JP2012062233A - MgO−C系耐火物 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温減圧雰囲気中においても、MgOとCとが反応することで組織が劣化するのを抑制し、脱落損傷や剥離損傷、スラグ侵食等が生じることが無く、耐用性が高く、また、耐食性並びに耐消化性に優れたMgO−C系耐火物を提供する。
【解決手段】少なくとも、耐火材微粉10、黒鉛(C)、及び、カーボン系材料からなるバインダーが含有されるマトリックス2と、耐火材粗粉5とからなり、マトリックス2中に含有される耐火材微粉10が、MgOからなる骨材の表面に設けられ、メタクリル系樹脂からなる被覆膜と、この被覆膜上に積層されるCaO微粉とを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、MgO−C系耐火物に関するものであり、特に、製鋼工程の精錬炉等において用いられる、MgO−C系耐火物に関する。
従来、各種溶融金属を収容するための容器や、製鋼工程の2次精錬設備におけるRH(Ruhrstahl−Hausen)真空脱ガス装置においては、高温真空雰囲気下における浸食や損耗が生じるのを低減し、高耐用性を得ることが可能な耐火物ライニングとして、MgO−C質の耐火物(マグネシアカーボン質れんが)が使用されている。ここで、RH真空脱ガス装置とは、溶鋼の真空脱ガス処理を行う装置であり、溶鋼に対する真空脱炭や脱酸を含めて広範囲な処理に適した装置であり、特に、未脱酸の状態の溶鋼を大量に真空処理するのに適した装置である。そして、MgO−C系耐火物は、RH真空脱ガス装置内において溶鋼が通湯されて高温雰囲気とされるとともに、溶鋼の湯面が真空雰囲気下に曝されることで真空脱ガス処理が行われる下部槽に用いられる。
一方、製鋼技術、特に鋼の清浄化技術の急速な進歩に伴い、RH真空脱ガス装置の操業温度は、特殊処理(脱ガス、合金の投入)に対応して高くなる等、使用条件が過酷化しつつある。このため、従来から用いられているMgO−C系耐火物では、耐熱性等の点において十分な耐用が得られないという問題が顕著になっている。即ち、MgOとCは、高温減圧下において、次式{MgO+C→Mg+CO}のような反応を起こし、前式右辺側のMgガスとCOガスが耐火物中から流出する。このため、耐火物から多量のMg及びCが消耗されて組織が劣化し、脱落損傷や剥離損傷等が発生するという大きな問題がある。また、高温減圧下において脱ガス処理を行う場合、減圧方向である溶鋼の上層(上澄み)側に、CaO、SiO、MgO、Al、FeO等のスラグ(酸化物)が発生し、このスラグが接触することで耐火材に侵食が生じるという問題がある。
上述のような、高温操業下でのMgO−C反応による損耗を抑制する技術としては、各方面から様々な提案がなされており、例えば、MgO原料及び1〜5重量%未満のC原料からなる耐火性原料100重量%に対して、外割でピッチ及び/又はピッチを含むバインダー:0.1〜5重量%を含み、金属等の易酸化性添加物の含有量が外割で0.1〜1.5重量%で、且つ、硼化物の含有量が外割で0.5重量%以下の構成を採用した耐火物が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1によれば、耐火物に酸化損傷が生じるのが抑制され、また、優れた耐摩耗性や耐スラグ浸食性が得られるものと記載されている。
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、MgOとCとが接触することによる上記反応が避けられず、高温減圧下において、耐火物の脱落損傷や剥離損傷、スラグ侵食等が生じる問題が依然として残る。
また、上記MgO−C反応による損耗を抑制する他の手段として、従来より、CaOをMgO質原料に添加した構成の耐火物も提案されている。CaOは、高温真空雰囲気下において、次式{CaO+3C→CaC+CO}のような反応を生じることにより、耐火物としての骨格を保つことで、組織劣化を抑制する作用を有するCaCを生成する。 また、MgOクリンカー中に必然的に含まれ、MgO−C反応を助長する作用を有するSiOと、CaOとが反応することで、2CaO・SiO、3CaO・SiO等の高融点化合物を形成させ、損耗の低減が可能となるものと考えられる。
しかしながら、CaOは、高温下での熱的及び化学的特性が優れる反面、常温付近では、次式{CaO+HO→Ca(OH)}のような反応により、粉化崩壊を起すという、所謂、消化現象が生じるという欠点がある。このため、れんが等の耐火物の製造過程や、耐火物の使用中にCaO含有原料がHOと接触した際に、き裂や膨張粉化現象が生じることから、逆に損耗速度の著しい増加をもたらす場合がある。
