドとカムとなどを用いた位置変動動作などによって、ずらすといった一般的な手段で対応が可能である。
なお、この種の定着動作条件を決定する際には、設計時において、あるいは、実機での実験を繰り返すことで最適な定着動作条件を得ることが可能である。その際には、複数回行われる定着動作によって少なくともトナー像が乱されないようにしておく必要があり、そのための実験例の一例を以下に図11を用いて説明する。
図11は、定着動作の定着動作条件を決定するための実験の一例を示したものであり、この図11を用いて、定着装置19における定着温度および定着線速の制御による定着熱量の上下限について説明する。実験はリコー製乾式電子写真方式で且つ中間転写ベルト方式のフルカラーデジタル複写機(Imagio Neo C2500)を用いて行った。図11では、その結果が示されており、図11におけるグラフの横軸は記録媒体の坪量、縦軸は定着温度を示す。ここでの定着下限とは描画試験法による定着性の悪化が認められたときに対応しており、定着上限とは光沢度低下あるいは定着部材への巻き付きあるいは分離板への引っ掛かりのいずれか一つ以上が認められたときに対応している。この図11からも明らかなように、通常の定着線速で坪量65gsmから105gsmの範囲において上記の不具合のない定着熱量付与条件は定着温度がおおよそ140℃から180℃の間であることが確認でき、さらに、定着線速が半分速の場合にもこれに類似した結果であることが確認できた。この結果によれば、坪量65gsmから105gsmの範囲における記録媒体の定着動作条件を、例えば、最終定着動作条件以外では、170℃としておき、最終定着動作条件では、140℃とすることが可能である。また、最終定着動作条件の定着線速を半分速にすれば、さらに定着温度を低下させることが可能となる。
最後に、図10に示されるような画像形成装置の作像エンジンで、作像ステーションを入替えて透明トナーを含む5色以上のトナー像を画像形成する画像形成装置の処理フローが描かれた図12を用いて、この処理フローを説明する。この図12において、まずは、ローカル位置に配置されたパーソナルコンピューターなどをユーザーが操作したり、あるいは、画像形成装置本体から直接にユーザーが入力するなどして、画像形成装置へ画像形成ジョブが送られるが、このジョブが、例えば、透明トナーを含んだ高付加価値印刷を行うために、作像ステーションの交換を伴うジョブかどうかが画像形成装置の制御部などで選別される。この画像形成ジョブが作像ステーションの交換を伴わない場合は、所謂通常の出力モードへ移行する。
続いて、作像ステーションの交換を伴うジョブの場合は、当該ジョブで出力されるべき記録媒体の出力枚数が、出力装置が有する記録媒体ストック部の許容枚数以下であるかを確認する。仮に、許容枚数を超えている場合は、出力装置のオペレーションパネルや表示デバイスなどでその旨を表示するか、あるいは、ネットワークを介してパーソナルコンピュータなどのローカル位置でその旨を表示してもよい。なお、アラートランプやアラートサウンドなどで、ユーザーにその旨が分かるような表示をさせることも可能である。その後、枚数の変更あるいはジョブリセットの選択を促す旨が表示され、ユーザーの選択を受け付ける。
続いて、受け付けた画像形成ジョブが両面印刷かどうかが選別される。両面印刷の場合は、まず、片面にトナー像を転写され、当該トナー像が一度定着された記録媒体が、切替爪80の作用で記録媒体反転搬送経路を介して、再度作像エンジンに搬送されて、画像が形成されている片面とは逆側の裏面側にトナー像が転写され、当該トナー像が定着される通常の両面出力時と同様の作像を行う。図10で示される画像形成装置では、記録媒体反転搬送路90を介して、両面印刷が行われる。片面印刷の場合は、通常の片面出力時と同様の作像を行い、すなわち、片面に画像を転写させて、当該画像を定着装置19で定着させる。これら両モードにおいて両面あるいは片面へのトナー像が定着された記録媒体は、切替爪80の作用で全て再作像搬送経路70に搬送され、当該再作像搬送経路70に設けられた貯蔵箇所71に一時的に保管乃至貯蔵され、そして一連の作像動作が一時的に停止される。
続いて、作像ステーションの交換を促すメッセージが、出力装置のオペレーションパネルや表示デバイスなど、あるいは、ネットワークを介してローカル位置に配置されたパーソナルコンピューターなどに表示される。この表示は、アラートランプやアラートサウンドなどでユーザーにその旨が分かるような表示方法であってもよい。このように、作像ステーションを入替えるタイミングは、指定された作像ステーションの作像動作が完了してから、再度、当該作像ステーションが感光体へトナー像の作像を開始する作像動作前までの作像動作入替えタイミングの間で行われ、その際には、画像形成装置が自動で画像形成動作を一時的に中止すると共に、画像形成装置がユーザーに対して作像ステーションの入替えを促すように制御されるのが好ましい。なお、この際に、先の図9を用いて説明したように、作像ステーションの入替え位置がデフォルト位置かユーザーが任意に選択した作像ステーション位置であるかを選択させることが可能である。また、この入替える作像ステーション位置の選択に関しては、先に記述した画像形成ジョブ入力時に選択させることも可能である。このように、この交換されるべき作像ステーションの位置は、画像形成ジョブを入力した際に、ユーザーが事前に入替えを指定した作像ステーションの配置位置に対して自動で選択することが可能であるし、あるいは、任意に作像ステーションの配置位置を選択することが可能である。さらにまた、作像ステーションの交換を促すメッセージが表示されるタイミングで、作像デバイスの入替え位置をユーザーに任意に選択させるようにすると、急遽ユーザーが透明トナーを使用する作像デバイスの入替え位置を変更したくなった場合でも、対応が可能となるため好適である。
続いて、ユーザーによる作像ステーションの入替えが行われ、例えば透明トナー用の作像ステーションが作像エンジンにおける任意の位置の作像ステーションと入替えられる。この入れ替えでは、先に記述したように、作像ステーション自体を入替えてもよいし、作像ステーションにおける現像ユニットだけを、又は、現像ユニットとトナー補給ユニットとだけを入替えても良い。
その後、作像ステーション入替え後の画像形成動作が再開されるが、この際には、入替えた作像ステーション位置に対応したトナー像の作像が行われる。両面画像印刷が選択されていた場合には、この再開された作像動作が、再作像搬送経路を兼ねていてもよい記録媒体反転搬送路を介して両面に対して行われ、すなわち、記録媒体の両面に対して画像の転写と定着とが行われ、片面画像印刷が選択されていた場合には、片面にだけ画像の転写と定着とが行われる。この際に、定着装置19における定着動作条件は、例えば、先の定着動作条件よりも、記録媒体とトナー像とに与えられる定着熱量が低くなるように設定されている。そして、所望の高付加価値印刷による画像が形成された記録媒体が画像形成装置の機外へと排出され、一連の画像形成動作が完了する。