上述のようなCaOをMgOに添加した際の問題を解決するため、CaO及びMgOを合計で98重量%以上含有し、そのうちCaO成分を5〜70重量%含有するMgO−CaO系耐火原料において、原料粒子表面のCaOが厚さ0.1〜5μmの炭酸カルシウムによる被膜で覆われ、且つ、灼熱減量値が1.5%以下であるMgO−CaO質クリンカーを用いた構成の耐火物が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。特許文献1によれば、水分がCaOに作用しない原料を用いることにより、耐消化性が顕著に優れた耐火物を提供できるとされている。
しかしながら、特許文献2に記載の技術では、CaOと水分の反応に伴う消化現象を抑制できる一方、MgOとCとが高温減圧下で反応することで生じる組織劣化を防止することができず、上記同様、脱落損傷や剥離損傷、スラグ侵食等が発生するという大きな問題があった。
特許第3766137号公報 特開平05−24911号公報
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、高温減圧雰囲気中においても、MgOとCとが反応することで組織が劣化するのを抑制し、脱落損傷や剥離損傷、スラグ侵食等が生じることが無く、耐用性が高く、また、耐食性並びに耐消化性に優れたMgO−C系耐火物を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記問題点を解決するために鋭意検討したところ、MgO−C系の耐火物を構成するマトリックス中に含有される耐火材微粉において、MgOからなる骨材を被覆膜で覆いながらCaO微粉を接着した構成を採用することにより、マトリックス中に含有される黒鉛等のカーボン成分とMgOとが反応するのを効果的に防止することができることを知見した。これにより、高温減圧雰囲気中で使用した場合においても組織が劣化することがなく、脱落損傷や剥離損傷、スラグ侵食等が生じるのを防止することが可能となることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の要旨は下記の通りである。
[1] 少なくとも、耐火材微粉、黒鉛(C)、及び、カーボン系材料からなるバインダーが含有されるマトリックスと、耐火材粗粉とからなるMgO−C系耐火物であって、前記マトリックス中に含有される耐火材微粉が、MgOからなる骨材の表面に設けられ、メタクリル系樹脂からなる被覆膜と、前記被覆膜上に積層されるCaO微粉とを備えることを特徴とする、MgO−C系耐火物。
[2] 前記耐火材微粉が、さらに、前記CaO微粉の隙間に、この隙間から露出する前記被腹膜を覆い、且つ、前記CaO微粉を覆う、カーボン系材料からなるコーティング膜が設けられていることを特徴とする、上記[1]に記載のMgO−C系耐火物。
[3] 前記コーティング膜が、タール、又は、ピッチからなることを特徴とする、上記[2]に記載のMgO−C系耐火物。
[4] 前記耐火材微粉は、前記骨材の最大粒径が40μm以下であり、前記CaO微粉の最大粒径が1μm以下であることを特徴とする、上記[1]〜[3]の何れか1項に記載のMgO−C系耐火物。
[5] 前記マトリックスに含有され、カーボン系材料からなるバインダーが、タール、又は、ピッチであることを特徴とする、上記[1]〜[4]の何れか1項に記載のMgO−C系耐火物。
[6] 前記マトリックスに含有される黒鉛(C)の最大粒径が200μm以下であることを特徴とする、上記[1]〜[5]の何れか1項に記載のMgO−C系耐火物。
[7] さらに、前記耐火材粗粉が、MgOからなる骨材の表面に設けられ、メタクリル系樹脂からなる被覆膜と、前記被覆膜上に積層されるCaO微粉とを備えることを特徴とする、上記[1]〜[6]の何れか1項に記載のMgO−C系耐火物。
[8] 前記耐火材粗粉が、さらに、前記CaO微粉の隙間に、この隙間から露出する前記被腹膜を覆うように、カーボン系材料からなるコーティング膜が設けられていることを特徴とする、上記[7]に記載のMgO−C系耐火物。
[9] 前記コーティング膜が、タール、又は、ピッチからなることを特徴とする、上記[8]に記載のMgO−C系耐火物。
本発明のMgO−C系耐火物によれば、上記の如く、マトリックス中に含有される耐火材微粉を、MgOからなる骨材の表面に設けられ、メタクリル系樹脂からなる被覆膜と、この被覆膜上に積層されるCaO微粉とを備える構成を採用している。このような構成により、マトリックス中において、MgOからなる骨材と、黒鉛やバインダー等のカーボン成分とが接触するのを規制することができ、MgO−C反応が生じるのが抑制される。これにより、高温減圧雰囲気中で使用した場合においても組織が劣化することがなく、脱落損傷や剥離損傷、スラグ侵食等が生じるのを防止でき、耐用性が高く、また、耐食性並びに耐消化性に優れたMgO−C系耐火物が実現できる。従って、例えば、各種溶融金属用の容器や、製鋼工程の2次精錬設備等において本発明を適用することにより、耐用性、耐食性並びに耐消化性を向上させるとともに、溶鋼への不純物等の混入を防止するメリットを十分に享受することができ、その社会的貢献は計り知れない。
本発明に係るMgO−C系耐火物の一実施形態を模式的に説明する図であり、角型煉瓦状とされたMgO−C系耐火物の構成を示す概略図である。 本発明に係るMgO−C系耐火物の一実施形態を模式的に説明する図であり、マトリックス中に含有される耐火材微粉、あるいは、耐火材粗粉の構造を示す概略図である。 本発明に係るMgO−C系耐火物の実施例を模式的に説明する図であり、耐MgO−C反応性評価の指標である重量変化率を示すグラフである。 本発明に係るMgO−C系耐火物の実施例を模式的に説明する図であり、耐食性評価の指標である溶損指数を示すグラフである。 本発明に係るMgO−C系耐火物の実施例を模式的に説明する図であり、耐消化性評価の指標である重量変化率を示すグラフである。
以下、本発明のMgO−C系耐火物(以下、単に耐火物と略称することがある)の実施の形態について、主に、図1、2を適宜参照しながら説明する(必要に応じて、図3〜図5も参照)。なお、この実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために詳細に説明するものであるから、特に指定の無い限り、本発明を限定するものではない。
上述したように、本発明者等は、製鋼工程におけるRH真空脱ガス装置のような高温減圧雰囲気下で用いられる耐火物について、その耐用性や耐消化性等を向上させるために鋭意研究を繰り返した。この結果、マトリックス中に含有される耐火材微粉に関し、MgOからなる骨材を被覆膜で覆いながらCaO微粉を接着した構成を採用することにより、マトリックス中に含有される黒鉛等のカーボン成分とMgOとが反応するのを効果的に防止できることを新たに知見した。このような構成を採用することにより、耐火物を高温減圧雰囲気中で使用した場合においても組織が劣化することがなく、脱落損傷や剥離損傷等が生じるのを防止することが可能となることを見出した。
即ち、図1及び図2に示すように、本発明に係る耐火物1は、少なくとも、耐火材微粉10、黒鉛(C)、及び、カーボン系材料からなるバインダーが含有されるマトリックス2と、耐火材粗粉5とからなり、マトリックス2中に含有される耐火材微粉10が、MgOからなる骨材11の表面に設けられ、メタクリル系樹脂からなる被覆膜12と、この被覆膜12上に積層されるCaO微粉13とを備えて概略構成される。
なお、図2に示す例においては、耐火物1を構成する耐火材微粉10が、さらに、CaO微粉13の隙間、及び、この隙間から露出する被腹膜12を覆い、且つ、CaO微粉13を覆うように、カーボン系材料からなるコーティング膜14が設けられている。
本発明に係る耐火物1が適用される耐火構造物としては、上述したように、例えば、各種溶融金属を収容するための容器等の他、製鋼工程の2次精錬設備におけるRH真空脱ガス装置の下部槽が挙げられる。RH真空脱ガス装置は、高級鋼の製造に際し、転炉から出鋼した溶鋼を鋳造するまでの間に、水素や窒素等のガス成分を除去することを目的として設けられ、減圧した容器の中に溶鋼を導入することで、平衡分圧を下げて溶鋼中のガス成分を除去するものである。
本発明に係る耐火物1が適用可能なRH真空脱ガス装置は、図示を省略するが、通常、取鍋内の溶鋼中に浸漬した2本の浸漬管の内の1本を吸上管とし、この吸上管にアルゴンガスを吹き込むことで、エアリフトポンプ作用で溶鋼を真空槽内に上昇させることが可能に構成される。この真空槽は、溶鋼が導入される下部槽と、真空吸引管及びガス排気管が設けられる上部槽とからなり、内部が、例えば10torr程度に減圧された雰囲気とされる。そして、真空槽の下部槽に導入された溶鋼は、その湯面が高温真空雰囲気に曝されることで、溶鋼内に含有される水素や窒素等が上部槽の真空雰囲気中に取り出されることで脱ガス処理が施される。そして、真空槽内で脱ガス処理が施された溶鋼は、残る1本の浸漬管である排出管を通じて取鍋中に還流される。このような脱ガス処理が行われるRH真空脱ガス装置は、他の装置や方法に比べて溶鋼の還流速度が大きいため、大量の溶鋼を迅速に脱ガス旅理するのに適したものである。また、上記脱ガス処理に加え、真空槽内に純酸素ガスを吹き込むことで脱炭や昇温を行ったり、溶鋼にフラックスや各種添加元素を導入したりする等、各種処理機能を持たせることも可能な装置である。
耐火物1に含まれるマトリックス2は、上述した通り、耐火材微粉10、黒鉛(C)、及び、カーボン系材料からなるバインダーが含有される。耐火物1は、このような構成のマトリックス2を含有することにより、後述の耐火材粗粉5の結合性や成形性が高められる効果が得られる。ここで、例えば、耐火物を後述の耐火材粗粉のみから構成した場合には、角型煉瓦状等の形状にプレス成形した際に、結合力が弱すぎて固形物としての形状を維持できず、脆いものとなる。
マトリックス2に含まれる耐火材微粉10は、上述したように、MgOからなる骨材11の表面にメタクリル系樹脂からなる被覆膜12が設けられ、この被覆膜12上にCaO微粉13が積層されてなる。
骨材11は、例えば、純度が99%以上のマグネシア(酸化マグネシウム:MgO)からなり、耐火材微粉10において、高耐火性の基材(骨材)として機能するものである。
骨材11をなすMgOの原料としては、特に限定されないが、例えば、天然マグネサイト,海水マグネシア,甘水マグネシア等を用いることができる。
このような骨材11の大きさとしては、その最大粒径が40μm以下であることがより好ましい。骨材11の大きさが40μmを超えると、粗粒間の充填が不十分となり、煉瓦中の密閉気孔及び開放気孔が増加し、耐食性及び強度が低下するという問題が生じる場合がある。また、骨材11の最小粒径は、工業生産面や機能維持の点等を考慮し、1μm以上とすることがより好ましい。
被覆膜12は、骨材11の表面全体を被覆しながら後述のCaO微粉13を接着する膜であり、メタクリル系樹脂から構成される。骨材11をなすメタクリル系樹脂としては、例えば、PMMA等を用いることができる。
本発明においては、骨材11を被覆膜12で覆いながらCaO微粉13を接着することにより、骨材11の成分であるMgOと、マトリックス2中に含有される黒鉛やバインダー等のカーボン成分とが接触するのを効果的に防止することができる。これにより、MgO−C反応が起こるのを防止でき、耐火物1の組織劣化が生じることが無いので、高温減圧下の過酷な使用雰囲気においても、脱落損傷や剥離損傷、スラグ侵食等が生じるのを防止でき、耐用性、耐食性並びに耐消化性を向上させることが可能となる。
また、本発明では、骨材11を覆う被覆膜12にメタクリル系樹脂を用いることにより、骨材11及び被覆膜12に対するCaO微粉13の接着性が向上する作用が得られる。これにより、基材である骨芯材11に対するCaO微粉13の接着強度が高くなり、上述した本発明による効果がより顕著なものとなる。
被覆膜12としては、CaO微粉13の接着強度を向上させるため、0℃以上の温度において1.0MPa以上の引張せん断強度を有するメタクリル系樹脂材料を用いることが好ましい。
また、被覆膜12の膜厚としては、特に限定されないが、MgO−C反応を抑制するバリア性や、CaO微粉13の接着性を考慮し、1〜2μmの範囲とすることがより好ましい。
CaO微粉13は、MgO−C反応を抑制する作用を有する微粉であり、被覆膜12によって骨材11に接着される。
このようなCaO微粉13の大きさとしては、その最大粒径が1μm以下であることが好ましい。CaO微粉の大きさが1μmを超えると、耐火材微粉の表面にCaOの粒子界面が存在するようになり、耐消化性向上の効果が得られ難くなる場合がある。一方、CaO微粉の大きさが小さ過ぎても、CaO微粉によって形成される被膜の膜厚が薄過ぎ、耐消化性向上の効果が得られ難くなる場合があることから、その最小粒径を1μmとすることがより好ましい。
本発明に係る耐火物1は、骨材11上に、疲腹膜12及びCaO微粉13を積層した構成とすることで、上記したような、MgO−C反応を抑制し、耐用性、耐食性並びに耐消化性を向上させる十分な効果が得られる。
また、本発明においては、さらに、図2に例示するように、CaO微粉13の隙間に、この隙間から露出する被腹膜12を覆い、且つ、CaO微粉13を覆うように、カーボン系材料からなるコーティング膜14が設けられた構成とすることが、耐消化性が顕著に向上する点からより好ましい。このようなコーティング膜14をなすカーボン系材料としては、特に限定されないが、例えば、タールやピッチ等を適宜採用することが可能である。
また、本発明においては、例え、耐火材微粉10の最表部にカーボン系の成分を有するコーティング膜14を設けた場合であっても、MgOからなる骨材11は被覆膜12で覆われているので、MgO−C反応が生じることが無い。
マトリックス2には、上記構成の耐火材微粉10の他、黒鉛(C)やバインダー等のカーボン成分が含まれる。
マトリックス2に含まれる黒鉛としては、耐火物1中に高濃度で炭素を供給できる黒鉛材料からなるものであれば、特に限定されるものではない。このような黒鉛材料としては、例えば、天然鱗状黒鉛、土状黒鉛、人造黒鉛、処理黒鉛等、種々のものを適宜採用することができる。
また、マトリックス2中に含まれる黒鉛は、その最大粒径が200μm以下であることが好ましい。黒鉛の最大粒径が200μmを超えると、粗粒間の充填が不十分となり、煉瓦中の密閉気孔及び開放気孔が増加し、耐食性及び強度が低下するという問題が生じるおそれがある。
また、マトリックス2に含まれるバインダーは、カーボン系材料から構成され、中でも、タール、又は、ピッチを用いることが好ましい。このようなタールやピッチとしては、この分野において従来公知のものを何ら制限無く採用することができ、例えば、コールタール、石油ピッチ、木炭ピッチ、合成ピッチ等を適宜採用することが可能である。
本発明では、上述の如く、MgOからなる骨材11を被覆膜12で覆いながらCaO微粉13を接着した構成なので、マトリックス2中に多量に含まれるカーボン成分と、骨材11を構成するMgOとが接触しないため、MgO−C反応が起こることが無い。従って、高温減圧下の使用雰囲気においても、脱落損傷や剥離損傷、スラグ侵食等が生じるのを防止でき、優れた耐用性、耐食性並びに耐消化性が得られる。
なお、本発明において、マトリックス2に含まれる他の成分としては、特に限定されるものではないが、煉瓦のような耐火物においては、通常、SiO、Al、Fe等の成分が不可避的に含有される。しかしながら、これらの成分は、比較的低い温度においてCaOと結合することで低融点物質を形成し、CaO微粉による耐消化性の向上効果を著しく低減するため、その含有量を可能な限り低減させることが好ましい。
耐火物1に含まれる耐火材粗粉5は、マトリックス2とともに耐火物1中に含有される骨材であり、耐火物1の高耐火性を確保する作用が得られる。
本発明においては、マトリックス2中に含まれる耐火材微粉10に加え、さらに、耐火材粗粉5を、MgOからなる骨材51の表面にメタクリル系樹脂からなる被覆膜52を設け、この被覆膜52上にCaO微粉53を積層した構成としても良い(図2を参照)。このように、耐火材粗粉5を、マトリックス2中に含まれる耐火材微粉10と同様の構成とすることで、耐火材粗粉5の基材である骨材51と、マトリックス2中に含有されるカーボン成分とが接触することが無いので、MgO−C反応が生じるのを防止できる。これにより、高温減圧下の使用雰囲気においても、脱落損傷や剥離損傷、スラグ侵食等が生じるのを防止でき、優れた耐用性、耐食性並びに耐消化性が得られるが、より一層顕著なものとなる。
また、耐火材粗粉5を上記構成とする場合には、骨材51、被覆膜52及びCaO微粉53の材質としては、耐火材微粉10と同じものを用いることができる。
耐火材粗粉5を構成する骨材51の大きさは、耐火材微粉10の骨材11に比べて大きく、例えば、最大粒径で5000μm以下、最小粒径で1μm以上とすることがより好ましい。
また、被覆膜52の膜厚としても、MgO−C反応を抑制するバリア性やCaO微粉53の接着性を考慮し、1〜2μmの範囲とすることが好ましい。
また、CaO微粉53の大きさとしては、骨材51の大きさも考慮し、耐火材微粉10のCaO微粉13に比べて大きく、例えば、最大粒径で2μm以下、最小粒径で1μm以上とすることがより好ましい。
また、耐火材微粉10と同様、耐火材粗粉5においても、さらに、CaO微粉53の隙間に、この隙間から露出する被腹膜52を覆うように、カーボン系材料からなるコーティング膜54が設けられていることが、耐消化性が顕著に向上する点からより好ましい。また、コーティング膜54をなすカーボン系材料としても、上記同様、タールやピッチを用いることができる。
なお、耐火材微粉並びに耐火材粗粉を上記構成とするにあたり、カーボン系材料からなるコーティング膜に替えて、例えば、CaO微粉を炭酸化処理するか、あるいは、CaO微粉の表面にFeOとCaOの複合酸化物を形成した構成とした場合でも、上記同様、耐消化性が向上する効果が得られる。しかしながら、CaO微粉を炭酸化処理する際の生産性や、FeOとCaOの複合酸化物を設けた場合の、CaOと外部の水分(HO)との反応を防止する観点から、カーボン系材料からなるコーティング膜を設けた構成とすることが最も好ましい。
上記構成の耐火物1を製造する方法としては、従来公知の方法を何ら制限無く採用することが可能である。
ここで、上記構成の積層構造とされた耐火材微粉10を製造する際には、例えば、まず、ミル中にMgOからなる骨材11を入れ、さらに、PMMA樹脂を投入して攪拌混合し、骨材11の表面にPMMAからなる被覆膜12を形成する。
次いで、ミル中にCaO微粉13を投入して攪拌する。この際、ミル中において、被覆膜12が形成された骨材11とCaO微粉13とが衝突することで、両者の間に熱エネルギーが発生する。この熱エネルギーによって被覆膜12の接着作用が活性化され、骨材11の表面に、被覆膜12及びCaO微粉13が順次積層された構造となる。
次いで、必要に応じて、ミル中にピッチ、又は、タール等のカーボン材料を投入して攪拌することにより、CaO微粉13の隙間において被覆膜12を覆うようにコーティング膜14を形成し、耐火材微粉10を得る。
次に、上記手順で得られた耐火材微粉10を、黒鉛、及び、ピッチ又はタール等のカーボン材料からなるバインダーと所定比率で混練し、マトリックス2とする。
また、耐火材粗粉5についても、上記耐火材微粉10と同様の手順で製造する。
そして、これら、マトリックス2及び耐火材粗粉5を混練した後、例えば、角型煉瓦状に成形し、さらに、加熱焼成処理を行うことにより、耐火物1が得られる。
以上説明したような、本発明のMgO−C系耐火物によれば、上記の如く、マトリックス2中に含有される耐火材微粉10を、MgOからなる骨材11の表面に設けられ、メタクリル系樹脂からなる被覆膜12と、この被覆膜12上に積層されるCaO微粉13とを備える構成を採用している。このような構成により、マトリックス2中において、MgOからなる骨材11と、黒鉛やバインダー等のカーボン成分とが接触するのを規制することができ、MgO−C反応が生じるのが抑制される。これにより、高温減圧雰囲気中で使用した場合においても組織が劣化することがなく、脱落損傷や剥離損傷、スラグ侵食等が生じるのが防止でき、耐用性が高く、また、耐食性並びに耐消化性に優れたMgO−C系耐火物1が実現できる。従って、例えば、各種溶融金属用の容器や、製鋼工程の2次精錬設備等において本発明を適用することにより、耐用性、耐食性並びに耐消化性を向上させるとともに、溶鋼への不純物等の混入を防止するメリットを十分に享受することができ、その社会的貢献は計り知れない。
以下、本発明に係るMgO−C系耐火物の実施例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、もとより下記実施例に限定されるものではなく、前、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
本実施例においては、最初に、下記表1に示すような積層構成及び化学成分を有する耐火物を、以下に示す手順及び条件で製造した。
ここで、下記表1の積層構成に示す(A)〜(G)は、以下に示すような構成であり、これらの内、(A)、(C)、(D)、(F)は本発明例であり、(B)、(E)、(G)は比較例である。
(A) 耐火材微粉及び耐火材粗粉を、骨材+被覆膜+CaO微粉+コーティング膜とした。
(B) 耐火材粗粉のみ、骨材+被覆膜+CaO微粉+コーティング膜とした
(C) 耐火材微粉のみ、骨材+被覆膜+CaO微粉+コーティング膜とした。
(D) 耐火材微粉及び耐火材粗粉を、骨材+被覆膜+CaO微粉とした。
(E) 耐火材粗粉のみ、骨材+被覆膜+CaO微粉とした。
(F) 耐火材微粉のみ、骨材+被覆膜+CaO微粉とした。
(G) 耐火材微粉及び耐火材粗粉の何れも、本発明の積層構成を採用しなかった。
Figure 2012062233
表1に示す本発明例の(A)においては、まず、ミル中にMgOからなる、最大粒径が40μmとされた骨材を入れ、さらに、PMMA樹脂を投入して攪拌混合することにより、骨材の表面に被覆膜を形成した。この際、被覆膜の膜厚が1μm程度となるように、PMMA樹脂の投入量及び攪拌時間を調整した。
次いで、ミル中に、最大粒径が1μmとされたCaO微粉を投入し、さらに攪拌を行うことにより、CaO微粉を、被覆膜の接着作用によって骨材に接着することで、骨材、被覆膜及びCaO微粉が順次積層された構造とした。
次いで、ミル中にカーボン材料からなるピッチを投入して攪拌することにより、CaO微粉の隙間の被覆膜を覆うようにコーティング膜を形成し、図2に例示するような耐火材微粉を得た。
また、耐火材粗粉についても、上記耐火材微粉と同様の手順で製造し、図2に例示するような耐火材粗粉を得た。この際、骨材としては、最大粒径が5000μmとされたものを使用した。また、被覆膜の膜厚は1μm程度とし、CaO微粉としては、最大粒径が1μmのものを使用した。
次に、上記手順で得られた耐火材微粉を、黒鉛、及び、カーボンピッチからなるバインダーと混練し、マトリックスを得た。この際の混合比率としては、質量%で、耐火材微粉:50%、黒鉛:35%、バインダー:15%程度とした。
そして、これら、マトリックス及び耐火材粗粉を混練した後、図1に示すような角型煉瓦状に成形し、さらに、200℃×24Hrの条件で加熱焼成処理を行うことにより、本発明例(A)の耐火物を得た。
また、耐火材微粉及び耐火材粗粉の積層構成を、表1並びに上記(B)〜(G)に記載の仕様に変更した点を除き、上記(A)と同様の手順で本発明例((C)、(D)、(F))、並びに、比較例((B)、(E)、(G)の耐火物を得た。なお、表1に示す積層構成において無記載とされたものは、本発明で規定する積層構成を採用せず、被覆しないMgOをそのまま用いた従来の構成を示す。
そして、上記手順で得られた(A)〜(G)の耐火物について、以下に説明するような評価試験を行った。
まず、耐MgO−C反応性の評価として重量変化率を調べた。この重量変化率試験は、還元焼成炉を用い、耐火物を、MgO−C反応が生じやすい1400℃×10Hrの条件で還元焼成し、その際の重量変化を測定した。そして、この重量変化率によって耐MgO−C反応性を評価し、結果を下記表3及び図3のグラフに示した。
また、耐食性の評価としては、回転侵食炉を用いて、耐火物を1700℃×20minで24サイクルの条件で還元焼成した後、下記表2に示す成分の侵食剤を用いて侵食試験を行った。そして、この際の溶損指数を求めて耐食性を評価し、結果を下記表3及び図4のグラフに示した。
Figure 2012062233
また、耐消化性の評価として、耐火物を、温度:50℃、湿度:90%雰囲気に保った恒温恒湿炉に360Hrの時間で保持した。そして、この際の重量変化を測定することで耐消化性を評価し、結果を下記表3及び図5のグラフに示した。
Figure 2012062233
表3及び図3〜図5の結果に示すように、本発明で規定する積層構成とされた本発明例(A)、(C)、(D)、(F)の耐火物は、還元焼成後の重量変化率が全て1.16%以下であり、耐MgO−C反応性に優れていることが明らかである。また、本発明例の耐火物は、回転侵食炉を用いた還元焼成後に侵食試験を行った際の溶損指数が全て85以下であり、耐食性に優れていることが明らかである。また、本発明例の耐火物は、恒温恒湿炉において恒温多湿環境で保持した後の重量変化率が、0.17〜0.90%の範囲であり、実用上、問題の無い範囲の耐消化性を備えていることが明らかとなった。
これに対し、比較例(B)、(E)、(G)の耐火物は、マトリックス中に含まれる耐火材微粉が、本発明で規定する積層構成とされていないため、耐MgO−C反応性、耐食性、並びに、耐消化性の少なくとも何れかが劣る結果となっている。
ここで、本発明例(A)の耐火物は、耐火材微粉及び耐火材粗粉の両方が、MgOからなる骨材に被覆膜及びCaO微粉が積層され、さらに、カーボン材料からなるコーティング膜が設けられた構成なので、耐MgO−C反応性、耐食性及び耐消化性の何れもが顕著に優れていることが判る。
また、本発明例(C)の耐火物は、耐火材微粉のみが本発明で規定した積層構成とされている例であるが、耐MgO−C反応性並びに耐食性が優れており、さらに、耐消化性が非常に優れていることが判る。
また、本発明例(D)の耐火物は、カーボン材料からなるコーティング膜が設けられていない点を除き、耐火材微粉及び耐火材粗粉の両方が、MgOからなる骨材に被覆膜及びCaO微粉が積層された本発明で規定する積層構成が採用された例である。表3及び図3〜図5の結果に示すように、本発明例(D)の耐火物は、耐MgO−C反応性並びに耐食性が非常に優れており、また、耐消化性も実用の範囲内であることが判る。
また、本発明例(F)の耐火物は、カーボン材料からなるコーティング膜が設けられていない点を除き、耐火材微粉のみ、MgOからなる骨材に被覆膜及びCaO微粉が積層された本発明で規定する積層構成が採用された例である。表3及び図3〜図5の結果に示すように、本発明例(F)の耐火物は、耐MgO−C反応性並びに耐食性が非常に優れており、また、耐消化性も実用の範囲内であることが判る。
なお、比較例(B)の耐火物は、耐火材粗粉のみ、上述のような、MgOからなる骨材に被覆膜及びCaO微粉が積層された構成とした例である。比較例(B)は、耐火材粗粉にカーボンコーティングが施されていることから、耐消化性は比較的良好な結果となっているものの、還元焼成後の重量変化率が大きく、また、溶損指数も大きいため、耐MgO−C反応性並びに耐食性に劣る結果となった。
また、比較例(E)の耐火物は、耐火材粗粉のみ、上述のような、MgOからなる骨材に被覆膜及びCaO微粉が積層された構成とし、また、カーボンコーティングを設けない例である。比較例(E)は、耐消化性は実用の範囲内となっているものの、還元焼成後の重量変化率が大きく、また、溶損指数も大きいため、耐MgO−C反応性並びに耐食性に劣る結果となった。
また、比較例(G)の耐火物は、耐火材微粉及び耐火材粗粉の何れもが、本発明で規定する積層構成を採用していない従来の構成のものとされている。比較例(G)は、耐消化性は良好な結果となっているものの、還元焼成後の重量変化率が非常に大きく、また、溶損指数も非常に大きいため、耐MgO−C反応性並びに耐食性に劣る結果となった。
以上説明した実施例の結果より、本発明のMgO−C系耐火物が、高温減圧雰囲気中で使用した場合においても組織が劣化することがなく、脱落損傷や剥離損傷、スラグ侵食等が生じるのが防止でき、耐用性が高く、また、耐食性並びに耐消化性に優れていることが明らかである。
本発明によれば、高温減圧雰囲気中で使用した場合においても組織が劣化することがなく、脱落損傷や剥離損傷、スラグ侵食等が生じるのが抑制される。従って、例えば、各種溶融金属用の容器や、製鋼工程の2次精錬設備等において本発明を適用することにより、耐用性、耐食性並びに耐消化性を向上させるとともに、溶鋼への不純物等の混入を防止するメリットを十分に享受することができ、その社会的貢献は計り知れない。
1…MgO−C系耐火物(耐火物)、
2…マトリックス、
10…耐火材微粉、
11…骨材、
12…被覆膜、
13…CaO微粉、
14…コーティング膜、
5…耐火材粗粉
51…骨材、
52…被覆膜、
53…CaO微粉、
54…コーティング膜、

Claims (9)

  1. 少なくとも、耐火材微粉、黒鉛(C)、及び、カーボン系材料からなるバインダーが含有されるマトリックスと、耐火材粗粉とからなるMgO−C系耐火物であって、
    前記マトリックス中に含有される耐火材微粉が、MgOからなる骨材の表面に設けられ、メタクリル系樹脂からなる被覆膜と、前記被覆膜上に積層されるCaO微粉とを備えることを特徴とする、MgO−C系耐火物。
  2. 前記耐火材微粉が、さらに、前記CaO微粉の隙間に、この隙間から露出する前記被腹膜を覆い、且つ、前記CaO微粉を覆う、カーボン系材料からなるコーティング膜が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のMgO−C系耐火物。
  3. 前記コーティング膜が、タール、又は、ピッチからなることを特徴とする、請求項2に記載のMgO−C系耐火物。
  4. 前記耐火材微粉は、前記骨材の最大粒径が40μm以下であり、前記CaO微粉の最大粒径が1μm以下であることを特徴とする、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のMgO−C系耐火物。
  5. 前記マトリックスに含有され、カーボン系材料からなるバインダーが、タール、又は、ピッチであることを特徴とする、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のMgO−C系耐火物。
  6. 前記マトリックスに含有される黒鉛(C)の最大粒径が200μm以下であることを特徴とする、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のMgO−C系耐火物。
  7. さらに、前記耐火材粗粉が、MgOからなる骨材の表面に設けられ、メタクリル系樹脂からなる被覆膜と、前記被覆膜上に積層されるCaO微粉とを備えることを特徴とする、請求項1〜請求項6の何れか1項に記載のMgO−C系耐火物。
  8. 前記耐火材粗粉が、さらに、前記CaO微粉の隙間に、この隙間から露出する前記被腹膜を覆うように、カーボン系材料からなるコーティング膜が設けられていることを特徴とする、請求項7に記載のMgO−C系耐火物。
  9. 前記コーティング膜が、タール、又は、ピッチからなることを特徴とする、請求項8に記載のMgO−C系耐火物。
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